図1に、外壁材1によって形成した外壁の一例を示す。図1では、外壁材1が二枚縦に並べられて外壁の一部が形成されている。
外壁材1は、建築用パネルなどによって構成されるものであり、複数の外壁材1を壁下地に敷き詰めるように取り付けて外壁を形成するものである。外壁材1としては、正面視略矩形状のものを用いることができる。例えば、長辺1820〜3500mm、短辺455〜1000mmの矩形状のものを、長辺を横にして横張りにしたり、長辺を縦にして縦張りにしたりすることができる。また、外壁材同士は、端部同士を突き合わせたり、端部同士を重ね合わせたりして取り付けることができる。具体的には、上下又は左右の端部の二辺で外壁材同士が重ね合って接合する二辺合抉や、上下左右の端部四辺で外壁材同士が重なり合って接合する四辺合抉などのものを用いることができる。外壁材同士が重なり合う場合、長辺同士(短辺方向の端部)を重ね合わせることができ、その場合、働き幅を455〜1000mm程度にすることができる。働き幅とは、複数の外壁材1を重ね合わせて外壁を形成したときに、一つの外壁材1が外壁として露出する重ね合わせ方向の長さのことである。すなわち、働き幅は、外壁材1の重ね合わせ方向の取り付けピッチに略等しい。そして、絵柄2以外は同一形状の外壁材1を複数用いて外壁を形成するものである。
外壁材1の材料としては、窯業系パネル、金属製パネルなど適宜の材料を用いることができる。
外壁材1の取付構造として、以下、長手方向を横にし、水平方向(長手方向)の長さが3030mm、垂直方向の働き幅が455mmの外壁材1を、縦方向に重ね合わせて取り付けた横張り構造の例を示す。ただし、本発明はこれに限られるものではない。
外壁材1が取り付けられた外壁にあっては、絵柄2が隣り合う外壁材1を跨って設けられている。この絵柄2は、複数の外壁材1を跨って一つの形状をなすものである。図1では、二枚の外壁材1,1を跨って絵柄2が設けられているが、絵柄2が三枚以上を跨っていてもよい。また、絵柄2が、縦方向(上下方向)と横方向(水平方向)との複数の外壁材1に跨って設けられていてもよい。
絵柄2は、印刷塗装により設けられてもよいし、表面の凹凸形状で設けられてもよい。
印刷塗装により絵柄2を設ける場合、フルカラーセラジェットなどのCMYKインクを組み合わせた印刷塗装、インクノズルを有する塗装、凹版又は凸版印刷塗装、あらかじめプリントした印刷フィルムを外壁材1の表面に貼り付ける塗装、などの方法で設けることができる。
表面に凹凸形状を形成して絵柄2を設ける場合、製板時又は成型時に壁面表面にプレスあるいはロールにて模様付けすることができる。また、表面にルーターなどの刃物加工を施してもよい。
外壁に設けられる絵柄2として、以下、線図の絵柄2が設けられた例を挙げ、その一例として、星21、円22、四角23が設けられた例を示す。ただし、本発明はこれに限られるものではない。例えば、柄、絵、模様、マーク、キャラクターなどの絵柄2でもよく、またこのような絵柄2に輪郭線や輪郭が付されてこの中心の絵柄2を強調するような絵柄2であってもよい。
絵柄2としては、例えば、縦方向(高さ方向)の長さが600〜800mmで、輪郭線3の太さを2〜6mmにすることができる。
図1の形態では、絵柄2の輪郭が波形状に形成されている。すなわち、輪郭線3の端縁が絵柄2の外側と内側に向かって細かくランダムに出入しており、輪郭線3が細かいギザギザ状又はガタガタ状になっている。それにより、上下の外壁材1の水平方向のズレ量は、図12の場合と同程度であるにもかかわらず、絵柄2のズレを目立ちにくくすることができる。この波形状の輪郭は、隣り合う外壁材1の境界(隣接線L近傍)において少なくとも設けられるが、より自然な絵柄2にするために、好ましくは絵柄2の輪郭全体に設けられる。
図1(b)は、領域Sに表された星21を拡大した図である。図1(b)に示すように、このような波形は、方向の揃ったランダムな長さの直線(スジ状線4)をランダムに複数配置して輪郭線3を描くことにより形成することができる。又は、輪郭線3から、方向の揃ったランダムな長さの間引き線4aをランダムに複数配置することによって形成してもよい。なお、間引き線4aとは、外壁材1のベース色(絵柄2が設けられていない領域の色)の直線であり、輪郭線3を塗装又は印刷しないようにして設けてもよいし、ベース色と同色又は近似色を塗装又は印刷して設けてもよい。この図では、スジ状線4が多数集まって黒い領域として表され、間引き線4aがスジ状線4(黒い領域)に接した白い領域として表されている。そして、上記の手法を併用し、ランダムな長さの直線であるスジ状線4をランダムに配置して輪郭線3を描き、かつ、輪郭線3から、ランダムな長さの間引き線4aをランダムに配置することが好ましい。これらのスジ状線4又は間引き線4aにより、絵柄2のズレを目立ちにくくさせるものである。
この輪郭線3を形成するためのスジ状線4又は間引き線4aは、絵柄2が跨る外壁材1同士が隣接し壁表面に露出する外壁材1の端縁の線(隣接線L)と平行であることが好ましい。すなわち、図1の形態においては、縦方向に絵柄2が跨って外壁材1が取り付けらており、外壁材1の隣接線Lは水平方向となるため、輪郭線3を形成するためのスジ状線4、又は間引き線4aは水平方向の直線となることが好ましいのである。それにより、輪郭線3が連続するような印象を与えることができ、水平方向のズレをより目立ちにくくすることができる。
スジ状線4の長さは均一であってもよいが、ランダムに長さが設けられることで絵柄2のズレをより目立ちにくくすることができる。また、それぞれのスジ状線4の太さは均一であってもよいが、ランダムな太さであることが好ましい。太さをランダムにすることで、絵柄2のズレをより目立たなくすることができる。
スジ状線4及び間引き線4aの太さ及び長さとしては、例えば、絵柄2の縦方向の長さが600〜800mm程度で輪郭線3の太さが2〜6mm程度の場合、スジ状線4及び間引き線4aの長さを0.2〜6mm程度、スジ状線4及び間引き線4aの太さを0.1〜6mm程度にすることができる。
スジ状線4の配置としては、輪郭線3を波形状に形成しない場合の輪郭線3の領域に描かれるスジ状線4の量が、輪郭線3を波形状に形成しない場合の輪郭線3以外の領域に描かれるスジ状線4の量よりも多くなるように配置することが好ましい。一方、間引き線4aの配置としては、輪郭線3を波形状に形成しない場合の輪郭線3の領域に描かれる間引き線4aの量が、輪郭線3を波形状に形成しない場合の輪郭線3以外の領域に描かれる間引き線4aの量よりも少なくなるように配置することが好ましい。このようにスジ状線4及び間引き線4aを配置すると、輪郭線3の中心により多くスジ状線4を描くことができ、あるいは、輪郭線3の端縁をより多く間引くことができ、輪郭線3の中心の視認性を高め、絵柄2の輪郭が曖昧になりすぎることを抑制することができる。
図1の形態では、外壁材1を間近で見ると輪郭線3がギザギザ状に乱れて見えるものの、このギザギザ状の波形により、遠くでは絵柄2の輪郭線3が繋がって見え、絵柄2のズレが目立ちにくい。そして、外壁を形成した際にはこの輪郭線3を間近で見るようなことは少なく、遠くから外壁を見ると絵柄2を明瞭に視認することができるものである。そして、絵柄2が跨る隣接線L付近において水平方向に振幅する波形を形成し、輪郭線3の端縁をギザギザ状にすることにより、ズレ精度誤差の大きい水平方向で波形が形成されることによって、さらに、近目では複数の外壁材1を取り付けたときの絵柄2のズレが気になりにくく、遠目ではギザギザが吸収されて絵柄2を明確に認識することができるものである。
図2に、外壁材1によって形成した外壁の他の一例を示す。図2では、外壁材1が二枚横に並べられて外壁の一部が形成されている。
図2の形態においても、絵柄2の輪郭が波形状に形成されている。すなわち、輪郭線3の端縁が絵柄2の外側と内側に向かって細かくランダムに出入しており、輪郭線3が細かいギザギザ状又はガタガタ状になっている。この波形状の輪郭は、隣り合う外壁材1の境界(隣接線L近傍)において少なくとも設けられるが、より自然な絵柄2にするために、好ましくは絵柄2の輪郭全体に設けられる。
図2(b)は、領域Sに表された星21を拡大した図である。図2(b)に示すように、このような波形は、方向の揃ったランダムな長さの直線(スジ状線4)をランダムに複数配置して輪郭線3を描くことにより形成することができ、また、輪郭線3から、方向の揃ったランダムな長さの間引き線4aをランダムに複数配置することによって形成することができる。スジ状線4の長さ、太さ、配置は、図1の形態と同様にすることができる。
そして、図2の形態にあっては絵柄2が横に並設した外壁材1を跨って設けられており、隣接線Lが縦方向(垂直方向)になっている。この隣接線Lと平行にスジ状線4と間引き線4aとが設けられている。
四辺合抉や縦目地シーリングなどの横方向に外壁材1を重ね合わせ接合させて外壁を形成する場合、左右の外壁材1同士が上下にずれて絵柄にズレが発生する場合がある。図2の形態においては、垂直方向にスジ状線4及び間引き線4aが設けられているので、特にそのような外壁材1の取付構造において、輪郭線3のズレや不連続を吸収して絵柄2のズレを目立たなくさせることができるものである。
図1又は図2の形態においては、線図ではなく、スジ状線4で塗り潰した絵柄2にすることも好ましい。すなわち、スジ状線4を絵柄2の全体(内部を含む全体領域)に多数配置して塗り潰すようにして絵柄2を構成すると、絵柄2自体がスジ状線4の集合となって、外壁材1がズレて取り付けられた場合でも、絵柄2の輪郭に配置されたスジ状線4がそのズレを吸収して、絵柄2のズレを目立たなくさせることができるものである。
また、図1又は図2の形態においては、線図ではなく、絵柄2の内部、すなわち輪郭線3で囲まれた内部を、全体に塗り潰した絵柄2にすることも好ましい。この場合も、絵柄2の輪郭がスジ状線4の集合となって、外壁材1がズレて取り付けられた場合でも、絵柄2の輪郭に配置されたスジ状線4がそのズレを吸収して、絵柄2のズレを目立たなくさせることができるものである。
ところで、図1又は図2の形態において、色ではなく凹凸により絵柄2を設ける場合、表面で突出する凸状のスジ状線4にしたり、表面で凹む溝状のスジ状線4にしたりして、絵柄2や輪郭線3を設けることができる。
図3及び図4により、分断部7を設けた外壁材1によって形成した外壁の一例を説明する。図3(a)(b)及び図4(a)では、外壁材1が二枚縦に並べられて外壁の一部が形成され、図4(b)では、外壁材1が二枚横に並べられて外壁の一部が形成されている。
図3(a)に示すように、この形態では、絵柄2に、絵柄2を分断する直線状の分断部7が複数設けられている。具体的には、輪郭線3が、平行に複数並んだ直線状の分断部7によって所定間隔ごとに直線状に分断され、輪郭線3が波線状になっている。そして、この分断部7には絵柄2が設けられていない。
分断部7は、外壁を形成したときに露出する外壁材1の端縁(隣接線L)と平行な直線として、外壁材1の垂直方向に複数本配列されている。すなわち、分断部7は絵柄2の色を間引く間引き線として機能する。分断部7は、上下の外壁材1に絵柄2が跨る場合、水平方向に設けることが好ましい。分断部7を設けることにより、輪郭線3を所定間隔ごとに分断し、上下の外壁材1がずれた場合でも絵柄2のズレを目立たなくすることができる。
また、分断部7は、外壁材1の露出する端縁である隣接線Lに沿って、上側の外壁材1の下端部の端縁及び下側の外壁材1の上端部の露出する領域の、一方又は両方に設けられていることが好ましい。それにより、絵柄2を全体的にブラウンドな状態(ブラインドを通して絵柄2を視認するような状態)にして、ズレをより一層目立たなくさせることができる。
分断部7の直線の太さ(幅)としては、輪郭線3よりも細いことが好ましく、例えば、絵柄2の輪郭線3が2〜6mmの場合に、0.1〜1mm程度に設定したりすることができる。特に、隣接線Lに沿って上下の外壁材1の両方に分断部7を設け、この上下の外壁材1に跨る分断部7の全体幅を0.2〜3mm程度に設定すると、外壁材1の露出する端部に、分断部7が隣接線Lに沿って設けられて、絵柄2のズレをより目立ちにくくすることができる。なお、分断部7の直線の太さが太くなりすぎると、水平方向に描かれた輪郭線3を消してしまうおそれがあるので好ましくない。複数の分断部7のそれぞれの太さは同じであってもよく、異なっていてもよい。また、隣り合う分断部7の間隔は同じであってもよく(同ピッチ)、異なっていてもよい。ピッチは5〜100mm程度に設定することができる。分断部7の太さやピッチがランダムな方が一層自然な風合いを出すことができる。
分断部7は、直線で形成することができるが、連続した直線でなくてもよく、破線、点線であってもよい。破線、点線のように不連続な直線の場合、絵柄2を間引く量を少なくして、絵柄2及び輪郭線3が不自然に分断するような印象を和らげることができる。
図3(a)の形態では、分断部7は、絵柄2を設けていない領域の外壁材1の色であるベース色と同じか又はほぼ等しい色になっており、ベース色部7aとして設けられている。ベース色部7aは、外壁材1の水平方向(絵柄2が跨る方向と垂直な方向)に亘って設けられてもよいし、個々の輪郭線3ごとにその両端を横切るように設けられてもよい。分断部7をベース色で構成することにより、簡単に輪郭線3を間引くことができ、また絵柄2を自然に見せることができるものである。
ベース色部7aを設けるには、絵柄2を印刷する際にこの部分を印刷しないようにして設けてもよいし、外壁材1のベース色と同じ色を印刷するようにしてもよい。
図3(b)の形態では、分断部7は、輪郭線3の色ともベース色の色とも異なる他の色により構成されている。すなわち、分断部7は任意の色であってよく、この場合も、絵柄2のズレを目立たなくさせることができる。この形態の場合、分断部7が絵柄2に縞模様7bで重なることになる。なお、分断部7は、輪郭線3の色と同一又はほぼ等しい色であってもよいが、絵柄2を明瞭にするためには異なる色であることが好ましい。
図4(a)の形態においては、線図ではなく、絵柄2の内部、すなわち輪郭線3で囲まれた内部を、全体に塗り潰した絵柄2にしている。この場合も、絵柄2が分断部7によって、所定間隔で分断されたり縞模様が形成されたりして、外壁材1がズレて取り付けられた場合でも、絵柄2を横切って複数本で設けられた直線状の分断部7がそのズレを吸収して、絵柄2のズレを目立たなくさせることができるものである。
図4(b)は、横方向に絵柄2が跨った形態を示している。絵柄2が横方向に跨り、垂直方向(縦方向)に絵柄2がずれるおそれがある場合は、縦方向に分断部7(ベース色部7a又は縞模様7b)を設けることで、輪郭線3がベース色や縞模様7bにより分断され、絵柄2のズレを目立ちにくくすることができるものである。
図3及び図4の形態にあっては、近目では、分断部7が絵柄2や輪郭線3を分断しているために、絵柄2のズレが目立ちにくくなる。特に、隣接線Lの片側又は両側に分断部7が設けられた場合は、外壁材1にズレがないときでも輪郭線3が繋がらないのが普通の状態なので、外壁材1がずれて取り付けられたとしても絵柄2のズレが一層目立ちにくくなる。そして、複数の外壁材1を取り付け、遠目で外壁を見た場合、分断部7の色がベース色に吸収されたり分断部7がシルエット状の縞模様を形成したりして、絵柄2を明瞭に認識することができる。したがって、絵柄2のズレを目立ちにくくするものである。
ところで、図3又は図4の各形態において、色ではなく凹凸により絵柄2を設ける場合、表面に凹凸のない直線として分断部7を設けることができる。この場合、分断部7の表面は外壁材1のベース部と面一であることが好ましいが、ベース部より突出して凸状の直線にしたり、ベース部より凹んで溝状の直線にしたりしてもよい。
図5に、外壁材1によって形成した外壁の他の一例を示す。図5では、外壁材1が二枚縦に並べられて外壁の一部が形成されている。
図5(b)に示すように、この形態では、絵柄2の輪郭が、ドットである点5の集まりで形成されている。すなわち、輪郭線3を点5の密集により描いている。それにより、図12の形態と同程度に外壁材1がずれている場合であっても、外壁材1の隣接線Lにおいて、輪郭線3が途切れたりずれたりするような印象を与えることがなく、絵柄2のズレを目立たなくさせることができる。この点5で形成される輪郭は、隣り合う外壁材1の境界(隣接線L近傍)において少なくとも設けられるが、より自然な絵柄2にするために、好ましくは絵柄2の輪郭全体に設けられる。
点5は、例えば、円状、正方形状、矩形状、多角形状などの点5で構成することができ、その径(縦方向及び横方向の長さ、円の場合は直径、矩形の場合は一辺)を0.1〜4mmにすることができる。また、点5の密度を1〜90個/cm2程度にして、点5を配置することができる。点5の大きさは、均一でもよいが、ランダムであることが好ましい。また、点5は均一に配置されてもよいが、不均一にランダムに配置されていることが好ましい。点5を不均一な大きさでランダムに配置し、部分的に白抜け(ベース色を露出)させて輪郭線3を形成することで、絵柄2のズレをより一層目立たなくさせることができる。
図5(c)により、点5の配置設定の一例を示す。まず、点5を、点5で輪郭線3を形成しない場合の輪郭線3の領域に密集させて配置する。このとき、点5が重なる場合に外壁材1のベース色が露出する(白抜けする)ように印刷設定する(図の矢印P)。そして、輪郭線3の端縁を直線でなくジグザク状で不連続な線として構成する(図の矢印Q)。このように、塗装印刷時に点5の配置を設定することにより、輪郭線3を点5で描くことができる。
図5の形態にあっては、近目では、点5の密集によって輪郭線3をくずれさせているために、絵柄2の境界が曖昧となり、絵柄2のズレが目立ちにくくなる。そして、複数の外壁材1を取り付け、遠目で外壁を見た場合、絵柄2の境界の曖昧さが吸収されて、絵柄2を明瞭に認識することができる。したがって、絵柄2のズレを目立ちにくくするものである。
また、図5の形態においては、線図ではなく、点5で塗り潰した絵柄2にすることも好ましい。すなわち、点5を塗り潰しの全体に配置して絵柄2を構成すると、絵柄2自体が点5の集合となって、外壁材1がズレて取り付けられた場合でも、絵柄2の輪郭に配置されたドット状の複数の点5がそのズレを吸収して、絵柄2のズレを目立たなくさせることができるものである。
また、図5の形態においては、線図ではなく、絵柄2の内部、すなわち輪郭線3で囲まれた内部を、全体に塗り潰した絵柄2にすることも好ましい。この場合も、絵柄2の輪郭が点5の集合となって、外壁材1がズレて取り付けられた場合でも、絵柄2の輪郭に配置されたスジ状線4がそのズレを吸収して、絵柄2のズレを目立たなくさせることができるものである。
図6に、外壁材1によって形成した外壁の他の一例を示す。図6では、外壁材1が二枚縦に並べられて外壁の一部が形成されている。
図6(b)に示すように、この形態では、絵柄2の輪郭が徐々にベース色に近くなるように形成されている。すなわち、グラデーションによって輪郭がぼかされ、絵柄2の境界と外壁材1のベース色との境界が曖昧になっている。それにより、図12の形態と同程度に外壁材1がずれている場合であっても、外壁材1の隣接線Lにおいて、輪郭線3が途切れたりずれたりするような印象を与えることがなく、絵柄2のズレを目立たなくさせることができるものである。このグラデーションがかかった輪郭は、隣り合う外壁材1の境界(隣接線L近傍)において少なくとも設けられるが、より自然な絵柄2にするために、好ましくは絵柄2の輪郭全体に設けられる。
このようなグラデーションは、輪郭線3の中央部6aを絵柄2の輪郭線3として最小限必要な太さで実線で構成し、この輪郭線3の中央部6aを中心に徐々に色合いがベース色になるグラデーション部6を設けることにより形成できる。図6の形態では、輪郭線3の両側にグラデーション部6を設けている。このグラデーション部6は、輪郭線3の片側(絵柄2の外側又は内側)に設けてもよいが、両側に設ける方が好ましい。グラデーション部6としては、輪郭線3の中心から離れるに従って徐々に色合いが薄くなりベース色に近づくようにして設けてもよく、輪郭線3と同一色の点の集まりで形成し、この点の密度を徐々に小さくするようにして設けてもよい。
グラデーション部6の幅は、輪郭線3の中央部6a(グラデーションがかけられていない部分)の幅に対して半分から同じ幅程度であることが好ましい。グラデーション部6の幅が過剰に大きすぎると外壁を形成した際に絵柄2を明瞭に視認することができなくなるおそれがある。輪郭線3の両側にグラデーション部6を設ける場合は、輪郭線3の中央部6aの1/4以上から同じ幅程度の幅でグラデーション部6を輪郭線3の両側に設けてもよい。例えば、輪郭線3の中央部6aの太さが2〜6mmである場合、グラデーション部6を2〜6mm程度にすることができ、この場合、間近で見ると輪郭線3があたかも4〜12mmになるように見え、外壁材1がずれても輪郭線3の一部が繋がって見えるため、絵柄2のズレを目立たなくすることができる。グラデーション部6は絵柄2の輪郭全体に亘って設けることができる。
図6(d)及び(e)により、グラデーションの幅を説明する。図6(d)は、グラデーション部6を設けた場合の輪郭線3の幅を説明する図であり、図6(e)は、グラデーション部6を設けていない場合の輪郭線3の幅を説明する図である。図6(e)で示すように、グラデーション部6が設けられていない場合、輪郭線3は幅Mで形成されているが、図6(d)では、前記輪郭線3と同じ幅Mで輪郭線3の中央部6aが形成され、その中央部6aの両側に幅Mの略半分の幅程度の幅Gでグラデーション部6が設けられている。この図のように、輪郭線3の両側に輪郭線3の中央部6aの略半分程度の幅でグラデーション部6を設けると、輪郭線3の幅が広くなり、外壁材1の隣接線Lでの絵柄2のズレを目立たなくさせることができるものである。
図6(c)により、輪郭線3の両側にグラデーション部6を設けた場合に、外壁材1の隣接線Lにおける絵柄2のズレが目立ちにくくなる様子を説明する。この図に示すように、輪郭線3の中心位置(幅方向に略半分の位置)が外壁材1間で繋がっていなくても、一方の外壁材1のグラデーション部6が他方の外壁材1の輪郭線3の中央部6a又はグラデーション部6に繋がることによって、輪郭線3が繋がっているように見え、絵柄2のズレを目立たなくさせることができる。
図6の形態にあっては、近目では、グラデーションにより色を徐々にベース色に近づけているために、絵柄2の境界が曖昧となり、絵柄2のズレが目立ちにくくなる。そして、複数の外壁材1を取り付け、遠目で外壁を見た場合、絵柄2の境界の曖昧さが吸収されて、絵柄2を明瞭に認識することができる。したがって、絵柄2のズレを目立ちにくくするものである。
また、この形態においては、線図ではなく、塗り潰しの絵柄2にすることも好ましい。すなわち、塗り潰しの絵柄2の輪郭をグラデーションにすると、絵柄2の外縁にグラデーションがかかって、外壁材1がズレて取り付けられた場合でも、絵柄2の輪郭のグラデーション部6がそのズレを吸収して、絵柄2のズレを目立たなくさせることができるものである。塗り潰しの絵柄2の場合、グラデーション部6の幅を2〜6mm程度にすることができる。
ところで、図6の形態において、色ではなく凹凸により絵柄2を設ける場合、グラデーション部6をベース部に近くなるにしたがって凹凸が徐々に小さくなるようにして設けることができる。
図7(a)に、外壁材1の上下の取付構造の一例を示す。この図では、外壁材1を縦に重ね合わせて外壁を形成している様子を示している。このような構造は、図1〜図6の外壁材1の取付構造に採用することができる。なお、横方向に外壁材1を重ね合わせて外壁を形成する場合、縦方向と横方向とを入れ替えて以下の説明を理解すればよい。
外壁材1は、上端部に上側の外壁材1を受ける受け部30が形成され、下端部に下側の外壁材1に外壁の表面側から重ねる押え部40が形成されている。
受け部30には、外壁材1の裏面側で上方(縦方向)に突出し、表面が押え部40の裏面と重ね合わせられる受け重ね部31が設けられている。また、受け部30には、外壁を形成したときに、その外表面として内側で奥まって露出する目地底32が設けられている。この目地底32は、外壁材1の表面10と略平行な平坦面として長手方向に亘って形成されている。目地底32と外壁材1の表面10との間には、外壁材1の表面10の上端縁から内側に傾斜して上方に延伸した上傾斜面33が、平坦な面として長手方向に亘って設けられている。
また、押え部40は、外壁材1の表面側において下方(縦方向)に突出し、裏面を受け重ね部31に重ねる押え重ね部41が設けられている。押え重ね部41の先端は、外壁材1の表面側が徐々に内側にへこんで先細りしたテーパ状に形成され、外壁材1の表面10の下端縁から内側に傾斜して下方に延伸した下傾斜面42が、平坦な面として長手方向に亘って設けられている。
図1〜図6のような外壁材1にあっては、絵柄2が外壁材1を跨って設けられているので、絵柄2を合わせるようにして隣り合う外壁材1を取り付けるようにすれば、絵柄2のズレをなるべく目立たないようにすることが可能ではある。しかしながら、絵柄2を確認しながら外壁材1を取り付けると、作業に手間がかかり、生産性が悪くなるおそれがある。また、上記の絵柄2の輪郭をぼかす作用によって輪郭が曖昧になり、絵柄2を合わせて外壁材1を取り付けることが難しくなるおそれがある。
そこで、図7(b)、図8(a)及び(b)、図9の形態では、位置合せマーク50を外壁材1に設けている。位置合せマーク50を目印にして外壁材1を位置合わせすることにより、施工時の取り付け精度による外壁材1のズレを抑えることができ、絵柄2のズレをより一層低減させることができる。なお、図7及び図8では絵柄2及び輪郭線3を省略しているが、もちろん外壁材1には、図1〜6で示すような絵柄2が設けられている。また、図9では、輪郭線3の輪郭をぼかす処理の図示を省略しているが、もちろんこの輪郭線3は、図1〜6のような輪郭線3をぼかす処理が施されている。
位置合せマーク50の形状としては、円、矩形、三角、線、帯、矢印などの適宜の表示マークを用いることができる。また、文字や模様によって構成してもよい。
位置合せマーク50は、インクジェットやフレキソなどの印刷塗装により設けられてもよいし、プレスを用いた模様付けにより設けられてもよいし、加工工程での切削加工により設けられてもよい。
図7(b)の形態では、外壁材1の目地底32と下傾斜面42とに対向する一対の三角形形状のマーク50aが設けられている。目地底32に設けられた三角形は頂点を上方にし、下傾斜面42に設けられた三角形は頂点を下方にしており、この三角形の頂点と頂点とを横方向に合わせることで、上下の外壁材1の横方向の位置合わせを行うことができるものである。この形態では、マークが三角形形状であるので、マークが視認しやすく、また位置合わせ精度を高くすることができる。
図8(a)の形態では、外壁材1の目地底32と下傾斜面42とに縦方向の直線としてマーク50bが設けられている。そして、目地底32の直線と下傾斜面42との直線とが連続した直線になるように調整することにより、上下の外壁材1の横方向の位置合わせを行うことができるものである。この形態では、マークが直線状であるので、直線の端部を合わせるとともに直線が折れ曲がらないように調整することによって、外壁材1が傾いて取り付けられることを一層抑えることができ、位置合わせ精度を高くすることができる。
図8(b)の形態では、外壁材1の目地底32と、外壁材1の表面10の下縁近傍とに円状のマーク50cが設けられている。そして、目地底32の円と外壁材1の下端部の円との横方向の位置を調整することにより、上下の外壁材1の横方向の位置合わせを行うことができるものである。この形態では、外部から確認しやすい外壁材1の表面と目地底32とにマークが設けられているので、施工時に下傾斜面42が見えにくくなってマークが認識しにくくなるようなことがなく、視認性がよく、位置合わせしやすく、施工性を向上することができる。
図9の形態では、絵柄2を構成する輪郭線3の内部に位置合せマーク50を設けるようにしている。外壁材1の表面に絵柄2以外に、マークを設けると、外観上、違和感が生じるおそれがある。しかしながら、この形態にあっては、位置合せマーク50が、輪郭線3の内部に潜んで設けられていることにより、違和感が生じることが低減されるものである。位置合せマーク50は、輪郭線3の中に明瞭につけることが好ましい。例えば、輪郭線3の色よりも濃い色にしたり、輪郭線3とは色彩が異なる色にしたりして位置合せマーク50を明瞭に設けることができる。そして、輪郭線3の略中央に設けられることが好ましい。このように、輪郭線3の境界が曖昧となった輪郭線3の内部に、明瞭にマークが設けられていることで、施工時には位置合わせをしやすくすることができるとともに、外壁を形成した際にはマークを目立ちにくくさせることができるものである。なお、図9では、図8(a)のような縦方向に伸びる直線状のマークを設けた例を示しているが、図7(b)又は図8(b)のようなマークであってもよく、またそれ以外のマークであってもよいのは言うまでもない。
図1〜図6のような外壁材1にあっては、絵柄2が外壁材1を跨って設けられているので、絵柄2が合うような配置順序で外壁材1を取り付ける必要がある。例えば、上下2枚の外壁材1を跨って絵柄2が設けられる場合は、上側の外壁材1と下側の外壁材1を取り違えないようにして取り付ける必要がある。しかしながら、施工者は絵柄2の全体像を認識していなかったり、絵柄2を完成するために個々の外壁材1を何枚用い、どのような配置順序にして取り付ければよいのか認識していなかったりする場合がある。また、施工現場において、絵柄2をその都度確認して、上側の外壁材1か下側の外壁材1かを判断しようとすると、施工に手間がかかってしまう。また、絵柄2が上下の外壁材1で似ているような場合は、上下の外壁材1を間違えて取り付けてしまうおそれがある。
そこで、図10の形態では、配置表示51を外壁材1に設けている。配置表示51を目印にして外壁材1を取り付ける配置順序を合わせすることにより、施工時の取り付け作業の効率を向上することができ、また、外壁材1を間違えることなく取り付けて絵柄2を確実に外壁に設けることができる。なお、図10では絵柄2及び輪郭線3を省略しているが、もちろん外壁材1には、図1〜6のような絵柄2が設けられている。
配置表示51としては、カタナカ、ひらがな、漢字、アルファベットなどの文字、1、2、3といった算用数字や、I、II、IIIといったローマ数字などの数字、上下を示す三角形(△▽)などの記号などを用いることができる。例えば、絵柄2が上下二枚の外壁材1を跨る場合は「ウエ」「シタ」という配置表示51を用い、絵柄2が左右二枚の外壁材1を跨る場合「ミギ」「ヒダリ」という配置表示51を用いることができる。また、上下二枚左右二枚の計四枚の外壁材1に跨って絵柄2が設けられた場合は、「ミギウエ」「ヒダリシタ」などの配置表示51を用いることができる。同一方向に三枚以上の外壁材1に絵柄2が跨る場合は、1、2、3、・・・という数字を用いてもよいし、A、B、C、・・・というアルファベットを用いてもよい。また、縦方向及び横方向の両方で複数枚の外壁材1に絵柄2が跨る場合は、例えば、縦をアルファベットで表し、横を数字で表し、A1、A2、・・・、B1、B2、・・・などのようにすることができる。このとき、施工する順番に合わせて文字や数字の順序が配列されていることが好ましい。例えば、数字が大きくなる順に外壁材1を取り付けるような配置であると、配置を間違えないで外壁材1を取り付けることができる。
配置表示51は、インクジェットやフレキソなどの印刷塗装により設けられてもよいし、プレスを用いた模様付けにより設けられてもよいし、加工工程での切削加工により設けられてもよい。
図10の形態では、外壁材1の目地底32に配置表示51が設けられている。この配置表示51の設けられる位置は、特に限定されるものではないが、目地底32にしたり、外壁材1の裏面(壁下地側の面)にしたりすることが好ましい。外壁材1の表面10に配置表示51を設けた場合、配置表示51が目立ってしまい外壁の外観が悪くなるおそれがある。また、上傾斜面31や下傾斜面32に配置表示51を設けた場合、施工時に施工者が見えにくくなるおそれがある。しかしながら、目地底32に配置表示51を設ければ、施工者が確認しやすくなるとともに、施工後に配置表示51を目立たなくさせることができる。また、目地底32に設けていれば、外壁を形成した後も、外壁材1を間近で見れば配置表示51を視認することができるので、外壁材1の配置に間違いがないか確認することができる。一方、外壁材1の裏面に設けた場合、外壁の露出面に配置表示51が全く現れないようにすることができ、外壁の外観を良好にすることができる。また、外壁材1の裏面側に大きく(例えば目地底32の幅以上の大きさで)表示することが可能となり、配置表示51を施工者が確認しやすくすることができる。
外壁材1に、配置表示51と位置合せマーク50とをともに設けるようにすることも好ましい。それにより、絵柄2をずれさせたり間違えたりすることなく簡単に外壁材1を取り付けることができ、施工性が向上するものである。