JP5425390B2 - 印刷インキ用添加剤及び当該添加剤を含む印刷インキ - Google Patents
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Description
従って、オフセット印刷インキの非水系ビヒクルにこの微細粒子からなる顔料を分散させると、流動性、貯蔵安定性の良い分散体を得ることが難しく、製造工程並びに製品の品質に問題を引き起こす恐れがある。例えば、微細粒子からなる顔料を含む分散体はしばしば高粘性を示すため、分散機から製品を取り出したり、輸送することが困難になったり、貯蔵中にゲル化して使用できなくなるなどの恐れがある。さらに展色物においては、光沢の著しい低下やレベリング不良などを引き起こすこともある。
その従来技術を挙げると、次の通りである。
(1)特許文献1
カーボンブラックを含有するオフセット印刷用墨インキにおいて、優れた印刷適性と高い流動性を具備させる目的で(段落1と5)、C16〜C20のヒドロキシカルボン酸(12−ヒドロキシステアリン酸など:請求項2、段落11)を縮合して得られる重量平均分子量1千〜1万のポリエステル又はその変性物とギルソナイトからなる顔料分散剤をカーボンブラックに対して2.0〜50重量%の割合で含有させることが開示されている(請求項1)。
上記縮合ポリエステルの変性物は、ポリエステルのカルボキシル基にモノ又はポリオールを反応させたものであり、モノ或はポリオールとして、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコールなどのモノオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのポリオールが列挙されている(段落13〜14)。
例えば、同文献1の実施例11には、12−ヒドロキシステアリン酸の縮合ポリエステルとラウリルアルコールの反応生成物が記載されている(段落36)。
光沢性、貯蔵安定性、顔料分散性の向上などを目的として(段落4)、縮合度が2以上の縮合ヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステルを分散剤とするインキ組成物が記載されている(請求項1)。
上記ヒドロキシ脂肪酸にはリシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸などが列挙され、多価アルコールにはペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール、トリペンタエリスルトール、ポリグリセリンなどが列挙されている(段落3)。
例えば、同文献2の実施例3には、12−ヒドロキシステアリン酸の縮合物とトリペンタエリスリトールとの反応生成物が開示されている(段落7)。
一方、上記特許文献2でも、光沢性や保存安定性はある程度改善されるが、特にインキの乳化性の面で改善効果は充分とはいえない。
上記ジヒドロキシ脂肪酸の縮合物の酸価が100〜150であることを特徴とする印刷インキ用添加剤である。
本発明の添加剤は従来では分散が容易でなかった中性カーボンなどの顔料分散性にも優れ、様々な印刷インキ用の添加剤として好適である。
本発明のジヒドロキシ脂肪酸は原料となる不飽和脂肪酸の不飽和結合をエポキシ化し、次いでエポキシ基を水和して2個のヒドロキシル基を導入することで製造される。
具体的には、先ず、酢酸、過酸化水素、硫酸などの鉱酸触媒を反応系の中で混合して、発生する過酢酸を不飽和脂肪酸中の不飽和結合と反応させる、いわゆるin−situ法により、不飽和結合部分をエポキシ化し、次いでエポキシ基を水和して2個のヒドロキシル基を導入する方法により製造される。
反応終了後、触媒、過剰の過酸化物を水洗除去し、脱水すれば、ジヒドロキシ脂肪酸が得られる。
上記動植物油脂肪酸は、大豆油、アマニ油、綿実油、コメ糠油、パーム油、菜種油、牛脂などの動植物油を常法に従い、分解後、濃縮することにより、混合不飽和脂肪酸として得られる。また、トール油脂肪酸、蒸留トール油などの一部ロジン分が混入した不飽和脂肪酸なども、動植物油脂肪酸として選択できる。
上記単一不飽和脂肪酸には、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸などのC14〜C18の不飽和脂肪酸が挙げられる。
例えば、ジヒドロキシ脂肪酸がジヒドロキシステアリン酸の場合、このジヒドロキシステアリン酸を窒素ガス等の不活性ガス存在下で、100〜200℃、1〜3時間の条件で脱水縮合することで、ジヒドロキシステアリン酸の縮合物が得られる。
上記ジヒドロキシ脂肪酸の縮合物は、ジヒドロキシ脂肪酸分子中のヒドロキシル基とカルボキシル基とが分子間でエステル基を介して縮合した化合物であり、その分子末端にはカルボキシル基を有するとともに、側鎖にはヒドロキシル基を有する。
上記縮合物の酸価が100未満であると、縮合物の分子量が高く、かつ粘度も高くなるため取り扱いが困難になり、酸価が150を超えると、1分子あたりの水酸基数が高くなり過ぎて、インキの乳化性等に影響する恐れがある。
上記縮合物の好ましい酸価は110〜130であり、より好ましくは110〜120である。
一価の分岐アルコールには特段の制限はなく任意のものを単用又は併用できるが、炭素数の多いアルコールは有効性が低減するため、C10以下の一価分岐アルコールが好ましく、具体的には、本発明4に示すように、2−エチルヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、イソペンタノール、イソオクタノール、イソノナノールなどであり、特に2−エチルヘキサノールが好ましい。
エステル反応にあっては、上記縮合物と分岐アルコールからなる反応物を適当な反応容器に仕込み、酸、アルカリ、金属等の適当な触媒存在下又は非存在下で、好ましくは当該反応に不活性なトルエン、キシレン等の有機溶剤および窒素等の気体中で、180〜240℃で反応させて、上記所定の酸価に到達するまでエステル化を行う。
触媒を用いる場合は触媒の種類にもよるが、原料の重量に対し0.001〜1.0%の範囲で添加するのが良い。
上記所定の酸価に到達した後、水洗、アルカリ脱酸、吸着、蒸留等の公知の方法により未反応原料や触媒等を除去し、さらに脱色、脱臭処理を行ってエステルを精製する。
エステル反応に際しては、当量比でアルコール過剰が好ましく、ジヒドロキシ脂肪酸の縮合物のリッチ状態は適当でない。
生成するエステルにあっては、カルボキシル基より水酸基の方が乳化適性への影響が大きく、当該エステルの水酸基価を適正化することで、乳化性を良好に向上できる。
従って、上述の通り、エステルの水酸基価は70〜100、同エステルの酸価は1未満が好ましい。
その調製方法としては、例えば、上記樹脂、石油系溶剤、植物油を不活性ガス存在下、或は非存在下に、180〜220℃で溶解し、ゲル化剤を加えてさらに180〜220℃で加熱して調製する。
その使用量はインキワニスの全量に対して30〜60重量%が適当であり、好ましくは35〜55重量%、より好ましくは40〜50重量%である。
上記溶剤の市販品としては、0号ソルベント(H)、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号(ともに新日本石油(株)製)などが挙げられる。
使用量としては従来公知の印刷インキと同様で良く、インキワニス中に30〜60重量%が適当であり、好ましくは35〜55重量%、より好ましくは40〜50重量%である。
また、石油溶剤の全部又は一部を、植物油と一価アルコールとをエステル交換、或は脂肪酸と一価アルコールとを直接エステル化した脂肪酸エステルに置き換えて、使用することも可能である。
顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、磁性酸化鉄などの無機顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、イソインドリン顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料などの有機顔料、酸性及び中性カーボンブラック及び染料などが挙げられ、これらを単用又は併用できる。
顔料の使用量としては従来公知の印刷インキと同様で良く、通常、印刷インキ100重量%中に5〜40重量%が適当であり、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%である。
上記エステル(印刷インキ用添加剤)の含有量は印刷インキ100重量%に対して0.1〜30重量%が適当であり、好ましくは0.3〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である(本発明5参照)。含有量が0.1重量%に満たないと、本発明の印刷インキ用添加剤の効果が充分でなく、30重量%を超えて添加しても、それに見合う効果が期待できない。
尚、本発明の印刷インキ中のインキワニスの含有量は50〜90重量%が適当であり、好ましくは55〜85重量%、より好ましくは60〜80重量%である。
また、必要に応じてパラフィンワックス、ポリエチレンワックスなどの耐摩擦剤、BHTなどの酸化防止剤、ナフテン酸マンガンなどの乾燥補助剤等を配合できることはいうまでもない。
また、本発明の添加剤は印刷インキへの適用にとどまらず、あらゆる分野での利用が可能であり、例えば、印刷インキ用以外では、インクジェット用顔料分散剤、塗料用顔料分散剤、各種プラスチック用可塑剤、帯電防止剤、防曇剤、潤滑油などの分野での利用が期待できる。
尚、本発明は下記の製造例、合成例、実施例、試験例などに拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
先ず、原料となる植物油脂肪酸として、大豆油脂肪酸、パーム油脂肪酸、トール油脂肪酸を用意し、下記の方法で各植物油脂肪酸の不飽和結合をエポキシ化し、水和によるエポキシ結合の開裂でジヒドロキシ脂肪酸を製造した。
即ち、撹拌機、温度計、冷却器を備えた四つ口フラスコに、不飽和結合1.0モルの植物油脂肪酸(原料脂肪酸)、酢酸0.5モル、濃硫酸0.02モルを仕込み、50℃で60%過酸化水素1.2モルを1時間かけて滴下し、その後4時間反応させた。
反応後、油分を分離し、同重量の水で2回、飽和重曹水で1回、水で3回洗浄し、120℃で減圧脱水したのち、活性白土による脱色、減圧下での水蒸気吹き込みによる脱臭を行って、下表Aに示す各種のジヒドロキシ脂肪酸を得た。
[表A] 原料脂肪酸 ジヒドロキシ脂肪酸
酸価 よう素価 酸価 よう素価 水酸基価
大豆油脂肪酸 196 118 152 7.7 220
パーム油オレイン酸 200 90 150 5.6 232
トール油脂肪酸 194 135 158 8.3 235
《ジヒドロキシ脂肪酸の脱水縮合物の製造例》
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管および冷却器を備えた四つ口フラスコに、上記製造例で得た各ジヒドロキシ脂肪酸を仕込み、200℃で下表Bに示す所定の酸価になるまで脱水縮合を行って、製造例1〜4、比較製造例1〜2の縮合物を得た。
また、モノヒドロキシ脂肪酸である12−ヒドロキシステアリン酸の脱水縮合物も上記と同様の反応条件にて製造し、比較製造例3の縮合物を得た。
[表B] ジヒドロキシ脂肪酸/ 脱水縮合物
モノヒドロキシ脂肪酸 酸価 水酸基価
製造例1 大豆油脂肪酸由来 106 160
製造例2 パーム油オレイン酸由来 112 170
製造例3 トール油脂肪酸由来 120 165
製造例4 大豆油脂肪酸由来 145 180
比較製造例1 パーム油オレイン酸由来 158 162
比較製造例2 大豆油脂肪酸由来 70 80
比較製造例3 12−ヒドロキシステアリン酸由来 50 25
そこで、上記製造例1〜4で得られた各ジヒドロキシ脂肪酸の縮合物と一価の分岐アルコール(2−エチルヘキサノール)を反応させて、合成例1〜4の各エステルを製造した。
即ち、前記表Bに示す製造例1のジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価106)をエステル反応させたものを合成例1、同表Bの製造例2のジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価112)をエステル反応させたものを合成例2、同表Bの製造例3のジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価120)をエステル反応させたものを合成例3、同表Bの製造例4のジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価145)をエステル反応させたものを合成例4とした。
一方、同表Bの比較製造例1のジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価158)を一価の分岐アルコール(2−エチルヘキサノール)とエステル反応させたものを比較合成例1とした。同表Bの比較製造例2のジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価70)を同様に2−エチルヘキサノールとエステル反応させたものを比較合成例2とした。同表Bの比較製造例3のモノヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価50)を同様に2−エチルヘキサノールとエステル反応させたものを比較合成例3とした。同表Bの製造例1のジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価106)を一価の直鎖アルコール(n−オクチルアルコール)とエステル反応させたものを比較合成例4とした。同表Bの上記比較製造例3のモノヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価50)を多価アルコール(グリセリン)とエステル反応させたものを比較合成例5とした。
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管および水分離器を備えた四つ口フラスコに、上表Bに示す製造例1のジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価106)を所定量仕込み、水酸基とカルボキシル基の仕込み当量比(OH/COOH)が1.20になる量の2−エチルヘキサノールを仕込み、ジヒドロキシ脂肪酸縮合物と2−エチルヘキサノールの合計の重量に対して0.02%のジブチルスズオキシドを加え、200℃で所定の酸価になるまでエステル化を行った。
反応終了後、活性白土による脱色、減圧下での水蒸気吹き込みによる脱臭を行って、ジヒドロキシ脂肪酸縮合物の2−エチルヘキサノールエステル(印刷インキ用添加剤)を得た。
上記合成例1を基本として、製造例1を前記表Bの製造例2のジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価112)に代替した以外は、合成例1と同様の条件で処理して、ジヒドロキシ脂肪酸縮合物の2−エチルヘキサノールエステル(印刷インキ用添加剤)を得た。
前記合成例1を基本として、製造例1を前記表Bの製造例3のジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価120)に代替した以外は、合成例1と同様の条件で処理して、ジヒドロキシ脂肪酸縮合物の2−エチルヘキサノールエステル(印刷インキ用添加剤)を得た。
前記合成例1を基本として、製造例1を前記表Bの製造例4のジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価145)に代替した以外は、合成例1と同様の条件で処理して、ジヒドロキシ脂肪酸縮合物の2−エチルヘキサノールエステル(印刷インキ用添加剤)を得た。
前記合成例1を基本として、製造例1を前記表Bの比較製造例1のジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価158)に代替した以外は、合成例1と同様の条件で処理して、ジヒドロキシ脂肪酸縮合物の2−エチルヘキサノールエステル(印刷インキ用添加剤)を得た。
前記合成例1を基本として、製造例1を前記表Bの比較製造例2のジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価70)に代替した以外は、合成例1と同様の条件で処理して、ジヒドロキシ脂肪酸縮合物の2−エチルヘキサノールエステル(印刷インキ用添加剤)を得た。
前記合成例1を基本として、製造例1を前記表Bの比較製造例3の12−ヒドロキシステアリン酸脱水縮合物に代替した以外は、合成例1と同様の条件で処理して、モノヒドロキシ脂肪酸縮合物の2−エチルヘキサノールエステル(印刷インキ用添加剤)を得た。
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管および水分離器を備えた四つ口フラスコに、前記表Bの製造例1のジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価106)を所定量仕込み、水酸基とカルボキシル基の仕込み当量比(OH/COOH)が1.20になる量のn−オクチルアルコールを仕込み、ジヒドロキシ脂肪酸脱水縮合物とn−オクチルアルコールの合計の重量に対して0.02%のジブチルスズオキシドを加え、200℃で所定の酸価になるまでエステル化を行った。
反応終了後、活性白土による脱色、減圧下での水蒸気吹き込みによる脱臭を行い、ジヒドロキシ脂肪酸脱水縮合物のn−オクチルアルコールエステル(印刷インキ用添加剤)を得た。
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および水分離器を備えた四つ口フラスコに、前記表Bの比較製造例3の12−ヒドロキシステアリン酸縮合物(酸価50)を所定量仕込み、水酸基とカルボキシル基の仕込み当量比(OH/COOH)が1.02になる量のグリセリンを仕込み、12−ヒドロキシステアリン酸脱水縮合物とグリセリンの合計の重量に対して0.05%のパラトルエンスルホン酸を加え、200℃で所定の酸価になるまでエステル化を行った。
反応終了後、活性白土による脱色、減圧下での水蒸気吹き込みによる脱臭を行い、12−ヒドロキシステアリン酸脱水縮合物のグリセリンエステル(印刷インキ用添加剤)を得た。
[表C] 酸価 けん化価 水酸基価
合成例1 0.2 160 84
合成例2 0.2 170 90
合成例3 0.8 156 80
合成例4 0.5 174 96
比較合成例1 0.2 180 102
比較合成例2 0.7 140 30
比較合成例3 0.6 130 14
比較合成例4 0.2 154 82
比較合成例5 9.0 171 11
ロジン変性フェノール樹脂(ハリマ化成(株)製、ハリフェノールP−600)45部、大豆油10部、AFソルベント7号(新日本石油(株)製)45部を反応容器に加え、窒素ガスを吹き込みながら200℃、30分間で溶解させた。
次に100℃に冷却し、アルミキレート(ALCH、川研ファインケミカル(株)製)2部を、AFソルベント7号の2部に溶かしたものをさらに添加した。
そして、これらの混合物を200℃、45分間加熱して、インキワニスを得た。
下記の実施例1〜8のうち、実施例1〜2は上記合成例1の添加例、実施例3〜4は合成例2の添加剤、実施例5〜6は合成例3の添加例、実施例7〜8は合成例4の添加例である。
この場合、同じ合成例の添加剤を含む2組の実施例のうち、奇数の実施例は印刷インキ全体への添加剤の含有量が1重量%の例であり、偶数の実施例は同様に3重量%の例である(例えば、実施例1〜2の組み合わせにおいて、実施例1は1重量%の例、実施例2は3重量%の例である)。
一方、下記の比較例1〜15のうち、比較例1〜2は酸価が本発明の適正範囲の上限を越えるジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価158)をエステル化した上記比較合成例1の添加例である。比較例3〜4は酸価が本発明の適正範囲の下限より小さいジヒドロキシ脂肪酸縮合物(酸価70)をエステル化した比較合成例2の添加例である。比較例5〜6はモノヒドロキシ脂肪酸縮合物をエステル化した比較合成例3の添加例である。比較例7〜8はジヒドロキシ脂肪酸縮合物を一価の分岐アルコールではなく、一価の直鎖アルコールでエステル化した比較合成例4の添加例である。比較例9〜10はモノヒドロキシ脂肪酸縮合物を多価アルコールでエステル化した比較合成例5の添加例であり、冒述の特許文献2の準拠例である。比較例11〜12は一価の分岐アルコールでエステル化せず、前記表Bの製造例1(ジヒドロキシ脂肪酸縮合物)それ自体を添加剤として使用した例である。比較例13〜14は一価の分岐アルコールでエステル化せず、前記表Bの比較製造例3(モノヒドロキシ脂肪酸縮合物)それ自体を添加剤として使用した例であり、冒述の特許文献1の準拠例である。
この場合、同じ比較合成例の添加剤を含む2組の比較例のうち、奇数の比較例は印刷インキ全体への添加剤の含有量が1重量%の例であり、偶数の比較例は同様に3重量%の例である(例えば、比較例1〜2の組み合わせにおいて、比較例1は1重量%の例、比較例2は3重量%の例である)。
また、比較例15は添加剤を含有しないブランク例である。
尚、図1Aには、実施例1〜8及び比較例1〜15の印刷インキについて、インキ組成、タック及びフローの試験結果をまとめた。
上記インキワニス60部、カーミン6B(紅色顔料;東洋インキ製造(株)製)18部、合成例1の印刷インキ用添加剤を1部添加し、三本ロールを用いて均一に混練した。次に、さらに上記インキワニス及び石油系溶剤を追加配合して図1Aの組成となし、均一に混合・撹拌して印刷インキを製造した。
上記実施例1を基本として、合成例1の含有量を1%から3%に増量し、それ以外は実施例1と同様の条件で処理して、印刷インキを製造した。
上記実施例1を基本として、添加剤の種類並びに含有量を図1Aに示す通りに変更し(或は、比較例15では添加剤を含有せず)、それ以外は実施例1と同様の条件で処理して、印刷インキを製造した。
次いで、上記実施例1〜8及び比較例1〜15で得られた各印刷インキについて、下記に示す各種インキ特性試験を行った。
(1)タック
インコメーター(東洋精機(株)製)を使用して、インキ量1.3cc、ローラー温度30℃、回転数400rpmの条件で、1分後の値を測定した。
(2)フロー60s
離合社(株)のスプレッドメーターによるインキの拡がり(直径:mm)を測定した。
(3)光沢性
インキ0.3mLを使用して、(株)明製作所製のRIテスター2分割ロールにてコート紙に展色したのち、160℃で6秒間乾燥し、展色試料を作製した。
光沢性は、展色試料を24時間放置したのち、村上色彩技術研究所製の光沢計(入射角/反射角=60°/60°)で測定した。
(4)保存安定性
オフセット印刷インキを50℃の乾燥機内に1週間保存し、コーンプレート型粘度計で25℃における粘度を測定し、下式(a)により試験開始前・後での粘度変化率を算出して、保存安定性の優劣を評価した。
粘度変化率(%)=(1週間後の粘度−初期粘度)/初期粘度 …(a)
(5)乳化性
リソトロニック乳化試験機(Novocontrol社製)を用いて、40℃において、25gのオフセット印刷インキに2ml/分の速度で水を添加し、インキが飽和した時点での水分量を測定した。
尚、インキが過乳化するとインキの凝集力が小さくなるため、汚れ、ブランケットパイリングなどの不具合が発生し易くなる。従って、このような不具合を防止する見地から、最大乳化率は概ね10〜60%の範囲が好ましい。
添加剤を含有しない標準的な従来型の印刷インキである比較例15に比べて、実施例1〜8では共に光沢値が適正に増し、粘度変化率並びに最大乳化率は良好に減少していることから、光沢性、保存安定性及び乳化性が大幅に向上していることが確認できた。
また、一価の分岐アルコールでエステル化せず、ジヒドロキシ脂肪酸縮合物そのものを添加剤とした比較例11〜12と実施例1〜8を対比すると、比較例11〜12に比べて実施例1〜8の光沢値、粘度変化率及び最大乳化率が夫々改善していることから、光沢性、保存安定性及び乳化性の向上には、上記縮合物そのものではなく、同縮合物をエステル化して酸価を低減したものを添加剤にすることの重要性が確認できた。
尚、モノヒドロキシ脂肪酸縮合物そのものを添加剤とした比較例13〜14(冒述の特許文献1の準拠例)では、光沢性、保存安定性及び乳化性は上記比較例11〜12(ジヒドロキシ脂肪酸縮合物そのものの使用例)より総じて後退していた。
尚、モノヒドロキシ脂肪酸の縮合物そのものを添加剤とする前記比較例13〜14では、当該比較例5〜6に比べて光沢性、保存安定性及び乳化性はさらに後退していた。
また、同縮合物の酸価が本発明の適正範囲の下限より低い比較例3〜4では、やはり実施例1〜8に比べると光沢性、保存安定性及び乳化性は悪かったが、上記比較例1〜2(同縮合物の酸価が過大)に対しては乳化性の面で少し改善が見られた。この点から、ジヒドロキシ脂肪酸縮合物の過剰な酸価はインキの乳化性に悪影響を与えることが推定できる。
従って、これらの比較例1〜4を実施例1〜8に対比すると、光沢性、保存安定性及び乳化性の向上には、適正な酸価の上記縮合物をエステル化することの重要性が確認できた。
また、モノヒドロキシ脂肪酸縮合物を一価の分岐アルコールに替えて多価アルコールでエステル化した比較例9〜10(冒述の特許文献2の準拠例)でも同様の結果であり、特に乳化性が劣った。
従って、実施例1〜8を上記比較例7〜10に対比すると、光沢性、保存安定性及び乳化性の向上には、適正な酸価のジヒドロキシ脂肪酸縮合物を一価の分岐アルコールでエステル化することの重要性が確認できた。
同じ合成例の添加剤を含む一群の実施例を見ると、添加量が1%の少量でも比較例1〜15に比べて光沢性、保存安定性及び乳化性を有効に向上できることが分かるが、実施例1〜8では、添加量が1%より3%に増量すると、総じて光沢性、保存安定性及び乳化性はより改善された。
また、ジヒドロキシ脂肪酸縮合物の酸価が110〜120の範囲内にある実施例3〜6では、同酸価が145の実施例7〜8に比べて光沢性、保存安定性及び乳化性が総じて向上し、特に、乳化性に優れることから、前述したように、ジヒドロキシ脂肪酸縮合物の酸価はインキの乳化性に影響し、同酸価をより適正化することで乳化性をより改善できることが判った。ちなみに、同縮合物のエステル(前記合成例1〜4)の酸価は1未満(水酸基価は70〜100)であり、同酸価が9(従って、水酸基価は11と低い)である比較例9〜10(比較合成例5を使用)を対比すると、このエステルの酸価が低いことも光沢性や乳化性などのインキ特性の向上に寄与しているものと推定できる。
また、本発明のエステルの製造にあっては、上述のように各工程の酸価はインキ特性に密接に関わっていると考えられることから、ジヒドロキシ脂肪酸と一価分岐アルコールとを一段階で縮合反応させて(つまりジヒドロキシ脂肪酸の縮合物を経ずに)エステルを得るよりも、ジヒドロキシ脂肪酸の縮合反応と、これに続く一価の分岐アルコールとのエステル反応の2段階でエステルを得る方が物性制御の面で好ましい。即ち、ジヒドロキシ脂肪酸ではなく、その縮合物を一価の分岐アルコールでエステル化することで、酸価を適正に制御して優れたインキ特性を容易に具現させることができる。
尚、本発明のエステルを製造する際に用いるジヒドロキシ脂肪酸を、大豆油脂肪酸、パーム油オレイン酸、或はトール油脂肪酸のいずれの原料脂肪酸から選択しても、光沢性、保存安定性及び乳化性を向上できる有効性に変わりのないことは、比較例1〜15との対比によって明確に裏付けられた。
Claims (5)
- 動植物油を加水分解して得られる混合不飽和脂肪酸、及びC 14 〜C 18 の不飽和脂肪酸の少なくとも一種の不飽和脂肪酸の不飽和結合をエポキシ化し、水和によりエポキシ基を開裂して生成したジヒドロキシ脂肪酸を脱水縮合して得られる縮合物と、一価の分岐アルコールとの反応で生成するエステルを有効成分とし、
上記ジヒドロキシ脂肪酸の縮合物の酸価が100〜150であることを特徴とする印刷インキ用添加剤。 - エステルの水酸基価が70〜100であることを特徴とする請求項1に記載の印刷インキ用添加剤。
- エステルの酸価が1未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷インキ用添加剤。
- 一価の分岐アルコールが、2−エチルヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、イソペンタノール、イソオクタノール、イソノナノールより選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷インキ用添加剤。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷インキ用添加剤を含有する印刷インキであって、印刷インキ全量に対する上記添加剤の含有量が0.5〜10.0重量%であることを特徴とする印刷インキ。
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