本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る駆動装置Dの概略構成を示す模式図である。駆動装置Dは、車両の車輪Wの駆動力源として内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方を用いるハイブリッド車両用の駆動装置(ハイブリッド駆動装置)である。この駆動装置Dは、いわゆる1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。以下、本実施形態に係る駆動装置Dについて、詳細に説明する。
1.駆動装置の全体構成
図1に示すように、この駆動装置Dは、内燃機関Eに駆動連結される入力軸Iと、回転電機MGと、変速機構TMと、回転電機MGに駆動連結されると共に変速機構TMに駆動連結される中間軸Mと、車輪Wに駆動連結される出力軸Oと、を備えている。また、駆動装置Dは、入力軸Iと中間軸Mとの間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能なクラッチCLと、カウンタギヤ機構Cと、出力用差動歯車装置DFと、を備えている。これらの各構成は、ケース(駆動装置ケース)1内に収容されている。
なお、「駆動連結」は、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を表し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、「駆動力」はトルクと同義で用いている。また、本実施形態では、特に明記して区別している場合を除き、同軸上に配置される入力軸I、中間軸M、及び回転電機MGの回転軸心を基準として「軸方向」、「径方向」、及び「周方向」の各方向を規定している。また、本実施形態では、回転電機MGに対して内燃機関E側(図2における右側)を軸第一方向A1側と定義し、回転電機MGに対して内燃機関Eとは反対側(図2における左側)を軸第二方向A2側と定義している。
内燃機関Eは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す装置である。内燃機関Eとしては、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等を用いることができる。内燃機関Eのクランクシャフト等の出力回転軸は、入力軸Iに駆動連結されている。入力軸IはクラッチCLを介して回転電機MG及び中間軸Mに駆動連結されており、入力軸IはクラッチCLにより選択的に回転電機MG及び中間軸Mに駆動連結される。このクラッチCLの係合状態では、入力軸Iを介して内燃機関Eと回転電機MGとが駆動連結され、クラッチCLの解放状態では内燃機関Eと回転電機MGとが分離される。
回転電機MGは、ステータStとロータRoとを有して構成され、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果たすことが可能とされている。そのため、回転電機MGは、蓄電装置(図示せず)と電気的に接続されている。蓄電装置としては、バッテリやキャパシタ等を用いることができる。回転電機MGは、バッテリから電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関Eのトルクや車両の慣性力により発電した電力をバッテリに供給して蓄電させる。回転電機MGのロータRoは、中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。この中間軸Mは、変速機構TMの入力軸(変速入力軸)となっている。
変速機構TMは、中間軸Mの回転速度を所定の変速比で変速して変速出力ギヤGへ伝達する機構である。このような変速機構TMとして、本実施形態では、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた自動有段変速機構が用いられている。なお、変速機構TMとして、変速比を無段階に変更可能な自動無段変速機構や、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた手動式有段変速機構等を用いても良い。変速機構TMは、中間軸Mに入力される回転及びトルクを、各時点における所定の変速比に応じて変速すると共にトルク変換しつつ、変速出力ギヤGへ伝達する。
変速出力ギヤGは、カウンタギヤ機構Cを介して出力用差動歯車装置DFに駆動連結されている。出力用差動歯車装置DFは、出力軸Oを介して車輪Wに駆動連結されている。出力用差動歯車装置DFは、当該出力用差動歯車装置DFに入力される回転及びトルクを左右2つの車輪Wに分配して伝達する。これにより、駆動装置Dは、内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。
なお、本実施形態に係る駆動装置Dでは、入力軸Iと中間軸Mとが同軸上に配置されると共に、出力軸Oが入力軸I及び中間軸Mとは異なる軸上に互いに平行に配置された複軸構成とされている。このような構成は、例えばFF(Front Engine Front Drive)車両に搭載される駆動装置Dの構成として適している。
2.駆動装置の各部の構成
次に、本実施形態に係る駆動装置Dの各部の構成について説明する。図2に示すように、ケース1は、少なくとも回転電機MGを収容している。ケース1は、回転電機MGや変速機構TM等の各収容部品の外周を覆うケース周壁2と、当該ケース周壁2の軸第一方向A1側の開口を塞ぐ第一支持壁3と、当該第一支持壁3よりも軸第二方向A2側において軸方向で回転電機MGと変速機構TMとの間に配置される第二支持壁11と、を備えている。また、ケース1は、ケース周壁2の軸第二方向A2側の端部を塞ぐ端部支持壁(図示せず)を備えている。
第一支持壁3は、回転電機MG及びクラッチCLの軸第一方向A1側を径方向及び周方向に延在している。第一支持壁3は、回転電機MG及びクラッチCLに対して軸第一方向A1側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。第一支持壁3は軸方向の貫通孔を有しており、この貫通孔に入力軸Iが挿通されている。これにより、入力軸Iが第一支持壁3を貫通してケース1内に挿入されている。第一支持壁3は、軸第二方向A2側に向かって軸方向に突出する円筒状突出部4を有している。第一支持壁3は、この円筒状突出部4により、回転電機MGの軸第一方向A1側でロータ支持部材30を回転可能に支持している。
第二支持壁11は、回転電機MG及びクラッチCLの軸第二方向A2側を径方向及び周方向に延在している。本実施形態では、第二支持壁11が本発明における「支持壁」に相当する。第二支持壁11は、回転電機MG及びクラッチCLに対して軸第二方向A2側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。本実施形態では、第二支持壁11は、ケース周壁2から径方向内側に延びるように形成された仕切壁12と、オイルポンプ19を収容するポンプ室を形成するポンプボディ13及びポンプカバー14とを備えている。仕切壁12の径方向中央部には中央開口部12aが形成されており、ポンプボディ13がこの中央開口部12aに挿通されて仕切壁12の径方向内側に配置されている。ポンプボディ13に対して軸第二方向A2から接するようにポンプカバー14が配置されている。
ポンプボディ13及びポンプカバー14はそれぞれ軸方向の貫通孔を有しており、この貫通孔に中間軸Mが挿通されている。これにより、中間軸Mが第二支持壁11を貫通している。また、同軸状に配置されるポンプボディ13と中間軸Mとの間には、ロータ支持部材30の円筒状突出部42が挿入されている。ポンプボディ13は、軸第一方向A1側に向かって軸方向に突出する円筒状突出部15を有している。この円筒状突出部15の径方向外側で、回転センサ21のセンサステータ23がポンプボディ13に固定されている。第二支持壁11は、円筒状突出部15により、回転電機MGの軸第二方向A2側でロータ支持部材30を回転可能に支持している。
ポンプボディ13とポンプカバー14との間に形成されるポンプ室に、オイルポンプ19が収容されている。このオイルポンプ19は、ドライブギヤ19aとドリブンギヤ19bとを有する内接型のギヤポンプとされている。ドライブギヤ19aは、ロータ支持部材30の円筒状突出部42と一体回転するようにスプライン連結されている。オイルポンプ19は、ロータ支持部材30の回転に伴ってオイルパン(図示せず)から油を吸引し、その吸引した油を吐出して、クラッチCLや変速機構TM、回転電機MG等に油を供給する。なお、ポンプボディ13、ポンプカバー14、及び中間軸M等の内部には、それぞれ油路が形成されており、オイルポンプ19により吐出された油は、それらの油路を介して油供給対象となる各部位に供給される。
図2に示すように、第一支持壁3を貫通するように配設された入力軸Iは、第一支持壁3の軸第一方向A1側でダンパを介して内燃機関Eに駆動連結されている。入力軸Iの軸第二方向A2側の端部の径方向中心部には、軸方向に延びる孔部Iaが形成されている。孔部Iaの内周面と入力軸Iの外周面とは、径方向に延びる連通孔を介して連通している。また、入力軸Iは、その軸第二方向A2側の端部を径方向外側に延びるように形成されたフランジ部を介して、クラッチハブ27に連結されている(図3を参照)。
第二支持壁11を貫通するように配設された中間軸Mは、ロータ支持部材30の円筒状突出部42にスプライン連結されている。中間軸Mの軸第一方向A1側の端部は、入力軸Iに形成された孔部Iaに対して軸方向に挿入されている。中間軸Mはその内部に第一油路L1及び第三油路L3を含む複数の油路を有する。第一油路L1は、クラッチCLの作動油圧室H1に連通するように形成されている。第三油路L3は、入力軸Iの孔部Iaを介してクラッチCLの循環油圧室H2に連通するように形成されている。
クラッチCLは、入力軸Iと中間軸Mとの間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能に設けられ、内燃機関Eと回転電機MGとを選択的に駆動連結する摩擦係合装置である。クラッチCLは、湿式多板クラッチ機構として構成されている。図3等に示すように、クラッチCLは、クラッチハブ27、複数の摩擦プレート28、及びピストン29を備えている。これらは、その周囲を覆うように形成されたロータ支持部材30の内部に収容されている。このように、本実施形態では、ロータ支持部材30はクラッチCLを収容するクラッチハウジングとして機能している。なお、ロータ支持部材30はクラッチドラムとしても機能するように構成されている。中間軸Mにスプライン連結されたロータ支持部材30と入力軸Iに一体的に連結されたクラッチハブ27との間には、複数の摩擦プレート28が設けられている。摩擦プレート28に対して軸第二方向A2側には、押圧部材としてのピストン29が配置されている。
本実施形態では、ロータ支持部材30とピストン29との間には液密状態の作動油圧室H1が形成される。この作動油圧室H1には、オイルポンプ19により吐出され、油圧制御装置VBにより所定の油圧に調整された油が、第一油路L1を介して供給される。作動油圧室H1に供給される油圧に応じて、クラッチCLの係合及び解放が制御される。また、ピストン29に対して作動油圧室H1とは反対側には、循環油圧室H2が形成される。この循環油圧室H2には、オイルポンプ19により吐出された油が、ロータ支持部材30の円筒状突出部42に形成された第二油路L2を介して供給される。
図2に示すように、クラッチCLの径方向外側に回転電機MGが配置されている。回転電機MGは、径方向視でクラッチCLと重複する位置に配置されている。回転電機MGのステータStはケース1に固定されている。ロータRoは、ステータStの径方向内側でロータ支持部材30を介して回転自在に支持されている。ステータStは、ケース1に固定される円筒状のステータコアと、当該ステータコアに巻装されるコイルとを備えている。なお、コイルのうち、ステータコアの軸方向の両側の端面から軸方向に突出する部分がコイルエンド部Ceである。本例では、軸第一方向A1側のコイルエンド部を第一コイルエンド部Ce1とし、軸第二方向A2側のコイルエンド部を第二コイルエンド部Ce2とする。
ロータ支持部材30は、ケース1に対して回転可能な状態でロータRoを支持している。ロータ支持部材30は、その外周部にロータRoを固定した状態で、軸第一方向A1側で第一軸受61を介して第一支持壁3に支持され、軸第二方向A2側で第二軸受62を介して第二支持壁11を構成するポンプボディ13に支持されている。また、ロータ支持部材30は、その内部に配置されるクラッチCLの周囲を覆うように形成されている。そのため、ロータ支持部材30は、クラッチCLの軸第一方向A1側を径方向に延びる第一径方向延在部31と、クラッチCLの軸第二方向A2側を径方向に延びる第二径方向延在部41と、クラッチCLの径方向外側を軸方向に延びる軸方向延在部51とを備えている。
図3等に示すように、第一径方向延在部31は、クラッチCLの軸第一方向A1側を径方向及び周方向に延在している。第一径方向延在部31は軸方向の貫通孔を有しており、この貫通孔に入力軸Iが挿通されている。これにより、入力軸Iが第一径方向延在部31を貫通してロータ支持部材30内に挿入されている。第一径方向延在部31は、全体として均一な厚みを有すると共に径方向内側の部位が径方向外側の部位よりも僅かに軸第二方向A2側に位置するように皿状に形成されている。また、第一径方向延在部31は、その径方向内側の端部に、軸第一方向A1側に向かって突出する円筒状突出部32を有している。円筒状突出部32は、入力軸Iの周囲を取り囲むように形成されている。円筒状突出部32と入力軸Iとの間には第三軸受63が配設されている。また、円筒状突出部32と第一支持壁3の円筒状突出部4との間には第一軸受61が配設されている。第一軸受61と第三軸受63とは、径方向視で互いに重複する位置に配置されている。また、第一軸受61及び第三軸受63は、径方向視で第一コイルエンド部Ce1と重複する位置に配置されている。
第二径方向延在部41は、クラッチCLの軸第二方向A2側を径方向及び周方向に延在している。第二径方向延在部41は軸方向の貫通孔を有しており、この貫通孔に中間軸Mが挿通されている。これにより、中間軸Mが第二径方向延在部41を貫通してロータ支持部材30内に挿入されている。第二径方向延在部41は、少なくともその一部が全体として均一な厚みを有すると共に径方向に平坦に延びる平板状に形成されている。すなわち、第二径方向延在部41は、径方向に平坦に延びる平板状部43を有する。また、第二径方向延在部41は、平板状部43の径方向内側の端部から軸第二方向A2側に向かって突出する円筒状突出部42を有している。円筒状突出部42は、中間軸Mの周囲を取り囲むように形成されている。円筒状突出部42は、その軸方向の一部の内周面が周方向全体に亘って中間軸Mの外周面に当接している。また、円筒状突出部42とポンプボディ13の円筒状突出部15との間には第二軸受62が配設されている。本実施形態では、第二軸受62が本発明における「支持軸受」に相当する。
円筒状突出部42は、中間軸Mと一体回転するように、軸第二方向A2側の端部の内周部において中間軸Mにスプライン連結されている。また、円筒状突出部42は、オイルポンプ19のドライブギヤ19aと一体回転するように、軸第二方向A2側の端部の外周部においてドライブギヤ19aにスプライン連結されている。従って、この円筒状突出部42は、ドライブギヤ19aを回転駆動するポンプ駆動軸として機能する。また、第二径方向延在部41とピストン29との間に、作動油圧室H1が形成されている。
本実施形態においては、第二径方向延在部41は、平板状部43の径方向外側に、当該平板状部43に対して軸第二方向A2側に突出するように形成された、全体として円筒状のセンサ取付部44を有する。本例では、センサ取付部44は軸方向及び径方向に所定の厚みを有している。センサ取付部44は、軸方向視で摩擦プレート28及びピストン29の押圧部と重複する位置に配置されている。また、センサ取付部44は、径方向視で第二軸受62及び第二コイルエンド部Ce2と重複する位置に配置されている。このセンサ取付部44には、回転センサ21のセンサロータ22が固定されている。
軸方向延在部51は、クラッチCLの径方向外側を軸方向及び周方向に延在している。軸方向延在部51は、円筒状に形成されており、第一径方向延在部31と第二径方向延在部41とを軸方向に連結している。本例では、軸方向延在部51は第一径方向延在部31と一体的に形成されている。また、軸方向延在部51は、第二径方向延在部41とボルト連結されている。なお、これらが溶接等により連結された構成としても良い。軸方向延在部51の外周部には、回転電機MGのロータRoが固定されている。
本実施形態においては、軸方向延在部51は、円筒状に形成され径方向内側からロータRoを支持する第一支持部52と、円環状に形成され軸第二方向A2側からロータRoを支持する第二支持部53とを有する。第二支持部53は、第一支持部52の軸第二方向A2側の端部から径方向外側に向かって延在している。本例では、第二支持部53は軸方向及び径方向に所定の厚みを有している。なお、円環状のロータ保持部材56が軸第一方向A1側から第一支持部52に外挿され、このロータ保持部材56は軸第一方向A1側からロータRoを保持している。
本実施形態においては、ロータ支持部材30の軸第二方向A2側に、第二支持壁11を構成するポンプボディ13と第二径方向延在部41との間に回転センサ21が設けられている。回転センサ21は、回転電機MGのステータStに対するロータRoの回転位置を検出するためのセンサである。このような回転センサ21としては、本例ではレゾルバを用いている。本実施形態では、回転センサ21は、第二軸受62の径方向外側に、径方向視で第二軸受62と重複する位置に配置されている。また、回転センサ21は、第二コイルエンド部Ce2の径方向内側に、径方向視で第二コイルエンド部Ce2と重複する位置に配置されている。これにより、第二軸受62、回転センサ21、及び第二コイルエンド部Ce2は、径方向視で互いに重複して配置されている。このような配置関係を採用することで、これらが占有する空間の軸方向の長さが短縮されている。
図3等に示すように、本実施形態においては、第二径方向延在部41にセンサロータ22が固定され、ポンプボディ13にセンサステータ23が固定されている。ここでは、センサステータ23は、その軸第二方向A2側の側面がポンプボディ13の軸第一方向A1側に設けられた支持当接面13aに当接すると共に、径方向内側の端部が円筒状突出部15の外周面に当接した状態で固定されている。
また、センサステータ23の径方向外側において、第二径方向延在部41のセンサ取付部44にセンサロータ22が固定されている。ここで、本実施形態では、全体として円筒状のセンサ取付部44の内周部には段差部45が形成され、この段差部45よりも軸第一方向A1側の部位に対して軸第二方向A2側の部位が、その内径に関して大径となるように形成されている。すなわち、センサ取付部44は、段差部45を挟んで軸方向の両側に形成される、取付大径部44aと取付小径部44bとを有する。取付大径部44aは、少なくともセンサロータ22の軸方向幅よりも広い軸方向の範囲を占めるように形成されている。取付小径部44bは、センサステータ23のコイル部24の、センサステータコアから軸第一方向A1側に突出する部分の軸方向幅と同程度の軸方向の範囲を占めるように形成されている。センサロータ22は、その軸第一方向A1側の側面が取付小径部44bの軸第二方向A2側の側面(すなわち、段差面)に当接すると共に、径方向外側の端部が取付大径部44aの内周面に当接した状態で固定されている。
本実施形態では、センサロータ22の径方向の厚さ(外径と内径との差)は、周方向に周期的に変化するように構成されている。本例では、センサロータ22の径方向の厚さは、最も薄い部分でも段差部45の径方向の高さ(取付大径部44aの内径と取付小径部44bの内径との差)よりも大きい値に設定されている。また、センサロータ22の径方向の厚さは、最も厚い部分で段差部45の径方向の高さの約2倍程度の値に設定されている。また、センサロータ22は、センサロータ保持部材25により軸第二方向A2側から保持されて、第二径方向延在部41との間に固定されている。センサロータ保持部材25は、その外周面が取付大径部44aの内周面に嵌合すると共に、取付大径部44aの軸第二方向A2側の端部が図5に示すように周方向の複数箇所でかしめられることによって、センサ取付部44に対して軸方向に保持されている。
センサステータ23は、第二支持壁11を構成するポンプボディ13に固定される円筒状のセンサステータコアと、当該ステータコアに巻装される複数のコイル部24とを備えている。本実施形態では、これら複数のコイル部24は集中巻でセンサステータコアに巻装されている。複数のコイル部24は、周方向に均等に分散して配置されている。本実施形態では、複数のコイル部24は、周方向に均一な形状を有する共通のカバー内に収容されている。
3.駆動装置の各部の冷却構造
本実施形態では、クラッチCLの複数の摩擦プレート28を冷却するため構造と、回転電機MGを冷却するための構造とが個別に設けられている。そのため、図2、図3、及び図6に示すように、本実施形態に係る駆動装置Dは、複数の摩擦プレート28を収容する摩擦部材収容室としての循環油圧室H2と、循環油圧室H2に油を供給する第二油路L2と、循環油圧室H2から油を排出する第三油路L3と、回転電機MGに油を供給する油路L4,L5,L6とを備えている。以下、順に説明する。
3−1.クラッチの冷却構造
クラッチCLは、主に第二油路L2、第三油路L3、及びロータ支持部材30により構成される冷却構造を利用して冷却される。第二油路L2は、循環油圧室H2に油を供給するための油路である。本実施形態では、クラッチハウジングとしても機能するロータ支持部材30の内部に形成される空間のうち、作動油圧室H1を除いた大部分を占める空間が、複数の摩擦プレート28が配置される循環油圧室H2となる。循環油圧室H2は、第二油路L2を介して油圧制御装置VBに連通している。そして、オイルポンプ19により吐出され、油圧制御装置VBにより所定の油圧に調整された油が、第二油路L2を介して循環油圧室H2に供給される。
ここで、本実施形態においては、第三軸受63はある程度の液密性が確保可能に構成されたシール機能付軸受(ここでは、シールリング付ニードルベアリング)とされている。更に、第二径方向延在部41の円筒状突出部42の軸方向の一部の内周面が周方向全体に亘って中間軸Mの外周面に当接している。そのため、循環油圧室H2は液密状態とされ、油が供給されることにより、循環油圧室H2は基本的には油で満たされた状態となる。これにより、本実施形態に係る駆動装置Dでは、循環油圧室H2に満たされる多量の油で複数の摩擦プレート28を効果的に冷却することが可能となっている。なお、循環油圧室H2から排出される油の大部分は、入力軸Iに形成された径方向の連通孔及び孔部Iaを介して、中間軸Mの内部に形成された第三油路L3から排出される。第三油路L3から排出される油は、その後オイルパン(図示せず)に戻される。
3−2.回転電機の冷却構造
図3等に示すように、回転電機MGは、主に油供給部OS、第一空間V1、油捕集部OC、及び第六油路L6により構成される冷却構造を利用して冷却される。油供給部OSは、センサロータ22の径方向内側から油を供給するように構成されている。このような油供給部OSとして、本実施形態では2つの油供給部、すなわち第一油供給部OS1及び第二油供給部OS2を備えている。
第一油供給部OS1は、センサロータ22の径方向内側であって、かつ第二軸受62よりも径方向外側から油を供給する部位である。第一油供給部OS1は、第二支持壁11を構成するポンプボディ13における、円筒状突出部15よりも径方向外側に設けられている。第一油供給部OS1は、第四油路L4を介して油圧制御装置VBに連通している。図2に示すように、第四油路L4は、油圧制御装置VBから循環油圧室H2までを連通する第二油路L2から分岐して形成されている。このように、第二油路L2から分岐する油路として第四油路L4を形成することで、第四油路L4を流れる油は、第二油路L2を流れる油(すなわち、循環油圧室H2に供給される油)と同程度の油圧及び油温となる。
図3等に示すように、第四油路L4は、ポンプボディ13の内部を径方向に延びる径方向油路L4aと、径方向油路L4aの径方向内側の端部から軸方向に延びる軸方向油路L4bとを有する。本実施形態では、径方向油路L4a及び軸方向油路L4bが本発明における「壁内油路」に相当する。軸方向油路L4bは、ポンプボディ13の軸第一方向A1側に設けられた支持当接面13aに開口するように形成されている。すなわち、軸方向油路L4bは、径方向油路L4aと支持当接面13aに設けられる第四油路開口部17とを連通するようにポンプボディ13の内部に形成されている。本例では、軸方向油路L4bは、その内径が軸方向全体に亘って一様に形成されている。ここで、支持当接面13aには、上記のとおりセンサステータ23の軸第二方向A2側の側面が当接した状態で固定されている。本実施形態においては、センサステータ23における軸方向視で軸方向油路L4b及び第四油路開口部17と重複する位置には、当該センサステータ23を軸方向に貫通する供給連通孔23aが設けられている。このような供給連通孔23aの内径は、第四油路開口部17の内径よりも大きく設定されている。
本実施形態では、軸方向視で互いに重複する軸方向油路L4b及び供給連通孔23aは、図5に示すように径方向ではセンサステータ23のコイル部24よりも径方向内側に配置されている。このような供給連通孔23aをコイル部24の径方向内側に備えることで、第四油路L4から供給される油を、供給連通孔23aを介して、コイル部24が配置されることによる影響を受けることなく第一空間V1へと適切に導くことが可能となっている。
第二油供給部OS2は、センサロータ22及び第二軸受62の双方の径方向内側から油を供給する部位である。第二油供給部OS2は、ロータ支持部材30の円筒状突出部42がポンプボディ13を貫通する領域に設けられている。図6に示すように、ポンプボディ13は、その径方向の中心部に、円筒状突出部42が挿通される挿通孔13bを備えている。この挿通孔13bの内径は、円筒状突出部42の外径よりも僅かに大きく形成されている。これにより、挿通孔13bの内周面と円筒状突出部42の外周面との間には微小な空隙(微小隙間)が存在している。この径方向の微小隙間により第五油路L5が構成されている。
第五油路L5は、オイルポンプ19が配置されるポンプ室から円筒状突出部42の外周面に沿って軸第一方向A1側に向かって漏出する油の流路となる。第五油路L5を通って流れる油は、微小隙間に対して軸第一方向A1側に隣接して配置された第二軸受62に供給される。すなわち、第五油路L5は、第二支持壁11を構成するポンプボディ13と円筒状突出部42との間の微小隙間を通ってオイルポンプ19から漏出する油を第二軸受62へ供給するための油路となっている。本実施形態では、第五油路L5が本発明における「供給油路」に相当する。
図6に示すように、本実施形態では、第二軸受62は、外輪62bと、内輪62aと、外輪62bと内輪62aとの間に介在する転動体62cとを備えた軸受(ころがり軸受)とされている。具体的には、第二軸受62は、転動体62cとしての玉を備えた玉軸受とされており、径方向荷重及び軸方向荷重の双方を受けることが可能に構成されている。なお、第一軸受61も同様の構成を備えている。これにより、クラッチCLに対して軸方向の両側からロータ支持部材30を径方向に精度良く支持することが可能となっている。なお、第一軸受61及び第二軸受62を、転動体としてのころを備えたころ軸受等としても良い。
外輪62bは、ポンプボディ13の円筒状突出部15の内周面に圧入(しまりばめ)されて径方向に位置決め固定されている。内輪62aは、円筒状突出部42の外周面に嵌合(すきまばめ)されて径方向に位置決め固定されている。第五油路L5から供給された油は、外輪62bと内輪62aとの間を通って軸方向に流れる際に、外輪62bと転動体62cとの界面、及び内輪62aと転動体62cとの界面を潤滑する。外輪62bと内輪62aとの間を通り抜けた油は、第二径方向延在部41と円筒状突出部15との間を径方向外側(ここでは、鉛直下側)に向かって流下して第一空間V1へと導かれる。すなわち、第二軸受62に対する油の供給油路である第五油路L5は、第三軸受63の配設部と、第二径方向延在部41と円筒状突出部15との間の隙間とを介して、第一空間V1に連通している。
図3等に示すように、第一油供給部OS1を構成する第四油路L4及び第二油供給部OS2を構成する第五油路L5の双方が連通している第一空間V1は、センサステータ23とロータ支持部材30との間を径方向に延びるように形成される空間である。第一空間V1は、軸方向ではセンサステータ23と第二径方向延在部41(ここでは、平板状部43)との間の領域を占めている。また、第一空間V1は、径方向ではセンサステータ23の径方向内側端部とセンサステータ23の径方向外側端部との間の領域を占めている。図3等には、この第一空間V1が占める範囲の概略を破線で示している。本実施形態では、第一空間V1が本発明における「連通空間」に相当する。
第一空間V1の径方向外側には、油捕集部OCが設けられている。この油捕集部OCは、センサロータ22とロータ支持部材30との間に形成される、径方向内側に開口して油供給部OSからの油を捕集する部位である。油捕集部OCは、第一空間V1を介して油供給部OS(第一油供給部OS1及び第二油供給部OS2の双方を含む)に連通している。言い換えれば、油供給部OSは、第一空間V1を介して油捕集部OCに連通している。
本実施形態では、第二径方向延在部41における平板状部43と当該平板状部43に対して平行に配置されるセンサロータ22の軸方向側面との間に、油捕集部OCが形成されている。より具体的には、平板状部43の軸第二方向A2側の側面と、センサ取付部44を構成する取付小径部44bの内周面と、センサロータ22の軸第一方向A1側の側面との間に形成される断面矩形状の円環状空間として、油捕集部OCが形成されている。油捕集部OCは、油供給部OSから供給され、径方向に延びる第一空間V1を通って鉛直下側に流下する油を、効率的に捕集して貯留することができる。
本実施形態に係る回転電機MGは、油捕集部OCにより捕集された油を利用して、コイルエンド部Ce1,Ce2の冷却を行う構造となっている。そのため、本実施形態に係る駆動装置Dは、少なくともロータ支持部材30に形成され、コイルエンド部Ce1,Ce2のそれぞれの径方向内側に開口するように形成された第六油路L6を備えている。図3及び図4に示すように、第六油路L6は、ロータ支持部材30の内部を径方向に延びる共通油路L6a及び径方向油路L6bと、ロータ支持部材30の内部を軸方向に延びる軸方向油路L6cとを備えている。
図3等に示すように、共通油路L6aは、油捕集部OCから第二径方向延在部41におけるセンサ取付部44(ここでは、取付小径部44b)を径方向に延びるように形成されている。本例では、図7に示すように8つの共通油路L6aが周方向に均等に分散して配置されている。また、共通油路L6aは、軸方向延在部51における第二支持部53のうちの径方向内側部分をも径方向に延びるように形成されている。径方向油路L6bは、共通油路L6aの径方向外側の端部から第二支持部53のうちの径方向外側部分を径方向に延びて第二空間V2に連通している。軸方向油路L6cは、図4に示すように、共通油路L6aの径方向外側の端部から、第二支持部53及びロータRoを軸方向に延びて第二空間V2に連通している。なお、軸方向油路L6cには、第二支持部53の内部を軸方向に延びる部分と、軸方向延在部51の外周面とロータRoの溝部55との間に画定される部分と、ロータ保持部材56に設けられる径方向の貫通孔57とが含まれる。図7に示すように、複数(本例では4つ)の径方向油路L6bと複数(本例では4つ)の軸方向油路L6cとが、周方向に交互に配置されている。
以上のように、第二空間V2は、第六油路L6を介して油捕集部OCに連通している。言い換えれば、油捕集部OCは、第六油路L6を介して第二空間V2に連通している。ここで、第二空間V2は、回転電機MGのステータStが収容される空間である。第二空間V2は、軸方向では第一支持壁3と第二支持壁11との間の領域を占めている。また、第二空間V2は、径方向ではロータRoの径方向外側端部とケース周壁2との間の領域を占めている。図3等には、この第二空間V2が占める範囲の概略を二点鎖線で示している。本実施形態では、第二空間V2が本発明における「ステータ収容空間」に相当する。また、第六油路L6が本発明における「連通路」に相当する。
本実施形態では、共通油路L6aから分岐して径方向に延びる径方向油路L6bは、図3に示すように第二コイルエンド部Ce2の径方向内側に開口するように形成されている。この径方向油路L6bの第二空間V2側の開口部は、径方向視で第二コイルエンド部Ce2と重複する位置に形成されている。また、共通油路L6aから分岐して軸方向に延びる軸方向油路L6cは、図4に示すように第一コイルエンド部Ce1の径方向内側に開口するように形成されている。この軸方向油路L6cの第二空間V2側の開口部(ロータ保持部材56の貫通孔57の径方向外側の開口部)は、径方向視で第一コイルエンド部Ce1と重複する位置に形成されている。
本実施形態に係る駆動装置Dでは、コイルエンド部Ce1,Ce2は以下のようにして冷却される。まず、第二油路L2から分岐して形成される第四油路L4を通って第一油供給部OS1から供給された油が、第一空間V1を通って油捕集部OCにより捕集される。これと同時に、第二油供給部OS2を構成する第五油路L5から供給されて第二軸受62を潤滑した後の油が、同様に第一空間V1を通って油捕集部OCにより捕集される。油捕集部OCで捕集された油は、当該油捕集部OCから第六油路L6へと供給される。第六油路L6へ供給された油の一部は、軸方向油路L6cを通って軸第一方向A1側の開口部から噴出し、第一コイルエンド部Ce1に降り注いで第一コイルエンド部Ce1を冷却する。第六油路L6へ供給された油の他の一部は、径方向油路L6bを通って軸第二方向A2側の開口部から噴出し、第二コイルエンド部Ce2に降り注いで第二コイルエンド部Ce2を冷却する。なお、コイルエンド部Ce1,Ce2を冷却した後の油は、オイルパン(図示せず)に戻される。
このように、本実施形態に係る駆動装置Dでは、回転電機MGに対して軸第二方向A2側に設けられた油供給部OSからの油を油捕集部OCにより効率的に捕集して、第六油路L6を介して、軸第二方向A2側の第二コイルエンド部Ce2だけでなく軸第一方向A1側の第一コイルエンド部Ce1の冷却を行うことが可能となっている。その際、本実施形態では、第一油供給部OS1を構成する第四油路L4が第二油路L2から分岐して形成されているので、最終的にコイルエンド部Ce1,Ce2に供給される油の温度は、循環油圧室H2に供給される油の温度と同程度であり、比較的低いままの状態である。よって、この比較的低温の油を用いて、コイルエンド部Ce1,Ce2を効果的に冷却することができる。従って、駆動装置Dの全体について見れば、第二油路L2からの油によりクラッチCLの冷却を十分に行いつつ、第四油路L4からの油により回転電機MGも効果的に冷却することが可能である。
また、本実施形態では回転センサ21のセンサロータ22を利用して油捕集部OCを構成している。このような回転センサ21は、回転電機MGのステータStに対するロータRoの回転位置を精度良く検出する目的で、本実施形態のように車両の駆動力源としての回転電機MGを備える駆動装置Dには備えられていることが多い。よって、追加の部材を必要とすることなく油捕集部OCを形成し、低コスト化を図ると共に駆動装置D全体の小型化が図られている。
また、そのような油捕集部OCの軸第二方向A2側の境界を区画するセンサロータ22は、元来、軸方向に所定の厚みを有している。そのため、軸方向に作用する力に対する抵抗性に優れている。ここで、例えば油捕集部OCの軸第二方向A2側の境界をセンサロータ22に代えて板状の薄板部材を用いて構成する場合には、油捕集部OCに油が貯留されている状態で回転電機MGのロータRo(ロータ支持部材30)が回転すると、油に作用する遠心力の影響で油捕集部OC内の油圧が上昇し、薄板部材の径方向内側の開放端部が軸方向に広がるように変形する可能性がある。この場合、ケース1(或いは、ケース1内に収容される他の部品)との干渉が生じないように薄板部材の変形の可能性を考慮して駆動装置Dを設計する必要があるので、駆動装置Dが大型化する可能性がある。この点、本実施形態の構成では元来軸方向に所定の厚みを有するセンサロータ22を利用して油捕集部OCを構成しているので、センサロータ22の径方向内側の開放端部の変形が問題となることはほぼ皆無である。従って、駆動装置Dの設計に際してそのような変形を考慮する必要がなく、この点からも駆動装置D全体の小型化を図ることが可能となっている。
4.その他の実施形態
最後に、本発明に係る車両用駆動装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の実施形態においては、駆動装置Dが、油供給部OSとして第一油供給部OS1及び第二油供給部OS2の双方を備えている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、油供給部OSとして、第四油路L4等により構成される第一油供給部OS1のみが駆動装置Dに備えられた構成や、第五油路L5等により構成される第二油供給部OS2のみが駆動装置Dに備えられた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、第一油供給部OS1及び第二油供給部OS2以外の油供給部OSが駆動装置Dに備えられた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(2)上記の実施形態においては、第一油供給部OS1を構成する第四油路L4が、第二油路L2から分岐する油路として形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば第四油路L4が第二油路L2とは独立して形成され、第四油路L4に油圧制御装置VBからの油が直接的に供給される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(3)上記の実施形態においては、センサステータ23の複数のコイル部24が、周方向に均一な形状を有する共通のカバー内に収容されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、複数のコイル部24が、周方向に分散配置される個別のカバー内に収容された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、各コイル部24を収容するそれぞれのカバーは、他の部分に比べて軸方向に突出するように構成されていても良い。この場合、例えば図8に示すように、供給連通孔23aが、複数のコイル部24のいずれとも異なる周方向位置に設けられた構成とすると好適である。このように、径方向視で周方向に互いに隣接する2つのコイル部24どうしの間となる位置に供給連通孔23aが設けられた構成を採用することで、供給連通孔23aから供給される油は、コイル部24及びそのカバーに妨げられることなく油捕集部OCに供給される。また、供給連通孔23aが複数のコイル部24のいずれとも異なる周方向位置に設けられた構成では、コイル部24と同じ径方向位置に供給連通孔23aを形成することも可能である。この場合、センサステータ23における、センサロータ22により近い径方向外側の位置に供給連通孔23aを形成することができるので、第一油供給部OS1と油捕集部OCとの間の径方向の距離を近づけることが可能となる。従って、第一油供給部OS1から供給される油を油捕集部OCで効率的に捕集することができる。
(4)上記の実施形態においては、第一油供給部OS1を構成する第四油路L4が、ポンプボディ13に設けられた支持当接面13aに開口するように形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、第四油路L4がポンプボディ13における支持当接面13a以外の部位で開口する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、例えば第四油路L4が円筒状突出部15の軸第一方向A1側の側面又は外周面等に開口する構成を採用することができる。或いは、第四油路L4が第二支持壁11におけるポンプボディ13以外の部位で開口する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、例えば第四油路L4が仕切壁12の軸第一方向A1側の側面に開口する構成を採用することができる。これらの場合において、第四油路開口部17がセンサステータ23によって覆われない場合には、センサステータ23には供給連通孔23aが設けられなくても良い。
(5)上記の実施形態においては、第四油路L4を構成する軸方向油路L4bの内径が軸方向全体に亘って一様に形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、軸方向油路L4bの内径がいずれかの位置において他の位置における内径よりも小さくなるように形成された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。例えば、軸方向油路L4bのうちの第四油路開口部17付近のみが他の部分よりも小径に形成された構成を採用することができる。なお、軸方向油路L4bの内径が軸方向全体に亘って一様に形成されている場合において、図9に示すように、軸方向油路L4bの内径よりも小径の絞り孔72が形成されたリング状の絞り部材71が、第四油路開口部17付近に配置された構成を採用することもできる。これらの構成を採用することで、第四油路L4内での油の流速に対して上昇した流速の油を第四油路開口部17から第一空間V1へと供給することができる。これにより、中間軸Mの回転速度が低下して第四油路L4内での油の流速が低下した場合でも、第一油供給部OS1からの油を最終的に適切に第二空間V2へと供給してコイルエンド部Ce1,Ce2を冷却することができる。
(6)上記の実施形態においては、第二径方向延在部41が径方向に平坦に延びる平板状部43を有しており、その平板状部43とセンサロータ22との間に油捕集部OCが形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、第二径方向延在部41が、軸方向凹部、軸方向突部、又はこれらの双方を有しつつ径方向に延びるように形成された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(7)上記の実施形態においては、周方向に連続する円環状の油捕集部OCが1つだけ設けられ、この1つの油捕集部OCに8つの第六油路L6が連通している場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば油捕集部OCに連通する第六油路L6の数は任意(但し、偶数が好適)とすることができる。或いは、軸方向の両側、周方向の両側、及び径方向外側が閉塞されて径方向内側にのみ開口する油捕集部OCが、周方向の複数箇所に均等に分散して配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、油捕集部OCの数は任意(但し、偶数が好適)とすることができ、それに応じて第六油路L6(共通油路L6a,径方向油路L6b,及び軸方向油路L6cを含む)の数がそれぞれ決まる。
(8)上記の実施形態においては、軸方向油路L6cの一部が、軸方向延在部51の外周面とロータRoの溝部55との間に形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば軸方向油路L6cの全体が第一支持部52の内部又はロータRoの内部に形成された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(9)上記の実施形態においては、油捕集部OCで捕集される油を第二空間V2へと導く第六油路L6が共通油路L6a、径方向油路L6b、及び軸方向油路L6cを有しており、軸方向油路L6cを介して第一コイルエンド部Ce1の径方向内側に開口すると共に径方向油路L6bを介して第二コイルエンド部Ce2の径方向内側に開口するように形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば第六油路L6が径方向油路L6bを備えることなく共通油路L6aと軸方向油路L6cとからなり、第一コイルエンド部Ce1の径方向内側にのみ開口するように形成された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、第四油路L4からの油を直接的に第二コイルエンド部Ce2へと導いて、第二コイルエンド部Ce2の冷却を行う構成とすることができる。或いは、第六油路L6が軸方向油路L6cを備えることなく共通油路L6aと径方向油路L6bとからなり、第二コイルエンド部Ce2の径方向内側にのみ開口するように形成された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、第一径方向延在部31の円筒状突出部32と入力軸Iとの間に配置された第三軸受63を通り抜けて軸方向に流れ、その後第一軸受61を潤滑して径方向外側(鉛直下側)に流下する油を利用して、第一コイルエンド部Ce1の冷却を行う構成とすることができる。
(10)上記の実施形態においては、駆動装置Dが、FF(Front Engine Front Drive)車両に搭載される場合に適した複軸構成とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば変速機構TMの出力軸が、入力軸I及び中間軸Mと同軸上に配置されると共に直接的に出力用差動歯車装置DFに駆動連結された、一軸構成の駆動装置Dとすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような構成の駆動装置Dは、FR(Front Engine Rear Drive)車両に搭載される場合に適している。
(11)上記の実施形態においては、本発明に係る車両用駆動装置を、車両の駆動力源として内燃機関E及び回転電機MGの双方を備えたハイブリッド車両用の駆動装置Dに適用した場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、車両の駆動力源として回転電機MGのみを備えた電気自動車(電動車両)用の駆動装置に本発明を適用することも可能である。
(12)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。