JP5598136B2 - ボールねじ - Google Patents

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Description

この発明は、ボールねじに関する。
半導体素子や液晶表示パネルを製造する環境に塵埃が存在すると歩留まり低下の原因になるため、これらの製造はクリーンルーム等の清浄な環境下で行われている。よって、半導体素子や液晶表示パネルの製造に使用される装置(製造装置や搬送装置)を構成するボールねじには、使用状態で内部に発生した塵埃を周囲に飛散させないようにすることが求められている。
下記の特許文献1には、ボールねじのボール戻し経路が、ボールを循環チューブのタングに衝突させてナットの外部にすくい上げる構造であると、衝突の際にボール等に付着しているグリースの油分が飛散して、ねじ軸とナットの間から外部に微粒子として放出されるため、発塵の原因になることが記載されている。この原因をなくすために、ボールねじのボール戻し経路を、ナットの軸方向に延びる貫通穴(ボール戻し通路)と、これに連続するボール循環コマで形成し、ボール循環コマを、ボールがタングに衝突しない状態で循環できる形状にすることが記載されている。
また、特許文献1に記載されたボールねじは、低発塵性グリースで潤滑され、ねじ軸とナットの環状隙間が、ナットの軸方向両端に配置されたリング状の接触シールで塞がれている。
下記の特許文献2には、ボールねじのねじ軸に、軸方向に延びて一端が開口する中空穴を設け、この中空穴にねじ軸の外周面から径方向に延びる細孔(吸引孔)を連通させ、中空穴の他端を塞ぎ、開口から吸引することにより、ボールねじ内部の塵埃を前記細孔から中空穴に導き、ボールねじの設置雰囲気に飛散させないことが記載されている。このボールねじをクリーンルームに配置し、中空穴の開口に接続した吸引配管の先端をクリーンルーム外部に配置することにより、使用時にボールねじ内部に発生する塵埃でクリーンルーム内の清浄度が低下することを防止できる。
下記の特許文献3には、ボールねじ溝とボールスプライン溝とを有するボールねじ軸にボールねじナットとボールスプラインナットとがボールを介して螺着され、ボールねじナットとボールスプラインナットとは、ベアリング部の転動体の転動を介して回転可能にハウジングの内面に支持されているボールねじ装置が記載されている。
このボールねじ装置には、ハウジングとボールねじナットとボールスプラインナットとボールねじ軸とで囲まれた閉空間が存在し、ハウジングに吸引孔を設けている。また、ベアリング部と前記閉空間とを区画するシール部材を、ボールねじナットとボールスプラインナットの外周にそれぞれ配設している。
そして、ボールねじナットとボールスプラインナット、及びベアリング部で発生するダストを、極めて小さい容積の前記閉空間に導き、その閉空間内の空気を直接、前記吸引孔から吸引することで、前記ダストをボールねじ装置が収納されているケーシング内(清浄な環境外)に排出している。
下記の特許文献4には、ボールねじのナットに設けた給油孔に吸引配管を接続して、ナットの内部に発生した塵埃を吸引除去することが記載されている。また、ねじ軸にグリースプレーティング(潤滑剤含有溶液に浸漬後、乾燥することで潤滑剤被膜を形成する方法)を施すことで、潤滑剤からの発塵を抑制することが記載されている。
特開2006−112517号公報 実公平4−9475公報 実用第2508563号公報 特許第2638955号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたボールねじには、発塵低減効果の点でさらなる改善の余地がある。また、特許文献2および3に記載されたボールねじおよびボールねじ装置では、吸引により内部の塵埃を清浄な環境外に排出しているため、吸引ポンプが必要となる。これにより、ボールねじおよびボールねじ装置の回転速度が高速化するにつれて吸引ポンプも大型化する必要があり、コストが増大する。
さらに、特許文献2に記載されたボールねじでは、中空穴および細孔の加工コストが高いなどの問題もある。また、特許文献4に記載されたボールねじでは、ねじ軸に対するグリースプレーティングで潤滑を行っているため、メンテナンスに手間がかかる。
この発明の課題は、ボールねじの潤滑をナット内部へ潤滑剤を供給することで行い、吸引を行わずに、ナット内部に発生した塵埃のボールねじ設置雰囲気への飛散を抑制することである。
上記課題を解決するために、この発明は、内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道(転動路)の間に配置されたボールと、ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記ナットには内部に潤滑剤を供給する給脂穴が形成され、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動するボールねじであって、前記ボール戻し経路がナットの内部に形成され、前記ナットの軸方向両端に、リング状の非接触シールが前記ねじ軸に対して0.1mm以下の隙間で配置され、前記ナットを径方向に貫通する排塵穴(塵埃を排出する穴)が、前記給脂穴とは別に、前記軌道の範囲(ナットの軸方向でボールが転動する範囲)内に形成され、前記排塵穴に配管が接続され、前記配管の先端がボールねじ設置雰囲気外に配置され、前記配管からの吸引を行わずに使用されることを特徴とする。
この発明のボールねじは、リング状の非接触シールがねじ軸に対して0.1mm以下の微小な隙間で配置されているため、使用時のナットに対するねじ軸の相対移動で、ナットの内部が負圧となり、ナットの軸方向両端の非接触シールとねじ軸との間からナットの内部に空気が流れ込み、この流れ込んだ空気が前記軌道の範囲に形成された前記排塵穴からナットの外部に向かうようになる。
したがって、前記排塵穴に配管を接続して、その先端をボールねじ設置雰囲気外に配置することで、吸引を行わずに、ナット内部に発生した塵埃のボールねじ設置雰囲気への飛散を抑制することができる。
ボールねじの発塵源は潤滑剤であり、ボールが軌道を転動する際に潤滑剤を飛び散らすことによって塵埃が生じる。ねじ軸のナットの外側にある部分にも潤滑剤は付着しているが、その部分の螺旋溝にはボールが存在しないため、ねじ軸が回転していてもその部分からの発塵は少ない。この発明のボールねじでは、ナットの塵埃が発生している軌道の範囲(ボールが転動する範囲)内に排塵穴が形成されているため、ナット内部の塵埃が効率的に排塵穴に向かう。
また、排塵穴が給脂穴と別に形成されているため、給脂穴からナット内部へ潤滑剤を供給してボールねじの潤滑を行うことができる。給脂穴から供給された潤滑剤は、ボールの転動に伴うナットのねじ軸に対する相対的往復移動により、ナットの軸方向両端の非接触シールの内側に溜まり易く、ナット内部の軌道の範囲には溜まりにくい。この範囲に排塵穴が形成されているため、排塵穴が潤滑剤で塞がれにくく、安定的に排塵を行うことができる。
また、非接触シールが配置されているため、ねじ軸とシールとの接触による発塵が防止される。
また、ボール戻し経路がナットの内部に形成されていることで、ナット内部の塵埃が外部に出る経路がナットの軸方向両端に限定される。このナットの軸方向両端にはリング状の非接触シールが配置されているため、ナットとねじ軸との隙間は、ねじ軸と非接触シールとの隙間のみになる。よって、ナット外部の空気が非接触シールとねじ軸との隙間を通ってナット内部に入り、ナット内部の空気が非接触シールとねじ軸との隙間を通って外部に向かうことを妨げる。
前記排塵穴は、ナットの軸方向中央部またはその近くのランド部(ナットの内周面で隣り合う螺旋溝の間となる部分)の位置に、ランド部の幅(軸方向寸法)よりも小さい直径で形成されていることが好ましい。
なお、潤滑剤としては、ちょう度が300以下の低発塵性グリースを使用することが好ましい。
また、ナットの内部に潤滑剤を供給して慣らし運転をすることにより、非接触シールとねじ軸との隙間に潤滑剤を介在させると、ねじ軸と非接触シールとの間の隙間がさらに微小になる。よって、この発明のボールねじは、慣らし運転を行った後に使用することで排塵効率が向上する。
また、この発明のボールねじは、前記ナットを、前記排塵穴と連通する貫通穴が形成されたハウジングに固定し、前記貫通穴を介して前記配管を前記排塵穴に接続して使用することもできる。
この発明のボールねじによれば、ボールねじの潤滑をナット内部へ潤滑剤を供給することで行い、吸引を行わずに、ナット内部に発生した塵埃のボールねじ設置雰囲気への飛散を抑制することができる。
この発明の一実施形態に相当するボールねじを示す断面図である。 図1のボールねじの別の断面を示す断面図である。 ハウジングを介さずにナットに排塵用の配管を取り付ける場合の、ボールねじの構造の一例を示す断面図である。 ハウジングを介さずにナットに排塵用の配管を取り付ける場合の、ボールねじの構造の一例を示す断面図である。
以下、この発明の実施形態について説明する。
図1および2は、この実施形態のボールねじがハウジングに固定された状態を示す断面図である。いずれも軸の中心線を含む軸方向に沿った断面図であって、互いに直交する断面を示している。
これらの図に示すように、このボールねじは、ナット1と、ねじ軸2と、ボール3と、リング状の非接触シール4と、エンドデフレクタ5と、環状のスペーサ6で構成されている。ナット1の内周面に螺旋溝1aが形成され、ねじ軸2の外周面に螺旋溝2aが形成されている。ナット1の螺旋溝1aとねじ軸2の螺旋溝2aで形成される軌道の間に、ボール3が配置されている。ナット1の軸方向一端にはフランジ11が形成されている。フランジ11にはボルト挿入穴11aが形成されている。
ナット1には、軸方向に延びる貫通穴13が形成されている。ナット1の貫通穴13の両端部に、エンドデフレクタ5を配置する凹部15が形成されている。すなわち、このボールねじのボール戻し経路は、貫通穴13からなるボール戻し通路と、その両端に接続されたエンドデフレクタ5とにより、ナット1の内部に形成されている。エンドデフレクタ5は接線すくい上げ形状のものを用いている。
ナット1の軸方向両端に、スペーサ6と非接触シール4を取り付けるための凹部14が形成されている。ナット1の凹部14内に、軸方向内側から順に、スペーサ6、非接触シール5が配置され、これらが、図示されないボルトで凹部14の端面14aに固定されている。これにより、ナット1の軸方向両端に、非接触シール4とスペーサ6とねじ軸2とで囲まれた空間46が生じる。これらの空間46が、グリ−ス(潤滑剤)溜まり空間となる。スペーサ6はナット1と一体に形成されていてもよい。
ナット1には、さらに、内部の塵埃を外部に排出する排塵穴7と、内部に潤滑剤を供給する給脂穴8が形成されている。排塵穴7は、ナット1の軸方向中央部のランド部(ナット1の内周面で隣り合う螺旋溝1aの間となる部分)の位置に、径方向に貫通する貫通穴として形成されている。排塵穴7は、ナット内周側がランド部の幅(軸方向寸法)よりも小さい直径で形成され、ナット外周側は拡径された大径部71となっている。
給脂穴8は、ナット1のフランジ11が形成されている部分に、径方向に貫通する貫通穴として形成されている。給脂穴8のフランジ11に配置されている部分は拡径されて、給脂配管の先端を挿入して取り付ける取り付け穴81となっている。
ねじ軸2の螺旋溝2aの断面形状は、研削逃げ溝が形成されていない単純なゴシックアーク形状である。これに対応させて、非接触シール4の内周部の形状を、ねじ軸2と非接触シール4とで形成される円環状隙間が周方向全体でほぼ同じ(0.1mm以下)になるようにしてある。また、非接触シール4の外径は、ナット1の凹部14の内径との差が0.1mm以下となっている。
このボールねじは、例えば以下の手順で使用される。
先ず、筒状のハウジング9として、ナット1の排塵穴7の大径部71に対応する位置に雌ねじ91が形成され、フランジ11のボルト挿入穴11aに対応する位置に雌ねじ92が形成されたものを用意する。このハウジング9をクリーンルーム内に配置し、このハウジング9にナット1のフランジ11以外の部分を挿入する。次に、ナット1の排塵穴7とハウジング9の雌ねじ91を合わせ、フランジ11のボルト挿入穴11aとハウジング9の雌ねじ92を合わせて、ボルト挿入穴11aからボルト94を挿入して雌ねじ92に螺合する。
次に、所定長さの配管100と、両端に取り付け部10a,10bが形成されたL字状継手10を用意し、L字状継手10の一方の取り付け部10aをハウジング9の雌ねじ91に螺合し、他方の取り付け部10bに配管100の一端を取り付ける。この配管100の他端をクリーンルーム外に配置する。
次に、ナット1の給脂穴8の取り付け穴81に、ちょう度が300以下の低発塵グリースの給脂配管の先端を取り付ける。そして、先ず、給脂穴8からナット1の内部に、内部空間の1/4程度となる量の低発塵グリースを供給することで、グリ−ス溜まり空間46にグリースを溜める。
次に、慣らし運転として、ナット1をねじ軸2に対してナット1の長さ分のストロークで数回相対移動させることで、グリース溜まり空間46のグリースを移動させて、非接触シール4とねじ軸2との隙間にグリースを介在させる。これにより、非接触シール4とねじ軸2との間に微小な(例えば0.05mm以下の)円環状の隙間が形成される。
この状態でボールねじの運転を開始すると、ナット1に対するねじ軸2の相対移動で、ナット1の内部が負圧となり、ナット1の軸方向両端の非接触シール4とねじ軸2との間から、外部の空気がナット1の内部に流れ込む。この流れ込んだ空気が排塵穴7からハウジング9の雌ねじ91を通って配管100に入り、クリーンルームの外部に排出される。また、この空気の流れ込みにより、ナット1の内部の空気が非接触シール4とねじ軸2との隙間を通って外部に向かうことが妨げられる。また、非接触シール4を用いているため、ねじ軸2との接触による発塵が防止される。
したがって、この実施形態のボールねじによれば、ボールねじの潤滑をナット内部へ潤滑剤を供給することで行い、吸引を行わずに、ナット内部に発生した塵埃のクリーンルーム内(ボールねじ設置雰囲気)への飛散を抑制することができる。また、グリース溜まり空間46を設けたことで、非接触シール4とねじ軸2との間の円環状隙間がより微小になるため、グリース溜まり空間46を設けない場合と比較して排塵効率が高くなる。
また、この実施形態のボールねじによる排塵方法では吸引を行わないため、吸引を行う方法と比較すると排塵効果は低いが、吸引ポンプが不用であるためコストを低く抑えることができる。また、ナット1に排塵穴7を設けない場合との比較では、塵埃の飛散を半分以下に抑えることができる。
なお、この実施形態では、排塵穴7をナット1に一つだけ設けているが、複数設けてもよい。
また、この実施形態では、ナット1の軸方向両端の凹部14にスペーサ6を介して1枚の非接触シール4を取り付けているが、2枚以上の非接触シールを取り付けてもよい。
また、ハウジング9を介さずにナット1に配管100を取り付ける場合には、例えば、図3に示すように、ナット1の排塵穴7の大径部72を雌ねじ状に形成し、この雌ねじ72にL字状継手10の一方の取り付け部10aを螺合する。そして、他方の取り付け部10bに配管100の一端を取り付け、この配管100の他端をクリーンルーム外に配置する。
あるいは、図4に示すように、ナット1の軸方向中央にフランジ11を形成し、径方向に沿ってフランジ11の外周面からナット1の内周面に貫通する排塵穴7を設ける。さらに、排塵穴7のフランジ11の部分を拡径された大径部71として、大径部71のフランジ外周側に雌ねじ71aを形成する。また、このフランジ11に給脂穴8を、排塵穴7とフランジ11の周方向および軸方向で異なる位置に形成し、給脂穴8のフランジ11の部分を拡径された取り付け穴81とする。
そして、フランジ11に設けた雌ねじ71aにL字状継手10の一方の取り付け部10aを螺合し、他方の取り付け部10bに配管100の一端を取り付け、この配管100の他端をクリーンルーム外に配置する。
ナット1の外周面はナット1を固定する機械のハウジングに嵌合されることが多く、その場合には、図3のようにナット1の外周部に配管100のL字状継手10を取り付けることが難しい。よって、ハウジング9を介さずにナット1に直接配管100を取り付ける場合には、図4に示すように、フランジ11の位置に排塵穴7を設けて、フランジ11の外周部に配管100のL字状継手10を取り付けることが好ましい。
1 ナット
1a ナットの螺旋溝
11 フランジ
11a ボルト挿入穴
13 ボール戻し通路をなす貫通穴
14 シール取り付け用の凹部
14a 凹部14の端面
15 エンドデフレクタ取り付け用の凹部
2 ねじ軸
2a ねじ軸の螺旋溝
3 ボール
4 非接触シール
46 グリース溜まり空間
5 エンドデフレクタ
6 スペーサ
7 排塵穴
71 大径部
71a 大径部の雌ねじ
72 雌ねじ状の大径部
8 給脂穴
81 取り付け穴
9 ハウジング
91 雌ねじ
92 雌ねじ
10 継手
10a 接続部
10b 接続部
100 配管

Claims (3)

  1. 内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記ナットには内部に潤滑剤を供給する給脂穴が形成され、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動するボールねじであって、
    前記ボール戻し経路がナットの内部に形成され、
    前記ナットの軸方向両端に、リング状の非接触シールが前記ねじ軸に対して0.1mm以下の隙間で配置され、
    前記ナットを径方向に貫通する排塵穴が、前記給脂穴とは別に、前記軌道の範囲内に形成され
    前記排塵穴に配管が接続され、前記配管の先端がボールねじ設置雰囲気外に配置され、前記配管からの吸引を行わずに使用されることを特徴とするボールねじ。
  2. 前記非接触シールが前記ナットの内周面に設けた凹部内に配置され、前記ナットの軸方向両端にグリース溜まり空間を有する請求項1記載のボールねじ。
  3. 前記ナットが、前記排塵穴と連通する貫通穴が形成されたハウジングに固定され、前記貫通穴を介して前記配管を前記排塵穴に接続して使用される請求項1または2記載のボールねじ。
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