JP5593264B2 - アルミナ多孔体の製法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルミナ多孔体の製法に関する。
従来より、アルミナ粉末と造孔剤とを混合し、成形した成形体を焼結してアルミナ多孔体を製造する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。また、アルミナ多孔体は、耐熱性、耐腐食性、耐摩耗性が必要とされる環境で用いられる材料として使用されている。その一例としては、可燃ガス成分を測定するガスセンサの電極を被覆する電極保護膜が挙げられる。こうしたガスセンサにおいて、電極保護膜を被測定ガスが通過するときのガス拡散抵抗は、出力の安定化を図る上で重要な要因となる。このため、所望のガス拡散抵抗を持つ電極保護膜を製造する技術を確立することが要望されている。
特開2003−2760号公報
しかしながら、アルミナ多孔体を電極保護膜として利用する場合、その電極保護膜のガス拡散抵抗を所望の値に制御することは容易ではなかった。具体的には、アルミナ粉末と造孔剤とを混合し、成形した成形体を焼結する場合、大気を打ち込みながら所定の焼結温度で焼結するのであるが、アルミナ粉末と造孔剤との混合比率が一定であっても製造ロットが異なるとガス拡散抵抗が大きくばらつくことがあった。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、アルミナ多孔体を製造するにあたり、そのアルミナ多孔体を所望の多孔質性状を持つように制御できるようにすることを主目的とする。
本発明者らは、アルミナ粉末と造孔剤とを混合して混合原料とし、その混合原料を成形した成形体を大気を打ち込みながら所定の焼結温度で焼結する場合、得られるアルミナ多孔体のガス拡散抵抗が造孔剤の使用量と打ち込む大気に含まれる水蒸気分圧とに依存することを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1のアルミナ多孔体の製法は、
アルミナ粉末と造孔剤とを予め定められた混合割合で混合して混合原料とし、その混合原料を成形した成形体を、大気雰囲気下で、一定の水蒸気分圧となるように焼成雰囲気を調整しながら焼成し、所望の多孔質性状を実現する、
ものである。
本発明の第2のアルミナ多孔体の製法は、
焼成時の水蒸気分圧と、アルミナ粉末と造孔剤との混合割合と、得られるアルミナ多孔体のガス拡散抵抗との3者の関係を求め、製造しようとするアルミナ多孔体のガス拡散抵抗が所望の値となるように前記関係から焼成時の水蒸気分圧及びアルミナ粉末と造孔剤との混合割合を決定し、その後、アルミナ粉末と造孔剤とを前記決定した混合割合で混合して混合原料とし、その混合原料を成形した成形体を、大気雰囲気下で前記決定した水蒸気分圧となるように調整しながら所定の焼成温度で焼成する、
ものである。
本発明の第1及び第2のアルミナ多孔体の製法によれば、アルミナ多孔体を製造するにあたり、そのアルミナ多孔体を所望の多孔質性状(例えばガス拡散抵抗など)を持つように制御することができる。本発明者らは、アルミナ粉末と造孔剤とを混合して混合原料とし、その混合原料を成形した成形体を大気雰囲気下で所定の焼結温度で焼結する場合、同じ割合で混合した混合原料を用いているにもかかわらず、得られるアルミナ多孔体のガス拡散抵抗が季節によって大きく変動することに気づいた。そして、なぜガス拡散抵抗が季節によって大きく変動するのかを追究した。その結果、大気に含まれる水分量が多いとアルミナの焼結性が低下して隙間が多くなるためガス拡散抵抗が小さくなり、逆に水分量が少ないとガス拡散抵抗が大きくなるという知見を得るに至った。そして、その知見をもとに、アルミナ粉末と造孔剤とを予め定められた混合割合で混合して混合原料とし、その混合原料を成形した成形体を、大気雰囲気下で、一定の水蒸気分圧となるように焼成雰囲気を調整しながら焼成したところ、季節や製造ロットによらず、一定のガス拡散抵抗を持つアルミナ多孔体が得られることがわかった。また、予め焼成時の水蒸気分圧と、アルミナ粉末と造孔剤との混合割合と、得られるアルミナ多孔体のガス拡散抵抗との3者の関係を求めておき、製造しようとするアルミナ多孔体のガス拡散抵抗が所望の値となるように前記関係から焼成時の水蒸気分圧及びアルミナ粉末と造孔剤との混合割合を決定し、その後、アルミナ粉末と造孔剤とを前記決定した混合割合で混合して混合原料とし、その混合原料を成形した成形体を、大気雰囲気下で前記決定した水蒸気分圧となるように調整しながら所定の焼成温度で焼成したところ、所望のガス拡散抵抗を持つアルミナ多孔体が得られることがわかった。
本発明の第1及び第2のアルミナ多孔体の製法において、アルミナ粉末としては、α、γ、δ、θのいずれの結晶形態のアルミナ粉末も使用可能であるが、γ−アルミナはアルミナ多孔体を高比表面積を有する触媒担体として利用する場合に適しており、α−アルミナは構造用の焼結体として利用する場合に適している。
本発明の第1及び第2のアルミナ多孔体の製法において、造孔剤としては、特に限定するものではないが、例えばグラファイト等の炭素材;メラミン等の低分子有機材料;ポリエチレンやポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリメタクリル酸メチル等の高分子有機材料;でんぷん等の植物系材料などが挙げられる。
本発明の第1及び第2のアルミナ多孔体の製法において、混合原料は、アルミナ粉末、造孔剤以外のものを含んでいてもよく、例えば、適宜、可塑剤や有機溶剤、バインダーを含んでいてもよい。原料を混合するにあたり、例えば、有機溶媒中で湿式混合することによりスラリーとし、該スラリーを乾燥造粒して混合粉末としてもよい。湿式混合を行う際は、ポットミル、トロンメル、アトリッションミルなどの混合粉砕機を使用してもよい。また、湿式混合の代わりに乾式混合してもよい。また、混合原料を成形するにあたり、成形体がブロック体の場合にはプレス成形してもよいが、電極保護膜などの薄膜の場合にはスラリーをテープ成型ないしはスクリーン印刷してもよい。
本発明の第1及び第2のアルミナ多孔体の製法において、成形体を、大気雰囲気下で、一定の水蒸気分圧となるように焼成雰囲気を調整しながら焼成するにあたり、水蒸気分圧の調整は、例えば、焼成を実施する焼成炉から排出される雰囲気の露点を測定することにより炉内水蒸気分圧の実測値を求め、この実測値が予め定められた水蒸気分圧と一致するように、焼成炉に供給する水蒸気量を調節すればよい。このような焼成炉の実力としては水蒸気分圧が0.5hPa〜40hPaの範囲で制御でき、また焼成最高温度保持時間での水蒸気ばらつきは最大でプラスマイナス3hPaである。焼成温度は、例えば、1000〜1600℃の範囲で設定するのが好ましく、1300〜1400℃の範囲で設定するのがより好ましい。こうした水蒸気の調整は、少なくとも焼成温度への昇温が終了してからその焼成温度で保持する期間が終了するまで実行するのが好ましく、脱脂が終了してから焼成温度で保持する期間が終了するまで実行するのがより好ましく、昇温開始から焼成温度で保持する期間が終了し冷却を開始する前まで実行するのが更に好ましい。
本発明の第1及び第2のアルミナ多孔体の製法において、多孔質性状の一つであるガス拡散抵抗は、酸素イオン伝導性セラミックスの両面に電極を設け、一方の電極を今回のアルミナ多孔体からなる保護膜で覆ったあと、両電極間に電圧を印加して大気雰囲気で限界電流を測定し、そのときの関係式から求めることができる。すなわち、ガス拡散抵抗Rdを拡散路長さ/拡散路断面積とすると、以下の式(1)が成り立つことが知られているため、この式(1)から求めることができる。
Rd=4FD(Po−Pe)/Ip・R・T …(1)
(Fはファラデー定数(96490C/mol)、Dは酸素分子の拡散定数(1.68cm2/sec)、Poは被測定ガスの酸素分圧(大気中のため0.21atm)、Peは保護膜内測定電極近傍の酸素分圧(限界電流を求めるためゼロ)、Ipは限界電流値、Rは気体定数(82.05atm・cm3/mol)、Tは雰囲気温度)
本発明の第2のアルミナ多孔体の製法において、焼成時の水蒸気分圧と、アルミナ粉末と造孔剤との混合割合と、得られるアルミナ多孔体のガス拡散抵抗との3者の関係を求める。この3者の関係は、例えば、アルミナ粉末と造孔剤との混合割合として複数の割合r1,r2,…を定め、燃焼時の水蒸気分圧として複数の圧力Ps1,Ps2,…を定め、各割合につき焼結時の水蒸気分圧が圧力Ps1,Ps2,…となるように焼結を順次実施し、得られたアルミナ多孔体のガス拡散抵抗Rdを測定することにより得られる。
本発明の第1及び第2のアルミナ多孔体の製法において、得られるアルミナ多孔体は、特に限定するものではないが、ガスセンサの電極保護膜として利用可能である。ガスセンサとしては、例えば炭化水素(HC)、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、アンモニア(NH3)、窒素酸化物(NOx)などを測定するセンサが挙げられる。
本発明の第1及び第2のアルミナ多孔体の製法を、粒子間埋込法に採用してもよい。粒子間埋込法とは、骨材として機能するアルミナ粒子(アルミナ骨材粉末という)と、このアルミナ骨材粉末よりも粒径が細かく造孔剤として機能するアルミナ粒子(アルミナ造孔剤という)とを混合し、アルミナ骨材粉末の相互間の空隙に複数のアルミナ造孔剤を埋め込んだ状態で焼結することにより、複数の連通気孔を有する気体透過性のアルミナ多孔体を得る方法である。アルミナ骨材粉末としては、粒径が0.1〜0.7μm、好ましくは0.2〜0.5μmで、球形度が0.7〜1.0、好ましくは、0.8〜1.0のアルミナ粒子を用いる。アルミナ造孔剤としては、粒径が0.01〜0.1μm、好ましくは0.01〜0.05μmのアルミナ粒子を用いる。焼成温度は、1200〜1400℃、好ましくは1300〜1380℃とする。これらの条件を満足した場合、連通気孔の気孔径が、400〜1100Å、好ましくは500〜900Åで、気孔率が、4〜16%、好ましくは9〜14%であるアルミナ多孔体を得ることができる。こうした粒子間埋込法においても、製造ロットが異なると多孔質性状(例えばガス拡散抵抗)が大きくばらつくことがあった。そこで、本発明の第1及び第2のアルミナ多孔体の製法を、この粒子間埋込法に採用したところ、そのような多孔質性状のばらつきを抑えることができた。
こうした粒子間埋込法において、アルミナ骨材粉末の粒径が0.1〜0.7μmの範囲を外れ、また球形度が0.7〜1.0の範囲を外れると、アルミナ骨材粉末の凝集性が増大、もしくは、焼結度が甘くなり、焼結によって得られるアルミナ多孔体の気孔径及び気孔率の大きさにバラツキを発生させるおそれがある。また、アルミナ造孔剤の粒径が0.01〜0.1μmの範囲を外れると、アルミナ造孔剤の焼結時の焼結性の程度が好ましい範囲を外れることになり、焼結によって得られるアルミナ多孔体の気孔径及び気孔率の特性にバラツキを発生させるおそれがある。この意味で、アルミナ造孔剤の場合も、球形度が0.7〜1.0であることが好ましく、0.8〜1.0であることがさらに好ましい。また、焼成温度が1200〜1400℃の範囲を外れると、焼成不足もしくは焼成過度となり必要とする気孔特性を得ることができない。更に、得られるアルミナ多孔体の気孔分布(気孔径の分布幅)は、300〜1100Åであることが好ましく、500〜1100Åであることがさらに好ましい。この範囲を外れると、汚染物質(ガソリン添加剤等)をトラップする機能の低下、ガスの通気性低下を招くおそれがある。アルミナ骨材粉末及びアルミナ造孔剤としては、上述の粒径及び球形度の範囲を満たし、均一な粒径で均一な形状のものであれば特に制限はないが、例えば、α−アルミナ、γ−アルミナ等を挙げることができる。アルミナ骨材粉末の相互間の空隙に複数のアルミナ造孔剤を埋め込んだ状態とする具体的な方法としては、例えば、アルミナ骨材粉末とアルミナ造孔剤とを混合した混合アルミナを有機バインダー液に分散させたスラリーを塗布したり、混合アルミナを圧粉成形することを挙げることができる。この場合、アルミナ骨材粉末とアルミナ造孔剤との混合割合はアルミナ造孔剤をアルミナ骨材粉末に対して、3.4〜5.6重量%混合することが好ましく、3.6〜4.7重量%混合するのがより好ましい。また、アルミナ造孔剤は、上述したようにアルミナであってもよいが、アルミナ前駆体(焼成段階でアルミナに変化するもの)であってもよい。
ガスセンサ100の断面図である。 ガスセンサ100を作製する際の処理の流れを示すフローチャートである。 センサ素子201を備えるガスセンサ200の先端部分の構成を概略的に示す断面図である。 比較例1における、アルミナ粉末に対する造孔剤の混合割合とガス拡散抵抗との関係を示すグラフである。 実施例1における、アルミナ粉末に対する造孔剤の混合割合と、焼成時の水蒸気分圧と、ガス拡散抵抗との関係を示すグラフである。 比較例2のHC濃度と検出電流との関係を示すグラフである。 実施例2のHC濃度と検出電流との関係を示すグラフである。 比較例3における、アルミナ粉末に対する造孔剤の混合割合とガス拡散抵抗との関係を示すグラフである。 実施例3における、アルミナ粉末に対する造孔剤の混合割合と、焼成時の水蒸気分圧と、ガス拡散抵抗との関係を示すグラフである。 比較例4と実施例4の検出電流のバラツキを示すグラフである。
[第1実施形態]
次に、本発明の好適な実施形態について図面を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態のガスセンサ100の断面図である。
ガスセンサ100は、可燃ガス成分を検出可能なものであり、酸素イオン伝導性を持つ第1〜第6固体電解質層104a〜104fが積層されて板状に形成されたものである。第1及び第3固体電解質層104a,104cは、空所のない一様な平板であるが、第2固体電解質層104bは、空所106を有している。空所106は、セラミックス多孔体からなる拡散律速通路112を介して外部から被測定ガスが流入可能となっている。第4固体電解質層104dは、大気が導入される基準通路110を有している。第5及び第6固体電解質層104e,104fは、空所のない一様な平板であるが、両者の間にはヒータ142が挟持されている。このヒータ142は、空所106の全体にわたって設けられており、図示しない端子を通じて電源が供給されるようになっている。また、ヒータ142の上下両面には、図示しないが固体電解質層との電気的な絶縁を確保するためにアルミナ等のセラミックス層が設けられている。
また、ガスセンサ100は、第1ポンプセルP1と第1センサセルS1とを備えている。第1ポンプセルP1は、空所106の上流側にて第1固体電解質層104aの裏面に設けられた第1内側ポンプ電極116と、第1固体電解質層104aの表面に設けられた第1外側ポンプ電極118と、両電極116,118に挟まれた第1固体電解質層104aと、両電極116,118間に電圧を印加する可変電源120とで構成されている。第1外側ポンプ電極118は、電極保護膜119によって被覆されている。この電極保護膜119は、予め設計された所定のガス拡散抵抗を持つように、本発明のアルミナ多孔体の製法によって作製されたものである。第1ポンプセルP1の両電極116,118に、第1外側ポンプ電極118から第1内側ポンプ電極116に電流が流れるように可変電源120の電圧を印加すると、空所106内の酸素は酸素イオンとなって第1内側ポンプ電極116から第1固体電解質層104aを経て第1外側ポンプ電極118へと汲み出される。一方、第1センサセルS1は、空所106の内側ポンプ電極116より下流側にて第3固体電解質層104cの表面に設けられた測定電極122と、第3固体電解質層104cの裏面であって基準通路110に露出している基準電極124と、両電極122,124に挟まれた第3固体電解質層104cと、両電極122,124の電位差を測定する電位差計126とで構成されている。空所106と基準通路110との間に酸素濃度差が生じると、第1センサセルS1の測定電極122と基準電極124との間に起電力が発生する。この起電力を電位差計126で測定することにより、空所106の酸素分圧を検出することができる。そして、この酸素分圧の値に基づいて可変電源120の電圧を制御することにより、空所106の酸素分圧が所定の低い値(例えば10-20atm)に保持される。なお、各電極116,118,122,124としては、例えば、電極金属としての白金とセラミックスとしてのジルコニアとからなるサーメット電極を用いることができる。
更に、ガスセンサ100は、第2ポンプセルP2を備えている。第2ポンプセルP2は、空所106の最下流側にて第3固体電解質層104cの表面に設けられた第2内側ポンプ電極128と、第3固体電解質層104cの裏面にて基準通路110に露出している第2外側ポンプ電極130と、両電極128,130に挟まれた第3固体電解質層104cと、両電極128,130間に電圧を印加する直流電源132と、両電極128,130間に流れるポンプ電流を測定する電流計134とで構成されている。第2ポンプセルP2の両電極128,130に、第2ポンプセルP2の第2内側ポンプ電極128から第2外側ポンプ電極130に電流が流れるように電圧を印加すると、基準通路110内の酸素は酸素イオンとなって第2外側ポンプ電極130から第3固体電解質層104c、第2内側ポンプ電極128を経て空所106へ汲み入れられる。空所106に汲み入れられた酸素は、被測定ガス中の可燃ガスの燃焼反応によって消費される。なお、各電極128,130としては、上述したサーメット電極を用いることができる。
なお、このガスセンサ100と類似のガスセンサについては、特許第3450084号公報に詳しく説明されているため、必要に応じてこの公報を参照されたい。
次に、ガスセンサ100を用いて被測定ガスに含まれる可燃ガスの濃度を検出する原理について説明する。なお、便宜上、被測定ガスは、窒素ガスを主体とし、そこに酸素ガスと可燃ガスとして炭化水素ガスの1種であるプロパンガス(C38)とを混合したガスとして説明する。
まず、ガスセンサ100を被測定ガス中に配置し、ヒータ142によってガスセンサ100を600℃に加熱する。すると、被測定ガスは、ガスセンサ100の拡散律速通路112を介して空所106へ流入する。第1ポンプセルP1の両電極116,118には、可変電源120の電圧が印加される。具体的には、第1センサセルS1の測定電極122と基準電極124との間の電位差計126の値が所定の低電圧になるように、つまり、空所106の酸素分圧が所定の低い値(例えば10-20atm)になるように、第1ポンプセルP1の両電極116,118に可変電源120の電圧が印加される。その結果、空所106内の酸素は酸素イオンとなって第1内側ポンプ電極116から第1固体電解質層104aを経て第1外側ポンプ電極118へと汲み出される。なお、このときの所定の低電圧は、被測定ガス中のプロパンガスが燃焼し得ないほど酸素分圧が低くなるように設定されている。これにより、空所106内の被測定ガスは、実質的に酸素ガスを含まない状態となる。
次いで、実質的に酸素ガスを含まないように処理された被測定ガスは、空所106の第2ポンプセルP2の第2内側ポンプ電極128に至る。第2ポンプセルP2の両電極128,130には、基準通路110から酸素が空所106に汲み入れられる方向に直流電源132の一定の電圧が印加される。これにより、第2内側ポンプ電極128には酸素が供給される。そして、このように供給される酸素によって被測定ガスに含まれる可燃ガスが燃焼し、酸素が消費される。第2ポンプセルP2の両電極128,130には、このときの酸素消費量に応じたポンプ電流が流れるため、電流計134のポンプ電流の値からその酸素消費量を求め、その酸素消費量から燃焼した可燃ガス量を求め、最終的に被測定ガス中の可燃ガス濃度を求めることができる。
次に、こうしたガスセンサ100の製法の一例を以下に説明する。図2は、ガスセンサ100を作製する際の処理の流れを示すフローチャートである。
ガスセンサ100を作製する場合、まず、パターンが形成されていないグリーンシートであるブランクシートを用意する(ステップS10)。ガスセンサ100は第1〜第6固体電解質層104a〜104fの6つの層から構成されているため、各層に対応させて6枚のブランクシートを用意する。ブランクシートには、印刷時や積層時の位置決めに用いる複数のシート穴が設けられている。このシート穴は、パンチング装置を用いた打ち抜き処理などにより予め形成されている。なお、ブランクシートのうち、対応する層が内部空間(空所106や基準通路110)を有している場合には、そのブランクシートにもその内部空間に相当する空間が設けられる。
続いて、それぞれのブランクシートに対して種々のパターンを形成するパターン印刷と、それに続く乾燥処理とを行う(ステップS20)。具体的には、パターン印刷により、第1内側ポンプ電極116,第1外側ポンプ電極118,測定電極122,基準電極124,第2内側ポンプ電極128,第2外側ポンプ電極130などの電極パターンや図示を省略している内部配線などが形成される。なお、第1固体電解質層104aに対応するブランクシートには、後工程において積層体を切断するときに切断位置の基準とされるカットマークも印刷される。各々のパターンの印刷は、それぞれの形成対象に要求される特性に応じて用意したパターン形成用ペーストを、公知のスクリーン印刷技術を利用してブランクシートに塗布することにより行われる。印刷後の乾燥処理については、公知の乾燥技術を利用可能であり、例えば75〜90℃の温度で大気雰囲気にて行うのが一般的である。
ここで、第1固体電解質層104aに対応するブランクシートには、第1外側ポンプ電極118となる印刷部分の上に電極保護膜119となるスラリーが印刷されるが、この点は本発明の特徴であるため、以下に詳説する。まず、電極保護膜119を作製するためのスラリーを調製する。このスラリーは、平均粒子径が0.1〜1.0μmのアルミナ粉末と、メラミンやメタクリル酸メチル等を主成分とする造孔剤とを予め定められた一定の混合割合で混合して混合原料とし、その混合原料を50重量部、有機バインダーを10重量部、沸点が200℃以上の有機溶剤を35重量部、可塑剤を5重量部含むものである。バインダーとしてはエチルセルロース系あるいはブチラール系の有機化合物が用いられる。有機溶剤としては、バインダーの溶解性の相性に応じて、例えばターピネオール、ブチルカルビトール、オクタノール等を用いることができる。また、可塑剤としては、例えばフタル酸エステルやアジピン酸エステル等の有機化合物を用いることができる。また、電極保護膜119を作製するためのスラリーのアルミナ粉末と造孔剤との混合割合は、電極保護膜119のガス拡散抵抗の設計値に応じて決定する。例えば、焼成時の水蒸気分圧と、アルミナ粉末と造孔剤との混合割合と、得られるアルミナ多孔体のガス拡散抵抗との3者の関係を予備実験により求めておき、今回製造しようとする電極保護膜119のガス拡散抵抗に対応する焼成時の水蒸気分圧及びアルミナ粉末と造孔剤との混合割合を、前出の3者の関係から読み出し、読み出した混合割合を採用する。そして、このスラリーを第1外側ポンプ電極118の印刷部分の上に厚さ10数μmとなるようにスクリーン印刷する。
次いで、各層に対応する、ステップS20の処理後のシート同士を積層・接着するための接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行う(ステップS30)。接着用ペーストの印刷には、公知のスクリーン印刷技術を利用可能であり、その後の乾燥処理についても、公知の乾燥技術を利用可能である。
次いで、接着用ペーストが印刷されたシートを所定の順序に積み重ねて所定の温度で所定の圧力を加えることで圧着させ、一の積層体とする圧着処理を行う(ステップS40)。具体的には、図示しない所定の積層治具に積層対象となるシートをシート穴により位置決めしつつ積み重ねて保持し、公知の油圧プレス機などの積層機によって積層治具ごと加熱・加圧することによって行う。加熱・加圧を行う圧力、温度、時間については、用いる積層機にも依存するものであるが、良好な積層が実現できるよう適宜の条件を設定すればよい。
上述のようにして積層体が得られると、カットマークを参考にして積層体を切断し、ガスセンサ100の大きさを持つ小片に切り出す(ステップS50)。そして、切り出された小片を所定の条件で焼成することにより、ガスセンサ100を得る(ステップS60)。焼成は、大気雰囲気下で予め定められた一定の水蒸気分圧となるように調整しながら、1350〜1400℃の焼成温度で行う。このときの水蒸気分圧は、電極保護膜119を作製するためのスラリーのアルミナ粉末と造孔剤との混合割合を決定する際に、今回製造しようとする電極保護膜119のガス拡散抵抗に対応する焼成時の水蒸気分圧及びアルミナ粉末と造孔剤との混合割合を、前出の3者の関係から読み出したが、その読み出した水蒸気分圧を採用する。なお、脱脂は別工程とせず、焼成の中で併せて実施する。このため、焼成工程では、まず、昇温を開始してから所定の焼成温度に至るまでの間に脱脂が完了し、その後所定の焼成温度で保持している間にアルミナが焼成される。
以上詳述したガスセンサ100によれば、電極保護膜119は設計値どおりのガス拡散抵抗を有しているため、製造ロットにかかわらず被測定ガス中の可燃ガス濃度を精度よく検出することができる。すなわち、ガスセンサ100ごとにそのガス拡散抵抗のバラツキが大きい場合には、第1ポンプセルP1の性能にバラツキが生じ、ひいては被測定ガス中の可燃ガス濃度にバラツキが生じるため好ましくない。しかし、本実施形態では、電極保護膜119を作製するにあたり、アルミナ粉末と造孔剤とを予め定められた一定の混合割合で混合して混合原料とし、その混合原料を成形した成形体を、大気雰囲気下で予め定められた一定の水蒸気分圧となるように調整しながら所定の焼成温度で焼成しているため、ガスセンサ100の製造ロットが異なっていたとしても、電極保護膜119は同等のガス拡散抵抗を持つものとなっている。このため、第1ポンプセルP1の性能にバラツキが生じず、ひいては被測定ガス中の可燃ガス濃度のバラツキも小さく抑えることができる。なお、このばらつき抑制効果は、焼成時の水蒸気分圧を一定にすることで電極保護膜119表面近傍の焼結挙動を一定にできたことに起因していると考えられる。
[第2実施形態]
図3は、ガスセンサ200の構成の一例を概略的に示した断面模式図である。ガスセンサ200は、測定対象とするガス(被測定ガス)中の所定の窒素酸化物(NOx)を検出し、さらにはその濃度を測定するためのものである。
センサ素子201は、それぞれがジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの層が、図面視で下側からこの順に積層された構造を有する素子である。また、これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。係るセンサ素子201は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
センサ素子201の一先端部であって、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
ガス導入口10と、緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40とは、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層6の下面で、下部を第1固体電解質層4の上面で、側部をスペーサ層5の側面で区画されたセンサ素子201内部の空間である。
第1拡散律速部11と、第2拡散律速部13と、第3拡散律速部30とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口10から第2内部空所40に至る部位をガス流通部とも称する。
また、ガス流通部よりも先端側から遠い位置には、第3基板層3の上面と、スペーサ層5の下面との間であって、側部を第1固体電解質層4の側面で区画される位置に基準ガス導入空間43が設けられている。基準ガス導入空間43には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気が導入される。
大気導入層48は、多孔質アルミナからなる層であって、大気導入層48には基準ガス導入空間43を通じて基準ガスが導入されるようになっている。また、大気導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。
基準電極42は、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間43につながる大気導入層48が設けられている。また、後述するように、基準電極42を用いて第1内部空所20内や第2内部空所40内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。
ガス流通部において、ガス導入口10は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口10を通じて外部空間からセンサ素子201内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。
第1拡散律速部11は、ガス導入口10から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。
第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所20に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
被測定ガスが、センサ素子201外部から第1内部空所20内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口10からセンサ素子201内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所20へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの濃度変動が打ち消された後、第1内部空所20へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空間へ導入される被測定ガスの濃度変動はほとんど無視できる程度のものとなる。
第1内部空所20は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
主ポンプセル21は、第1内部空所20に面する第2固体電解質層6の下面のほぼ全面に設けられた天井電極部22aを有する内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6の上面の天井電極部22aと対応する領域に外部空間に露出する態様にて設けられた外側ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層6とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
内側ポンプ電極22は、第1内部空所20を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6および第1固体電解質層4)、および、側壁を与えるスペーサ層5にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所20の天井面を与える第2固体電解質層6の下面には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成され、そして、それら天井電極部22aと底部電極部22bとを接続するように、側部電極部(図示省略)が第1内部空所20の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に形成されて、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態とされた構造において配設されている。
内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とは、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極22は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
主ポンプセル21においては、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所20内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所20に汲み入れることが可能となっている。
また、第1内部空所20における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質4と、第3基板層3と、基準電極42によって、電気化学的なセンサセル、すなわち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80が構成されている。
主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80における起電力V0を測定することで第1内部空所20内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。さらに、起電力V0が一定となるようにVp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これによって、第1内部空所内20内の酸素濃度は所定の一定値に保つことができる。
第3拡散律速部30は、第1内部空所20で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所40に導く部位である。
第2内部空所40は、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度の測定は、主として、補助ポンプセル50により酸素濃度が調整された第2内部空所40において、さらに、測定用ポンプセル41の動作によりNOx濃度が測定される。
第2内部空所40では、あらかじめ第1内部空所20において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル50による酸素分圧の調整が行われるようになっている。これにより、第2内部空所40内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、係るガスセンサ200においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
補助ポンプセル50は、第2内部空所40に面する第2固体電解質層6の下面の略全体に設けられた天井電極部51aを有する補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、センサ素子201と外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層6とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
係る補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所20内に設けられた内側ポンプ電極22と同様なトンネル形態とされた構造において、第2内部空所40内に配設されている。つまり、第2内部空所40の天井面を与える第2固体電解質層6に対して天井電極部51aが形成され、また、第2内部空所40の底面を与える第1固体電解質層4には、底部電極部51bが形成され、そして、それらの天井電極部51aと底部電極部51bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所40の側壁を与えるスペーサ層5の両壁面にそれぞれ形成されたトンネル形態の構造となっている。
なお、補助ポンプ電極51についても、内側ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
補助ポンプセル50においては、補助ポンプ電極51と外側ポンプ電極23との間に所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所40内に汲み入れることが可能となっている。
また、第2内部空所40内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81が構成されている。
なお、この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される起電力V1に基づいて電圧制御される可変電源52にて、補助ポンプセル50がポンピングを行う。これにより第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
また、これとともに、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80の起電力の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所40内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
測定用ポンプセル41は、第2内部空所40内において、被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。測定用ポンプセル41は、第2内部空所40に面する第1固体電解質層4の上面であって第3拡散律速部30から離間した位置に設けられた測定電極44と、外側ポンプ電極23と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4とによって構成された電気化学的ポンプセルである。
測定電極44は、多孔質サーメット電極である。測定電極44は、第2内部空所40内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。さらに、測定電極44は、電極保護膜45によって被覆されてなる。
電極保護膜45は、アルミナ(Al23)を主成分とする多孔体にて構成される膜である。電極保護膜45は、測定電極44に流入するNOxの量を制限する役割を担うとともに、測定電極44の保護膜としても機能する。測定用ポンプセル41においては、測定電極44の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出することができる。この電極保護膜45は、予め設計された所定のガス拡散抵抗を持つように、本発明のアルミナ多孔体の製法によって作製されたものである。
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第2固体電解層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、測定電極44と、基準電極42とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された起電力V2に基づいて可変電源46が制御される。
第2内部空所40内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で電極保護膜45を通じて測定電極44に到達することとなる。測定電極44の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N2+O2)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された制御電圧V2が一定となるように可変電源の電圧Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
また、測定電極44と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と基準電極42を組み合わせて、電気化学的センサセルとして酸素分圧検出手段を構成するようにすれば、測定電極44の周りの雰囲気中のNOx成分の還元によって発生した酸素の量と基準大気に含まれる酸素の量との差に応じた起電力を検出することができ、これによって被測定ガス中のNOx成分の濃度を求めることも可能である。
また、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、外側ポンプ電極23と、基準電極42とから電気化学的なセンサセル83が構成されており、このセンサセル83によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
このような構成を有するガスセンサ200においては、主ポンプセル21と補助ポンプセル50とを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル41に与えられる。したがって、被測定ガス中のNOxの濃度に略比例して、NOxの還元によって発生する酸素が測定用ポンプセル41より汲み出されることによって流れるポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を知ることができるようになっている。
さらに、センサ素子201は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子201を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。ヒータ部70は、ヒータ電極71と、ヒータ72と、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74、圧力放散孔75とを備えている。
ヒータ電極71は、第1基板層1の下面に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータ電極71を外部電源と接続することによって、外部からヒータ部70へ給電することができるようになっている。
ヒータ72は、第2基板層2と第3基板層3とに上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体である。ヒータ72は、スルーホール73を介してヒータ電極71と接続されており、該ヒータ電極71を通して外部より給電されることにより発熱し、センサ素子201を形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
また、ヒータ72は、第1内部空所20から第2内部空所40の全域に渡って埋設されており、センサ素子201全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
ヒータ絶縁層74は、ヒータ72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2基板層2とヒータ72との間の電気的絶縁性、および、第3基板層3とヒータ72との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
圧力放散孔75は、第3基板層3を貫通し、基準ガス導入空間43に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
次に、こうしたガスセンサ200の製法の一例を以下に説明する。ガスセンサ200は、基本的には、図2に示すフローチャートにしたがって、ガスセンサ100の製法と同様に作製することができる。但し、電極保護膜45については、以下のようにして作製する。
まず、電極保護膜45を作製するためのスラリーを調製する。このスラリーは、ガスセンサ100の電極保護膜119を作製するためのスラリーと同様にして調製する。但し、電極保護膜45を作製するためのスラリーのアルミナ粉末と造孔剤との混合割合は、電極保護膜45のガス拡散抵抗の設計値に応じて決定する。例えば、焼成時の水蒸気分圧と、アルミナ粉末と造孔剤との混合割合と、得られるアルミナ多孔体のガス拡散抵抗との3者の関係を予備実験により求めておき、今回製造しようとする電極保護膜45のガス拡散抵抗に対応する焼成時の水蒸気分圧及びアルミナ粉末と造孔剤との混合割合を、前出の3者の関係から読み出し、読み出した混合割合を採用する。
一方、第1固体電解質層4となるグリーンシートへ測定電極44となるパターンを20〜30μm程度の厚みとなるように印刷し、乾燥しておく。この乾燥後のパターンの上に、先ほど調製したスラリーの印刷とその後の乾燥とを繰り返し行う。こうすることにより、測定電極44となるペースト膜の上に、20〜50μmの厚さの電極保護膜45となるペースト膜が形成される。そして、その後の焼成工程(図2のステップS60)において、電極保護膜45となるペースト膜内の造孔剤が消失することで、電極保護膜45が形成される。焼成は、大気雰囲気下で予め定められた一定の水蒸気分圧となるように調整しながら、1350〜1400℃の焼成温度で行う。このときの水蒸気分圧は、電極保護膜45を作製するためのスラリーのアルミナ粉末と造孔剤との混合割合を決定する際に、今回製造しようとする電極保護膜45のガス拡散抵抗に対応する焼成時の水蒸気分圧及びアルミナ粉末と造孔剤との混合割合を、前出の3者の関係から読み出したが、その読み出した水蒸気分圧を採用する。なお、脱脂は別工程とせず、焼成の中で併せて実施する。このため、焼成工程では、まず、昇温を開始してから所定の焼成温度に至るまでの間に脱脂が完了し、その後所定の焼成温度で保持している間にアルミナが焼成される。
以上詳述したガスセンサ200によれば、電極保護膜45は設計値どおりのガス拡散抵抗を有しているため、製造ロットにかかわらず被測定ガス中の可燃ガス濃度を精度よく検出することができる。すなわち、本実施形態では、電極保護膜45を作製するにあたり、アルミナ粉末と造孔剤とを予め定められた一定の混合割合で混合して混合原料とし、その混合原料を成形した成形体を、大気雰囲気下で予め定められた一定の水蒸気分圧となるように調整しながら所定の焼成温度で焼成しているため、ガスセンサ200の製造ロットが異なっていたとしても、電極保護膜45は同等のガス拡散抵抗を持つものとなっている。このため、被測定ガス中のNOx濃度のバラツキを小さく抑えることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した第1実施形態では、電極保護膜119を第1ポンプセルP1の第1外側ポンプ電極118のみに形成したが、ほかの電極116,122,124,128,130の少なくとも1つに同様の電極保護膜を形成してもよい。第2実施形態についても同様である。
上述した第1実施形態では、電極保護膜119を作製するためのスラリーとして、各原料の重量部を数値で示したが、これらの数値は一例を示すものに過ぎない。このため、必要に応じて適宜変更しても構わない。第2実施形態についても同様である。
上述した第1及び第2実施形態では、HCセンサやNOxセンサを例示したが、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、アンモニア(NH3)などの濃度を検出可能なセンサの電極保護膜に本発明のアルミナ多孔体を適用してもよい。
[比較例1]
上述した第1実施形態のガスセンサ100の製法にしたがって、ガスセンサ100を複数作製した。具体的には、電極保護膜119を作製するためのスラリーを調製する際、アルミナ粉末に対する造孔剤の重量割合が14重量%のもの、16重量%のもの、20重量%のものをそれぞれ複数製造した。また、焼成条件は、大気雰囲気下で水蒸気分圧を調整することなく、1350℃の焼成温度で行った。電極保護膜119の厚みは27μmであった。得られたガスセンサ100につき、大気雰囲気下において第1センサセルS1の電位差計126の電圧が所定の低電圧で一定になるよう、第1ポンプセルP1の可変電源120をコントロールしたときの第1ポンプセルP1の両電極116,118を流れるポンプ電流(限界電流)Ipを測定し、以下の式(1)からガス拡散抵抗Rdを求めた。その結果を図4に示す。図4から明らかなように、アルミナ粉末に対する造孔剤の重量割合が同じであっても、製造ロットが異なるとガス拡散抵抗Rdは大きくばらついた。
Rd=4FD(Po−Pe)/Ip・R・T …(1)
(Fはファラデー定数(96490C/mol)、Dは酸素分子の拡散定数(1.68cm2/sec)、Poは被測定ガスの酸素分圧(大気中のため0.21atm)、Peは保護膜内測定電極近傍の酸素分圧(限界電流を求めるためゼロ)、Ipは限界電流値、Rは気体定数(82.05atm・cm3/mol)、Tは雰囲気温度(873K))
[実施例1]
上述した第1実施形態のガスセンサ100の製法にしたがって、ガスセンサ100を複数作製した。具体的には、電極保護膜119を作製するためのスラリーを調製する際、アルミナ粉末に対する造孔剤の重量割合が14重量%のもの、16重量%のもの、20重量%のものをそれぞれ複数製造した。また、焼成条件は、大気雰囲気下で予め定められた一定の水蒸気分圧となるように調整しながら、1350℃の焼成温度で行った。電極保護膜119の厚みは27μmであった。ここで、焼成炉内の水蒸気分圧は、焼成炉出口の水蒸気分圧とし、焼成炉内の水蒸気分圧は焼成炉出口の水蒸気分圧測定値を用いたフィードバック制御により添加水分量を調整することで管理した。得られたガスセンサ2につき、比較例1と同様にしてガス拡散抵抗Rdを求めた。その結果を図5に示す。図5から明らかなように、アルミナ粉末に対する造孔剤の重量割合が同じであっても、焼成時の水蒸気分圧が異なればガス拡散抵抗Rdも異なることがわかった。また、アルミナ粉末に対する造孔剤の重量割合と焼成時の水蒸気分圧とが同じ場合には、ガス拡散抵抗Rdは同じ値になることがわかった。
[比較例2]
上述した第1実施形態のガスセンサ100の製法にしたがって、ガスセンサ100を複数作製した。具体的には、電極保護膜119を作製するためのスラリーを調製する際、アルミナ粉末に対する造孔剤の重量割合が16重量%のものを10ロット製造した。このときの焼成条件は、大気雰囲気下で水蒸気分圧を調整することなく、1350℃の焼成温度で行った。電極保護膜119の厚みは27μmであった。得られたガスセンサ2につき、モデルガスとして、窒素ガスに炭化水素(HC)ガスとしてプロパンガスを1000〜5000ppm混合したものを用意し、HCガス濃度とガスセンサ100の電流計134の検出電流との関係を表とグラフにまとめた(表1及び図6参照)。表1の数値は検出電流(μA)を示す。図6では、検出電流のバラツキを白い帯で示した。表1及び図6から明らかなように、アルミナ粉末に対する造孔剤の重量割合が同じであっても、製造ロットが異なると、所定のHCガス濃度に対する検出電流は大きくばらついた。
[実施例2]
上述した第1実施形態のガスセンサ100の製法にしたがって、ガスセンサ100を複数作製した。具体的には、電極保護膜119を作製するためのスラリーを調製する際、アルミナ粉末に対する造孔剤の重量割合が16重量%のものを10ロット製造した。このときの焼成条件は、大気雰囲気下で予め定められた一定の水蒸気分圧(10hPa)となるように調整しながら、1350℃の焼成温度で行った。電極保護膜119の厚みは27μmであった。ここで、焼成炉内の水蒸気分圧は、焼成炉出口の水蒸気分圧とし、焼成炉出口の水蒸気分圧測定値を用いたフィードバック制御により添加水分量を調整することで管理した。得られたガスセンサ100につき、比較例2と同様にして表とグラフを作成した(表2及び図7参照)。図7から明らかなように、アルミナ粉末に対する造孔剤の重量割合が同じで且つ製造時の水蒸気分圧が同じであれば、製造ロットが異なったとしても、所定のHCガス濃度に対する検出電流はほぼ同じ値になった。つまり、アルミナ粉末に対する造孔剤の重量割合と焼成時の水蒸気分圧とを決めれば、所定のHCガス濃度に対する検出電流をほぼ一義的に決めることができることがわかる。
[比較例3]
上述した第2実施形態のガスセンサ200の製法に準じて、粒子間埋込法を用いてガスセンサ200を作製した。すなわち、アルミナ骨材粉末として、粒径が0.25μmで球形度が0.90のアルミナ粒子を用い、アルミナ造孔剤として、粒径が0.03μmで球形度が0.87のアルミナ粒子を用いて、上述した第2実施形態のガスセンサ200の製法に準じて、ガスセンサ200を作製した。具体的には、電極保護膜45を作製するためのスラリーを調製する際、アルミナ骨材粉末に対するアルミナ造孔剤の重量割合が3.4重量%、3.8重量%、4.7重量%、5.8重量%のスラリーを調製した。また、焼成条件は、大気雰囲気下で水蒸気分圧を調整することなく、焼成温度を1350〜1400℃とした。電極保護膜45の厚みは27μmであった。このようにして、ガスセンサ200を、重量%ごとに8ロットずつ作製した。得られたガスセンサ200につき、比較例1と同様にしてガス拡散抵抗Rdを求めた。その結果を図8に示す。図8から明らかなように、アルミナ骨材粉末に対するアルミナ造孔剤の重量割合が同じであっても、製造ロットが異なるとガス拡散抵抗Rdは大きくばらついた。特に、3.8重量%、4.7重量%のときにバラツキの範囲が広くなった。
[実施例3]
比較例3と同様のアルミナ骨材粉末及びアルミナ造孔剤を用いて、上述した第2実施形態のガスセンサ200の製法にしたがって、ガスセンサ200を作製した。具体的には、電極保護膜45を作製するためのスラリーを調製する際、アルミナ骨材粉末に対するアルミナ造孔剤の重量割合が3.4重量%、3.8重量%、4.7重量%、5.8重量%のスラリーを調製した。また、焼成条件は、重量%ごとに、大気雰囲気下で水蒸気分圧を1hPa,5hPa,13hPa,20hPa,30hPa,35hPaの6段階に調整し、焼成温度を1350〜1400℃とした。電極保護膜45の厚みは27μmであった。3.4重量%と5.6重量%については、各水蒸気分圧での焼成を1回ずつ行い、3.8重量%と4.7重量%については、各水蒸気分圧での焼成を2回ずつ行った。得られたガスセンサ200につき、比較例1と同様にしてガス拡散抵抗Rdを求めた。その結果を図9に示す。図9から明らかなように、アルミナ骨材粉末に対するアルミナ造孔剤の重量割合が同じであっても、焼成時の水蒸気分圧が異なればガス拡散抵抗Rdも異なることがわかった。また、アルミナ粉末に対する造孔剤の重量割合と焼成時の水蒸気分圧とが決まれば、ガス拡散抵抗Rdは一義的な値に決まることがわかった。
こうしたことから、所望のガス拡散抵抗Rd(例えば130〜1000cm-1の範囲内の値)を得るには、アルミナ骨材粉末に対するアルミナ造孔剤の重量割合と焼成時の水蒸気分圧とを設定すればよいことがわかった。なお、水蒸気分圧は1〜30hPaの範囲で設定するのが好ましく、5〜20hPaの範囲で設定するのがより好ましい。1hPa未満の値に設定するのは、焼成炉の構成上困難であるため好ましくない。また、30hPaを超える値に設定するのは、30hPaを超えると拡散抵抗Rdの値がほぼ一定になるためあまり意味がない。5〜20hPaであれば、焼成炉の構成上、水蒸気分圧を安定して調整することができるため好ましい。
[実施例4、比較例4]
比較例3と同様のアルミナ骨材粉末及びアルミナ造孔剤を用いて、上述した第2実施形態のガスセンサ200の製法にしたがって、ガスセンサ200を作製した。具体的には、実施例4では、電極保護膜45を作製するためのスラリーを調製する際、アルミナ骨材粉末に対するアルミナ造孔剤の重量割合が4.3重量%のものを複数調製した。また、焼成条件は、大気雰囲気下で水蒸気分圧を12hPaに調整し、焼成温度を1350〜1400℃とした。一方、比較例4では、同じく4.3重量%のものを複数調製した。また、焼成条件は、大気雰囲気下で水蒸気分圧を調整せず、焼成温度を1350〜1400℃とした。いずれも電極保護膜45の厚みは27μmであった。実施例4及び比較例4で得られたガスセンサ200の各々につき、モデルガスとして、窒素ガスにNOガスを500ppm混合したものを用意し、ガスセンサ200の電流Ip2との関係をグラフにまとめた(図10参照)。図10から明らかなように、比較例4では、製造ロットが異なると、所定のNOガス濃度に対する検出電流は大きくばらついた。これに対して、実施例4では、製造ロットが異なっても、所定のNOガス濃度に対する検出電流はほとんどばらつかなかった。つまり、アルミナ粉末に対する造孔剤の重量割合と焼成時の水蒸気分圧とを決めれば、所定のNOガス濃度に対する検出電流をほぼ一義的に決めることができることがわかる。
1 第1基板層、2 第2基板層、3 第3基板層、4 第1固体電解質層、5 スペーサ層、6 第2固体電解質層、10 ガス導入口、11 第1拡散律速部、12 緩衝空間、13 第2拡散律速部、20 第1内部空所、21 主ポンプセル、22 内側ポンプ電極、22a 天井電極部、22b 底部電極部、23 外側ポンプ電極、30 第3拡散律速部、40 第2内部空所、41 測定用ポンプセル、42 基準電極、43 基準ガス導入空間、44 測定電極、45 電極保護膜、46 可変電源、48 大気導入層、50 補助ポンプセル、51 補助ポンプ電極、51a 天井電極部、51b 底部電極部、52 可変電源、70 ヒータ部、71 ヒータ電極、72 ヒータ、73 スルーホール、74 ヒータ絶縁層、75 圧力放散孔、80 主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル、81 補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル、82 測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル、83 センサセル、100 ガスセンサ、104a〜104f 第1〜第6固体電解質層、 106 空所、110 基準通路、112 拡散律速通路、116 第1内側ポンプ電極、118 第1外側ポンプ電極、119 電極保護膜、120 可変電源、122 測定電極、124 基準電極、126 電位差計、128 第2内側ポンプ電極、130 第2外側ポンプ電極、132 直流電源、134 電流計、142 ヒータ、P1 第1ポンプセル、P2 第2ポンプセル、Rd ガス拡散抵抗、S1 第1センサセル、ガスセンサ 200、センサ素子101。

Claims (6)

  1. アルミナ粉末と造孔剤とを予め定められた混合割合で混合して混合原料とし、その混合原料を成形した成形体を、大気雰囲気下で、1〜30hPaの範囲で設定された一定の水蒸気分圧となるように焼成雰囲気を調整しながら焼成し、所望の多孔質性状を実現する、
    アルミナ多孔体の製法。
  2. 焼成時の水蒸気分圧と、アルミナ粉末と造孔剤との混合割合と、得られるアルミナ多孔体のガス拡散抵抗との3者の関係を求め、製造しようとするアルミナ多孔体のガス拡散抵抗が所望の値となるように前記関係から焼成時の水蒸気分圧を1〜30hPaの範囲で設定すると共にアルミナ粉末と造孔剤との混合割合を決定し、その後、アルミナ粉末と造孔剤とを前記決定した混合割合で混合して混合原料とし、その混合原料を成形した成形体を、大気雰囲気下で前記決定した水蒸気分圧となるように調整しながら所定の焼成温度で焼成する、
    アルミナ多孔体の製法。
  3. 前記アルミナ多孔体は、ガスセンサの電極保護膜用である、
    請求項1又は2記載のアルミナ多孔体の製法。
  4. 前記アルミナ粉末は、骨材として機能するアルミナ粒子であり、前記造孔剤は、前記アルミナ粉末よりも粒径の細かいアルミナ粒子であり、前記アルミナ粉末の相互間の空隙に複数の前記造孔剤を埋め込んだ状態のものを前記成形体として使用する、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミナ多孔体の製法。
  5. 前記アルミナ粉末は、粒径が0.1〜0.7μm、球形度が0.7〜1.0のアルミナ粒子であり、前記造孔剤は、粒径が0.01〜0.1μmのアルミナ粒子であり、1200〜1400℃で焼成する、
    請求項4に記載のアルミナ多孔体の製法。
  6. 前記アルミナ粉末と前記造孔剤との混合割合は、前記造孔剤を前記アルミナ粉末に対して、3.4〜5.6重量%の範囲で設定される、
    請求項4又は5に記載のアルミナ多孔体の製法。
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