以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、この実施形態に係る車両用運転支援装置10が搭載された車両(自車両ともいう。)12が走行する道路14に関するインフラが整備された車両運転支援システム16の概略構成図を示している。
この車両運転支援システム16は、車両12が走行する道路14上の前記車両12の直進方向の複数の交差点Ba〜Bd{代表して交差点Bともいう。又地点B(Ba〜Bd)ともいう。}に設置された各信号機20a〜20d(代表して信号機20という。)をそれぞれ制御する各信号制御機22a〜22d(代表して信号制御機22という。)と、各交差点Bから距離Xa、Xb、Xc、Xd[m]離れた上流地点A(設置地点A、光ビーコン受信地点A、受信地点A又は単に、地点Aともいう。)の路側に設置された光ビーコン送受信機24を制御する光ビーコン送受信制御機26と、前記信号制御機22と前記光ビーコン送受信制御機26との間に接続される情報中継判定装置28とを備えて構成される。情報中継判定装置28は、図示しない交通管制センタ等に接続されていてもよい。
各信号機20は、この実施形態では、車両12がその交差点Bを通過することができる青色灯21b(緑色灯等も含む。)と、その交差点Ba〜bdの停止位置(停止線)Ca〜Cd(代表して停止位置Cという。)で車両12が停止すること又は停止位置Cで安全に停止できないときは通過を促す黄色灯21y(琥珀色灯、オレンジ色灯等も含む。)と、車両12に交差点Bの停止位置Cから下流側(進行方向)に進むことを禁止する赤色灯21rと、を備える。
なお、青色灯21bが点灯している信号機20を青信号、黄色灯21yが点灯している信号機20を黄信号、赤色灯21rが点灯している信号機20を赤信号という。
信号制御機22は、その時点で確定している信号情報70(後述する図4参照)に基づき各信号機20の灯色の遷移と、各灯色の残秒数とを管理制御し、各信号機20を駆動する。
なお、各灯色の残秒数は、点灯していないときには予定秒数(点灯を開始する前の残秒数)に等しく、点灯を開始すると前記予定秒数から時々刻々減少し、点灯が終了するとゼロ値になり、次にまた点灯を開始すると前記予定秒数から時々刻々減少する値を採る。
この実施形態において、灯色の点灯は、第1灯色(現在の灯色)、第2灯色(次の灯色)、第3灯色(その次の灯色)、前記第1灯色、前記第2灯色、前記第3灯色……の順でサイクリックに遷移する。また、この実施形態では、各灯色は、点灯を開始すると残秒数が予定秒数から減少し(ダウン計時され)、残秒数がゼロ値になると次の灯色が点灯するようになっている。
前記信号情報70は、正確な残秒数を計時するために、前記予定秒数に比較して極めて短い時間毎に更新されている。
情報中継判定装置28は、信号制御機22から前記信号情報70を受け取り、光ビーコン送受信制御機26に前記信号情報70を送る。
光ビーコン送受信制御機26により光ビーコン送受信機24が駆動され、駆動された光ビーコン送受信機24は、交差点Bの上流地点である地点Aにて、通行する(走行している)車両12に対して光信号Lで前記信号情報70を送信する。
図2は、車両12に搭載された、この実施形態に係る車両用運転支援装置10の構成を示している。
車両用運転支援装置10は、運転支援ECU50(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)を有し、この運転支援ECU50に対して、光ビーコン送受信機52と、ナビゲーション装置54と、車速(車両速度)センサ56等が接続され、運転支援ECU50は、これら接続装置からの信号を処理して、処理結果をカラーディスプレイ等の表示部60及びスピーカ等の音出力部59に出力する。
運転支援ECU50は、マイクロコンピュータを含む計算機であり、CPU(中央処理装置)、メモリであるROM(EEPROMも含む。)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、その他、A/D変換器、D/A変換器等の入出力装置、計時部としてのタイマ等を有しており、CPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行することで各種機能実現部(機能実現手段)、たとえば制御部、演算部、及び処理部等として機能する。
具体的に、この実施形態において、運転支援ECU50は、図2に示すように、残距離算出部61、加速度算出部62、通過速度範囲算出部63、通過可否判定部64、停止距離算出部65、距離比較部66、減速推奨部67、規定範囲確認部68、及び音出力部59からの音と表示部60上の表示出力を制御する表示制御部69等として機能する。
次に、基本的には以上のように構成される車両用運転支援装置10の動作について、図3に示すフローチャートに基づいて詳しく説明する。なお、フローチャートに係るプログラムの実行主体は、運転支援部として機能する運転支援ECU50である。
ステップS1にて、道路14を走行している車両12が光ビーコン送受信機24の設置地点Aを通過する際、その地点Aで、外部路側機である光ビーコン送受信機24から道路14の車両12の直進方向の下流の地点Bに設置されている複数の信号機20の信号情報70が光信号Lとして車両12の光ビーコン送受信機52により受信され(ステップS1:YES)、光ビーコン送受信機52を通じて運転支援ECU50に出力され、該運転支援ECU50が取得する(信号情報の取得)。
なお、ステップS1の判定は、路車間通信での信号情報70の受信が肯定的(ステップS1:YES)となるまで、否定的な判定(ステップS1:NO)が繰り返される。
図4は、ステップS1の路車間通信により得られた情報の例を示しており、運転支援ECU50に入力され一時的に図示しないメモリに記憶された信号情報70の構成例を示している。信号情報70には、各信号機20a〜20dの各信号情報として、灯色の遷移{第1灯色(現在点灯している灯色:現在の灯色ともいう。)、第2灯色(次に点灯予定の灯色:次の灯色ともいう。)、第3灯色(その次に点灯予定の灯色:その次の灯色ともいう。)}と、各灯色(色)と、第1、第2及び第3灯色の各残秒数が含まれている。
また、この実施形態において、信号情報70には、上流の地点Aから各信号機20が設置されている各交差点Bの各停止位置Cまでの距離Xa〜Xdが道路情報として含まれている。距離Xa〜Xdは、運転支援ECU50がナビゲーション装置54から現在地情報と地図情報を得て算出してもよい。
さらに、運転支援ECU50は、信号情報70として道路14の法定の最高速度(以下、制限速度という。)Vlimitを取得している。なお、制限速度Vlimitは、ナビゲーション装置54等から得ることもできる。
現在の灯色である第1灯色の残秒数は、通常、予定秒数より少ない値になっている点に留意する。つまり、通常、車両12が地点Aを通過するより前に第1灯色が点灯を開始しているからであり、地点Aを通過するときに第1灯色が点灯を開始したときにのみ、残秒数=予定秒数になるからである。
次いで、信号情報70を取得したとき、及びきわめて短い所定時間(処理周期)毎に、ステップS2にて、残距離算出部61は、信号情報70の受信時点からの経過時間と、受信地点Aからの走行距離を算出し、各灯色の残秒数及び各停止位置Cまでの各残距離X(残距離:X=Xa−走行距離、Xb−走行距離、Xc−走行距離、Xd−走行距離)を更新する。
ここで、前記走行距離は、車速センサ56から取得される車両12の速度(車両速度、車速)vに前記経過時間をかけることで算出することができる。走行距離は、ナビゲーション装置54を利用して算出するようにしてもよい。
このステップS2では、同時に、後述する規定距離Xrefの範囲の基準位置を設定乃至更新する。
次に、ステップS3にて、信号機20の通過等を支援しようとする車両12に対し、運転支援ECU50は、運転支援(通過支援、停止支援)の対象とする信号機20の数を決定する。より具体的には、ステップS3にて、規定範囲確認部(規定範囲設定部、規定範囲決定部又は規定範囲判定部ともいう。)68は、図5に示すように、道路14を走行する車両12の矢印で示す直進方向Gsd中、i(i=1,2,3…)番目の信号機20が、直近の信号機20の停止位置C(最初は、信号機20aの停止位置Ca)を基準位置とし、この基準位置から規定距離Xref以内にあるか否(設置されているか否)かを判定する。
図5例では、直近の交差点Baの停止位置Ca(基準位置)から規定距離Xrefの範囲以内に位置する信号機20a〜20cが運転支援対象の信号機20に決定される。この場合、車両12が、信号機20aが設置された交差点Baを通過した時点又はこの時点以降に、運転支援ECU50は、直進方向Gsd中、直近の信号機20となった信号機20bの停止位置Cb(交差点Bb)に基準位置変更し、この基準位置から規定距離Xref以内にある信号機20を運転支援対象の信号機20に更新する(上記ステップS2)。
運転支援対象とする信号機(支援対象信号機)20の数の決定方法は、上記した車両12の直近の信号機20の停止位置Cを基準位置としこの停止位置Cから規定距離Xref内の信号機20の数に決める考え方(第1考え方という。)の他に、車両12の現在位置(自車位置)を基準位置としこの現在位置から規定距離Xref内の信号機20の数に決める考え方(第2考え方という。)、車両12の直近の信号機20の停止位置Cの通過予定時間を基準時間としこの通過予定時間から規定時間Tref内に通過できる信号機20の数に決める考え方(第3考え方という。)、車両12の現在位置(自車位置)の現在時間を基準時間としこの現在時間から規定時間Tref内に通過できる信号機20の数に決める考え方(第4考え方という。)のいずれの考え方で決定してもよい。
ここで、具体的な規定距離Xrefの種々の決定の仕方例について説明する。
(1−1)規定距離Xrefは、現在速度v又は制限速度Vlimitからアクセルオフ操作による減速をして停止するのに必要な距離(停止距離Xstop)に設定してもよい。
図6は、減速による停止距離Xstopを算出するための走行シミュレーションモデル(走行モデル)82(減速特性)を示している。
この走行シミュレーションモデル82は、ドライバ反応時間をα[sec]、アクセルオフ(アクセルペダルがリターンスプリングにより原位置にもどっているアイドル状態)操作による減速度をa[m/sec2]、フットブレーキによる減速度をb[m/sec2](|a|<|b|)、現在速度をv[m/sec]、フットブレーキ操作を開始する減速目標速度をv´[m/sec]としている。
そこで、現在速度vで走行している現在位置(0)での停止距離Xstopは、ドライバが安全に停止しようと判断した位置{現在位置(0)}からドライバの反応時間αに基づく反応遅れを原因とする空走距離vαと、アクセルオフでの減速度aによる等加速度直線運動に基づく制動距離(v´2−v2)/2aと、フットブレーキでの減速度bによる等加速度直線運動に基づく制動距離(−v´2)/2bとの和として以下の(1)式により算出される。
Xstop=vα+{(v´2−v2)/2a}+{(−v´2)/2b}
=vα+[{(b−a)v´2−bv2}/2ab] …(1)
なお、アクセルオフによる減速度a、及びフットブレーキによる減速度bは、周知のように、路面の状態、タイヤの状態、及び荷物の積載量等の車両環境状態により変化するので、車種毎の各状態に対応した所定値を使用することが好ましく、それらの状態を検出し、記憶部(メモリ)等に記憶されている特性、マップ等から適合する所定値を選択するようにしてもよい。
走行シミュレーションモデル82において、現在速度vは、一般道路での最高速度である60[km/h]の制限速度Vlimitとしてもよい。この場合、走行シミュレーションモデル82は、制限速度Vlimitからアクセルオフによる減速をして停止するのに必要な停止距離Xstopということになる。
よって、図5に示した規定距離Xrefが図6に示した停止距離Xstopに決定される。
この場合、規定距離Xrefを、車両12の一般道の制限速度Vlimit=60[km/h]からアクセルオフして停止するのに必要な固定距離(固定値)として運転支援ECU50内のメモリ(記憶装置)に記憶しておいてもよい。
(1−2)また、規定距離Xrefは、図7の走行シミュレーションモデル(走行モデル)83(減速特性)に示すように、現在速度v又は制限速度Vlimitからアクセルオフ操作による減速をして通過支援の対象となる下限速度Vpassまで調整するのに必要な、次の(2)式により算出される距離Xpass1に設定してもよい。なお、通過支援の対象となる下限速度Vpassは、信号機20の灯色が交差点Bを進むことができる色の灯色下での通過支援において、自車両12の速度vが低すぎることによる後続車への影響を少なくするための速度である。
Xpass1=vα+{(Vpass2−v2)/2a} …(2)
この場合においても、規定距離Xrefは、車両12の一般道の制限速度Vlimit=60[km/h]からアクセルオフして通過支援の対象となる下限速度Vpassまで調整するのに必要な固定距離(固定値)として運転支援ECU50内のメモリ(記憶装置)に記憶しておいてもよい。
(1−3)さらに、規定距離Xrefは、図8の走行シミュレーションモデル(走行モデル)84(加速特性)に示すように、現在速度vから加速度a´で加速して制限速度Vlimitまで速度調整するのに必要な、次の(3)式により算出される距離Xpass2に設定してもよい。
Xpass2=vα+{(Vlimit2−v2)/2a´} …(3)
この場合においても、規定距離Xrefは、通過支援の対象となる下限速度Vpassから、車両12の一般道の制限速度Vlimit=60[km/h]まで加速して速度調整するのに必要な固定距離(固定値)として運転支援ECU50内のメモリ(記憶装置)に記憶しておいてもよい。
次に、具体的な規定時間Trefの種々の決定の仕方例について説明する。
(2−1)規定時間Trefは、現在速度v又は制限速度Vlimitからアクセルオフ操作による減速をして停止するのに必要な時間(停止時間Tstop)に設定してもよい。
図9は、減速による停止時間Tstopを算出するための走行シミュレーションモデル(走行モデル)82t(減速特性)を示している。
この走行シミュレーションモデル82tは、ドライバ反応時間をα[sec]、アクセルオフ(アクセルペダルがリターンスプリングにより原位置にもどっているアイドル状態)による減速度をa[m/sec2]、フットブレーキによる減速度をb[m/sec2](|a|<|b|)、現在速度をv[m/sec]、フットブレーキ操作を開始する減速目標速度をv´[m/sec]としている。
そこで、現在速度vで走行している現在位置(0)での停止時間Tstopは、ドライバが安全に停止しようと判断した時間{現在時間(0)}からドライバの反応時間αに基づく反応遅れを原因とする空走時間(符号はαとする。)と、アクセルオフでの減速度aによる等加速度直線運動に基づく制動時間{−(v−v´)/a}と、フットブレーキでの減速度bによる等加速度直線運動に基づく制動時間(−v´)/bの和として以下の(4)式により算出される。
Tstop=α+{−(v−v´)/a}+(−v´)/b …(4)
走行シミュレーションモデル82tにおいて、現在速度vは、一般道路での最高速度である60[km/h]の制限速度Vlimitとしてもよい。この場合、走行シミュレーションモデル82tは、制限速度Vlimitからアクセルオフによる減速をして停止するのに必要な停止時間Tstopということになる。
規定時間Trefは、車両12の一般道の制限速度Vlimit=60[km/h]からアクセルオフして停止するのに必要な固定時間(固定値)として運転支援ECU50内のメモリ(記憶装置)に記憶しておいてもよい。
(2−2)また、規定時間Trefは、図10の走行シミュレーションモデル(走行モデル)83t(減速特性)に示すように、現在速度v又は制限速度Vlimitからアクセルオフ操作による減速をして通過支援の対象となる下限速度Vpassまで調整するのに必要な、次の(5)式により算出される時間Tpass1に設定してもよい。
Tpass1=α+{(Vpass−v)/a} …(5)
この場合においても、規定時間Trefは、車両12の一般道の制限速度Vlimit=60[km/h]からアクセルオフして通過支援の対象となる下限速度Vpassまで調整するのに必要な固定時間(固定値)として運転支援ECU50内のメモリ(記憶装置)に記憶しておいてもよい。
(2−3)さらに、規定時間Trefは、図11の走行シミュレーションモデル(走行モデル)84t(加速特性)に示すように、現在速度vから加速度a´で加速して通過支援の対象となる一般道の制限速度Vlimitまで速度調整するのに必要な、次の(6)式により算出される時間Tpass2に設定してもよい。
Tpass2=α+{(Vlimit−v)/a´} …(6)
この場合においても、規定時間Trefは、下限速度Vpassから、通過支援の対象となる一般道の制限速度Vlimit=60[km/h]まで加速して速度調整するのに必要な固定時間(固定値)として運転支援ECU50内のメモリ(記憶装置)に記憶しておいてもよい。
以上(1−1)から(1−3)で説明した規定距離Xref、及び(2−1)から(2−3)で説明した規定時間Trefの設定に関し、直進方向Gsdで隣り合う交差点B間の距離(交差点間隔)が、上述した規定距離Xref未満、又は隣り合う交差点B間の走行予定時間が規定時間Tref未満の場合、想定した走行シミュレーションモデル82〜84、82t〜84t通りに走行できなく、運転支援の効果を最大限に得ることができない。つまり、交差点間隔が規定距離Xref又は規定時間Trefより短い場合には、さらに手前の信号機20から運転支援(通過支援及び停止支援)を開始しないと最大限の効果を達成することができないということが分かる。
図3のフローチャートにもどり、この実施形態では、いわゆるベストモードである上述した第1考え方(車両12の直近の信号機20の停止位置Cを基準位置としこの停止位置Cから規定距離Xref内の信号機20の数に決める条件)により支援対象の信号機20の数を決定している。
そこで、ステップS3にて、i(最初は、i=1)番目の信号機20a(図1、図5参照)が、最初に、支援対象の信号機20として決定される(ステップS3:YES)。
次に、ステップS4にて、通過速度範囲算出部63は、車両12の現在位置及び現在時刻に基づき、i(最初は、i=1)番目の信号機20(20a)に対する通過速度範囲Vrangeを算出する。この場合、次の(直近の)信号機20の青色灯21bが点灯している予定時間(予定秒数)の間に、すなわち青信号で、次の交差点B(Ba)を通過可能な速度範囲(通過速度範囲、通過可能速度範囲)Vrangeを算出する。なお、次の交差点B(Ba)を青信号で且つ制限速度Vlimit内で通過可能な速度範囲を通過速度範囲(通過可能速度範囲)Vrangelという。
例えば、図12に示すように、通過速度範囲Vrangeが算出される。この場合、走行中の車両12の現在位置(0)での現在時刻(0)からi番目の信号機20の現在の赤信号が終了するまでの時間をT1(残秒数)とし、現在時刻から次の青信号が終了するまでの時間(次の黄信号が開始するまでの時間)をT2{T1+(青信号の)予定秒数}とする。そうすると、通過速度範囲Vrangeのうち、実線で示している上限速度V1は、交差点Bの停止位置C(交差点位置)までの残距離Xを時間T1で割った次の(7)式により算出され、同様に実線で示している下限速度V2は、交差点Bの停止位置C(交差点位置)までの残距離Xを時間T2で割った次の(8)式により算出されることが分かる。
V1=X/T1 …(7)
V2=X/T2 …(8)
図12において、制限速度Vlimit及び下限速度Vpassは、破線で示している。また、時間T3は、次の黄信号が終了する時間(次の回の赤信号が開始する時間)を示している。
次いで、ステップS5にて、通過可否判定部64は、i(最初は、i=1)番目の信号機20に対する通過速度範囲Vrangelが存在するか否かを判定するために、青信号で通過可能な下限速度V2が制限速度Vlimit以下で、且つ青信号で通過可能な上限速度V1が通過支援の下限速度Vpass以上である条件を満足するか否かを判定する。
ステップS5の判定が肯定的(ステップS5:YES)である場合、ステップS6にて、i(最初は、i=1)番目の信号機20に対する通過速度範囲Vrangelを算出する。
このステップS6では、図12例の場合、交差点Bの信号機20を青信号で且つ制限速度Vlimit内で通過可能な通過速度範囲Vrangelは、通過速度範囲Vrangeに等しい(Vrangel=Vrange)範囲が算出される。
また、ステップS6では、図13例に示すように、制限速度Vlimitが上限速度V1と下限速度V2との間に存在する場合、交差点Bの信号機20を青信号で通過可能な下限速度V2と制限速度Vlimitとの間の速度範囲が通過速度範囲Vrangelとして算出される。
ステップS6の通過速度範囲Vrangel算出後に、再び、ステップS3にて、規定範囲確認部68は、道路14を走行する車両12の直進方向Gsd中、i=2番目の信号機20bが、直近の信号機20aの停止位置Caから規定距離Xref以内にあるか否かを判定する。
ステップS3の判定が肯定的(ステップS3:YES)であるとき、ステップS4にて、i=2番目の信号機20bに対する通過速度範囲Vrangeを算出する。
さらに、ステップS5にて、通過可否判定部64は、i=2番目の信号機20bに対する通過速度範囲Vrangelが存在するか否かを判定するために、青信号で通過可能な下限速度V2が制限速度Vlimit以下で、且つ青信号で通過可能な上限速度V1が通過支援の下限速度Vpass以上である条件を満足するか否かを判定する。
ステップS5による判定が肯定的(ステップS5:YES)である場合、ステップS6にて、i=2番目の信号機20bに対する通過速度範囲Vrangelを算出する。そして、再び、ステップS3にて、規定範囲確認部68は、道路14を走行する車両12の直進方向Gsd中、i=3番目の信号機20cが、直近の信号機20aの停止位置Caから規定距離Xref以内にあるか否かを判定する。
ステップS3の判定が肯定的(ステップS3:YES)であるとき、ステップS4にて、i=3番目の信号機20cに対する通過速度範囲Vrangeを算出する。
さらに、ステップS5にて、通過可否判定部64は、i=3番目の信号機20cに対する通過速度範囲Vrangelが存在するか否かを判定するために、青信号で通過可能な下限速度V2が制限速度Vlimit以下で、且つ青信号で通過可能な上限速度V1が通過支援の下限速度Vpass以上である条件を満足するか否かを判定する。
ステップS5による判定が肯定的(ステップS5:YES)である場合、ステップS6にて、i=3番目の信号機20cに対する通過速度範囲Vrangelを算出する。そして、再び、ステップS3にて、規定範囲確認部68は、道路14を走行する車両12の直進方向Gsd中、i=4番目の信号機20dが、直近の信号機20aの停止位置Caから規定距離Xref以内にあるか否かを判定する。
図5を参照すれば、ステップS3の信号機20dに対する今回の位置判定は否定的(ステップS3:NO)となることが分かる。
このときには、ステップS7にて、通過速度範囲算出部63及び表示制御部69は、青信号で通過可能な信号機20a〜20cに対してステップS5で算出した通過速度範囲Vrangelをマージして(andをとって)、例えば、図14に示すように、交差点Ba、Bb、Bcを信号機20の灯色(青色灯21b)に従ってノンストップで通過できる通過速度範囲Vrangelに対応する通過速度範囲VRbを表示する。
図14において、表示部60上に円弧形状の速度目盛72と指針74(インジケータ)を備える速度計76が表示され、この速度計76に関連付けて、円弧形状の速度計76の周囲に、赤信号が終了し青信号が開始するタイミングで交差点Ba〜Bc(停止位置Ca〜Cc)を通過するための速度V1min{マージした上限速度V1の最小値(最小速度、最低速度)}を最大通過速度(最高通過速度)とし、青信号が終了し黄信号が開始するタイミングで交差点Ba〜Bc(停止位置Ca〜Cc)を通過するための速度V2max{マージした下限速度V2の最大値(最大速度、最高速度)}を最小通過速度(最低通過速度)とする通過速度範囲VRbが青色系の色で表示される。
この図14例の表示では、現在の車両速度vを示す速度計76の指針74が通過速度範囲VRbを上回る速度を指しているので、ドライバは指針74が青色系の通過速度範囲VRbに入るようにアクセル開度を小さくし、指針74を上限速度V1minより低くすることにより信号機20a〜20cが設置された交差点Ba〜Bcの全てを、いわゆる青信号下に通過することができる。この場合、音出力部59を通じて音声により、現在の速度vを通過速度範囲VRbに入るように低くすることにより、信号機20a〜20cを青信号で通過できる可能性が高いことを通知してもよい。
また、図14においては、表示部60の中央部の表示部で燃費等の表示が可能な、いわゆるマルチインフォメーションディスプレイ80に、制限速度Vlimit(実際には、例えば、60[km/h])の表示80aをしている。ステップS7の通過速度範囲の表示処理後には、ステップS2の処理にもどる。
一方、ステップS5の判定が否定的(ステップS5:NO)である場合、すなわち、通過可否判定部64が、青信号で通過可能な下限速度V2が制限速度Vlimitを上回っている場合(V2>Vlimit)及び青信号で通過可能な上限速度V1が通過支援の下限速度Vpassを下回っている場合(V1<Vpass)の少なくとも1つの条件判定が成立した場合、通過可否判定部64は、該当交差点Bの信号機20を青信号下で通過することは不可能(通過不可)と判定する。
この場合、停止距離算出部65は、ステップS8にて、図6の走行シミュレーションモデル82を参照して説明した、該当交差点Bの停止位置Cで安全に停止できる減速による停止に必要な停止距離Xstopを算出する。
次いで、ステップS9にて、距離比較部66は、ステップS2にて算出した現在位置から該当交差点Bの停止位置Cまでの残距離Xが、ステップS8にて算出した停止距離Xstopより短い(X≦Xstop)か否かを判定し、同時に、通過可否判定部(第2の通過可否判定部として機能する。)64は、ステップS5の判定が肯定的となっていて(ステップS5:YES)、青信号で通過可能と判定されている全ての信号機20を現時点(青信号の残秒数ΔT)でアクセルオフ操作を行って減速してもノンストップで通過可能か否かを判定する。
ステップS9における通過可否判定部64の判定動作等について、例として、図19の比較例に、この実施形態に係る線図等を追加した図15を参照して、その作用効果をより詳しく説明する。
図15において、位置0・時間0の現在位置の判定にて、現在速度vで走行すると、1つ目の信号機20aは、青信号で通過できるが、2つ目の信号機20bは、制限速度Vlimitを上回る速度でないと通過できないので、通過不可である。図19を参照して説明したように、2つ目の信号機20bを考慮して位置Pでアクセルオフ操作を推奨してしまうと、1つ目の信号機20aを青信号で通過することができなくなる。この場合において、1つ目の交差点Baの位置(停止位置Ca)からの距離が距離Dの位置(臨界位置ともいう。)Rより交差点Baに近い側の位置でアクセルオフ操作を推奨すれば、1つ目の交差点Baを青信号で通過できることが分かる。
つまり、交差点Baまでの距離Dが、アクセルオフを推奨したときの空走距離D1とアクセルオフをしながら交差点Baに到達するまで走行した距離D2の和より小さくなった位置(D≦D1+D2)が臨界位置Rとなる。
具体的に距離Dは、アクセルオフを推奨したときのドライバ反応時間をα、青信号が黄信号に切り替わるタイミングまでの時間(残秒数)をα+ΔT、アクセルオフ時の減速度をaとすると、次の(9)式を満足すればよい。
D≦vα+vΔT+(aΔT2/2)
≦v(α+ΔT)+(aΔT2/2) …(9)
なお、現在位置(位置0・時間0)から臨界位置Rまでの距離XRは、交差点Baから現在位置(位置0・時間0)までの距離をXtotalとすれば、次の(10)式で算出でき、現在位置(位置0・時間0)から臨界位置Rまでの時間TRは、次の(11)で算出できる。
XR=(Xtotal−D) …(10)
TR=(Xtotal−D)/v …(11)
ステップS9の判定が否定的である場合には、ステップS2以降の処理を繰り返す(ステップS2→ステップS3:YES→ステップS4→ステップS5:NO→ステップS8→ステップS9)。
ステップS9の判定が肯定的となった場合には、ステップS10にて、減速推奨部67は、ドライバに対してアクセルオフ操作を促すアクセルオフ推奨処理を行う。
この場合、アクセルオフ推奨処理では、図16に示すように、表示部60のマルチインフォメーションディスプレイ80に「アクセルオフ推奨(アクセルOFF推奨)」との表示80bをするようにしている。同時に音出力部59から音声で「アクセルオフを推奨します」とアクセルオフを促す出力をするようにしてもよい。以降、ステップS2の処理にもどる。
なお、表示制御部69による表示部60のマルチインフォメーションディスプレイ(表示部)80への表示は、図17に示すように道路14を走行中、所定位置で変化させて表示させることが好ましい。
表示内容につき、図18の拡大図も参照してより詳しく説明すれば、位置0から臨界位置Rまでは、表示80Zを表示する。臨界位置Rから位置Q(交差点Ba)までの間では表示80Rを表示する。位置Qから交差点Bbで停止するまでは、表示80Qを表示する。
表示80Z、80Rでは、遠近感が感じられるように、直進方向Gsdの道路14を模擬した台形状表示102上に、それぞれ、台形状表示102の台形の高さよりも高さが低い1つ目の交差点Baの交差道路を模擬した台形状表示104を手前側(図中、下側)に重ねて描画するとともに、2つめの交差点Bbの交差道路を模擬した台形状表示106を奥側(図中、上側)に重ねて描画する。
手前側の交差道路を模擬した手前側の台形状表示104の台形の高さ及び幅(下底と上底の長さ)は、遠近感が感じられるように、奥側の交差道路を模擬した奥側の台形状表示106の台形の高さ及び幅(下底と上底の長さ)より大きくしている。
また、表示80Z、80Rでは、手前側の交差道路を模擬した台形状表示104の奥側(図中、上側)に交差点Baの信号機20aを模擬した信号機表示(1つ目の信号機表示)108をし、奥側の交差道路を模擬した台形状表示106の奥側(図中、上側)に交差点Bbの信号機20bを模擬した信号機表示(2つ目の信号機表示)110をする。
さらに、表示80Z、80Rでは、道路14を模擬した台形状表示102の下底側近傍を始点とし、手前側の信号機20aを模擬した信号機表示108の近傍を終点とする烏賊模様等の矢印表示112をし、この矢印表示112により自車両12が信号機表示108に対応した手前側の信号機20aを青信号で通過可能なことをドライバに知らせることを意図する。この場合、奥側の信号機20bを模擬した信号機表示110の手前側(図中、下側)には、矢印表示を描画しないことで、自車両12が奥側の信号機20bを青信号で通過不可なことをドライバに知らせることを意図する。
表示80Z、80Rにより、ドライバは、車両12の現在位置(概ね矢印表示112の始点側中央近傍の位置又は道路14を模擬した台形状表示102の台形の下底の中央近傍の位置で擬制される。)と、通過不可交差点Bb(手前側に矢印表示112の無い信号機表示110で知らされる。)と、通過可能交差点Ba(手前側に矢印表示112が描画された信号機表示108で知らされる。)との位置関係を明確に知ることができる。ドライバは、表示80Rにより、どの交差点B(この例では、交差点Bb)に向けたアクセルオフ操作を推奨しているのかを知ることができる。
自車両12が臨界位置Rに到達したときに、表示制御部69は、マルチインフォメーションディスプレイ(表示部)80の表示を表示80Zから表示80Rに切り替え、さらに道路14を模擬した台形状表示102の台形の下底側より図中下側に「アクセルオフ推奨」と表示し、臨界位置Rで、ドライバに対しアクセルオフ操作を推奨する。
さらに、交差点Ba(位置Q)を通過した後、表示制御部69は、マルチインフォメーションディスプレイ(表示部)80の表示を表示80Rから表示80Qに切り替える。
この表示80Qでは、車両12が通過した1つ目の交差点Baの交差道路を模擬した台形状表示104と、信号機20aを模擬した信号機表示108が非表示と(消去)され、さらに矢印表示112も非表示と(消去)され、奥側の交差道路を模擬した台形状表示106と奥側の信号機20bを模擬した信号機表示110が残される。この表示80Qにより自車両12が直近の信号機となった奥側の信号機20bを青信号で通過不可(赤信号で停止不可避)なことをドライバに知らせる。
表示80Qは、交差点Bbの停止位置Cbで停止したときに消去され、その際、マルチインフォメーションディスプレイ80の表示は、例えば、赤信号から青信号への信号待ち時間の表示とされる。
なお、各表示80Z、80R、80Qは、白黒反転表示にしてもよい。信号機20a、20bの灯色を信号情報70に基づきリアルタイムに信号機表示108、110に反映させるカラー表示にすることもできる。
[実施形態のまとめ]
以上説明したように、車両12に搭載されたこの実施形態に係る車両用運転支援装置10は、車両12の直進方向に位置する複数の交差点Ba〜Bdにそれぞれ設置された各信号機20a〜20dの灯色の遷移、及び各前記灯色の点灯時間を含む信号情報70を車外の光ビーコン送受信機24から受信する受信部としての光ビーコン送受信機52と、自車両12の位置から複数の各交差点Ba〜Bdまでの距離を示す各残距離Xを算出する残距離算出部61と、前記信号情報70と各前記残距離Xに基づいて、複数の前記交差点Ba〜Bdを前記信号機20の灯色に従ってノンストップで通過できない交差点(例えば、図15中、Bb)を示す通過不可交差点Bbを特定する通過可否判定部(第1の通過可否判定部)64と、通過可否判定部64により通過不可交差点Bbが特定された場合には、減速による停止に必要な距離を示す停止距離Xstop(図6参照)を算出する停止距離算出部65と、前記残距離Xと前記停止距離Xstopを比較する距離比較部66と、距離比較部66により、通過不可交差点Bbまでの残距離≦停止距離(X≦Xstop)、を満たすと判定されたとき(位置P)、現時点(図15中、位置R)で減速を開始したと仮定したときに、自車両12の位置と通過不可交差点Bbとの間に位置する手前側の交差点Baをその信号機20aの灯色に従ってノンストップで通過可能であるか否かを判定する通過可否判定部(第2の通過可否判定部)64(ステップS9)と、当該通過可否判定部64により、通過不可交差点Bbより手前側にある交差点Baがその信号機20aの灯色に従ってノンストップで通過可能であると判定された(ステップS9:YES)場合に、ドライバに減速操作を推奨する減速推奨部67(ステップS10)と、を備える。
この実施形態によれば、車両12の直進方向Gsdに位置する複数の交差点Ba〜Bdにそれぞれ設置された各信号機20a〜20dの信号情報70を地点Aで一括して受信し各信号機20a〜20dの灯色に従ってノンストップで通過できない交差点を示す通過不可交差点Bbを特定したとき(例えば、図15の位置0)、前記通過不可交差点Bbで停止支援するための減速操作(図6)を推奨する通常のタイミング(図15の位置P)になったとき、現時点で減速操作をしても、自車両12の位置と通過不可交差点Bbとの間に位置する手前側の交差点Baが該交差点Baの信号機20aの灯色に従ってノンストップで通過可能であると判定した場合、ドライバに前記通常のタイミングに比較して遅れたタイミング(図15の位置R)での減速操作を推奨するようにしたので、図19を参照して説明した比較例のように、その灯色に従う停止が避けられない信号機(通過不可信号機20b)が設置された交差点(通過不可交差点)Bbに対して早めの減速操作を促した結果、本来通過できたはずの信号機(この場合、上記信号機20a)で自車両12が停止してしまう不都合を防止することができる。
この結果、後続車への影響も少なくなり、交通流の悪化を防止することができる。
この場合、前記減速操作は、アクセルオフ操作を含むようにすることで、アクセルオフ操作によるエンジンブレーキ及び/又は回生ブレーキ(モータの回生動作によるブレーキ)が利用されて車両12の燃費の悪化を防止することができる。
さらに、車両12の位置と、前記通過不可交差点Bbと、前記通過可能交差点Baとの位置関係を表示する表示部60を備えることで、ドライバは、どの交差点Bに向けた減速操作を推奨しているのかを知ることができる。
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。