JP7347716B1 - 抵抗スポット溶接継手および抵抗スポット溶接方法 - Google Patents

抵抗スポット溶接継手および抵抗スポット溶接方法 Download PDF

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Abstract

抵抗スポット溶接継手および抵抗スポット溶接方法を提供する。本発明は、少なくとも1枚の高強度鋼板を含む、2枚以上の鋼板が溶接された抵抗スポット溶接継手であって、高強度鋼板は特定の成分組成を有し、溶接部は、ナゲット径と熱影響部における軟化部の幅とが式(2)の関係を満足し、かつ、熱影響部の最軟化部の硬さXと高強度鋼板の母材の硬さとが式(3)の関係を満足し、かつ、熱影響部内における、粒径が100nm以下のNbC、TiCおよびVCの合計の平均個数密度が80個/μm2以上である。熱影響部における該軟化部の幅(mm)>ナゲット径(mm)×0.2 …(2)X(HV)<高強度鋼板の母材の硬さ(HV)×0.95 …(3)

Description

本発明は、重ね合わせた鋼板からなる抵抗スポット溶接継手および抵抗スポット溶接方法に関するものである。
近年、自動車の分野では、車体の軽量化による燃費向上および衝突時の車体安全性の向上のため、高強度鋼板を用いている。
しかし、鋼板の引張強度の高強度化に伴い、溶接に起因する残留応力や、溶接時および使用環境下で溶接部に侵入する水素の存在による、溶接部の耐遅れ破壊特性の低下に対する懸念が生じてきた。
このような溶接部の遅れ破壊を防止する方法として、特許文献1~3に記載の技術が挙げられる。
特許文献1には、本通電によりナゲットを形成した後、後通電を付与し、水素が拡散しやすい高温環境を維持することで、溶接時に侵入した水素を外部に排出し、遅れ破壊を防止する技術が開示されている。
また、特許文献2には、本通電によりナゲットの形成後、さらに加熱を目的とした後通電を行う2段通電によって、鋼板圧接部からナゲット端部の間を軟化させ、耐遅れ破壊特性を向上する技術が開示されている。
さらに、特許文献3には、本通電によりナゲットの形成後、後通電を付与するとともに、溶接電極の上昇と下降を交互に連続的に繰り返すように制御することにより引張残留応力を緩和させ、耐遅れ破壊特性を向上する技術が開示されている。
特開2019-72764号公報 国際公開第2014/171495号 特開2018-144098号公報
しかしながら、特許文献1の技術は、溶接時に溶接部に侵入する水素量を低減するものであり、使用環境において外部から侵入する水素を考慮していない。そのため、溶接継手の作製後の使用環境における遅れ破壊が発生しやすい。
また、特許文献2、3の技術は、ナゲット形成後の後通電による加熱を用いて鋼板圧接部の強化、残留応力の緩和を図る技術であり、遅れ破壊の主な要因である水素の影響を考慮していない。そのため、水素の集積による遅れ破壊の発生の恐れがある。
なお、これらの技術は、遅れ破壊の発生要因である水素のトラップサイトとして働くNb、Ti、Vからなる炭化物の影響については考慮していない。これらの元素からなる炭化物と遅れ破壊特性の関係を調べることで、より優れた抵抗スポット溶接継手を作製できる可能性がある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、溶接後の使用環境下で侵入する水素量を低減させ、使用環境下での溶接継手の遅れ破壊を抑制することが可能な、抵抗スポット溶接継手および抵抗スポット方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、少なくとも1枚の高強度鋼板を含む、2枚以上の鋼板を抵抗スポット溶接して得られる抵抗スポット溶接継手の遅れ破壊を抑制するために、遅れ破壊の要因である使用環境下で侵入する水素の挙動について調査し、以下のような知見を得た。
まず、抵抗スポット溶接部は、ナゲットの周辺に、ナゲット端部からの距離によって異なる相と組織を持つ熱影響部を有する。そのため、外部環境から抵抗スポット溶接部内へと水素が侵入する場合、抵抗スポット溶接部の主な破壊起点であるナゲット端部に侵入するために熱影響部を通過する必要がある。熱影響部を通過した水素は、溶接に起因する残留応力が集中されるナゲット端部に集積し、これにより遅れ破壊が発生する。そのため、熱影響部を通過しナゲットへ侵入する水素量を低減し、かつ、ナゲット端部に集積する水素量を低減することが、遅れ破壊の抑制に有効である。
そこで、本発明者らは、外部環境からナゲット端部に侵入する水素量を低減できる抵抗スポット溶接方法およびその方法で製造される溶接継手について検討した。
まず、抵抗スポット溶接部の熱影響部に高密度の炭化物を析出させることにより外部から侵入する水素を事前にトラップし、抵抗スポット溶接継手の耐遅れ破壊特性が向上することが分かった。加えて、溶接に用いる高強度鋼板の成分組成にNb、Ti、Vを含有させることで、熱影響部にNbC、TiCおよびVCを析出させ、これにより抵抗スポット溶接継手の強度が低下することなく、より短い後通電だけで耐遅れ破壊特性を向上させることが分かった。
また、抵抗スポット溶接部の熱影響部と高強度鋼板の母材との硬さの関係を、熱影響部の最軟化部の硬さX(HV)< 高強度鋼板の母材の硬さ(HV)×0.95にすることで、溶接による残留応力を緩和し、遅れ破壊を防止することが分かった。
上述の特性を有する抵抗スポット溶接継手は、ナゲットを形成する本通電後に特定の溶接条件で後通電を付与し、適切に熱影響部の焼戻しを行うことで、得られることが分かった。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1] 少なくとも1枚の高強度鋼板を含む、2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組が抵抗スポット溶接された溶接部を有する、抵抗スポット溶接継手であって、
前記高強度鋼板が、質量%で、
C:0.10~0.40%、
Si:0.10~2.50%、
Mn:1.0~5.0%、
P:0.020%以下、
S:0.010%未満、
Al:0.10%以下、および
N:0.010%以下
を含有し、さらに、
Nb:0.10%以下、
Ti:0.10%以下、および
V:0.20%以下
のうちから選択された1種または2種以上を含有し、かつ、Nb、TiおよびVが式(1)の関係を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
前記溶接部は、ナゲットと熱影響部を有し、
前記熱影響部における硬さが前記高強度鋼板の母材の硬さ以下となる領域を軟化部としたとき、ナゲット径と熱影響部における該軟化部の幅とが式(2)の関係を満足し、
かつ、前記熱影響部の最軟化部の硬さをXとしたとき、該最軟化部の硬さXと前記高強度鋼板の母材の硬さとが式(3)の関係を満足し、
かつ、前記熱影響部内における、粒径が100nm以下のNbC、TiCおよびVCの合計の平均個数密度が、80個/μm2以上である、抵抗スポット溶接継手。
([Nb]+[Ti]+[V]/5) ≧ 0.01% ……(1)
熱影響部における軟化部の幅(mm) > ナゲット径(mm)×0.2 ……(2)
X(HV) < 高強度鋼板の母材の硬さ(HV)×0.95 ……(3)
ここで、式(1)中の元素記号は、高強度鋼板における各元素の含有量(質量%)を表し、該元素が含有されていない場合には0とする。
[2] 前記成分組成は、Nb:0.08%以下、Ti:0.08%以下、およびV:0.16%以下のうちから選択された1種または2種以上を含有し、かつ、前記式(1)の下限値が0.04%である、[1]に記載の抵抗スポット溶接継手。
[3] 前記高強度鋼板は、前記成分組成に加えて、質量%で、
Mo:0.500%以下、
Cr:0.300%以下、
Ca:0.0200%以下、
Sb:0.200%以下、
B:0.0100%以下、
Cu:1.00%以下、および
Ni:0.50%以下
のうちから選択された1種または2種以上を含有する、[1]または[2]に記載の抵抗スポット溶接継手。
[4] 前記高強度鋼板は、金属めっき層を有する、[1]~[3]のいずれか1つに記載の抵抗スポット溶接継手。
[5] 前記高強度鋼板の引張強度が980MPa以上である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の抵抗スポット溶接継手。
[6] [1]~[5]のいずれか1つに記載の抵抗スポット溶接継手を製造する抵抗スポット溶接方法であって、
少なくとも1枚の前記高強度鋼板を含む2枚以上の鋼板を重ね合わせて板組とし、該板組を1対の溶接電極で挟持し、加圧しながら通電して前記鋼板を接合するに際し、
本通電工程と後通電工程からなる前記通電と、該本通電工程と該後通電工程との間に冷却工程を有し、
前記後通電工程では、加圧力F2を2.0~7.0kNとし、かつ、前記本通電工程の電流値I1に対して式(4)の関係を満足する電流値I2で、式(5)で表される通電時間t2の間、通電を行う、抵抗スポット溶接方法。
0.6×I1 < I2 < 1.0×I1 ……(4)
2100-8200×([Nb]+[Ti]+[V]/5)< t2 ……(5)
ここで、各式において、
1:本通電工程における電流値(kA)、
2:後通電工程における電流値(kA)、
2:後通電工程における通電時間(ms)、とする。
また、式(5)中の元素記号は、高強度鋼板における各元素の含有量(質量%)を表し、該元素が含有されていない場合には0とする。また、高強度鋼板が2種類以上である場合には、式(5)中の([Nb]+[Ti]+[V]/5)の値は、各高強度鋼板を用いて算出した値の平均値を使用する。
[7] 前記冷却工程では、500ms以上2000ms未満の間、無通電状態を保持する、[6]に記載の抵抗スポット溶接方法。
本発明によれば、少なくとも1枚の高強度鋼板を含む2枚以上の鋼板が抵抗スポット溶接により溶接された抵抗スポット溶接継手における、使用環境下で侵入する水素量を低減させ、該溶接継手の遅れ破壊を抑制することができるので、産業上格段の効果を奏する。
図1は、本発明の抵抗スポット溶接継手の抵抗スポット溶接部およびその周辺を模式的に示す断面図である。 図2は、図1に示す抵抗スポット溶接部およびその周辺における、ヴィッカース硬さとナゲット端部からの距離との関係を示すグラフである。 図3は、本発明の抵抗スポット溶接方法の一例を模式的に示す断面図である。 図4は、本発明の抵抗スポット溶接方法の通電パターンおよび加圧パターンの一例を示すグラフである。 図5(A)および図5(B)は、本発明の実施例における抵抗スポット溶接の試験片を示す図であり、図5(A)が平面図であり、図5(B)が側面図である。
以下、各図を参照して、本発明について説明する。なお、本発明はこの実施形態に限定されない。
〔抵抗スポット溶接継手〕
まず、図1を参照して、本発明の抵抗スポット溶接継手を説明する。図1には、一例として、本発明の抵抗スポット溶接継手(以下、「溶接継手」と称する場合もある)における、抵抗スポット溶接部(以下、「溶接部」と称する場合もある)およびその周辺の板厚方向断面図を示す。
本発明は、重ね合わせた2枚以上の鋼板が抵抗スポット溶接された溶接部を有する溶接継手である。重ね合わせる鋼板には、後述する引張強度が980MPa以上の鋼板(すなわち、高強度鋼板)を少なくとも1枚以上含むものとする。重ね合わせる鋼板の枚数の上限は特に規定しないが、4枚以下とすることが好ましい。なお、高強度鋼板は、後述するように、特定の成分組成を含有し、かつ、Nb、TiおよびVが式(1)の関係を満足するものとする。
図1に示す例は、2枚の鋼板を重ね合わせた板組が抵抗スポット溶接された溶接継手であり、下側に配置される鋼板1および/または上側に配置される鋼板2に高強度鋼板を適用する。なお、後述するように高強度鋼板が金属めっき層を有する場合もあるが、図1では金属めっき層の図示を省略している。鋼板1、2の鋼板合わせ面(以下、「重ね面」と称する)7には、以下に説明する溶接部が形成される。
[抵抗スポット溶接部]
本発明の溶接継手の溶接部について説明する。
図1に示すように、溶接継手の溶接部は、ナゲット3とその外周に形成される熱影響部(HAZ)6を有する。熱影響部6は、ナゲット3の端部からの距離によって異なる相と組織を持つ。図1に示すように、熱影響部6内には軟化部6aを有する。
本発明では、溶接部は、ナゲット径Dn(すなわち、ナゲット3の直径)(mm)と熱影響部6における軟化部6aの幅Dh(mm)が式(2)の関係を満足し、かつ、熱影響部6の最軟化部の硬さをX(HV)としたとき、該最軟化部の硬さXと高強度鋼板の母材の硬さ(HV)が式(3)の関係を満足し、かつ、熱影響部6内における、粒径が100nm以下のNbC、TiCおよびVCの合計の平均個数密度が80個/μm2以上となる。
熱影響部における軟化部の幅(mm)> ナゲット径(mm)×0.2 ……(2)
X(HV) < 高強度鋼板の母材の硬さ(HV)×0.95 ……(3)
なお、例えば重ね合わせる全ての鋼板に本発明の高強度鋼板を適用する場合には、全ての高強度鋼板において鋼板ごとに上記の式(2)および式(3)の関係を満たし、かつ、全ての高強度鋼板における上記のNbC、TiCおよびVCの平均個数密度の平均値が上記数値範囲となることが必要である。これにより、本発明の効果を得ることができる。
[ナゲット径Dnと熱影響部6における軟化部6aの幅Dhの関係]
図1に示すように、「ナゲット径Dn(mm)」とは、ナゲット3の外縁と重ね面7との交点をナゲット端部Eとするとき、2つのナゲット端部E―E間を結ぶ直線(すなわち、図1に示す直線Z)の長さを指す。「熱影響部6」とは、溶接部の断面をエッチングし判別できるナゲット3の周辺組織であり、溶融熱の影響を受けて焼き入れ及び焼き戻しされた、母材の組織とは異なる組織の領域を指す。「熱影響部6における軟化部6aの幅Dh(mm)」とは、直線Zの延長線と軟化部6aの境界(すなわち、軟化部6aの内周縁および外周縁)とが交差する2点(すなわち、図1に示す点a、点b)を結ぶ直線の長さを指す。
このナゲット径Dnと熱影響部6における軟化部6aの幅Dh(以下、「軟化部6aの幅Dh」と称する場合もある。)が式(2)の関係を満足するものとする。軟化部6aの幅Dhが、式(2)を満足するように形成されることで、外部環境から侵入する水素をより多くトラップできる。軟化部6aの幅Dh(mm)が、(ナゲット径Dn×0.2)(mm)以下の場合、ナゲット3へと侵入する水素をトラップできるトラップサイトの量が足りず、遅れ破壊の原因であるナゲット3へと進入する水素量を十分に低減できない。したがって、軟化部6aの幅Dhは、(ナゲット径Dn×0.2)(mm)超えとする。軟化部6aの幅Dhは、好ましくは(ナゲット径Dn×0.22)(mm)超えとし、より好ましくは(ナゲット径Dn×0.25)(mm)超えとし、さらに好ましくは(ナゲット径Dn×0.3)(mm)超えとする。
軟化部6aの幅Dhの上限は、特に規定しない。軟化部6aの幅Dhの確保のために後通電工程の通電時間が長くなる場合、過度な焼戻しにより熱影響部6の強度低下が懸念されるため、軟化部6aの幅Dhは(ナゲット径Dn×0.5)(mm)以下が好ましい。軟化部6aの幅Dhは、より好ましくは(ナゲット径Dn×0.48)(mm)以下とする。
なお、式(2)における「熱影響部6における軟化部6aの幅Dh」とは、図1に示すように、ナゲット3の両端に形成される軟化部6aのうち一方の軟化部6aの幅Dhを指す。
[熱影響部6の最軟化部の硬さXと高強度鋼板の母材の硬さの関係]
図2には、図1に示す四角枠で囲った溶接部およびその周辺の領域における、ナゲット端部Eからの距離とヴィッカース硬さとの関係を示す。図2のグラフは、横軸にナゲット端部Eを基準とした「ナゲット端部からの距離(mm)」を示し、縦軸に各測定位置における「ヴィッカース硬さ(HV)」を示す。横軸のマイナスの数字は、ナゲット端部Eからナゲット3の中心へと向かう距離を示し、プラスの数字はナゲット端部Eから母材鋼板へと向かう距離を示す。ヴィッカース硬さは、JISZ2244(2020年)に準拠して測定する。
具体的には、後述の実施例に記載の通り、ヴィッカース硬さは、圧子荷重300gfで15秒保持する条件とし、かつ、高強度鋼板の重ね面7から0.2mm上方の位置でかつ該重ね面7に平行な直線上を0.2mm間隔で計測する。測定領域は、ナゲット3の中心から高強度鋼板の母材方向に7.0mmまでの範囲とする。なお、計測は、本発明の高強度鋼板側の溶融部および母材を対象とする。
図2に示すように、「熱影響部6の軟化部6a」とは、熱影響部6内をJISZ2244(2020年)に準拠して測定したヴィッカース硬さのうち、高強度鋼板の母材の平均ヴィッカース硬さ以下となる領域を指すものとし、「最軟化部の硬さX」とは該領域内のヴィッカース硬さの最小値を指すものとする。すなわち、最軟化部の硬さXとは、熱影響部6の全領域において最も硬さが低い領域である。また、「高強度鋼板の母材の平均ヴィッカース硬さ」とは、高強度鋼板の母材の硬さを上記条件で測定し、5回の測定値の平均値とする。
本発明では、熱影響部6の最軟化部の硬さXと高強度鋼板の母材の硬さとが式(3)の関係を満足し、かつ、上述の軟化部6aの幅Dhが式(2)を満足することが重要である。
この熱影響部6の最軟化部の硬さXが式(3)の関係を満足する場合、熱影響部6の水素トラップによるナゲット3の耐遅れ破壊特性の改善効果と、後述の後通電工程による継手強度の向上を期待できる。熱影響部6の最軟化部の硬さX(HV)が(母材の硬さ×0.95)(HV)以上の場合、過加熱により熱影響部6に十分な焼戻し効果を付与できない。したがって、上記最軟化部の硬さXは、(母材の硬さ×0.95)(HV)未満の硬さとする。上記最軟化部の硬さXは、好ましくは(母材の硬さ×0.90)(HV)未満とし、より好ましくは(母材の硬さ×0.85)(HV)未満とする。
なお、硬さの確保のために過度な加熱を与える場合、熱影響部の強度を担保できないため、上記最軟化部の硬さXの下限は(母材の硬さ×0.40)(HV)とする。上記最軟化部の硬さXは、好ましくは(母材の硬さ×0.45)(HV)以上とする。
上記最軟化部の硬さXは、ナゲット3の硬さとの関係では、X(HV)<(ナゲット3の平均硬さ×0.9)(HV)であることが好ましい。この関係を満たさない場合、軟化部6aが硬すぎるためナゲットの許容範囲内での残留応力であっても熱影響部が遅れ破壊する恐れがあるからである。上述の「ナゲット3の平均硬さ」とは、ナゲット3の硬さを上記条件で測定し、5回の測定値の平均値とする。
[熱影響部の炭化物]
本発明では、上述のように、溶接部の熱影響部6に高密度の炭化物を析出することも重要である。具体的には、熱影響部6内における、粒径が100nm以下のNbC、TiCおよびVCの合計の平均個数密度が80個/μm2以上とする。
本発明の高強度鋼板に含有されたNb、Ti、Vは、後述の溶接条件での抵抗スポット溶接によって熱影響部6にNbC、TiCおよびVCの炭化物を生成する。これにより、熱影響部6において外部環境から侵入する水素をトラップし、ナゲット端部で集積する水素量を低減させ、遅れ破壊を抑制する。
形成されたNbC、TiCおよびVCの粒径をそれぞれ100nm超えとする場合、ナゲット3へと侵入する水素を十分にトラップできる表面積の炭化物量を析出させるためには、過度な焼戻しが必要となる。その結果、継手強度が低下する。このような理由から、NbC、TiCおよびVCの粒径は100nm以下とする。
また、形成された上記炭化物、すなわち粒径が100nm以下のNbC、TiCおよびVCの合計の平均個数密度は、板断面1μm2当たり80個未満である場合、水素のトラップサイトとして作用する炭化物界面の表面積が十分でなく、遅れ破壊の原因であるナゲット3へと侵入する水素量を十分に低減できない。
したがって、粒径が100nm以下のNbC、TiCおよびVCの合計の平均個数密度は、80個/μm2以上とする。好ましくは、粒径が100nm以下のNbC、TiCおよびVCの合計の平均個数密度は90個/μm2以上とする。
上記炭化物の平均個数密度の上限は、特に規定しない。過加熱後の継手強度確保の観点からは、粒径が100nm以下のNbC、TiCおよびVCの合計の平均個数密度は150個/μm2以下とすることが好ましく、140個/μm2以下とすることがより好ましい。
なお、本発明では、粒径が100nm以下の上記炭化物に変えて、粒径が70nm以下のNbC、TiCおよびVCの合計の平均個数密度を、60個/μm2以上とすることが好ましく、80個/μm2以上とすることがより好ましい。また、当該平均個数密度を、130個/μm2以下とすることが好ましく、120個/μm2以下とすることがより好ましく、100個/μm2以下とすることがさらに好ましい。この粒径の炭化物を上記範囲内で有することにより、単位体積当たり炭化物の表面積が大きくなるため、より多くの拡散性水素をトラップすることができる。これは、後述の後通電工程により制御することができる。
本発明において、上記した溶接部および母材のヴィッカース硬さ、上記したNbC、TiCおよびVCの粒径および平均個数密度は、後述する実施例に記載の方法で、測定することができる。
[高強度鋼板]
本発明の溶接継手における、高強度鋼板の成分組成の限定理由について説明する。本発明において「高強度鋼板」とは、引張強度(TS)が980MPa以上の鋼板を指す。なお、以下の説明において、成分組成の「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
C:0.10~0.40%
Cは、鋼板のTSを980MPa以上とするための組織制御と、ナゲットの硬さ制御のために用いられる。Cの含有量が0.10%未満では、TSを980MPa以上とすることが困難になる。一方、Cの含有量が0.40%を超えると、ナゲット内の硬さが増加するため、ナゲット内破壊の抑制が困難である。したがって、Cの含有量は、0.10~0.40%とする。Cの含有量は、好ましくは0.13%以上とする。また、Cの含有量は、好ましくは0.25%以下とする。
Si:0.10~2.50%
Siは、鋼板の組織制御と、介在物のサイズおよび量とを制御するために用いられる。Siの含有量が0.10%未満では、TSを980MPa以上とすることが困難になる。一方、Siの含有量が2.50%を超えると、Siの炭化物生成抑制効果により、熱影響部に本発明で目標とする炭化物量が生成されず、その結果、溶接部の遅れ破壊特性を向上させることが困難になる。したがって、Siの含有量は、0.10~2.50%とする。Siの含有量は、好ましくは0.20%以上とする。また、Siの含有量は、好ましくは1.70%以下とする。
Mn:1.0~5.0%
Mnは、鋼板およびナゲットの組織制御と、介在物のサイズおよび量とを制御するために用いられる。Mnの含有量が1.0%未満では、TSを980MPa以上とすることが困難になる。一方、Mnの含有量が5.0%を超えると、ナゲット内の粗大な介在物量が増加し、ナゲットの脆性破壊傾向が強まる。したがって、Mnの含有量は、1.0~5.0%とする。Mnの含有量は、好ましくは1.2%以上とする。また、Mnの含有量は、好ましくは2.8%以下とする。
P:0.020%以下
Pは、ナゲット内に固溶状態で存在し、ナゲットの脆性破壊傾向を強める。そのため、Pの含有量が0.020%を超えると、ナゲットの硬さやナゲットの組織を制御しても、ナゲット内破壊が発生する可能性がある。したがって、Pの含有量は、0.020%以下とする。Pの含有量は、好ましくは0.015%以下、より好ましくは0.010%以下とする。なお、Pの含有量の下限は特に限定されない。ただし、過度の低減はコストの増加を招くので、Pの含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。
S:0.010%未満
Sは、ナゲット内で固溶状態あるいは硫化物として存在し、ナゲットの脆性破壊傾向を強める。Sの含有量が0.010%以上では、ナゲットの硬さやナゲットの組織を制御しても、ナゲット内破壊が発生する可能性がある。そのため、Sの含有量は0.010%未満にする。また、Sの含有量は、好ましくは0.005%以下とする。なお、Sの含有量の下限は特に限定されない。ただし、過度の低減はコストの増加を招くので、Sの含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。
Al:0.10%以下
Alは、溶接部と外気の反応により形成される酸化物系介在物のサイズと量を制御する元素である。Alの含有量が0.10%を超えると、ナゲット内の粗大な介在物量が増加し、ナゲットの脆性破壊傾向が強まる。したがって、Alの含有量は、0.10%以下とする。Alの含有量の下限は規定しないが、生産技術上の制約から、Alの含有量は0.005%以上とすることが好ましい。また、Alの含有量は、好ましくは0.05%以下とする。
N:0.010%以下
Nは、鋼中で窒化物として存在する。Nの含有量が0.010%を超えると、鋼板の変形能を低下されるため、溶接中や溶接後に、ナゲット内の脆性破壊を抑制することが困難になる。そのため、Nの含有量は0.010%以下にする。なお、Nの含有量の下限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、Nの含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。また、Nの含有量は、好ましくは0.005%以下とする。
Nb:0.10%以下、Ti:0.10%以下、V:0.20%以下のうちから選択された1種または2種以上
Nb、Ti、Vは、鋼板および熱影響部の炭化物のサイズと量の制御のために用いられる。Nb、Ti、Vの少なくとも1種を含有する場合、それらの含有量はNb:0.10%以下、Ti:0.10%以下、V:0.20%以下であり、かつ、式(1)の範囲内(すなわち、式(1)の左辺値([Nb]+[Ti]+[V]/5)の値)が0.01%以上)とする。Nb:0.10%超え、Ti:0.10%超え、V:0.20%超えの場合には、熱影響部内に粗大な析出物が多く形成され、継手強度が低下する。Nb、Ti、Vが式(1)の範囲を外れる場合(すなわち、式(1)の左辺値が0.01%未満である場合)、本発明で目標とする熱影響部の水素トラップ効果を達成することが困難になる。
Nb、Ti、Vの少なくとも1種を含有する場合、Nb、Ti、Vの含有量は、好ましくは、Nb:0.08%以下、Ti:0.08%以下、V:0.16%以下であり、かつ、式(1)の左辺値(すなわち、式(1)の下限)が0.04%以上とする。
また、Nb、Ti、Vの少なくとも1種を含有する場合、Nb、Ti、Vの含有量は、好ましくは、Nb:0.001%以上、Ti:0.001%以上、V:0.005%以上とし、式(1)の左辺値は0.01%以上とする。
式(1)の左辺値は、0.55%以下とすることが好ましい。
なお、Nb、Ti、Vの各成分は、1種または2種以上を含有できるので、含有されない元素は0%であってもよい。
([Nb]+[Ti]+[V]/5)≧0.01% ……(1)
ここで、式(1)中の元素記号は、母材における各元素の含有量(質量%)を表し、該元素が含有されていない場合には0とする。
本発明の高強度鋼板は、上記各元素を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物である。
上記成分組成が高強度鋼板の基本の成分組成である。本発明では、上記成分組成に加え、必要に応じて、Mo、Cr、Ca、Sb、B、Cu、Niのうちから選択される1種または2種以上を含有することができる。以下の、Mo、Cr、Ca、Sb、B、Cu、Niの各成分は、必要に応じて含有できるので、これらの成分は0%であってもよい。
Mo:0.500%以下
Moは、焼入れ性を向上させる元素であり、硬質相を生成させるために有効な元素である。Moの含有量が0.500%を超えると、硬質相の面積率が増加し、成形時の寸法精度および延性が低下する。したがって、Moの含有量は0.500%以下にする。なお、Moの含有量の下限は0.000%であってもよいが、焼入れ性を大きくし、TSをより好適な範囲内とする観点から、Moの含有量は0.010%以上とすることが好ましい。Moの含有量は、好ましくは0.300%以下、より好ましくは0.100%以下とする。また、Moの含有量は、より好ましくは0.030%以上とする。
Cr:0.300%以下
Crは、焼入れ性を向上させる元素であり、硬質相を生成させるために有効な元素である。Crの含有量が0.300%を超えると、硬質相の面積率が増加し、成形時の寸法精度および延性が低下する。したがって、Crの含有量は0.300%以下にする。なお、Crの含有量の下限は0.000%であってもよいが、焼入れ性を大きくし、TSをより好適な範囲内とする観点から、Crの含有量は0.010%以上とすることが好ましい。また、Crの含有量は、好ましくは0.250%以下、より好ましくは0.100%以下とする。
Ca:0.0200%以下
Caは、鋼中で介在物として存在する。Caの含有量が0.0200%を超えると、鋼板中に拡散性水素を含有する場合、上記介在物が曲げ試験時に亀裂の起点となるため、曲げ性が低下する。そのため、Caの含有量は0.0200%以下にする。なお、Caの含有量の下限は0.0000%であってもよいが、生産技術上の制約から、Caの含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。また、Caの含有量は、好ましくは0.0020%以上とする。
Sb:0.200%以下
Sbは、焼鈍中の鋼板表面の酸化を抑制し、表層軟化厚みを制御するために有効な元素である。また、Sbは、焼鈍中に鋼板表層の窒化を抑制することで、鋼板表層の対応粒界頻度を低減することができる元素である。Sbの含有量が0.200%を超えると、表層軟化部を形成することができないため、曲げ性および耐LME特性が低下する。そのため、Sbの含有量は0.200%以下にする。なお、Sbの含有量の下限は0.000%であってもよいが、対応粒界頻度を低減し、より良好な耐LME特性を得るためには、Sbの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。Sbの含有量は、より好ましくは0.002%以上、さらに好ましくは0.005%以上とする。また、Sbの含有量は、好ましくは0.050%以下、より好ましくは0.020%以下とする。
B:0.0100%以下
Bは、素材鋼板とナゲット内の組織制御に用いられる。
Bは、オーステナイト粒界に偏析することで、焼入れ性を向上させることができる元素であり、Bを鋼中に添加することで、焼鈍冷却時のフェライトの生成および粒成長を抑制することが可能である。こうした効果を得るためには、Bの含有量を0.0001%以上にする。一方、Bの含有量が0.0100%を超えると、熱間圧延中に鋼板内部に割れが生じ、鋼板の極限変形能を低下させることから、打抜き後の総ボイド数密度が増加し、伸びフランジ性が低下する。また、曲げ性も低下する。したがって、Bを添加する場合、その含有量は0.0001%以上とし、0.0100%以下とする。Bを添加する場合、その含有量は、好ましくは0.0002%以上とする。また、Bを添加する場合、その含有量は、好ましくは0.0050%以下とする。
Cu:1.00%以下
Cuは、焼入れ性を大きくする元素であり、硬質相の面積率をより好適な範囲内として、TSをより好適な範囲内とし、かつ成形時の寸法精度をより向上するために有効な元素である。こうした効果を得るためには、Cuの含有量を0.01%以上にする。一方、Cuの含有量が1.00%を超えると、硬質相の面積率が増加し、成形時の寸法精度および延性が低下する。また、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板中に拡散性水素を含有する場合、曲げ試験時に亀裂の起点となるため、曲げ性が低下する。したがって、Cuを添加する場合、その含有量は0.01%以上1.00%以下とする。Cuを添加する場合、その含有量は、好ましくは、0.02%以上とする。また、Cuを添加する場合、その含有量は、好ましくは0.20%以下とする。
Ni:0.50%以下
Niは、焼入れ性を大きくする元素であり、硬質相の面積率をより好適な範囲内として、TSをより好適な範囲内とし、かつ成形時の寸法精度をより向上するために有効な元素である。こうした効果を得るためには、Niの含有量を0.01%以上にする。一方、Niの含有量が0.50%を超えると、硬質相の面積率が増加し、成形時の寸法精度および延性が低下する。また、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板中に拡散性水素を含有する場合、曲げ試験時に亀裂の起点となるため、曲げ性が低下する。したがって、Niを添加する場合、その含有量は0.01%以上0.50%以下とする。Niを添加する場合、その含有量は、好ましくは、0.02%以上とする。また、Niを添加する場合、その含有量は、好ましくは0.20%以下とする。
なお、本発明では、上記高強度鋼板は、必要に応じて、母材である鋼板の表面に金属めっき層を有することができる。金属めっき層は、亜鉛めっき層、合金化亜鉛めっき層であることが好ましい。特に自動車用途向けとして、溶融亜鉛めっき処理を施して、母材である鋼板表面に亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板(GI)としてもよい。また、該溶融亜鉛めっき処理を施した後、さらに合金化処理を施して、母材である鋼板表面に合金化亜鉛めっき層を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)としても良い。
〔抵抗スポット溶接方法〕
次に、上述の溶接部を有する溶接継手を製造するための抵抗スポット溶接方法の一実施形態について、説明する。
本発明の溶接継手は、少なくとも1枚の高強度鋼板を含む、2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組を、1対の溶接電極で挟持し、加圧しながら通電して鋼板を接合する抵抗スポット溶接によって製造できる。
まず、2枚以上の鋼板を重ね合わせる。例えば、図3においては、2枚の鋼板を用い、下側に配置される鋼板1(以下、「下鋼板」と称する)と上側に配置される鋼板2(以下、「上鋼板」と称する)とを重ね合わせて板組とする。なお、図示はしないが、3枚以上の鋼板を重ね合わせて板組とする場合には、最も下側に配置される鋼板が「下鋼板」となり、最も上側に配置される鋼板が「上鋼板」となり、それらの間に配置される鋼板が「中鋼板」となる。
次いで、1対の溶接電極、すなわち板組の下側に配置される溶接電極4(以下、「下電極」と称する場合もある)および板組の上側に配置される溶接電極5(以下、「上電極」と称する場合もある)で、重ね合わせた鋼板(すなわち、下鋼板1と上鋼板2)を挟持して、加圧しながら通電する。
なお、本発明の抵抗スポット溶接方法を実施する装置は、一対の溶接電極4、5によって加圧し、且つその加圧力を制御する構成であればよく、この構成は特に限定されない。例えば、エアシリンダやサーボモータ等の従来から知られている機器が使用できる。また、通電の際に電流を供給し、且つ電流値を制御する構成も特に限定されず、従来から知られている機器が使用できる。また、直流、交流のいずれにも本発明を適用できる。交流の場合には、「電流」は「実効電流」を意味する。
また、各溶接電極4、5の先端の形式も特に限定されない。例えば、JIS C 9304:1999に記載されるDR形(ドームラジアス形)、R形(ラジアス形)、D形(ドーム形)等が挙げられる。各溶接電極の先端径は、例えば4mm~16mmである。曲率半径は例えば50mm~200mmであり、先端が平坦なFlat型電極とすることもできる。
なお、各溶接電極が常に水冷されている状態で抵抗スポット溶接を行う。
このように、重ね合わせた鋼板1、2(すなわち、板組)を1対の溶接電極4、5で挟持した状態で加圧しながら通電して、抵抗発熱によって必要なサイズのナゲット3を形成すると共に、重ね合わせた鋼板同士を接合することで、溶接継手が得られる。
本発明は、板組の上側および下側に配置される各溶接電極4、5と接する板組の両面、もしくは片面のいずれか一方が、金属めっき層を有する表面処理鋼板である板組における抵抗スポット溶接方法にも適用できる。ここで、上記の「各溶接電極と接する板組の両面」とは、上電極および下電極と接する、複数の鋼板で構成される板組のうち最も外側に配置される2枚の鋼板を指す。また、上記の「各溶接電極と接する板組の片面のいずれか一方」とは、上電極あるいは下電極と接する、複数の鋼板で構成される板組のうち最も外側に配置される2枚の鋼板のいずれか一方の鋼板を指す。なお、金属めっき層の融点は、表面処理鋼板の母材の融点よりも低いものを対象とすることが好ましい。
上述のように、表面処理鋼板とは、電気亜鉛めっき、溶融亜鉛めっき(該溶融亜鉛めっきには、合金化溶融亜鉛めっきを含む)に代表される亜鉛めっきや、亜鉛のほかにアルミニウムやマグネシウムなどの元素を含んだ亜鉛合金めっきなどの金属めっき層を、母材(すなわち、下地鋼板)の表面上に有する鋼板を言う。ここでは、このような表面処理鋼板を「亜鉛系めっき鋼板」と称する。したがって、本発明では、上記の板組を構成する複数の鋼板のうち、少なくとも1枚が亜鉛系めっき鋼板とする。
なお、本発明において、抵抗スポット溶接する鋼板の板厚は、特に限定されない。例えば、0.5mm以上3.0mm以下の範囲内であることが好ましい。板厚がこの範囲内である鋼板は、自動車用部材として好適に使用することができる。
抵抗スポット溶接する2枚以上の鋼板は、同種および同形状の鋼板であってもよいし、異種や異形状の鋼板であってもよい。また、金属めっき層を有する表面処理鋼板と金属めっき層を有さない鋼板とを重ね合わせてもよい。
次いで、本発明の抵抗スポット溶接方法における通電パターンについて説明する。
本発明では、上述の加圧および通電を、以下に説明する特定パターンで行う。上記通電は、本通電工程と後通電工程からなる。また、本通電工程と後通電工程との間に、無通電の冷却工程を有する。
<本通電工程>
本通電工程は、重ね面7が通電により溶融し、凝固するとナゲット3(図1を参照)となるナゲット部を形成する工程である。本通電工程の通電条件および加圧条件は、そのナゲット部を形成することが可能な条件を適宜選択することができる。
本発明では、例えば、本通電工程の電流値I1は1.0kA以上15.0kA以下であり、加圧力F1は2.0kN以上7.0kN以下であり、主通電工程の通電時間t1は100ms以上1000ms以下であることが好ましい。
上記した「ナゲット3」とは、抵抗溶接において溶接部に生じる溶融凝固した部分である。
なお、本通電工程は、電流値が本通電工程内で変化する多段通電、加圧力が本通電工程内で変化する多段加圧工程であっても良い。
<冷却工程>
上述の本通電工程の後、冷却工程を行う。冷却工程は、本通電工程によるナゲット形成直後、後通電工程による過加熱によりチリが発生することを防止するため、電極を接触し溶接部の温度を低下することを目的として行う。冷却工程では、所定の冷却時間tcの間、無通電状態を保持する。冷却時間tcは、500ms以上2000ms以下であることが好ましい。冷却時間tcは、550ms以上がより好ましく、また1800ms以下がより好ましい。
<後通電工程>
上述の本通電工程と冷却工程の後、後通電工程を行う。後通電工程は、供給する電流値を変更することで、ナゲットの径を拡大せずに熱影響部を加熱することを目的として行う。
具体的には、後通電工程では、加圧力F2を2.0~7.0kNとし、かつ、本通電工程の電流値I1に対して式(4)の関係を満足する電流値I2で、式(5)で表される通電時間t2の間、通電を行う。
0.6×I1 < I2 < 1.0×I1 ……(4)
2100-8200×([Nb]+[Ti]+[V]/5)< t2 ……(5)
ここで、各式において、
1:本通電工程における電流値(kA)、
2:後通電工程における電流値(kA)、
2:後通電工程における通電時間(ms)、とする。
また、式(5)中の元素記号は、鋼板の母材における各元素の含有量(質量%)を表し、該元素が含有されていない場合には0とする。
まず、後通電工程の電流値I2について説明する。
後通電工程は、式(4)を満足する電流値I2(kA)で通電する。本発明では、本通電工程終了後、冷却工程を経て、後通電工程における電流値I2(kA)で通電し、ナゲット内を再加熱する。つまり、本通電工程において形成されたナゲットを、後通電工程において溶接部を再加熱することで、熱影響部を焼戻し、後通電工程での通電の間に炭化物をより多く析出させられる状態を維持する。
後通電工程は凝固したナゲット周辺の熱影響部を再加熱する工程である。電流値I2(kA)が(0.6×I1)(kA)以下の場合には、溶接部が十分に再加熱されず、外部環境から侵入する水素をトラップするに十分な炭化物が析出されない。そのため、電流値I2(kA)は、(0.6×I1)(kA)超えとする。電流値I2(kA)は、好ましくは(0.7×I1)(kA)超えとする。
電流値I2(kA)が高すぎる場合には、熱影響部が過加熱し、十分な炭化物を得られない恐れがある。さらに、高い電流値I2である場合には、溶融による散りなどの欠陥が発生し易い恐れがある。このような理由から、電流値I2(kA)は、本通電工程の電流値I1に対して、(1.0×I1)(kA)未満とする。電流値I2(kA)は、好ましくは(0.9×I1)(kA)未満とすることがより好ましい。なお、後通電工程の通電パターンは、多段通電あっても上述と同様の効果が得られる。
続いて、後通電工程の通電時間t2について説明する。
上述の電流値I2(kA)の条件で通電する場合、式(5)で表される通電時間t2(ms)を満足することにより、本発明で目標とする溶接部の焼戻しによる炭化物が形成される。これにより、形成された炭化物を上述の平均個数密度の範囲内に制御できる。後通電工程の通電時間t2が式(5)の左辺値(すなわち、(2100-8200×([Nb]+[Ti]+[V]/5))で算出される値)以下である場合、熱影響部が十分に加熱されず、炭化物が十分に析出されないため、本発明で目標とする耐遅れ破壊特性を得られない。したがって、後通電工程の通電時間t2は式(5)の左辺値を超える時間とする。通電時間t2(ms)は、好ましくは400ms以上とする。
なお、異なる鋼種の鋼板(異なる上記高強度鋼板同士も含む)を2枚以上重ね合わせて板組とする場合には、各鋼板のNb、TiおよびV量を用いて式(5)の左辺値を算出し、これらの平均値を求める。この平均値と通電時間t2とを比較する。
本発明では、後通電工程の通電時間t2(ms)の上限は規定しない。しかしながら、この通電時間t2が長すぎる場合には、過度な焼戻しにより、溶接継手強度を担保できない。このような理由から、後通電工程の通電時間t2は、好ましくは2000ms以下とし、より好ましくは800ms未満とし、さらに好ましくは600ms以下とする。
続いて、後通電工程の加圧力F2について説明する。
上述の条件に加えて、後通電工程の加圧力F2は、2.0kN以上7.0kN以下とする。加圧力F2が2.0kN未満では加圧力が足りず、ナゲットが十分な大きさで形成されない。一方、加圧力F2が7.0kN超えでは溶接時にチリ発生の恐れがある。
上述の後通電工程の後、ホールド工程を行う。ホールド工程は、後通電工程による過加熱後、溶接部が安定的に冷却し、割れを防止することを目的として行う。ホールド時間thは、10ms以上100ms以下であることが好ましい。
ここで、図4に本発明の通電パターンの一例を示す。図4において、縦軸は電流値および加圧力であり、横軸は時間である。電流値および加圧力は縦軸の上方向にいくにつれて大きくなる。例えば、図4に示すように、加圧力は一定とした状態で、電流値I1で主通電工程を行った後、冷却時間tcで冷却工程を行い、次いで電流値I2、通電時間t2で後通電工程を行う。
以上の説明では、2枚の鋼板を重ね合わせて抵抗スポット溶接する場合について主に述べたが、本発明は3枚以上の鋼板を重ね合わせて溶接する場合についても、同様に適用可能であり、同様に上述の効果を得ることができる。
以下、本発明の作用および効果について、実施例を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
図3に示すように、表1に示す鋼種の鋼板を用いて下鋼板1と上鋼板2とし、これらを重ね合わせて表2に示す板組とした。板組に対して表2に示す溶接条件で抵抗スポット溶接を行い、溶接継手を作製した。この作製された溶接継手を試料とした。
なお、表2において、異なる鋼種の鋼板同士を重ね合わせて板組とした場合には、各鋼板のNb、TiおよびV量を用いて式(5)の左辺値を算出し、これらの平均値を後通電工程の通電時間t2との比較のために用いた。
下鋼板1と上鋼板2の引張強度(TS)、金属めっき層の有無は、表1に示した。金属めっき層は具体的には亜鉛めっきである。各鋼板のサイズは、長辺が100mmおよび短辺が30mmとし、板厚が1.4mmとした。
上記「引張強度」は、各鋼板から、圧延方向に対して平行方向にJIS5号引張試験片を作製し、JIS Z 2241:2011の規定に準拠して引張試験を実施して求めた引張強度(MPa)である。
抵抗スポット溶接は常温で行い、溶接電極(すなわち、下電極、上電極)を常に水冷した状態で行った。下電極と上電極は、いずれも先端の直径(すなわち、先端径)が6mm、曲率半径が40mmとし、クロム銅製のDR形電極とした。また、下電極と上電極をサーボモータで駆動することによって加圧力を制御し、通電の際には周波数50Hzの単相交流を供給した。
抵抗スポット溶接は、図5に示すように、上記鋼板1、2(サイズは、長辺:100mm、短辺:30mmとした)の2枚の間に、厚さが1.5mmで30mm四方であるスペーサ10を該鋼板間の両端側に挟み込んで仮溶接し、その後、2枚の鋼板を重ね合わせた板組の中心を表2に記載する溶接条件で溶接した。なお、図5には抵抗スポット溶接の試験片を示す平面図(図5(A)を参照)および側面図(図5(B)を参照)を示しており、図5中の符号9は溶接点、符号8は仮溶接点である。すべての試料は、ナゲット径が板厚tに対して4√tになるように、電流値と通電時間を制御して本通電工程を行った。
得られた溶接継手を常温(ここでは、20℃)で大気中に静置した後、以下に説明する方法で、(1)硬さ測定、(2)熱影響部における軟化部の幅の測定、(3)走査電子顕微鏡(SEM)による溶接部の断面観察、および(4)浸漬試験による耐遅れ破壊特性評価を行った。
(1)硬さ測定
溶接部および鋼板の母材のヴィッカース硬さは、次の方法で測定した。
得られた溶接継手を、ナゲットの中心を通る位置で切断して試験片とし、該試験片を超音波洗浄した後に樹脂埋めを行ったサンプルの溶接部断面を研磨し、ピクリン酸溶液を用いてエッチングを行い、サンプルを準備した。溶接部および母材部のヴィッカース硬さは、ヴィッカース硬度計により、JISZ2244(2020年)に準拠して測定する。測定荷重は、300gfの圧子にて15秒負荷する条件で行った。
表3に示す「熱影響部の最軟化部の硬さX」は、次のように求めた。具体的には、上記サンプルにおける、鋼板の重ね面7から0.2mm上方の位置で、かつ該重ね面7に平行な直線上を、0.2mm間隔で計測した。計測する領域は、ナゲット3の中心から鋼板の母材までの範囲とした(図1を参照)。「鋼板の重ね面7から0.2mm上方の位置」としたのは、上鋼板に高強度鋼板を用いているからである。下鋼板の場合には、鋼板の重ね面7から0.2mm下方の位置で、計測した。
図2に示すように、「熱影響部6の軟化部6a」とは、熱影響部6内をJISZ2244(2020年)に準拠して測定したヴィッカース硬さのうち、高強度鋼板の母材の平均ヴィッカース硬さ以下の領域を指すものとし、「最軟化部の硬さX」とは該領域内の最小値を指すものとした。また、「高強度鋼板の母材の平均ヴィッカース硬さ」とは、高強度鋼板の母材の硬さを上記条件で5回測定し、それら測定値の平均値とした。
(2)熱影響部における軟化部の幅Dhの測定
上述の硬さ測定で準備したサンプルを用いて、軟化部の幅Dhを測定した。
具体的には、図1に示すように、ナゲット3と重ね面7の交点(すなわち、ナゲット端部E)を結ぶ直線Zの延長線と軟化部6aの境界(軟化部6aの内周縁および外周縁)とが交差する2点(すなわち、点a、点b)を求め、該2点を結ぶ直線の長さを光学顕微鏡で測定し、軟化部6aの幅Dh(mm)とした。点aは直線Zの延長線と軟化部6aの内周縁との交点とし、点bは直線Zの延長線と軟化部6aの外周縁との交点とした。
(3)断面観察
断面観察では、熱影響部内の炭化物密度を測定した。ここでは、炭化物としてNbC、TiCおよびVCを測定した。
NbC、TiCおよびVCの粒径は、得られた溶接継手から熱影響部を切り出し、その板厚断面を研磨後、3%ナイタールで腐食し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて10000倍の倍率で観察した。Image-Proを用いて、下限を0.005μmとして、その円相当直径を算出することで上記析出物の粒径を求めた。粒径が100nm以下のNbC、TiCおよびVCの平均個数密度(個/1μm2)は、TEMを用いて10000倍の倍率で観察し、10箇所の個数密度を求め、その平均とした。観察は、上鋼板と下鋼板のそれぞれで行った。また、同様の方法で、粒径が70nm以下のNbC、TiCおよびVCの平均個数密度(個/1μm2)を求めた。
得られた各値は、表3に示す「粒径100nm以下の炭化物の合計の平均個数密度」および「粒径70nm以下の炭化物の合計の平均個数密度」に示した。
(4)耐遅れ破壊特性評価
浸漬試験による耐遅れ破壊特性の評価は、次の方法で行った。まず、溶接後、常温(ここでは、20℃)で大気中に24時間以上静置した溶接継手を試料とした。該試料をpH2.5の塩酸溶液で96時間浸漬した後、遅れ破壊の有無を調査した。表3中、ナゲットがはく離しなかった試料には記号「〇」を記し、ナゲットがはく離した試料には記号「×」を記した。上記の「ナゲットがはく離」とは、接合界面でナゲットが二つに剥離する現象を指す。ここでは、記号「〇」の場合に、「優れた耐遅れ破壊特性」を有すると評価した。
得られた結果を表3に示した。なお、表1~3に示した「式(1)」~「式(5)」の欄には、各関係式を充足するか否かの結果を示しており、記号の「〇」は関係式を充足し、記号の「×」は関係式を充足しないことを指すものとした。
Figure 0007347716000001
Figure 0007347716000002
Figure 0007347716000003
表3から明らかなように、本発明例では使用環境下で侵入する水素量を低減でき、優れた耐遅れ破壊特性を有する、良好な溶接継手を得られた。これに対し、比較例では良好な溶接継手が得られなかった。
1 下鋼板
2 上鋼板
3 ナゲット
4 下電極
5 上電極
6 熱影響部
6a 軟化部
7 重ね面
8 仮溶接点
9 溶接点
10 スペーサ

Claims (6)

  1. 少なくとも1枚の高強度鋼板を含む、2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組が抵抗スポット溶接された溶接部を有する、抵抗スポット溶接継手であって、
    前記高強度鋼板が、質量%で、
    C:0.10~0.40%、
    Si:0.10~2.50%、
    Mn:1.0~5.0%、
    P:0.020%以下、
    S:0.010%未満、
    Al:0.10%以下、および
    N:0.010%以下
    を含有し、さらに、
    Nb:0.10%以下、
    Ti:0.10%以下、および
    V:0.20%以下
    のうちから選択された1種または2種以上を含有し、
    さらに任意選択的に、
    Mo:0.500%以下、
    Cr:0.300%以下、
    Ca:0.0200%以下、
    Sb:0.200%以下、
    B:0.0100%以下、
    Cu:1.00%以下、および
    Ni:0.50%以下
    のうちから選択された1種または2種以上を含有し、
    かつ、Nb、TiおよびVが式(1)の関係を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    前記溶接部は、ナゲットと熱影響部を有し、
    前記熱影響部における硬さが前記高強度鋼板の母材の硬さ以下となる領域を軟化部としたとき、ナゲット径と熱影響部における該軟化部の幅とが式(2)の関係を満足し、
    かつ、前記熱影響部の最軟化部の硬さをXとしたとき、該最軟化部の硬さXと前記高強度鋼板の母材の硬さとが式(3)の関係を満足し、
    かつ、前記ナゲットの中心を通る板厚断面での前記熱影響部内における、粒径が100nm以下のNbC、TiCおよびVCの合計の平均個数密度が、80個/μm2以上である、抵抗スポット溶接継手。
    ([Nb]+[Ti]+[V]/5) ≧ 0.01% ……(1)
    熱影響部における軟化部の幅(mm) > ナゲット径(mm)×0.2 ……(2)
    X(HV) < 高強度鋼板の母材の硬さ(HV)×0.95 ……(3)
    ここで、式(1)中の元素記号は、高強度鋼板における各元素の含有量(質量%)を表し、該元素が含有されていない場合には0とする。
  2. 前記成分組成は、
    Nb:0.08%以下、Ti:0.08%以下、およびV:0.16%以下のうちから選択された1種または2種以上を含有し、かつ、前記式(1)の下限値が0.04%である、請求項1に記載の抵抗スポット溶接継手。
  3. 前記高強度鋼板は、金属めっき層を有する、請求項に記載の抵抗スポット溶接継手。
  4. 前記高強度鋼板の引張強度が980MPa以上である、請求項に記載の抵抗スポット溶接継手。
  5. 請求項1~のいずれか1項に記載の抵抗スポット溶接継手を製造する抵抗スポット溶接方法であって、
    少なくとも1枚の前記高強度鋼板を含む2枚以上の鋼板を重ね合わせて板組とし、該板組を1対の溶接電極で挟持し、加圧しながら通電して前記鋼板を接合するに際し、
    本通電工程と後通電工程からなる前記通電と、該本通電工程と該後通電工程との間に冷却工程を有し、
    前記後通電工程では、加圧力F2を2.0~7.0kNとし、かつ、前記本通電工程の電流値I1に対して式(4)の関係を満足する電流値I2で、式(5)で表される通電時間t2の間、通電を行う、抵抗スポット溶接方法。
    0.6×I1 < I2 < 1.0×I1 ……(4)
    2100-8200×([Nb]+[Ti]+[V]/5) < t2 ……(5)
    ここで、各式において、
    1:本通電工程における電流値(kA)、
    2:後通電工程における電流値(kA)、
    2:後通電工程における通電時間(ms)、とする。
    また、式(5)中の元素記号は、高強度鋼板における各元素の含有量(質量%)を表し、該元素が含有されていない場合には0とする。また、高強度鋼板が2種類以上である場合には、式(5)中の([Nb]+[Ti]+[V]/5)の値は、各高強度鋼板を用いて算出した値の平均値を使用する。
  6. 前記冷却工程では、500ms以上2000ms未満の間、無通電状態を保持する、請求項に記載の抵抗スポット溶接方法。
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