JP2015201621A - 発光性シリコンナノ粒子及び電流注入型発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】ストークスシフトが大きくかつ高効率な発光が可能な発光性シリコンナノ粒子を提供し、またこのシリコンナノ粒子を使用した簡単な構造で発光スペクトルの加成性を実現した電流注入型発光素子を提供する。
【解決手段】粒子径が3nm以下であるとともに、粒子の中心から表面までダイヤモンド構造が維持された本発明の発光性シリコンナノ粒子は、535〜1000nmの各波長域で発光する。本発明の一実施例である700nmに発光極大をもつ、粒径1.9nmのオクタデカン終端ナノ粒子は、図示するようにストークスシフトが非常に大きいので、複数の発光色の本発明のナノ粒子の組み合わせ、あるいは一部既存の発光体を混用により、発光スペクトルの加成性を利用して、白色等の発光素子を特別な構造を採用することなく実現できる。
【選択図】図1

Description

本発明は高発光量子効率を実現するための特定の構造を有する発光性シリコンナノ粒子に関する。また、活性層にこの発光性シリコンナノ粒子を使用した電流注入型発光素子に関する。
従来の電流注入型発光素子において、発光層は、化合物半導体エピ薄膜、化合物半導体ナノ粒子(量子ドットを含む)あるいは有機色素のいずれかで構成されている。これらの発光物質は共通して小さな発光ストークスシフト特性を有している。ここで述べるストークスシフトとは、光吸収スペクトルと発光スペクトル差であるが、一般的な発光物質である有機色素及び半導体ナノ粒子では、ストークスシフトは数ナノメートルから数十ナノメートル程度である。例えば、非特許文献1は可視発光特性を有する化合物半導体ナノ粒子に関する総説である。しかし、ここで解説されている化合物半導体ナノ粒子に共通することは、粒子の構造(粒子径など)に依存して発光波長を制御することはできるが、発光スペクトルのシフトと同時に光吸収スペクトルも相対的にシフトするので光吸収と発光の間のストークスシフト量は基本的に変化しない。そしてストークスシフトが非常に短いために、異なる波長で発光する粒子同士が近接するといわゆる蛍光共鳴エネルギー移動が起こる(非特許文献2)。それゆえ、電流注入型素子において発光の加成性を利用する際には、ある特定の層からの発光を周辺層が光吸収しないようにするための技術的配慮が必要であった(非特許文献3)。
その他、異なるスペクトルの発光を混合することで白色等の光を発生することに関しては特許文献1〜6等の多数の先行文献が存在するが、上述したようなストークスシフトが短いという問題に解決を与えるものではない。
また、ダイヤモンド結晶格子で構成されるシリコンのナノ粒子を用いると575〜1000mの波長範囲において発光を連続的に制御でき、また発光色は粒子サイズに依存することが知られている(非特許文献4)。これらの粒子は通常水素原子で表面不動態化されており、絶対PL発光収率は5%以下である。電流注入型発光素子の発光層として使用するには少なくとも20%を超える絶対PL発光収率が必要であるので、これらの粒子は発光量子収率の面から使用が適当でない。さらに問題となっているのが、当該波長範囲における発光は全て不安定で、当初の発光色に依らず最終的には全て橙色になってしまう点である(非特許文献5)。この不安定性はナノ粒子の酸化に基づくと考えられてきた(非特許文献5)このように絶対PL発光量子収率が低く、発光色が不安定なので白色電流注入型素子の活性層として適用できていないのが現状である。
本発明の課題は、ストークスシフトが大きくかつ高効率な発光が可能な発光性シリコンナノ粒子を提供し、またこのシリコンナノ粒子を使用した簡単な構造で発光スペクトルの加成性を実現した電流注入型発光素子を提供することである。
本発明の一側面によれば、粒子径が1.4nm以上2.5nm未満の範囲であるとともに、粒子の中心から表面までダイヤモンド構造が維持され、有機分子で表面が終端された、励起光の照射により発光極大が560nm以上850nm未満の範囲で粒子径に依存して連続的に変調可能な発光性シリコンナノ粒子が与えられる。
あるいは、粒子径が1.3nm以上2.5nm未満の範囲であるとともに、粒子の中心から表面までダイヤモンド構造が維持され、有機分子で表面が終端された、励起光の照射により発光極大が535nm以上850nm未満の範囲で粒子径に依存して連続的に変調可能な発光性シリコンナノ粒子が与えられる。
あるいは、粒子径が2.5nm以上3nm以下であるとともに、粒子の中心から表面までダイヤモンド構造が維持され、励起光の照射により極大発光が850nm以上1000nm以下の範囲で、粒子径に依存して連続的に変調可能な発光性シリコンナノ粒子が与えられる。
あるいは、粒子径が1.9nm以上3nm以下であるとともに、粒子の中心から表面までダイヤモンド構造が維持され、励起光の照射により極大発光が700nm以上1000nm以下の範囲で、粒子径に依存して連続的に変調可能であるとともに、絶対PL発光量子収率が19.2%以上である、発光性シリコンナノ粒子が与えられる。
ここで、直前の二種類の発光性シリコンナノ粒子は有機分子または水素で表面が終端されてよい。
また、前記有機分子は飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、アルコキシ基、オクタデカン、プロピオン酸及びカルボキシル基からなる群から選択されてよい。
本発明の他の側面によれば、正孔輸送層と電子輸送層との間に発光物質として少なくとも上記何れかの発光性シリコンナノ粒子を含む発光層を設け、前記正孔輸送層と前記電子輸送層との間に電圧を印加することで発光する電流注入型発光素子が与えられる。
ここで、複数の前記発光層を設け、少なくとも一層の前記発光層が前記発光性シリコンナノ粒子を含み、他の前記発光層が前記発光性シリコンナノ粒子以外の発光物質を含んでよい。
また、前記発光層の少なくとも一つは複数の粒径の前記発光性シリコンナノ粒子の混合物を含んでよい。
また、素子全体の発光のスペクトルが前記の発光層及び/または前記複数の粒径の発光性シリコンナノ粒子の各々の発光スペクトルを足し合わせたものであってよい。
また、前記素子全体の発光のスペクトルは白色のスペクトルであってよい。
本発明の更に他の側面によれば、トリアルコキシシランを加水分解することでSiO1.5前駆体を得るステップと、前記前駆体を真空中または窒素雰囲気において加熱処理することでシリコンと二酸化シリコンへ不均化させるステップと、前記不均化された物質をフッ化水素含有溶液中で撹拌することで、二酸化シリコンを優先的に除去してシリコンナノ粒子を得るステップと、前記シリコンナノ粒子を有機分子で被覆するステップと
を設けた、上記何れかの発光性シリコンナノ粒子の製造方法が与えられる。
本発明によれば、新規な構造及び発光極大範囲を有し、これによって絶対PL発光量子収率が高く、またストークスシフトが大きな発光性シリコンナノ粒子が得られる。このシリコンナノ粒子を発光層に具備した電流注入型発光素子は、発光性シリコンナノ粒子の大きなストークスシフトのために、発光層から放射された光の吸収が起きないことを利用して、微細加工など特別な処理なしで複数のスペクトルの発光を自由に混合して、全体として白色その他の所望の色の発光を提供することができるようになる。
実施例1で合成したシリコンナノ粒子の光吸収・フォトルミネッセンス特性を示す図。 発光極大が560〜1000nmの範囲の可視−近赤外の各波長域で発光する複数のシリコンナノ粒子の光励起スペクトルを示す図。 バルク結晶シリコンにおける励起キャリア遷移(左)及びシリコンナノ粒子における励起キャリア遷移(右)プロセスを示す図。 平均粒子径1.9nmシリコンナノ粒子の表面がオクタデカン単分子で終端されているサンプルにおいて典型的なラマンスペクトルを示す図。 平均粒子径1.9nmシリコンナノ粒子の表面がプロピオン酸単分子で終端されているサンプルにおいて典型的なラマンスペクトルを示す図。 当初720〜970nmの波長域に蛍光極大を有する単分散性の高い水素終端化シリコンナノ粒子をアルゴン雰囲気中で保存した時のPLスペクトル位置の保持時間依存性を示す図。 平均粒子径1.9nmシリコンナノ粒子の表面が水素原子で終端されているサンプルにおいて典型的なラマンスペクトルを示す図。 実施例4の発光素子の模式的な断面図。 実施例4に示す素子に利用した正孔輸送層を構成する物質であるPoly−TPDの分子構造を示す図。Poly−TPDは青色発光体としての役割も担う。 比較例3の発光素子の模式的な断面図。 比較例3に示す素子に利用した電子輸送層を構成する物質であるTBPi、Alq3及びPEDOT:PSSの分子構造を示す図。 実施例4で作製された電流注入型発光素子から得たエレクトロルミネッセンス発光スペクトルを示す図。 実施例4で作製された電流注入型発光素子における素子電流密度の印加電圧依存性を示す図。 ダイヤモンド構造を有するとともに粒子サイズが2.5〜7.3nmの範囲にあり、オクタデカン単分子で終端された単分散性の高いシリコンナノ粒子のPLスペクトルを示す図。
本発明においては、535〜1000nmの波長範囲に発光極大を有する蛍光シリコンナノ粒子において、高い絶対PL量子収率を実現するための粒子構造を与える。そして、この粒子構造を有する新規なシリコンナノ粒子を活性層に用いた電流注入型発光素子を与える。
535〜1000nmの発光波長範囲で発光するシリコンナノ粒子において高いPL発光量子収率を実現するには、シリコン原子からなるダイヤモンド構造を3nm以下の球状にナノ粒子化させる必要があり、またその際に、ナノ粒子最表面まで歪みのない格子間距離を維持しつつ、非輻射遷移を引き起こす原子状点欠陥が存在しない表面を構築している必要があることを見出した。平均粒子サイズと発光波長の関係は、1.3nmの場合535nm、1.4nmの場合565nm、1.6nmの場合575nm、1.7nmの場合630nm、1.9nmの場合700nm、2.5nmの場合850nm、2.7nmの場合930nm、2.9nmの場合970nm、2.8nmの場合955nm、3.0nmの場合1000nmである。なお、平均粒子サイズと発光波長との上記関係は何れも実験的に確認されたものである。ここで、粒子径が2.5nm未満では最表面シリコン原子が有機分子と共有結合的に接合していることが、このナノ粒子最表面までダイヤモンド構造を維持させるために必要である。粒子径が2.5〜7.3nmの範囲では最表面の有機分子が存在しなくてもこのダイヤモンド構造の維持が可能である。詳細は以下の[高い発光量子収率をもたらす理由について]の項を参照されたい。
絶対PL発光量子収率については、理論的には、粒子サイズが小さい方が高くなる。実験的にもλ=700nmの量子収率は25%となり、長波長側に比べて高い値となった。理論的には、700nmの発光効率はさらに高くなると考えられるが、現状ではそこまでは達成できていない。それは以下の理由によるものであると考えられる。粒子径が小さくなるに従い単分子密度が低くなる。これは、曲率の高い粒子表面では隣り合う炭化水素鎖間で生じる疎水性相互作用の効果が充分に発現しないからである。それゆえ、大きな粒子に比べて小さな粒子では単分子終端による表面欠陥密度低減の効果は低くなる。結果として、非輻射的なエネルギー移動の抑制率も減少し、効率が理論から期待される値よりも低くなる。言い換えると、小さな粒子でも表面欠陥密度を大きな粒子と同様小さくすることができれば、発光効率は大幅に増大すると考えられる。
粒子サイズを大きくしていった場合の絶対PL発光量子収率は、実施例3で示す通り、発光波長930nmで21.2%、970nmで20.0%と、波長が長くなるにつれて絶対PL量子収率が低下した。更に発光波長1000nmでは実測されたPL量子収率が19.2%まで低下した。しかしながら、このように、発光波長を1000nmまで長くしてもまだ20%近い絶対PL量子収率が達成されること自体、驚異的なことである。
本発明で提供されるシリコンナノ粒子はストークスシフトが大きい。従って、このシリコンナノ粒子を発光層に含む電流注入型発光素子では、放射される光の再吸収の懸念なく、発光スペクトルの足し合わせが自在である。
より具体的には、本発明のシリコンナノ粒子では可視発光及び近赤外発光全てに対し、励起スペクトルは紫外域(励起極大は270〜320nm)にある。例えば、近赤外1000nmで発光する本発明のシリコンナノ粒子の励起極大波長はおよそ320nmにあるので、ストークスシフトはおよそ680nmである。この680nm幅の波長域は発光シリコンナノ粒子にとって透明窓として働くので、この波長域に他の発光スペクトルを共存させてもシリコンナノ粒子によって光吸収されることはない。それゆえに、本発明の電流注入型発光素子は次に示す利点を有する。
・従来素子で必要とされていた、発光層間での光子エネルギー移動を防ぐための技術的な工夫(例えば、微細加工技術を駆使したマイクロパターン形成や積層方向が決まった活性層形成)が必要ない。
・発光の閾値が3.5Vと低い。この閾値は、実用において要求される4.5V以下を満足する。しかし、シリコンナノ粒子の表面をシリコンの酸化物が覆っている状態では、酸化物層が絶縁膜として働くので、電子−正孔キャリアを発光シリコン層へ注入するには高い電界を必要とする。それゆえ閾値は10〜11V程度になってしまい、この要請に応えられなかった。
本発明の電流注入型発光素子は、活性層に発光性シリコンナノ粒子を具備することで、容易に疑似白色等を提供できる。ここで「等」とした理由は、素子の活性層(図8に活性層を図示する)に具備される発光スペクトルを複数足し合わせることができるので、複数の発光スペクトルから白色に限らず高い自由度で多様なスペクトルを実現できるためである。この従来の発光物質にはない特徴から、理論的には、従来の素子では実現できない「太陽光と同じ演色性を有する、つまり自然光」白色スペクトルも提供可能である。
なお、以下で説明する実施例においては発光素子の長波長側の発光物質が本発明の発光性シリコンナノ粒子であり、短波長側の発光物質は従来の発光物質を使用したが、両方の発光物質を本発明の発光性シリコンナノ粒子(ただし、発光極大波長は異なる)としてもよい。あるいは三層以上の層で発光が行われる構成とし、最も短い波長の発光物質以外は本発明の発光性シリコンナノ粒子を使用することもできる。もちろん、三層以上の全ての層の発光物質をシリコンナノ粒子とすることもできる。ここで、例えば白色光等、本発明のシリコンナノ粒子が発光できる範囲外の短波長(青色等)発光が必要な場合には、そのためのシリコンナノ粒子としては従来技術の青色発光シリコンナノ粒子を使用することができる。あるいは、単一の層が広い波長範囲で発光するように、当該層を構成する発光性シリコンナノ粒子の粒径分布が広い範囲にわたるようにしてもよい。
以下で、本発明の発光シリコンナノ粒子についての理論的な説明を与える。
[白色エレクトロルミネッセンス発光をもたらす理由について]
以下で説明する実施例に示すように、シリコンを発光層に用いた場合に白色発光が観察された。この実施例から明らかなように、発光色間の加成性に基づきエレクトロルミネッセンスの演色を制御できる。シリコンナノ粒子はこれを可能とする稀有な物質である。この効果をもたらす理由を次に述べる。
図1に、本発明で合成したシリコンナノ粒子の光吸収、フォトルミネッセンススペクトル及び発光極大に対する光励起スペクトルを示す。光吸収スペクトルと発光スペクトルの波長差をストークスシフトという。通常の有機色素や化合物半導体量子ドット及びそのナノ結晶粒子においては、ストークスシフトは短く、一般に数〜数十nm程度である。これはバンド構造(あるいはHOMO−LUMO準位)に基づく不変なものである。それゆえ、活性層に異なる発光色を呈する物質を積層すると短波長における発光の光子エネルギーを長波長発光成分が吸収してしまう。このため、白色発光とはならないし、発光色に高い演色性を付与することは難しい。また、この吸収が完全ではなく、一部が素子外部に出力されたとしても、発光素子全体の発光効率は当然低下する。
このことは例えば以下で説明する比較例2で実証される。比較例2では活性層はCdSe/ZnS発光層とPoly−TPD発光層(こちら側の発光層は正孔輸送層としても機能する)とを含む。ところが、CdSe/ZnSのストークスシフトは10nm程度と短いので、Poly−TPDからの比較的短波長の発光の光子エネルギーを吸収してしまい、CdSe/ZnSのバンドギャップに基づく発光に変換してしまう。それゆえ、目に映る発光はCdSe/ZnS層から放射される橙色発光だけとなる。
ところが、図1に示すように、シリコン発光層のストークスシフトは非常に大きい。これは間接遷移型に特有のキャリア遷移モードがナノ粒子においても遺伝するために発現するもので、バルク結晶において間接遷移型バンド構造をもつシリコンに特有な現象である(図3参照)。実際、ストークスシフトの大きさは当該発光色に限らない。図2に560〜1000nmの各波長域で発光する本発明のシリコンナノ粒子において観察されたフォトルミネッセンススペクトルの発光極大に対する光励起スペクトルを示す。図2からわかるように、発光波長が560nmから段階的に1000nmまでレッドシフトしても、励起スペクトルのレッドシフト量はわずかで、基本的に紫外域にある。重要な点は、可視−近赤外波長域で発光するシリコンナノ粒子は可視域において透明であり、可視光をほとんど吸収しないことである。それゆえ、可視−近赤外の発光スペクトルを自由に足し合わせて希望する発光スペクトル創り出すことができる。さらに演色性も自在に制御可能である。このように、シリコンナノ粒子を用いることにより、発光素子において発光色の加成性が成立する。
なお、実施例には示していないが、ゲルマニウムもシリコンと同じ発光機構を有するため、ゲルマニウムナノ粒子にも本発明が適用可能である。更に、本来発光デバイスには不向きとされるバンド構造(バルク結晶が間接遷移型バンド構造)を有する物質(鉄シリサイドなど)に対しても本発明が適用可能であると考えられる。
[高い発光量子収率をもたらす理由について]
本発明で例示するシリコンナノ粒子化においては、実空間における電子及び正孔の波動関数の重なり、そして波数空間における不確定性原理の破綻により、図3に示すようにキャリアの放射性再結合が可能となる(ゼロフォノン遷移)。さらに、小さなナノ粒子中では、キャリアである電子とホールは弱いながらもクーロン力で引き合っているため励起子を形成するので、再結合確率は大きく上がる。再結合確率を減らさないためには、次の二つの条件を満たすことが求められる。
A.非輻射遷移を誘導する表面原子状欠陥を減らすこと
B.粒子全体にわたってダイヤモンド構造を維持すること
条件Aについては、ナノ粒子表面に結合している分子の末端にある炭素原子はケイ素と同じく極性のない原子なので、炭素でキャッピングしていることは非輻射遷移の減少に大きく貢献し、フォトルミネッセンスの量子収率の増大に大きく貢献する。
条件Bについて説明すれば、粒子径が2.5nm程度(発光極大で言えば850nm程度に相当する)にまで小さくなると内部よりも表面を構成する原子の数が圧倒的に多くなるので、ナノ粒子の相構造を安定化させるためには、粒子内部から表面に向かって原子は最安定な構造をとろうと格子を歪ませ、時間経過とともに徐々にアモルファス構造へと構造緩和が起きる。この緩和はナノ粒子の粒子径に依存する。ところが、有機分子がナノ粒子表面に高密度に存在すると、有機分子同士が立体障害となり、また質量の大きな原子団が1つの表面シリコン原子に結合することで原子団は錘の役割を果たすので、表面傍原子の再配列に基づく構造緩和が抑制され、表面までダイヤモンド構造をとるようなナノ粒子となる。
構造緩和の抑制を達成した実証例を次に示す。図4は、粒子径が1.9nmで、かつオクタデカン分子で終端された本発明のシリコンナノ粒子のラマンスペクトルである。このラマンスペクトルは、511cm−1にピークトップを有する。この値は、ダイヤモンド構造を当該粒子径にナノ粒子化した時に観察される理論値とほぼ等しい。同様の効果は異なる有機分子でも得られる。図5に粒径は図4の場合と同じであるがプロピオン酸で終端された本発明のナノ粒子のラマンスペクトルを示す。このラマンスペクトルも同様の位置にピークトップを有する。これは、表面分子の逆末端に異なる官能基が付与されていても、質量の大きい原子団が単分子として1つの表面シリコン原子に結合し、さらに、その表面の有機分子が高い分子密度でナノ粒子表面を被覆すれば、有機分子自身が表面原子に対して錘の役目を果たし、さらに有機分子間で発現する立体障害効果によって、ナノ粒子表面構造の緩和が抑制されダイヤモンド構造が維持できることを示している。使用可能な有機分子をより一般的に表せば、オクタデカンを始めとする飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、アルコキシ基、プロピオン酸及びカルボキシル基からなる群から選択されてよい。ここで、隣り合う炭化水素間で起こる疎水性相互作用のために炭化水素基やアルコキシ基が最も分子密度が高くナノ粒子を終端でき、さらにナノ粒子を孤立化させる点で長鎖の炭化水素鎖を有する有機分子を使用することが望ましい。
なお、粒子径増大に伴い構造緩和は起こりにくくなる。粒子径で言えば、2.5nm以上では表面の有機分子の存在がなくてもダイヤモンド構造は維持される。ただしシリコン原子が最表面に露出した状態では酸化されてしまうので、例えば水素原子によって粒子表面は不動態化されている必要はある。それゆえ近赤外波長域で発光するナノ粒子の発光スペクトルは経時変化に伴いシフトすることはない。このことは実験的にも確認された。この実験結果を図6に示す。実験は酸化を抑制するためにアルゴン雰囲気中で保持し、PL蛍光極大の経時変化を調べた。既に説明した通り、850nm及び970nm(それぞれ黒塗四角及び黒塗三角)に蛍光極大を有する水素終端サンプルは経時変化が起こらなかった。一方で、790nm、730nm及び720nmに蛍光極大を有する水素終端サンプル(それぞれ○、△及び□)は時間の経過とともに発光がブルーシフトし、最終的に燈色発光となった。またPL波長変化の速さは粒子サイズに依存することも実験的に示された。もちろん、粒子径に関わらず、ナノ粒子表面に有機分子が存在していればシリコンの酸化が防止されるので、この有機分子の存在はこの意味で本発明のナノ粒子の安定性の向上に有益である。
これに対して、1.9nmの粒子表面を水素原子で終端した場合、ラマンスペクトルの極大は図7に示すように490cm−1付近に観察された。シリコンのアモルファス構造が480cm−1にピークトップをもつ事が知られている。495cm−1を中心としたブロードなピークは、ナノ粒子を構成する格子が、粒子中心部分においては比較的ダイヤモンド構造に近い構造を維持しつつも、表面へ向かうにつれて安定な構造を取るべく格子が大きく歪んでいることを示している。水素原子はケイ素原子よりも圧倒的にサイズも質量も小さいために、炭化水素基のような錘効果や高い分子密度を有する炭化水素分子膜のような立体障害効果を示さない。さらにこのような歪んだ結晶構造はバンド構造へも影響するために、発光ピークはシフトし、アモルファスシリコン構造が示す発光スペクトル特性である橙色になる。
以上より、上記二つの条件を満たすことが、粒子サイズに依存した発光波長を維持し、高い発光量子収率を導く構造的要因であり、このことは過去報告例のない新しい考え方である。
なお、本発明におけるシリコンナノ粒子表面の有機分子による終端の作用・効果をここで一般的に説明する。
有機分子膜中の各有機分子は錘効果、そして有機分子膜は立体障害効果を発現する。それゆえ、有機分子の分子量が大きいほど効果が高くなる。そして、有機分子膜は高密度であればあるほど立体障害効果が高くなる。両方の効果を相乗的に発現させるためには、長鎖の直鎖炭化水素鎖を採用するのが有効である。実際、直鎖オクタンに比べ直鎖オクタデカン分子膜の方がダイヤモンド構造の安定化に効果的あることが実験的に証明されている。
このような効果は、炭化水素基だけでなく、アルコキシ基にも当てはまる。有機分子が直鎖で飽和炭化水素と同じかそれ以上に高い分子密度を提供できるのであれば、酸素、窒素、フッ素原子などを含む有機分子であっても構わない。本発明にとって好適な有機分子の分子量の下限を見積もれば、上述のようにオクタン(分子量=113)よりもオクタデカン(分子量=253)の方が効果が高いので、分子量が113よりも大きいものが好ましく、分子量が253以上であるものが更に好ましい。さらに、分子密度を高くする点では、直鎖の炭化水素鎖が好ましい。
以上まとめると、有機分子の分子量が大きく有機分子膜の分子密度が高いことが望まれる。それは、錘の効果と立体障害の効果とが相乗的に発現し、ナノ粒子の最表面層から始まる原子の再配列に起因する構造緩和を抑制するからである。
以下では本発明の発光性シリコンナノ粒子、及びこれを利用した電流注入型発光素子の実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。
[発光用シリコンナノ粒子]
<実施例1>
トリアルコキシシランを加水分解することでSiO1.5前駆体を得た。当該前駆体を1100℃において1時間、真空中あるいは窒素雰囲気において加熱処理することでシリコンと二酸化シリコンへ不均化させた。このときのシリコンの粒子径は8nmほどであった。なお、この加熱処理雰囲気は実際には不活性雰囲気であれば何でもよいが、コストの点では、ここに書いたように真空中または窒素雰囲気中が有利である。次に、不均化された物質をフッ化水素含有溶液中で撹拌することで、二酸化シリコンを優先的に除去し、シリコンを得た。1.5hの撹拌によって、700nmに発光極大をもつ水素終端化シリコンナノ粒子を得た。当該ナノ粒子を1−オクタデセンを含むメシチレン溶液中、120℃下で撹拌することによって、1−オクタデセンのヒドロシリル化を行った。これにより700nmに発光極大をもつオクタデカン終端ナノ粒子を得た。その励起スペクトル、吸収スペクトル及び発光スペクトルを図1に示す。X線小角散乱により粒度分布を求めたところ、平均粒子径が1.9nmであった。フォトルミネッセンスの絶対量子収率は25%であった。
<実施例2>
トリアルコキシシランを加水分解することでSiO1.5前駆体を得た。当該前駆体を1100℃において1時間、真空中または窒素雰囲気において加熱処理することでシリコンと二酸化シリコンへ不均化させた。このときのシリコンの粒子径は8nm程度であった。次に、不均化された物質をフッ化水素含有溶液中で撹拌することで、二酸化シリコンを優先的に除去し、シリコンを得た。1.5hの撹拌によって、700nmに発光極大をもつ水素終端化シリコンナノ粒子を得た。当該ナノ粒子をアクリル酸を含む溶液中、100℃下で撹拌することによって、アクリル酸のヒドロシリル化を行った。これにより700nmに発光極大をもつカルボキシル基終端シリコンナノ粒子を得た。X線小角散乱により粒度分布を求めたところ、平均粒子径が1.9nmであった。フォトルミネッセンスの絶対量子収率は15%であった。
<実施例3>
トリアルコキシシランを加水分解することでSiO1.5前駆体を得た。当該前駆体を1200℃において2時間、真空中において加熱処理することでシリコンと二酸化シリコンへ不均化させた。このときの粒子径は10nmであった。次に不均化させた物質をフッ化水素含有溶液中で撹拌することで、二酸化シリコンを優先的に除去し、シリコンを得た。70分間と90分間の撹拌によってそれぞれ970nmおよび930nmに発光極大をもつ水素終端化シリコンナノ粒子を得た。当該ナノ粒子を1−オクタデセンを含むメシチレン中、120℃下で撹拌することによって、1−オクタデセンのヒドロシリル化を行った。これにより、それぞれ970nmおよび930nmに発光極大をもつオクタデカン終端ナノ粒子を得た。フォトルミネッセンスの絶対量子収率はそれぞれ20.0%、21.2%であった。
<比較例1>
トリアルコキシシランを加水分解することでSiO1.5前駆体を得た。当該前駆体を1100℃において1時間、真空中または窒素雰囲気において加熱処理することでシリコンと二酸化シリコンへ不均化させた。次に、不均化された物質をフッ化水素含有溶液中で撹拌することで、二酸化シリコンを優先的に除去し、シリコンを得た。二酸化シリコンを溶かすためには1時間程度の攪拌が必要であった。この1時間の間にシリコンのエッチングもある程度進むが、発光するサイズにまで小さくするために、もう30分間エッチングを継続し、1.5hの撹拌によって、700nmに発光極大をもつ水素終端化シリコンナノ粒子を得た。ところがこのナノ粒子を遠心分離器によって単離後、大気中に放置すると時間が経過するに伴い発光スペクトルがシフトし、最終的には650nmに発光極大をもつPLスペクトルとなった。X線小角散乱により粒度分布を求めたところ、平均粒子径が1.9nmであった。フォトルミネッセンスの絶対量子収率は1%であり、この値は、ピークシフト後も変化しなかった。
<比較例2>
トリアルコキシシランを加水分解することでSiO1.5前駆体を得た。当該前駆体を1200℃において2時間、真空中において加熱処理することでシリコンと二酸化シリコンへ不均化させた。このときの粒子径は10nmであった。次に不均化させた物質をフッ化水素含有溶液中で撹拌することで、二酸化シリコンを優先的に除去し、シリコンを得た。70分間と90分間の撹拌によって970nmおよび930nmに発光極大をもつ水素終端化シリコンナノ粒子をそれぞれ得た。フォトルミネッセンスの絶対量子収率はそれぞれ0.8%、1.1%であった。また、930nm発光サンプルの粒子系を粉末X線回折図形からシェラ−の式を用いて算出したところ2.7nmで、970nm発光サンプルの粒子径は2.9nmであった。
<分析方法>
ナノ粒子径を調べるために、X線小角散乱法(リガク製Nano−Viewer)を用いた。フォトルミネッセンスの絶対量子収率は、浜松フォトニクス社製カンタウルスQY(C11347−01)を用いて測定した。またナノ粒子構造はラマン分光法(ナノフォトン社製Raman−11)を用いて調べた。
<実施例1〜3と比較例1、2との比較・検討>
エレクトロルミネッセンス素子の発光層を構成するナノ粒子の発光の量子収率は高いことが望まれる。実施例1、2で得られた及び比較例1で得られた水素終端化シリコンナノ粒子の平均粒子径は何れも1.9nmと同じであったことから、シリコンナノ粒子において発現する量子サイズ効果は同程度である。それぞれのフォトルミネッセンスの発光極大がフッ化水素処理直後は700nmと一致したことも、これを強く示唆する。ところが発光の量子収率は大きく異なった。比較例1に示すところの水素原子で表面が終端されたナノ粒子の発光量子収率は1%であった。これに対して、実施例1及び2に記載のとおり、末端官能基は異なっても有機分子で終端されたナノ粒子の発光量子収率は水素終端ナノ粒子の15〜25倍の高い値であった。実施例3と比較例2との対比でも全く同じことが言える。
[電流注入型発光素子]
<実施例4>
カソード電極11となるITO(indium tin oxide)基板上へ正孔輸送層12、発光層14、電子輸送層15、アノード電極18となるAl(アルミニウム)電極と順に積層して、図8に示す電流注入型発光素子を作製した。正孔輸送層12として図9に化学構造式を示すpoly−TPD(Poly(4-butylphenyl-diphenyl-amine))を成膜した。発光層14として、実施例1で作製された700nmに発光極大を有する有機終端シリコンナノ粒子を成膜した。電子輸送層15としては酸化亜鉛を成膜した。正孔輸送層12及び電子輸送層15の成膜はスピンコーティングによって行われた。アノード電極18(Al電極)は真空蒸着した。なお、poly−TPDを含む正孔輸送層12は発光層としても機能する。下の比較例でも同様である。
<比較例3>
カソード電極21となるITO基板上へ正孔輸送層22、23、発光層24、電子輸送層25、26、アノード電極28となるAl電極と順に積層して、図10に示す電流注入型発光素子を作製した。正孔輸送層22、23としてそれぞれPEDOT:PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene) poly(styrenesulfonate))(図11の右側)及びPoly−TPD(図9)を成膜した。発光層としては600nmに蛍光極大を有するZnS/CdSeナノ粒子を成膜した。電子輸送層25としてはTPBi(2,2',2"-(1,3,5-Benzinetriyl)-tris(1-phenyl-1-H-benzimidazole)(図11の左側)を成膜し、さらに電子輸送層26としてAlq3(tris(8-hydroxyquinolinato)aluminium)(図11の中央)及びアノード電極28となるAl電極層を真空蒸着した。
<分析方法>
Al膜をアノード電極、ITO膜をカソード電極として、電圧を印加した。ITO面より放射される発光は受光器で集光した後に分光器(オーシャンホトニクス製,USB2000+:入射スリット幅200m(波長分解能=半値全幅で7.6nm))を通してエレクトロルミネッセンススペクトルを得た。
<実施例4と比較例3との比較・検討>
実施例4から得られた発光色は、理想白色に近いエレクトロルミネッセンス特性を示した。典型的なエレクトロルミネッセンススペクトルを図12に示す。スペクトルはほぼ均等に可視域全域を覆っており、理想白色に近いエレクトロルミネッセンス特性であることと一致する。共通して言えることは、スペクトルは、500nmと700nm付近に発光極大を有することである。これは、エレクトロルミネッセンススペクトルが、電極を通じて導入された電子と正孔がpoly−TPD層及びシリコンナノ粒子層各々で再結合することで放射された500nmに発光極大を有する発光と700nmに発光極大を有する発光とが足し合わされたことで創られたためである。言い換えれば、実施例3の発光素子においては、発光色の加成性が成立することが検証できた。エレクトロルミネッセンス発光の閾値は、図13に示すように3.5eVであった。この値は実用化できる程度に低い印加電圧であった。なお、図12に示すスペクトルが得られた電流注入型発光素子は、有機終端シリコンナノ粒子を成膜した発光層14の厚さを10±2nm、poly−TPDを成膜した正孔輸送層12の厚さを20±3nmとしたものである。フェルスタ−共鳴エネルギー移動を起こさせず両者のスペクトルを混合して白色を創るには、シリコンの薄膜が厚いのは好ましくない。加成性を利用するには、仕事関数の異なる複数層からの発光を足し合わせることが必要となるので、各発光層の厚みは薄くする必要がある。シリコン層が厚い場合はシリコン層からの発光が素子からの発光色を支配し、逆にpoly−TPD層が厚い場合はpoly−TPD層からの発光が素子の発光色を支配する。両層が厚い場合にはエネルギーダイヤグラムにおける底、この場合シリコン層の発光色寄与が高くなるが、同時に駆動電圧が高くなるので議論の意味があまりない。シリコン層の厚みは30nm以下で制御する必要があり、白色の場合は特に10nm程度が好適であることが実験的に確認された。
一方、比較例3で示したデバイスに電圧を印加したところ、橙色エレクトロルミネッセンス光を得た。このスペクトルの発光極大とZnS/CdSeナノ粒子のフォトルミネッセンス発光スペクトルの発光極大は一致した。これにより、比較例3においては、正孔輸送層23のPoly−TPDからのより短波長の発光が吸収されてしまい、発光素子全体の発光スペクトルには貢献しないことが確認された。
なお、比較例3のデバイスはITO膜、つまりカソード電極を通して光を外部に放出するが、ITO膜に近い側に設けられている正孔輸送層中のPoly−TPDからの発光はこのデバイスからの出力光のスペクトルには寄与していない。これはフェルスター共鳴エネルギー移動と呼ばれる現象により、EL発光色はZnS/CdSe層の発光に支配されるからである。この素子においてもPoly−TPD層の厚さが充分に厚ければ、素子からの発光色にPoly−TPD層からの発光も寄与するが、同時に素子の駆動電圧も高くなり産業応用の要求を満たせなくなる。
このメカニズムに関する詳細は非特許文献6に記載されているが、以下に具体的に説明する。2種類の発光層が近接している場合、それら発光層の間で励起エネルギーが電磁波にならず、電子の共鳴により直接移動する現象が起こる。このような現象はエネルギー供与体(Poly−TPD)の発光スペクトルと受容体(ZnS/CdSe)の光吸収スペクトルの重なり積分が大きいほど顕著化される。なぜなら当該重なり積分が大きいとフェルスター距離が大きくなるために、エネルギー移動が起こりやすくなるからである。それゆえ、比較例にある素子構成ではPoly−TPDからZnS/CdSe層へエネルギーが移動し、QDsのバンド構造に支配される蛍光が放射される。一方、シリコンの場合は、ダイヤモンド構造シリコンナノ粒子特有の大きなストークスシフト特性から、フェルスター共鳴エネルギー移動は非常に小さく、励起キャリアの直接注入量の差異で発光色が決まる。
[赤〜近赤外域(700〜1000nm)でのPL発光スペクトル]
700〜1000nmの波長範囲(可視・赤−近赤外)におけるPLスペクトルを示す。各スペクトルの立ち上がりと立ち下がりの波長位置はサンプルによってそれぞれ異なっていた。これは間接遷移型半導体結晶をナノサイズ化することで、電子の密度状態が離散化されたことを示す。さらに粒子コアのダイヤモンド構造を維持した上で、カラムクロマトグラフィー処理及び超遠心分離器を用いてサイズの単分散性を達成したところ、図14に示すように、スペクトルはいずれも対称性が高くなった。また、半価幅は従来のシリコンでは未達成の200〜350meVと狭くなった。
以上説明したように、本発明の発光性シリコンナノ粒子やそれを利用した電流注入型発光素子は高効率でまた発光色のスペクトルの調節の自由度が大きいので、照明、表示装置、その他の発光を利用する多様な分野に広く利用されることが期待される。
特開2011−249460号公報 特開2012−031346号公報 特開2010−251714号公報 特開2010−050438号公報 特開2004−031635号公報 特表2012−531062号公報
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Claims (12)

  1. 粒子径が1.4nm以上2.5nm未満の範囲であるとともに、粒子の中心から表面までダイヤモンド構造が維持され、有機分子で表面が終端された、励起光の照射により発光極大が560nm以上850nm未満の範囲で粒子径に依存して連続的に変調可能な発光性シリコンナノ粒子。
  2. 粒子径が1.3nm以上2.5nm未満の範囲であるとともに、粒子の中心から表面までダイヤモンド構造が維持され、有機分子で表面が終端された、励起光の照射により発光極大が535nm以上850nm未満の範囲で粒子径に依存して連続的に変調可能な発光性シリコンナノ粒子。
  3. 粒子径が2.5nm以上3nm以下であるとともに、粒子の中心から表面までダイヤモンド構造が維持され、励起光の照射により極大発光が850nm以上1000nm以下の範囲で、粒子径に依存して連続的に変調可能な発光性シリコンナノ粒子。
  4. 粒子径が1.9nm以上3nm以下であるとともに、粒子の中心から表面までダイヤモンド構造が維持され、励起光の照射により極大発光が700nm以上1000nm以下の範囲で、粒子径に依存して連続的に変調可能であるとともに、絶対PL発光量子収率が19.2%以上である、発光性シリコンナノ粒子。
  5. 有機分子または水素で表面が終端された、請求項3または4に記載の発光性シリコンナノ粒子。
  6. 前記有機分子は飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、アルコキシ基、オクタデカン、プロピオン酸及びカルボキシル基からなる群から選択される、請求項1、2または5の何れかに記載の発光性シリコンナノ粒子。
  7. 正孔輸送層と電子輸送層との間に発光物質として少なくとも請求項1から6の何れかに記載の発光性シリコンナノ粒子を含む発光層を設け、前記正孔輸送層と前記電子輸送層との間に電圧を印加することで発光する電流注入型発光素子。
  8. 複数の前記発光層を設け、少なくとも一層の前記発光層が前記発光性シリコンナノ粒子を含み、他の前記発光層が前記発光性シリコンナノ粒子以外の発光物質を含む、請求項7に記載の電流注入型発光素子。
  9. 前記発光層の少なくとも一つは複数の粒径の前記発光性シリコンナノ粒子の混合物を含む、請求項7または8に記載の電流注入型発光素子。
  10. 素子全体の発光のスペクトルが前記の発光層及び/または前記複数の粒径の発光性シリコンナノ粒子の各々の発光スペクトルを足し合わせたものである、請求項8または9に記載の電流注入型発光素子。
  11. 前記素子全体の発光のスペクトルは白色のスペクトルである、請求項10に記載の電流注入型発光素子。
  12. トリアルコキシシランを加水分解することでSiO1.5前駆体を得るステップと、
    前記前駆体を真空中または窒素雰囲気において加熱処理することでシリコンと二酸化シリコンへ不均化させるステップと、
    前記不均化された物質をフッ化水素含有溶液中で撹拌することで、二酸化シリコンを優先的に除去してシリコンナノ粒子を得るステップと、
    前記シリコンナノ粒子を有機分子で被覆するステップと
    を設けた、請求項1から6の何れかに記載の発光性シリコンナノ粒子の製造方法。
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