JP5605546B2 - α+β型チタン合金とその製造方法並びにチタン合金材の製造方法 - Google Patents

α+β型チタン合金とその製造方法並びにチタン合金材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、α+β型チタン合金とその製造方法並びに同合金に使用した合金材(以降、「合金材」とは、インゴットを指す場合がある。)の製造方法であって、特に疲労特性に優れ、また加工性に優れたチタン合金およびその製造方法に関する。
金属チタンは、航空機や化学プラントに好適に使用されているが、その大半は合金の形で使用される。チタン合金は、その内部組織によりα型、β型、又はα+β型の合金が知られており、この中でも、α+β型合金であるTi−6Al−4V合金(以降、「6Al−4V合金」と呼ぶ場合がある。)は高強度合金として古くから知られている。
前記α+β型チタン合金の加工性については、強度が高い上に、熱伝導率が小さいこと、α相の結晶対称性が低いことなどのために加工が難しいことが知られている。この点については、前記チタン合金を恒温鍛造することにより加工性が改善される技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、前記チタン合金の鍛造比については10〜25%程度に抑えられており、目的とするサイズの結晶粒を持った組織を得るには、複数の鍛造回数が必要となる場合がある。
また、α+β型チタン合金の加工性については、恒温鍛造による技術が開示されており、金型と素材の温度を850℃以上に加熱することで加工性が改善されるとの記載もある(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この方法では鍛造時の歪速度をクリープ変形に近い速度でしか加工できないため、高い歪速度での鍛造は難しく生産性の改善が求められていると記載されている。
一方、チタン合金の加工性については、ホウ素を微量添加することにより加工性が改善されることが知られている。たとえば、チタン合金にホウ素を0.01mass%〜18.4mass%添加することでβ域において超塑性を示すことが記載されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、前記の方法で得られたチタン合金を加工する際の歪速度は、10−4〜10−3(1/秒)と低速であり、依然として生産性向上の点で課題が残されている。
また、ホウ素を微量添加したチタン合金に対して、加工と熱処理を組み合わせることで、超塑性を示すことも知られている。しかしながら、同公知文献に記載の超塑性を示す歪速度は、10−3(1/秒)という低いレベルにあり、やはり生産性の点で改善の余地が残されている。また、同公報に開示されている引っ張り強度や伸びの大きさレベルでは、市場から要求される特性を満足しない場合があり、改善の余地が残されている(例えば特許文献4参照)。
このように、6Al−4V合金のように高強度であるものの加工が難しいチタン合金を効率よく加工することができるようなチタン合金材およびこれを用いたチタン合金の製造方法が求められている。
特開平02−089532号公報 特開平11−010270号公報 特表2007−519822号公報 特開2004−277873号公報
本発明は、α+β型チタン合金において、優れた加工性を有するのみならず疲労特性に優れたチタン合金およびその製造方法の提供を目的とする。
かかる実情に鑑み前記課題について鋭意検討を進めてきたところ、チタン合金材をα+β域またはβ域にて熱間加工して中間素材を得た後、前記中間素材をβ域温度範囲にて焼鈍することにより、低温かつ高速で恒温鍛造加工を行うことができ、また、疲労強度も、ホウ素を添加しない材料に比べて優れていることを見出し、本願発明を完成するに至った。
特に、前記の焼鈍を行なった後、結晶組織内にコロニー(ここでいう、「コロニー」とは、β相中に析出生成したラメラー状α相が一方向に層状に積み重なっているような集合体を意味する。)が形成されるような速度で徐冷することにより、得られたチタン合金の加工性が改善されるのみならず、疲労特性も改善されることを見出し、本願発明を完成するに至った。
即ち、本願発明に係るα+β型チタン合金は、ホウ素含有量が0.05〜0.15mass%のα+β型チタン合金であって、チタン合金はTi−6Al−4V合金であって、合金組織中の結晶粒中に析出生成したラメラー状α相の集合体であるコロニーが生成していることを特徴とするものである。
本発明においては、前記α+β型チタン合金中に生成しているコロニーの大きさが、10〜100μmの範囲であることを好ましい態様とするものである。
本発明においては、前記α+β型チタン合金中には針状TiBが析出しており、針状TiBの短径に対する長径の比が、1〜300の範囲にあることを好ましい態様とするものである。
本発明においては、前記TiBの針状析出物が加工方向に沿って並んでいることを好ましい態様とするものである。
本発明においては、前記TiBの針状析出部間の間隔が、2μm以上、さらには5μm以上であることをより好ましい態様とするものである。
また、本願発明に係るα+β型チタン合金の製造方法は、ホウ素含有Ti−6Al−4V合金材をα+β域またはβ域の温度範囲にて熱間加工して中間素材Mを得、中間素材Mをβ域の温度範囲にて焼鈍して中間素材Mを得、中間素材Mに安定化処理を行なうことを特徴とするものである。本願発明でいうところの安定化処理とは、金属組織の安定化を目的とするものであり、焼鈍して中間素材Mを得た後冷却速度0.01℃/分〜0.1℃/分で室温まで冷却し、これを再度700℃付近の高温域まで加熱保持する操作(具体的には650℃〜760℃で30分〜2時間)を意味する。
本発明においては、前記α+β型チタン合金の熱間加工が、鍛造加工であることを好ましい態様とするものである。また、前記α+β型チタン合金の熱間加工が、鍛造加工した後、次いで圧延加工することを好ましい態様とするものである。
本願発明に係るホウ素含有チタン合金材の製造方法は、前記α+β型チタン合金の製造に用いるホウ素含有チタン合金材の製造方法であって、前記チタン合金材の溶解原料は、真空アーク溶解炉、プラズマアーク溶解炉、浮遊溶解法または電子ビーム溶解炉にて溶製されることを特徴とするものである。
本発明においては、前記溶解原料が、スポンジチタン、アルミニウム−バナジウム母合金または金属アルミニウムと金属バナジウム、および金属ホウ素またはチタンのホウ化物から構成されていることを好ましい態様とするものである。
以上述べた本願発明に係るα+β型チタン合金は、従来に比べて低温かつ高速で恒温鍛造を行うことができ、その結果加工に要する熱エネルギー消費量を低減できるのみならず、加工処理時間も削減することができるという効果を奏するものである。また、本発明のα+β型チタン合金は、疲労強度にも優れており、高い疲労強度が要求される部材にも好適に使用することができるという効果を奏するものである。
本願発明におけるα+β型チタン合金の結晶組織を示す顕微鏡写真である。 出発原料から本願発明のチタン合金材を製造する工程を示す模式図である。 チタン合金材から本願発明のα+β型チタン合金を製造する工程を示す模式図である。 本願発明のα+β型チタン合金からチタン合金部品を得る工程を示す模式図である。 実施例における応力と歪みの関係を示すグラフである。 実施例における疲労強度と疲労サイクルの関係を示すグラフである。
本発明の最良の実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。
本願発明に係る前記チタン合金は、微量のホウ素を含有していることを好ましい態様とするものである。チタン合金材にホウ素を微量添加することで、チタン合金材及び製造されたチタン合金中の結晶組織を微細にすることができるという効果を奏するものである。
本願発明においては、前記ホウ素の添加量は、0.01〜0.15mass%の範囲とすることが好ましいとされる。前記ホウ素の添加量が、下限である0.01mass%未満では、生成されるチタン合金の結晶粒が十分に微細化されない虞が残る。一方、ホウ素の添加量が0.15mass%を超える場合には、チタン合金の疲労特性や延性に悪い影響を及ぼす。
本願発明においては、前記ホウ素の添加量が0.01〜0.15mass%の範囲においては、溶製されたチタン合金原料であるチタン材の結晶粒径は、微細化されて80〜200μmの範囲に微細化される。その結果、本願発明で得られたチタン合金の疲労特性や延性の改善に大きく寄与するという効果を奏するものである。
本願発明は、ホウ素含有のα+β型チタン合金(以降単に「チタン合金」と呼ぶ場合がある。)であって、前記合金組織中にコロニーが生成されていることを特徴とするものである。図1の組織写真は、前記コロニーの様子を示したものである。
本願発明においては、前記コロニーの大きさは、10〜100μmの範囲とすることが好ましい。前記コロニーの大きさが10μm未満では、延性及び引張り強度は十分であるが、クリープ強度が顕著な低下傾向を示す。これに対して、コロニーの大きさが100μmを超える場合には、引張り強度は十分ではあるが延性が顕著な低下傾向を示す。よって、本願発明においては、前記コロニーの大きさは、10〜100μmの範囲に形成しておくことが好ましいとされる。
前記コロニーの大きさは、本願発明に係るチタン合金を得るための、ホウ素量を適切に選択することで、また前工程において行なう熱処理の温度や時間を適切に選択することが前記コロニーの大きさを好ましい範囲に制御することができるという効果を奏するものである。
また、本願発明においては、前記チタン合金中に、針状TiBを、加工方向に沿って形成させておくことが好ましい。図1の組織写真は、この様子を表している。また、前記TiBの結晶間隔は、2μm以上に、また、より好ましくは、5μm以上に分散した形で生成させておくことが好ましい。
前記TiBは、図1に示すように、主としてチタン合金材に形成されていた結晶粒界に生成されており、よって、TiBの量を制御することで、あるいは鍛造・圧延比を制御することで、本願発明に係るTiBの間隔を制御することができる。
本願発明に係るチタン合金中に析出生成しているTiBは、その短径に対する長径の比を、1〜300の範囲とすることを好ましい態様とするものである。
前記TiBの析出物の短径に対する長径の比が、1以下では、本願発明に係るチタン合金の疲労強度が低下して好ましくない。一方、300以上の場合には、前記チタン合金材を得るための圧延工程における圧下率を大きくとる必要があり、圧延の回数が増加し、生産性の観点からは好ましくない。
前記のような大きさや形状のTiBをチタン合金中に分散して生成しておくことで、加工性のみならず、優れた疲労特性を示すという効果を奏するものである。
本願発明は、図2,3の模式図で示すように出発原料を溶製してチタン合金材とし、このチタン合金材をα+β域またはβ域温度で熱間加工して中間素材Mとし、この中間素材Mをβ域温度で焼鈍して中間素材Mとし、さらに中間素材Mを安定化処理して目的のα+β型チタン合金とすることを特徴とするものである。
まずは、本願発明に係るチタン合金を溶製するために用いるチタン合金材の製法の好ましい態様について以下に説明する。
図2に示すように、本願発明に係るチタン合金材の製造方法では、チタン合金材の出発原料である純チタン、アルミニウム−バナジウム合金および金属ホウ素を溶解することを好ましい態様とするものである。前記アルミニウム−バナジウム合金の代わりに、金属アルミニウムおよび金属バナジウムを別個に準備して溶解原料とすることもできる。ここで、前記チタン合金材は、真空アーク溶解炉、プラズマアーク溶解炉、電子ビーム溶解炉あるいは、浮遊溶解炉を適宜用いて製造することができる。
本願発明に係るチタン合金材の製造方法では、図2に示す純チタンとアルミニウム−バナジウム合金の組み合わせのほか、純チタンと各添加金属とを適宜組み合わせてもよい。例えばα+β型合金としても、Ti−6Al−4Vのみならず、Ti−3Al−2.5V、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2MoまたはTi−6Al−6V−2Sn合金等があり、このように種々な合金成分を含む合金にも好適に適用できる。
本実施態様では、Ti−6Al−4V合金を製造する場合を例にとり、以下の好ましい態様につき説明する。
溶解原料は、純チタン材とアルミニウム−バナジウム母合金およびTiBあるいはホウ素単体で構成することが好ましい。前記純チタン材は、スポンジチタンや純チタンスクラップを好適に使用することができる。
本願発明においては、チタン合金原料中の金属ホウ素の添加量は、最終的なα+β型チタン合金中において0.05〜0.15mass%となる範囲に設定しておくことが好ましい。前記のような範囲に金属ホウ素を添加しておくことで、その後に行う鍛造加工と圧延加工および焼鈍工程を経て製造されたチタン合金の靭性を損なうことなく、低温かつ高速な恒温鍛造を進めることができるという効果を奏するものである。
前記したホウ素の含有範囲が0.05%以下の場合には、本願発明に係るチタン合金材の結晶粒が十分に微細化されない。一方、ホウ素の含有範囲が0.15mass%を越える場合には、本願発明に係るチタン合金材の延性が低下して好ましくない。よって、本願発明においては、チタン合金材中のホウ素の含有範囲は、0.05〜0.15mass%となるように添加することが好ましいとされる。
前記した溶解原料の溶解に先立って、前記した溶解原料を均一に混合した後、ブリケット成形した後、電極を構成し、次いで、前記電極を真空アーク溶解により溶解して本願発明に係るチタン合金材を溶製することができる。
前記溶解原料を電子ビーム溶解炉により溶解する場合には、純チタンとアルミニウム−バナジウム母合金または金属アルミニウムおよび金属バナジウム、および金属ホウ素またはチタンのホウ化物で構成された顆粒状またはブロック状の溶解原料をそのままフィーダーにより電子ビーム溶解炉を構成するハースに供給することができる。前記した溶解炉を用いることで、溶解原料からチタン合金材を製造することができる。
前記溶解原料を浮遊溶解炉を用いて溶解する場合には、純チタンと母合金または各添加金属および金属ホウ素またはチタンのホウ化物で構成された顆粒状またはブロック状の溶解原料を水冷銅ルツボに投入後、前記水冷銅ルツボの外周に配置した高周波コイルに通電して前記原料を溶解することができる、この際、高周波コイルに供給する電流を増加さることにより、前記溶解された溶湯を水冷銅ルツボの底面より浮かせた状態で溶解することもできる。前記のような溶解方法を採用することでルツボからの汚染の少ない純度の高いチタン合金を溶製することができるという効果を奏するものである。
なお、本願発明においては、前記浮遊溶解の場合、雰囲気はアルゴンガスあるいは減圧下で行なうことが好ましいとされる。
本願発明のチタン合金材は、溶解原料を真空アーク溶解炉、電子ビーム溶解炉あるいは浮遊溶解炉のいずれかの溶解炉により溶製した後、溶製されたままのインゴットとして次工程に供することが好ましい。
図3は、上述したチタン合金材から本願発明に係るα+β型チタン合金を製造する方法を模式的に表している。本願発明においては前記の方法で溶製されたチタン合金材をα+β域またはβ域の温度にて熱間加工して中間素材Mを得た後、β域の温度で焼鈍して中間素材Mを得ることを特徴としている。
前記熱間加工とは、本願発明においては、鍛造加工単独を、あるいは鍛造加工後に圧延処理を行なうことを好ましい態様とするものである。本実施態様においては、前記熱間加工が鍛造の場合を好ましい例として以下に説明する。
前記鍛造温度は、α+β域で行う場合には、具体的には、800℃〜1000℃が好ましく、850℃〜980℃の範囲がより好ましいとされる。また、β域で行う場合には、1000〜1200℃の範囲が好ましく、1020℃〜1100℃の範囲がより好ましいとされる。
本願発明においては、前記鍛造温度の下限以下で行なう場合には、前記材料の流動性が低下して割れや耳のような欠陥を生成する場合がある。一方、前記鍛造温度の上限を超えて行なう場合には、鍛造に要するエネルギー的には有利ではあるが、経済性の点や材料の酸化という別の課題を解決する必要性が生まれる。よって、本願発明においては、前記した温度範囲で鍛造を行い本願発明に係る中間素材を製造することが好ましいとされる。
前記した温度にてチタン合金材を鍛造することにより、クラックや割れが発生することなくしかも効率的に鍛造することができるという効果を奏するものである。
本願発明における鍛造は、部材を製造するに適した形状の棒状あるいは板の形状に変形することを目的とするものである。
本願発明においては、この際、チタン合金材に対する中間素材Mの鍛造比が30〜95の範囲となるように構成することが好ましい。前記のような鍛造比を採用することで、後の工程で行なう恒温鍛造に好適な大きさまで加工することができる。
前記の方法で製造された中間素材Mは、次いでβ域の温度で焼鈍して中間素材Mとすることが好ましい。ここでいう焼鈍は、鍛造工程にて蓄積された歪を開放することとともに金属組織をいわゆるコロニー組織(この組織のことをラメラー組織という場合もある)に制御することを目的とするものである。例えば、溶製するチタン合金が6Al−4V合金である場合には、前記焼鈍温度は、1020℃〜1100℃の範囲で行うことが好ましい。
中間素材Mの冷却後にコロニー組織を形成するには、前記冷却速度は、0.01℃/分〜0.1℃/分の範囲とすることを好ましい態様とするものである。特に熱処理温度から300℃までの冷却速度を0.1℃/分以下とすることが好ましいとされる。前記徐冷速度が前記下限を下回ると、前記コロニーの形成が十分ではなく、本願発明の効果を十分に供することが難しい。一方、前記徐冷速度が、上限を超えると、均一なコロニーが生成されず、本願発明の効果を十分に発揮することができない。よって、本願発明においては、前記した徐冷速度にて、β域から冷却することが好ましい。
前記の方法で焼鈍され冷却された中間素材Mは、次いで、α+β域の温度で安定化処理することが好ましく、具体的には、前記した中間素材Mを得た後、一旦室温近傍まで冷却し、次いで室温からα+β域まで加熱して安定化処理することが好ましい。
前記したような安定化処理を行なうことで、合金中の組成を平衡状態に持ちきたすことができ、その結果、製造されたチタン合金の恒温鍛造後の割れや傷の発生や疲労特性の劣化を効果的に抑制することができるという効果を奏するものである。
例えば、溶製するチタン合金が6Al−4V合金である場合には、前記安定化処理温度は、650℃〜760℃の範囲で30分〜2時間行うことが好ましい。
その結果、本願発明に係る方法で製造されたα+β型チタン合金に対してその後に行う恒温鍛造加工を、400〜600℃の低温で行うことができ、また、前記鍛造加工の際の歪速度も、1/秒〜80/秒という高速で加工処理することができるという効果を奏するものである。
ここで、「恒温鍛造」とは、チタン合金材を高温域のある一定の温度で鍛造する方法を意味する。この方法では鍛造用の金型の温度もチタン合金材の鍛造温度まで事前に加熱しておくこともある。
本願発明に係る前記方法で製造されたα+β型チタン合金を、例えば、恒温鍛造加工する場合には、公知文献に記載の塑性加工における歪み速度に比べて10〜100倍の速度で加工することができるという効果を奏するものである。
更には。本願発明においては、形成されたチタン合金には、疲労破壊の起点を生成することなく、疲労靭性に優れているという効果も奏するものである。
以上、本願発明に沿って、チタン材を加工・熱処理することで、加工性に富んだ合金材を提供することができるのみならず、疲労強度や耐疲労破壊性に優れたチタン材を提供することができるという効果を奏するものである。
[実施例1]
下記表1に示す配合比率を有するスポンジチタン、アルミニウム−バナジウム母合金、TiB粉末、金属アルミニウム粒からなる合金原料を均一に混合した後、プレス成形してブリケットとした。次いで、前記ブリケットを溶接で接合して電極を構成した後、真空アーク溶解炉にて溶解して、本願発明に係る図3のチタン合金材に相当するTi−6Al−4V合金インゴット材を溶製した。
Figure 0005605546
[実施例2]
実施例1で製造されたチタン合金インゴット材を、表2の条件下にて鍛造して丸棒形状の中間素材Mを得た後、前記中間素材Mを1050℃にて1Hr焼鈍して中間素材Mを得、これを冷却速度0.05℃/分で室温まで徐冷した。これを、表3のようにさらに700℃まで加熱し本温度で1時間保持して本願発明に係るチタン合金を得た。前記鍛造後のチタン丸棒を目視にて確認したが表面欠陥は確認されなかった。また、前記焼鈍して得られたチタン丸棒の平均結晶粒径は80〜200μmであった。
Figure 0005605546
Figure 0005605546
[実施例3]
実施例2で製造された本願発明でいうα+β型チタン合金より円柱状の試験片を切り出し、これを表3の条件にて恒温鍛造し、その結果を同表3に示した。
前記恒温鍛造後の変形した円柱状試験片を目視で確認したが、いずれの歪速度においてもクラックや表面欠陥は確認されなかった。
Figure 0005605546
[実施例4]
実施例1で製造されたチタン合金インゴット材を、表2の条件下にて鍛造して丸棒形状の中間素材Mを得た後、前記中間素材Mを、1050℃から室温まで、冷却速度0.05℃/分にて室温まで徐冷した。この素材をさらに700℃で1時間保持して安定化処理を行なった。安定化処理を施したチタン材中には、図1に示すような、結晶粒中に、コロニーが形成されていた。
次いで、前記の方法で準備されたチタン材、およびホウ素を添加しなかった以外は同様にして作製した合金を、引っ張り試験機(インストロン社製、型番:5581)にかけて、ホウ素を添加しないチタン合金とホウ素を添加したチタン合金について、応力−歪曲線を得た。図5は、前記応力−歪曲線を表しており、ホウ素を添加した本願発明に係るチタン合金は、ホウ素を添加しない合金に比べて、強度は多少低下しているものの、延性が顕著に改善されていることが確認された。
更に、前記チタン材を、疲労破壊試験機(島津製作所製、型番:卓上型油圧式サーボパルサー4890)にかけて、繰返しサイクル数:10Hz、応力比(最小負荷荷重/最大負荷荷重):0.1の条件下で疲労強度と疲労サイクルに係るデータを採取した。採取された結果を、図6に示した。
ホウ素を添加しない材料に比べて、ホウ素を添加した本願発明に係るチタン合金の疲労強度が改善されている点が確認された。
[実施例5]
実施例1で製造されたチタン合金インゴット材を、900℃で鍛造、(鍛造比30%)その後、930℃で溝ロール圧延加工(圧延比64%、合計の加工比93%)して丸棒形状の中間素材Mを得た後、前記中間素材Mを、1050℃から室温まで、冷却速度0.05℃/分にて徐冷した。この素材をさらに700℃で1時間保持し安定化処理を行なった。安定化処理を施したチタン材中には、図5と同様に、結晶粒中にコロニーが形成されていた。
このα+β型チタン合金より円柱状の試験片を切り出し、これを表4の条件にて恒温鍛造した。その結果、いずれの条件でも良好に恒温鍛造することができた。
Figure 0005605546
[比較例1]
実施例1において、金属ホウ素を添加しない点を除き、同じ条件下にて6Al−4V合金を溶製した。この合金を表2の条件下にて鍛造して丸棒形状の中間素材Mを得た後、前記中間素材Mを1050℃にて1Hr焼鈍した。この素材をさらに、室温まで冷却速度 0.05℃/Hrで徐冷した。この素材をさらに700℃まで加熱し1Hr保持して安定化処理行った。このような処理を施した丸棒より円柱状の試験片を切り出し、これを、実施例2と同じ条件下にて恒温鍛造を行ったところ、表3のいずれの条件下においても、クラックの発生が認められ、これより恒温鍛造による部材の成形は不可能と判断された。
[比較例2]
比較例1と同じ条件下で6Al−4V合金を溶製した。この合金を900℃で鍛造、(鍛造比30%)その後、930℃で溝ロール圧延加工(圧延比 64%、合計の加工比93%)して丸棒形状の中間素材Mを得た後、前記中間素材Mを、1050℃から室温まで、冷却速度0.05℃/分にて徐冷した。この素材をさらに700℃で1時間保持して安定化処理を行なった。安定化処理を施した丸棒より円柱状の試験片を切り出し、700℃で、歪速度1x10−2、1、80(1/秒)の条件で恒温鍛造した。その結果、いずれの条件下においても、クラックの発生が認められ、これより700℃での恒温鍛造による部材の成形は不可能と判断された。
なお、従来技術の中で引用した特許文献4に開示されている引っ張り強度と伸びの大きさを当実施例のデータを表5に示した。同表5より、特許文献4に比べて本願発明で得られたチタン合金の引っ張り強度および伸びが格段に優れていることが確認された。その要因は、本願発明に係るコロニー組織の生成にあるものと考えられる。
Figure 0005605546
本願発明は、高速加工が可能なチタン合金の製造方法を提供するものであり、この方法により製造されたチタン合金を用いることで効率よくチタン合金部品を製造することができる。

Claims (10)

  1. ホウ素含有量が0.05〜0.15mass%のα+β型チタン合金であって、前記チタン合金はTi−6Al−4V合金であって、前記合金組織中の結晶粒中に析出生成したラメラー状α相の集合体であるコロニーが生成していることを特徴とするα+β型チタン合金。
  2. 前記コロニーの大きさが、10μm〜100μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のα+β型チタン合金。
  3. 前記α+β型チタン合金中には針状TiBが析出しており、針状TiBの短径に対する長径の比が、1〜300の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のα+β型チタン合金。
  4. 前記TiBの針状析出物が加工方向に沿って並んでいることを特徴とする請求項3に記載のα+β型チタン合金。
  5. 前記α+β型チタン合金中に析出しているTiBの針状析出部間の間隔が、2μm以上に分散した形であることを特徴とする請求項3または4に記載のα+β型チタン合金。
  6. ホウ素含有Ti−6Al−4V合金材をα+β域またはβ域の温度範囲にて熱間加工して中間素材Mを得、前記中間素材Mをβ域の温度範囲にて焼鈍して中間素材Mを得、前記中間素材M冷却速度0.01℃/分〜0.1℃/分で室温まで冷却し、これをさらに650℃〜760℃で30分〜2時間の安定化処理を行なうことを特徴とするα+β型チタン合金の製造方法。
  7. 前記熱間加工が、鍛造加工であることを特徴とする請求項6に記載のα+β型チタン合金の製造方法。
  8. 前記熱間加工が、鍛造加工した後、次いで圧延加工することを特徴とする請求項6に記載のα+β型チタン合金の製造方法。
  9. 請求項6に記載のα+β型チタン合金の製造に用いるホウ素含有チタン合金材の製造方法であって、前記ホウ素含有チタン合金材の溶解原料は、真空アーク溶解炉、プラズマアーク溶解炉、浮遊溶解法または電子ビーム溶解炉にて溶製されることを特徴とするチタン合金材の製造方法。
  10. 前記溶解原料が、スポンジチタン、アルミニウム−バナジウム母合金または金属アルミニウムと金属バナジウム、および金属ホウ素またはチタンのホウ化物から構成されていることを特徴とする請求項9に記載のチタン合金材の製造方法。
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