JP5595665B2 - 印刷インキ用添加剤及び当該添加剤を含む印刷インキ - Google Patents

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Description

本発明は印刷インキ用添加剤に関して、印刷インキに添加することにより、特に中性カーボンブラックを初めとする顔料分散性を改良しながら、光沢・濃度、乳化性を向上できるものを提供する。
基本的に、カーボンブラックを代表として、印刷インキに鮮明な色調、高い着色力、優れた光沢性を付与するための顔料は微細な粒子から構成される。
例えば、印刷インキで使用されるカラー用カーボンブラックの場合には、印刷物の光沢及び着色力などを向上させるため、一般に、表面に酸化処理を施した酸性カーボンブラックが使用される。
その一方で、印刷インキ用の中性カーボンブラックは価格的に安価なため、これまで汎用されてきた酸性カーボンブラックに代えて印刷インキへの適用も進んでいるが、分散性が悪いために、酸性カーボンブラックのような高い光沢、着色力、乳化性が得られ難く、また、インキ生産性も低下するという不具合があった。
そこで、印刷インキに対してカーボンブラックの顔料分散性を改善する先行技術を挙げると、特許文献1がある。
即ち、特許文献1には、油性インキ中へのカーボンブラックの分散剤として、マレイン化植物油とモノアミン又はポリアミンとの反応生成物を使用することで、新聞墨インキに混合した際の粘性を低減するだけでなく、油性インキの顔料濡れ性や流動性を改善できることが開示されている(アブストラクト、或は発明の簡潔な要約参照)。
このマレイン化植物油とモノアミン又はポリアミンとの反応生成物はマレイン化植物油のエステルイミド誘導体であると推定でき、3〜10部の無水マレイン酸と100部の植物油を約200℃に昇温させて反応させ、その後、得られたマレイン化植物油を140℃〜200℃程度の温度範囲でジアルキレンアミン又はトリアルキレンテトラミンと反応させて、植物油ベースのポリマレイン酸イミドが製造される(第3頁第30行〜第4頁第9行参照)。
具体的には、同文献1の実施例1に、コーヒー豆油と無水マレイン酸を反応させた後、トリエチレンテトラミンを反応させた生成物が、同様に、実施例2に、重合アマニ油と無水マレイン酸とジエチルアミンを反応させた生成物が夫々記載され、実施例3には、カーボンブラックを顔料とし、上記生成物を添加剤として混合して新聞インキを調製することが記載される(第5頁第1行〜同頁第30行参照)。
WO/2005/044934号公報
しかしながら、上記特許文献1に関連して、市販のマレイン化植物油、或は、大豆油などの植物油と無水マレイン酸の加熱反応物を使用して、中性カーボンブラックを印刷インキに混合しようとしても、顔料分散性は悪く、これに伴って光沢・濃度、乳化性の改善は期待できないという問題がある。
また、マレイン化植物油とポリアミンの反応生成物を使用した場合でも、中性カーボンブラックのインキ中への顔料分散性は満足できる水準にはなく、光沢・濃度、乳化性も不充分であるのが実情である。
本発明は印刷インキに添加して、特に中性カーボンブラックのような分散困難な顔料に対する顔料分散性を改良しながら、光沢・濃度、乳化性を向上できる添加剤を開発することを技術的課題とする。
前記特許文献1にあっては、無水マレイン酸と植物油を反応させてマレイン化植物油を製造し、さらにポリアミンを反応させた生成物を顔料分散剤に使用しているが、従来、この植物油を構成する脂肪酸や無水マレイン酸は、印刷インキの分野で汎用されて来たものである。
例えば、先ず、特開2000−212493号公報には、
(a)樹脂酸と、
(b)マレイン酸などの不飽和カルボン酸と、
(c)ポリオールと、
(d)大豆油やあまに油などの動植物油の脂肪酸を代表とする脂肪酸とを
反応させて得られる生成物を印刷インキ用樹脂に使用することが記載されている(請求項1)。
その際、予め上記ポリオールと脂肪酸とを反応させて水酸基含有エステル化物を得て、このエステル化物に樹脂酸と不飽和カルボン酸のディールス・アルダー付加物を反応させ、印刷インキ用樹脂を製造できることも開示される(請求項2〜4)。
印刷インキ用樹脂の具体例として、同公報の実施例2には、重合ロジンと無水マレイン酸とペンタエリスリトールとオレイン酸との反応生成物が、また、実施例3には、ペンタエリスリトールとカプロン酸とのエステル化物と重合ロジンとフマル酸との反応生成物が夫々記載される(段落40〜41)。
第二に、特開2004−269752号公報には、ロジンと、大豆油やあまに油などの動植物油の脂肪酸とをモノアルコールで部分エステル化し、これに多価アルコールとフェノールホルムアルデヒド初期縮合物とを反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂を印刷インキ用樹脂とすることが記載される(請求項1)。
その際、予めロジンと動植物油脂肪酸をマレイン酸などの不飽和カルボン酸で変性できることも開示される(請求項6)。
印刷インキ用樹脂の具体例として、同公報の実施例1には、トール油ロジンと大豆油脂肪酸とブタノールでモノエステル体を製造し、これにペンタエリスリトールと上記初期縮合物を反応させた樹脂が、実施例3には、実施例1のトール油ロジンと大豆油脂肪酸を無水マレイン酸でマレイン化することが記載される(段落63と65)。
第三に、特開2002−173634号公報には、ロジン変性フェノール樹脂をインキ用樹脂成分とする印刷インキにおいて、マレイン化油を乾性油として添加することが記載される(段落19)。
以上のように、印刷インキの分野では、動植物油脂肪酸を代表とする脂肪酸や無水マレイン酸は印刷インキ用樹脂や乾性油などの用途に汎用されて来たが、本発明者らは、この脂肪酸や無水マレイン酸、或はその類縁物を上記用途とは異なり、印刷インキ用の添加剤、具体的にはカーボンブラックなどの顔料分散剤として印刷インキの分野に適用することを鋭意研究した結果、所定の植物油又は不飽和脂肪酸と一価アルコールとのエステル交換反応及び脱水反応などから共役リノール酸含有脂肪酸エステルを得るとともに、当該共役リノール酸含有脂肪酸エステルと無水マレイン酸との加熱反応で得られる環化付加反応の生成物が、特に中性カーボンブラックに対しても優れた顔料分散性を示し、もって、光沢・濃度、乳化性を有効に改善することを見い出して、本発明を完成した。
即ち、本発明1は、顔料としてカーボンブラックを含有する印刷インキに添加可能であって、
共役酸含有脂肪酸エステルと、(無水)マレイン酸とを加熱反応して得られる環化付加反応生成物を有効成分とし、
上記共役酸含有脂肪酸エステルが、植物油にC 1 〜C 8 の一価アルコールとのエステル交換反応及び共役異性化反応を施したエステル交換生成物、植物油にC 1 〜C 8 の一価アルコールとのエステル交換反応及び脱水反応を施した生成物、植物油にエステル交換反応を施したエステル交換生成物、
不飽和脂肪酸にC 1 〜C 8 の一価アルコールとのエステル反応及び共役異性化反応を施した直接エステル化物、不飽和脂肪酸にC 1 〜C 8 の一価アルコールとのエステル反応及び脱水反応を施した直接エステル化物、不飽和脂肪酸にC 1 〜C 8 の一価アルコールとのエステル反応を施した直接エステル化物より選ばれたエステル化物の少なくとも一種であり、
当該共役酸含有脂肪酸エステルの原材料の植物油が、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、コメ油、ひまし油、脱水ひまし油、桐油より選ばれた少なくとも一種であり、
同じく共役酸含有脂肪酸エステルの原材料の不飽和脂肪酸が、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、コメ油、ひまし油、脱水ひまし油、桐油より選ばれた植物油から得られる混合脂肪酸、トール油脂肪酸、リノール酸より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする印刷インキ用顔料分散性向上添加剤である。
本発明2は、上記本発明1において、共役酸含有脂肪酸エステルの共役酸含有率が20〜100重量%であることを特徴とする印刷インキ用顔料分散性向上添加剤である。
本発明3は、上記本発明1又は2において、共役酸含有脂肪酸エステルと(無水)マレイン酸を反応させる際のモル比が、共役酸含有脂肪酸エステル1モルに対して(無水)マレイン酸が1〜4モルであることを特徴とする印刷インキ用顔料分散性向上添加剤である。
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、C 1 〜C 8 の一価アルコールが、メタノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−エチル−1−ヘキサノールの少なくとも一種であることを特徴とする印刷インキ用顔料分散性向上添加剤である。
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかにおいて、共役酸含有脂肪酸エステルが、共役リノール酸含有脂肪酸エステル又は共役リノール酸エステルであることを特徴とする印刷インキ用顔料分散性向上添加剤である。
本発明6は、上記本発明1〜5のいずれかにおいて、共役酸含有脂肪酸エステルと(無水)マレイン酸を窒素存在下、120〜250℃、1〜10時間の条件で加熱反応することを特徴とする印刷インキ用顔料分散性向上添加剤である。
本発明7は、上記本発明1〜6のいずれか印刷インキ用添加剤を含有する印刷インキであって、印刷インキ全量に対する上記添加剤の含有量が0.1〜5.0重量%であることを特徴とする印刷インキである。
本発明8は、上記本発明7において、カーボンブラックが中性カーボンブラックであることを特徴とする印刷インキである。
印刷インキに本発明の添加剤を含有させると、様々な顔料に対する顔料分散性の改善によりタックやフローを良好に保持しながら、光沢・濃度、乳化性を向上できる。
本発明の印刷インキ用添加剤は、特に、従来では分散が困難であった中性カーボンブラックに対しても優れた顔料分散性を示すため、汎用されて来た酸性カーボンブラックを安価な中性カーボンブラックに代替することで、高い光沢と着色力を実現できる。しかも、中性カーボンブラックを顔料に使用する場合、本添加剤を少量添加する(好ましい割合は0.1〜5.0重量%)ことで、酸性カーボンブラックを使用した場合と同等か、それ以上の光沢・濃度、乳化性を得ることができる。
また、本発明の添加剤は各種顔料の分散剤や様々な印刷インキ用の添加剤の外、インクジェット用顔料分散剤、トナー用顔料分散剤、塗料用顔料分散剤などにも好適であり、さらには、タイヤ用の中性カーボンブラックに対しても同様に優れた分散性を示すことから、タイヤ用途にも好適である。
本発明は、第一に、所定の植物油又は不飽和脂肪酸と一価アルコールとのエステル交換反応及び脱水反応などから得られる共役酸含有脂肪酸エステルと、無水マレイン酸とを加熱反応して得られる環化付加反応生成物を有効成分とする印刷インキ用添加剤であり、第二に、当該添加剤を含有する印刷インキである。
本発明の印刷インキ用添加剤の有効成分は、上述の通り、共役酸含有脂肪酸エステルと、無水マレイン酸とを加熱反応して得られる環化付加反応生成物である。
上記エステルに含まれる共役酸は共役リノール酸、共役トリエン酸(例えば、エレオステアリン酸)などを包含する概念であり、特に共役リノール酸が好ましい。
上記共役酸含有脂肪酸エステルとの表現は、基本的にエステルを構成する脂肪酸全体の中に共役酸が含まれていれば良いことを意味し、例えば、リノール酸のような単一脂肪酸の場合には、共役酸含有脂肪酸はそのまま共役リノール酸を意味し、トール油脂肪酸のような混合脂肪酸では、脂肪酸中に共役リノール酸などの共役酸が含まれていれば良いことを示す。本発明5に示す通り、共役酸には特に共役リノール酸が好ましく、従って、共役酸含有脂肪酸エステルとしては、共役リノールエステル(単一脂肪酸の場合)、或は共役リノール酸含有脂肪酸エステル(混合脂肪酸の場合)が好ましい。
本発明2に示すように、共役酸含有脂肪酸エステル中の共役酸の含有率は20〜100重量%が適しており、30〜80重量%が好ましく、40〜60重量%がより好ましい。当該含有率が適正範囲を越えると脂肪酸エステルが増粘して操作性が低下する恐れがあり、適正範囲より少ないと印刷インキの製造に際して顔料分散性、光沢・濃度などの改善効果が出ない恐れがある。
本発明の共役酸含有脂肪酸エステルは、植物油を出発原料とする場合と植物油由来の不飽和脂肪酸を出発原料とする場合に分けて説明すると、次の(a)〜(f)を単用又は併用できる。
(a)植物油にC1〜C8の一価アルコールとのエステル交換反応及び共役異性化反応を施したエステル交換生成物
(b)植物油にC1〜C8の一価アルコールとのエステル交換反応及び脱水反応を施した生成物
(c)植物油にエステル交換反応を施したエステル交換生成物
(d)不飽和脂肪酸にC1〜C8の一価アルコールとのエステル反応及び共役異性化反応を施した直接エステル化物
(e)不飽和脂肪酸にC1〜C8の一価アルコールとのエステル反応及び脱水反応を施した直接エステル化物
(f)不飽和脂肪酸にC1〜C8の一価アルコールとのエステル反応を施した直接エステル化物より選ばれたエステル化物
但し、油脂(即ち、植物油自体=トリグリセリド)も上位概念では脂肪酸エステルに属するとも解されるが、本発明にあっては、油脂は本発明の共役酸含有脂肪酸エステルの概念から排除される。
上記共役酸含有脂肪酸エステルのうち、植物油を用いてエステル交換生成物(a)を得る場合には、エステル交換反応及び共役異性化反応を施すことで製造でき、その際の手順としては、エステル交換→共役異性化、共役異性化→エステル交換の両方を含む。共役異性化反応は2個以上の二重結合の位置を転移させて共役化する(つまり、共役ジエン構造を形成する)反応をいう。
また、植物油を用いてエステル交換生成物(b)を得る場合には、エステル交換反応及び脱水反応を施すことで製造でき、その手順としてはエステル交換→脱水、脱水→エステル交換の両方を含む。
次いで、植物油を用いてエステル交換生成物(c)を得る場合には、所定のアルコールとの間でエステル交換反応のみを施すことになる。
一方、植物油に替えて、不飽和脂肪酸を用いて直接エステル化物(d)を得る場合には、エステル反応及び共役異性化反応を施すことで製造でき、その手順としては、エステル反応→共役異性化、共役異性化→エステル反応の両方を含む。
また、不飽和脂肪酸を用いて直接エステル化物(e)を得る場合には、エステル反応及び脱水反応を施すことで製造でき、その手順としては、脱水反応→エステル反応、エステル反応→脱水反応の両方を含む。
次いで、不飽和脂肪酸を用いてエステル交換生成物(f)を得る場合には、所定のアルコールとの間でエステル反応のみを施すことになる。
本発明において、上記植物油は、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、コメ油、ひまし油、脱水ひまし油、桐油の少なくとも一種から選択される
また、上記不飽和脂肪酸は、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、コメ油、ひまし油、脱水ひまし油、桐油より選ばれた植物油から得られる混合脂肪酸、トール油脂肪酸、リノール酸の少なくとも一種から選択される
例えば、植物油がサフラワー油、大豆油などの場合、これらはリノール酸を多く含むが、共役リノール酸は含まないため、植物油を共役異性化してからエステル交換するか、エステル交換してから共役異性化して、共役酸含有脂肪酸エステルを製造する。
次いで、植物油がひまし油の場合、リシノール酸(複数のエン結合はなく、モノエン結合と水酸基があるだけなので、共役異性化できない)を多く含むため、リシノール酸のトリグリセリドでは、脱水により共役リノール酸などの共役ジエン酸にしてからエステル交換するか、エステル交換してから脱水して、共役酸含有脂肪酸エステルを製造する。
植物油が脱水ひまし油の場合には、共役ジエン酸又はそのトリグリセリドを主成分とするため、(遊離脂肪酸としての)共役ジエン酸では直接エステル化して共役酸含有脂肪酸エステルを製造するが、共役ジエン酸のトリグリセリドでは、エステル交換して共役酸含有脂肪酸エステルを製造する。
植物油が桐油の場合、主成分は共役トリエン酸(エレオステアリン酸)又はそのトリグリセリドであるため、一価アルコールとの直接エステル化、又はエステル交換により共役トリエン酸含有脂肪酸エステルを製造する。
一方、不飽和脂肪酸がサフラワー油脂肪酸やトール油脂肪酸などの場合には、不飽和脂肪酸を共役異性化してからエステル化するか、エステル化してから共役異性化して、共役酸含有脂肪酸エステルを製造する。
また、不飽和脂肪酸がひまし油脂肪酸の場合、脱水により共役リノール酸にしてからエステル化するか、エステル化してから脱水して、共役酸含有脂肪酸エステルを得る。
不飽和脂肪酸が単一脂肪酸であるリノール酸の場合、共役異性化してからエステル化するか、エステル化してから共役異性化して共役酸エステルを製造する。
但し、エステル化(又はエステル交換)と共役異性化で共役酸含有脂肪酸エステルを得る場合、水酸化カリウムなどの塩基及びエチレングリコールを用いて共役異性化すると、油脂などがケン化で脂肪酸にまで分解される恐れが大きいため、共役異性化してからエステル化(又はエステル交換)する、つまり、共役異性化を先に行い、最後にエステル化又はエステル交換を行う方が好ましい。
上記エステル交換反応や直接エステル化反応で用いるC1〜C8の一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ヘプタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等の直鎖および分岐飽和アルコールを単用又は併用でき、特に、メタノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−エチル−1−ヘキサノールが好適である(本発明4参照)。
8を越える一価アルコールはコスト高であるうえ、C8を越えて直鎖が過剰に長くなると乳化性が損なわれる恐れがある。
尚、乳化性の見地から、当該一価アルコールでは直鎖アルコールより分岐アルコールが好ましい。また、直接エステル化に際しては、C4〜C8の一価アルコールを使用するのが好ましい。
本発明にあっては、共役酸含有脂肪酸エステルと反応させる相手方は(無水)マレイン酸である。(無水)マレイン酸は無水マレイン酸、マレイン酸を包含する概念であり、無水マレイン酸が好ましい。
即ち、本発明の環化付加反応において、(無水)マレイン酸に代えて、フマル酸、(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸などの他の不飽和カルボン酸を用いると、反応性や収率が低く、また、反応後の系からの除去が容易でない。
このため、本発明にあっては、不飽和カルボン酸は(無水)マレイン酸に限定される。
本発明は、上述のように、植物油にエステル交換及び共役異性化などを施すか、植物油に由来する不飽和脂肪酸にエステル反応及び共役異性化などを施して得られる共役酸含有脂肪酸エステルと(無水)マレイン酸との間で環化付加反応を行うことを特徴とする。
前述した通り、上記共役異性化反応は2個以上の二重(エン)結合の位置を転移させて共役化する反応をいう。
例えば、リノール酸の共役異性化は、公知の方法を採用することができ、水酸化カリウムやナトリウムメトキシド等のアルカリを使用する方法、ヨウ素やヨウ化物を使用する方法、金属触媒、金属錯体触媒、芳香族硫黄化合物触媒、活性白土等の粘土触媒等が知られている。
但し、前述したように、例えば、植物油がひまし油の場合、モノエン結合と水酸基を有する(つまり複数のエン結合がない)リシノール酸を主成分とするため、共役異性化はできず、リシノール酸を脱水処理することにより共役ジエン構造を形成させて、(無水)マレイン酸とのディールズ・アルダー付加反応を行わせることになる。
本発明の環化付加反応では、例えば、特殊な触媒の存在などを前提とせず、加熱反応を基本とするため、環化付加による環式化合物が主に生成するものと推定できるが、その一方、エン付加反応の生成物が副生することを排除するものではなく、本発明の反応生成物にはエン付加反応生成物が混在しても差し支えない。
即ち、本発明の環化付加反応は、共役ジエン(diene)とオレフィンなどの2π電子系(dienophile)との間で行われるディールズ・アルダー反応であり、2本の結合手により環式化合物が生成することになる。
これに対して、エン付加反応はアリル位に水素をもつアルケン(ene)と、アルケンやカルボニル基などの2π電子系(enophile)との間でσ結合の形成を伴う水素移動が起こる反応であり、不飽和脂肪酸エステルの不飽和結合(二重結合が基本)に無水マレイン酸が1本の結合手で付加するのに伴い、無水マレイン酸は飽和のコハク酸骨格に転換して、コハク酸無水物の誘導体が生成することを基本原理とする(このため、環式化合物は生成しない)。
従って、脂肪酸エステルの不飽和結合(二重結合が基本)が少なくとも1個あれば足りるエン付加反応とは異なり、本発明のディールス・アルダー付加反応では、上記不飽和結合に共役ジエン構造を有することが必要になる。
そこで、環化付加反応における共役酸含有脂肪酸エステルと無水マレイン酸との仕込みのモル比率を述べると、本発明3に示すように、共役酸含有脂肪酸エステル1モルに対して無水マレイン酸が1〜4モルであることが好ましく、より好ましくは1.2〜2.5モルである。
即ち、環化付加反応をより確実に進行させる見地から、(無水)マレイン酸は共役酸含有脂肪酸エステルに対して過剰のモル比で反応させることが好ましい。
本発明6に示す通り、本発明の環化付加反応にあっては、不活性ガス雰囲気下(窒素存在下)、キシレン等の溶剤の存在下、あるいは非存在下で撹拌しながら120〜250℃、1〜10時間の条件で反応させるのが適当である。反応温度は150〜220℃が好ましく、反応時間は2〜8時間が好ましい。未反応の(無水)マレイン酸は常法により水洗、蒸留等により除去することができる。
本発明の印刷インキ用添加剤は、上記環化付加反応での粗生成物の状態で使用可能であるが、さらに蒸留等により当該粗生成物から共役酸含有脂肪酸エステル・無水マレイン酸の環化付加反応生成物を単離精製したものを使用できることは勿論である。
本発明の印刷インキに使用するインキワニスは、印刷インキ用樹脂と石油系溶剤を配合し、必要に応じて、植物油、ゲル化剤を配合して調製される。
その調製方法としては、例えば、上記樹脂、石油系溶剤、植物油を不活性ガス存在下、或は非存在下に、180〜220℃で溶解し、ゲル化剤を加えてさらに180〜220℃で加熱して調製する。
上記印刷インキ用樹脂としては、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、マレイン酸変性ロジンエステル樹脂、石油樹脂、ギルソナイト樹脂、アルキド樹脂、ロジン変性アルキド樹脂などの公知の樹脂を単用又は併用できる。
その使用量はインキワニスの全量に対して30〜60重量%が適当であり、好ましくは35〜55重量%、より好ましくは40〜50重量%である。
前記石油系溶剤としては、芳香族成分が1重量%以下の石油留分から得られるパラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系などの溶剤を単用又は併用できる。
上記溶剤の市販品としては、0号ソルベント(H)、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号(ともに新日本石油(株)製)などが挙げられる。
使用量としては従来公知の印刷インキと同様で良く、インキワニス中に30〜60重量%が適当であり、好ましくは40〜50重量%である。
また、石油溶剤の全部又は一部を、植物油と一価アルコールとをエステル交換、或は脂肪酸と一価アルコールとを直接エステル化した脂肪酸エステルに置き換えて、使用することも可能である。
前記植物油としては、アマニ油、桐油、大豆油などの乾性油、或は半乾性油が好適である。使用量としては、インキワニス中に1〜30重量%が適当であり、好ましくは3〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
前記ゲル化剤としては公知のものが使用でき、例えば、アルミニウムエチルアセテートジイソプロピレート、アルミニウムイソプロピレート、ステアリン酸アルミニウム、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロポキサイト、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシドなどが挙げられる。使用量としては、0.1〜5.0重量%が適当であり、好ましくは0.5〜3.0重量%である。
本発明の印刷インキは上記インキワニスに、公知の顔料と本発明の環化付加反応生成物を有効成分とする添加剤とを添加して調製される(本発明7参照)。
顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、磁性酸化鉄などの無機顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、イソインドリン顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料などの有機顔料、酸性及び中性カーボンブラック及び染料などが挙げられ、これらを単用又は併用できる。本発明8に示す通り、本発明の印刷インキ用添加剤は特に中性カーボンブラックに対する顔料分散性に優れるため、安価な中性カーボンブラックを顔料に使用することで、酸性カーボンブラックに比しても遜色のない光沢・濃度及び乳化性を実現できる。
顔料の使用量としては従来公知の印刷インキと同様で良く、通常、印刷インキ100重量%中に5〜40重量%が適当であり、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%である。
本発明で使用される共役酸含有脂肪酸エステルと、無水マレイン酸とを加熱反応して得られる環化付加反応生成物は単用又は併用できる。
上記環化付加反応生成物(印刷インキ用添加剤)の含有量は印刷インキ100重量%に対して0.1〜5.0重量%が適当であり(本発明7参照)、好ましくは0.2〜3重量%、より好ましくは0.5〜2重量%である。含有量が0.1重量%に満たないと、本発明の印刷用添加剤の効果が充分でなく、5.0重量%を超えて添加しても、それに見合う効果が期待できない。
尚、本発明の印刷インキ中のインキワニス含有量は50〜90重量%が適当であり、好ましくは55〜85重量%、より好ましくは60〜80重量%である。
そこで、本発明の印刷インキ用添加剤を使用した印刷インキの製造方法を述べると、例えば、上記インキワニス、本発明の印刷インキ用添加剤、上記顔料をミキサーでプレミキシングし、次に、三本ロールミルで均一に混練して、前記インキワニスに用いた溶剤及び/又は当該ワニスを追加するなどして、インキのタックを調整する。あるいは、上記インキワニスの製造後に本発明の印刷インキ用添加剤を所定量添加し、この混合物を顔料と混練して、印刷インキを製造しても良い。
また、必要に応じてパラフィンワックス、ポリエチレンワックスなどの耐摩擦剤、BHTなどの酸化防止剤、ナフテン酸マンガンなどの乾燥補助剤等を配合できることはいうまでもない。
本発明の環化付加反応生成物を有効成分とする添加剤は、各種印刷インキに添加することで特に分散困難な中性カーボンブラックのような顔料の分散性が改良され、光沢・濃度及び乳化性が良好に向上し、もってオフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷などの任意の印刷インキに適用可能である。
また、本発明の添加剤は印刷インキへの適用にとどまらず、あらゆる分野での利用が可能であり、印刷インキ用以外では、例えば、インクジェット用顔料分散剤、塗料用顔料分散剤、各種プラスチック用可塑剤、帯電防止剤、防曇剤、潤滑油などの分野での利用が期待できる。
以下、本発明の共役リノール酸含有脂肪酸エステルと無水マレイン酸との環化付加反応生成物(印刷インキ用添加剤)の合成例、当該合成例で得られた添加剤を含有する印刷インキの実施例、当該実施例で得られた印刷インキの顔料分散性、光沢、濃度、乳化性などの評価試験例を順次説明する。合成例、実施例、試験例中の「部」、「%」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は下記の合成例、実施例、試験例などに拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
《環化付加反応生成物の合成例》
下記の合成例1〜4のうち、合成例1は共役リノール酸メチルと無水マレイン酸を環化付加反応させた例、合成例2は合成例1と同様の生成物から得られた粗生成物をさらに精製した例、合成例3は共役化トール油脂肪酸ブチルと無水マレイン酸を環化付加反応させた例、合成例4は脱水ひまし油脂肪酸メチルと無水マレイン酸を環化付加反応させた例である。
また、比較合成例1は共役化大豆油と無水マレイン酸を環化付加反応させた例、比較合成例2は共役化トール油脂肪酸と無水マレイン酸を環化付加反応させた例である。
そこで、本発明の環化付加反応を行う対象の反応物である共役酸含有脂肪酸エステルの調製例を以下に説明する。
《共役酸含有脂肪酸エステルの調製例》
(A)共役リノール酸メチルの調製例
先ず、サフラワー油(日清オイリオグループ(株)製)1000gを常法によりエステル交換し、サフラワー油脂肪酸メチル(リノール酸78.2%含有)802gを得た。これを尿素付加分別法により処理し、その母液部を精留してガスクロマトグラフィーによる純度が99.3%のリノール酸メチル(ケン化価190.4、ヨウ素価171.8)480gを得た。
次いで、このリノール酸メチル440gをエチレングリコール864mlに水酸化カリウム248gを溶かした溶液に加え、窒素気流下、180℃で13時間撹拌した。これに水1920ml、濃塩酸272mlを加えて均一化し、ヘキサン1600mlづつで3回抽出した。ヘキサン抽出液を数回水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ヘキサンを留去し、共役リノール酸432gを得た。
これにメタノール中4%の塩酸を含む溶液1320mlを加え、窒素気流下、60℃で30分間撹拌した。これにヘキサン1600mlづつで3回抽出した。ヘキサン抽出液を数回水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ヘキサンを留去し、ガスクロマトグラフィーによる純度97.2%の共役リノール酸メチル(ケン化価189.8、ヨウ素価170.6)430gが得られた。
尚、この共役リノール酸メチルの純度は共役リノール酸異性体含有量の合計値である。また、後述の調製例(B)〜(D)における共役酸含有量についても同様に異性体の合計値として定義される。
ガスクロマトグラフィーの条件は次の通りである。
装置:7890A GC System Agilent Technologies社製
カラム:ZB−WAX 30m×0.25mm×0.25μm phenomenex社製
カラム温度:170℃→210℃、1.5℃/分
キャリアガス:ヘキサン 1ml/分
検出器:FID
検出器の注入口温度:250℃
スプリット比:1/100
(B)共役化トール油脂肪酸ブチルの調製例
トール油脂肪酸(ハートールFA−1;ハリマ化成(株)製)500g、1−ブタノール153g、p−トルエンスルホン酸0.7gを仕込み、窒素を導入しながら200℃で酸価3以下に到達するまで加熱撹拌した。その後、20Torrの減圧下で未反応アルコール等を除去し、次いで水蒸気蒸留を行い、トール油脂肪酸ブチル(酸価2.5、ケン化価168.5、ヨウ素価111.0)560gを得た。
このトール油脂肪酸ブチル(リノール酸35.9%、共役リノール酸6.1%含有)340g、1,1′−ジチオ−ジ−2−ナフトール3.4gを加え、窒素気流下、240℃で2時間撹拌した。次いで、20Torrで10分間減圧した。上記(A)の条件でのガスクロマトグラフィーによりリノール酸が完全に消失したことを確認し、共役リノール酸を25.0%含有する共役化トール油脂肪酸ブチル(ケン化価163.9、ヨウ素価110.4)338gが得られた。
(C)脱水ヒマシ油脂肪酸メチルの調製例
脱水ヒマシ油(ケン化価189.3、ヨウ素価142.0)889g(1モル;ケン化価より算出)を、メタノール中1.5%の水酸化ナトリウムを含む溶液288mlに加え、60℃で2時間エステル交換を行った。10%硫酸で中和後、数回水洗を行い、110℃で減圧下脱水し、共役ジエン酸を35.4%含有する脱水ヒマシ油脂肪酸メチル(ケン化価189.9、ヨウ素価147.1)695gが得られた。
(D)共役化トール油脂肪酸の調製例
トール油脂肪酸(リノール酸36.2%、共役リノール酸5.9%含有)300g、1,1′−ジチオ−ジ−2−ナフトール3.0gを加え、窒素気流下、240℃で2時間撹拌した。次いで、20Torrで10分間減圧した。前記(A)の条件によるガスクロマトグラフィーにより、リノール酸が完全に消失したことを確認し、共役リノール酸を26.3%含有する共役化トール油脂肪酸(中和価166.6、ヨウ素価112.2)338gが得られた。
(1)合成例1
撹拌機、温度計、冷却器、窒素導入器を備えた四つ口フラスコに、前記(A)で得られた共役リノール酸メチル296g(1モル;ケン化価より算出)、無水マレイン酸118g(1.2モル)を仕込み、キシレン環流下、180℃、4時間の条件で加熱した。
その後、未反応無水マレイン酸を水洗除去し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧留去し、粗反応生成物368gを得た。
(2)合成例2
合成例1で得られた粗反応物20gについてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、n−ヘキサン/ジエチルエーテル(7:3)で溶出するフラクション15gを分取した。
(3)合成例3
撹拌機、温度計、冷却器、窒素導入器を備えた四つ口フラスコに、前記(B)で得られた共役化トール油脂肪酸ブチル342g(1モル;ケン化価より算出)、無水マレイン酸147g(1.5モル)を仕込み、220℃で2時間加熱した。
その後、未反応無水マレイン酸を水洗除去し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧留去し、粗反応生成物426gを得た。
(4)合成例4
撹拌機、温度計、冷却器、窒素導入器を備えた四つ口フラスコに、前記(C)で得られた脱水ヒマシ油脂肪酸ブチル295g(1モル;ケン化価より算出)、無水マレイン酸147g(1.5モル)を仕込み、220℃で2時間加熱した。
その後、未反応無水マレイン酸を水洗除去し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧留去し、粗反応生成物389gを得た。
(5)比較合成例1
撹拌機、温度計、冷却器、窒素導入器を備えた四つ口フラスコに、大豆白絞油(ケン化価189.5、ヨウ素価131.2g)888g(1モル;ケン化価より算出)、無水マレイン酸196g(2.0モル)、全量に対して10%の活性白土(ガレオンアースH;水澤化学工業(株)製)を仕込み、キシレン環流下、180℃で8時間加熱した。
その後、活性白土を除去し、未反応無水マレイン酸を水洗除去し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧留去し、粗反応生成物910gを得た。
(6)比較合成例2
撹拌機、温度計、冷却器、窒素導入器を備えた四つ口フラスコに、前記(D)で得られた共役化トール油脂肪酸337g(1モル;中和価より算出)、無水マレイン酸118g(1.2モル)を仕込み、180℃で4時間加熱した。
その後、未反応無水マレイン酸を水洗除去し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶剤を減圧留去し、粗反応生成物405gを得た。
《合成例2で得られた生成物の構造解析例》
前記合成例2で得られた精製物をIRスペクトル、1H−NMRスペクトルなどにより構造を確認した。
(1)IRスペクトル
IR(KBr)cm-1:1853,1782,1738,1203,1071,923,730
(2)NMRスペクトル
1H−NMR(CDCl3):0.9ppm,1.3〜1.5,1.55〜1.7,1.8,2.2〜2.4,3.2,3.4,3.7,5.8
IRスペクトルでは、1853、1782、923cm-1に環式酸無水物のC=O伸縮振動、また、1203、1071、923cm-1に環式酸無水物のC−O伸縮振動の各吸収帯が認められた。
1H−NMRでは、化学シフト=5.8ppmにシクロヘキセン環のオレフィンのプロトンに帰属されるシグナル、3.4と3.2ppmにカルボメトキシ基による二重線のメチンプロトンのシグナル、2.2ppmにシクロヘキセン環のオレフィンのα−メチンプロトンが確認された。
これにより、共役リノール酸メチルと無水マレイン酸の加熱反応で得られた生成物は、ディールズ・アルダー付加反応による環式化合物であることが確認できた。
そこで、下記の通り、印刷インキ用樹脂に植物油、溶剤などを配合してインキワニスを調製した後、上記合成例1〜4並びに比較合成例1〜2で得られた各印刷インキ用添加剤の存在下に中性カーボンブラック(顔料)を配合して、印刷インキを製造した。
《インキワニスの調製例》
ロジン変性フェノール樹脂(ハリマ化成(株)製、ハリフェノールP−700)43部、大豆油20部、AFソルベント6号(新日本石油(株)製)37部を反応容器に加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃、30分間で溶解させた。
次に100℃に冷却し、アルミキレート(ALCH、川研ファインケミカル(株)製)1.0部を添加した。
そして、これらの混合物を180℃、60分間加熱して、インキワニスを得た。
《印刷インキの製造実施例》
下記の実施例1〜4のうち、実施例1は上記合成例1の添加例、実施例2は上記合成例2の添加例、実施例3は上記合成例3の添加例、実施例4は上記合成例4の添加例である。
一方、下記の比較例1〜3のうち、比較例1は比較合成例1の添加例、比較例2は比較合成例2の添加例、比較例3は添加剤を含有しないブランク例である。
また、図1には、実施例1〜4及び比較例1〜3の印刷インキについて、インキ組成、タック、フローをまとめた。
(1)実施例1
上記調製例のインキワニス60部、中性カーボンブラック(三菱化学(株)製、RCF#52)18部、前記合成例1の印刷インキ用添加剤を1部添加し、三本ロールを用いて均一に混練した。次に、さらに、上記インキワニス及び石油系溶剤を追加して、均一に混合して印刷インキを製造した。
(2)実施例2〜4及び比較例1〜3
上記実施例1を基本として、添加剤の種類並びに含有量を図1に示す通りに変更し、それ以外は実施例1と同様の条件で処理して、印刷インキを製造した。
また、上述したように、比較例3のブランク例において、顔料として実施例1と同種の中性カーボンブラックを使用した。
《印刷インキの評価試験例》
次いで、上記実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた各印刷インキについて、下記に示す顔料分散性試験、並びに各種インキ特性試験を行った。
(a)印刷インキ用添加剤による顔料分散性
三本ロールにて混練した上記インキ5gを採り、これにテトラヒドロフラン50gを加えて溶解し、ろ紙クロマト用添加槽に移し、槽内を飽和させた。
次いで、20×190mmのクロマト用ろ紙を1cm浸けて10cm展開させ、下式の展開率Rfにより顔料分散性を評価した(Rfが大きいほど顔料分散性は良好である)。
Rf=色素の展開距離(cm)/テトラヒドロフランの展開距離(10cm)
(b)インキ特性評価
(1)タック
インコメーター(東洋精機(株)製)を使用して、インキ量1.3cc、ローラー温度30℃、回転数400rpmの条件で、1分後の値を測定した。
(2)フロー60s
離合社(株)製のスプレッドメーターにより、インキの拡がり(直径:mm)を測定した。
(3)光沢性
インキ0.3mlを使用して、(株)明製作所製のRIテスターにてアート紙に展色し、25℃、60%RHの恒温恒湿室内にて24時間乾燥し、展色試料を作製した。
光沢性は、村上色彩技術研究所製の光沢計(入射角/反射角=60°/60°)で測定した。
(4)濃度
光沢測定と同一の展色紙を反射濃度計を用いて濃度を測定した。
(5)乳化性
リソドロニック乳化試験機(Novocontrol社製)を用いて、40℃において、25gの上記印刷インキに2ml/分の速度で水を添加し、インキが飽和した時点での水分量を測定した。
尚、インキが過乳化するとインキの凝集力が小さくなるため、汚れ、ブランケットパイリング等の不具合が発生し易くなる。従って、本装置で測定した場合の最大乳化率が10〜50%の範囲にある印刷インキが前記不具合を削減する効果があると考えられる。
図1には印刷インキの組成、タック及びフローをまとめたが、共役化トール油脂肪酸と無水マレイン酸の環化付加反応生成物を添加剤とする比較例2では、タック値がかなり大きくなり、他の実施例や比較例に比してインキの調子が合わなかった。
図2は印刷インキ用添加剤による顔料分散性の評価試験結果、図3は印刷インキの特性評価試験結果である。
図2の顔料分散性を見ると、本発明の添加剤を含まない比較例3に比して、マレイン化大豆油を添加剤とする比較例1は分散性の面で劣り、また、共役化トール油脂肪酸と無水マレイン酸の環化付加反応生成物を添加剤とする比較例2では、分散性の改善はわずかであった。
これに対して、共役酸含有脂肪酸エステルと無水マレイン酸との環化付加反応生成物を添加剤とする実施例1〜4にあっては、共役酸含有脂肪酸エステルが共役リノール酸メチルである実施例1〜2、同エステルが共役化トール油脂肪酸ブチルである実施例3、或は脱水ヒマシ油脂肪酸メチルである実施例4のいずれにおいても、比較例3に比して顔料分散性が大きく改善されることが分かった。
図3のインキ特性を見ると、本発明のインキ用添加剤を含まない比較例3に比して、比較例1は光沢、濃度、乳化性で劣り、比較例2は光沢、濃度で余り改善は認められなかった。
これに対して、実施例1〜4は比較例3に比して、光沢、濃度、乳化性のすべてに優れる結果となった。この点を詳述すると、実施例2に比して実施例1のインキ特性はあまり遜色がないため、環化付加反応生成物は精製前の粗生成物の段階でもインキ特性の改善に有効に寄与することが分かった。また、サフラワー油に由来した共役リノール酸メチル、トール油脂肪酸に由来した共役化トール油脂肪酸ブチル、或は脱水ヒマシ油由来の脱水ヒマシ油脂肪酸メチルのいずれの共役酸含有脂肪酸エステルについても、その種類を問わず、無水マレイン酸との環化付加反応生成物を添加することで、インキ特性を遜色のない状態で向上できることが明確に裏付けられた。
以上の通り、本発明の環化付加反応物を有効成分とする添加剤は、印刷インキの光沢・濃度、および乳化性を良好に向上させるため、印刷インキ用添加剤として好適であるばかりでなく、インクジェット用顔料分散剤、トナー用顔料分散剤、塗料用顔料分散剤などの様々な分野でも有効利用が期待できる。
実施例1〜4並びに比較例1〜3の印刷インキについての組成、タック及びフローの試験結果をまとめた図表である。 実施例1〜4並びに比較例1〜3の印刷インキについて、使用した印刷インキ用添加剤による顔料分散性の評価試験結果をまとめた図表である。 実施例1〜4並びに比較例1〜3の印刷インキについての光沢、濃度、乳化性の評価試験結果をまとめた図表である。

Claims (8)

  1. 顔料としてカーボンブラックを含有する印刷インキに添加可能であって、
    共役酸含有脂肪酸エステルと、(無水)マレイン酸とを加熱反応して得られる環化付加反応生成物を有効成分とし、
    上記共役酸含有脂肪酸エステルが、植物油にC 1 〜C 8 の一価アルコールとのエステル交換反応及び共役異性化反応を施したエステル交換生成物、植物油にC 1 〜C 8 の一価アルコールとのエステル交換反応及び脱水反応を施した生成物、植物油にエステル交換反応を施したエステル交換生成物、
    不飽和脂肪酸にC 1 〜C 8 の一価アルコールとのエステル反応及び共役異性化反応を施した直接エステル化物、不飽和脂肪酸にC 1 〜C 8 の一価アルコールとのエステル反応及び脱水反応を施した直接エステル化物、不飽和脂肪酸にC 1 〜C 8 の一価アルコールとのエステル反応を施した直接エステル化物より選ばれたエステル化物の少なくとも一種であり、
    当該共役酸含有脂肪酸エステルの原材料の植物油が、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、コメ油、ひまし油、脱水ひまし油、桐油より選ばれた少なくとも一種であり、
    同じく共役酸含有脂肪酸エステルの原材料の不飽和脂肪酸が、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、コメ油、ひまし油、脱水ひまし油、桐油より選ばれた植物油から得られる混合脂肪酸、トール油脂肪酸、リノール酸より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする印刷インキ用顔料分散性向上添加剤。
  2. 共役酸含有脂肪酸エステルの共役酸含有率が20〜100重量%であることを特徴とする請求項1に記載の印刷インキ用顔料分散性向上添加剤。
  3. 共役酸含有脂肪酸エステルと(無水)マレイン酸を反応させる際のモル比が、共役酸含有脂肪酸エステル1モルに対して(無水)マレイン酸が1〜4モルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷インキ用顔料分散性向上添加剤。
  4. 1 〜C 8 の一価アルコールが、メタノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−エチル−1−ヘキサノールの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷インキ用顔料分散性向上添加剤。
  5. 共役酸含有脂肪酸エステルが、共役リノール酸含有脂肪酸エステル又は共役リノール酸エステルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷インキ用顔料分散性向上添加剤。
  6. 共役酸含有脂肪酸エステルと(無水)マレイン酸を窒素存在下、120〜250℃、1〜10時間の条件で加熱反応することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷インキ用顔料分散性向上添加剤。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の印刷インキ用添加剤を含有する印刷インキであって、印刷インキ全量に対する上記添加剤の含有量が0.1〜5.0重量%であることを特徴とする印刷インキ。
  8. カーボンブラックが中性カーボンブラックであることを特徴とする請求項7に記載の印刷インキ。
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