JP5604962B2 - 二次電池用正極活物質及び二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、二次電池用正極活物質及びこれを用いた二次電池に関する。
近年、携帯電話、ノートパソコン等の携帯機器用、電気自動車用などの電源としてエネルギー密度が高く、かつ自己放電が少なくてサイクル性能の良いリチウム二次電池に代表される非水電解質二次電池が注目されている。
現在のリチウム二次電池の主流は、2Ah以下の携帯電話用を中心とした小型民生用である。リチウム二次電池用の正極活物質としては数多くのものが提案されているが、最も一般的に知られているものは、作動電圧が4V付近のリチウムコバルト酸化物(LiCoO)やリチウムニッケル酸化物(LiNiOあるいはスピネル構造を持つリチウムマンガン酸化物(LiMn)等を基本構成とするリチウム含有遷移金属酸化物である。中でも、リチウムコバルト酸化物は、充放電性能とエネルギー密度に優れることから、電池容量2Ahまでの小容量リチウム二次電池の正極活物質として広く採用されている。
しかしながら、今後の中型・大型、特に大きな需要が見込まれる産業用途へのリチウム二次電池の展開を考えた場合、安全性が非常に重要視される為、現在の小型電池向けの仕様では必ずしも充分であるとはいえない。この要因の一つに、リチウム含有遷移金属化合物の熱的不安定性の課題が挙げられ、様々な対策が成されてきたが、未だ十分とはいえず、高安全でエネルギー密度の高い電池が求められている。
最近、熱的安定性が優れるポリアニオン系正極活物質が注目を集めている。このポリアニオン系正極活物質は酸素が遷移金属以外の元素と共有結合することで固定化されているため、高温においても酸素を放出することが無く、正極活物質として使用することでリチウム二次電池の安全性を飛躍的に高めることができると考えられる。
このようなポリアニオン系正極活物質として、オリビン構造を有するリン酸鉄リチウム(LiFePO)の研究が盛んに行われている。しかし、LiFePOは理論容量が170mAh g−1と限られる上、3.4V(vs.Li/Li)の卑な電位でリチウムの挿入脱離が行われる為、従来のリチウム含有遷移金属化合物に比べてエネルギー密度は小さいものとなる。
そこで、LiFePOに続くリチウムイオン二次電池の正極活物質の次世代材料として、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)に関する検討が行われている。この材料は,LiFePOと比較して、その理論容量は同程度であるものの、その電位は約0.7V程度高い4.1V(vs.Li/Li)を示すので、理論的に高エネルギー密度を有する可能性がある。しかしながら、LiMnPOは、その電子伝導性が低く、理論容量である170mAh g−1を到達することは非常に困難である.そこで,これまで,その電子伝導性を向上させるために,LiMnPOの表面にカーボンを担持させたり、活物質の電子伝導性を改善する目的でMn以外の元素を置換及び含有させたりすることが検討されている.
特許文献1には、「基本組成をLiFePOとするオリビン構造リチウム鉄複合酸化物の粒子に炭素物質微粒子が複合化してなるリチウム二次電池正極活物質用炭素含有リチウム鉄複合酸化物。」(請求項1)の発明が開示されている。特許文献1によれば、「リチウム鉄複合酸化物の粒子に炭素物質微粒子が複合化しているため、より多くの導電パスが形成され、内部抵抗は小さくなる。」(第3項6〜第8行)ことによって、「本発明の炭素含有リチウム鉄複合酸化物を正極活物質に用いてリチウム二次電池を構成すれば、活物質容量が大きく、かつ、サイクルを繰り返しても容量の低下が少ないサイクル特性に優れたリチウム二次電池を得ることができる。」(第12項第16〜第20行)との記載がある。特許文献1の実施例には、上記の炭素含有リチウム鉄複合酸化物として炭素の含有割合が異なるLiFe0.85Mn0.15PO:C(y=0,0.02,0.05,0.1)が例示されている。
特許文献2には、「非水電解質電池の正極に含有される正極活物質において、一般式LiMnFePOで示されるオリビン構造を有する化合物を含有し、上記式中、Mは、Mg、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Znの中から選ばれる一種類以上の元素であり、a、b、c、dは、0<a<2、0<b<0.8、0<d<0.2、b+c+d=1の関係を満たすことを特徴とする正極活物質。」(請求項1)の発明が開示されている。特許文献2によれば、「本発明によれば、正極活物質として正極に含有されるオリビン構造を有する化合物は、一般式LiMnFePO(式中MはMg、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Znの中から選ばれる一種類以上の元素であり、0<a<2であり、0<b<0.8であり、0<d<0.2であり、b+c+d=1である。)で示されるように、Mnの一部及び/又はFeの一部がMg、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Znの中から選ばれる一種類以上の元素で置換されることで、置換された元素によりオリビン構造を有する化合物の電子状態が変化されて電子伝導性が高くなることから、正極の導電性を向上させることができる。」(第14項第25〜第32行)ことによって、「したがって、本発明によれば、導電性が向上された正極によって電池の内部抵抗が低減し、放電時の電圧低下を抑制して所定のカットオフ電圧に到達するまでの時間を引き延ばすことができ、電池容量が大きな非水電解質電池が得られる。また、本発明によれば、正極の導電性が向上して内部抵抗が低下したことにより、大電流が流れた際の電池特性の低下も抑制された非水電解質電池が得られる。」(段落0092〜0093)との記載がある。特許文献2の実施例には、LiMn0.6Fe0.3Ni0.1POを始めとする種々のLiMnFePOが優れた放電容量とサイクル特性を示すことが記載されている。また、特許文献2には、「一方、オリビン構造を有する化合物においては、式中、Mnの元素比率bが0.8以上になると、導電性を低くさせるMnの含有量が多すぎることから、Mnの一部及び/又はFeの一部が所定の元素で置換されても電子伝導性を高くすることが困難となる。」(第5項第18〜第20行)との記載が存在する。
特許文献3には、「金属をドープしたリン酸マンガンリチウムLiMn1−xPO(式中、0<x≦0.1であり、Mはドープ金属元素を表す)と炭素源とを混合し、得られた混合物を不活性ガス雰囲気中にて熱処理する工程を含む正極活物質の製造方法。」(請求項1)の発明が開示されている。特許文献3によれば、 炭素源を金属ドープリン酸マンガンリチウムに添加して熱処理を行う本工程においては、「炭素源が熱処理中に金属ドープリン酸マンガンリチウムの分解により生成するガスにより発泡することを防ぐことができ、その結果、融解状態にある炭素源がより均一に金属ドープリン酸マンガンリチウムの表面に溶融状態で広がり、より均一に炭素を金属ドープリン酸マンガンリチウム粒子表面に析出させることができる。このため、得られる正極活物質の表面導電性がさらに良好になり、また粒子間の接触が強固に安定化される。」(第9項第18〜第23行)ことによって、「本発明の正極活物質は非水電解質電池に適した良好なレート特性を有する。」(第6項第15〜第16行)との記載がある。また、「得られた粉末試料はアセチレンブラックと70:25の重量比にて秤量し、遊星ミルにて乾式で200rpm、24時間カーボンコート処理を行った。その後得られた炭素複合体試料をアルゴン雰囲気中にて550℃、1時間熱処理を行った。このようなカルボサーマル処理により得られた試料と結着剤であるポリテトラフルオロエチレンを95:5の重量比で加え、メノウ乳鉢で混錬した後、コルクボーラーを用いて直径1.0cm、厚さ0.25mm厚のディスク状に型抜きし、これを正極ペレットとして使用した。」(段落0060)と記載されている。また、特許文献3の実施例には、Mg、Ti、のドープ割合を変化させたLiMn1−xPOが優れたレート特性を示すことが記載されている。しかしながら、発明の詳細な説明の中には、金属をドープすることによる効果の発現機構、及びドープ元素の選択理由についての説明はない。また、ニッケルをドープした例も例示されていない。
特開2003−34534号公報 特開2004−63422号公報 特開2008−130525号公報
上記特許文献1及び2をもってしても、リン酸マンガンリチウムに含まれる遷移金属に対するマンガン元素の比率が80%未満である場合、その正極活物質を用いた電池のエネルギー密度は未だ十分なものではないという課題を有する。
また、上記特許文献3をもってしても、正極活物質の性能を十分に引き出すには、正極活物質:カーボン(アセチレンブラック)=70:25の重量比が必要であり、これほど多くのカーボンを配さなければならない正極活物質からなる正極を用いた電池は、エネルギー密度が十分なものではないという課題を有する。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、リン酸マンガンリチウムを含む二次電池用正極活物質の放電容量を向上することにより、導電助剤としてこれほど多くのカーボン(アセチレンブラック)を配さなくても、エネルギー密度に優れた二次電池を提供することを目的としている。
本発明の構成及び作用効果は以下の通りである。但し、本明細書中に記載する作用機構には推定が含まれており、その正否は本発明を何ら制限するものではない。
本発明は、遷移金属元素に対するマンガンの比率が80%以上であるリン酸マンガンリチウムの粒子を含む二次電池用正極活物質であって、前記二次電池用正極活物質は、前記粒子表面にカーボンを備え、前記二次電池用正極活物質の粒子に備えるカーボン量は、該正極活物質の質量に対して10重量%以下であり、前記リン酸マンガンリチウムの粒子に含まれるニッケル元素の割合は、遷移金属元素中のニッケル比率が4.7%以上であり、大気雰囲気下における示差熱−熱重量同時分析(TG−DTA)において、カーボンの燃焼に相当するDTAの発熱ピーク温度が455℃以上700℃未満の範囲に観測されることを特徴とする二次電池用正極活物質である。
ここで、示差熱−熱重量同時分析(TG−DTA)において、カーボンの燃焼に相当するDTAの発熱ピーク温度は次の様にして規定する。リン酸マンガンリチウムがカーボンを含むこと、及びその量は、有機元素分析により確認することが可能である。リン酸マンガンリチウムのTG曲線には有機元素分析により求めたカーボン量に相当する重量減少部が現れており、DTA曲線に於いて、その重量減少部の温度付近に存在する最大の発熱ピークをカーボンの燃焼に相当するDTA発熱ピークと判定している。そして、そのDTA発熱ピークの頂点の温度をDTAの発熱ピーク温度と規定する。なお、TG−DTA測定は、日本工業規格熱分析通則(JIS K 0129)に準拠するものとする。
本発明のリン酸マンガンリチウムは、遷移金属元素に対するマンガンの比率が80%以上であり、少なくとも表面近傍にニッケル元素が存在するリン酸マンガンリチウムの粒子を含むことが好ましい。
本発明に於けるリン酸マンガンリチウムの粒子は、粒子内の遷移金属元素に対するマンガンの比率が80%以上存在するものである。また、上記表面近傍とは、リン酸マンガンリチウムの粒子の表面に加えて、リン酸マンガンリチウムの結晶の最外層及びその内側の数層を含む部分を指すものである。
本発明のリン酸マンガンリチウムの粒子に含まれるニッケル元素の割合は、遷移金属元素中のニッケル比率が9.6%以下であることが好ましい。
また本発明は、請求項1〜3記載のリチウム二次電池用正極活物質からなる正極と、負極と、非水電解質とを備えたリチウム二次電池である。
本発明によれば、放電容量の大きい二次電池用正極活物質及びそれを用いたエネルギー密度の高い二次電池を提供することができる。
本発明の正極活物質では、リン酸マンガンリチウムの電子伝導性を向上させる為に、リン酸マンガンリチウムの粒子カーボンを備えている。このカーボンは、前記粒子の表面に部分的に担持していても良く、前記粒子の全体を被覆するように担持されていても良い。また、複数のカーボンにより形成される複数の層として存在しても良い。この場合、カーボンの形態が、リン酸マンガンリチウムの粒子の表面に付着した膜状体と、リン酸マンガンリチウムの粒子の表面、または上記膜状体から外方に突出した突出体を含む構造として存在すると、リン酸マンガンリチウムの粒子の電子伝導性が向上するのみならず、粒子間の電子抵抗を減少させることができることから、好ましい。さらに、このカーボンを備えたリン酸マンガンリチウムを大気雰囲気下において示差熱−熱重量同時分析を行うと、カーボンの燃焼に相当するDTAの発熱ピークが455℃以上から700℃までの範囲に観測される。このようなカーボンを備えることによって、正極活物質本来の性能を引き出すことが可能となり、放電容量が向上する効果が得られる。また、リン酸マンガンリチウムの粒子に備えるカーボン量は、この正極活物質を用いた正極極板の作製工程や、その極板の扱いやすさ、及びその極板を用いた二次電池のエネルギー密度への寄与を考慮すると、正極活物質の質量に対して10質量%以下である事が好ましく、7質量%以下であればより好ましい。
また、上述のようなカーボンを備える為には、リン酸マンガンリチウムの粒子の表面近傍に少なくともニッケル元素が存在することが好ましい。ニッケル元素はその一部が粒子内部に固溶していても良く、この場合、一般式LiMn1−xNiPOで表されるリン酸ニッケルマンガンリチウムと成り、リン酸マンガンリチウムの結晶自体の電気伝導性が向上する為、好ましい。また、マンガンおよびニッケル以外の遷移金属元素やアルミ等の典型元素を含んでいることを妨げるものではない。他の遷移金属元素としてはたとえば、コバルトや鉄等が挙げられる。しかしながら、マンガンの量が減少すると、リン酸マンガンリチウム本来の充放電容量が減少し、電池のエネルギー密度が小さくなることから、その結晶内の遷移金属元素に対するマンガンの比率が80%以上であることが好ましい。また、ニッケル元素は結晶内に固溶することなく、リン酸マンガンリチウム粒子の表面に存在していても良い。この場合、活物質に含まれるニッケル元素量が極微量であっても本発明の効果が得られる為、好ましい。
本発明に於いては、リン酸マンガンリチウムに含まれるニッケル元素のモル数が、リン酸マンガンリチウムの結晶内の遷移金属元素に対して30%以下であることが好ましい。ニッケル元素の存在割合がこの範囲の場合、放電容量が向上する効果が認められる。さらに、ニッケル元素の存在割合が10%未満である場合、放電容量が向上する効果が特に顕著に認められるため、より好ましい。
また、上記の化合物がリチウム原子、マンガン原子、リン原子、ニッケル原子などを含んでいること及びその量は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析により確認することができる。また、金属原子が互いに固溶していること及びオリビン型の結晶構造を持つことは、粉末X線回折分析(XRD)により確認することができる。他にも透過型電子顕微鏡観察(TEM)、エネルギー分散X線分光法(EDX)、走査電顕X線分析(EPMA)、高分解能電子顕微鏡分析(HRAEM)及び電子エネルギー損失分光法(EELS)などの分析機器を併用することにより、詳細な分析を行うことが可能である。
本発明に係るリン酸マンガンリチウムの合成方法については、特に限定されるものではない。具体的には、固相法、液相法、ゾル−ゲル法、水熱法等が挙げられるが、リン酸マンガンリチウムの合成時にカーボン源を共存させることが好ましい。水熱法の場合には、リン酸マンガンリチウムの合成時にカーボン源を共存させることによって、生成したリン酸マンガンリチウムの粒子の表面に均一なカーボン前駆体の膜状体が形成されるため、特に好ましい。なお、合成時に共存させるカーボン源としては、アスコルビン酸等の有機酸化合物及びショ糖等の糖類が挙げられる。また、リン酸マンガンリチウムの粒子の少なくとも表面にニッケル元素を存在させる方法についても、特に限定されるものではないが、ニッケル源をリン酸マンガンリチウムの合成時に一緒に混合する、或いは、リン酸マンガンリチウムを合成した後にニッケル及びニッケル元素を含む化合物を加えて機械的に付着させる、といった方法が挙げられる。
また、本発明に於いては、リン酸マンガンリチウムの電子伝導性を補う目的で二次電池用正極活物質のリン酸マンガンリチウムの粒子の表面に、ポリビニルアルコール、ショ糖、アスコルビン酸等の有機物の熱分解により生成したカーボンを備える。特に、上記の水熱法により合成したリン酸マンガンリチウムにでは、粒子の外方に向かって突出した熱分解により生成したカーボンの突出体が形成されることから、熱分解させるカーボン源としてはポリビニルアルコールを用いるのが好ましい。二次電池用正極活物質の粒子の表面にカーボンを備える為に行う熱分解工程を実施する温度は、用いる有機物が熱分解する温度より高いことが求められるが、上記熱分解工程温度が高すぎると、リン酸マンガンリチウムの性能が低下することから、上記熱分解工程の温度は、300℃〜900℃が好ましい。より好ましくは、500℃〜800℃である。
本発明において、カーボンを備えたリン酸マンガンリチウムは、二次粒子の平均粒子サイズ100μm以下の粉体として二次電池用正極活物質に用いることが好ましい。特に、二次粒子の平均粒子径は0.1〜50μmがより好ましく、前記二次粒子を構成する一次粒子の粒径は1〜500nmであることが好ましい。また、粉体粒子の流動法窒素ガス吸着法によるBET比表面積は正極の高率充放電特性を向上させるために大きい方が良く、1〜100m/gが好ましい。より好ましくは5〜100m/gである。粉体を所定の形状で得るため、粉砕機や分級機を用いることができる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等を用いることができる。粉砕時には水、あるいはアルコール、ヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いても良い。分級方法としては、特に限定はなく、必要に応じて篩や風力分級機などを乾式、或いは湿式にて用いることができる。
更に、正極活物質にその性能の向上を目的として意図的に不純物や異種元素を共存させてもよく、そのような場合にも本発明の効果が失われることはない。
本発明の二次電池用正極活物質を用いて二次電池用正極を作製するに当たり、前記二次電池用正極活物質の他に、ポリフッ化ビニリデン、シリコンブタジエンゴム、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース等の周知の結着剤や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノファイバー等の周知の導電助剤を周知の処方で用いることができる。仮に、本発明の二次電池用正極活物質を用いた二次電池用正極に上記アセチレンブラック等が混在している場合であっても、本発明の二次電池用正極活物質が備えるカーボンと、上記アセチレンブラック等のカーボンとは、TG−DTA分析により区別することが可能である。即ち、本発明の二次電池用正極活物質に備えるカーボンの燃焼に相当するDTA発熱ピークは、700℃未満に現れるのに対して、上記アセチレンブラック等はカーボンの燃焼に相当するDTA発熱ピークが750℃以上に現れる。従って、本発明の二次電池用正極活物質と上記アセチレンブラック等が混在した正極のDTA曲線には、二種類のカーボンの燃焼に由来する二つの発熱ピークが現れることから、本発明の二次電池用正極活物質が備えるカーボンと、上記アセチレンブラック等のカーボンを確認することが可能である。また、本発明に於ける正極活物質のリン酸マンガンリチウムの粒子の表面に備えられたカーボンの形態をTEMを用いて観察すると、粒子表面を覆うように存在する膜状体と、その正極活物質のリン酸マンガンリチウムの粒子の表面または上記膜状体から外方に突出した突出体とをもつ構造が確認される。さらに、本発明の二次電池用正極活物質のEELS分析を行うと、正極活物質のリン酸マンガンリチウムの粒子の表面に備えたカーボンと導電助剤との間には、カーボンのsp2軌道に対応するピークの強度が異なり、導電助剤のピーク強度が著しく高いという違いが存在する。これらのことからも、本発明の二次電池用正極活物質が備えるカーボンと、上記アセチレンブラック等のカーボンを区別することが可能である。
本発明の二次電池用正極活物質を非水電解質中で用いる場合には、正極中に含まれる水分量は少ない方が好ましく、具体的には1000ppm未満であることが好ましい。水分量を減少させる手段としては、高温・減圧環境において電極を乾燥する方法や、電極に含まれる水分を電気化学的に分解する方法が適している。
また、電極合材層の厚さは電池のエネルギー密度との兼ね合いから本発明を適用する電極合材層の厚みは10μm以上500μm以下であることが好ましい。
本発明電池の負極は、何ら限定されるものではなく、リチウム金属、リチウム合金(リチウム―アルミニウム、リチウム―鉛、リチウム―錫、リチウム―アルミニウム―錫、リチウム―ガリウム、およびウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えばグラファイト、ハードカーボン、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(LiTi12等)、ポリリン酸化合物等が挙げられる。これらを、二次電池に用いる電解質の種類に応じて使用することができる。これらの中でもグラファイトは、金属リチウムに極めて近い作動電位を有し、高い作動電圧での充放電を実現できるため負極材料として好ましい。例えば、人造黒鉛、天然黒鉛が好ましい。特に,負極活物質粒子表面を不定形炭素等で修飾してあるグラファイトは、充電中のガス発生が少ないことから望ましい。
一般的に、リチウム二次電池の形態としては、正極、負極、電解質塩が溶媒に含有された電解質から構成され、一般的には、正極と負極との間に、セパレータとこれらを包装する外装体が設けられる。
溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネ−ト等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフランまたはその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエ−テル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等からなる非水溶媒や水を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
電解質塩としては、例えば、LiBF、LiPF、LiClO、LiN(CSO、LiN(CFSO等のイオン性化合物が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。電解質における電解質塩の濃度としては、高い電池特性を有する二次電池を確実に得るために、0.5mol/l以上5mol/l以下が好ましく、さらに好ましくは、1mol/l以上2.5mol/l以下である。
以下に、実施例を例示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
(実施例1)
(4.7%Ni含有LiMnPO
まず、水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)(株式会社ナカライテスク)を6.71g及びリン酸水素二アンモニウム((NHHPO)(株式会社ナカライテスク)を10.57g量り取り、それぞれ40mlのイオン交換水中に溶解した後に、両溶液を攪拌しながら混合した。次に、アスコルビン酸(株式会社ナカライテスク)1.41gを溶解させた80mlのイオン交換水に、硫酸マンガン五水和物(MnSO・5HO)(株式会社ナカライテスク)を18.32g及び硫酸ニッケル六水和物(NiSO・6HO)(株式会社ナカライテスク)を1.05g量り取り、溶解させた。この溶液を上記LiOH・HOと(NHHPOとの混合溶液に添加することによって、前駆体溶液を得た。この前駆体溶液をポリテトラフルオロエチレン製容器(内容積500cm)に移し、これを水熱反応容器(耐圧硝子工業株式会社製、TVS-N2)に設置した。反応容器内を窒素ガスで充分に置換して密閉し、170℃で水熱合成を実施した。水熱合成時間(前記水熱合成温度を維持する時間)は6時間とした。なお、昇温速度は100℃/hr、降温は自然放冷とした。得られた生成物をイオン交換水とアセトンで十分に洗浄した後に、120℃で6時間の減圧乾燥を行うことによって、リン酸マンガンリチウムの粉末を得た。この粉末2.0gに,ポリビニルアルコール(和光純薬工業株式会社、重合度1500)2.29gを加えて、メノウ乳鉢を用いて混合し,さらに60℃に加温した水を少量加え,再度乳鉢で混合−混練してガム状のペーストとした。前記混合物をアルミナ製の匣鉢(外形寸法90×90×50mm)に入れ、雰囲気置換式焼成炉(株式会社デンケン社製卓上真空ガス置換炉KDF−75、内容積2400cm)を用いて、窒素ガスの流通下(流速0.5 l/min)で加熱を行った。加熱温度は700℃とし、加熱時間(前記加熱温度を維持する時間)は1時間とした。なお、昇温速度は10℃/min、降温は自然放冷とした。このようにして、表面にカーボンを備えたリン酸マンガンリチウムを作製した。この化合物の組成分析を、ICP発光分光分析により次の手順で実施した。化合物0.2gを5.0mol/lの塩化水素水溶液20ml中で30分間煮沸処理したのち、この溶液を100mlに希釈することによって、試料用溶液を調製した。この溶液を、CID高周波プラズマ発光分光分析装置(日本ジャーレルアッシュ株式会社、IRIS-AP)を用い、プラズマ出力1150W、ネブライザー流量28.0psi、補助ガス流量0.51 l/minの条件の下で測定した。その結果、ニッケル含有量は遷移金属全体のモル数に対して4.7%であった。これを本発明正極活物質a1とする。
(実施例2)
(6.6%Ni含有LiMnPO
上記正極活物質の作製にあたり、LiOH・HOを6.71g及び(NHHPOを10.57g量り取り、それぞれ40mlのイオン交換水中に溶解した後に、両溶液を攪拌しながら混合した。次に、アスコルビン酸1.41gを溶解させた80mlのイオン交換水に、MnSO・5HOを17.93g及びNiSO・6HOを1.47g量り取り、溶解させた。この溶液を上記LiOH・HOと(NHHPOとの混合溶液に添加することによって、前駆体溶液を得たことを除いては実施例1と同様にして二次電池用正極活物質を作製した。この化合物のICP発光分光分析を行ったところ、ニッケル含有量は遷移金属全体のモル数に対して6.6%であった。これを本発明正極活物質a2とする。
(実施例3)
(9.6%Ni含有LiMnPO
上記正極活物質の作製にあたり、LiOH・HOを6.71g及び(NHHPOを10.57g量り取り、それぞれ40mlのイオン交換水中に溶解した後に、両溶液を攪拌しながら混合した。次に、アスコルビン酸1.41gを溶解させた80mlのイオン交換水に、MnSO・5HOを17.36g及びNiSO・6HOを2.10g量り取り、溶解させた。この溶液を上記LiOH・HOと(NHHPOとの混合溶液に添加することによって、前駆体溶液を得たことを除いては実施例1と同様にして二次電池用正極活物質を作製した。この化合物のICP発光分光分析を行ったところ、ニッケル含有量は遷移金属全体のモル数に対して9.6%であった。これを本発明正極活物質a3とする。
(実施例4)
(13.1%Ni含有LiMnPO
上記正極活物質の作製にあたり、LiOH・HOを6.71g及び(NHHPOを10.57g量り取り、それぞれ40mlのイオン交換水中に溶解した後に、両溶液を攪拌しながら混合した。次に、アスコルビン酸1.41gを溶解させた80mlのイオン交換水に、MnSO・5HOを16.39g及びNiSO・6HOを3.15g量り取り、溶解させた。この溶液を上記LiOH・HOと(NHHPOとの混合溶液に添加することによって、前駆体溶液を得たことを除いては実施例1と同様にして二次電池用正極活物質を作製した。この化合物のICP発光分光分析を行ったところ、ニッケル含有量は遷移金属全体のモル数に対して13.1%であった。これを本発明正極活物質a4とする。
(実施例5)
(16.7%Ni含有LiMnPO
上記正極活物質の作製にあたり、LiOH・HOを6.71g及び(NHHPOを10.57g量り取り、それぞれ40mlのイオン交換水中に溶解した後に、両溶液を攪拌しながら混合した。次に、アスコルビン酸1.41gを溶解させた80mlのイオン交換水に、MnSO・5HOを15.43g及びNiSO・6HOを4.21g量り取り、溶解させた。この溶液を上記LiOH・HOと(NHHPOとの混合溶液に添加することによって、前駆体溶液を得たことを除いては実施例1と同様にして二次電池用正極活物質を作製した。この化合物のICP発光分光分析を行ったところ、ニッケル含有量は遷移金属全体のモル数に対して16.7%であった。これを本発明正極活物質a5とする。
参考例6)
(23.0%Ni含有LiMnPO4)
上記正極活物質の作製にあたり、LiOH・H2Oを6.71g及び(NH4)2HPO4を10.57g量り取り、それぞれ40mlのイオン交換水中に溶解した後に、両溶液を攪拌しながら混合した。次に、アスコルビン酸1.41gを溶解させた80mlのイオン交換水に、MnSO4・5H2Oを14.46g及びNiSO4・6H2Oを5.26g量り取り、溶解させた。この溶液を上記LiOH・H2Oと(NH4)2HPO4との混合溶液に添加することによって、前駆体溶液を得たことを除いては実施例1と同様にして二次電池用正極活物質を作製した。この化合物のICP発光分光分析を行ったところ、ニッケル含有量は遷移金属全体のモル数に対して23.0%であった。これを本発明正極活物質a6とする。
(比較例1)
(LiMnPO
上記正極活物質の作製にあたり、LiOH・HOを6.71g及び(NHHPOを10.57g量り取り、それぞれ40mlのイオン交換水中に溶解した後に、両溶液を攪拌しながら混合した。次に、アスコルビン酸1.41gを溶解させた80mlのイオン交換水に、MnSO・5HOを19.29g量り取り、溶解させた。この溶液を上記LiOH・HOと(NHHPOとの混合溶液に添加することによって、前駆体溶液を得たことを除いては実施例1と同様にして二次電池用正極活物質を作製した。この化合物のICP発光分光分析を行ったところ、ニッケル元素は検出されなかった。これを比較正極活物質b1とする。
(比較例2)
(0.4%Ni含有LiMnPO
上記正極活物質の作製にあたり、LiOH・HOを6.71g及び(NHHPOを10.57g量り取り、それぞれ40mlのイオン交換水中に溶解した後に、両溶液を攪拌しながら混合した。次に、アスコルビン酸1.41gを溶解させた80mlのイオン交換水に、MnSO・5HOを19.19g及びNiSO・6HOを0.11g量り取り、溶解させた。この溶液を上記LiOH・HOと(NHHPOとの混合溶液に添加することによって、前駆体溶液を得たことを除いては実施例1と同様にして二次電池用正極活物質を作製した。この化合物のICP発光分光分析を行ったところ、ニッケル含有量は遷移金属全体のモル数に対して0.4%であった。これを比較正極活物質b2とする。
(比較例3)
(0.9%Ni含有LiMnPO
上記正極活物質の作製にあたりLiOH・HOを6.71g及び(NHHPOを10.57g量り取り、それぞれ40mlのイオン交換水中に溶解した後に、両溶液を攪拌しながら混合した。次に、アスコルビン酸1.41gを溶解させた80mlのイオン交換水に、MnSO・5HOを19.09g及びNiSO・6HOを0.21g量り取り、溶解させた。この溶液を上記LiOH・HOと(NHHPOとの混合溶液に添加することによって、前駆体溶液を得たことを除いては実施例1と同様にして二次電池用正極活物質を作製した。この化合物のICP発光分光分析を行ったところ、ニッケル含有量は遷移金属全体のモル数に対して0.9%であった。これを比較正極活物質b3とする。
(比較例4)
(1.8%Ni含有LiMnPO
上記正極活物質の作製にあたり、LiOH・HOを6.71g及び(NHHPOを10.57g量り取り、それぞれ40mlのイオン交換水中に溶解した後に、両溶液を攪拌しながら混合した。次に、アスコルビン酸1.41gを溶解させた80mlのイオン交換水に、MnSO・5HOを18.90g及びNiSO・6HOを0.42g量り取り、溶解させた。この溶液を上記LiOH・HOと(NHHPOとの混合溶液に添加することによって、前駆体溶液を得たことを除いては実施例1と同様にして二次電池用正極活物質を作製した。この化合物のICP発光分光分析を行ったところ、ニッケル含有量は遷移金属全体のモル数に対して1.8%であった。これを比較正極活物質b4とする。
(示差熱−熱重量同時分析)
本発明正極活物質a1〜a6及び比較正極活物質b1〜b4について、大気雰囲気中に於ける示差熱−熱重量同時分析測定(TG−DTA)を示差熱熱重量同時測定装置(SII Nanotechnology Inc.、TG/DTA6000)を使用して行った。この測定に於いて得られた、各活物質のカーボンの燃焼に相当するDTAの発熱ピーク温度を表1に示す。また、本発明正極活物質a3の測定で得られたTG曲線、及びDTA曲線を図1に示す。
TG−DTA測定において、カーボンの燃焼に相当するDTAの発熱ピーク温度を求める手順を本発明正極活物質a3を例にして説明する。図1から判るように、リン酸マンガンリチウムのTG曲線には有機元素分析により求めたカーボン量に相当する重量減少部Tが現れており、DTA曲線に於いて、そのTの温度付近に存在する最大の発熱ピークDをカーボンの燃焼に相当するDTA発熱ピークと判定している。そして、そのDTA発熱ピークDの頂点Eの温度をDTAの発熱ピーク温度とした。
(正極の作製)
前記の正極活物質、導電助剤であるアセチレンブラック及び結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を(80:12:8)の質量比で含有し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒とする正極ペーストを調製した。該正極ペーストを、アルミ端子を取り付けたアルミニウムメッシュ集電体上の両面に塗布し、80℃でNMPを除去した後、塗布部分同士を二重に重ね、塗布部分の投影面積が半分になるように折り曲げ、折り曲げた後の厚みが400μmになるようにプレス加工を行い、本発明正極a1とした。折り曲げた後の活物質の塗布面積は2.25cm、塗布質量は0.07gである。正極は150℃で5時間以上の減圧乾燥を行い、極板中の水分を除去して使用した。
(負極の作製)
ステンレス鋼(品名:SUS316)製の端子を取り付けたステンレス鋼(品名:SUS316)製のメッシュ集電体の両面に、厚さ300μmのリチウム金属箔を貼り合わせてプレス加工したものを負極とした。
(参照極の作製)
リチウム金属片をステンレス鋼(品名:SUS316)製の集電棒の先端に貼り付けたものを参照極とした。
(電解液の調製)
エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1:1の割合で混合した混合溶媒に、含フッ素系電解質塩であるLiPFを1.0mol/lの濃度で溶解させ、非水電解質を作製した。該非水電解質中の水分量は50ppm未満とした。
(電池の組み立て)
露点−40℃以下のArボックス中においてガラス製のリチウムイオン二次電池を組み立てた。予め容器の蓋部分に導線部を固定した金メッキクリップに正極と負極と参照極とを各1枚ずつ挟んだ後、正・負極が対向するように固定した。参照極は負極から見て正極の裏側となる位置に固定した。次に、一定量の電解液を入れたポリプロピレン製カップをガラス容器内に設置し、そこに正極、負極及び参照極が浸かるように蓋をすることで電池を組み立てた。この電池を本発明電池A1とする。
同様にして、実施例2〜5、参考例6、比較例1〜4のそれぞれの正極活物質を用いて正極を作製し、上記の手順にてリチウム二次電池を組み立てた。本発明活物質a2〜aを用いた正極を使用したリチウム二次電池を、本発明電池A2〜A5、参考例活物質a6を用いた正極を使用したリチウム二次電池を、参考例電池A6、比較活物質b1〜b4を用いた正極を使用したリチウム二次電池を、比較電池B1〜B4とする。
(充放電試験)
上記のようにして作製した本発明電池A1〜A5、参考例電池A6、比較電池B1〜B4を温度20℃において、1サイクルの充放電を行う充放電工程に供した。充電条件は、電流0.1ItmA(約10時間率)、電圧4.3V、15時間の定電流定電圧充電とし、放電条件は、電流0.1ItmA(約10時間率)、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。得られた放電容量の結果を該正極活物質に備えたカーボンの燃焼に相当するDTAの発熱ピーク温度と共に表1に示す。
表1からわかるように、本発明電池A1〜A5,参考例電池A6、比較電池B2及びB3は、比較電池B1と比較して、放電容量の向上が認められる。この電池性能の違いは、正極活物質に由来するものであり、本発明正極活物質a1〜a5、参考例正極活物質a6、比較正極活物質b2及びb3については、その活物質のカーボンの燃焼に相当するDTA発熱ピーク温度が比較正極活物質b1よりも高い値を示している。この様に、DTA発熱ピーク温度が高温側にシフトすることは、カーボンの燃焼温度が高くなっていることを意味しており、即ち、リン酸マンガンリチウム粒子に備えられたカーボンの結晶性が高くなっているものと考えられる。さらに、本発明正極活物質a1〜a5、参考例正極活物質a6、比較正極活物質b2及びb3はリン酸マンガンリチウム粒子にニッケルを含んでいる点で、比較正極活物質b1と異なる。上記の様なカーボンの結晶性向上の要因は、リン酸マンガンリチウム粒子の表面近傍に存在するニッケル元素の、窒素不活性雰囲気下に於ける有機化合物の熱分解炭化反応に対する触媒作用によるものと考えられる。このニッケルの触媒作用により、リン酸マンガンリチウムの粒子に備えられるカーボンの結晶性が高くなり、その電子伝導性が向上するものと考えられる。よって、二次電池の放電容量を大きくする為には、リン酸マンガンリチウムの粒子の少なくとも表面近傍に、ニッケル元素が存在するリン酸マンガンリチウムの粒子を含むことが好ましい。特に、本発明電池A1〜A5,参考例電池A6については、比較電池と比較して大きな放電容量を示している。この様に、DTA発熱ピーク温度が455℃を超えている本発明正極活物質a1〜a5、参考例正極活物質a6については、それを用いた電池の性能改善効果が高いことから、二次電池用正極活物質に備えられたカーボンの燃焼に相当するDTA発熱ピークの温度は455℃以上であるような二次電池用正極活物質でなければならない。なお、本発明正極活物質及び比較正極活物質のいずれを用いた場合にも、その正極極板の作製に於いては、導電助剤としてアセチレンブラックを正極活物質の質量に対して同じ質量比で使用していることから、本発明正極活物質a1〜a5、参考例正極活物質a6を用いた本発明電池A1〜A5,参考例電池A6で発現している放電容量の向上の効果は、導電助剤として用いたアセチレンブラックによるものではなく、正極活物質のリン酸マンガンリチウムの粒子の表面に備えられたカーボンによりもたらされる効果であることがわかる。
また、ニッケル元素量が少ない比較正極活物質b2〜b4では、リン酸マンガンリチウム粒子の表面近傍に存在するニッケル元素量が少なすぎる為に、DTA発熱ピーク温度が455℃よりも低くなり、カーボンの電子伝導性が十分で無いことから、この正極活物質を用いた電池の放電容量があまり向上していないものと考えられる。
本実施例では、リン酸マンガンリチウムの前駆体溶液にニッケル源を共存させていることに加えて、リン酸ニッケルリチウムがリン酸マンガンリチウムと同じ結晶構造を取ること、リン源とリチウム源の仕込み量がマンガンとニッケル源と同じモル数であることから、本発明正極活物質a1〜a5、参考例正極活物質a6及び、比較正極活物質b2〜b4については、リン酸マンガンリチウムの結晶格子内にニッケルが固溶しているものと考えられる。しかしながら、リン酸マンガンリチウムの粒子の表面近傍に存在するニッケル元素量は、その固溶状態により、添加したニッケル元素量とは異なることが推測される。
また、本発明に於いては、リン酸マンガンリチウムを合成した後に、メカニカルミリング、浸漬などの手法を用いて、リン酸マンガンリチウムの粒子表面にニッケル及びニッケル化合物を直接付着及び被覆した場合においても十分な効果を発揮することは、上記した作用機構から自明である。この場合、効果を発現させる為に最適なニッケル元素量は本実施例から把握される量よりも少なくなることは容易に推測されるものである。
一方、リン酸マンガンリチウムの粒子に含まれるニッケル元素量が多い本発明正極活物質a4〜a5、参考例正極活物質a6に於いても、DTA発熱ピーク温度は本発明正極活物質a3と比較して低下しており、ニッケル元素量が多すぎても、本発明の効果が十分に発揮されないことを示している。本実施例は、本発明の効果を発現させる為に、リン酸マンガンリチウムに含まれるニッケル元素量が多く必要と考えられる固溶体を合成した場合に於いて、そのニッケル元素量の上限を見極める為に実施したものである。リン酸ニッケルリチウムは5V(vs.Li/Li+)より高い電位でなければリチウムの挿入・脱離が行えないことから、その電位を使用しない限りでは、ニッケルを固溶させたリン酸マンガンリチウムの理論放電容量はそのニッケル元素量に比例して減少する。本実施例に於いて採用した電池処方及び充放電試験条件に於いては、本発明電池A4〜5,参考例電池A6の放電容量は、比較電池B1よりも大きが、通電電流値をより小さくする、或いは、試験温度を高くするという様に、リン酸マンガンリチウムの放電容量が理論容量により近づく条件で、本発明の二次電池用正極活物質が使用されることを想定すると、理論容量の小さな二次電池用正極活物質を用いると、エネルギー密度の小さな電池となる。従って、この観点から、リン酸マンガンリチウムの粒子に含まれるニッケル元素の割合は、遷移金属元素中のニッケル元素比率が9.6%以下であることが好ましい。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質は、放電容量が大きいので、エネルギー密度の高いリチウム二次電池を提供することができる。本発明のリチウム二次電池は、エネルギー密度が高いので、今後の展開が期待される電気自動車等、産業用電池に於いて特に高容量化が求められる分野への応用に適しており、産業上の利用可能性は極めて大きい。
本発明活物質a3の大気雰囲気中における示差熱−熱重量同時分析(TG−DTA)の図。

Claims (1)

  1. 遷移金属元素に対するマンガンの比率が80%以上であるリン酸マンガンリチウムの粒子を含む二次電池用正極活物質であって、前記二次電池用正極活物質は、前記粒子表面にカーボンを備え、前記二次電池用正極活物質の粒子に備えるカーボン量は、該正極活物質の質量に対して10重量%以下であり、
    前記リン酸マンガンリチウムの粒子に含まれるニッケル元素の割合は、遷移金属元素中のニッケル比率が4.7%以上であり、大気雰囲気下における示差熱−熱重量同時分析(TG−DTA)において、前記カーボンの燃焼に相当するDTAの発熱ピーク温度が455℃以上700℃未満の範囲に観測されることを特徴とする二次電池用正極活物質。
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