JP5008172B2 - 抵抗溶接用高張力鋼板及びその接合方法 - Google Patents
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そこで、従来の自動車用高張力鋼板においては、特にC含有量に上限を設けることによって抵抗溶接性を確保している(例えば、特許文献1参照)。
一方、遅れ破壊に関しては、C含有量を低く抑えていることから、急熱、急冷後でもそれほど高強度の組織とはならないために、さほど深刻な問題とはならず、上記引用文献1記載の熱延高強度鋼板においては、遅れ破壊に対する実質的な対策は何ら講じられていない。
Cは、鋼板の強度増加に最も有効な成分であって、本発明では、所望の強度を得るために0.15%以上、0.25%以下の範囲内で添加する必要があり、好ましくは0.18〜0.22%、より好ましくは0.19〜0.21%添加する。
すなわち、C含有量が0.15%に満たない場合には、所望の強度を確保することができなくなる一方、C含有量が0.25%を超えると抵抗溶接部の靭性劣化を招くことから、0.15〜0.25%の範囲に規定する。
Siは、脱酸及び強度増加に有効な元素であって、このような効果を得るには0.1%以上を添加することが必要である。
一方、Si含有量が1.0%を超えると、靭性劣化を起す場合があるため、本発明ではSi含有量を0.10〜1.0%の範囲に規定する。
Mnは、本発明における最も重要な成分であり、オーステナイト化温度を低下させオーステナイトの微細化に有効であると共に、焼入れ性及び焼戻軟化抵抗の向上に効果的な元素であって、本発明では、0.10以上、1.0%以下の範囲内で添加する必要があり、好ましくは0.1〜0.5%、より好ましくは0.1〜0.3%添加する。
すなわち、Mn含有量が0.1%未満では所望の効果が得られず、一方、1.0%を超えて過剰に添加すると、抵抗溶接部の靭性劣化を起す場合があるため、0.10〜1.0%の範囲に規定する。
Crは、焼入れ性向上に有効な元素であると共に、セメンタイト中に固溶して焼戻しによる軟化を遅滞させる作用が強い元素である。このような効果を得るためには、少なくとも0.5%、好ましくは1%以上を含有させることが必要となるが、Cr含有量が3.0%を超えて過剰に添加すると、その効果が飽和するばかりでなく、靭性が低下してしまうため、本発明では0.5〜3.0%の範囲に規定する。
Moは、本発明では重要な元素であって、セメンタイトを安定化させると共に、炭化物を形成して粒界に析出し、粒界強化に有効な成分である。しかし、Moの添加量が0.01%未満の場合には、合金炭化物を形成することができず、このような効果が認められない。一方、Moは高価な合金元素であるので、本発明では0.01〜2.0%の範囲に規定する。
Mn及びCrは、それぞれ上記の範囲内で添加されるが、この範囲内においてMn含有量をCr含有量よりも少なくすることが必要である。すなわち、この比が0.50以上となると、抵抗溶接部の靭性劣化を起すため好ましくない。
Niは、オーステナイト化温度を低下させ、オーステナイトの微細化に有効であると共に、耐食性の向上に有効な元素であるが、その含有量が0.1%未満では所望の効果が得られない一方、3.0%を越えて添加してもその効果が飽和する傾向がある。
したがって、Niは、とくに高価な元素でもあるため、本発明ではその含有量を0.1〜3.0%の範囲に規定する。
Cuは、組織の強化に有効であると共に、微細析出することによって水素脆性の抑制に寄与する元素であることから、0.01%以上を添加する。しかしながら、過剰な添加は加工性の劣化を招くことから、その含有量を本発明では0.01〜3.0%の範囲に規定する。
Alは、脱酸に有効な元素であるため、必要に応じて0.001%以上を添加する。一方、過剰な添加は介在物生成の原因となり、加工性の劣化を招くことから、本発明では、Alを添加するにしても、0.001〜0.1%の範囲に規定する。
Pは、粒界強度を低下させるため、極力取り除きたい元素であることから、その上限を0.02%とすることが望ましい。
Sも、Pと同様に、粒界強度を低下させるため、極力取り除きたい元素であり、その上限を0.01%とすることが望ましい。
V:0.001〜1.0%
Ti:0.001〜1.0%
Nb:0.001〜1.0%
Ta:0.01〜1.0%
B:0.001〜1.0%
これら元素は、いずれもMoと同様に、炭化物を形成して粒界に析出し、粒界を強化する機能を有する成分であることから、これら元素を単独で、又は2種以上を組合わせて、それぞれ上記範囲内で添加することができる。
なお、2種以上の元素を添加する場合、それらの合計量が過剰になると、介在物となり、靭性劣化を起こす傾向があるので、これら元素の合計量を2.0%以内に抑えることが望ましい。
上記応力−歪線図において、一様伸びを示したのち、破断に到るまでの応力低下度(SD)が180MPa以上の値を有するものは良好な靭延性を有していた。
このような亜鉛めっき鋼板は、例えば電気めっき法や溶融めっき法、溶射法などの常法によって製造することができ、めっき方法については特に限定はない。
このとき、鋼板の機械的特性は、JIS Z 2201に規定される5号試験片を用いて引張試験を行い、母材および溶融部、熱影響部の組織観察は、断面を研磨後、ナイタール溶液によりエッチングし、光学顕微鏡による100〜1000倍観察と共に、SEMによる1000〜5000倍観察をそれぞれ行った。
そこで、構造体の接点強度としては、CTSについて比較が必要である。しかしながら、TSS、CTSは荷重であるため、ナゲット面積(π・(ND/2)2、ND=ナゲット径)で割ることで、TSS’:引張せん断応力、CTS’:十字引張応力とし、継手強度を比較するために、TSS’及びCTS’の各CTS成分を足し合わせた値CTSSにて評価した。すなわち、TSS’、CTS’及びCTSSは、次の各式によって算出したものである。
引張せん断応力:TSS’=TSS/π・(ND/2)2
十字引張応力:CTS’=CTS/π・(ND/2)2
CTSS=CTS’+TSS’(sinθ)、θ=30°
この結果を同じく表1中に、軟化のないものを「○」、軟化が確認されたものを「×」として示した。
このとき、旧オーステナイト粒径は、JIS G 0551に準拠して測定した。
Claims (9)
- 質量比で、C:0.15〜0.25%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.10〜1.0%、P≦0.02、S≦0.01、Cr:0.5〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Ni:0.1〜3.0%、Cu:0.01〜3.0%を含有し、残部Fe及び不可避不純物から成り、1180MPa以上の引張強度を有すると共に、Mn及びCrの含有量が次式(1)を満足することを特徴とする抵抗溶接用高張力鋼板。
Mn/(Mn+Cr)<0.50 ・・・ (1) - 質量比で、C:0.15〜0.25%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.10〜1.0%、P≦0.02、S≦0.01、Cr:0.5〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Ni:0.1〜3.0%、Cu:0.01〜3.0%、Al:0.001〜0.1%を含有し、残部Fe及び不可避不純物から成り、1180MPa以上の引張強度を有すると共に、Mn及びCrの含有量が次式(1)を満足することを特徴とする抵抗溶接用高張力鋼板。
Mn/(Mn+Cr)<0.50 ・・・ (1) - 質量比で、C:0.15〜0.25%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.10〜1.0%、P≦0.02、S≦0.01、Cr:0.5〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Ni:0.1〜3.0%、Cu:0.01〜3.0%と共に、W:0.01〜1.5%、V:0.001〜1.0%、Ti:0.001〜1.0%、Nb:0.001〜1.0%、Ta:0.01〜1.0%及びB:0.001〜1.0%から成る群から選ばれた少なくとも1種を含有し、残部Fe及び不可避不純物から成り、1180MPa以上の引張強度を有すると共に、Mn及びCrの含有量が次式(1)を満足することを特徴とする抵抗溶接用高張力鋼板。
Mn/(Mn+Cr)<0.50 ・・・ (1) - 亜鉛めっきが施してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の抵抗溶接用高張力鋼板。
- 請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の抵抗溶接用高張力鋼板を抵抗溶接することを特徴とする接合方法。
- 抵抗溶接した後、冷却し、Ac3点〜Ac3点+100℃の温度域に再加熱して冷却することを特徴とする請求項5に記載の接合方法。
- 再加熱して冷却した後、150℃〜Ac1点の温度域で焼き戻しすることを特徴とする請求項5又は6に記載の接合方法。
- 請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の抵抗溶接用高張力鋼板から成ることを特徴とする高強度自動車用部材。
- 請求項5〜7のいずれか1つの項に記載の接合方法により接合されていることを特徴とする高強度自動車用部材。
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