JP5878284B2 - 金属または合金のナノ粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明における低融点金属ナノ粒子の金属組成としては、融点が25℃〜300℃の範囲内である金属および前記金属の合金を用いることが可能である。具体的な金属元素としては、In、Ga、Bi、Sn、とこれらの金属2種以上からなる合金が挙げられる。これらの金属または合金は低融点であり、溶媒中で攪拌する本発明の製造方法を適用する上で、有利である。前記の金属または合金は、必要に応じて、融点25℃〜300℃の範囲外とならない範囲で、他の金属元素を含んでもよい。
低融点金属ナノ粒子の平均粒径は、3nm以上、50nm未満であることが好ましい。50nm以上の場合には、焼結温度を十分低くできない場合があり、3nm未満の低融点金属ナノ粒子は、表面活性が高く、酸化等の変質による問題が生じることがある。焼結温度を十分低くする観点から、低融点金属ナノ粒子の平均粒径は、30nm未満とすることが更に好ましく、20nm以下とすることが一層好ましい。
(1)容器中に、固体または液体の金属と、非水系溶媒と、直径0.015mm〜5mmの粉砕用ボールとを入れ、混合物を得る工程。
(2)前記混合物を前記金属の融点より5℃低い温度(融点−5℃)〜前記金属の融点よ
り20℃高い温度(融点+20℃)に加熱し、攪拌する工程。
(3)前記混合物から粉砕用ボールを分離して、低融点金属ナノ粒子と非水系溶媒の混合物を得る工程。
(4)前記低融点金属ナノ粒子と非水系溶媒の混合物を固液分離して、低融点金属ナノ粒子を得る工程。
必要に応じて、得られた低融点金属ナノ粒子に対して、洗浄、乾燥等を行ってもよい。
低融点金属ナノ粒子の原料金属としては、得ようとする低融点金属ナノ粒子と同一の金属組成を持つ、例えば、In、Ga、Bi、Sn、とこれらの金属2種以上からなる合金を使用することができる。
本発明での非水系溶媒とはその沸点が、原料金属(バルク)の融点以上であるものが好適である。例えば、原料金属が、Inの場合には、非水系溶媒の融点は156.6℃以上が好適であり、例えば、原料金属が、Biの場合には、非水系溶媒の融点は271.3℃以上が好適である。非水系溶媒の沸点が、原料金属(バルク)の融点と比較して10℃以上高いものが特に好適であり、20℃以上高いものが特に好適である。後述するように、低融点金属ナノ粒子を得るためには、非水系溶媒として得ようとする低融点金属ナノ粒子の融点よりも高い沸点を持つものが好ましいが、攪拌をおこなう容器に圧力容器を用いることにより、雰囲気圧力を上げ、常圧の沸点が原料金属(バルク)の融点より低い非水系溶媒でも、使用が可能である。しかしながら製造装置に耐圧性能が必要となるので、沸点は、得ようとする原料金属(バルク)の融点よりも10℃以上高いことが望ましい。更に非水系溶媒として、低融点金属ナノ粒子が酸素と反応して、表面に酸化物を形成しやすいために、還元性を有する溶媒であることが更に好ましい。
本発明に用いる粉砕用ボールとしては、材質としてセラミックス系を用いたアルミナボール、ジルコニアボール、ムライトボール、ガラスボール、金属系のステンレスボールや鉄ボール等を使用することができ、特に材質に制限はないが、粉砕用ボールの材質として、耐久性が高く、低融点金属ナノ粒子への不純物の混入が少ない利点のある、ジルコニア、アルミナが特に好適である。
前記混合物の体積比は、用いる非水系溶媒の体積に対して、金属原料は、0.05体積%〜20体積%が好ましく、0.1体積%〜10体積%が一層好ましい。粉砕用ボールは、用いる非水系溶媒の体積に対して、20体積%〜600体積%が好ましい。金属原料が0.1体積%未満の場合、生産性が低くなり、20体積%超の場合には、得られる低融点金属ナノ粒子の粒径が十分小さくならないことがある。粉砕用ボールが20体積%未満の場合には、得られる低融点金属ナノ粒子の粒径が十分小さくならないことがあり、600体積%超の場合は、粉砕用ボールの表面に原料用金属が多く付着した状態となることがある。前記混合物を容器中で静置したときに、前記粉砕用ボールの上面と前記非水系溶媒の上面の高さが、略同一となるように、前記粉砕用ボールの前記非水系溶媒に対する体積比率を調整することにより、低融点金属ナノ粒子が得やすくなるので、更に好ましい。
前記金属原料と、前記非水系溶媒と、前記粉砕用ボールの混合物を加熱・攪拌することにより、平均粒径が3nm以上、50nm未満である低融点金属ナノ粒子を生成することができる。
加熱・攪拌後、混合物は、攪拌をおこなった状態で、原料金属(バルク)の融点より10℃以上低い温度まで冷却する。その後、混合物から粉砕用ボールをメッシュを通す等の公知の手段により分離して、低融点金属ナノ粒子と非水系溶媒の混合物を得る。
前記工程で得られた低融点金属ナノ粒子と非水系溶媒の混合物の固液分離をおこなう。固液分離は、遠心分離によりおこなうことができる。なお、用いた非水系溶媒が、低融点金属ナノ粒子の分散媒として支障ない場合には、必ずしも固液分離をおこなわなくてもよい。前記固液分離で得られた固体中に、低融点金属ナノ粒子が凝集したものが存在していることがある。この場合には、前記固体を溶媒に分散させて、超音波照射することにより、凝集を分散させることができる。前記超音波照射は、超音波洗浄装置を用い、1分間以上処理することができる。前記処理は、1分間〜1時間とすることができる。また、前記固体を溶媒に分散させて、500rpm〜1500rpm程度の条件で遠心分離をおこなうことにより、低融点金属ナノ粒子が凝集したものを分離することができる。
固液分離した金属ナノ粒子は、溶媒で洗浄することができる。前記溶媒としては、メタノール、エタノール等の低沸点であるアルコールの有機溶媒が好適な例としてあげられる。洗浄後、真空乾燥等の高温加熱をおこなわない方法で乾燥することにより、使用した非水系溶媒の残留が少ない低融点金属ナノ粒子粉末を得ることができる。
6Nのインジウムを10g秤量し、このインジウムを500mLのセパラブルフラスコに投入した。前記インジウムの融点を示差走査熱量計(DSC)(株式会社リガク製、Thermoplus DSC8230)で測定した結果、融点は、157℃であった。次に0.3mmΦのジルコニアボール1kgを前記セパブルフラスコに投入し、更に、テトラエチレングリコール300mLを投入して、混合物を得た。この後、セパラブルフラスコの上蓋をして密封し、窒素ガスを100mL/minで流し、10分間ガス置換をした。次に、セパブルフラスコ内に設置してあった回転径が6cmのステンレス製の攪拌羽根を700rpm回転させることにより攪拌をおこなった状態で、混合物を161℃(加熱温度)まで加熱した。なお、混合物の温度は、セパブルフラスコ内に設置された熱電対により測定した。混合物を前記加熱温度で5時間保持した後、前記攪拌状態を維持したまま、前記混合物を5℃/minの冷却速度で冷却した。混合物が40℃以下になった段階で攪拌羽根の回転を止めた。次にこの混合物を250メッシュのナイロン生地の網を通過させて、0.3mmΦのジルコニアボールを混合物から分離した。ろ過された側には低融点金属ナノ粒子が分散した溶媒(テトラエチレングリコール)が回収された。
加熱温度を161℃から156℃、166℃に変更した以外は、実施例1と同様に低融点金属ナノ粒子の生成と測定を試みた。得られた低融点金属ナノ粒子の平均粒径を表1に示す。156℃、166℃の場合とも、X線回折の結果は実施例1と同様であった。
加熱温度を161℃から150℃、180℃に変更した以外は、実施例1と同様に低融点金属ナノ粒子の生成を試みた。大粒径のIn粒子が生成して、混合物を250メッシュのナイロン生地の網を通過させる際に、ほとんど通過することができず、低融点金属ナノ粒子は得られなかった。
使用する原料金属を6Nのインジウムから6Nのガリウムに変更し、加熱温度を161℃から35℃に変更した以外は、実施例1と同様に低融点金属ナノ粒子の生成と測定を試みた。得られた低融点金属ナノ粒子の平均粒径を表2に示す。X線回折の結果、Gaのピーク位置と一致するピークが確認された。
加熱温度を35℃から29℃、40℃に変更した以外は、実施例3と同様に低融点金属ナノ粒子の生成と測定を試みた。得られた低融点金属ナノ粒子の平均粒径を表2に示す。
加熱温度を35℃から24℃、50℃に変更した以外は、実施例3と同様に低融点金属ナノ粒子の生成を試みた。大粒径のGa粒子が生成して、混合物を250メッシュのナイロン生地の網を通過させる際に、ほとんど通過することができず、低融点金属ナノ粒子は得られなかった。
使用する原料金属を6Nのインジウムからビスマスに変更し、加熱温度を161℃から276℃に変更した以外は、実施例1と同様に低融点金属ナノ粒子の生成と測定を試みた。得られた低融点金属ナノ粒子の平均粒径を表3に示す。X線回折の結果、Biのピーク位置と一致するピークが確認された。
加熱温度を276℃から271℃、281℃に変更した以外は、実施例5と同様に低融点金属ナノ粒子の生成と測定を試みた。得られた低融点金属ナノ粒子の平均粒径を表3に示す。
Claims (8)
- 容器中に、融点が25℃〜300℃の範囲内である金属、または融点が25℃〜300℃の範囲内である合金と、非水系溶媒と、直径0.015mm〜5mmの粉砕用ボールとを入れ、混合物を得る工程と、
前記混合物を前記金属または合金の融点−5℃〜前記金属または合金の融点+20℃に加熱し、攪拌する工程と、
攪拌後の前記混合物から粉砕用ボールを分離して、前記金属または合金のナノ粒子と非水系溶媒の混合物を得る工程と、
前記金属または合金のナノ粒子と非水系溶媒の混合物を固液分離して、平均粒径が3nm以上、50nm未満の前記金属または合金のナノ粒子を得る工程を有する、金属または合金のナノ粒子の製造方法。 - 前記金属または合金が、In、Ga、Bi、Snの群から選択される1種以上である、請求項1に記載の金属または合金のナノ粒子の製造方法。
- 前記非水系溶媒はアルデヒド基またはヒドロキシ基を有する有機溶媒である、請求項1または2に記載の金属または合金のナノ粒子の製造方法。
- 前記非水系溶媒は一級アミノ基、または二級アミノ基、または三級アミノ基の内の少なくとも一種以上を含む有機溶媒である、請求項1または2に記載の金属または合金のナノ粒子の製造方法。
- 前記攪拌する工程は、攪拌羽根を周速200cm/秒〜200000cm/秒で回転させることにより行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の金属または合金のナノ粒子の製造方法。
- 前記固液分離を遠心分離により行う、請求項1〜5のいずれかに記載の金属または合金のナノ粒子の製造方法。
- 前記金属または合金のナノ粒子と非水系溶媒の混合物を固液分離した後、前記金属または合金のナノ粒子を沸点150℃以下の有機溶媒で洗浄する、請求項1〜6のいずれかに記載の金属または合金のナノ粒子の製造方法。
- 前記金属または合金の体積が、前記非水系溶媒の体積の0.1体積%〜20体積%である、請求項1〜7のいずれかに記載の金属または合金のナノ粒子の製造方法。
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