JP2004277873A - ボロンを添加したチタン合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】チタン合金は比強度、耐食性に優れた金属であり、各種プラントや輸送用機器などに多く使われている。また、優れた生体親和性も有しており、生体材料としても使われるようになってきている。しかしながら、α+β型チタン合金の鋳物は結晶粒が大きく、強度は低い。また、α+β型チタン合金圧延焼鈍材のような難加工材の塑性加工法として超塑性加工法が実用化されているが、本合金圧延焼鈍材の超塑性伸びを向上させることにより、本材料のさらなる用途拡大につながる。
【解決方法】α+β型チタン合金インゴット溶解時に適量のボロンを添加することにより、凝固組織は等軸細粒化し、機械的性質(強度)は向上する。このことは、チタンの鋳造において極めて意義のあることである。
また、超塑性伸びの向上策として、α+β型チタン合金にボロンを適量添加し、加工、熱処理を行うことにより、α+β型チタン合金は優れた超塑性伸びを示す材料となる。この特性を利用した超塑性加工によって、複雑な形状の部品の塑性加工が容易となり、チタン合金の用途拡大が期待できる。
【解決方法】α+β型チタン合金インゴット溶解時に適量のボロンを添加することにより、凝固組織は等軸細粒化し、機械的性質(強度)は向上する。このことは、チタンの鋳造において極めて意義のあることである。
また、超塑性伸びの向上策として、α+β型チタン合金にボロンを適量添加し、加工、熱処理を行うことにより、α+β型チタン合金は優れた超塑性伸びを示す材料となる。この特性を利用した超塑性加工によって、複雑な形状の部品の塑性加工が容易となり、チタン合金の用途拡大が期待できる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
チタン合金は比強度、耐食性に優れた金属であり、各種プラントや輸送用機器などに多く使われている。また、優れた生体親和性も有しており、生体材料としても使われるようになってきている。そのようなチタン合金の中で、最も多く使用されているのが、α+β型チタン合金である。
【0002】
チタン合金製品の製造工程は、溶解・凝固ままの鋳造品の製造、あるいはこれに加工、熱処理を加えるなど、その工程は多種多様である。例えば、生体医療分野で使用されるチタン合金製の部品の製造については鋳造法が多く取り入れられるようになっている。また、航空宇宙分野で使用される本合金製部品などは、チタン合金の鋳塊に加工、熱処理を加えて等軸組織とした、いわゆる圧延焼鈍材が所定の形状に加工され、多用されている。
【0003】
本発明はα+β型チタン合金鋳造品の強度向上、そして本合金の鋳塊に加工、熱処理を加えて等軸組織とした圧延焼鈍材の塑性加工性向上に関するものである。
【0004】
【従来の技術】
チタン合金は比強度、耐食性、また生体親和性にも優れており、多くの分野で使われるようになってきている。そのようなチタン合金の中で、最も多く使用されているのが、α+β2相型合金であり、強度、延性のバランスのとれた合金である。
【0005】
α+β型チタン合金の鋳造は、生体医療分野で使用される部品の製造方法等で多く応用されている。また、歯科分野では精密鋳造法も適用されている。この製造方法で作製されたα+β型チタン合金鋳造品の引張強さは、通常800MPa程度である。
【0006】
α+β型チタン合金圧延焼鈍材は、塑性加工という面では、鉄系材料と比較して難加工性を示すことが知られている。このような難加工材の塑性加工法として超塑性加工法が実用化されている。この超塑性加工は、航空宇宙の分野で使用される部品の製造工程に多く取り入れられている。また、生体医療部品などにもこの加工法が利用されてきている。材料の超塑性特性を示す指標の一つに超塑性伸びがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
α+β型チタン合金のみならず、すべての金属材料鋳物の凝固組織は結晶粒が大きく、強度は低い。また、α+β型チタン合金圧延焼鈍材の加工性(塑性加工性)に注目すると、鉄系材料の圧延焼鈍材は室温において引張試験を行うと40%程度の伸びを示すが、α+β型チタン合金圧延焼鈍材は15%程度であり、このことは本合金圧延焼鈍材の塑性加工性という面では決して良好とは言えないことを意味している。実際に極端な曲げ加工を行うと、材料に亀裂が生じたりする。このことがα+β型チタン合金圧延焼鈍材の用途拡大を阻んでいる要因の一つであると言っても過言ではない。
【0008】
金属多結晶材料の結晶粒が細粒化すると、延性を犠牲にすることなく強度を向上させることができる。凝固組織の結晶粒を小さくすることが凝固ままの鋳物、あるいは圧延焼鈍材においての強度向上に有効である。
【0009】
α+β型チタン合金難加工材の塑性加工法として超塑性加工法がある。超塑性とは、金属多結晶材料がある高温度領域において数100%以上の大きな伸び(超塑性伸び)を示す現象のことである。この超塑性伸びを巧みに利用した超塑性加工法が、α+β型チタン合金圧延焼鈍材のような難加工材の塑性加工法として実用化されているものの、用途拡大が進む中でさらなる塑性加工性改善が求められている。すなわちα+β型チタン合金の超塑性伸びの向上である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、α+β型チタン合金にボロン(以下、Bと記す)を添加することにより、凝固組織を等軸細粒化することを見出した。また、この材料に加工、熱処理の処理を加えて、結晶粒をさらに等軸細粒組織にしたα+β型チタン合金圧延焼鈍材については超塑性伸びが向上し、塑性加工性は大幅に改善できることも見出し、本発明を完成させた。本発明とは、Bを0.01mass%(以下、%と記す)及びそれ以上、0.1%及びこれ以下を成分として含む、等軸細粒化した凝固組織を有するα+β型チタン合金、またこのα+β型チタン合金に加工、熱処理を加えてさらに等軸細粒組織にしたα+β型チタン合金のことである。この発明により、チタン合金鋳造品の品質向上、また、塑性加工性の大幅改善等の観点から、本合金の用途拡大につながる。
【0011】
本発明はα+β型チタン合金インゴット溶解時にBを添加して、凝固組織を等軸細粒化させてチタン鋳造品の強度を向上させるというものである。また、α+β型チタン合金を圧延焼鈍して使用する場合は、鋳塊を加工、熱処理して結晶粒を等軸組織にする。この材料(圧延焼鈍材)の結晶粒径は通常8〜15μmである。ところがこれにBを添加し、加工、熱処理を行うと超塑性伸びが向上する。
このことは塑性加工性の改善を示唆するものであり、α+β型チタン合金圧延焼鈍材の用途拡大につながる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、α+β型チタン合金の凝固組織の等軸細粒化、そして難加工材であるα+β型チタン合金の塑性加工性を改善するために、適量のBを添加した材料のことである。
【0013】
本発明材においてα+β型チタン合金に添加するBの量は、0.01%及びそれ以上、0.1%及びこれ以下である。0.01%より少ない場合、凝固組織の等軸細粒化への寄与は少ない。また、0.1%よりも添加量が多くなると、強度向上は飽和し、かつ伸びが低下する傾向を示す。よって、適正な含有範囲を0.01%及びそれ以上、0.1%及びこれ以下とした。
【0014】
本発明材において、Bが0.01%及びそれ以上、0.1%及びこれ以下の量を含んだα+β型チタン合金に加工、熱処理を加えて、結晶粒をさらに等軸細粒組織にしたα+β型チタン合金圧延焼鈍材は、B添加のないα+β型チタン合金圧延焼鈍材よりも高い超塑性伸びを示すようになる。逆に、B添加量が0.01%よりも少ない場合、もしくは0.1%よりも多い場合はB添加のないα+β型チタン合金圧延焼鈍材と同等、もしくは低い値を示すようになる。
【0015】
【実施例−1】
代表的なα+β型チタン合金であるTi−6Al−4V合金を溶解時にBを0.005、0.010、0.030、0.060、0.100、0.120%添加して凝固させた。この実施例の鋳塊のサイズは、厚さ20mm×幅30mm×長さ120mmである。このときの凝固組織例を光学顕微鏡で観察したものを図1に示す。凝固組織に注目すると、B添加量の増加と共に、結晶粒が細かくなっており、B添加のないTi−6Al−4V合金の平均結晶粒径は5mm(5000μm)であるのに対し、Bを0.060%添加すると0.6mm(600μm)と細粒化しており、このようにBを添加すると、凝固組織の結晶粒が細かくなることが確認された。なお、結晶粒の大きさは鋳塊のサイズに依存し、サイズが大きい程、結晶粒も大きくなる。しかし、その結晶粒は上記結果と同様にBの添加によって細粒化することも確認された。
次に、凝固組織を有する上記材料の室温での引張特性を表1に示す。B添加のないTi−6Al−4V合金(比較材1)の0.2%耐力、引張強さ、伸びはそれぞれ698MPa、815MPa、3.9%であり、同じ比較材1のB添加量0.005%についてもほぼ同じ値を示した。しかし、本発明材であるB添加量0.010〜0.100%については、0.2%耐力、引張強さ、伸び共に比較材1よりも高い値を示し、特に0.2%耐力、引張強さについてはB添加量の増加(結晶粒の細粒化)と共に向上する。伸びについてはB添加量の増加とともに低下の傾向を示すが、本発明材の中で一番低い値を示した0.100%でさえ、比較材1よりも高い値である4.2%を示すことが確認された。比較材2の0.120%添加のように、B添加量が0.1%を超えると0.2%耐力、引張強さの向上は飽和する。伸びは極端に低下し、比較材1のB添加のない材料よりも低い値を示すようになる。
凝固組織観察、常温引張試験の結果から、凝固組織の結晶粒を細粒化させて高強度化し、かつ適度な伸びを有するための最適なB添加量は0.01%及びそれ以上、0.1%及びこれ以下である。
【0016】
【実施例−2】
B添加されたα+β型Ti−6Al−4V合金鋳塊に加工、熱処理して結晶粒を等軸組織にした材料(結晶粒径8〜15μm)の超塑性引張試験結果を表2に示す。ここでの加工、熱処理とは、鋳塊のα+β型チタン合金を溶体化し、その後熱間圧延、再結晶焼鈍を行うことである。溶体化は、β変態点(約1263K)以上に加熱保持、本実験では1373Kに加熱保持し、炉冷して行った。熱間圧延は、β単相域圧延とα+β2相域圧延を行い、前者はβ変態点以上の温度で圧下率20%以上、本実験では1373K、そして後者は1123K以上、β変態点以下の温度で圧下率60%以上、本実験では1223Kにて行った。最終工程の再結晶焼鈍は、α+β型チタン合金の再結晶温度以上、β変態点以下の温度で、この場合1198Kで行った。これら一連の処理によって結晶粒径8〜15μmの等軸組織となる。この材料の超塑性伸びを調べるために超塑性引張試験を実施した。この時の条件として、温度は1123K、初期歪み速度は1×10−3s−1である。また、このとき用いた引張試験片は板状で、その平行部寸法は、厚さ1.2mm×幅5mm×長さ4mmである。超塑性伸びは、B添加のないTi−6Al−4V合金(比較材1)は890%、同じ比較材1のB添加量0.005%についても900%程度である。しかしながら、B添加量0.010〜0.100%(本発明材)についてはいずれも比較材1よりも高い値を示した。この本発明材はB添加量0.010%で1320%、そして0.030%では1380%もの超塑性伸びを示す。以後、この値はB添加量の増加とともに低下の傾向を示すが、この中で一番低い値を示したB添加量0.100%でさえ、比較材1よりも高い値である1150%を示すことが確認された。比較材2の0.120%添加のように、B添加量が0.1%を超えると超塑性伸びは比較材1のB添加のない材料よりも低い値を示すようになる。
以上の超塑性引張試験の結果から、超塑性伸びを向上させるための最適なB添加量は0.01%及びそれ以上、0.1%及びこれ以下である。
【0017】
【発明の効果】
本発明により、チタン鋳造材の機械的性質(常温引張特性)は向上する。このことは、鋳造製品の発展に大きく寄与する。また、α+β型チタン合金圧延焼鈍材は難加工材として認知されていたが、本発明により高い超塑性伸びを示す材料となる。この特性を利用した超塑性加工によって、複雑な形状の部品の加工が容易となり、チタン合金の用途拡大が期待できる。
【発明の属する技術分野】
チタン合金は比強度、耐食性に優れた金属であり、各種プラントや輸送用機器などに多く使われている。また、優れた生体親和性も有しており、生体材料としても使われるようになってきている。そのようなチタン合金の中で、最も多く使用されているのが、α+β型チタン合金である。
【0002】
チタン合金製品の製造工程は、溶解・凝固ままの鋳造品の製造、あるいはこれに加工、熱処理を加えるなど、その工程は多種多様である。例えば、生体医療分野で使用されるチタン合金製の部品の製造については鋳造法が多く取り入れられるようになっている。また、航空宇宙分野で使用される本合金製部品などは、チタン合金の鋳塊に加工、熱処理を加えて等軸組織とした、いわゆる圧延焼鈍材が所定の形状に加工され、多用されている。
【0003】
本発明はα+β型チタン合金鋳造品の強度向上、そして本合金の鋳塊に加工、熱処理を加えて等軸組織とした圧延焼鈍材の塑性加工性向上に関するものである。
【0004】
【従来の技術】
チタン合金は比強度、耐食性、また生体親和性にも優れており、多くの分野で使われるようになってきている。そのようなチタン合金の中で、最も多く使用されているのが、α+β2相型合金であり、強度、延性のバランスのとれた合金である。
【0005】
α+β型チタン合金の鋳造は、生体医療分野で使用される部品の製造方法等で多く応用されている。また、歯科分野では精密鋳造法も適用されている。この製造方法で作製されたα+β型チタン合金鋳造品の引張強さは、通常800MPa程度である。
【0006】
α+β型チタン合金圧延焼鈍材は、塑性加工という面では、鉄系材料と比較して難加工性を示すことが知られている。このような難加工材の塑性加工法として超塑性加工法が実用化されている。この超塑性加工は、航空宇宙の分野で使用される部品の製造工程に多く取り入れられている。また、生体医療部品などにもこの加工法が利用されてきている。材料の超塑性特性を示す指標の一つに超塑性伸びがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
α+β型チタン合金のみならず、すべての金属材料鋳物の凝固組織は結晶粒が大きく、強度は低い。また、α+β型チタン合金圧延焼鈍材の加工性(塑性加工性)に注目すると、鉄系材料の圧延焼鈍材は室温において引張試験を行うと40%程度の伸びを示すが、α+β型チタン合金圧延焼鈍材は15%程度であり、このことは本合金圧延焼鈍材の塑性加工性という面では決して良好とは言えないことを意味している。実際に極端な曲げ加工を行うと、材料に亀裂が生じたりする。このことがα+β型チタン合金圧延焼鈍材の用途拡大を阻んでいる要因の一つであると言っても過言ではない。
【0008】
金属多結晶材料の結晶粒が細粒化すると、延性を犠牲にすることなく強度を向上させることができる。凝固組織の結晶粒を小さくすることが凝固ままの鋳物、あるいは圧延焼鈍材においての強度向上に有効である。
【0009】
α+β型チタン合金難加工材の塑性加工法として超塑性加工法がある。超塑性とは、金属多結晶材料がある高温度領域において数100%以上の大きな伸び(超塑性伸び)を示す現象のことである。この超塑性伸びを巧みに利用した超塑性加工法が、α+β型チタン合金圧延焼鈍材のような難加工材の塑性加工法として実用化されているものの、用途拡大が進む中でさらなる塑性加工性改善が求められている。すなわちα+β型チタン合金の超塑性伸びの向上である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、α+β型チタン合金にボロン(以下、Bと記す)を添加することにより、凝固組織を等軸細粒化することを見出した。また、この材料に加工、熱処理の処理を加えて、結晶粒をさらに等軸細粒組織にしたα+β型チタン合金圧延焼鈍材については超塑性伸びが向上し、塑性加工性は大幅に改善できることも見出し、本発明を完成させた。本発明とは、Bを0.01mass%(以下、%と記す)及びそれ以上、0.1%及びこれ以下を成分として含む、等軸細粒化した凝固組織を有するα+β型チタン合金、またこのα+β型チタン合金に加工、熱処理を加えてさらに等軸細粒組織にしたα+β型チタン合金のことである。この発明により、チタン合金鋳造品の品質向上、また、塑性加工性の大幅改善等の観点から、本合金の用途拡大につながる。
【0011】
本発明はα+β型チタン合金インゴット溶解時にBを添加して、凝固組織を等軸細粒化させてチタン鋳造品の強度を向上させるというものである。また、α+β型チタン合金を圧延焼鈍して使用する場合は、鋳塊を加工、熱処理して結晶粒を等軸組織にする。この材料(圧延焼鈍材)の結晶粒径は通常8〜15μmである。ところがこれにBを添加し、加工、熱処理を行うと超塑性伸びが向上する。
このことは塑性加工性の改善を示唆するものであり、α+β型チタン合金圧延焼鈍材の用途拡大につながる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、α+β型チタン合金の凝固組織の等軸細粒化、そして難加工材であるα+β型チタン合金の塑性加工性を改善するために、適量のBを添加した材料のことである。
【0013】
本発明材においてα+β型チタン合金に添加するBの量は、0.01%及びそれ以上、0.1%及びこれ以下である。0.01%より少ない場合、凝固組織の等軸細粒化への寄与は少ない。また、0.1%よりも添加量が多くなると、強度向上は飽和し、かつ伸びが低下する傾向を示す。よって、適正な含有範囲を0.01%及びそれ以上、0.1%及びこれ以下とした。
【0014】
本発明材において、Bが0.01%及びそれ以上、0.1%及びこれ以下の量を含んだα+β型チタン合金に加工、熱処理を加えて、結晶粒をさらに等軸細粒組織にしたα+β型チタン合金圧延焼鈍材は、B添加のないα+β型チタン合金圧延焼鈍材よりも高い超塑性伸びを示すようになる。逆に、B添加量が0.01%よりも少ない場合、もしくは0.1%よりも多い場合はB添加のないα+β型チタン合金圧延焼鈍材と同等、もしくは低い値を示すようになる。
【0015】
【実施例−1】
代表的なα+β型チタン合金であるTi−6Al−4V合金を溶解時にBを0.005、0.010、0.030、0.060、0.100、0.120%添加して凝固させた。この実施例の鋳塊のサイズは、厚さ20mm×幅30mm×長さ120mmである。このときの凝固組織例を光学顕微鏡で観察したものを図1に示す。凝固組織に注目すると、B添加量の増加と共に、結晶粒が細かくなっており、B添加のないTi−6Al−4V合金の平均結晶粒径は5mm(5000μm)であるのに対し、Bを0.060%添加すると0.6mm(600μm)と細粒化しており、このようにBを添加すると、凝固組織の結晶粒が細かくなることが確認された。なお、結晶粒の大きさは鋳塊のサイズに依存し、サイズが大きい程、結晶粒も大きくなる。しかし、その結晶粒は上記結果と同様にBの添加によって細粒化することも確認された。
次に、凝固組織を有する上記材料の室温での引張特性を表1に示す。B添加のないTi−6Al−4V合金(比較材1)の0.2%耐力、引張強さ、伸びはそれぞれ698MPa、815MPa、3.9%であり、同じ比較材1のB添加量0.005%についてもほぼ同じ値を示した。しかし、本発明材であるB添加量0.010〜0.100%については、0.2%耐力、引張強さ、伸び共に比較材1よりも高い値を示し、特に0.2%耐力、引張強さについてはB添加量の増加(結晶粒の細粒化)と共に向上する。伸びについてはB添加量の増加とともに低下の傾向を示すが、本発明材の中で一番低い値を示した0.100%でさえ、比較材1よりも高い値である4.2%を示すことが確認された。比較材2の0.120%添加のように、B添加量が0.1%を超えると0.2%耐力、引張強さの向上は飽和する。伸びは極端に低下し、比較材1のB添加のない材料よりも低い値を示すようになる。
凝固組織観察、常温引張試験の結果から、凝固組織の結晶粒を細粒化させて高強度化し、かつ適度な伸びを有するための最適なB添加量は0.01%及びそれ以上、0.1%及びこれ以下である。
【0016】
【実施例−2】
B添加されたα+β型Ti−6Al−4V合金鋳塊に加工、熱処理して結晶粒を等軸組織にした材料(結晶粒径8〜15μm)の超塑性引張試験結果を表2に示す。ここでの加工、熱処理とは、鋳塊のα+β型チタン合金を溶体化し、その後熱間圧延、再結晶焼鈍を行うことである。溶体化は、β変態点(約1263K)以上に加熱保持、本実験では1373Kに加熱保持し、炉冷して行った。熱間圧延は、β単相域圧延とα+β2相域圧延を行い、前者はβ変態点以上の温度で圧下率20%以上、本実験では1373K、そして後者は1123K以上、β変態点以下の温度で圧下率60%以上、本実験では1223Kにて行った。最終工程の再結晶焼鈍は、α+β型チタン合金の再結晶温度以上、β変態点以下の温度で、この場合1198Kで行った。これら一連の処理によって結晶粒径8〜15μmの等軸組織となる。この材料の超塑性伸びを調べるために超塑性引張試験を実施した。この時の条件として、温度は1123K、初期歪み速度は1×10−3s−1である。また、このとき用いた引張試験片は板状で、その平行部寸法は、厚さ1.2mm×幅5mm×長さ4mmである。超塑性伸びは、B添加のないTi−6Al−4V合金(比較材1)は890%、同じ比較材1のB添加量0.005%についても900%程度である。しかしながら、B添加量0.010〜0.100%(本発明材)についてはいずれも比較材1よりも高い値を示した。この本発明材はB添加量0.010%で1320%、そして0.030%では1380%もの超塑性伸びを示す。以後、この値はB添加量の増加とともに低下の傾向を示すが、この中で一番低い値を示したB添加量0.100%でさえ、比較材1よりも高い値である1150%を示すことが確認された。比較材2の0.120%添加のように、B添加量が0.1%を超えると超塑性伸びは比較材1のB添加のない材料よりも低い値を示すようになる。
以上の超塑性引張試験の結果から、超塑性伸びを向上させるための最適なB添加量は0.01%及びそれ以上、0.1%及びこれ以下である。
【0017】
【発明の効果】
本発明により、チタン鋳造材の機械的性質(常温引張特性)は向上する。このことは、鋳造製品の発展に大きく寄与する。また、α+β型チタン合金圧延焼鈍材は難加工材として認知されていたが、本発明により高い超塑性伸びを示す材料となる。この特性を利用した超塑性加工によって、複雑な形状の部品の加工が容易となり、チタン合金の用途拡大が期待できる。
Claims (2)
- ボロンを0.01%及びそれ以上、0.1%及びこれ以下を成分として含む凝固組織を有するα+β型チタン合金
- 請求項1記載の材料に加工、熱処理を加えて等軸組織にしたα+β型チタン合金
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007084915A (ja) * | 2005-09-23 | 2007-04-05 | Taifu Chin | ゴルフクラブヘッド用低密度合金 |
JP2008063598A (ja) * | 2006-09-05 | 2008-03-21 | Sumitomo Metal Ind Ltd | チタン溶接接合体 |
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2003
- 2003-03-12 JP JP2003112159A patent/JP2004277873A/ja active Pending
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