JP5596540B2 - 安定な機能性ナノ粒子を形成する方法 - Google Patents

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Description

発明者:
アメリカ合衆国、ルイジアナ州、ニューオリンズのアメリカ合衆国民であるミッチェル,ブライアン,S.、アメリカ合衆国、ルイジアナ州、ニューオリンズのアメリカ合衆国民であるフィンク,マーク,J.、アメリカ合衆国、ルイジアナ州、ニューオリンズのアメリカ合衆国民であるヘインツ,アンドリュー,S.。
譲受人:
アメリカ合衆国、ルイジアナ州の州法に基づいて設立されて、同法により存在している非営利法人である、アメリカ合衆国、ルイジアナ州、ニューオリンズのジ アドミニストレイターズ オブ ザ チューレン エデュケイショナル ファンド。
関連出願の表示
引用を以て本明細書の一部となる、2007年5月31日に出願された米国仮特許出願第60/932,428号の優先権を主張する。
連邦政府の資金提供による研究開発の記載
なし。
「マイクロフィッシュアペンディクス」の参照
なし。
1.発明の分野
本発明は、例えばシリコン又はゲルマニウムで作られた安定な不動態化ナノ粒子をメカノケミカル生成する方法に関している。
2.発明の一般的背景
ナノ粒子(又はナノパウダ)は、少なくとも1つの次元が100ナノメートル(nm)未満である微細粒子である。近年、ナノ粒子は、生物医学、光学、及び電気分野の研究の最前線にある。ナノ粒子のサイズが、何らかの特性に関係した臨界長のスケールを下回ると、ナノ粒子が、基本的に新しい性質を示すことが理由である。一般的に、バルク材料は、そのサイズに関係なく一様な物理的特性を有していると考えられている。しかしながら、ナノスケールでは、材料表面における原子の割合が大きくなると、材料の特性が変化する。マイクロメートルのスケールを下回ると、半導体粒子の量子閉じ込め、幾つかの金属粒子における表面プラズモン共鳴や磁性材料における超磁性(supermagnetism)のようなサイズ依存特性が観測される。
1又は複数の次元にて、半導体内の電子と正孔が制限されると、量子閉じ込めが起こる。量子ドットは全3次元にて閉じ込められており、量子ワイヤは2次元にて閉じ込められており、量子井戸は1次元にて閉じ込められている。つまり、ナノ結晶の1又は複数の次元が、非常に小さくなって、ボーア励起子半径(Bohr exciton radius)と称される、バルク結晶における励起子のサイズに達すると、量子閉じ込めが起こる。励起子は、絶縁体又は半導体における、電子と電子正孔と呼ばれる仮想粒子との束縛状態である。励起子は、固体の素励起又は擬粒子である。量子ドットは、全ての次元が、ボーア励起子半径近くになった構造であり、典型的には、小さな球である。量子ワイヤは、高さと幅が小さくされている一方で、長さが長くされる構造である。量子井戸は、高さがほぼボーア励起子半径である一方で、長さと幅が大きくされる構造である。非常に小さい結晶サイズの量子閉じ込め効果は、シリコンとゲルマニウムのナノ粒子に光を発せさせる。このような発光性シリコンナノ粒子及びゲルマニウムナノ粒子は、光学及び電気システムに加えて生物学的用途で利用できる大きな可能性を有している。
シリコン及びゲルマニウムナノ粒子は、例えば、光学スイッチングデバイス、太陽電池、発光ダイオード、レーザ、及び光周波数ダブラーにおいて、また、生物学的マーカーとして使用され得る。
シリコン及びゲルマニウムナノ粒子のフォトルミネセンス(PL)機構はまた、粒子表面の自然及び結合状態に影響される。フォトルミネセンスは、化合物がフォトン(電磁放射)を吸収して、より高い電子エネルギー状態に遷移し、その後、フォトンを放射し返して、低エネルギー状態に戻るプロセスである。吸収と放出の周期は、通常、非常に短くて、10ナノ秒のオーダーである。しかしながら、特殊な状況下では、この周期は、分又は時に延長され得る。最終的に、利用可能な化学エネルギー状態と、状態間の可能な遷移と(それ故に、優先的に吸収及び放射される光の波長と)は、量子力学の法則で決められる。 関係する原理の基本的理解は、単純な原子と分子の電子配置と分子軌道を研究することで得られる。より複雑な分子と進んだ詳細とは、計算機化学の分野で扱われる。
半導体における光の吸収及び放出は、半導体のバンド構造の詳細に大きく依存していることが知られている。直接バンドギャップ半導体は、伝導帯の最小値が価電子帯の最大値と同じ波数ベクトルkで起こる半導体である。直接バンドギャップ半導体では、吸収係数が大きくなると光の吸収がより強くなる。直接バンドギャップ半導体はまた、発光デバイスの作製に好ましい半導体である。間接バンドギャップ半導体は、伝導帯の最小値が価電子帯の最大値と同じ波数ベクトルで起こらない半導体である。間接バンドギャップ半導体は、小さい吸収係数を有していることが知られており、発光デバイスに使用されることはまれである。
直接バンドギャップ半導体と間接バンドギャップ半導体のこの明らかな違いは、電子‐フォトン相互作用で要求されるエネルギーと運動量の保存則で説明される。直接バンドギャップ半導体は、垂直に並んだ伝導帯と価電子帯を有している。フォトンの吸収は、伝導帯の空状態が利用可能である場合になされる。そのエネルギーと運動量は、価電子帯の電子のものに入射フォトンのものを加えたものに等しい。フォトンは、光速で移動するので、エネルギーと比較してその運動量は小さい。それ故に、電子は、E−kダイアグラム上で、ほとんど垂直に遷移する。間接バンドギャップ半導体では、伝導帯は、価電子帯に対して垂直に配置されていない。それ故に、入射フォトンと価電子帯の電子との単純な相互作用は、伝導帯の空状態のエネルギーと運動量に対応した正しいエネルギーと運動量を与えない。結果として、光の吸収は、フォノンと呼ばれる別の粒子の助けを必要とする。
フォノンは、格子振動に関係した粒子であり、物質の音速に近く、比較的遅い速度を有ししている。フォトンと比較して、フォノンのエネルギーは小さく、運動量は大きい。それ故に、フォノンが生成されるか、存在しているフォノンが関与する場合に、吸収プロセスにおいてエネルギーと運動量の両方が保存される。吸収可能な最小のフォトンエネルギーは、フォノン吸収の場合におけるバンドギャップエネルギーよりも若干下であり、また、フォノン放出の場合におけるバンドギャップエネルギーよりも若干上でなければならない。間接バンドギャップ半導体における吸収プロセスが、電子とフォトンに加えてフォノンを含んでいるので、相互作用が3種の粒子の全てを含んで起こる可能性は、直接バンドギャップ半導体における単純な電子−フォトン相互作用と比較して小さいであろう。結果として、直接バンドギャップ物質では、吸収がより強くなる。同様に、光の放出については、直接バンドギャップ物質はまた、間接バンドギャップ物質よりもフォトンをより放出し易い。間接バンドギャップ物質は、幾つかのLEDにしばしば使用されているが、結果として変換効率が低くなっている。直接バンドギャップ物質は、半導体レーザーダイオードについて独占的に使用されている。
シリコン表面における酸素の存在は、発光特性に有害な影響を与えるものと知られている。ロチェスター大学で1999年に行われた研究では、研究者は、多孔質シリコン(PSi)ナノ粒子の表面の酸素が、フォトルミネッセンスを弱めるとの仮説を立てた。孔隙率(porosities)が異なる複数のPSiのサンプルは、アルゴン(Ar)雰囲気又は空気中にて室温に保たれた。Arで保存されたサンプルの化学的被覆の進展を、空気に暴露された際に調べることで、研究者は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)分析を用いて、酸素吸収の徴候を示していなかった水素不動態化PSiサンプルが、空気に暴露されて僅か3分内に、Si−O−Siピークを示すことを発見した。24時間後、Si−Hピークは消失して、Si−O−Si及びSi−O−Hピークがスペクトルの中心になった。サンプルが200分を超えて空気に暴露されると、Si−O−Si及びSi−O−Hピークに顕著な変化は観測されず、表面の化学的な被覆が安定化したことが示された。表面の不動態化が徐々に変化するにつれて、PLはレッドシフトした。孔隙率(又はサイズ)と化学的被覆は、再結合機構に影響を与えると結論された。研究結果は、酸素に暴露されたサンプルにおける電子−正孔再結合が、量子閉じ込めによって引き起こされたギャップの拡大で安定化されており、酸素に関係している局在状態にトラップされたキャリアを介して起こることを示唆している。
アルキル基によるナノ粒子の表面の修飾は、Si−H及びSi−ハロゲン化物で覆われた表面の化学反応によって実証されたが、ある程度の成果しかなかった。PLは最初は維持されるが、これらの2ステップ技術による不完全なアルキル化は、酸化による不均一な被覆と不安定化を導く。酸素に対するシリコンの親和性は高いので、それ故に、酸素フリーな環境で実行できると共に、表面のシリコン原子とアルキル基の直接相互作用を促進するような粒子表面の不動態化技術を使用する必要がある。
シリコン表面上にSi−C結合を形成する現在の方法は、超高真空状態下に維持される明確で(well-defined)清浄なシリコン表面の使用、シリコン表面の化学若しくは電気化学的エッチングの使用、又は、ハロシラン(halosilanes)のウルツ反応(Wurtz reaction)の何れかを含む。ウエットな化学的アプローチは、例えば、フッ化水素エッチやハロシランの凝縮(condensation)を必要としており、不安定な水素又はハロゲン終端表面の中間体と、腐食性又は有毒化学物質の使用とを含んでいる。同様に、現在の直接的な反応方法は、高価な機器の使用を含んでおり、拡大するのが難しいかも知れない。これらの直接的なアプローチは、反応性有機試薬の存在下におけるシリコンの機械的な研磨を共通して含んでおり、フレッシュに暴露された表面と有機試薬の反応によるシリコン表面のパターニングに成功している。これらの技術は、 大きく均一な表面に限られており、ナノ粒子への使用には役に立たない。
ユタ州のプロボにあるブリガム・ヤング大学のニーダーホイザー(Niederhauser)らは、シリコン上にアルキルのモノレイヤーを作製する方法を開発した。その方法は、シリコンウエハを洗浄して、付着した不純物をその表面から除去する工程と、ネイティブな薄い酸化層を残す工程と、清浄なシリコンのドライな表面を不飽和有機分子で濡らす工程と、不飽和有機液体で濡れている間、ダイヤモンドが付いた工具を用いて、シリコンを機械的に研磨する工程と、研磨された表面を洗浄して、余分な有機粒子と、研磨により生成されたシリコン粒子とを除去する工程とを含んでいる。彼らのプロセスは、水素終端シリコン中間体を必要とせず、シリコン上へのモノレイヤーの湿式化学生成を使用するものとして初めて知られたプロセスである。
ニーダーホイザーを含む、シリコン表面の機能化の現在の方法には、数々の欠点がある。ニーダーホイザーのアプローチは、平坦な表面にのみ利用可能である。さらに、機能性(functionalized)シリコンナノ粒子の形成に適用するそれらのプロセスは、腐食性若しくは有毒化学試薬、又は爆発可能性のある反応状態の利用を含む複数のプロセスを必要とする。初期に形成されたシリコンナノ粒子は、通常、ハロゲン化ケイ素の還元(reduction)、シランの熱若しくはレーザー分解、金属シリサイドの酸化、又は、バルクシリコンの電気化学的エッチングによって生じる。各手順は、腐食性又は反応性の高い試薬を用いており、初期に形成されたナノ粒子の反応性は、水素又はハロゲン終端表面によって非常に高い。
安定な不動態化シリコンナノ粒子を作製する簡単で直接的な方法が必要とされている。本発明は、非常にマイルドな条件下でシリコン表面の形成と不動態化をするために、ワンステップで単純なプロセスをもたらすことで、この要請を満たす。さらに、本発明のプロセスは、溶媒を追加する必要がなく、連続的に実行できる。本プロセスは、安定な不動態化シリコンナノ粒子を作製する新規な方法を構成し、当該ナノ粒子は、現存する方法の欠点を示さず、その上、量子閉じ込め効果の新規な特徴をもたらす。
以下の文献と、本明細書にて言及される全ての文献は、引用を以て本明細書の一部となる。以下の特許文献2は、制御されたドライボックス内ですり鉢とすりこぎを用いている(第5コラム第37乃至61行目を参照)。
米国特許第7,371,666号明細書 "Process for producing luminescent silicon nanoparticles" 米国特許第6,132,801号明細書 "Producing Coated Particles by Grinding in the Presence of Reactive Specie" 米国特許第5,702,060号明細書 "High-Energy High-Capacity Oscillating Ball Mill" 米国特許第6,444,009号明細書 "Method for producing environmentally stable reactive alloy powders" Castro et al., "Nanoparticles from Mechanical Attrition"、第1章「Synthesis, Functionalization and Surface Treatment of Nanoparticles」(American Scientific Publishers 2002)
本発明の発明者は、ナノ粒子を生成するためにシリコンをボールミリングすることを述べた文献を知っている。しかしながら、本発明の発明者が知る限りでは、それら文献の中に、ナノ粒子の同時形成(simultaneous formation)と反応媒体を用いたナノ粒子の不動態化とを述べたものはない。
本発明は、反応媒体の存在下で材料(例えば、シリコンやゲルマニウムのような半導体)のサイズを機械的に低減することで、安定な不動態化ナノ粒子を作製する方法に関する。
本発明の好ましい実施例は、反応性の液体又は気体の媒体の存在下で材料(例えば、シリコンやゲルマニウムのような半導体)を高エネルギーボールミリング(high energy ball milling)することで、安定な不動態化半導体ナノ粒子を作製する方法に関する。
本発明は、安定な機能性ナノ粒子を形成する方法に関しており、第1材料を準備する工程と、反応性の液体又は気体の媒体を準備する工程と、反応性の液体又は気体の媒体内で第1材料をボールミリングして、ボールミリングされたナノ粒子を得る工程とを含んでいる。本発明の方法は、アルコール、アルデヒド、アルキン、アルケン、アミン、アジド、カルボン酸、ケトン、核酸、及び、ペプチドとタンパク質の溶液を含む群から選択された反応性の液体又は気体の媒体の使用を含んでいる。好ましい方法では、第1材料は、半導体特性を有している。その方法は、高エネルギーボールミルで、ボールミリングをすることを含んでよい。
本発明の方法は、ボールミリングをバッチ操作として含んでよい。本発明の方法は、ボールミリングを連続操作として含んでよい。好ましい方法では、機能性ナノ粒子は、フォトルミネッセンスを含む、サイズ依存性量子閉じ込め効果を示す。
機能性ナノ粒子は、有機溶媒に溶ける。有機溶媒には反応媒体が含まれるが、これに限定されない。好ましい方法では、機能性ナノ粒子は、水溶液系(aqueous systems)に溶ける。水溶液系には反応媒体が含まれるが、これに限定されない。
好ましい方法では、反応媒体は、多機能性分子(polyfunctional molecules)を含んでおり、多機能性ナノ粒子はさらに反応的になる。多機能性分子には、ジカルボン酸とジオールが含まれるがこれに限定されない。
好ましい方法では、多機能性ナノ粒子は、互いに共有結合している。
好ましい方法では、多機能性ナノ粒子は、他の材料と共有結合している。他の材料には、タンパク質、フラーレン、カーボンナノチューブなどの材料が含まれる。好ましい方法では、第1半導体材料は、高エネルギーボールミリングを通じて、間接バンドギャップ半導体から直接バンドギャップ半導体に変化する。
好ましい方法では、機能性ナノ粒子は、ゲル透過クロマトグラフィー又は選択的沈殿(selective precipitation)を用いて、サイズ分別されてよい。ゲル透過クロマトグラフィー又は選択的沈殿には、例えば、メタノールや超臨界二酸化炭素などの溶媒が含まれるが、これらに限定されない。
好ましい方法では、機能性ナノ粒子は、第1材料と反応媒体の間における強力な共有結合を示す。
本発明の方法は、安定なナノ粒子を形成する。本発明の方法は、第1材料を準備する工程と、反応性の液体又は気体の媒体を準備する工程と、反応性の液体又は気体の媒体内で第1材料をボールミリングして、液相と気相を得る工程とを含んでいる。気相には、ナノ粒子が含まれているのが好ましい。
本発明の実施例によれば、ステンレス鋼製ミリングイアル(vial)に、不活性雰囲気下で、単結晶シリコンの塊と選択された反応性有機液体とが装填される。ステンレス鋼製ミリング用ボールがバイアルに加えられて、バイアルは密閉されて、HEBMが施される。ボールとボール間の衝撃と、ボールと壁の間の衝撃が、ミリング中に継続して、システムに機械的なエネルギーを分け与える。シリコン片は、これらの衝突による破砕に巻き込まれて、粒径を低減し、フレッシュな表面を形成する。新たに生じたこの表面は、非常に反応的であり、シリコンと反応性有機液体の間の直接的な反応のサイトをもたらし、その結果、共有結合が形成される。HEBMが継続されると、シリコン粒子のサイズは、粉砕によって、ナノ領域に低減し、フレッシュな表面が手法(facture)によって継続して生じる限り、直接的な表面反応が継続する。全てのケースにおいて、反応媒体に拘わらず、ミリングは、24時間という連続的な期間、実行されるのが好ましい。
本発明の利点は、単一のメカノケミカルな工程で、安定な機能性ナノ粒子を作製することに加えて、その単一のメカノケミカルな工程で生じた液相がナノ粒子を溶かすことで、対象となるナノ粒子をより大きな粒子から分離することである。故に、本発明は、対象外の大きなものから対象である粒子(ナノ粒子)のサイズを分離する技術を内在的に含んでいる。
本発明は、安定な機能性ナノ粒子を形成する方法を含んでおり、その方法は、第1材料を準備する工程と、反応媒体を準備する工程と、反応媒体内で、第1材料を、100nm以下の大きさのサイズを有する粒子に小さくする工程と、粒子が形成される際に反応媒体が第1材料の粒子を機能化して、機能性ナノ粒子を形成する工程とを含んでいる。
好ましくは、第1材料は、ナノ粒子へと機械的に小さくされる。好ましくは、ボールミリングが用いられて、第1材料をナノ粒子へと機械的に小さくするが、例えば、衝突体が代わりに使用されて第1材料をナノ粒子へと機械的に小さくしてもよい。好ましくは、粒子の大きさは、50nm以下である。より好ましくは、粒子の大きさは、20nm以下である。場合によっては、粒子の大きさは、5nm以下であるのが好ましい。
本発明はまた、安定な機能性ナノ粒子をメカノケミカルに作る方法を含んでおり、その方法は、第1材料を準備する工程と、反応媒体を準備する工程と、所望の量のナノ粒子が作製されるまで、反応媒体の存在下で第1材料を機械的に繰り返し衝撃を与える工程とを含んでおり、ナノ粒子が生成されて間、反応媒体が第1材料と反応して、ナノ粒子が機能化される。
本発明は、安定な機能性ナノ粒子を形成する方法を含んでおり、その方法は、第1材料を準備する工程と、反応媒体を準備する工程と、反応媒体の存在下で第1材料をボールミリングして、ボールミリングされたナノ粒子をもたらす工程とを含む。
本発明は、安定な機能性ナノ粒子を形成する方法を含んでおり、その方法は、第1材料を準備する工程と、反応媒体を準備する工程と、反応媒体の存在下で第1材料をボールミリングして、液相をもたらす工程とを含む。ステップ"c"にて、液相にはナノ粒子が含まれる。通常、ボールミリングはまた、固相をもたらす。
例えば、反応媒体は、アルコール、アルデヒド、アルキン、アルケン、アミン、カルボン酸、核酸、ペプチド及びタンパク質の溶液、アジド、ケトン、エポキシド、アミド、エステル、アミノ酸、有機ハロゲン化合物、チオール、及び炭水化物からなる群から選択されてよい。典型的には、反応媒体は、液体又は気体である。通常、反応媒体は、純粋な液体であるが、溶液であってもよい。また、反応媒体は、超臨界流体溶液であってもよい。機能化は、不動態化であるのが好ましい。
より有利には、第1材料は、シリコン、ゲルマニウム、ドープされたシリコン、ドープされたゲルマニウム、SiとGeの合金、及び、二元系シリコン化合物(binary silicon compounds)からなる群から選ばれた少なくとも一つである。二元系シリコン化合物は、炭化ケイ素及び/又は窒化ケイ素であってよい。第1材料は、半導体特性を有しているのが好ましく、半導体であるのがより好ましい。
好ましくは、ナノ粒子は、半導性、磁性、放射性、電導性、及び発光性からなる群から選ばれた少なくとも1つの特性を有している。ナノ粒子は、半導性、磁性、放射性、電導性、及び発光性からなる群から選ばれた少なくとも2つの特性を有しているのが有利であろう。ナノ粒子は、リン光性(phosphorescent)及び/又は蛍光性を有してもよい。ナノ粒子は、例えば、ある種の細胞を生体内に入れることで、生体内のある種の細胞を標的にしてもよい。それら細胞は、例えば、ガン細胞、内皮細胞や幹細胞であってよい。例えば、ナノ粒子は、細胞膜を通過できるように、親水基を用いて不動態化されたシリコンである。
本発明の方法のナノ粒子は、生物学的マーカーとして機能することを可能とする特性を有してもよい。ナノ粒子は、細胞膜を通過できるように、親水基を用いて不動態化されたシリコンであってよい。ナノ粒子はまた、細胞膜を通過できるように、親水基を用いて不動態化されたゲルマニウムであってよい。ナノ粒子はまた、細胞膜を通過できるように、親水基を用いて不動態化されたゲルマニウムである。
ボールミリングは、高エネルギーボールミリングであるのが好ましい。ボールミリングは、バッチ操作又は連続操作であってよい。
機能性ナノ粒子は、フォトルミネセンスを含むサイズ依存性量子閉じ込め効果を示すのが好ましい。
機能性ナノ粒子は、有機溶媒に溶けるのが好ましい。有機溶媒には、反応媒体が含まれるが、これに限定されない。
機能性ナノ粒子は、水溶液系に溶けるのが好ましい。水溶液系には、反応媒体が含まれるが、これに限定されない。
機能性ナノ粒子は、超臨界流体に溶けるのが好ましい。超臨界流体には、反応媒体が含まれるが、これに限定されない。
機能性ナノ粒子は、多機能性分子を含むが好ましい。多機能性分子には、多機能性ナノ粒子がさらに反応的になるようにジカルボン酸及びジオールが含まれるが、これらに限定されない。多機能性ナノ粒子は互いに共有結合してよい。多機能性ナノ粒子は、その他の物質と共有結合してよい。その他の物質には、タンパク質、フラーレン、カーボンナノチューブ、ポリマーやモノマーが含まれるが、それらに限定されない。ポリマーは、縮合ポリマー又はラジカル連鎖タイプのポリマーであってよい。モノマーは、引き続いて、別個の重合ステップを経て、ポリマー鎖で互いに繋がれたナノ粒子のネットワークが得られててよい。より有利には、ナノ粒子がマトリクス内で共有結合したポリマーマトリックスのナノ複合材料を形成してよい。縮合又はラジカル連鎖ポリマーは、例えば、ポリアミド、ポリ塩化ビニル(polyvinylcholoride)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミドやポリエーテルである。
第1材料は、高エネルギーボールミリングによって、間接バンドギャップ半導体から直接バンドギャップ半導体に変化するのが好ましい。
機能性ナノ粒子は、ゲル透過クロマトグラフィー又は選択的沈殿を用いて、サイズ分別されてよい。ゲル透過クロマトグラフィー又は選択的沈殿には、例えば、超臨界二酸化炭素などの溶媒が含まれるが、これらに限定されない。
機能性ナノ粒子は、第1材料と反応媒体の間の共有結合を示すのが好ましい。
機能性ナノ粒子は、第1材料と反応媒体の間の強い共有結合を示すのが好ましい。
本発明は、先に述べた方法で作製されるナノ粒子も含む。
我々の学術論文、「"Mechanochemical Synthesis of Blue Luminescent Alkyl/Alkenyl-Passivated Silicon Nanoparticles", Adv. Mater. 2007, 19, 3984-3988 (November 2007 - published online October 2007)」は、引用を以て本明細書の一部となる。
本発明の本質、目的及び利点をさらに理解するためには、以下の詳細な説明が参照されて、以下の図面と共に読まれるべきである。同じ要素には、同じ参照符号が使用されている。
図1は、本発明の方法によって、アルキル不動態化されたシリコンナノ粒子を作製する手順全体を図示した模式図である。 図2は、1−オクチン内で24時間ミリングすることで作製された浮遊(suspended)シリコンナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)の画像である。多数のナノ粒子は、画像内にて矢印で示されており、それらのサイズは1乃至4nmの範囲である。幾つかの粒子は、5乃至30nmの範囲である。 図3は、図2で"B"が付されたナノ粒子の拡大図である。スケールを示す説明書が加えられている。 図4は、図2で"C"が付されたナノ粒子の拡大図である。スケールを示す説明書が加えられている。 図5は、1−オクチン内で24時間ミリングすることで作製されたシリコンナノ粒子のフーリエ変換赤外スペクトルである。分析のために、ナノ粒子は、回転蒸発によって、ミリング用溶液から分離されて、二硫化炭素に溶解された。 図6は、13C[1H]のNMRスペクトルである。スペクトルは、ミリング用溶液から分離されて塩化メチレン−d内に分散している、作製したアルキル被覆シリコンナノ粒子で得られた。 図7は、1HのNMRスペクトルである。スペクトルは、ミリング用溶液から分離されて塩化メチレン−d内に分散している、作製したアルキル被覆シリコンナノ粒子で得られた。 図8は、反応媒体である1−オクチン内で8時間ミリングすることで作製されたアルキル不動態化シリコンナノ粒子のPL励起−放出スペクトルを示す。粒子は、約327nmで励起ピークを示し(図8に図示せず)、約405nmにて放出ピークを示す。405nmの最大放出と、その結果の78nmのストークスシフトとは、極端に小さい結晶と粒子のサイズを示しており、溶液内にナノサイズの粒子の大きな集団がある証拠をもたらしている。 図9は、サイズ排除クロマトグラフィーを示しており、THF溶媒内でゲルマニウムナノ粒子(選択されたフラクション)がサイズ分離されて、ポリスチレン標準と比較されている。 図10は、サイズ分離されたゲルマニウムナノ粒子のあるフラクション(フラクション4)のFI−IRスペクトルである。有機表面層に起因したスペクトル帰属がある。 図11は、フラクション6のゲルマニウムナノ粒子の狭いサイズ分布を示す透過型電子顕微鏡写真である。 図12は、ゲルマニウムナノ粒子のサイズ分布を定量的に示すヒストグラムである。 図13は、フラクション6の高解像度透過型電子顕微鏡写真であり、約5nmのゲルマニウムナノ粒子を示している。 図14は、ゲルマニウムナノ粒子の幾つかのフラクションの光吸収スペクトルである。 図15は、ゲルマニウムナノ粒子の幾つかのフラクションのフォトルミネセンススペクトルである。 図16は、水溶性のゲルマニウムナノ粒子の低倍率のTEM画像であって、大きいナノ粒子がある。 図17は、ゲルマニウムナノ粒子の高倍率の画像であって、多数の小さいナノ粒子のサイズが示されている。 図18は、1個のナノ粒子の高解像度画像である。 図19は、水中のゲルマニウムナノ粒子のUV−Vis吸収及びフォトルミネセンススペクトルである。 図20のa)は、空気中でミリングされて作製された不動態化シリコンナノ粒子のFTIRスペクトルを示しており、b)は、1−オクチン内で24時間ミリングされて作製された不動態化シリコンナノ粒子のFTIRスペクトルを示しており、c)は、1−オクテン内で24時間ミリングされて作製された不動態化シリコンナノ粒子のFTIRスペクトルを示しており、d)は、1−オクトアルデヒド(1-octaldehyde)内で24時間ミリングされて作製された不動態化シリコンナノ粒子のFTIRスペクトルを示しており、e)は、オクタン酸内で24時間ミリングされて作製された不動態化シリコンナノ粒子のFTIRスペクトルを示しており、f)は、1−オクタノール内で24時間ミリングされて作製された不動態化シリコンナノ粒子のFTIRスペクトルを示している。 図21は、シリコンナノ粒子の表面に1−オクチン、1−オクテン、1−オクトアルデヒド、オクタン酸及び1−オクタノールが結合した結果の構造を示す。 図22は、不動態化する分子鎖の長さに対する可溶化不動態化ナノ粒子の濃度を示す。 図23は、420nmの光で励起された場合における、1−ヘキシン(◆)、1−オクチン(▲)、1−デシン(●)、1−ドデシン(■)内でミリングされて作製された不動態化シリコンナノ粒子の放射を示す。 図24は、360nmの光で励起された場合における、1−ヘキシン(◆)、1−オクチン(▲)、1−デシン(●)、1−ドデシン(■)内でミリングされて作製された不動態化シリコンナノ粒子の放射を示す。
本発明は、アルキル又はアルケニル不動態化されたシリコンナノ粒子を、高エネルギーボールミリングを用いて合成する新規な手法を含んでいる。高エネルギーボールミルは、SPEXタイプのミルであってよい。SPEXミルの衝撃エネルギーは、4gのボールの場合、0.023乃至0.084Jの間隔の範囲内であり、12gのボールの場合、0.069乃至0.252Jの間隔の範囲内である。SPEXモデルのような高エネルギーボールミルでは、約4m/sのボール速度があり、00.012J/hitの運動エネルギーインプット、又は0.24W/g−ballのパワーインプットに変わる。SPEXタイプミルとステンレス鋼製バイアルは、商業的に入手できる(。バイアルは、商業的に入手可能なステンレス製バイアルと同じ大きさであり、ナイロン6/6で作られたナイロン製バイアルであってもよい。メカノケミカルアプローチの主たる利点は、シリコンナノ粒子と、強力なSi−Cボンドで共有結合したアルキル基又はアルケニル基による粒子表面の化学的不動態化とを同時作製することである。
本発明は、安定なアルキル又はアルケニル不動態化ナノ粒子を、メカノケミカルに作製する新規で上手な方法を具体化する。環境に優しい化学のこのアプローチは、不安定な水素終端中間体の補助や、腐食性又は有毒化学物質の使用が無く、フレッシュなシリコン表面を直接アルキル化する。作製されるナノ粒子は、トップダウンの粉砕方法(top-down comminution method)について顕著に小さいサイズであり、10nm未満の粒子が観察された。このサイズは、従来の粉砕技術では容易には得られない。
示された青色発光と明瞭なストークスシフトとは、ナノ粒子にはほぼ酸化物がないことを示している。この方法で作製されたナノ粒子は、熱的に安定であって、数ヶ月の期間に渡って発光を維持することは証明されている。それ故に、この方法は、選択的に不動態化されたシリコンナノ粒子を生成する簡単で効果的な手法をもたらす。
上述したような高エネルギーボールミリングによる不動態化シリコンナノ粒子の作製は、典型的には、バッチ式方法で実行される。つまり、反応物質はバイアル内に置かれ、プロセスは、閉じされた容器内で完了し、生成物が取り出される。ミリング用バイアルの周囲の架空の境界(imaginary boundary)を渡る物質はない。反応物質と生成物が、連続的に、ミリング用バイアルの周囲の架空の境界を渡るように、ミリング用バイアルに入出流を与えて、プロセスを、連続的、つまり非バッチ式としてもよい。
初始動の後、プロセスは、定常状態になり、反応媒体中に浮遊している不動態化ナノ粒子のストリームが、ミリング用バイアルから連続的に出される。提案した連続的なメカノケミカル磨滅装置(attrition device)における機能化ナノ粒子の連続的な作製は、連続撹拌槽型反応器(CSTR)としてモデル化できる。CSTRでは、反応物質が流入し(溶媒、荒いシリコン塊)、生成物が流出する(可溶化シリコンナノ粒子、溶媒、及び部分的に機能化した(partially-functionalized)シリコン粒子)。その後、流出ストリームは、例えば、連続遠心分離器などの分離工程に行く必要があろう。部分的に反応した粒子はスラッジとして分離され、可溶化ナノ粒子を有する溶媒は、蒸発又は濃縮のような生成工程に続く。バイアル内にフィルタを配置して、部分的に反応した粒子の除去を少なくできる。このように、ミクロンスケールの粒子の大半は、バイアル内に残って、さらに粉砕及び機能化される。
アルキル不動態化シリコンナノ粒子の作製の手順全体が、図1に図示されている。ミリング用バイアルは、非球形でミリメータサイズ(例えば、約0.5ミクロンと10cmの間)の半導体級シリコン片と、アルケン又はアルキンのような反応液体媒体又は反応ガス媒体と共に、不活性雰囲気化に置かれた。ステンレス鋼製ミリング用ボールがバイアルに加えられて、その後、バイアルは密閉されて、高エネルキーボールミル(例えば、SPEX Sample Prep 8000シリーズ 高エネルギーボールミル、www.spexsp.com)に配置された。ミリング用ボールの直径は、典型的には、2分の1インチ(1.27cm)である。その他のサイズも利用可能である。直径は、約1乃至50mmの間であってもよい。高エネルギーボールミリング(HEBM)では、約4m/sのボール速度が採用されており、0.012J/hitの運動エネルギーインプット、又は0.24W/g−ballのパワーインプットに変わる。高エネルギーボールミリングの具体的な強さ(intensity)の測定値は、0.2乃至1.2W/gの範囲内と報告されており、回転ミルなどのその他のタイプのミルや、グライディング(grinding)などのその他の粉砕プロセスよりも大きい。高エネルギーボールミリング中のミリング用ボールの継続的な衝撃と衝突(ボール−ボール間の衝撃とボール−壁間の衝撃)は、大量の機械エネルギーをシステムに与えて、シリコン片を砕いて、粒子サイズを小さくし、フレッシュなシリコン表面を生成する。高エネルギーボールミリングで新たに生じた表面は、高反応性であり、シリコンと反応媒体、好ましくはアルケン又はアルキンとの間の直接反応のサイトをもたらす。アルケン又はアルキンは、シリコン表面と反応して共有Si−C結合が形成される。
高エネルギーボールミリングが進行するにつれて、粒子のサイズは、ナノ領域に低減し、その結果生じる大量のフレッシュな表面とで、直接反応が継続する。高エネルギーボールミリングの後、バイアルは、そのままにされて、大きな粒子が沈んで、溶液内に機能性ナノ粒子が残される。この手順は、アルケン又とアルキンの両方に効果的であることが分かっている。しかしながら、同程度のミリング時間に渡った、アルケンに対するアルキンの高い反応性が、アルキンが可溶性ナノ粒子の高収率をもたらすことが分かっている。
十分にミリングした後に、主たる2つの相が形成される。液体炭化水素相は、機能化された可溶化ナノ粒子を含んでおり、「沈殿」相は、部分的に機能化された粒子及び/又は不十分に粉砕された粒子を含む様々な粒子を含んでいる。液体炭化水素相では、溶媒は、容易に除去されて、機能化ナノ粒子の分布が残される。
図2は、1−オクチン内で24時間ミリングすることで作製された浮遊シリコンナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)の画像である。サイズが1乃至4nmの範囲である多数のナノ粒子が見られるが、幾つかの粒子は、5乃至30nmの範囲である。図3の高解像度TEM画像は、直径が約6nmの単結晶シリコン粒子を示しており、図4の高解像度TEM画像は、直径が約9nmの単結晶シリコン粒子を示している。しかしながら、図2のナノ粒子の大半は、これよりも更に小さく、このようなトップダウン方法のナノ粒子のサイズは顕著に小さいことを実証している。エネルギー分散型X線分光分析(EDS)のスペクトルが、図3及び図4のナノ粒子について得られて、18keVの明確なピークを示し、粒子の組成がシリコンであるのが確認された。加えて、EDSスペクトルは、0.5keVにピークがなく、粒子にほぼ酸化物がないことが示されている。
図5は、1−オクチン内で24時間ミリングすることで作製されたシリコンナノ粒子のフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルである。分析のために、ナノ粒子は、回転蒸発によって、ミリング用溶液から分離されて、二硫化炭素に溶解された。二硫化炭素が溶媒として選択されて、その吸収ピークのスペクトルがナノ粒子のスペクトルのものと干渉しないようにされた。2800−3000cm-1の強力なC−H伸縮バンドに加えて、1374cm-1と717cm-1のC−H振動モードによって分かるように、赤外スペクトルは、有機層の明確な証拠を示している。目立っているピーク、約1257cm-1、約806cm-1、約796cm-1は、Si−C結合に対応しており、1−オクチンが、粒子表面と実際に共有結合していることを示している。
核磁気共鳴分光(NMR)が用いられて、共有結合した表面層の更なる証拠を与えた。図6は、13C[1H]のNMRスペクトルである。図7は、1HのNMRスペクトルである。両方のスペクトルは、ミリング用溶液から分離されて塩化メチレン−d内に分散されている、作製したアルキル被覆シリコンナノ粒子で得られた。CH多重度(CH multiplicities)の割当ては、別個の実験による分極移動によるマルチパルス無ひずみ増強(DEPT)シーケンスを用いて決定された。ナノ粒子の13Cのスペクトルは、明らかにアルキル鎖の化学的環境の一様性を見せており、単一のメチル共鳴とメチレン鎖炭素の明確な数とを示している。更に、3つの共鳴ピークは、125、129及び142ppmにて、スペクトルのオレフィン領域に現れている。125及び129ppmのオレフィンCHカーボンと、142ppmの第4級炭素とは、表面におけるシリコンダイマー対へのアルキンの[2+2]付加環化による、シリコン表面結合のジシラシクロブテン(disilacyclobutene)構造の形成を示唆している。1HのNMRスペクトルは、アルキル鎖による0.5乃至2.5ppmの範囲に渡ったアルキル共鳴に加えて、このスペクトルのビニル領域のシングレット及びABカルテッドを明らかに示している。ビニルのシングレッドは、上述したジシラシクロブテン構造をサポートする一方で、ABカルテッドは、第2の結合構造の形成を示唆している。第2の結合構造では、アルキルは、シリコン表面ラジカルで生じた水素引き抜きによって、表面結合線形構造を形成する。
アルキル不動態化シリコンナノ粒子の光学特性が、室温で調査された。図8は、反応媒体である1−オクチン内で8時間ミリングすることで作製されたアルキル不動態化シリコンナノ粒子のPL励起−放出スペクトルを示す。粒子は、約327nmで励起ピークを示し、約405nmにて放出ピークを示す。405nmの最大放出と、その結果の78nmのストークスシフトとは、極端に小さい結晶と粒子のサイズを示しており、溶液内にナノサイズの粒子の大きな集団がある証拠を与えている。更に、この方法で作製されたナノ粒子は、熱的に安定であって、調製後、数ヶ月の期間に渡ってPLを維持することが分かっている。粒子の量子収率(quantum yield)は、60%であった。
ゲルマニウムナノ粒子の合成とサイズ分離
ゲルマニウムナノ粒子の作製:
シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から入手した純度99.999%のゲルマニウムのミリメートルサイズの片0.75gが、2個のステンレス鋼製ミリング用ボールと共に、ステンレス鋼製ミリング用バイアルに置かれた。各ボールの直径は1.2cmであり、重さは約8.1gであった。窒素で満たされたグローブ・ボックス内に、バイアルが置かれて、約20mLのトリメチルシリルアセチレン(≧98%純度)が満たされて、密閉された。投入及び密閉後、ミリング用バイアルは、SPEX 8000−D デュアルミキサ/ミルに配置されて、高エネルギーボールミリングが実行された。ミリングが24時間なされた後、反応混合物が遠心分離されて、大きな粒子が除去された。上澄みは、TMSA不動態化ゲルマニウムナノ粒子の溶液を含む。少量の塩化メチレンが用いられて、ミリングの残留物から溶解粒子がさらに抽出された。全ての溶媒が、一体にした液体抽出物から回転蒸発で排出されて、乾燥したナノ粒子生成物が得られた。このナノ粒子生成物は、塩化メチレン及びヘキサンを含む多数の有機溶媒に再分散されてもよい。
特性解析:
未処理のナノ粒子溶液は、様々なサイズのナノ粒子を含んでいる。ナノ粒子のサイズ分離は、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で行われた。少量の濃縮ナノ粒子抽出物が、200メッシュのBio−Beads S−X1(Bio−Rad)を含む重力カラム(gravity column)に置かれた。ナノ粒子は、溶出溶媒として塩化メチレンを用いてサイズ分離された。分離したフラクション(1.5ml)が集められて、特性解析に使用された。この例では、大きいナノ粒子を含む初期のフラクションとより小さいナノ粒子を含む後期のフラクションの異なる12のフラクションが集められた。
FTIRスペクトルは、Bruker IFS−55スペクトロメータを用いて、1cm-1の解像度で1000回スキャンされて得られた。TEM画像は、JEOL 2011TEMを用いて、200kVの加速電圧を用いて得られた。EDSデータは、Oxford Incaアタッチメントを用いたTEMで、3nmのビームスポットを用いて得られた。NMRスペクトルは、Bruker Avance 300 MHz高解像度NMRスペクトロメータで得られた。ナノ粒子の励起−放出スペクトルとフォトルミネセンスデータは、Varian Cary Eclipse蛍光分光計を用いて得られた。粒子は、スペクトルグレードのヘキサンに溶解されて、Cary 50スペクトロフォトメータで得られた紫外可視吸収ピークは、PL分析の間に使用された初期励起波長の参照ピークを与えた。
図9は、THF溶媒内でサイズ分離されたゲルマニウムナノ粒子(フラクション1、3−8及び11)のサイズ排除クロマトグラフィーを示しており、ポリスチレン標準と比較されている。約500amuにおける鋭利なピークは、分子副生成物に対応している。ナノ粒子の大半は、1500乃至70,000amuの間の範囲である。図10は、サイズ分離されたゲルマニウムナノ粒子のあるフラクション(フラクション4)のFI−IRスペクトルである。有機表面層に起因したスペクトル帰属がある。図11は、フラクション6のゲルマニウムナノ粒子の狭いサイズ分布を示す透過型電子顕微鏡写真である。図12は、ゲルマニウムナノ粒子のサイズ分布を定量的に示すヒストグラムである。ナノ粒子の平均直径は、4.9nmである。図13は、フラクション6の高解像度透過型電子顕微鏡写真であり、約5nmのゲルマニウムナノ粒子を示している。格子縞が、粒子上に明瞭に視覚でき、それらが単結晶であることを示している。図14は、ゲルマニウムナノ粒子の様々なフラクションの光吸収スペクトルである。初期のフラクション(大きい粒子)は、長波長へのより顕著なテーリングを示している。図15は、ゲルマニウムナノ粒子の様々なフラクションのフォトルミネセンススペクトルである。後期のフラクション(小さい粒子)は、量子サイズ効果によって、高エネルギー(短波長)ルミネセンススペクトルを示す。
水溶性ゲルマニウムナノ粒子の合成
水溶性ゲルマニウムナノ粒子の作製:
シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から入手した純度99.999%のゲルマニウムのミリメートルサイズの片0.75gが、2個のステンレス鋼製ミリング用ボールと共に、ステンレス鋼製ミリング用バイアル内に置かれた。各ボールの直径は1.2cmであり、重さは約8.1gであった。そして、バイアルに、窒素で満たされたグローブ・ボックス内に、約20mLの3−ジメチルアミノ−1−プロピン(シグマ−アルドリッチ、純度98%)が満たされて、その後、密閉された。投入及び密閉後、ミリング用バイアルは、SPEX 8000−D デュアルミキサ/ミルに設置されて、幾つかの長さの時間に渡って、高エネルギーボールミリングが実行された。
分離:
ミリングが24時間なされた後、反応混合物が遠心分離されて、大きな粒子が除去された。溶液は、可溶性のジメチルアミノ−1−プロピン不動態化ゲルマニウムナノ粒子を含んでいた。3−ジメチルアミノ−1−プロピンが回転蒸発で除去されて、固体のナノ粒子が得られた。約20mlの蒸留水がバイアルに加えられて、さらに、残留物から残留ナノ粒子を溶解させた。このフラクションから水が回転蒸発で除去されて、乾燥したナノ粒子生成物の第2バッチが得られた。このナノ粒子生成物は、水、メタノールやその他の極性溶媒に可溶であって、特性解析のためにそれら溶媒に再分散されてもよい。
特性解析:
FTIRスペクトルは、Bruker IFS−55スペクトロメータを用いて、1cm-1の解像度で1000回スキャンされて得られた。TEM画像は、JEOL 2011TEMを用いて、200kVの加速電圧を用いて得られた。EDSデータは、Oxford Incaアタッチメントを用いたTEMで、3nmのビームスポットを用いて得られた。NMRスペクトルは、Bruker Avance 300 MHz高解像度NMRスペクトロメータで得られた。ナノ粒子の励起−放出スペクトルと発光データは、Varian Cary Eclipse蛍光分光計を用いて得られた。粒子は、蒸留水に溶解されて、Cary 50スペクトロフォトメータで得られた紫外可視吸収ピークは、PL分析の間に使用された初期励起波長の参照ピークを与えた。
図16は、水溶性のゲルマニウムナノ粒子の低倍率のTEM画像であって、大きいナノ粒子がある。図17は、ゲルマニウムナノ粒子の高倍率の画像であって、多数の小さいナノ粒子のサイズが示されている。図18は、1個のナノ粒子の高解像度画像である。この粒子の格子縞は、それが単結晶であることを示している。図19は、水中のゲルマニウムナノ粒子のUV−Vis吸収及びフォトルミネセンススペクトルである。
最近、本発明の発明者は、Si−C結合を介して共有結合したアルキル/アルケニル基を用いた、シリコンナノ粒子とそれら粒子表面の化学的不動態化の同時生成の新たな方法を発表した(A. S. Heintz, M. J. Fink, B. S. Mitchell. Adv. Mater. 2007, 19, 3984−米国仮特許出願第60/932,428号が出願された後に発行された)。単結晶シリコンの塊に、反応アルキンの存在下で高エネルギーボールミリング(HEBM)を施して、ナノ粒子表面は直接反応して、その表面が連続的に不動態化する一方で、材料破砕の繰り返しによって、粒子は、同時にナノ領域へと小さくなった。先に示した方法は、アルキンに限定されず、実際には、その他の反応性有機物でも同様に適用可能である。ミリング中に反応性有機液体として1−オクテン、1−オクトアルデヒド、オクタン酸や1−オクタノールを用いてミリングプロセスを実行することで、特に、アルデヒド、カルボン酸、アルキン、及びアルコールが研究された。先に示した作業は、1−オクチンを用いてなされたので、各官能基の8−炭素鎖種(8-carbon chain species)が、一貫性と比較の容易さから選択された。本発明の発明者は、その他の炭素鎖種についても引き続き実験をした。
既に述べたように、不活性雰囲気下にて、ステンレス鋼製ミリング用バイアルが、単結晶シリコンの塊と、選択した反応性有機液体と共に置かれた。ステンレス鋼製ミリング用ボールがバイアルに加えられて、その後密閉されて、HEBMが施された。ボールとボール間の衝撃と、ボールと壁の間の衝撃が、ミリング中に継続して、システムに機械的なエネルギーを分け与える。シリコン片は、これらの衝突による破砕に巻き込まれて、粒径を低減し、フレッシュな表面を形成する。新たに生じたこの表面は、非常に反応的であり、シリコンと反応性有機液体の間の直接的な反応のサイトをもたらし、その結果、共有結合が形成される。HEBMが継続されると、シリコン粒子のサイズは、粉砕によって、ナノ領域に低減し、直接的な表面反応は、フレッシュな表面が手法によって継続して作られる限り、継続する。全てのケースで、反応媒体に拘わらず、ミリングは、24時間という連続的な期間、実行されるのが好ましい。
図20は、1−オクチン(スペクトルb)、1−オクテン(スペクトルc)、1−オクトアルデヒド(スペクトルd)、オクタン酸(スペクトルe)、1−オクタノール(スペクトルf)内でミリングされて作製された不動態化シリコンナノ粒子の一連のフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを示している。比較のために、反応媒体無しで空気中でミリングされたナノ粒子のFTIRスペクトルが示されている(スペクトルa)。空気中でミリングされて形成されたナノ粒子は、900−1200cm-1の範囲からの突き出たSi−O−Siピーク内に唯一の主な特徴を示している。他の5つのスペクトルではこれと同じピークが欠落していることに着目するのは重要であり、これらの反応性有機物の存在が、ナノ粒子を、顕著な周囲空気の酸化から保護する働きをすることを示している。ナノ粒子が反応性有機液体の存在下でミリングされた5つのケースの全てで、2800−3000cm-1の範囲に渡る明確なC−H伸縮バンドに加えて、約1347cm-1と約717cm-1でのC−H振動モードによって明らかなように、赤外スペクトルは、有機層の明確な証拠を示している。更に、オクトアルデヒド、オクタン酸及びオクタノールで生成されたナノ粒子のスペクトルは、3200−3500cm-1の範囲に渡る−OH伸縮も示した。これは、空気に暴露されると表面のSi−H結合に酸素が挿入されることによると考えられる。オクトアルデヒドとオクタン酸のナノ粒子のスペクトルで観察された小さなアルデヒドピークは、残留溶媒の分子に起因する可能性が高い。
表1は、幾つかの有機溶媒にて24時間ミリングして作製したシリコンナノ粒子で得られたフォトルミネセンス(PL)データを掲載している。1−オクテンでミリングして作製したシリコンナノ粒子は、320nmの光で励起されると、約396nmで最も強度が高い放出を示す。1−オクトアルデヒドでミリングして作製したシリコンナノ粒子は、440nmの光で励起されると、約518nmで最も強度が高い放出を示した。同様に、オクタン酸でミリングして作製したシリコンナノ粒子は、440nmの光で励起されると、約522nmで最も強度が高い放出を示した。1−オクタノールでミリングして作製したナノ粒子の最も強度が高い放出は、290nmの光で励起されると、約406nmの可視領域の下であった。1−オクチンで作製したシリコンナノ粒子のPL特性が比較のために掲載されている。
Figure 0005596540
未反応のベアシリコンの反応サイトは、超高真空状態下で再構成されたシリコン表面で良く特徴づけられる。反応性Si=Siダイマーと表面ラジカルのロール(rolls)は、直接反応が起こる経路として考えられている。このようにして、表面結合有機単分子層の構造を決定することが可能である。13Cと1Hの核磁気共鳴(NMR)分光法と一連のマルチパルスDEPTテストとを用いて、ナノ粒子の表面に結合した1−オクテン、1−オクトアルデヒド、オクタン酸、及び1−オクタノールの結果として起こった構造は特性解析されて、図21に要約されている。比較のために、1−オクチンの先に推定された表面結合構造も示されている。
本発明の発明者は、本明細書にて、シリコンナノ粒子の同時の生成と不動態化に関する彼らの先に報告した方法が、アルキンのみに限定されることなく、実際には、アルカン、アルデヒド、カルボン酸及びアルコールにも効果的であることを証明している。説明した反応性有機液体の存在下で作製したナノ粒子は、UV光の下で蛍光を発し、サイズの十分な低減と、反応分子による連続的な表面の不動態化の両方を示した。様々な機能性に柔軟に対応するこのワンステップ直接反応方法を確立することで、その用途の可能性は増加する。
実験
シリコンナノ粒子の作製:
シグマ−アルドリッチから入手した純度99.95%のシリコン片1.0gが、2個のステンレス鋼製ミリング用ボールと共に、ステンレス鋼製ミリング用バイアルに置かれた。各ボールの直径は1.2cmであり、重さは約8.1gであった。窒素雰囲気下のグローブ・ボックス内に、バイアルが置かれて、約25mLの所望の液体媒体が満たされて、その後、密閉された。液体媒体として、純度99%以上の1−オクタノールと、純度99%以上のオクチルアルデヒドと、純度98%以上のオクタン酸を、全てシグマ−アルドリッチから入手した。投入及び密閉後、ミリング用バイアルは、SPEX 8000−D デュアルミキサ/ミルに設置されて、幾つかの長さの時間に渡って、HEBMが実行された。
特性解析:
FTIRスペクトルは、Bruker IFS−55スペクトロメータを用いて、1cm-1の解像度で1000回スキャンされて得られた。分析用のFTIRにおいて、ナノ粒子は、溶媒除去用の真空オーブンに置かれて、二硫化炭素に再溶解されて、その後ソルトプレート(salt plate)に置かれて、二硫化炭素を消失させた。ナノ粒子の励起−放出スペクトルとフォトルミネセンスデータは、Varian Cary Eclipse蛍光分光計を用いて得られた。粒子は、へプタンに溶解されて、Cary 50スペクトロフォトメータで得られた紫外可視吸収ピークは、PL分析の間に使用された初期励起波長の参照ピークを与えた。
ナノ粒子の溶解性
開発した作製方法の主たる利点の一つは、不動態化シリコンナノ粒子が、ミリング間に液体に溶解化することである。これによって、回収が容易になり、沈殿を用いた不動態化ナノ粒子のサイズによる初期分離が促進される。
ナノ粒子の溶解性と不動態化用分子鎖長
有機分子において、より長い鎖長が、一般に分子間力の増加に対応していることが良く知られている。この現象は、有機液体の沸点のような物理的特性を通じて観測可能である。例えば、n−ドデカン(b.p. 216.2℃)は、n−デカン(b.p. 216.2℃)よりも高温で沸騰し、n−デカンは、n−オクタン(b.p. 216.2℃)よりも高温で沸騰し、n−オクタンは、n−ヘキサン(b.p. 216.2℃)よりも高温で沸騰する。分子間のファンデルワールス力は、主として、分子の周りの電子数と、分子の表面領域とによって決定される。より長い(つまりより大きい)分子には、それ故に、同種のより短い分子よりも、より大きい分子間引力がもたらされる。
その結果として、不動態化用分子の鎖長は、ミリング用溶液内の不動態化シリコンナノ粒子の溶解性に影響を与えるはずである。不動態化用分子の鎖長を大きくすることで、ナノ粒子と液体間の正味の分子間引力は増加する。不動態化用分子が大きくなると、基本的に、ナノ粒子は、より「溶解し易く(solvent-like)」なる。より大きい不動態化用分子をナノ粒子表面に付けることで、より大きいナノ粒子が溶解可能となるはずである。
図22は、炭素鎖長が6、8、10、及び12のアルキンの存在下でミリングされて形成された不動態化シリコンナノ粒子のミリング用溶液の質量濃度を示す。反応液体の分子の鎖長が大きくなると、溶液内のナノ粒子の濃度も同様に大きくなる。表2は、炭素鎖長が6、8、10、及び12のアルキンの存在下でミリングされて形成された不動態化シリコンナノ粒子のミリング用溶液のプロセス収率を示す。もう一度、溶解化しているナノ粒子の量の増加が観測されている。実際に、不動態化用分子の鎖長が大きくなると、シリコンナノ粒子の質量が大きくなって、液体媒体に溶解化する。
Figure 0005596540
しかしながら、上述したミリング用溶液内でのナノ粒子の濃度は、溶解化ナノ粒子のより大きな全体的な質量を示すだけであって、それらのサイズについては何も話さない。溶解化ナノ粒子のサイズと、不動態化用分子の鎖長の間の関係は、それらの光学特性の比較によって得られる。シリコンナノ粒子のバンドギャップにサイズ依存性があることを思い出すと、より小さいシリコン粒子のバンドギャップはより大きくなり、その結果、より高いエネルギーで光を発する。図23は、420nmの光で励起された場合における、鎖長が異なるアルキル分子で不動態化しているシリコンナノ粒子の放射を示す。ピーク位置の比較を容易にするため、放射は、1(unity)に規格化されている。不動態化用分子の長さが増加すると、最大放射のレッドシフトが観測される。レッドシフトが放射エネルギーの全体的な減少を示すので、これは、長い鎖長を有するサンプルにおけるより大きい平均粒子の存在を支持する。図24は、360nmの光で励起された場合における、鎖長が異なるアルキル分子で不動態化されたシリコンナノ粒子の放射を示す。再度、1に規格化されている。より小さい集団の励起によって、より狭い放射が観察されるが、前と同様な形で、不動態化用分子鎖長の増加によるレッドシフトが観測される。
不動態化用分子の鎖長の変化は、ミリング間に液体媒体に可溶化した不動態化シリコンナノ粒子のサイズに影響を与えることが分かった。より長い鎖をナノ粒子表面に付けることで、より大きい不動態化ナノ粒子の溶解化がなされる。逆に、より短い鎖を付けると、サイズ分布がより狭くなる。これによって、ミリング中に使用する反応製有機物を単に変更することで、制限されたサイズ選択が実行できるので、ある程度のプロセス調製が可能となる。
本発明のある実施例では、シリコンやゲルマニウムのような半導体材料は、高エネルギーボールミリングによって、間接バンドギャップ半導体から直接バンドギャップ半導体に変化する。
本発明の別の実施例では、反応媒体は、特殊な条件で更に反応的な多機能性ナノ粒子を含む。
本発明の別の実施例では、高エネルギーボールミリング装置は、流動床の形態を取っている。反応媒体は、流動床にて粉砕されるシリコン又はその他の材料を運び、そうすることで、運動量をミリング用ボールに与えて、それらを衝突させる。不動態化プロセスは、先に説明したように進行するが、ナノ粒子は、使用済みの反応媒体の流動床から出される。
本発明の別の実施例では、ミリング用ボールは、閉じられた好ましくはポリマー製のバイアル内をあちこち行き来する衝突体で置き換えられる。シリコン(又はその他の材料)は、先に説明したように反応媒体の存在下で粉砕されるが、衝突は、衝突体とバイアル端面の間で起こる。これら衝突体は、円筒形であってよく、例えば、直径が1cmで長さが3cmの大きさを有しており、スチールのような任意の磁性材料で作製されてよい(衝突体は、好ましくは、電磁的に撹拌される(衝突体に磁性があるのが好ましい。好ましい極低温ミル(SPEXで生産された6750フリーザーミル)が衝突体をあちこちに動かすのに磁石を用いているからである。SPEX高エネルギーボールミルは、機械モータとスイングアームでバイアルを動かしており、低温ミルは代わりに磁石を用いて衝突体を動かす))。
本発明の別の実施例では、不動態化シリコンナノ粒子が、バッチ式操作で形成される。
本発明の別の実施例では、不動態化シリコンナノ粒子が形成されて、連続的な方法で、高エネルギーボールミリング用装置から取り出される。
本明細書に開示された全ての測定は、特に明記されていない限り、地球の海面における標準温度と標準気圧でのものである。
人体に使用される又は人体での使用を意図した全ての材料は、特に明記されていない限り、生体適合を有している。
上述した実施例は、例示のみを目的として示されており、本発明の範囲は、特許請求の範囲にのみ制限される。

Claims (15)

  1. 安定な機能性ナノ粒子を形成する方法において、
    a)第1材料を準備する工程と、
    b)反応媒体を準備する工程と、
    c)サイズが100nm以下の大きさである粒子へと、前記第1材料を前記反応媒体内にて小さくする工程であって、アルコール、アルデヒド、アルキン、アルケン、アミン、カルボン酸、核酸、ペプチド及びタンパク質の溶液、アジド、ケトン、エポキシド、アミド、エステル、アミノ酸、有機ハロゲン化合物、チオール、及び炭水化物からなる群の中の少なくとも1つの共有結合要素を与えることで、前記反応媒体前記粒子を機能化する工程と、
    を含む方法。
  2. 前記第1材料は、ボールミリングによって、ナノ粒子へと機械的に小さくされる、請求項1の方法。
  3. 前記粒子は、50nm以下の大きさであり、選択的には20nm以下の大きさであり、選択的には5nm以下の大きさである、請求項1又は請求項2の方法。
  4. 安定な機能性ナノ粒子をメカノケミカルに作る方法において、
    第1材料を準備する工程と、
    反応媒体を準備する工程と、
    所望の量のナノ粒子が作製されるまで、前記反応媒体の存在下で前記第1材料に機械的に衝撃を繰り返し与える工程であって、前記ナノ粒子が作製される際に前記反応媒体が前記第1材料と反応して、アルコール、アルデヒド、アルキン、アルケン、アミン、カルボン酸、核酸、ペプチド及びタンパク質の溶液、アジド、ケトン、エポキシド、アミド、エステル、アミノ酸、有機ハロゲン化合物、チオール、及び炭水化物からなる群の中の少なくとも1つの共有結合要素を与えることで、前記ナノ粒子が機能化される工程と、
    を含む方法。
  5. アルコール、アルデヒド、アルキン、アルケン、アミン、カルボン酸、核酸、ペプチド及びタンパク質の溶液、アジド、ケトン、エポキシド、アミド、エステル、アミノ酸、有機ハロゲン化合物、チオール、及び炭水化物からなる群の中の少なくとも1つの共有結合要素を与えることで、安定な機能性ナノ粒子を形成する方法において、
    a)第1材料を準備する工程と、
    b)反応媒体を準備する工程と、
    c)前記反応媒体内で前記第1材料をボールミリングして、ボールミリングされたナノ粒子を得る工程と、
    を含む方法。
  6. アルコール、アルデヒド、アルキン、アルケン、アミン、カルボン酸、核酸、ペプチド及びタンパク質の溶液、アジド、ケトン、エポキシド、アミド、エステル、アミノ酸、有機ハロゲン化合物、チオール、及び炭水化物からなる群の中の少なくとも1つの共有結合要素を与えることで、安定な機能性ナノ粒子を形成する方法において、
    a)第1材料を準備する工程と、
    b)反応媒体を準備する工程と、
    c)前記反応媒体内で前記第1材料をボールミリングして、液相を得る工程と、
    を含んでおり、
    d)工程cでは、前記液相はナノ粒子を含んでいる方法。
  7. 前記反応媒体は、純粋な液体である、請求項1乃至6の何れかの方法。
  8. 前記反応媒体は、溶液である、請求項1乃至6の何れかの方法。
  9. 前記第1材料は半導体特性を有している、請求項1乃至6の何れかの方法。
  10. 前記ナノ粒子は、リン光性及び蛍光性を有している、或いは、フォトルミネセンスを含むサイズ依存性量子閉じ込め効果を示す、請求項1乃至6の何れかの方法。
  11. 前記機能性ナノ粒子は、有機溶媒に溶け、前記有機溶媒には、反応媒体が含まれるが、これに限定されない、請求項1乃至6の何れかの方法。
  12. 前記機能性ナノ粒子は、水溶液系に溶け、前記水溶液系には、反応媒体が含まれるが、これに限定されない、請求項1乃至6の何れかの方法。
  13. 前記第1材料は、高エネルギーボールミリングによって、間接バンドギャップ半導体から直接バンドギャップ半導体に変化する、請求項1乃至6の何れかの方法。
  14. 前記機能性ナノ粒子は、ゲル透過クロマトグラフィー又は選択的沈殿を用いて、サイズ分別され、前記ゲル透過クロマトグラフィー又は選択的沈殿には、超臨界二酸化炭素などの溶媒が含まれるが、これらに限定されない、請求項1乃至6の何れかの方法。
  15. 前記機能性ナノ粒子は、前記第1材料と前記反応媒体の間の共有結合を示す、請求項1乃至6の何れかの方法。
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