次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1及び図2は本発明の実施形態に係るドライエッチング装置1を示す。本実施形態では、単一のドライエッチング装置1によりプラズマ処理システムが構成されている。このドライエッチング装置1では、基板2を載置して搬送するためのトレイ3が使用される。本実施形態ではドライエッチング装置1で使用される複数のトレイ3が予め定められている。言い換えれば、複数のドライエッチング装置間でトレイ3の共用はない。
図7A及び図7Bを参照すると、本実施形態におけるトレイ3には表側3aから裏側3bまで厚み方向に貫通する複数個(本実施形態では7個)の基板収容孔4が設けられている。また、トレイ3の外周縁には回転角度位置検出のためのノッチ3cが設けられている。個々の基板収容孔4に1枚の基板2が収容される。個々の基板収容孔4の孔壁には基板収容孔4の中心に向けて突出する基板支持部5が設けられている。図6を併せて参照すると、基板支持部5は基板収容孔4に収容された基板2の裏側の周縁付近を支持する。前述のように基板収容孔4はトレイ3を厚さ方向に貫通するように形成されているので、トレイ3の裏側3b側から見ると、基板収容孔4(基板支持部5の先端で囲まれた円形の領域)により基板2の下面が露出している。トレイ3は基板2を載置した状態で搬送でき、かつプラズマ処理時に基板2と共にプラズマ処理部11内に留まるものであれば、具体的な構造は特に限定されない。例えば、トレイは有底の基板収容孔内に基板を収容するものでもよい。
図7Bに示すように、トレイ3の裏側3bには識別情報保持部6が設けられている。この識別情報保持部6は、個別のトレイ3の識別情報、つまり個々のトレイ3を他のトレイ3と区別するために必要な情報を保持している。後述するトレイ識別情報読取部36で読取可能に識別情報を保持するものである限り、識別情報保持部6の構成は特に限定されない。例えば、識別情報保持部6は、トレイ3に印刷、刻印等によって記された文字、図形等であってもよい。また、識別情報保持部6は、トレイ3に貼付等で表示したバーコードや二次元バーコードであってもよい。さらに、識別情報保持部6はトレイ3に貼付等の手段で保持されICタグであってもよい。識別情報保持部6の設ける位置、特にノッチ3cに対する位置は、複数のトレイ3間で統一されている。
本実施形態では、プラズマ処理部11における処理時のプラズマの影響を避けるために、プラズマに曝露されないトレイ3の裏側3bに識別情報保持部6を設けている。プラズマ処理時のプラズマの影響を避けることができる限り、識別情報保持部6の位置は特に限定されない。例えば、トレイ3の側面に識別情報保持部6を設けてもよい。
図1を参照すると、ドライエッチング装置1は、基板2に対するドライエッチングを実行するプラズマ処理部11と、プラズマ処理部11に隣接して設けられてトレイ3の搬送機構15を収容している搬送部12とを備える。また、トレイ3を供給及び回収するためのトレイストック部13が、搬送部12に隣接して設けられている。さらに、ドライエッチング前のトレイ3のアラインメント処理を行うアラインメント部14が、搬送部12に隣接して設けられている。プラズマ処理部11とトレイストック部13は、搬送部12を挟んで互いに反対側に配置されている。アラインメント部14は、プラズマ処理部11及びトレイストック部13に対して搬送部12の側方(図1において左側)に配置されている。プラズマ処理部11が備える真空チャンバ16内の処理室16a、トレイストック部13内の収容室13a、及びアラインメント部14内のアラインメント室14aと、搬送部12内の搬送室12aとの間には、それぞれ連通口17A,17B,17Cが設けられている。本実施形態では、搬送室12aと処理室16aの間の連通口17Aにゲートバルブ18が取り付けられている。
トレイストック部13は、外部と収容室13aの連通口17Dを開閉する扉19を備える。連通口17Dを介して収容室13aに出し入れ可能なカセット21は、複数のトレイ3を多段配置された状態で出し入れ可能に収容している。本実施形態では、一つのカセット21でドライエッチング前の基板2を収容したトレイ3の供給とドライエッチング済みの基板2を収容したトレイ3の回収との両方を行う。ただし、トレイ3の供給用と回収用それぞれの専用のカットを設けてもよい。ドライエッチング装置1の稼動中は、カセット21の交換時を除き、真空ポンプ41(図2に模式的に示す)の真空排気によって搬送室12a、収容室13a、及びアラインメント室14aは真空状態で保持される。
搬送部12の搬送室12a内には、本実施形態ではシングルアーム型移載ロボットからなる搬送機構15が収容されている。搬送機構15は、裏側3bの外周縁付近を支持することでトレイ3を保持する単一の支持フォーク15aと、支持フォーク15aを水平方向に往復直動させる水平移動機構15b,15cと、支持フォーク15a及び水平移動機構15b,15cを旋回及び昇降させる旋回軸15dとを備える。ドライエッチング装置1内でトレイ3の必要な搬送動作を実行可能である限り、搬送機構15の具体的な構造は本実施形態のものに限定されない。例えば、複数の移載ロボットを組み合わせて搬送機構を構成してもよい。
プラズマ処理部11は真空チャンバ16の処理室16a内に基板2を載せたトレイ3を収容してエッチングを行うものであれば、エッング方式等は特に限定されない。例えば、プラズマ処理部11は、ICP型であってもよく、平行平板型であってもよい。図6を併せて参照すると、本実施形態のプラズマ処理部11では、処理室16aの底部側に上端面23aにトレイ3の裏側3bを載せるステージ23が設けられている。ステージ23の上端面23aには、トレイ3の基板収容孔4と同数(本実施形形態では7個)の扁平な円柱状の静電チャックである基板保持部23bが突出している。また、搬送機構15の支持フォーク15aとステージ23との間でのトレイ3の受け渡しのために、昇降するロッド状部材であるトレイリフター24が設けられている。
図1から図5を参照してアラインメント部14について説明する。図3に最も明瞭に示すように、アラインメント室14a内の底部側には回転ステージ(アラインメントステージ)26とセンタリング機構27とが配置されている。回転ステージ26は、鉛直方向に延びる回転軸26aの上端に取り付けられている。この回転軸26aは、回転ステージ駆動機構25(図2参照)により回転駆動される(図5の矢印A1)。搬送機構15によって搬送されたトレイ3は回転ステージ26の上面に載置される。センタリング機構27はアラインメント室14aの底壁上に配置されて一端側が開閉駆動部28に機械的に連結された一対のアーム29A,29B備える。開閉駆動部29は、図5において矢印A2で示すように、互いに離れた開位置と互いに近接した閉位置との間で、アーム29A,29Bを開閉動作させる。アーム29A,29Bには、当接部材30が鉛直方向上向きに突出するように設けられている。これらの当接部材30はアーム29A,29Bが閉位置となると回転ステージ26上に載置されたトレイ3の外周縁端面と当接する。
アラインメント室14aの上方には、基板検出センサー32A,32Bとノッチ検出センサー33とが配置されており、これらはいずれも発光素子と受光素子が一体化された光学センサーである。基板検出センサー32Aは、回転ステージ26の中心直上に位置し、基板検出センサー32Bは平面視でその外側に位置し、ノッチ検出センサー33はさらに外側に位置している。回転ステージ26の上面には基板検出センサー32Aの直下に光反射部34Aが設けられ、アラインメント室14aの底壁上には基板検出センサー32Bとノッチ検出センサー33の直下に光反射部34B,34Cが設けられている。光反射部34A,34Bからの反射光を基板検出センサー32A,32Bが受光することで、基板2が基板収容孔4に収容されていないことを検出できる。また、光反射部材34Cから反射光をノッチ検出センサー33が受光することでノッチ3cを検出できる。
アラインメント室14aの底壁には上向きの読取可能領域(視野)を有するトレイ識別情報読取部36が設けられている。トレイ識別情報読取部36は、センタリング機構27によるセンタリングと回転ステージ26の回転による回転角度位置の調整(アラインメント処理)が完了したときに、トレイ3の裏側3bの識別情報保持部6の保持された識別情報を読取可能に設定されている。トレイ識別情報読取部36の具体的な構成は、識別情報保持部6に応じて異なる。例えば、識別情報保持部6が印刷、刻印等によってトレイ3に記された文字、図形であれば、トレイ識別情報読取部36はCCDカメラ等の撮像装置を備える。また、トレイ識別情報読取部36がバーコードや二次元バーコードであれば、識別情報保持部6はバーコードリーダや撮像装置を備える。さらに、トレイ識別情報読取部36がICタグの場合、トレイ識別情報読取部36はICタグリーダを備える。
アラインメント室14aの上方には測距方向を下向きに設定した光学測距センサーである高さ計測センサー37が配置されている。高さ計測センサー37は回転ステージ26内に載置されたトレイ3の表側3aの高さを測定する。高さ計測センサー37には三角測量の原理を利用した光学測距センサーが利用できる。高さ計測センサー37で測定されたトレイ3の表側3aの高さは、後に詳述するようにトレイ厚さ計測処理部49(図2参照)に送られてトレイ厚さが計算される。このように、本実施形態では、高さ計測センサー37とトレイ厚さ計測処理部49でトレイ3の厚さ計測手段を構成している。
トレイ3の厚さ計測手段は、高さ計測センサー37とトレイ厚さ計測処理部49の組合せに限定されず、自動的にトレイ3の厚さを測定できる限り接触子式、非接触式のいずれでもよい。接触式の場合、ノギスやマイクロメータのように機械的なトレイ3の厚さを直接測定するものでもよい。非接触式の場合、光学に測定するものに限らず、静電容量変化等で電気的に測定するものでもよい。
ドライエッチング装置1は、図2にのみ示す制御部40を備える。制御部40は操作・入力部43から入力される作業者の指令に加え、基板検出センサー32A,32B、ノッチ検出センサー33、トレイ識別情報読取部36、及び高さ計測センサー37を含む各種センサーからの入力等に基づいて、プラズマ処理部11、アラインメント部14、搬送機構15、真空ポンプ41、及び表示部42を含む装置全体の動作を制御する。特に、制御部40は、搬送機構15によるトレイ3の搬送を制御するトレイ搬送処理部45、アラインメント部14における回転ステージ26とセンタリング機構27によるアラインメント処理を制御するアラインメント処理部46、及びアラインメント部14における基板検出センサー32A,32Bによる基板2の有無確認を制御する基板有無確認処理部47を備える。また、制御部40は、トレイ識別情報読取部36を使用した識別情報保持部6からの情報の読取を制御するトレイ識別情報読取処理部48、高さ計測センサー37の測定結果に基づいてトレイ3の厚さを計算するトレイ厚さ計測処理部49、及びその計算結果(厚さデータ)を記憶するトレイ厚さデータ記憶部50を備える。さらに、制御部40は、トレイ厚さデータ記憶部50に記憶された厚さデータからトレイ3の消耗状態を判定する消耗状態判定部51と、その判定結果を含むトレイ3に関する情報を記憶するトレイ情報記憶部52とを備える。さらにまた、制御部40はトレイ情報記憶部52に含まれる情報を表示部42に表示する処理を行うトレイ情報表示処理部53を備える。本実施形態では、その他の情報等(例えばエラー表示)を表示部42に表示する処理もトレイ情報表示処理部53が実行する。
次に、本実施形態のドライエッチング装置1の動作を説明する。図8を参照すると、1枚のトレイ3に着目した場合、まずトレイ3は搬送機構15によりトレイストック部13の収容室13a内のカセット21から搬送部12の搬送室12aを介してアラインメント部14のアラインメント室14aに搬入され、回転ステージ26の上面に載置される(ステップS8−1,図1の矢印B1,図4)。次に、制御部40のアラインメント処理部46によってアラインメント部14におけるアラインメント処理が実行され、その際にトレイ3の識別情報保持部6の読取処理と、トレイ3の厚さ計測も実行される(ステップS8−2,図1の矢印B2)。これらの処理については、後に詳述する。アラインメント処理後、トレイ3は搬送機構15によりアラインメント室14aから搬送室12aを介してプラズマ処理部11の処理室16a内に搬入されて、ステージ23上に載置される(ステップS8−3)。図6に示すように、ステージ23の上端面23aにトレイ3が載置されると、トレイ3の個々の基板収容孔4内の基板2は、基板保持部23bに載置されて基板支持部5から浮き上がる。次に、トレイ3と共にステージ23に載置された基板2に対するプラズマ処理が実行される(ステップS8−4)。プラズマ処理後、トレイ3は搬送機構15により処理室16aから搬送室12aを介してトレイストック部13の収容室13aへ搬送されてカセット21で回収される(ステップS8−5,図1の矢印B3)。後続のトレイ3は先行するトレイ3に対してプラズマ処理(ステップS8−4)が実行されている間に、トレイストック部13からアラインメント部14へ搬送され、アラインメント処理される(ステップS8−1,S8−2)。搬送機構15によるトレイ3の搬送(ステップS8−1,S8−3,S8−5,矢印B1〜B3)は制御部40のトレイ搬送処理部45により実行される。
以下、図2、図5、図9を参照してアラインメント処理(図8のステップS8−1)の詳細を説明する。
まず、回転ステージ26の上面に載置されたトレイ3に対してセンタリング機構27によるセンタリングが実行される(ステップS9−1)。具体的には、開閉駆動部28によってアーム29A,29Bが開位置から閉位置の移動し(矢印A2)、トレイ3の外周端面が当接部材30により両側から挟み込まれる。その結果、トレイ3はその中心が回転ステージ26の中心(回転軸26aの回転中心)と一致するように水平面内での位置が調整される。
センタリング後、回転軸26aが回転ステージ駆動機構25(図2参照)により回転駆動されることで、回転ステージ26が回転動作する(ステップS9−2)。回転ステージ26の回転中にノッチ検出センサー44からの出力を監視することでノッチ3cが検出される(ノッチ検出処理)。また、制御部40の基板有無確認処理部47は、回転ステージ26を回転中の基板検出センサー32A,32Bの出力を監視することで、トレイ3の基板収容孔4に基板2が収容されていることを確認する(基板検出処理)。具体的には、基板検出センサー32Aからの出力によりトレイ3の中央の基板収容孔4における基板2の有無が確認され、基板検出センサー32Bからの出力によりトレイ3の残りの6個の基板収容孔4における基板2の有無が確認される。
回転ステージ回転動作(ステップS9−2)で回転ステージ26が回転中、制御部40のトレイ識別情報読取処理部48は、回転ステージ26に載置されているトレイ3の裏側3bの識別情報保持部6からトレイ3の識別情報をトレイ識別情報読取部36からの出力に基づいて読み取る(トレイ識別情報読取処理)。
また、回転ステージ回転動作(ステップS9−2)で回転ステージ26が回転中、高さ計測センサー37によって回転ステージ26に載置されたトレイ3の表側3aの高さの計測が実行される(高さ計測処理)。本実施形態では、図5において破線Cで示すようにトレイ3の中央の基板収容孔4を同心円状に囲む軌跡上の複数箇所で高さ(高さ位置が固定されている高さ計測センサー37からの鉛直方向の距離)が計測される。計測された高さは制御部40のトレイ厚さ計測処理部49に一次的に保存され、後述するようにトレイ3の厚さの算出に使用される。なお、必要な精度が確保できれば高さを測定するトレイ3上の位置や測定箇所数は特に限定されない。また、高さ計測に代えて、接触又は非接触の方式でトレイ3の厚みを測定してもよいことは、前述した通りである。
トレイ3の高さの計測(トレイ3の厚さ計測)は必ずしもアラインメント部14で実行する必要はない(この点については、後に図14を参照して例示する)。しかし、本実施形態のようにアラインメント部14の回転ステージ26上に載置されたトレイ3に対して高さ(厚さ)の計測を行うことで、高さ(厚さ)計測のための専用の空間をドライエッチング装置1内に設ける必要がなく、省スペース化を図ることができる。また、トレイ3の高さ(厚さ)の計測をアラインメント処理(センサリングと回転ステージの回転角度位置調整)の過程の一部として実行でき、トレイ3の高さ(厚さ)の計測を別途の処理として実行する必要がないので、処理時間の短縮ないしスループットの向上を図ることができる。
高さの計測(厚さ計測)は、トレイ3の決まった特定の位置で毎回計測することが好ましい。そのため、本実施形態では、センタリング機構27によるトレイ3の位置決め(センタリング)後にトレイ3の高さ計測を行っている。ただし、高さの計測(厚さ計測)のためのトレイ3の位置決めはセンタリング機構27以外の機構で実行してもよい。例えば、例えば搬送機構15でトレイ3を位置決め後に高さの計測(厚さ計測)を実行してもよい。
回転ステージ回転動作(ステップS9−2)の終了後、ノッチ検出センサー33によるノッチ3cの検出が成功したか否が判断される(ステップS9−3)。ノッチ検出に失敗した場合、表示部42にノッチ検出エラー報知が表示され(ステップS9−4)、搬送機構15によりアラインメント部14からトレイストック部13へトレイ3が戻される(ステップS9−5)。ノッチ検出エラー報知の表示(ステップS9−4)のみを行い、トレイストック部13へのトレイ3の返却(ステップS9−5)を実行しないことも可能である。一方、ノッチ検出に成功した場合、トレイ識別情報読取部48はトレイ識別情報読取部36によるトレイ3の識別情報読取の是非を判断する(ステップS9−6)。
ステップS9−6において、トレイ3の識別情報が不明である場合、すなわちトレイ3の識別情報保持部6から読み取った識別情報とトレイ情報記憶部52に予め登録された複数のトレイ3の識別情報とをトレイ識別情報読取部48が照合した結果、読み取った識別情報が予め登録された複数の識別情報のいずれとも一致しない場合には、表示部42にトレイ識別情報エラー報知が表示される(ステップS9−7)。このように、トレイ3の識別情報保持部6から読み取った識別情報を、予め登録された識別情報で認証することで、例えば非正規品のような意図されないトレイの使用を防止できる。
ステップS9−6において、トレイ3の識別情報の読み取りエラーの場合、すなわちトレイ識別情報読取部36によって識別情報保持部6が読取不可であった場合も同様に、ステップS9−7において表示部42にトレイ識別情報エラー報知が表示される。
一方、ステージS9−6においてトレイ3の識別情報の読取に成功し、かつ読み取った識別情報が認証できた(トレイ情報記憶部52に予め登録された識別情報のいずれかと一致した)場合には、基板検出センサー32A,32Bにより基板2の欠品(トレイ3の少なくとも1個の基板収容孔4に基板2が収容されていないこと)が検出されたか否かを判断する(ステップS9−8)。
ステップS9−8において基板2の欠品がある場合、表示部42に基板欠品エラー報知が表示され(ステップS9−9)、搬送機構15によりアラインメント部14からトレイストック部13へトレイ3が戻される(ステップS9−5)。基板欠品エラー報知の表示(ステップS9−9)のみを行い、トレイストック部13へのトレイ3の返却(ステップS9−5)を実行しないことも可能である。
一方、ステップS9−8において基板2の欠品がない場合、ステップS9−10において回転ステージ駆動機構25が回転軸26aを回転駆動して回転ステージ26の方向(回転角度位置)を調整する(回転ステージ方向調整)。ステップS9−10の回転ステージ方向調整でトレイ3のアラインメント処理が完了し、搬送待ちの状態となり(ステップS9−11)、図8のステップS8−3以降の処理が実行される。例えば、トレイ3のノット3cがノッチ検出センサー44により検出される回転角度位置で回転ステージ26の位置決めされる。回転ステージ回転動作(ステップS9−2)のうちのトレイ識別情報読取処理を、回転ステージ方向調整(ステップS9−10)の後に実行してもよい。また、トレイ3の識別情報読取の是非の判断(ステップS9−6)を、回転ステージ方向調整(ステップS9−10)の後に実行してもよい。
アラインメント処理後、制御部40のトレイ厚さ計測処理部49によるトレイ厚さ計測処理(図10)が実行される。まず、ステップS10−1においてアラインメント処理(図9)が終了していれば、アラインメント処理中にエラーが検出された否かを判断する(ステップS10−2)。具体的には、ステップS10−2では、アラインメント処理においてノッチ検出エラー(図9のステップS9−4)、基板欠品エラー(図9のステップS9−9)、及びトレイ識別情報エラー(図9のステップS9−7)のいずれかが検出された否かを判断する。
ステップS10−2においてノッチ検出エラー、基板欠品エラー、及びトレイ識別情報エラーのうちの少なくとも1つの検出があった場合、図9のステップ9−2の回転ステージ回転動作中の高さ計測処理でトレイ厚さ計測処理部48に一時的に保持された高さデータを消去し(ステップS10−3)、処理を終了する。すなわち、ステップS10−2でいずれかのエラーがあった場合には、トレイ3の高さデータを廃棄し、トレイ厚さ計測処理部48によるトレイ3の厚さの算出は行わない。
一方、ステップS10−2においてノッチ検出エラー、基板欠品エラー、及びトレイ識別情報エラーのいずれについても検出されていなかった場合、トレイ厚さ計測処理部48は一時的に保持された高さデータ(図9のステップ9−2の回転ステージ回転動作中の高さ計測処理で取得された)を使用してトレイ3の厚さを算出する(ステップS10−4)。高さデータからトレイ3の厚さを算出する方法は必要な精度が確保できる限り特に限定されない。例えば、トレイ3の複数箇所の高さデータの平均値を求め、この平均値と高計測センサー37の設置高さからトレイ3の厚さを算出してもよい。トレイ厚さ計測処理部48は算出したトレイ3の厚さをトレイ3の識別情報(個々のトレイ3の識別情報保持部6に記憶されているそのトレイ3を他のトレイ3と区別する情報)と関連付けてトレイ厚さデータ記憶部50に記憶する(ステップS10−5)。つまり、ステップS10−2においてエラーの検出がない場合には、トレイ厚さデータ記憶部50に識別情報と関連付けて記憶されているトレイ3の厚さは、トレイ厚さ計測処理部48が新たに算出した値に更新される。
トレイ厚さ計測処理後、制御部40の消耗状態判定部51によるトレイ3の消耗状態判定処理(図11)が実行される。まず、ステップS11−1において、トレイ厚さ計測処理(図10)の結果、トレイ厚さデータ記憶部50にトレイ3の識別情報に関連付けて記憶されているトレイ3の厚さデータが更新されていれば、当該更新された最新の厚さデータを識別情報と共に読み取る。また、ステップS11−3の交換時期予測と、ステップS11−4〜S11−8においてトレイ3の消耗状態の判断と表示を実行する。
以下、本実施形態におけるトレイ3の消耗状態の判断と交換時期予測の原理について、図12A及び図12Bを参照して説明する。
本実施形態の消耗状態判定部51は、消耗状態の判断に関して、トレイ3の厚さデータについて2種類の閾値、すなわち第一の閾値TH1と第二の閾値TH2を使用する。トレイ3の厚さはドライエッチングで表側3aが削れることで経時的に減少する、すなわちプラズマ処理によりトレイ3は経時的に消耗していく。トレイ3の厚さの減少が限度を越えると基板収容孔4が浅くなるために、トレイ3を収容したカセット21をトレイストック部13にセットする作業(通常は作業者が手作業で行う)の際の振動や、搬送機構15よる搬送時の振動によって、基板収容孔4に対する基板2の位置ずれが生じて処理品質低下や生産トラブルの原因となる。第二の閾値TH2は、このような不具合が発生するおそれがある厚さ、すなわち使用に差し支えがある厚さに相当する。一方、第一の閾値TH1は第二の閾値TH2、すなわち使用に差し支えがある厚さに対して余裕量δを加えた値に相当する。従って、厚さデータが第一の閾値TH1以上であれば、トレイ3は使用に差し支えのない厚さを有しており交換の必要がないことを意味する。また、厚さデータが第二の閾値TH2未満であれば、トレイ3の厚さは使用に差し支えがある程度まで減少していることを意味する。さらに、厚さデータが第一の閾値TH1未満で第二の閾値TH2以上であれば、使用に差し支えがない厚みを有するが使用に差し支えがある厚さまでの残量がわずかであることを意味する。
本実施形態の消耗状態判定部51が予測する交換可能時期は、現時点から厚さが前述の第二の閾値TH2まで低下するまでのトレイ3の使用回数である。例えば、図12Aにおいて現時点での使用回数がN1である場合、過去の厚さデータ(例えば直前の10個程度の厚さデータ)からトレイ3の厚さ3の減少傾向を示す近似直線Lが最小自乗法等により得られる。そして、この近似直線Lにおいてトレイ3の厚さが第二の閾値TH2以下となる回数N2が予測される交換時期であり、N2−N1がそのトレイ3の交換時期が到来するまでに使用可能な回数の予測値である。
図11のフローチャートに戻ると、ステップS11−3では以上の原理による交換時期予測(交換時期到来までの使用可能な回数の予測値の計算)が実行される。次に、ステップS11−2において読み取った最新の厚さデータを第一の閾値TH1と比較する(ステップS11−4)。ステップS11−4において最新の厚さデータが第一の閾値TH1以上の場合には、消耗状態判定部51はそのトレイ3は十分な厚さを有しており使用に差し支えがない「使用可」の状態であると判断し、「使用可」の消耗状態とステップS11−3で求めた交換時期予測とをそのトレイ3の識別情報と関連付けてトレイ情報記憶部52に記憶する。一方、最新の厚さデータが第一の閾値TH1以上の場合には、最新の厚さデータはさらに第二の閾値TH2と比較される(ステップS11−6)。
ステップS11−6において最新の厚さデータが第二の閾値TH2以上の場合(第一の閾値TH1未満で第二の閾値TH2以上の場合)には、消耗状態判定部51はそのトレイ3の厚みは使用に差し支えのない量があるが使用に使用をきたす厚さまでの残りがわずかである「交換準備」の状態であると判断し、「交換準備」の消耗状態とステップS11−3で求めた交換時期予測とをそのトレイ3の識別情報と関連付けてトレイ情報記憶部52に記憶する(ステップS11−7)。図12BのデータD1で示すように、厚さデータが1回でも第一の閾値TH1未満第二の閾値TH2以上となれば、それ以降の厚さデータに仮に第一の閾値TH1以上のものがあって、「交換準備」の状態が維持される。
一方、ステップS11−6において最新の厚さデータが第二の閾値TH2未満の場合には、消耗状態判定部51はそのトレイ3の厚さは使用に差し支えがある程度まで減少している「交換奨励」の状態であると判断し、「交換奨励」の消耗状態をそのトレイ3の識別情報と関連付けてトレイ情報記憶部52に記憶する(ステップS11−8)。図12BのデータD2で示すように、厚さデータが1回でも第二の閾値TH2未満となれば、それ以降の厚さデータに仮に第二の閾値TH2以上のものがあっても、「交換奨励」の状態が維持される。
制御部40のトレイ情報記憶部52には、前述のようにトレイ3の消耗状態、すなわち「使用可」、「交換準備」、「交換奨励」のいずれであるかと、交換時期予測とが識別情報に関連付けて記憶されている。交換等により新品のトレイ3の使用を開始する場合には、その新品のトレイ3の識別情報を「使用可」の消耗状態と共にトレイ情報記憶部52に登録する。図11を参照して説明した交換時期予測と消耗状態の判断を実行するために、制御部40のトレイ厚さデータ記憶部50には、最新の厚さデータだけでなく、例えば直近の10〜数10個程度の過去の厚さデータがトレイ3の識別情報と関連付けて記憶されている。
トレイ情報表示処理部53は消耗状態判定部51で判断されてトレイ情報記憶部52に記憶されたトレイ3に関する情報(消耗状態と交換時期予測)を、例えば操作・入力部43からされる指令に応じて表示部42に表示する処理を行う。消耗状態、すなわち「使用可」、「交換準備」、「交換奨励」のいずれであるかについては、色分け、点滅等で作業者が分かりやすいように表示部42に表示される。また、表示部42は視覚的な表示に加え、又は視覚的な表示に変えて音声でトレイ情報を表示してもよい。
消耗状態判定部51は、トレイ3の厚さの減少に応じてトレイ3の消耗状態を3段階、すなちわ「使用可」、「交換準備」、「交換奨励」のいずれであるかで判断し、トレイ情報表示処理部53は、それらを表示部42に表示させるので、トレイ3が使用寿命にどの程度近付いているかをドライエッチング装置1を操作する作業者に確実に知らせ、使用寿命に近付いたトレイ3新品への交換を促すことができる。
また、消耗状態判定部51は交換が必要な厚さ(第二の閾値TH2)に減少するまでの使用回数である交換時期予測を求め、この交換時期予測をトレイ情報表示処理部53が表示部42に表示させるので、トレイ3が使用寿命にどの程度近付いているかをドライエッチング装置1を操作する作業者により確実に知らせ、トレイ3の消耗状態の管理をより確実に実行できる。
また、本実施形態のドライエッチング装置1は以下の点にも特徴がある。
まず、アラインメント部14においてセンタリング機構27で位置決めされたトレイ3の厚さを、高さ計測センサー37で自動的に計測してトレイ厚さ計測処理部が測定された高さからトレイ3の厚さを自動的に計測する。そして、この計測で得られた厚さデータに基づいて消耗状態判定部51がトレイの消耗状態(厚さの減少状態)を自動的に判断する。そのため、トレイの消耗状態を適切に管理できる。その結果、トレイ3の厚さの減少に起因する処理品質低下や生産トラブルを確実に防止でき、それらによる歩留まり低下を防止できる。
また、厚さデータ等をトレイ3の識別情報に関連付けている。具体的には、トレイ厚さデータ記憶部50には識別情報と関連付けて厚さ情報が記憶され、トレイ情報記憶部52には消耗状態と交換時期予測とが識別情報と関連付けて記憶されている。そのため、個別のトレイ3について消耗状態(厚さの減少状態)の変化を追跡つまり、個別のトレイの消耗状態についてのトレーサビリティを実現できる。その結果、消耗状態の管理を個別のトレイ毎に実行でき、トレイの厚さの減少に起因する処理品質低下や生産トラブルをより確実に防止できる。
さらに、トレイ3から読み取った識別情報を、トレイ情報記憶部52に予め登録されたトレイ識別情報で認証することで(図9のステップS9−6)、例えば純正品ではない非正規品のような意図されないトレイ3の使用を防止できる。
図13に示す本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理システム61は、複数のドライエッチング装置1A,1B,1C…と例えばサーバである管理装置62とを備える。個々のドライエッチング装置1A,1B,1C…と管理装置62は例えばLANを含む単独又は複数の通信ネットワーク63を介して接続されている。個々のドライエッチング装置1A,1B,1C…と管理装置62とは、通信ネットワーク63を経由した通信を行う通信処理部64,65をそれぞれ備えている。
本実施形態のプラズマ処理システム61では、トレイ厚さデータ記憶部50、消耗状態判定部51、及びトレイ情報記憶部52は個々のドライエッチング装置1A,1B,1C…には設けられておらず、ドライエッチング装置1A,1B,1C…間で共用されるトレイ厚さデータ記憶部50、消耗状態判定部51、及びトレイ情報記憶部52が管理装置62に設けられている。
管理装置62には、通信処理部65、トレイ厚さデータ記憶部50、消耗状態判定部51、及びトレイ情報記憶部52の他、トレイ情報表示処理部66、表示部67、及び操作・入力部68を備える。
本実施形態のプラズマ処理システム61では、複数のドライエッチング装置1A,1B,1C…間でトレイ3を共有しつつ、個々のトレイ3の消耗状態を管理できる。すなわち、個々のドライエッチング装置1A,1B,1C…で測定されたトレイ3の厚さは通信ネットワーク63を介して管理装置62に送られ、管理装置62のトレイ厚さデータ記憶部50にトレイ3の識別情報と関連付けて記憶される。消耗状態判定部51はトレイ厚さデータ記憶部50に記憶された厚さデータ(測定自体はいずれのドライエッチング装置1A,1B,1C…で実行されたかを問わない)を使用して、消耗状態の判断や交換時期予測を行い、その結果をトレイ情報記憶部52にトレイ3の識別情報に関連付けて記憶する(図10及び図11参照)。
管理装置62のトレイ情報記憶部52に記憶されたトレイ3に関する情報(消耗状態と交換時期予測)は、管理装置62のトレイ情報表示処理部66により表示部67されるだけない。個々のドライエッチング装置1A,1B,1C…が備えるトレイ情報表示処理部53は通信ネットワーク63を介して管理装置62のトレイ情報表示処理部66に対してトレイ情報記憶部52に記憶されたトレイ3に関する情報の送信を要求できる。管理装置62のトレイ情報表示処理部66は、要求に応じてトレイ情報記憶部52内のトレイ情報を通信ネットワーク63を介してドライエッチング装置1A,1B,1C…のトレイ情報表示処理部53に送る。そして、ドライエッチング装置1A,1B,1C…は受信したトレイ情報を表示部42に表示する。このように、いったん測定された厚さデータの処理は管理装置62が一括して行うが、それによって得られる個々のトレイ3に関する情報(消耗状態と交換時期予測)は個々のドライエッチング装置1A,1B,1C…においても表示できる。
第2実施形態のその他の構成及び作用は第1実施形態と同様であるので、同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本発明は実施形態に限定されず種々の変形が可能である。例えば、図14に示す本発明の変形例に係るドライエッチング装置1’のような構成も採用できる。
図14のドライエッチング装置1’は、トレイストック部13に隣接して設けられた移載部71を備える。また、このドライエッチング装置1’は、アラインメント部14(図1参照)を備えていない。移載部71からトレイストック部13に処理前の基板2を収容したトレイ3が供給され、これらのトレイ3は基板2の処理後にトレイストック部13から移載部71に戻される。移載部71内の移載室71aには移載ロボット72が収容されている。この移載ロボット72は、図14において矢印D1で概念的に示すように、トレイ3の基板収容孔4にドライエッチング前の基板2を収容する作業、つまりトレイ3へ基板2を移載する作業を実行する。また、移載ロボット72は、図14において矢印D2で概念的に示すように、ドライエッチング済みの基板2をトレイ3から移載する作業を実行する。また、移載ロボット72は、処理前の基板2を収容したトレイ3を移載部71からトレイストック部13に搬入する作業(図14の矢印E1)と、処理後の基板2を収容したトレイ3をトレイストック部13から移載部71に搬出する作業(図14の矢印E2)とを実行する。
第1及び第2実施形態では、アラインメント部14が実行するアラインメント処理によりトレイ3の水平方向の位置及び回転方向の位置の精度が確保されている。これに対し、この変形例では移載ロボット72が基板2のトレイ3への載置を行う時点で、トレイ3の水平方向の位置及び回転方向の位置の精度を確保する処理を実行している。これにより、アラインメント部14、つまりトレイストック部13からプラズマ処理部11の真空チャンバ16への搬送過程で、トレイ3のアラインメント処理を行う必要をなくしている。なお、この変形例とは別に、搬送部12の搬送機構15においてトレイ3の水平方向の位置及び回転方向の位置の精度を確保する処理を実行してもよい。この場合も、アラインメント部14をなくすことができる。要するに、本発明を適用する上で、第1及び第2実施形態におけるアラインメント部14のようなトレイ位置決め手段を備えることは、必須ではない。
高さ計測センサー37は、トレイ3の所定の箇所の高さを測定できる限り、移載部71の移載室71aを囲む壁部(例えば頂部壁)に配置されていてもよいし、移載ロボット72に装着されていてもよい。第1及び第2の実施形態と同様に高さ計測センサー37で計測された高さからトレイ3の厚さが算出される。