JP5626025B2 - 溶接部の遅れ破壊特性並びに静的強度特性に優れた自動車用構造部材、および、その製造方法 - Google Patents
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Description
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[2] 前記高強度鋼板の板厚が0.6〜6.0mmの範囲であることを特徴とする、[1]に記載の溶接部の遅れ破壊特性並びに静的強度特性に優れた自動車用構造部材。
前記溶接ナットまたは溶接ボルトとして、下面側が前記高強度鋼板との接合面とされたフランジ部を有するとともに、前記接合面に略半球状のプロジェクション部が設けられており、且つ、前記フランジ部の縦断面において、前記プロジェクション部の略半球状の円弧と前記接合面とが交差してなす半円の弦上の中心をCとするとともに、前記プロジェクション部の半径をR(mm)としたとき、前記中心Cから3Rの距離の範囲内に凹部を有するものを用い、さらに、前記凹部が、前記接合面と反対側の上面において、前記プロジェクション部に対応する位置で概略一致するように局所的に設けられており、且つ、前記凹部の合計体積が前記プロジェクション部の合計体積の0.7〜1.3倍の範囲であることを特徴とする、溶接部の遅れ破壊特性並びに静的強度特性に優れた自動車用構造部材の製造方法。
[4] 前記高強度鋼板の板厚を0.6〜6.0mmの範囲とすることを特徴とする、[3]に記載の溶接部の遅れ破壊特性並びに静的強度特性に優れた自動車用構造部材の製造方法。
これにより、プロジェクション溶接前の母材強度が1100MPa以上である高強度鋼板を用いた場合であっても、高強度鋼板と溶接ナットまたは溶接ボルトとの溶接部の強度特性を確保でき、優れた遅れ破壊特性と高い静的強度を両立することが可能となる。
以下に、本発明に係る溶接部の遅れ破壊特性並びに静的強度特性に優れた自動車用構造部材(以下、単に自動車用構造部材と略称することがある)の第1の実施形態について詳述する。
本発明において説明するプロジェクション溶接とは、被接合物の接合箇所に大電流を流し、この接合箇所を抵抗発熱によって加熱しながら圧力を加えて接合を行う、いわゆる抵抗溶接法の一種である。具体的には、図2(a)〜(c)に示す例のように、溶接ナット2の、高強度鋼板1と接合される接合面2aに突起状のプロジェクション部21を設け、このプロジェクション部に電流を集中して流すことで、加熱すると同時に加圧を行って接合する方法である。また、プロジェクション溶接は、重ね合わせた被接合物を電極の先端で挟持し、通電と同時に電極で加圧することで接合を行う、いわゆるスポット溶接法の装置を用い、電極を変更して行うことができる方法である。
図1に例示する本実施形態の自動車用構造部材50は、高強度鋼板1とプロジェクション溶接される溶接ナット(ウェルドナット)2として、図2(a)〜(c)に示すような、接合面2aに略半球状のプロジェクション部21が備えられたものを採用している。また、図1においては、高強度鋼板1と上記構成の溶接ナット2とがプロジェクション溶接されてなる、自動車部品等の分野において適用可能な自動車用構造部材50を例示している。
また、本発明で用いる溶接ナット2の強度レベルとしても、特に制限されるものではなく、一般的な強度レベル、例えば、5T(490MPa相当)や、8T(785MPa相当)のものを好適に用いることができる。
またさらに、溶接ナット2は、ビッカース硬度Hvが320以下の材質からなることが好ましい。
また、凹部の深さがフランジ部の厚み寸法の半分超だと、変形したプロジェクション部が凹部内に流入しきれないため、フランジ部の実質的な断面積が減少し、上記同様、押し込み荷重に対する強度が低下するおそれがある。
以下に、本発明における被溶接物である高強度鋼板1の鋼板特性について詳しく説明する。
本発明で用いられる高強度鋼板の成分組成としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下に説明するような組成とされた一般的な高強度鋼板を採用することができる。
Cは、鋼の強度を確保するために必要な元素であり、その下限を0.01%とした。また、Cは、広い冷却速度の条件範囲で焼き入れ性を確保する上で必須の成分であるため、0.05%以上で添加することがより好ましい。一方、Cを過剰に添加すると溶接性が低下する場合があることから、その上限を0.5%とした。また、C含有量の上限は、溶接性とのバランスを考慮し、0.3%とすることがより好ましい。
Siは、鋼の強度確保や焼き入れ性確保のために、その含有量を0.01%以上とした。しかしながら、Siの過剰な添加は鋼板のコスト向上をもたらすことから、その上限を1.5%に制限した。なお、鋼板の表面に溶融亜鉛を施す場合、Siはめっき性を劣化させることから、その上限を0.2%に制限することが好ましい。
Mnは、鋼の強化効果や焼入れ性の向上効果が発現する最低添加量として、その下限を0.1%とする必要がある。一方、Mnの過剰な添加は、伸びに悪影響を及ぼすため、その上限を4%とした。
Crの添加量の加減を0.01%としたのは、0.01%以上の添加で強度向上の効果や焼入れ性の向上効果が発現するためである。一方、Crの添加量の上限を2%としたのは、これを超える量でCrを添加すると、加工性・延性に悪影響を及ぼすためである。
Bは、0.0001%以上の添加で焼入れ性の確保に有効であるものの、その添加量が0.01質量%を超えると、必要以上に鋼板強度が上昇して加工性が低下することから、その上限を0.01%とした。
Tiは、鋼中で窒化物を形成することで、鋼中のBが窒化物を形成してBによる焼入れ性向上効果が低下するのを防止することができる。このような効果が発現するのは、Tを0.01%以上で添加した場合であるため、その下限を0.01%とした。一方、Tiを添加し過ぎると延性劣化をもたらすことから、その上限を0.3%とした。
Alは、低Siの組成とする場合に、脱酸を目的として添加するものであり、その下限を0.003%とした。一方、Alの過剰な添加は、溶接性や溶融亜鉛めっき性を劣化させることから、その添加量の上限を1.5%とした。
Nbは、微細な炭化物、窒化物又は炭窒化物を形成して、鋼板の強化に極めて有効であることから、必要に応じて0.01%以上を添加する。一方、Nbの過剰な添加は延性劣化をもたらすため、その上限を0.05%とした。
Vは、少量の添加で焼入れ性を向上させる作用を有する元素であり、このような効果が発現する下限は0.001%である。一方、Vを過剰に添加すると溶接性が低下するため、その添加量を0.10%以下に制限した。
Moは、0.05%以上の添加で鋼の強化効果や焼入れ性の向上効果が現れるため、これを下限とした。一方、Moの過剰な添加は延性劣化を伴うため、その添加量の上限を0.5%とした。
本実施形態においては、鋼板表面にめっき処理を施した場合、めっきの濡れ性を劣化させるSi系の内部粒界酸化相生成を抑制することを目的として、Ca、Zr、REM(希土類元素:原子番号57〜71)の内の1種又は2種以上を添加することができる。これにより、本実施形態では、鋼板中において、Si系の酸化物のような粒界酸化物が形成されるのではなく、比較的微細な酸化物を分散して形成させることができる。本実施形態においてCa、Zr、REMを添加する場合、これらの内の1種又は2種以上の元素を、併せて0.0005%以上添加することにより、上記効果が得られる。一方、これらの元素を過剰に添加することは、鋳造性や熱間加工性等の製造性、及び、鋼板製品の延性を低下させるため、その上限を0.01%に制限した。
本発明の自動車用構造部材50においては、プロジェクション溶接を行う前の母材強度、即ち、溶接前の高強度鋼板1の引張強さを1100MPa以上に規定する。
鋼板の強度は、プロジェクション溶接後の自動車用構造部材50の遅れ破壊特性や、静的強度に対して大きな影響を及ぼす。本発明においては、まず、鋼板(母材)として、引張強さが1000MPa以上とされた高強度鋼板1を用いることで、プロジェクション溶接で得られる自動車用構造部材50の静的強度を高めている。一方、母材の強度を高めた場合には、一般に、接合部近傍の溶接部において遅れ破壊特性が低下し、構造部材を自動車に組み込んで走行した際に加わる応力や腐食等が組み合わせられることにより、溶接部に遅れ破壊が発生することがある。
次に、本発明の自動車用構造部材50に用いられる高強度鋼板1の母材ミクロ組織について述べる。
自動車用構造部材を製造する際の熱間プレス工程においては、鋼板に焼き入れを施して高強度を達成するだけでなく、部品によっては、部分的に焼き入れを施さず、この部分を低強度・高延性とする必要がある。本発明者等は、上述のように焼き入れを施さない部分がある場合、即ち、母材まま、あるいは、組織変化の少ない熱処理を受けた部分がある場合に、この部分が高延性を発揮できる組織を見出した。具体的には、熱間プレス前の鋼のミクロ組織を、体積分率で50〜100%のフェライト相を含み、且つ、0〜50%のパーライトを含む組織とすることがより好ましい。ここで、フェライト相は、加工性を確保するためには、下限を体積分率で50%とすることが好ましい。一方、パーライトは強度確保に有効であるため、フェライトと共存させるものの、過多にすると延性の低下が著しくなるため、その上限を50%とすることが好ましい。
本発明において用いられる高強度鋼板1の板厚は、特に限定されず、自動車用構造部材の分野で用いられる一般的な板厚、例えば、0.6〜6.0mm程度の板厚の高強度鋼板を用いることができる。また、板厚の増加とともに溶接部での応力集中も増加するので、高強度鋼板1の板厚は上記範囲であることが好ましい。高強度鋼板1の板厚が上記範囲であれば、本発明の適用による遅れ破壊特性、並びに、静的強度特性を向上させる十分な効果が得られる。
本発明において用いられる高強度鋼板1は、表面処理を施さずに、冷間圧延後の状態で母材として使用できるものであるが、必要に応じて、鋼板表面に、溶融亜鉛めっき、又は、合金化溶融亜鉛めっき等を施しても良い。また、めっきの表層に無機系、有機系の皮膜、例えば、潤滑皮膜等が設けられていても良い。また、これらのめっきの目付量についても、特に限定されず、プロジェクション溶接の障害とならない範囲で、適宜決定すれば良い。
高強度鋼板1の表面に上述のようなめっき処理を施すことにより、鋼板の耐食性を確保することができるとともに、熱間プレス時の酸化を防止できる効果が得られる。
以下に、上述したような本発明に係る自動車用構造部材を製造する方法の一例について説明する。
本実施形態の自動車用構造部材50の製造方法は、溶接前の引張強さが1100MPa以上の高強度鋼板1にピアス孔11を形成し、該ピアス孔11の中心11aと溶接ナット2のねじ孔(ねじ部)22の中心22aとを概略一致させた状態で加圧しながら通電加熱を行うプロジェクション溶接により、高強度鋼板1と溶接ナット2とを接合する方法である。そして、溶接ナット2として、下面側が高強度鋼板1との接合面2aとされたフランジ部2Aを有するとともに、接合面2aに略半球状のプロジェクション部21が設けられており、且つ、フランジ部2Aの縦断面において、プロジェクション部21の略半球状の円弧と接合面2aとが交差してなす半円の弦21A上の中心をCとするとともに、プロジェクション部21の半径をR(mm)としたとき、円の中心Cから3Rの距離の範囲内に凹部23を有するものを用いる。さらに、溶接ナット2として、凹部23が、接合面2aにおけるプロジェクション部21の周囲にのみ局所的に設けられるとともに、凹部23の合計体積がプロジェクション部21の合計体積の0.7〜1.3倍の範囲であり、且つ、凹部23の深さ寸法t2が、前記フランジ部の厚み寸法t1の半分以下であるものを用いる方法を採用している。また、上述したように、本実施形態で用いる溶接ナット2は、凹部23が断面視略半円状の凹みとされ、フランジ部2Aの接合面2aにおけるプロジェクション部21の周囲にのみ局所的に設けられている。
また、高強度鋼板1の表面1aには、必要に応じて、予め、合金化溶融亜鉛めっき又は溶融亜鉛めっき等を、溶接の障害とならない程度の目付け量で施すことができる。またさらに、めっきの表層には、無機系、有機系の皮膜等を形成しておいても良い。
次に、ねじ孔22に位置決めピン85を挿入して位置合わせしながら、溶接ナット2を高強度鋼板1上にセットする。これにより、高強度鋼板1に形成されたピアス孔11の中心11aと、溶接ナット2のねじ孔22の中心22aとが概略一致した状態でセットされる。また、この際、溶接ナット2の接合面2aに設けられた略半球状のプロジェクション部21が高強度鋼板1の表面1aと接触するようにセットする。
このような概略手順により、図1に示すような、溶接ナット部55を有する自動車用構造部材50を製造することができる。
本発明に係る自動車用構造部材、および、その製造方法の第2の実施形態について、図5〜図8を参照しながら以下に説明する。なお、また、本実施形態では、上記第1の実施形態と共通する構成については同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
また、高強度鋼板1の表面1aには、第1の実施形態と同様、必要に応じて、予め、合金化溶融亜鉛めっきや溶融亜鉛めっき等を施すことができ、またさらに、めっきの表層に、無機系や有機系の皮膜等を形成しておくこともできる。
このような概略手順により、図5(a)〜(c)に示すような溶接ボルト12と、高強度鋼板1とが接合された自動車用構造部材50Aを製造することができる。
本実施例では、まず、下記表1に示すような組成成分を有する鋼板を準備するとともに、下記表2に示すようなプロジェクション部および凹部を有する各種の溶接ナットを準備した。そして以下に説明するような条件並びに手順により、高強度鋼板に溶接ナットをプロジェクション溶接して供試片を作製した後、各種評価試験を行った。
まず、下記表1の鋼種番号Aに示すような化学成分組成を有する鋼を転炉で溶製し、常法に従って連続鋳造でスラブとした。そして、これらのスラブを、加熱炉中で1140℃〜1250℃の温度で加熱し、810℃〜880℃の仕上げ温度で熱間圧延を行い、600℃〜660℃にて巻き取り、高強度熱延鋼板とした。さらに、酸洗後に冷間圧延、焼鈍(焼鈍温度:720℃)を施し、高強度冷延鋼板(板厚:1.0mm及び2.3mm)とした。その後、鋼板表面に溶融亜鉛めっき(目付け量:70g/m2)を施した。そして、この鋼板を用い、加熱炉にて950℃×5minの条件にて加熱を行うことで、ハット形状品の熱間プレスを実施し、部材強度1470MPaクラスの部材を採取した。この際に得られた部材は、幅100mm、長さ:300mm、高さ:60mmの断面ハット形状であった(特開2006−9116号公報を参照)。
本実施例では、溶接ナットとして、JIS B 1196に準拠し、接合面に略半球状のプロジェクション部を備えたものを使用した。より具体的には、JIS B 1196規定による1B形・M8×1に類似した、強度区分8Tの溶接ナット(3個のプロジェクション部の突出距離が1.5mm)を用いた。また、本実施例では、プロジェクション部に加え、さらに、下記表2に示すような凹部が、接合面あるいは接合面と反対の上面側に設けられた溶接ナットを用いた。
次に、上記手順で得られた高強度鋼板のサンプルおよび上記溶接ナットを用い、下記の条件でプロジェクション溶接を行ない、高強度鋼板に溶接ナットを溶接し、溶接後の遅れ破壊特性を調査するための供試材を作製した。本実施例においては、図3に示すようなプロジェクション溶接機80を用いて、以下に示す各条件でプロジェクション溶接を行ない、高強度鋼板1に溶接ナット2を接合した。
(1)溶接機:定置式60kVAエアー加圧型(ダイレクト通電方式:単相交流)
(2)電極:F型、φ25、Cu−Cr合金製
(3)冷却水流量:上下10L/min
(4)初期加圧時間:30サイクル/60Hz
(5)電極による加圧力:100kgf(0.98kN)
(6)溶接電流:10kA
(7)通電時間:3サイクル/60Hz(0.050sec)
(8)溶接後の電極保持時間:10サイクル/60Hz(0.17sec)
以上のような手順により、図1に示すように、高強度鋼板2と溶接ナット1とをプロジェクション溶接によって接合して自動車用構造部材の供試材を作製した。
上記手順で得られた、プロジェクション溶接後の供試材について、0.2Nの塩酸に100hrの時間で浸漬させることにより、遅れ破壊特性を評価した。この際、上記時間で浸漬した後、溶接部に割れが生じていない場合を「OK」とし、割れが生じた場合を「NG」として、結果を下記表2に示した。
表2に示す処理番号3、4、9、10は本発明例であり、また、処理番号1、2、5〜8、11、12は比較例である(備考欄を参照)。これらの内、処理番号1〜7は、プロジェクション部と同じ溶接面に凹部が設けられた溶接ナットを用いた例であり、また、処理番号8〜12は、プロジェクション部が設けられた接合面と反対の上面側に凹部が設けられた溶接ナットを用いた例である。
また、処理番号2の比較例では、凹部の合計体積がプロジェクション部の合計体積の0.5倍と本発明で規定する下限未満であったため、塩酸中における浸漬で割れが発生し、遅れ破壊特性が「NG」となった。
また、処理番号5の比較例では、凹部の合計体積がプロジェクション部の合計体積の1.5倍と本発明で規定する上限を超えているため、押込み剥離強度が5kN未満であり、静的強度特性が「NG」となった。
また、処理番号6の比較例では、フランジ部の厚みが2mmであるのに対して凹部の最大深さが1.2mmとなっており、深さの比が0.6と本発明で規定する上限を超えているため、押込み剥離強度が5kN未満であり、静的強度特性が「NG」となった。
また、処理番号7の比較例では、プロジェクション部の中心Cから凹部の最外部までの距離が5mmと、本発明で規定する上限を超えているため、塩酸中における浸漬で割れが発生し、遅れ破壊特性が「NG」となった。
また、処理番号11の比較例では、凹部の合計体積がプロジェクション部の合計体積の1.5倍と本発明で規定する上限を超えているため、押込み剥離強度が5kN未満であり、静的強度特性が「NG」となった。
また、処理番号12の比較例では、プロジェクション部の中心Cから凹部の最外部までの距離が6mmと、本発明で規定する上限を超えているため、塩酸中における浸漬で割れが発生し、遅れ破壊特性が「NG」となった。
本実施例では、まず、上記実施例1と同様、上記表1に示すような組成成分を有する鋼板を準備するとともに、上記表2に示すようなプロジェクション部および凹部を有する各種の溶接ボルトを準備した。そして以下に説明するような条件並びに手順により、高強度鋼板に溶接ナットをプロジェクション溶接して供試片を作製した後、実施例1と同様の方法で各種評価試験を行った。なお、以下の実施例2の説明においては、上記実施例1と共通する条件および手順については、その詳しい説明を省略する。
本実施例では、溶接ボルトとして、JIS B 1195に準拠し、接合面に略半球状のプロジェクション部を備えたものを使用した。より具体的には、JIS B 1195規定によるM8×1に類似した、強度区分8Tの溶接ボルト(3個のプロジェクション部の突出距離が1.5mm)を用いた。また、本実施例では、プロジェクション部に加え、さらに、上記表2に示すような凹部が接合面側に設けられた溶接ボルトを用いた。
次に、上記手順で得られた高強度鋼板のサンプルおよび上記溶接ボルトを用い、下記の条件でプロジェクション溶接を行ない、高強度鋼板に溶接ボルトを溶接し、溶接後の遅れ破壊特性を調査するための供試材を作製した。本実施例においては、図7(a)、(b)に示すようなプロジェクション溶接機90を用いて、以下に示す各条件でプロジェクション溶接を行ない、高強度鋼板1に溶接ボルト12を接合した。
(1)溶接機:定置式60kVAエアー加圧型(ダイレクト通電方式:単相交流)
(2)電極:F型、φ25、Cu−Cr合金製
(3)冷却水流量:上下10L/min
(4)初期加圧時間:30サイクル/60Hz
(5)電極による加圧力:100kgf(0.98kN)
(6)溶接電流:10kA
(7)通電時間:3サイクル/60Hz(0.050sec)
(8)溶接後の電極保持時間:10サイクル/60Hz(0.17sec)
以上のような手順により、図5に示すように、高強度鋼板1と溶接ボルト12とをプロジェクション溶接によって接合して自動車用構造部材の供試材を作製した。
上記手順で得られた、プロジェクション溶接後の供試材について、上記実施例1と同様の手順及び条件で遅れ破壊特性を評価し、溶接部に割れが生じていない場合を「OK」、割れが生じた場合を「NG」として、結果を上記表2に示した。
上記表2に示す処理番号14、15は本発明例であり、また、処理番号13、16は比較例である(備考欄を参照)。また、これら処理番号14〜16は、プロジェクション部と同じ溶接面に凹部が設けられた溶接ボルトを用いた例である。
また、処理番号16の比較例では、凹部の合計体積がプロジェクション部の合計体積の1.5倍と本発明で規定する上限を超えているため、押込み剥離強度が5kN未満であり、静的強度特性が「NG」となった。
1a…表面
11…ピアス孔、
11a…中心(ピアス孔)、
2…溶接ナット、
2A…フランジ部、
2a…接合面、
21…プロジェクション部、
21A…半円の弦(略半球状のプロジェクション部)、
22…ねじ孔(ねじ部)、
22a…中心(ねじ孔)、
23、23A…凹部、
12…溶接ボルト、
12A…フランジ部、
12B…ねじ部、
12a…接合面、
13…プロジェクション部、
13A…半円の弦(略半球状のプロジェクション部)、
14、14A…凹部、
50、50A…自動車用構造部材、
80、90…プロジェクション溶接機、
81、91…上部電極、
82、92…下部電極(固定電極)、
84…位置決めピン、
94…位置決め穴、
A、A1…接合部、
B、B1…溶接熱影響部、
C…半円の弦上の中心(略半球状のプロジェクション部)、
R…半径(略半球状のプロジェクション部)、
t1…フランジ部の厚み寸法、
t2…凹部の深さ寸法、
Claims (4)
- 溶接前の引張強さが1100MPa以上の高強度鋼板にピアス孔を設け、該ピアス孔の中心と溶接ナットまたは溶接ボルトのねじ部の中心とが概略一致した状態で加圧しながら通電加熱を行うプロジェクション溶接により、前記高強度鋼板と前記溶接ナットまたは溶接ボルトとが接合されることで得られる自動車用構造部材であって、
前記溶接ナットまたは溶接ボルトは、下面側が前記高強度鋼板との接合面とされたフランジ部を有するとともに、前記接合面に略半球状のプロジェクション部が設けられており、さらに、前記フランジ部の縦断面において、前記プロジェクション部の略半球状の円弧と前記接合面とが交差してなす半円の弦上の中心をCとするとともに、前記プロジェクション部の半径をR(mm)としたとき、前記中心Cから3Rの距離の範囲内に凹部を有しており、
前記凹部は、前記フランジ部の前記接合面と反対側の上面において、前記プロジェクション部に対応する位置で概略一致するように局所的に設けられており、且つ、前記凹部の合計体積が前記プロジェクション部の合計体積の0.7〜1.3倍の範囲であることを特徴とする、溶接部の遅れ破壊特性並びに静的強度特性に優れた自動車用構造部材。 - 前記高強度鋼板の板厚が0.6〜6.0mmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の溶接部の遅れ破壊特性並びに静的強度特性に優れた自動車用構造部材。
- 溶接前の引張強さが1100MPa以上の高強度鋼板にピアス孔を形成し、該ピアス孔の中心と溶接ナットまたは溶接ボルトのねじ部の中心とを概略一致させた状態で加圧しながら通電加熱を行うプロジェクション溶接により、前記高強度鋼板と前記溶接ナットまたは溶接ボルトとを接合する、自動車用構造部材の製造方法であって、
前記溶接ナットまたは溶接ボルトとして、下面側が前記高強度鋼板との接合面とされたフランジ部を有するとともに、前記接合面に略半球状のプロジェクション部が設けられており、且つ、前記フランジ部の縦断面において、前記プロジェクション部の略半球状の円弧と前記接合面とが交差してなす半円の弦上の中心をCとするとともに、前記プロジェクション部の半径をR(mm)としたとき、前記中心Cから3Rの距離の範囲内に凹部を有するものを用い、
さらに、前記凹部が、前記接合面と反対側の上面において、前記プロジェクション部に対応する位置で概略一致するように局所的に設けられており、且つ、前記凹部の合計体積が前記プロジェクション部の合計体積の0.7〜1.3倍の範囲であることを特徴とする、溶接部の遅れ破壊特性並びに静的強度特性に優れた自動車用構造部材の製造方法。 - 前記高強度鋼板の板厚を0.6〜6.0mmの範囲とすることを特徴とする、請求項3に記載の溶接部の遅れ破壊特性並びに静的強度特性に優れた自動車用構造部材の製造方法。
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