[第1実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る車両前部構造について図1〜図5を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印Wは車幅方向を示している。
図1には、本発明の第1の実施形態に係る車両前部構造12が適用された車両10の前部側が車幅方向中央部で切断された状態の側断面図にて示されている。なお、本実施形態では、車両10は、樹脂ボディ構造が適用された自動車とされている。樹脂ボディ構造を構成する樹脂材としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維を含有する繊維強化樹脂が適用される。
図1に示される車両10の下部は、アンダボディ14と、フロントサスペンションモジュール16と、フロントエネルギ吸収部材(以下、「フロントEA部材」という)18と、を含んで構成されている。
アンダボディ14は、平面視で略矩形状を成すフロア部20を備えると共に、フロア部20の前端から上向きに立設されたダッシュパネルとしてのダッシュパネル部22を備えている。フロア部20は、略水平面に沿って平坦な下壁20Aを有し、下壁20Aの車両上方側には、車幅方向の中央部で車両前後方向を長手方向として配置されたセンタ骨格形成部20Bが形成されている。また、ダッシュパネル部22は、立壁状とされてフロア部20の略全幅に亘る長さを有し、正面視では車幅方向を長手方向として配置された略矩形状を成している。ダッシュパネル部22は、車両前後方向に対向する前壁22A及び後壁22Bと、下壁20Aの前端部22Cに対向する上壁22Dとを有して構成されている。
フロントサスペンションモジュール16は、サスペンションメンバ16Aと、図示しない左右一対のフロントサスペンションとを含んで構成されている。サスペンションメンバ16Aは、車幅方向を長手方向として配置されて側断面視で閉断面構造とされており、ダッシュパネル部22に締結にて固定されている。
フロントEA部材18は、車幅方向を長手方向として配置された大型部品とされている。具体的には、フロントEA部材18は、サスペンションメンバ16Aの前面の車幅方向長さを有している。この実施形態におけるフロントEA部材18は、後向きに開口するボックス形状を成している。フロントEA部材18は、その後端から張り出されたフランジ18Fがサスペンションメンバ16Aに締結固定されている。また、フロントEA部材18の車両前方側には、フロントバンパ24が配置されている。
サスペンションメンバ16A及びフロントEA部材18の上方側には、ウインドシールドガラス26(フロントウインドシールドガラス)の下縁に沿ってカウル40が配置されている。なお、カウル40の車両後方側には、エアコンユニット28がインストルメントパネル30の内部に配置されている。
カウル40は、第一カウル部材としてのカウルアッパパネル42(「ガラス支持カウル」としても把握される要素である。)と、カウルアッパパネル42の車両下方側に配置される第二カウル部材としてのカウルロアパネル46(「補強カウル」としても把握される要素である。)と、を含んで構成されている。
カウルアッパパネル42の車両前後方向の後端部に設けられた後端フランジ部42Bは、カウルロアパネル46の車両前後方向の後端部に設けられた後端フランジ部46Aと共に、ダッシュパネル部22の上壁22Dに結合されている。また、カウルアッパパネル42における後端フランジ部42Bの後端からは車両下方側へ屈曲された端末部42Aが延設されており、この端末部42Aは、ダッシュパネル部22の後壁22Bの上端に結合されている。
また、後端フランジ部42Bの前端からは車両上方へ向けて車両前方側に若干傾斜する方向へ屈曲された立壁部42Cが設けられている。また、立壁部42Cの上端からは略車両前方側へ屈曲された上壁部42Dが設けられている。この上壁部42Dは、インストルメントパネル30の頂壁部30Aの前部に対して下方側に配置されている。上壁部42Dの下面側にはフードヒンジ32の支持ブラケット32Aが固定されている。フードヒンジ32は、ヒンジアーム32Bを備え、ヒンジアーム32Bの一端部がフード34に固定されると共に、ヒンジアーム32Bの他端部と支持ブラケット32Aとがヒンジピン32Cによって相対回転可能に連結されている。ヒンジピン32Cの軸線方向は車幅方向とされており、ヒンジアーム32Bは、カウル40の内部空間を回転移動可能となっている。なお、図1では、ヒンジアーム32Bの回転移動状態、換言すれば、フード34が開けられた状態(図5参照)を二点鎖線で示している。
カウルアッパパネル42は、上壁部42Dよりも車両前方側の前端部(後述するガラス支持部42Gを含む範囲)が他の部位に比べて補強された補強部としてのカウル補強部44となっている。図2及び図3に示されるように、カウル補強部44は、ウインドシールドガラス26(図1参照)の重さで変形しないように、凹凸により補強され、曲げ変形に対する断面係数が高められており、車幅方向に延在している。なお、本実施形態では、上壁部42D及びカウル補強部44に対して車幅方向外側には図示しないフェンダを支持するためのフェンダ支持部42Zが一体的に設けられている。
図1に示されるように、カウル補強部44は、上壁部42Dの前端から略車両上方側に屈曲された立上部42Eを備えている。この立上部42Eは、インストルメントパネル30の頂壁部30Aの前端に対して車両前方側に隣接した位置に配置されており、その上端の高さ位置がインストルメントパネル30の頂壁部30Aの前端の高さ位置にほぼ揃えられている。
また、立上部42Eの上端からは、車両前方側へ向けて若干車両下方側に傾斜した方向へ屈曲された意匠部42Fが延設されている。意匠部42Fは、インストルメントパネル30の頂壁部30Aにおける前端部の車両前方側に配置されており、その上面はインストルメントパネル30の頂壁部30Aの延長位置で内装意匠面を構成している。
意匠部42Fの前端からは、車両前下方側に傾斜した方向へさらに屈曲されたガラス支持部42Gが延設されている。ガラス支持部42Gは、ウインドシールドガラス26の下端部26Aに対する取付面(ウインドシールドガラス26の下端側の支持面)を構成している。すなわち、ガラス支持部42Gの上面には、ウインドシールドガラス26の下端部26Aの裏面がシール部材36を介して接着によって取り付けられており、これにより、ガラス支持部42Gがウインドシールドガラス26の下端部26Aを支持している。なお、ガラス支持部42Gの車両前方側には、閉止状態のフード34の後端部が配置される。
一方、カウルロアパネル46は、後端フランジ部46Aの前端から車両下方側へ屈曲された後壁部46Bを備えると共に、後壁部46Bの下端から車両前方側へ屈曲された基部としての下壁部46Cを備えている。図2及び図3に示されるように、下壁部46Cは、基板状とされて車幅方向に延在している。
図1に示されるように、下壁部46Cには、フロントEA部材18の上面へ接地される凹部48が複数形成されている。これらの凹部48内には、締結具(図中では締結軸線を一点鎖線Aで示す)が配置されており、下壁部46Cは前記締結具によりフロントEA部材18に固定されている。また、下壁部46Cの前端部46Dにはフロントバンパ24の上端フランジ部24Aが図示しない締結具等により固定されている。
図2及び図3に示されるように、カウルロアパネル46における下壁部46Cの車幅方向両端部側の部位からは、車両上方側に向けて(カウルアッパパネル42におけるカウル補強部44の車幅方向両端部側を含む部位に向けて)左右一対の連結部としての縦壁部50が延設されている。左右一対の縦壁部50は、車幅方向に所定の間隔をあけて配置されている。図3に示されるように、縦壁部50の上端フランジ部50Aの上面には、カウルアッパパネル42における車幅方向の両サイド側の部位の下面が重ね合わせられて接着剤等により結合(固定)されている。このため、カウルアッパパネル42のカウル補強部44及び上壁部42Dは、一対の縦壁部50の間に掛け渡されて(橋渡しされて)いる。
すなわち、縦壁部50は、カウルアッパパネル42のカウル補強部44及び上壁部42Dと、カウルロアパネル46の下壁部46Cと、を車両上下方向に連結している。また、一対の縦壁部50は、ウインドシールドガラス26(図1参照)の重さで変形しない所定値以上の剛性を備えている。以上の構成により、カウルアッパパネル42と、カウルロアパネル46とは、荷室空間52を形成している。
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
図1に示されるように、本実施形態の車両前部構造12では、ウインドシールドガラス26の下端部26Aは、カウルアッパパネル42の前端部側でガラス支持部42Gによって支持されている。また、カウルアッパパネル42は、その後端部側の後端フランジ部42B及び端末部42Aがダッシュパネル部22に結合されて支持されている。
ここで、カウルアッパパネル42は、ガラス支持部42Gを含む範囲が他の部位に比べて補強されたカウル補強部44とされて車幅方向に延在している。これに対して、図3に示されるように、カウルアッパパネル42の車両下方側に配置されたカウルロアパネル46は、車幅方向に延在する下壁部46Cを備えると共に、その車幅方向両端部から立設された縦壁部50が、カウル補強部44及び上壁部42Dの車幅方向両端部側と、下壁部46Cとを車両上下方向に連結している。このため、図1に示されるウインドシールドガラス26の下端部26Aからガラス支持部42Gに作用する荷重(ウインドシールドガラス26の自重)は、カウルアッパパネル42にて他の部位に比べて補強されたカウル補強部44で支持され、このカウル補強部44から左右一対の縦壁部50に安定的に支持させることができる。よって、ガラス支持剛性が高められる。
以上説明したように、本実施形態に係る車両前部構造によれば、図1に示されるカウル40によるガラス支持剛性を向上させることができる。
また、本実施形態の車両前部構造12では、カウルアッパパネル42とカウルロアパネル46とによって荷室空間52が形成されているので、例えば、支柱等で空間が分断されることがなく、カウル40の内部空間が有効利用できる。
また、図4(B)に示されるように、カウルアッパパネル42におけるカウル補強部44は、ガラス支持部42Gの車両後方側に設けられた意匠部42Fがインストルメントパネル30における頂壁部30Aの前端部の車両前方側に配置されている。このため、例えば、図4(A)に示されるようなカウル前端部Xがインストルメントパネル30における頂壁部30Aの前端部と車両上下方向に重なる対比構造に比べて、前方視界の確保とカウル空間の拡大との両立に有利となっている。
補足すると、図4(A)で乗員の視界下端は符号VA、図4(B)で乗員の視界下端は符号VBで示されている。図4(A)及び図4(B)に示されるように、乗員の視界下端の高さ位置が同じ場合には、図4(B)に示されるように、本実施形態の構造のほうがカウル空間を拡大できることが分かる。また、図示を省略するが、図4(A)及び図4(B)と同様の基本構成でカウル空間を同じ広さに設定した場合には、図4(B)に示される本実施形態の構造のほうが乗員の視界下端の高さ位置を下げること(換言すれば、前方視界を広げること)ができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両前部構造について、図6を用いて説明する。図6には、本発明の第2の実施形態に係る車両前部構造のカウル60が斜視図にて示されている。この図に示されるように、カウル60は、縦壁部50(図3参照)に代えて、連結部としての縦壁部70を備える点で、第1の実施形態におけるカウル40(図3参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
図6に示されるように、カウル60は、第一カウル部材としてのカウルアッパパネル62(「ガラス支持カウル」としても把握される要素である。)と、カウルアッパパネル62の車両下方側に配置される第二カウル部材としてのカウルロアパネル66(「補強カウル」としても把握される要素である。)と、を含んで構成されている。
カウルロアパネル66は、下壁部46Cの車幅方向両端部側の部位から車両上方側に向けて(カウルアッパパネル62におけるカウル補強部44の車幅方向両端部側の部位に向けて)左右一対の縦壁構成部70Aが延設されている。縦壁構成部70Aの上端からはカウル外側へ水平に屈曲されたフランジ部66Aが延設されている。
これに対して、カウルアッパパネル62は、カウル補強部44及び上壁部42Dの両者の車幅方向両端部側の部位から車両下方側に向けて(カウルロアパネル66における下壁部46Cの車幅方向両端部側の部位に向けて)左右一対の縦壁構成部70Bが延設されている。縦壁構成部70Bの下端からはカウル外側へ水平に屈曲されたフランジ部62Bが延設されている。
カウルアッパパネル62のフランジ部62Bは、カウルロアパネル66のフランジ部66Aに重ね合わせられて接着剤等により結合されている。これにより、縦壁構成部70Aと縦壁構成部70Bとで縦壁部70が形成されている。左右一対の縦壁部70は、車幅方向に所定の間隔をあけて配置され、カウルアッパパネル62のカウル補強部44及び上壁部42Dと、カウルロアパネル66の下壁部46Cと、を車両上下方向に連結している。また、一対の縦壁部70は、ウインドシールドガラス26(図1参照)の重さで変形しない所定値以上の剛性を備えている。以上の構成により、カウルアッパパネル62と、カウルロアパネル66とは、荷室空間68を形成している
以上説明した本実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
[第2実施形態の変形例]
なお、第2の実施形態の変形例として、カウルは、例えば、カウルロアパネル66に縦壁構成部70A及びフランジ部66Aが形成されない構成であって、カウルアッパパネル62の縦壁構成部70Bが車両下方側に延長されると共にフランジ部62Bに代えてカウル内側に水平に屈曲されたフランジ部が形成されて前記フランジ部がカウルロアパネル66の下壁部46Cの上面に接合された構成でもよい。この構成では、縦壁構成部70Bが延長された構成部分が、連結部として縦壁部を構成することになる。そして、この縦壁部は、ウインドシールドガラス26(図1参照)の重さで変形しない所定値以上の剛性を備えると共に、カウルアッパパネル62のカウル補強部44及び上壁部42Dの車幅方向量端部と、カウルロアパネル66の下壁部46Cと、を車両上下方向に連結することになる。
[参考例]
また、本発明の実施形態ではなく、参考例としては、例えば、図7に示されるようなカウル構造、すなわち、カウルロアパネル(第二カウル部材)を備えずに、カウルアッパパネル72が縦壁部74を有する構造も可能である。なお、図7の構造において、第1の実施形態と同様の構成部については同一符号を付して説明を省略する。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る車両前部構造について、図8〜図10を用いて説明する。図8には、本発明の第3の実施形態に係る車両前部構造80が側断面図にて示され、図9には、車両前部構造80のカウル82が分解斜視図にて示され、図10には、カウル82が斜視図にて示されている。なお、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
図8に示されるように、カウル82は、第一カウル部材としてのカウルアッパパネル84(「ガラス支持カウル」としても把握される要素である。)と、カウルアッパパネル84の車両下方側に配置される第二カウル部材としてのカウルロアパネル88(「補強カウル」としても把握される要素である。)と、を含んで構成されている。
カウルアッパパネル84の車両前後方向の後端部に設けられた後端フランジ部84Bは、ダッシュパネル部22の上壁22Dに結合されている。なお、本実施形態のダッシュパネル部22の上壁22Dの高さ位置は、第1の実施形態における上壁22D(図1参照)の高さ位置よりも高い位置に設定されており、ウインドシールドガラス26の下端部26Aの高さ位置と概ね同じ高さ位置に設定されている。また、カウルアッパパネル84における後端フランジ部84Bの後端からは車両下方側へ屈曲された端末部84Aが延設されており、この端末部84Aは、ダッシュパネル部22の後壁22Bの上端に結合されている。
また、後端フランジ部84Bの前端からは略車両前方側へ延設された一般部84Cが設けられている。一般部84Cの下面側にはフードヒンジ32の支持ブラケット32Aが固定されている。
カウルアッパパネル84は、一般部84Cよりも車両前方側の前部(後述するガラス支持部84Dを含む範囲)が他の部位に比べて補強された補強部としてのカウル補強部86となっている。図9及び図10に示されるように、カウル補強部86は、ウインドシールドガラス26(図8参照)の重さで変形しないように、凹凸により補強され、曲げ変形に対する断面係数が高められており、車幅方向に延在している。なお、本実施形態では、カウルアッパパネル84の車幅方向の両サイド部に図示しないフェンダを支持するためのフェンダ支持部84Zが一体的に設けられている。
図8に示されるように、カウル補強部86は、一般部84Cの前端から車両前方側へ向けて車両下方側に傾斜する方向へ屈曲されてガラス支持部84Dが形成されている。ガラス支持部84Dは、ウインドシールドガラス26の下端部26Aに対する取付面(ウインドシールドガラス26の下端側の支持面)を構成している。すなわち、ガラス支持部84Dの上面には、ウインドシールドガラス26の下端部26Aの裏面がシール部材36を介して接着によって取り付けられており、これにより、ガラス支持部84Dがウインドシールドガラス26の下端部26Aを支持している。
ガラス支持部84Dの前端からは凹状の溝部84Eが形成されている。溝部84Eは、車両上方斜め前方側に開口しており、車幅方向に延在している(図9参照)。溝部84Eの前端からは車両前方側へ向けて車両下方側に傾斜する方向に屈曲された前端傾斜壁部84Fが連続して形成されている。この前端傾斜壁部84Fは、閉止状態のフード34の後端部の下方側に近接して配置されている。また、前端傾斜壁部84Fの前端からは略車両下方側に屈曲された垂下部84Gが形成されている。カウルアッパパネル84の前端の車両前後方向位置は、車両衝突試験用のバリア100の侵入が想定される車両前後方向位置Sよりも車両後方側の位置に設定されている。
一方、カウルロアパネル88は、後端フランジ部88Aがカウルアッパパネル84の一般部84Cの後端下面に接着剤によって結合(接着)されている。後端フランジ部88Aの前端からは車両下方側へ屈曲された後壁部88Bが形成されている。また、後壁部88Bの下端からは車両前方側へ屈曲された基部としての下壁部88Cが形成されている。図9及び図10に示されるように、下壁部88Cは、基板状とされて車幅方向に延在している。
図8に示されるように、下壁部88Cには、フロントEA部材18の上面へ接地される凹部90が形成されている。なお、本実施形態では、図9に示されるように、凹部90は、平面視円形状とされたものが車幅方向に沿って複数形成されているが、この凹部90に代えて、車幅方向に延在する溝状の凹部が形成されてもよい。
図8に示されるように、下壁部88Cに対して車両前方側に連続して設けられた前端フランジ部88D上にはフロントバンパ24の上端フランジ部24Aが重ね合わせられて締結具(ボルト92A及びナット92B)により締結固定されている。フロントバンパ24の上端フランジ部24Aがカウルロアパネル88の前端フランジ部88Dへ締結される締結部92の高さ位置は、車両衝突試験用のバリア100の上端の高さ位置よりも上方側に設定されている。なお、本実施形態では、フロントバンパ24の上端フランジ部24Aがカウルロアパネル88の前端フランジ部88Dへボルト締結されているが、この部分は、リベットによって結合してもよいし、接着剤により接着してもよい。
図9及び図10に示されるように、カウルロアパネル88における下壁部88Cの車幅方向両端部側の部位からは、車両上方側に向けて(カウルアッパパネル84におけるカウル補強部86の車幅方向両端部側を含む部位に向けて)左右一対の連結部としての縦壁部94が延設されている。左右一対の縦壁部94は、車幅方向に所定の間隔をあけて配置されている。縦壁部94の上端フランジ部94Aは、その上面が後端フランジ部88Aの上面と同じ高さ位置に設定されている。図10に示されるように、縦壁部94における上端フランジ部94Aの上面には、カウルアッパパネル84における車幅方向の両サイド側の部位の下面が重ね合わせられて接着剤により結合(接着)されている。なお、図9では、カウルアッパパネル84の下面において、カウルロアパネル88の上端フランジ部94A及び後端フランジ部88Aが接着される部分を二点鎖線84Xで示している。
図10に示されるように、縦壁部94は、カウルアッパパネル84におけるカウル補強部86側を含む一般部84Cと、カウルロアパネル88の下壁部88Cと、を車両上下方向に連結している。また、一対の縦壁部94は、ウインドシールドガラス26(図8参照)の重さで変形しない所定値以上の剛性を備えている。以上の構成により、カウルアッパパネル84と、カウルロアパネル88とは、荷室空間96を形成している。
なお、本実施形態では、図8に示されるフロントサスペンションモジュール16の車幅方向位置は、カウルロアパネル88の車幅方向位置よりも車幅方向外側に設定されており、そのようなフロントサスペンションモジュール16にフロントEA部材18が取り付けられている。
以上説明した第3の実施形態に係る車両前部構造80の構成によっても、前述した第1の実施形態と同様の作用によって、カウル82によるガラス支持剛性を向上させることができる。
なお、第3の実施形態に係る車両前部構造80では、前面衝突時にカウルアッパパネル84の破損を防止又は抑制することができる。以下、この点について補足説明する。
図8に示される車両前部構造80が適用された車両10Aが前面衝突した場合、バリア100からの荷重により、フロントバンパ24の締結部92は、車両後方斜め下方側に変位する(引き込まれる)。これに伴って、カウルロアパネル88が車両後方斜め下方側に変位しようと(引き込まれようと)すると、フロントEA部材18は破壊され(繊維強化樹脂材の特有の破壊モード)、カウルロアパネル88は車両後方斜め下方側に変位する。
カウルロアパネル88が車両後方斜め下方側に変位すると、カウルアッパパネル84とカウルロアパネル88との接着部には、剥離方向の荷重が作用する。一般に接着部はせん断方向の荷重に対してよりも剥離方向の荷重に対してのほうが剥がれ易く、カウルロアパネル88はカウルアッパパネル84から容易に引き剥がされる。
ここで、バリア100は、カウルアッパパネル84には直接接触しないので、カウルロアパネル88がカウルアッパパネル84から引き剥がされると、カウルアッパパネル84及びウインドシールドガラス26の破壊が防止され、乗員空間への影響が抑えられる。
一方、通常時において、荷室空間96内に荷物が置かれる場合には、カウルロアパネル88は、フロントEA部材18に接して支持されるので、カウルロアパネル88の剛性は十分に確保される。
ちなみに、以上補足説明したカウルアッパパネル84の破損を防止又は抑制することができる構成は、車両後部に適用することも可能である。
[実施形態の補足説明]
なお、上記第1〜第3の実施形態では、カウル補強部44、86が凹凸により補強されているが、第一カウル部材のガラス支持部を含む範囲の補強部は、例えば、厚板化やリブ形成等により他の部位に比べて補強されてもよい。
また、上記第1〜第3の実施形態では、連結部が縦壁部50、70、94とされているが、連結部は、例えば、縦壁部50、94、又は縦壁部70の縦壁構成部70A、70Bのいずれかの四辺外縁部に沿う枠状の枠状骨格部と、その枠状骨格部の対角線に沿って該対角線の全長に亘り延在し互いにX字状に交差する一対の格子状骨格部と、を備えたフレーム部等のような他の連結部であってもよい。
また、上記実施形態では、車両前部構造12、80が樹脂ボディ構造の自動車に適用されているが、車両前部構造は、金属製のボディ構造の自動車に適用されてもよい。
また、請求項1に記載の「前記第二カウル部材における前記基部の車幅方向両端部側の部位と、前記第一カウル部材における前記補強部の車幅方向両端部側の部位と、の少なくとも一方側から他方側に延設され、」における「一方側」は、上記第1、第3の実施形態に示すように、「第二カウル部材における基部の車幅方向両端部側の部位」の側である場合(この場合には他方側は「第一カウル部材における補強部の車幅方向両端部側の部位」の側)と、上記第2の実施形態の変形例に示すように、「第一カウル部材における補強部の車幅方向両端部側の部位」の側である場合(この場合には他方側は「第二カウル部材における基部の車幅方向両端部側の部位」の側)と、があり、また、上記第2の実施形態のように、「第二カウル部材における基部の車幅方向両端部側の部位」の側と、「第一カウル部材における補強部の車幅方向両端部側の部位」の側と、の両方からそれぞれの他方側に延設されてもよい。
また、請求項1に記載の「前記第二カウル部材における前記基部の車幅方向両端部側の部位」には、上記第1〜第3の実施形態のように、第二カウル部材における基部の車幅方向両端部が含まれる他、第二カウル部材における基部の車幅方向両端部の近傍部位が含まれる。
また、請求項1に記載の「前記第一カウル部材における前記補強部の車幅方向両端部側の部位」には、上記第1、第2の実施形態のように、第一カウル部材における補強部の車幅方向両端部が含まれる他、上記第3の実施形態に一例が示されるように、第一カウル部材における補強部の車幅方向両端部の近傍部位が含まれる。
また、請求項1に記載の「前記第二カウル部材における前記基部側と前記第一カウル部材における前記補強部側とを車両上下方向に連結する」における「補強部側」には、第1、第2の実施形態のように、補強部そのものの場合が含まれる他、第3の実施形態のように、第一カウル部材における補強部の近傍部位も含まれる。
また、請求項1に記載の「前記第二カウル部材における前記基部側と前記第一カウル部材における前記補強部側とを車両上下方向に連結する」における「基部側」には、第1〜第3の実施形態のように、基部そのものの場合が含まれる他、第二カウル部材における基部の近傍部位も含まれる。
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。