JP5609209B2 - 表面改質された希土類系焼結磁石の製造方法 - Google Patents
表面改質された希土類系焼結磁石の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5609209B2 JP5609209B2 JP2010081642A JP2010081642A JP5609209B2 JP 5609209 B2 JP5609209 B2 JP 5609209B2 JP 2010081642 A JP2010081642 A JP 2010081642A JP 2010081642 A JP2010081642 A JP 2010081642A JP 5609209 B2 JP5609209 B2 JP 5609209B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- temperature
- magnet
- sintered magnet
- heat treatment
- minutes
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Description
上記の通り、希土類系焼結磁石に対して耐食性を付与する方法としては、その表面に金属被膜や樹脂被膜などの耐食性被膜を形成する方法が代表的であるが、近年、酸化性雰囲気下での熱処理を希土類系焼結磁石に対して行うことによって磁石の表面を改質する方法が簡易耐食性向上技術として注目されている。例えば、特許文献1や特許文献2には、酸素を利用して酸化性雰囲気を形成して熱処理する方法が記載され、特許文献3〜特許文献6には、水蒸気を単独で利用して、或いは、水蒸気に酸素を組み合わせて酸化性雰囲気を形成して熱処理する方法が記載されている。しかしながら、これらの方法で希土類系焼結磁石に対して表面改質を行っても、温度や湿度の管理がされていない輸送環境や保管環境などのような、温度や湿度が変動することで磁石の表面に微細な結露を繰り返し生じさせてしまう環境では必ずしも十分な耐食性が得られないこと、特許文献3〜特許文献6においては、水蒸気分圧は10hPa(1000Pa)以上が好適とされているが、このような水蒸気分圧が高い雰囲気下で熱処理を行うと、磁石の表面で起こる酸化反応によって水素が副産物として大量に生成し、磁石が生成した水素を吸蔵して脆化することで磁気特性が低下してしまうことが本発明者らの検討によって明らかになった。そこで本発明者らは、希土類系焼結磁石に対するより優れた表面改質方法として、酸素分圧と、特許文献3〜特許文献6において不適とされている10hPa未満の水蒸気分圧を適切に制御した酸化性雰囲気下での熱処理方法、具体的には、酸素分圧が1×102Pa〜1×105Paで水蒸気分圧が0.1Pa〜1000Pa(但し1000Paを除く)の雰囲気下、200℃〜600℃で熱処理を行う方法を特許文献7において提案した。
特許文献7において本発明者らが提案した希土類系焼結磁石に対する表面改質方法によれば、温度や湿度が変動する環境においても十分な耐食性が酸化熱処理によって付与されるとともに、酸化熱処理による磁気特性の低下を抑制することが可能となる。しかしながら、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動モータとして使用されたり、空調機のコンプレッサーなどに組み込まれたりするIPMモータで使用される希土類系焼結磁石を想定した場合、磁石が高温や高圧の環境下でオイルや冷媒に含まれる水分と接触することによって水素が発生し、発生した水素を磁石が吸蔵して脆化することによる磁気特性の低下を効果的に防止するためのより優れた表面改質方法の開発が望まれる。
また、請求項2記載の製造方法は、請求項1記載の製造方法において、常温から200℃までの昇温を5分間〜15分間で行うことを特徴とする。
また、請求項3記載の製造方法は、請求項1または2記載の製造方法において、200℃から熱処理を行う温度までの昇温を20分間〜30分間で行うことを特徴とする。
また、本発明のIPMモータの製造方法は、請求項4記載の通り、請求項1記載の製造方法によって製造された表面改質された希土類系焼結磁石をロータの内部に埋め込む工程を含んでなることを特徴とする。
本発明において特徴付けられるこの工程は、酸素分圧が1×102Pa〜1×105Paで水蒸気分圧が1×10−3Pa〜100Paの雰囲気下での2段階工程で行い、常温から200℃までの昇温を20分間未満で行った後、200℃から酸化熱処理を行う温度までの昇温を20分間以上で行うものである。なお、本発明において「常温」とは、表面改質が行われる希土類系焼結磁石が昇温を開始する時点で置かれている環境の温度(例えば室温)を指し、例示的には、日本工業規格のJIS Z 8703において5℃〜35℃と規定されている温度を意味する。
この工程は、磁石に対し、酸素分圧が1×102Pa〜1×105Paで水蒸気分圧が200Pa〜1000Pa(但し1000Paを除く)の雰囲気下、250℃〜600℃で熱処理を行うものである。上述したように、この工程で採用する水蒸気分圧は、磁石の表面で起こる酸化反応によってある程度の量の水素を生成させるに足るものであるが、先の磁石を常温から酸化熱処理を行う温度まで昇温する工程における後段の工程において、酸化熱処理によって生成する水素に対するバリア層として機能する酸化層を磁石の表面に十分に形成してあるので、磁石が水素を吸蔵することを効果的に抑制した状態で磁石に対して表面改質を行うことができる。磁石の表面に対して所望する改質をより効果的かつ低コストに行うためには、酸素分圧は5×103Pa〜5×104Paが望ましく、1×104Pa〜4×104Paがより望ましい。水蒸気分圧は250Pa〜900Paが望ましく、400Pa〜700Paがより望ましい。また、酸素分圧と水蒸気分圧の比率(酸素分圧/水蒸気分圧)は1〜400が望ましく、5〜100がより望ましい。処理室内の酸化性雰囲気は、例えば、これらの酸化性ガスを所定の分圧となるように個別に導入することによって形成してもよいし、これらの酸化性ガスが所定の分圧で含まれる露点を有する大気を導入することによって形成してもよい。また、処理室内には、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを共存させてもよい。
この工程は、磁石を常温から酸化熱処理を行う温度まで昇温する工程において採用する雰囲気下と同じ雰囲気下、即ち、酸素分圧が1×102Pa〜1×105Paで水蒸気分圧が1×10−3Pa〜100Paの雰囲気下で行うことが望ましい。このような雰囲気下で降温することにより、工程中に磁石の表面が結露することで磁石が腐食して磁気特性が低下するといった現象を防ぐことができる。
25質量%以上40質量%以下の希土類元素Rと、0.6質量%〜1.6質量%のB(硼素)と、残部Feおよび不可避不純物とを包含する合金を用意する。ここで、Rは重希土類元素RHを含んでいてもよい。また、Bの一部はC(炭素)によって置換されていてもよいし、Feの一部は(50質量%以下)は、他の遷移金属元素(例えば、CoまたはNi)によって置換されていてもよい。この合金は、種々の目的により、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種の添加元素Mを0.01〜1.0質量%程度含有していてもよい。
上記の合金は、原料合金の溶湯を例えばストリップキャスト法によって急冷して好適に作製され得る。以下、ストリップキャスト法による急冷凝固合金の作製を説明する。
まず、上記組成を有する原料合金をアルゴン雰囲気中において高周波溶解によって溶解し、原料合金の溶湯を形成する。次に、この溶湯を1350℃程度に保持した後、単ロール法によって急冷し、例えば厚さ約0.3mmのフレーク状合金鋳塊を得る。こうして作製した合金鋳片を、次の水素粉砕処理前に例えば1〜10mmのフレーク状に粉砕する。なお、ストリップキャスト法による原料合金の製造方法は、例えば、米国特許第5、383、978号明細書に開示されている。
[粗粉砕工程]
上記のフレーク状に粗く粉砕された合金鋳片を水素炉の内部へ収容する。次に、水素炉の内部で水素脆化処理(以下、「水素粉砕処理」や単に「水素処理」と称する場合がある)工程を行う。水素粉砕処理後の粗粉砕粉合金粉末を水素炉から取り出す際、粗粉砕粉が大気と接触しないように、不活性雰囲気下で取り出し動作を実行することが好ましい。そうすれば、粗粉砕粉が酸化・発熱することが防止され、磁石の磁気特性の低下が抑制できるからである。
水素粉砕処理によって、希土類合金は0.1mm〜数mm程度の大きさに粉砕され、その平均粒径は500μm以下となる。水素粉砕処理後、脆化した原料合金をより細かく解砕するとともに冷却することが好ましい。比較的高い温度状態のまま原料を取り出す場合は、冷却処理の時間を相対的に長くすればよい。
[微粉砕工程]
次に、粗粉砕粉に対してジェットミル粉砕装置を用いて微粉砕を実行する。本実施形態で使用するジェットミル粉砕装置にはサイクロン分級機が接続されている。ジェットミル粉砕装置は、粗粉砕工程で粗く粉砕された希土類合金(粗粉砕粉)の供給を受け、粉砕機内で粉砕する。粉砕機内で粉砕された粉末はサイクロン分級機を経て回収タンクに集められる。こうして、0.1〜20μm程度(典型的には平均粒径3〜5μm)の微粉末を得ることができる。このような微粉砕に用いる粉砕装置は、ジェットミルに限定されず、アトライタやボールミルであってもよい。粉砕に際して、ステアリン酸亜鉛などの潤滑剤を粉砕助剤として用いてもよい。
[プレス成形]
本実施形態では、上記方法で作製された磁性粉末に対し、例えばロッキングミキサー内で潤滑剤を例えば0.3wt%添加・混合し、潤滑剤で合金粉末粒子の表面を被覆する。次に、上述の方法で作製した磁性粉末を公知のプレス装置を用いて配向磁界中で成形する。印加する磁界の強度は、例えば1.5〜1.7テスラ(T)である。また、成形圧力は、成形体のグリーン密度が例えば4〜4.5g/cm3程度になるように設定される。
[焼結工程]
上記の粉末成形体に対して、650〜1000℃の範囲内の温度で10〜240分間保持する工程と、その後、上記の保持温度よりも高い温度(例えば、1000〜1200℃)で焼結を更に進める工程とを順次行うことが好ましい。焼結時、特に液相が生成されるとき(温度が650〜1000℃の範囲内にあるとき)、粒界相中のRリッチ相が融け始め、液相が形成される。その後、焼結が進行し、焼結磁石体が形成される。焼結工程の後、時効処理(400℃〜700℃)や寸法調整のための研削を行ってもよい。
Nd:18.5、Pr:5.7、Dy:7.2、B:1.00、Co:0.9、Cu:0.1、Al:0.2、残部:Fe(単位は質量%)の組成を有する厚さ0.2mm〜0.3mmの合金薄片をストリップキャスト法により作製した。
次に、この合金薄片を容器に充填し、水素処理装置内に収容した。そして、水素処理装置内を圧力500kPaの水素ガスで満たすことにより、室温で合金薄片に水素吸蔵させた後、放出させた。このような水素処理を行うことにより、合金薄片を脆化し、大きさ約0.15mm〜0.2mmの粗粉砕粉末を作製した。
上記の水素処理により作製した粗粉砕粉末に対し粉砕助剤として0.04質量%のステアリン酸亜鉛を添加し混合した後、ジェットミル装置による粉砕工程を行うことにより、粉末粒径が約3μmの微粉末を作製した。
こうして作製した微粉末をプレス装置により成形し、粉末成形体を作製した。具体的には、印加磁界中で粉末粒子を磁界配向した状態で圧縮し、プレス成形を行った。その後、成形体をプレス装置から抜き出し、真空炉により1050℃で4時間の焼結工程を行い、焼結体ブロックを得た。
得られた焼結体ブロックの表面に対し、平面研削盤(大昌精機社製)を用いて平面研削加工を行い(砥石の番手:♯100、砥石の回転数:1500rpm、研削盤への磁石の送り込み速度:0.6m/分)、厚さ6mm×縦7mm×横7mmに寸法調整した。次に、この成形体をアルコール洗浄した後、真空中にて490℃で2.5時間の時効処理を行い、焼結磁石を得た。
(1)昇温工程
常温(25℃を意味する。以下同じ)から酸化熱処理を行う温度(400℃)までの昇温を、露点−40℃の大気(酸素分圧20000Pa,水蒸気分圧12.9Pa)の雰囲気下での2段階工程で行い、前段の工程(第1昇温工程)として常温から200℃までの昇温を700℃/時間の昇温速度にて15分間で行った後、後段の工程(第2昇温工程)として200℃から400℃までの昇温を480℃/時間の昇温速度にて25分間で行った。
(2)酸化熱処理工程
露点0℃の大気(酸素分圧20000Pa,水蒸気分圧600Pa,酸素分圧/水蒸気分圧=33.3)の雰囲気下、400℃で30分間の熱処理を行った。
(3)降温工程
昇温工程で採用した雰囲気下と同様の雰囲気下(露点−40℃の大気:酸素分圧20000Pa,水蒸気分圧12.9Pa)、自然放冷にて400℃から常温まで行った。
実施例1と同じ方法で得た焼結体ブロックに対し、実施例1と同じ方法で時効処理を行った後、実施例1と同じ方法で寸法調整を行って焼結磁石を得た。得られた焼結磁石をアルコール洗浄した後、実施例1と同じ方法で表面改質を行った。その結果、実施例1において焼結磁石の表面に形成された改質層と同様の構成を有する改質層が焼結磁石の表面に形成された。焼結磁石の表面に形成された改質層の厚みは2.4μmであり、最表層の厚みは105nmであった。表面改質の方法と結果のまとめを表2に示す。
第1昇温工程を1750℃/時間の昇温速度にて6分間で行った後、第2昇温工程を480℃/時間の昇温速度にて25分間で行うこと以外は実施例1と同じ方法で焼結磁石に対して表面改質を行った。その結果、実施例1において焼結磁石の表面に形成された改質層と同様の構成を有する改質層が焼結磁石の表面に形成された。焼結磁石の表面に形成された改質層の厚みは2.2μmであり、最表層の厚みは95nmであった。表面改質の方法と結果のまとめを表2に示す。
第1昇温工程を1050℃/時間の昇温速度にて10分間で行った後、第2昇温工程を600℃/時間の昇温速度にて20分間で行うこと以外は実施例1と同じ方法で焼結磁石に対して表面改質を行った。その結果、実施例1において焼結磁石の表面に形成された改質層と同様の構成を有する改質層が焼結磁石の表面に形成された。焼結磁石の表面に形成された改質層の厚みは1.7μmであり、最表層の厚みは65nmであった。表面改質の方法と結果のまとめを表2に示す。
第1昇温工程を1050℃/時間の昇温速度にて10分間で行った後、第2昇温工程を150℃/時間の昇温速度にて80分間で行うこと以外は実施例1と同じ方法で焼結磁石に対して表面改質を行った。その結果、実施例1において焼結磁石の表面に形成された改質層と同様の構成を有する改質層が焼結磁石の表面に形成された。焼結磁石の表面に形成された改質層の厚みは2.6μmであり、最表層の厚みは110nmであった。表面改質の方法と結果のまとめを表2に示す。
第1昇温工程を1050℃/時間の昇温速度にて10分間で行った後、第2昇温工程を360℃/時間の昇温速度にて25分間で行い、酸化熱処理工程を350℃で120分間行うこと以外は実施例1と同じ方法で焼結磁石に対して表面改質を行った。その結果、実施例1において焼結磁石の表面に形成された改質層と同様の構成を有する改質層が焼結磁石の表面に形成された。焼結磁石の表面に形成された改質層の厚みは1.5μmであり、最表層の厚みは75nmであった。表面改質の方法と結果のまとめを表2に示す。
Nd:15.4、Pr:4.2、Dy:11.7、B:0.97、Co:2.0、Cu:0.1、Al:0.1、残部:Fe(単位は質量%)の組成を有する合金薄片を原料として用いること以外は実施例1と同じ方法で焼結磁石に対して表面改質を行った。その結果、実施例1において焼結磁石の表面に形成された改質層と同様の構成を有する改質層が焼結磁石の表面に形成された。焼結磁石の表面に形成された改質層の厚みは2.4μmであり、最表層の厚みは100nmであった。表面改質の方法と結果のまとめを表2に示す。
第1昇温工程を700℃/時間の昇温速度にて15分間で行った後、第2昇温工程を1200℃/時間の昇温速度にて10分間で行うこと以外は実施例1と同じ方法で焼結磁石に対して表面改質を行った。その結果、実施例1において焼結磁石の表面に形成された改質層と同様の構成を有する改質層が焼結磁石の表面に形成された。焼結磁石の表面に形成された改質層の厚みは2.1μmであり、最表層の厚みは70nmであった。表面改質の方法と結果のまとめを表2に示す。
実施例1と同じ方法で得た焼結体ブロックに対し、実施例1と同じ方法で時効処理を行った後、実施例1と同じ方法で寸法調整を行って焼結磁石を得た。得られた焼結磁石をアルコール洗浄した後、比較例1と同じ方法で表面改質を行った。その結果、実施例1において焼結磁石の表面に形成された改質層と同様の構成を有する改質層が焼結磁石の表面に形成された。焼結磁石の表面に形成された改質層の厚みは2.2μmであり、最表層の厚みは75nmであった。表面改質の方法と結果のまとめを表2に示す。
第1昇温工程を420℃/時間の昇温速度にて25分間で行った後、第2昇温工程を480℃/時間の昇温速度にて25分間で行うこと以外は実施例1と同じ方法で焼結磁石に対して表面改質を行った。その結果、実施例1において焼結磁石の表面に形成された改質層と同様の構成を有する改質層が焼結磁石の表面に形成された。焼結磁石の表面に形成された改質層の厚みは2.2μmであり、最表層の厚みは75nmであった。表面改質の方法と結果のまとめを表2に示す。
第1昇温工程を900℃/時間の昇温速度にて11.7分間で行った後、第2昇温工程を900℃/時間の昇温速度にて13.3分間で行うこと以外は実施例1と同じ方法で焼結磁石に対して表面改質を行った。その結果、実施例1において焼結磁石の表面に形成された改質層と同様の構成を有する改質層が焼結磁石の表面に形成された。焼結磁石の表面に形成された改質層の厚みは1.9μmであり、最表層の厚みは60nmであった。表面改質の方法と結果のまとめを表2に示す。
第1昇温工程を900℃/時間の昇温速度にて11.7分間で行った後、第2昇温工程を900℃/時間の昇温速度にて13.3分間で行い、酸化熱処理工程を400℃で120分間行うこと以外は実施例1と同じ方法で焼結磁石に対して表面改質を行った。その結果、実施例1において焼結磁石の表面に形成された改質層と同様の構成を有する改質層が焼結磁石の表面に形成された。焼結磁石の表面に形成された改質層の厚みは6.1μmであり、最表層の厚みは200nmであった。表面改質の方法と結果のまとめを表2に示す。
JIS H8502−1999に基づく中性塩水噴霧サイクル試験方法を参考にし、塩水噴霧を除いた乾燥と湿潤だけのサイクル試験を、実施例1〜実施例7と比較例1〜比較例5で得た表面改質された焼結磁石それぞれ10個(別々のロットで得たサンプル)に対して行い(サイクル数:3および6)、試験後のレイティングナンバ評価(JIS H8502−1999に基づく腐食欠陥評価)を行った。レイティングナンバが7以上のサンプルを合格品、7未満のサンプルを不合格品と判定し、10個のサンプルのうち不合格品と判定されたサンプルの個数を調べた。結果を表3に示す。また、表3には、実施例1で得た表面改質を行う前の焼結磁石の評価結果をあわせて示す(参考例)。
実施例1〜実施例7と比較例1〜比較例5で得た表面改質された焼結磁石それぞれ10個(別々のロットで得たサンプル)について、表面改質を行う前の固有保磁力と表面改質を行った後の固有保磁力を磁気測定装置(TPM−2−10:東英工業社製)を用いて測定し、((1−表面改質を行った後の固有保磁力/表面改質を行う前の固有保磁力)×100)の数式で表面改質による固有保磁力の低下率を算出し、10個のサンプルの固有保磁力の低下率の平均値、最大値、最小値を求めるとともに、表面改質を行ったことで明らかな磁気特性の低下が発生したと判定することができる固有保磁力の低下率が1%を超えるサンプルの個数を調べた。結果を表4に示す。
実施例1〜実施例7と比較例1〜比較例5で得た表面改質された焼結磁石それぞれ10個(別々のロットで得たサンプル)を、圧力容器に満たした、純水を0.5質量%添加したオートマチックトランスミッションフリュードオイル(Castrol社製)に、底部に存在する純水にサンプルが触れないように底上げして浸漬した。容器の蓋を締結した後、容器を150℃で900時間保持した。容器からサンプルを取り出した後、磁気測定装置(TPM−2−10:東英工業社製)を用いて角型比(Hk/HcJ)を測定し、この試験を行ったことで明らかな磁気特性の低下が発生したと判定することができる角型比が90%以下のサンプルの個数を調べた(試験を行う前の角型比はいずれのサンプルも95%程度)。結果を表5に示す。また、表5には、実施例1で得た表面改質を行う前の焼結磁石(参考例1)の評価結果、この焼結磁石の表面にリン酸濃度が0.07mol/Lのリン酸水溶液を用いてリン酸化成被膜を形成した焼結磁石(参考例2)の評価結果、さらにリン酸化成被膜の表面にカチオン電着塗装によって膜厚が約20μmのエポキシ樹脂被膜を形成した焼結磁石(参考例3)の評価結果、実施例1で得た表面改質を行う前の焼結磁石の表面に特開2000−335921号公報に記載の蒸着被膜形成装置を用いて膜厚が約7μmのAl被膜を形成した後、ショットピーニングを行ってからさらにAl被膜の表面に日本パーカライジング社のパルコート3756を用いてリン酸ジルコニウム系化成被膜を形成した焼結磁石(参考例4)の評価結果をあわせて示す。
実施例1〜実施例7と比較例1〜比較例5で得た表面改質された焼結磁石それぞれ10個(別々のロットで得たサンプル)を、圧力容器に満たした、油中水分量が500ppmとなるようにカールフィッシャー水分計を用いて調整したポリオールエステル系冷凍機油(エステル油)に浸漬した。容器の蓋を締結した後、ロータリーポンプを用いて容器の内部を10分間真空引きしてから、140℃に保持した時に絶対圧力が5MPaとなる量のHFC系冷媒R410Aを封入し、容器を140℃で1300時間保持した。容器からサンプルを取り出した後、上記の水分を含むオイルに対する耐性評価と同じ評価を行った。結果を表6に示す。また、表6には、上記の参考例1〜参考例4の評価結果をあわせて示す。
実施例1と同じ方法で得た厚さ9mm×縦5mm×横5mmに寸法調整した焼結磁石に対して実施例1と同じ方法で表面改質を行った焼結磁石(実施例)と、比較例1と同じ方法で表面改質を行った焼結磁石(比較例)それぞれ10個(別々のロットで得たサンプル)について、ゼーベック係数測定装置(ZEM−1:ULVAC社製)を用いて電気抵抗率を測定し、10個のサンプルの電気抵抗率の平均値、最大値、最小値を求めた。なお、電気抵抗率の測定は、サンプルを2つ重ねて厚さ18mm×縦5mm×横5mmの形態で行った。結果を表7に示す。また、表7には、表面改質を行う前の焼結磁石(参考例)の評価結果をあわせて示す。
実施例1で得た表面改質された焼結磁石をロータの内部に埋め込む工程を経て、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動モータとして使用されるIPMモータを製造した。
Claims (4)
- 希土類系焼結磁石に対し、酸素分圧が1×102Pa〜1×105Paで水蒸気分圧が200Pa〜1000Pa(但し1000Paを除く)の雰囲気下、250℃〜600℃で熱処理を行う工程を含んでなり、かつ、常温から熱処理を行う温度までの昇温を、酸素分圧が1×102Pa〜1×105Paで水蒸気分圧が1×10−3Pa〜100Paの雰囲気下での2段階工程で行い、常温から200℃までの第1昇温工程を、昇温速度を700℃/時間〜2000℃/時間とし、工程時間を20分間未満とするヒートパターンによって行った後、200℃から熱処理を行う温度までの第2昇温工程を、昇温速度を100℃/時間〜650℃/時間とし、工程時間を20分間以上とするヒートパターンによって行うことを特徴とする表面改質された希土類系焼結磁石の製造方法。
- 常温から200℃までの昇温を5分間〜15分間で行うことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 200℃から熱処理を行う温度までの昇温を20分間〜30分間で行うことを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法によって製造された表面改質された希土類系焼結磁石をロータの内部に埋め込む工程を含んでなることを特徴とするIPMモータの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010081642A JP5609209B2 (ja) | 2009-09-29 | 2010-03-31 | 表面改質された希土類系焼結磁石の製造方法 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009224628 | 2009-09-29 | ||
JP2009224628 | 2009-09-29 | ||
JP2010081642A JP5609209B2 (ja) | 2009-09-29 | 2010-03-31 | 表面改質された希土類系焼結磁石の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2011097004A JP2011097004A (ja) | 2011-05-12 |
JP5609209B2 true JP5609209B2 (ja) | 2014-10-22 |
Family
ID=44113580
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010081642A Active JP5609209B2 (ja) | 2009-09-29 | 2010-03-31 | 表面改質された希土類系焼結磁石の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5609209B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2590188A4 (en) * | 2010-06-30 | 2017-04-12 | Hitachi Metals, Ltd. | Method of producing surface-modified rare earth sintered magnet |
CN110911149A (zh) * | 2019-11-28 | 2020-03-24 | 烟台首钢磁性材料股份有限公司 | 一种提高钕铁硼烧结永磁体矫顽力的制备方法 |
JP2022080085A (ja) * | 2020-11-17 | 2022-05-27 | 株式会社東芝 | 回転電機の回転子、および回転電機 |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
BRPI0817453B1 (pt) * | 2007-09-27 | 2019-10-08 | Hitachi Metals, Ltd. | Magneto sinterizado à base de metal terra rara com superfície modificada e método para produção de magneto sinterizado à base de metal terra rara com superfície modificada |
-
2010
- 2010-03-31 JP JP2010081642A patent/JP5609209B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2011097004A (ja) | 2011-05-12 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4636207B2 (ja) | 表面改質された希土類系焼結磁石の製造方法および表面改質された希土類系焼結磁石 | |
RU2538272C2 (ru) | Способ производства магнитов из редкоземельных металлов | |
RU2389098C2 (ru) | Функционально-градиентный редкоземельный постоянный магнит | |
CN103377791B (zh) | 稀土烧结磁体及其制备方法 | |
JP5509850B2 (ja) | R−Fe−B系希土類焼結磁石およびその製造方法 | |
JP5572673B2 (ja) | R−t−b系希土類焼結磁石用合金、r−t−b系希土類焼結磁石用合金の製造方法、r−t−b系希土類焼結磁石用合金材料、r−t−b系希土類焼結磁石、r−t−b系希土類焼結磁石の製造方法およびモーター | |
JP4702549B2 (ja) | 希土類永久磁石 | |
WO2007119553A1 (ja) | 希土類永久磁石材料の製造方法 | |
JP5900335B2 (ja) | 表面改質された希土類系焼結磁石の製造方法 | |
JP7247670B2 (ja) | R-t-b系永久磁石およびその製造方法 | |
JP5609209B2 (ja) | 表面改質された希土類系焼結磁石の製造方法 | |
JP5786398B2 (ja) | 表面改質されたR−Fe−B系焼結磁石およびその製造方法 | |
JP5691515B2 (ja) | 耐食性R−Fe−B系焼結磁石の製造方法 | |
JP5262903B2 (ja) | 表面改質された希土類系焼結磁石の製造方法 | |
JP5326746B2 (ja) | 表面改質されたR−Fe−B系焼結磁石の製造方法 | |
JP6037213B2 (ja) | 表面改質されたR−Fe−B系焼結磁石の製造方法 | |
CN108140481B (zh) | R-t-b系烧结磁体的制造方法和r-t-b系烧结磁体 | |
JP2019176011A (ja) | R‐t‐b系焼結磁石 | |
WO2008075712A1 (ja) | 永久磁石及び永久磁石の製造方法 | |
JP5914974B2 (ja) | 表面改質されたR−Fe−B系焼結磁石の製造方法 | |
JP5262902B2 (ja) | 表面改質された希土類系焼結磁石の製造方法 | |
JP5885907B2 (ja) | 希土類焼結磁石及びその製造方法、並びにモータ及び自動車 | |
EP1494250B1 (en) | Rare earth sintered magnet and method for production thereof | |
JP2005285795A (ja) | 希土類磁石及びその製造方法 | |
JP5445125B2 (ja) | 表面改質されたR−Fe−B系焼結磁石の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20121221 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20131024 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20131029 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20140106 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20140805 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20140818 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5609209 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |