JP7473861B1 - 抵抗スポット溶接方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1] 少なくとも1枚の高強度鋼板を含む2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組を、一対の溶接電極で狭持し、加圧しながら通電して接合する、抵抗スポット溶接方法であって、
前記高強度鋼板として、質量%で、
C:0.10~0.60%、
Si:0.1~2.0%、
Mn:1.5~4.0%、
P:0.10%以下、
S:0.005%以下、
N:0.001~0.010%、および
O:0.03%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成の鋼板を用い、
前記板組を電流値Iw(kA)で通電することにより抵抗スポット溶接部を形成する主通電工程と、
前記主通電工程の後に、式(1)に示す冷却時間tc(ms)の間、前記抵抗スポット溶接部を冷却する冷却過程と、
次いで、式(2)に示す電流値It(kA)で、式(3)に示す通電時間tt(ms)の間、前記抵抗スポット溶接部の通電を行う昇温過程と、を有する後熱処理工程と、
を備える、抵抗スポット溶接方法。
800<tc …(1)
1.05×Iw≦It≦1.80×Iw …(2)
100<tt≦300 …(3)
[2] 前記高強度鋼板の前記成分組成は、さらに質量%で、
Cu:0.005~1.0%、
Ni:1.0%以下、
Mo:0.005~1.0%、
Al:2.0%以下、
B:0.0005~0.005%、
Ca:0.005%以下、
Cr:1.0%以下、
Ti:0.003~0.20%、
V:0.005~0.50%、および
Nb:0.005~0.20%
のうちから選択される1種または2種以上を含有する、[1]に記載の抵抗スポット溶接方法。
[3] 前記高強度鋼板は、鋼板表面に亜鉛めっき層を有する、[1]または[2]に記載の抵抗スポット溶接方法。
[4] 前記主通電工程および前記後熱処理工程における加圧力が一定である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の抵抗スポット溶接方法。
本発明で用いる高強度鋼板の母材の成分組成の限定理由について説明する。なお、以下の説明において、成分組成の「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を指すものとする。
Cは鋼の強化に寄与する元素である。C含有量が0.10%未満では、鋼の強度が低くなり、引張強度が780MPa以上の鋼板を製作することは極めて困難である。一方、C含有量が0.60%を超えると、鋼板の強度は高くなるものの、溶接継手における溶融部の硬質なマルテンサイト量が過大となり、マイクロボイドが増加する。更にナゲットとその周辺のHAZが過度に硬化し、脆化も進むため、CTSを向上させることは困難である。そのため、C含有量は0.10~0.60%とする。C含有量は、好ましくは0.12%以上であり、好ましくは0.45%以下である。
Si含有量が0.1%以上であると、鋼の強化に有効に作用する。また、Siはフェライトフォーマー元素であることからナゲット端部のフェライトの生成に優位に働く。一方、Si含有量が2.0%を超えると、鋼は強化されるものの、靱性に悪影響を与えることがある。そのため、Si含有量は0.1~2.0%とする。Si含有量は、好ましくは0.2%以上であり、好ましくは1.8%以下である。
Mn含有量が1.5%未満であると、本発明のように長時間の冷却を行わずとも、高い継手強度を得ることができる。一方、Mn含有量が4.0%を超えると、抵抗スポット溶接部の脆化あるいは脆化に伴う割れが顕著に現れるため、継手強度を向上させることは困難である。そのため、Mn含有量は1.5~4.0%とする。Mn含有量は、好ましくは2.0%以上であり、好ましくは3.5%以下である。
Pは不可避的不純物であるが、P含有量が0.10%を超えると、抵抗スポット溶接部のナゲット端部に強偏析が現れるため、継手強度を向上させることは困難である。そのため、P含有量は0.10%以下とする。P含有量は、好ましくは0.05%以下であり、より好ましくは0.02%以下である。なお、P含有量の下限は特に限定されない。ただし、過度の低減はコストの増加を招くので、P含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
Sは、粒界に偏析して鋼を脆化させる元素である。さらに、Sは、硫化物と鋼板の局部変形能を低下させる。そのため、S含有量は0.005%以下とする。S含有量は、好ましくは0.004%以下とし、より好ましくは0.003%以下とする。なお、S含有量の下限は特に限定されない。ただし、過度の低減はコストの増加を招くので、S含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
Nは、鋼の耐時効性を劣化させる元素である。Nは不可避的に含まれる元素である。そのため、N含有量は0.001~0.010%とする。N含有量は、好ましくは0.008%以下とする。
O(酸素)は非金属介在物を生成することにより、鋼の清浄度、靭性を劣化させる元素である。O含有量は0.03%以下とする。O含有量は、0.02%以下とすることがより好ましい。また、O含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
Cu、Ni、Moは、鋼の強度向上に寄与することができる元素である。しかし、多量に添加すると靭性が劣化する。このため、これらの元素を含有する場合、それぞれ、Cu含有量は0.005~1.0%とし、Ni:1.0%以下とし、Mo:0.005~1.0%とすることが好ましい。Cu含有量は、より好ましくは0.8%以下とし、好ましくは0.006%以上とする。Ni含有量は、より好ましくは0.8%以下とし、好ましくは0.01%以上とする。Mo含有量は、より好ましくは0.8%以下とし、好ましくは0.006%以上とする。
Alは、オーステナイト細粒化のため組織制御をすることができる元素であるが、多量に添加すると靭性が劣化する。このため、Alを含有する場合、Al含有量は2.0%以下とすることが好ましい。Al含有量は、より好ましくは1.5%以下とする。Al含有量は、好ましくは0.01%以上とし、より好ましくは0.03%以上とする。
Bは、焼入れ性を改善して鋼を強化することができる元素である。このため、Bを含有する場合、B含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.0007%以上とする。しかし、Bを多量に添加しても、上記効果は飽和することから、B含有量は0.005%以下とする。B含有量は、より好ましくは0.0010%以下とする。
Caは、鋼の加工性向上に寄与することができる元素である。しかし、多量に添加すると靭性が劣化する。このため、Caを含有する場合、Ca含有量は0.005%以下とすることが好ましい。Ca含有量は、より好ましくは0.004%以下とし、好ましくは0.001%以上とする。
Crは、焼入れ性の向上により強度を向上させることができる元素である。しかし、Crは1.0%を超えて過剰に含有すると、HAZの靱性が劣化する恐れがある。このため、Crを含有する場合、Cr含有量は1.0%以下とすることが好ましい。Cr含有量は、より好ましくは0.8%以下とし、好ましくは0.01%以上とする。
Tiは、焼入れ性を改善して鋼を強化することができる元素である。しかし、多量に添加すると炭化物を形成し、その析出硬化によって靭性が著しく劣化する。このため、Tiを含有する場合、Ti含有量は0.003~0.20%とすることが好ましい。Ti含有量は、より好ましくは0.15%以下とし、より好ましくは0.004%以上とする。
Vは、析出硬化により組織制御をして鋼を強化することができる元素である。しかし、多量に添加するとHAZ靱性の劣化につながる。このため、Vを含有する場合、V含有量は0.005~0.50%とすることが好ましい。V含有量は、より好ましくは0.30%以下とし、より好ましくは0.006%以上とする。
Nbは、微細な炭窒化物を形成することで抵抗スポット溶接後のCTSおよび耐遅れ破壊特性を向上させる。その効果を得るためにはNbを0.005%以上含有させる。一方、多量にNbを添加すると、伸びが著しく低下するだけでなく、靭性を著しく損ねることから、Nb含有量は0.20%以下とする。このため、Nbを含有する場合、Nb含有量は0.005~0.20%とすることが好ましい。Nb含有量は、より好ましくは0.18%以下であり、さらに好ましくは0.15%以下であり、さらに一層好ましくは0.10%以下である。Nb含有量は、より好ましくは0.006%以上であり、さらに好ましくは0.007%以上とする。
本発明の高強度鋼板は、亜鉛めっき処理を施して、鋼板表面に亜鉛めっき層を有する鋼板(亜鉛めっき鋼板)であっても、上記の効果を得ることができる。亜鉛めっき層とは、亜鉛を主成分とするめっき層を指す。亜鉛を主成分とするめっき層には、例えば、溶融亜鉛めっき層、電気亜鉛めっき層、Zn-Alめっき層およびZn-Ni層等が含まれる。また、本発明の高強度鋼板は、上記の亜鉛めっき処理を施した後に合金化処理を施して、母材表面に合金化亜鉛めっき層を有する合金化亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)であってもよい。
主通電工程とは、板組を構成する鋼板1、2の鋼板重ね面7を溶融して必要サイズのナゲット3を形成する工程である(図1を参照)。主通電工程では、板組を電流値Iw(kA)で通電することにより抵抗スポット溶接部(ナゲット)を形成する。
後熱処理工程とは、主通電工程で形成された抵抗スポット溶接部における、ナゲット端部の外側を焼戻すための後熱処理の工程である。主通電工程後に行う後熱処理工程では、ナゲット端部に対して冷却過程および昇温過程をこの順に施す。ナゲット端部の外側の靭性を向上させる効果を得るためには、後熱処理工程における各過程の溶接条件を次のように制御することが重要である。
まず、ナゲット端部がマルテンサイト変態を生じる温度まで、ナゲット外側の温度を下げる冷却を行う(冷却過程)。この冷却過程では、後述の焼戻し効果を得るために、式(1)に示す冷却時間tc(ms)の間、無通電状態を保持することで、抵抗スポット溶接部を冷却する。
800<tc …(1)
冷却過程後、昇温過程を行う。昇温過程では、冷却過程によってマルテンサイト変態を生じる温度までナゲット端部を冷却した後、マルテンサイトとなった組織を焼戻すために、適切な温度域に昇温する通電(後通電)を行う。この「適切な温度域」とは、ナゲット端部の外側のみが焼戻されるための温度域を指す。
1.05×Iw≦It≦1.80×Iw …(2)
100<tt≦300 …(3)
CTSの評価は、十字引張試験に基づき行った。作製した抵抗スポット溶接継手を用いて、JISZ3137に規定の方法で十字引張試験を行い、CTS(十字引張強度)を測定した。測定値がJIS A級(3.4kN)以上であったものに対して記号「○」を付し、JIS A級未満であったものに対して記号「×」を付した。なお、本実施例では、記号「○」の場合を良好と評価し、記号「×」の場合を劣ると評価する。評価結果は表3に示した。
TSSの評価は、せん断引張試験に基づき行った。まず、作製した抵抗スポット溶接継手を用いて、JISZ3136に規定の方法で十字引張試験を行い、TSS(せん断引張強度)を測定した。そして、測定値がJIS A級以上であったものに対して記号「○」を付し、JIS A級未満であったものに対して記号「×」を付した。
異なる引張強度の鋼板を重ね合わせた板組(板組d、e、k、l)の場合には、基準値(JIS A級の値)が高い方を基準として判断した。
本実施例では、上述のCTSおよびTSSの評価を用いて、継手の評価を行った。表3中、CTSおよびTSSの各評価がいずれも「〇」の場合に、継手評価を「〇(合格)」とした。一方、CTSおよびTSSの各評価のうちいずれか1つが「×」の場合、あるいはCTSおよびTSSの両方の評価が「×」の場合に、継手評価を「×(不合格)」とした。
3 ナゲット
4、5 溶接電極
7 鋼板重ね面
Claims (5)
- 少なくとも1枚の高強度鋼板を含む2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組を、一対の溶接電極で狭持し、加圧しながら通電して接合する、抵抗スポット溶接方法であって、
前記高強度鋼板として、質量%で、
C:0.10~0.60%、
Si:0.1~2.0%、
Mn:1.5~4.0%、
P:0.10%以下、
S:0.005%以下、
N:0.001~0.010%、および
O:0.03%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成の鋼板を用い、
前記板組を電流値Iw(kA)で通電することにより抵抗スポット溶接部を形成する主通電工程と、
前記主通電工程の後に、式(1)に示す冷却時間tc(ms)の間、前記抵抗スポット溶接部を冷却する冷却過程と、
次いで、式(2)に示す電流値It(kA)で、式(3)に示す通電時間tt(ms)の間、前記抵抗スポット溶接部の通電を行う昇温過程と、を有する後熱処理工程と、
を備える、抵抗スポット溶接方法。
800<tc …(1)
1.05×Iw≦It≦1.80×Iw …(2)
100<tt≦300 …(3) - 前記高強度鋼板の前記成分組成は、さらに質量%で、
Cu:0.005~1.0%、
Ni:1.0%以下、
Mo:0.005~1.0%、
Al:2.0%以下、
B:0.0005~0.005%、
Ca:0.005%以下、
Cr:1.0%以下、
Ti:0.003~0.20%、
V:0.005~0.50%、および
Nb:0.005~0.20%
のうちから選択される1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の抵抗スポット溶接方法。 - 前記高強度鋼板は、鋼板表面に亜鉛めっき層を有する、請求項1または2に記載の抵抗スポット溶接方法。
- 前記主通電工程および前記後熱処理工程における加圧力が一定である、請求項1または2に記載の抵抗スポット溶接方法。
- 前記主通電工程および前記後熱処理工程における加圧力が一定である、請求項3に記載の抵抗スポット溶接方法。
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