JP6543915B2 - ホース用補強糸の製造方法およびホースの製造方法 - Google Patents

ホース用補強糸の製造方法およびホースの製造方法 Download PDF

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本発明は、ホース用補強糸の製造方法およびホースの製造方法に関し、さらに詳しくは、材料コストを低減しつつ、ホースの耐久性および屈曲性の向上とホースの製造し易さを確保できるホース用補強糸の製造方法およびホースの製造方法に関するものである。
ホースには、その用途やホースに要求される様々な性能(耐久性、屈曲性、切断強度など)に応えるために繊維補強層が埋設されている。例えば、冷媒用高圧ホースにおいて、内面ゴム層と外面ゴム層との間に2層のスパイラル編組構造の繊維補強層が介設されたホースが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1で提案されているホースでは、繊維補強層を構成する補強糸として、種々の材質が提示されている。
特許文献1では、コストの観点から補強糸の材質としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維が推奨されている(段落0020参照)。コストの観点を無視すれば、ホースに要求される種々の性能を向上させるには、PEN(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)繊維を用いる方が望ましい。しかしながら、PEN繊維はPET繊維に比して流通量が格段に少なく、コストが非常に割高になる。そのため、ホース用補強糸としてPEN繊維を用いることは現実的ではなかった。
特開2006−307987号公報
本発明の目的は、材料コストを低減しつつ、ホースの耐久性および屈曲性の向上とホースの製造し易さを確保できるホース用補強糸の製造方法およびホースの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明のホース用補強糸の製造方法は、ホースの最内面層と最外面層との間に介設されるスパイラル編組構造の繊維補強層を構成するホース用補強糸の製造方法において、PEN繊維とPET繊維とを撚り合わせて、PEN繊維の繊度比率を50%以上にした撚り糸を形成し、この撚り糸に接着液を付与する接着液付与工程と、この接着液を加熱乾燥させるドライ工程と、乾燥させた接着液を加熱して硬化を促進させるノルマライジング工程とを行なって補強糸を製造し、このノルマライジング工程では、前記撚り糸に糸長手方向に2%以上の収縮を生じさせないテンションを負荷し続けることを特徴とする。
本発明のホースの製造方法は、上記に記載のホース用補強糸の製造方法により前記補強糸を製造し、この補強糸で構成されたスパイラル編組構造の繊維補強層2層以上、ホースを構成する最内面層と最外面層との間に介設する工程を有することを特徴とする。
本発明のホース用補強糸の製造方法によれば、補強糸が、PEN繊維とPET繊維とを撚り合わせて形成されているので、PEN繊維のみで形成された補強糸に比して材料コストを低減できる。一方で、補強糸におけるPEN繊維の繊度比率を50%以上にするとともに、ノルマライジング工程では、PEN繊維とPET繊維とを撚り合わせて形成した撚り糸に糸長手方向に2%以上の収縮を生じさせないテンションを負荷し続けることにより、PET繊維の特性をPEN繊維に近づけることができる。即ち、PET繊維のみで形成された補強糸に比して、切断強度を向上させ、中間伸びおよび乾熱収縮率を適切な範囲に設定し易くなる。そのため、この補強糸によってホースのスパイラル編組構造の繊維補強層を構成することで、ホースの耐久性および屈曲性の向上とホースの製造し易さを確保するには有利になる。
本発明のホース用補強糸の製造方法では、例えば、前記PEN繊維およびPET繊維の太さを同じにする。これにより、特性の異なるそれぞれの繊維をバランスさせ易くなるので、補強糸の性能が安定する。
前記補強糸の135℃における1.2cN/dtex時の中間伸びを、例えば、0.4%以上5.0%以下にする。これにより、ホースの性能をより向上させ易くなる。
本発明のホースの製造方法では、例えば、前記繊維補強層どうしの間に中間ゴム層介設さずに互い直接接触させて積層する。これにより、ホースの材料コストが低減するとともに、ホースの軽量化および屈曲性向上を図ることができる。
本発明により製造されるホースの一部を切り欠いて内部構造を例示する説明図である。 補強糸を拡大して例示する説明図である。 補強糸の接着処理工程を例示する説明図である。
以下、本発明のホース用補強糸の製造方法およびホースの製造方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
図1に例示する本発明により製造されるホース1は、最内面層2と最外面層3との間にスパイラル編組構造の内側繊維補強層4および外側繊維補強層5が介設されている。最内面層2の材質は、ホース1の流通させる流体の種類等によって決定される。
最内面層2の材質としては例えば、ブチルゴム(IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、臭素化イソブチレン−コ−パラ−メチルスチレン(BIMS)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(HNBR)、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレンゴム(NBIR)、アクリロニトリル−イソプレンゴム(NIR)等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの材質のうち、最適なゴム材料は用途によって異なるが、例えば、冷媒輸送用ホースの場合、耐冷媒透過性の観点から、ブチルゴム(IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、臭素化イソブチレン−コ−パラ−メチルスチレン(BIMS)を用いることが好ましい。
最内面層2は、ゴム単独で形成されていてもよいが、ホース1の用途やホース1に要求される性能等に応じて、各種添加剤を含有させたゴム組成物により形成されていてもよい。この添加剤としては例えば、加硫剤、加硫促進剤、充填剤、補強剤、可塑剤、老化防止剤、軟化剤、粘着付与剤、滑剤、分散剤、加工助剤等を挙げることができる。
最内面層2の層厚は、ホース1の用途やホース1に要求される性能等に応じて任意の層厚を設定することができるが、例えば0.5mm〜4.0mm程度である。
最外面層3の材質としては例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの材質うち、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)を用いることが、耐候性、耐熱性、耐水分透過性に優れるので好ましい。
最外面層3は、ゴム単独で形成されていてもよいが、ホース1の用途、ホース1に要求される性能等に応じて、各種添加剤を含有させたゴム組成物により形成されていてもよい。この添加剤としては、最内面層2を形成するゴム組成物として上記で例示した各種添加剤が挙げられる。
最外面層3の層厚は、ホース1の用途、ホース1に要求される性能等に応じて任意の層厚にすることができるが、0.5mm〜3.0mm程度である。
内側繊維補強層4と外側繊維補強層5を構成するそれぞれの補強糸6は、ホース1の筒軸方向に対して所定の編組角度で傾斜させるように配置されている。積層されて隣り合う内側繊維補強層4および外側繊維補強層5では、それぞれの補強糸6の編組角度がホース1の筒軸方向に対して対称になっている。
この実施形態では、内側繊維補強層4と外側繊維補強層5とは互いが直接接触していて、両者の間には中間ゴム層が介在していないが、中間ゴム層を介在させることもできる。中間ゴム層を省略すると、ホース1の材料コストが低減するとともに、ホース1の軽量化および屈曲性向上を図ることができる。この実施形態では、内側繊維補強層4および外側繊維補強層5の2層の繊維補強層が設けられているが、ホース1に要求される性能等によって3層以上にすることもある。
補強糸6は後述する本発明の製造方法により製造される。この補強糸6は図2に例示するように、PEN繊維(フィラメント糸)6aとPET繊維(フィラメント糸)6bとを撚り合わせて形成されている。補強糸6におけるPEN繊維6aの繊度比率は50%以上になっている。
この実施形態では、2本のPEN繊維6aと1本のPET繊維6bとを撚り合わせて形成されているが、撚り合わせるフィラメント糸の数は、4本以上にすることもでき、例えば、3本〜6本のフィラメント糸を撚り合わせて補強糸6を形成する。片撚りおよび諸撚りのいずれも採用することができる。補強糸6におけるPEN繊維6aの繊度比率の上限は例えば80%にする。
PEN繊維6aおよびPET繊維6bの太さは例えば、500dtex〜3500dtex程度である。PEN繊維6aとPET繊維6bとは異なる太さにすることもできるが、同じ太さにすると、特性の異なるそれぞれの繊維をバランスさせ易くなるので、補強糸6の性能が安定する。
ホース1には、上述した最内面層2、最外面層3および繊維補強層4、5の他に、例えば適宜、以下に示す樹脂層を備えることもできる。
樹脂層を形成する樹脂材料としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、塩ビ系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの材質のうち、最適な樹脂材料はホース1の用途によって異なるが、例えば、自動車エアコンホース用途の場合、耐冷媒透過性に特に優れるのでポリアミド系樹脂を用いるのが好ましく、具体的には、ナイロン6(N6)とナイロン11(N11)との混合樹脂(ブレンド)を用いるのがより好ましい。
以下、本発明のホース用補強糸の製造方法の手順を説明する。
まず、PEN繊維6aとPET繊維6bとを撚り合わせて、PEN繊維6aの繊度比率を50%以上にした撚り糸7を形成する。次いで、この撚り糸7を図3に例示するドラム8aに巻き取っておく。
次いで、ドラム8aから撚り糸7を繰り出して、順に、接着液付与工程P1、ドライ工程P2、ノルマライジング工程P3を行なう接着処理工程を経て補強糸6を製造し、製造した補強糸6を別のドラム8bに巻き取る。それぞれの工程P1、P2、P3では、撚り糸7に対して独自に糸長手方向に所定のテンションを負荷することができる。
接着液付与工程P1では、撚り糸7に接着液Wを付与する。例えば、接着液Wを貯留した貯留槽に撚り糸7を浸漬させて接着液Wを付与する。適宜の塗布手段によって撚り糸7に接着液Wを付与することもできる。接着液Wとしては、例えばRFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス)系の接着液を用いる。この接着液によれば、PEN繊維6aを使用した補強糸6と、ゴムとの接着性が一段と良好になる。
ドライ工程P2では、付与した接着液Wを加熱乾燥させる。加熱温度は例えば100℃〜170℃であり、所要時間は例えば20秒〜300秒である。
ノルマライジング工程P3では、乾燥させた接着液Wを加熱して硬化を促進させる。加熱温度は例えば180℃〜250℃であり、所要時間は例えば20秒〜600秒である。
ノルマライジング工程P3では、撚り糸7に糸長手方向に2%以上の収縮を生じさせないテンションを負荷し続ける。撚り糸7に糸長手方向にまったくテンションを負荷しないと、自由に熱収縮して収縮量が過大になる。そのため、糸長手方向に負荷するテンションを制御して、撚り糸7には糸長手方向に2%以上の収縮を生じさせないようにする。例えば、撚り糸7の糸長手方向の伸びがマイナス2%〜プラス1%の範囲になるようにテンションを負荷し続ける。伸びがマイナス2%とは、2%収縮することを意味する。
PEN繊維6aについては、ノルマライジング工程P3のテンション条件が特性に大きく影響することはない。一方で、PET繊維6bについては、ノルマライジング工程P3のテンション条件が特性に大きく影響する。PEN繊維6aとPET繊維6bとを撚り合わせた補強糸6に、PEN繊維6aのみからなる補強糸と同等の性能を発揮させるためには、ノルマライジング工程P3のテンション条件が極めて重要なる。
本願発明の発明者は、ノルマライジング工程P3における上述の適切なテンション条件を見出して、補強糸6の性能をPEN繊維6aのみからなる補強糸と同等の性能を発揮させることを可能にした。換言すると、PEN繊維6aとPET繊維6bとを撚り合わせて補強糸6を形成しても、ノルマライジング工程P3のテンション条件が適切でなければ、十分な性能を得ることができない。
本発明により製造した補強糸6によれば、PET繊維6bのみで形成された補強糸に比して、切断強度を向上させ、中間伸びおよび乾熱収縮率を適切な範囲に設定し易くなる。即ち、PEN繊維6aのみで形成された補強糸に近似した性能を確保できる。それ故、この補強糸6によりホース1のスパイラル編組構造の繊維補強層4、5を構成することで、ホース1の耐久性および屈曲性の向上とホースの製造し易さを確保するには有利になる。
また、補強糸6はPEN繊維6aとPET繊維6bとを撚り合わせて形成されているので、PEN繊維6aのみで形成された補強糸に比して材料コストを低減できる。尚、補強糸6におけるPEN繊維6aの繊度比率を50%以上にしなければ、切断強度を十分に向上させることができず、中間伸びおよび乾熱収縮率を適切な範囲にすることも困難になる。
補強糸6の135℃における1.2cN/dtex時の中間伸びを、例えば、0.4%以上5.0%以下にする。これにより、ホース1の屈曲性および製造し易さが一段と向上する。
1100dtexのフィラメント糸を3本撚り合わせて表1に例示するように7種類の補強糸(従来例1、2、比較例1、2、実施例1〜3)を製造した。フィラメント糸をS撚りにして、撚り数は長さ10cm当たり10回にした。従来例1はPET繊維からなる3本のフィラメント糸により形成した。従来例2はPEN繊維からなる3本のフィラメント糸により形成した。比較例1はPET繊維からなる2本のフィラメント糸とPEN繊維からなる1本のフィラメント糸により形成した。比較例2および実施例1〜3は、PET繊維からなる1本のフィラメント糸とPEN繊維からなる2本のフィラメント糸により形成した。それぞれの補強糸はRFL接着液を用いた接着処理をして、ノルマライジング工程での伸びを表1に示す伸びになるようにテンションを制御して負荷し続けた。表中のマイナスの伸びは収縮を意味する。
それぞれの補強糸について、切断強度、中間伸び、乾熱収縮率を測定し、その結果を表1に示す。また、材料コストを評価し、併せて表1に示す。切断強度は数値が大きい程よく、ホースの耐久性が向上する。切断強度は205N以上が好ましい。中間伸びおよび乾熱収縮率は数値が小さい程よく、ホースの製造し易さが向上する。また、中間伸びは0.4%〜5.0%がホースの屈曲性等の観点から好ましい。乾熱収縮率の好ましい範囲は1.5%〜6.0%である。材料コストの評価は◎が安価で非常に好ましく、〇がリーズナブルで好ましく、×が高価で好ましくないことを示している。
Figure 0006543915
表1の結果から実施例1〜3は、材料コストを抑えつつ、切断強度、中間伸び、乾熱収縮率が適切な範囲にあることが分かる。
1 ホース
2 最内面層
3 最外面層
4 内側繊維補強層
5 外側繊維補強層
6 補強糸
6a PEN繊維(フィラメント糸)
6b PET繊維(フィラメント糸)
7 撚り糸
8a、8b ドラム
P1 接着液付与工程
P2 ドライ工程
P3 ノルマライジング工程
W 接着液

Claims (5)

  1. ホースの最内面層と最外面層との間に介設されるスパイラル編組構造の繊維補強層を構成するホース用補強糸の製造方法において、
    PEN繊維とPET繊維とを撚り合わせて、PEN繊維の繊度比率を50%以上にした撚り糸を形成し、この撚り糸に接着液を付与する接着液付与工程と、この接着液を加熱乾燥させるドライ工程と、乾燥させた接着液を加熱して硬化を促進させるノルマライジング工程とを行なって補強糸を製造し、このノルマライジング工程では、前記撚り糸に糸長手方向に2%以上の収縮を生じさせないテンションを負荷し続けることを特徴とするホース用補強糸の製造方法。
  2. 前記PEN繊維およびPET繊維の太さが同じである請求項1に記載のホース用補強糸の製造方法。
  3. 前記補強糸の135℃における1.2cN/dtex時の中間伸びを0.4%以上5.0%以下にする請求項1または2に記載のホース用補強糸の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のホース用補強糸の製造方法により前記補強糸を製造し、この補強糸で構成されたスパイラル編組構造の繊維補強層2層以上、ホースを構成する最内面層と最外面層との間に介設する工程を有するホースの製造方法
  5. 前記繊維補強層どうしの間に中間ゴム層介設さずに、互い直接接触させて積層する請求項4に記載のホースの製造方法
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