JP6809303B2 - スポット溶接装置 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼板部材を抵抗スポット溶接するためのスポット溶接装置に関し、特に、高強度鋼板を用いた自動車用部品や車体等の組立てに用いられるスポット溶接装置に関するものである。
自動車の分野では、環境保全のため、車体の軽量化による燃費の向上とともに、衝突安全性の向上が求められている。そのため、高強度鋼板を使用して薄肉化するとともに、車体構造を最適化して、車体の軽量化と衝突安全性の向上を図るために、これまで種々の取組みがなされている。
自動車等の部品の製造や車体の組立における溶接では、主に抵抗溶接によるスポット溶接が用いられている。
高強度鋼板はその強度を達成するために母材の炭素等量が大きくなっており、しかも、スポット溶接では溶接部は加熱後直ちに急冷されるために、高強度鋼板のスポット溶接部はマルテンサイト組織となり、溶接部及び熱影響部において硬度が上昇し、靭性が低下するようになる。また、溶接部では、局部的に生じる変態膨張と収縮により、溶接継手の引張残留応力が大きくなっている。
高強度鋼板のスポット溶接において、スポット溶接部の靭性を改善して継手強度を確保する方法として、ナゲットを形成する本通電の後にさらに後通電(テンパー通電)を行う2段通電による方法がある。この方法により、後通電によりスポット溶接部(ナゲット部および熱影響部)を焼鈍して溶接部の硬さを低下させることができる。
一方、高強度鋼板をスポット溶接した場合において、遅れ破壊(水素脆化)の問題もある。この遅れ破壊は、鋼板の硬さ、残留応力、そして鋼板中の水素量の3因子に主に支配される。
前述のように、溶接部は、硬度が高く、引張残留応力が大きくなっているので、水素侵入が起これば、遅れ破壊を引き起こしやすい部位である。このような遅れ破壊が発生すると、溶接継手の品質指標である引張強さと疲労強さにおいて、十分な強さが得られず、また、その部分(割れ)に水分が浸入すると、腐食が発生して強度がさらに低下するという問題が生じる。これらの問題が、高強度鋼板の適用による車体の軽量化(薄肉化)を阻害する一因である。
このような問題に対して、特許文献1には、図4に示すように、ナゲットを形成する本通電後の後通電時において、本通電時の加圧力P1よりも加圧力を上昇させて、高い加圧力P2で加圧することにより、溶接部周辺に圧縮残留応力を導入して耐遅れ破壊特性を向上させるスポット溶接技術が開示されている。
また、特許文献2には、PC鋼棒と補助筋とのスポット溶接を行った後、スポット溶接部に超音波振動子による打撃処理を施して、溶接部に圧縮残留応力を付与することにより、高強度PC鋼棒の耐遅れ破壊特性を向上させる技術が記載されている。
特開2015−93282号公報 特開2006−104550号公報
特許文献1に開示の技術は、溶接部の引張残留応力を低減できるため、遅れ破壊抑制に対して有効な技術であるが、更に、遅れ破壊の抑制を向上させることが望まれる。
また、特許文献2では、遅れ破壊の抑制の点では効果が期待できるが、溶接以外の工程や機器が必要となる問題がある。
本発明では、このような実情に鑑み、高い耐遅れ破壊特性を有する溶接継手を、特別な機器を用いることなく安定して形成することができる抵抗スポット溶接装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決する手段について鋭意検討した。その結果、ナゲットの形成後に通電しながら、溶接電極を用いて溶接部に加圧力を付加する際、一定以上の加圧力を付加した上で、溶接電極を上昇と下降を交互に連続的に繰り返すように制御することにより、溶接部に高い加圧力と低い加圧力を交互に溶接部に付加すると、特許文献2のようなピーニング効果が得られ、溶接継手の耐遅れ破壊特性を顕著に向上できることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1) 少なくとも溶接箇所が重ね合わされた複数の鋼板部材を溶接するスポット溶接装置において、
互いに対向して配置され、接近又は離隔する一対の溶接電極と、少なくとも溶接電極の一方を接近又は離隔する方向に駆動して、前記鋼板部材に加圧力を付与する電極駆動機構と、前記一対の溶接電極間に電流を通電する溶接電源と、前記電極駆動機構と前記溶接電源を同期して制御し、溶接電流と電極の加圧力を予め定められたシーケンスに基づいて変化させる制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記鋼板部材の溶接個所に前記溶接電極により加圧力P1を付与しながら、通電電流I1で通電して溶融金属を形成し、続いて、前記加圧力P1を付与したまま、冷却時間tcの間、通電電流を前記通電電流I1より低い通電電流Icとして鋼板部材の溶接個所を冷却し、続いて、前記通電電流I1より低く、前記通電電流Icより高い通電電流I2で通電しながら、前記加圧力P1よりも高い加圧力P2を加圧時間tfの間付与し、その後直ちに前記加圧力P2よりも低い加圧力P3を加圧時間tiの間付与する、加圧力の上昇下降を2回以上繰り返し行うシーケンスに基づいて前記電極駆動機構と溶接電源を制御することを特徴とするスポット溶接装置。
(2) 前記制御装置は、溶接電流I1(kA)、溶接電流Ic(kA)、溶接電流I2(kA)、加圧力P1(kN)、加圧力P2(kN)、加圧力P3(kN)、加圧時間tf(s)、加圧時間ti(s)を、下記の式(1)〜(6)の関係を満たす範囲で制御することを特徴とする請求項1に記載の抵抗スポット溶接装置。
0≦Ic<I1 ・・・(1)
0.3≦I2/I1<1.0 ・・・(2)
P2/P1≧1.2 ・・・(3)
tf≦0.2 ・・・(4)
P3<P2 ・・・(5)
ti≦0.2 ・・・(6)
本発明のスポット溶接装置を用いて溶接することにより、ナゲット周辺に圧縮残留応力を効果的に付与することができるので、耐水素脆化特性を向上させた溶接継手を得ることができる。
本発明を適用したスポット溶接装置の一例を示す図である。 スポット溶接装置の電極駆動機構の一例を示す図である。 本発明を適用したスポット溶接装置における制御装置が行う溶接電極の加圧力及び通電電流の制御パターンの一例を示す図である。 従来における溶接電極の加圧力及び通電電流のパターンの一例を示す図である。
本発明は、特許文献2に示されるような打撃処理と同様の効果を溶接電極によって行うために、ナゲット形成後の後加熱通電期間に、溶接電極による溶接部の加圧力の上昇と下降を繰り返し行う圧縮残留応力の付与処理を施すことができるような制御手段を組み込んだスポット溶接装置である。
スポット溶接装置について説明する前に、まず、溶接電極による圧縮残留応力の付与処理(以下、ピーニング処理という)について説明する。
スポット溶接では、2枚の鋼板を重ね合わせ、両側から2枚の鋼板の溶接箇所を挟み込むように、銅合金等からなる溶接電極により、図3に示しように、加圧力をP1として加圧しながら、通電電流IをI1として通電し、溶融金属を形成する。その後、加圧力P1を付与したまま、冷却時間tcの間、通電電流Icとして、水冷された溶接電極2による抜熱や鋼板自体への熱伝導によって、2枚の鋼板1の間に断面楕円形状の溶接金属(ナゲット)を形成する。
スポット溶接個所の板組が高強度鋼板を含む場合、スポット溶接して得られた溶接継手の溶接部(ナゲット及びその周辺の熱影響部)は、冷却過程で焼きが入り、マルテンサイト組織となる。また、冷却過程で熱収縮が起き、特にナゲットの端部は引張応力が残留した状態になる。
そこで、スポット溶接によるナゲット形成後に、通電電流をI1よりも低いI2として通電しながら、加圧力をP1より高い加圧力で加圧して溶接部およびその周辺に圧縮残留応力を付与する際、図3に示すように、加圧力をP2として、加圧時間tfの間付与し、その後直ちに加圧力をP2より低いP3として、加圧時間tiの間付与する加圧力の上昇下降を2回以上繰り返すピーニング処理を施す。
ピーニング処理時に通電電流I2を流すため、溶接部は高温となって降伏強度が低減され、ピーニング時の塑性変形が容易となる。このため、引張残留応力の低減が促進されると考えられる。さらに、ピーニング時に加圧力を増減させるため、電極と溶接部の接触面積が増減することとなる。接触面積当たりの荷重、即ち応力が局所で増減するため、塑性変形が一層進行すると思われる。加えて、溶接部の組織微細化や、脆化元素の凝固偏析部分断等が起こり、耐遅れ破壊特性が向上すると推測される。
なお、図3のピーニング処理では、加圧力の変化を矩形波(パルス波形)で示してあるが、加圧力の上昇下降を行うものであれば、正弦波やそれに類似の波形とすることもできる。そのような波形の場合、加圧力や加圧時間は、例えば、振幅の90%位置での値とする。
次に、以上のようなピーニング処理が実施できるスポット溶接装置について説明する。
本発明は、基本的に、従来のスポット溶接機に、上述のピーニング処理が実施できる制御装置を組み込むことにより実現できる。以下、定置式のスポット溶接機を例に説明する。
定置式スポット溶接機の一例を図1に示す。スポット溶接機本体1に、上部アーム2、下部アーム3が設けられ、上部アーム2には、電極駆動機構4によって駆動される上部電極ホルダー5が取り付けられており、上部電極ホルダー5の先端には一方の可動溶接電極6が取り付けられている。また、下部アーム3には、下部電極ホルダー7が固定されており、その先端には他方の固定溶接電極8が可動溶接電極6と相対向して取り付けられている。
導電部材からなる上部電極ホルダー5には、電気接続部21を介して溶接電源20が接続され、同様の下部電極ホルダー7には、電気接続部22を介して溶接電源20が接続されており、溶接電極6、8に溶接電流を供給するようになっている。
電極駆動機構4の一例を図2に示す。この例では、上部アーム2に固定された支持部材11にボールねじ軸12を回転できるように支持させ、ボールねじ軸12にナットブロック13を組み込み、ボールねじ軸12をサーボモータ15により動力伝達機構を介して回転させ、その回転によってナットブロック13をガイドレール14、14に沿って上下動させるようになっており、図1に示すように、ナットブロック13に取付け部材19を介して上部電極ホルダー5を取付けることにより、上部電極ホルダー5は、下部電極ホルダー7に対して接近・離反動作(溶接電極の加圧・開放動作)を行うようになっている。
また、図2では、動力伝達機構として、ボールねじ軸12に同軸にベルト用歯車16を、モータ軸と同軸にベルト用歯車17をそれぞれ取り付け、両方の歯車16、17をタイミングベルト18で連結して、サーボモータ15の回転力をボールねじ軸12の回転に伝達するようになっている例を示す。
溶接電源20及びサーボモータ15には、それらの動作を予め定められたシーケンスに基づいて制御する制御装置30が接続されている。
制御装置30は、サーボモータ15を制御する電極駆動制御手段32、溶接電源を制御する溶接電流制御手段33、それらの制御手段に動作指令を出力する主制御手段31などを備えている。また、電極駆動制御手段32には、可動電極ホルダー5に設けられた加圧力検出手段(例えば、ひずみ計)34が接続され、溶接電流制御手段33は電気接続部22と溶接電源20の間に介挿された電流検出手段(例えば、電流計)35が接続されている。
主制御手段31には、図3に示すような溶接1サイクルのシーケンスに係る条件、すなわち、溶接電流I1とその通電時間t1、溶接電流Icと冷却時間tc、溶接電流I2とその通電時間t2、加圧力P1とその加圧時間t1、加圧力P2とその加圧時間tf、加圧力P3とその加圧時間ti、その他のスクイズ時間やスロープ時間、及び、加圧力や電流を変化させる時間などが予め設定されており、単位時間ごとに、必要な加圧力や電流値の指令を電極駆動制御手段32や溶接電流制御手段33に出力するようになっている。
電極駆動制御手段32は、加圧力検出手段34からの検出値が、主制御手段31からの指令された加圧力になるようにサーボモータ15を制御して、可動溶接電極6の先端位置すなわち加圧力を制御する。また、溶接電流制御手段32では、電流検出手段35からの検出値が主制御手段31からの指令された電流値になるように溶接電源20を制御する。
本発明では、図3に示される溶接電極の加圧力及び通電電流のパターンに基づく予め設定された制御シーケンスを実施するため、主制御手段31は、鋼板部材の溶接個所に溶接電極6、8により加圧力P1を付与しながら、通電電流I1で通電して溶融金属を形成し、続いて、加圧力P1を付与したまま、冷却時間tcの間、通電電流を通電電流I1より低い通電電流Icとして鋼板部材の溶接個所を冷却し、続いて、通電電流を前記通電電流I1より低く、前記通電電流Icより高い通電電流I2で通電しながら、加圧力P1よりも高い加圧力P2を加圧時間tfの間付与し、その後直ちに加圧力P2よりも低い加圧力P3を加圧時間tiの間付与する、加圧力の上昇下降を2回以上繰り返し行うシーケンスに基づいて、電極駆動制御手段32及び溶接電流制御手段33を制御して、電極駆動機構4と溶接電源20を制御する手段を有する。
以上では、本発明のスポット溶接装置について定置式のスポット溶接機を例に説明したが、溶接ロボットに取り付けられるスポット溶接ガンとすることもできる。また、溶接電極を駆動する駆動機構は、図1、2ではボールねじ軸を用いた機械的機構とし、それをサーボモータで駆動制御する例で説明したが、それに限定されるものではなく、駆動機構としてエアシリンダーなどの流体アクチュエータを用い、それをサーボ弁で駆動制御するものにも同様に適用できる。
以上説明した溶接装置を用いたスポット溶接について説明する。
スポット溶接では、重ねられた複数枚の鋼板の溶接箇所を挟み込むように、両側から溶接電極6、8を押し付けて、鋼板間を加圧しつつ通電して、溶融金属を形成し(本通電期間)、本通電の終了後に水冷された電極による抜熱や鋼板自体への熱伝導によって、溶融金属を急速に冷却して凝固させ、鋼板の間に断面楕円形状のナゲットを形成し(冷却期間)、ナゲットを形成された後、後通電しながら加圧力の上昇下降を繰り返す処理が行われる(ピーニング処理期間)。
<本通電期間>
本通電では、例えば、ドームラジアス型の先端直径6〜8mmの溶接電極で、加圧力P1:1.5〜6.0kN、通電時間t1:0.1〜1.0s(5〜50サイクル、電源周波数50Hz)、通電電流I1:4〜15kAとして溶接を行う。ナゲット直径は、最も薄い鋼板の板厚をt(mm)とすると、一般的な範囲である3.0√t〜5.0√tとすることができる。また、溶接条件や電極形状を適宜選択すれば、この範囲未満あるいはこの範囲超の直径のナゲットも形成可能である。
本通電の際の基本加圧及び通電パターンは、特に限定されるものでなく、上記の加圧力、通電時間、通電電流の範囲としたうえで、溶接個所の鋼板部材の材質や板厚などに応じて適宜最適条件に調整すればよい。なお、通電の開始時の電流値は、直ちに通電電流とせず、電流値が通電電流になるまで、電流値を0(ゼロ)又は0超の低い電流から漸増(アップスロープ)させてもよい。
<冷却期間>
本通電における通電時間が経過後、溶接電極の加圧力を保持したまま、通電電流値を溶融金属の凝固が進行する程度の低い値まで下げるか、通電を停止し、溶接部を冷却する。この冷却時間tcは、特に限定されるものでなく、溶接金属(ナゲット)が形成されればよく、鋼板の板厚にも依存するものの、0.04〜0.4sが例示される。冷却時間中の通電電流Icは、下記(1)の条件を満たす必要がある。IcがI1以上に大きくなると、溶融金属の凝固が進行しない。Icは0(kA)が好ましい。
0≦Ic<I1 ・・・(1)
<ピーニング処理期間>
スポット溶接後に行うピーニング処理では、制御装置30の指令により、先の例では、溶接電源20とサーボモータ15を制御して、溶接電極6、8間に通電電流I2で通電しながら、高い加圧力P2とそれより低い加圧力P3を交互に繰り返し付与する処理を行う。
この時、通電電流I2、加圧力P2、P3及び加圧時間tf、tiは、下記の(2)〜(3)の条件を満たすものとする。
0.3≦I2/I1<1.0 ・・・(2)
P2/P1≧1.2 ・・・(3)
tf≦0.2 ・・・(4)
P3<P2 ・・・(5)
ti≦0.2 ・・・(6)
(ピーニング処理の間の通電電流、通電時間)
このピーニング処理の間の通電電流I2は、上記(2)を満足するものとする。ピーニング処理での溶接部の温度が適切となり、溶接部の塑性変形が容易となり、溶接部の引張残留応力が低減する。また、通電電流I2をスポット溶接の際の通電電流I1未満とすることで、ピーニング処理においてナゲットの拡大を抑制する。ナゲットを拡大させつつピーニング処理を実行すると、ナゲットの凝固が不安定となって、散りが生じたり、溶接部が窪んだり、エネルギーが無駄になったりすることがある。通電電流I1に対する通電電流I2の比(I2/I1)を0.3以上1.0未満とする。0.3未満とすると、ピーニング処理による引張残留応力低減効果が不十分となる場合がある。
また、ピーニング処理の際の通電時間t2は、加圧力P2の付与の開始から、開放までとする。なお、電流値が通電電流I2になるまで、電流値をIcから漸増(アップスロープ)させても、電流値を直ちに通電電流I2にしてもよい。
(ピーニング処理の間の加圧力、加圧時間)
ピーニング処理の際の高い加圧力P2は、引張残留応力を低減させるために、スポット溶接時の加圧力P1の1.2倍以上とする。好ましくは、1.3倍以上である。上限は、特に限定されるものでないが、溶接部への過度の加圧を避けるために2.5倍以下が好ましい。
また、高い加圧力P2での加圧時間tfの上限は、溶接部の引張残留応力を低減させるため、0.4sとする。好ましくは0.2sである。下限は、0.02sが好ましい。
ピーニング処理の際の低い加圧力P3は、P3<P2である必要がある。これにより加圧力の上昇下降をすることができる。好ましくは、P2/P3≧1.2である。加圧力P3は、スポット溶接時の加圧力P1と同程度にするのが好ましい。P1よりも低い値とすることができるが、P3の下限は装置の能力によって決定される。加圧時間tiの上限は、生産性の観点から極力短時間とするのが好ましいため、0.4sとする。下限は、装置能力、即ち加圧力制御の安定性を考慮し、0.02sとする。
(加圧力の上昇下降の繰り返し回数)
加圧力の上昇下降の繰り返し回数(1つの加圧P2と次の1つの加圧P3で1回)は、2回以上とする。2回以上の加圧力の上昇下降を行なった後、最後に加圧力P2をtfの間付与することで、溶接部の引張残留応力を低減させることができる。そのため、加圧力の上昇下降の繰り返し回数は、2回以上とする。繰り返し回数の上限は、特に限定されるものでないが、作業時間を短縮するために10回とすることが好ましい。
また、繰り返しの加圧力P2は、上記(3)式の範囲内であれば、全て同じ加圧力であっても、異なる加圧力であってもよく、上記(4)式の範囲内であれば、全て同じ加圧時間であっても、異なる加圧時間であってもよい。ただし、この繰り返し工程における加圧力及び加圧時間は、全て同じにすると、作業効率上好ましい。
また、繰り返し行う加圧力P3への加圧は、上記(5)式の関係を満たせば、全て同じ加圧力であっても、異なる加圧力であってもよく、上記(6)式の範囲内であれば、全て同じ加圧時間であっても、異なる加圧時間であってもよい。ただし、この繰り返し工程における加圧力及び加圧時間は、全て同じにすると、作業効率上好ましい。
本発明のスポット溶接装置は、一般の鋼板部材のスポット溶接に使用できるのは言うまでもないが、特に980MPa以上の高強度鋼板を用いて作製した鋼板部材の溶接に適用する場合、ピーニング処理による耐遅れ破壊性の向上効果が顕著に表れる。その場合、板組は、全ての鋼板が引張強度980MPa以上のものである場合のみならず、少なくとも何れか1枚のみが上記引張強さを有する場合でもよい。
鋼板の板厚は、0.5〜3.2mmの範囲とするとよい。板厚が0.5mm未満であっても、溶接部の遅れ破壊特性の向上の効果は得られるが、引張試験時における溶接部への応力負荷が低く、また、溶接部で発生する引張残留応力の値が低いため、遅れ破壊が生じ難い。また、板厚が3.2mm超であっても、溶接部の遅れ破壊特性の向上の効果は得られるが、部材の軽量化がし難くなることがある。
次に、本発明の溶接装置を用いた溶接の実施例について説明する。
表1に示す合金化溶融亜鉛(GA)めっき鋼板を準備した。表2に、溶接装置の主制御手段に設定したスポット溶接の条件を示し、表3に、同じく設定したピーニング処理の条件を示す。
各試験番号において、同じ鋼板番号の2枚の鋼板を溶接して試験片を作製した。また、スポット溶接では、直径16mm、先端6mmのドームラジアス型電極を用いた。表3に示す繰り返し回数nは、加圧力P2を加圧時間tfの間付与し、加圧力P3を加圧時間tiの間付与することを1サイクルとしたときのサイクルの回数である。また、加圧力の上昇下降を所定回数行なった後、最後に加圧力P2を加圧時間tfの間付与した。
Figure 0006809303
Figure 0006809303
Figure 0006809303
溶接後の試験片に対して、塩酸浸漬試験を行った。この試験では、試験片を0.15規定の塩酸中に100時間浸漬した後の割れの有無を調べることにより行った。割れの有無は、スポット溶接して形成されたスポット溶接継手を、板表面に垂直でナゲットの中心を通る断面で切断し、この切断片からナゲットを含む試験片を切り出し、切断面を研磨し、研磨された切断面を光学顕微鏡で観察して行った。この試験を10片の試験片に実施し、その際の割れ数を確認した。表4に、塩酸浸漬試験の結果を示す。
Figure 0006809303
表4に示すように、ピーニング処理において、加圧力P1よりも高い加圧力P2とP2よりも低い加圧力を交互にそれぞれ2回以上繰り返すとともに、通電電流I2をI1より低い通電電流とした試験番号1、2、6及び7では、塩酸浸漬試験では割れの発生はなく、遅れ破壊特性に優れたスポット溶接継手が得られた。
それに対して、試験番号4、8は、加圧力P2を図4のように一定としたもので、加圧力の高低を繰り返すものではなく、試験番号3は、通電電流Icに対する通電電流I2の関係が適切でなく、試験番号5は、加圧力P2が加圧力P1よりも大きいものではなく、塩酸浸漬試験では割れが発生し、十分な遅れ破壊特性が得られなかった。
本発明の装置では、スポット溶接後に、溶接部のピーニング処理を施すので、耐水素脆化特性を向上した溶接継手を得ることができる。よって、本発明は、産業上の利用可能性が高いものである。
1 溶接機本体
2 上部アーム
3 下部アーム
4 電極駆動機構
5 上部電極ホルダ
6 可動側の溶接電極
7 下部電極ホルダ
8 固定溶接電極
11 支持部材
12 ボールねじ軸
13 ナットブロック
14 ガイドレール
15 サーボモータ
16、17 ベルト用歯車
18 タイミングベルト
19 取付け部材
20 溶接電源
21、22 電気接続部
30 制御装置
31 主制御手段
32 電極駆動制御手段
33 溶接電流制御手段
34 加圧力検出手段
35 電流検出手段
I 通電電流
I1 スポット溶接の際の通電電流
I2 ピーニング処理の際の通電電流
Ic 冷却時間における通電電流
P 加圧力
P1 スポット溶接時の加圧力
P2 加圧力上昇時の加圧力
P3 加圧力下降時の加圧力
t1 スポット溶接の際の通電時間
t2 ピーニング処理の際の通電時間
tc 冷却時間
tf 加圧力上昇時の加圧時間
ti 加圧力下降時の加圧時間

Claims (2)

  1. 少なくとも溶接箇所が重ね合わされた複数の鋼板部材を溶接するスポット溶接装置において、
    互いに対向して配置され、接近又は離隔する一対の溶接電極と、少なくとも溶接電極の一方を接近又は離隔する方向に駆動して、前記鋼板部材に加圧力を付与する電極駆動機構と、前記一対の溶接電極間に電流を通電する溶接電源と、前記電極駆動機構と前記溶接電源を同期して制御し、溶接電流と電極の加圧力を予め定められたシーケンスに基づいて変化させる制御装置とを備え、
    前記制御装置は、前記鋼板部材の溶接個所に前記溶接電極により加圧力P1を付与しながら、通電電流I1で通電して溶融金属を形成し、続いて、前記加圧力P1を付与したまま、冷却時間tcの間、通電電流を前記通電電流I1より低い通電電流Icとして鋼板部材の溶接個所を冷却し、続いて、通電電流を前記通電電流I1より低く、前記通電電流Icより高い通電電流I2で通電しながら、前記加圧力P1よりも高い加圧力P2を加圧時間tfの間付与し、その後直ちに前記加圧力P2よりも低い加圧力P3を加圧時間tiの間付与する、加圧力の上昇下降を2回以上繰り返し行うシーケンスに基づいて前記電極駆動機構と溶接電源を制御することを特徴とするスポット溶接装置。
  2. 前記制御装置は、溶接電流I1(kA)、溶接電流Ic(kA)、溶接電流I2(kA)、加圧力P1(kN)、加圧力P2(kN)、加圧力P3(kN)、加圧時間tf(s)、加圧時間ti(s)を、下記の式(1)〜(6)の関係を満たす範囲で制御することを特徴とする請求項1に記載の抵抗スポット溶接装置。
    0≦Ic<I1 ・・・(1)
    0.3≦I2/I1<1.0 ・・・(2)
    P2/P1≧1.2 ・・・(3)
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