これ以降の説明において特に記載がない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を、それぞれ意味する。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、60℃における線熱膨張係数αがフィルム面内で最大となる軸(x)における線熱膨張係数αxと、軸(x)とフィルム面内で直交する方向の軸(y)における線熱膨張係数αyが以下の関係を満たす。
αx−αy≧10.0×10−6 (/K)
αx−αyの上限は特に限定されないが、例えば、100×10−6(/K)以下である。
なお、フィルムの線熱膨張係数αは、熱機械分析装置TMA−60(島津製作所社製)を用い下記測定条件から60℃における傾きとして求めた。
・試料サイズ 5×20mm
・試料の前処理 60℃で15時間の前処理を行い室温まで冷却した
・測定加重 5g
・昇温速度 5℃/分
また、線熱膨張係数αがフィルム面内で最大となる軸(x)における線熱膨張係数をαx、軸(x)とフィルム面内で直交する方向の軸(y)における線熱膨張係数をαyとした。
光学フィルムのαxとαyが上記の関係を満たさない場合は、本発明の効果が十分発現されず、偏光板にした際にカールが大きくなることがある。
本発明の光学フィルムにおいては、前記αxが大きいと本発明の効果が顕著となり、αxは40×10−6(/K)以上が好ましく、45(×10−6/K)以上がより好ましく、50×10−6(/K)以上がさらに好ましく、55×10−6(/K)以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、100×10−6(/K)以下である。
本発明の光学フィルムは、MIT耐折度試験機による軸(x)の耐折回数と軸(y)の耐折回数がともに3回以上である。上限は特に限定されないが、例えば、10000回でも切断しないことが好ましい。どちらか一方が3回未満の場合、フィルムの可とう性が十分でないため、製造工程や光学部材として使用する場合にフィルムが切断していしまうなどの問題が発生することがある。
なお、フィルムの耐折回数は、MIT耐折度試験機(テスター産業製、BE−201型)を用いて、23℃、50%RHの状態に1時間以上静置させた、折り曲げ線が60℃における線熱膨張係数αがフィルム面内で最大となる軸(x)に平行となる長さ90mm(幅15mm)の試験フィルムを使用し、荷重200gの条件で、JIS P8115に準拠して測定し、5枚のサンプルの平均値を軸(x)の測定結果とした。また、軸(x)とフィルム面内で直交する方向の軸(y)に平行となる試験フィルムを使用し、軸(x)と同じ条件で測定を行い、軸(y)の測定結果とした。
前記光学フィルムのガラス転移温度は、110℃以上であることが好ましい。より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。ガラス転移温度が110℃以上であると、光学フィルムの可とう性が低下するため、製造時の破断が起こりやすくなり、本発明の効果が顕著に見られる。ここで、ガラス転移温度とは、ポリマー分子がミクロブラウン運動を始める温度であり、各種の測定方法があるが、本発明においては、示差走査熱熱量計(DSC)によって、JIS−K7121に準拠して、始点法で求めた温度と定義する。
前記光学フィルムの膜厚は、1μm以上500μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以上350μm以下、さらに好ましく10μm以上100μm以下である。膜厚が1μmよりも薄いと、強度に乏しいため好ましくない。
前記光学フィルムは、全光線透過率が好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上である。
本発明の光学フィルムの面内位相差Reおよび厚さ方向位相差Rthは、表示装置に使用される液晶セルの種類や組み合わせるその他の光学補償層の性能に応じて、適宜設定することが可能である。
ここでいう面内位相差Reは、
Re=(nx−ny)×d
で、厚さ方向位相差Rthは、
Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
で、定義される。なお、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内でnxと垂直方向の屈折率、nzはフィルム厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。遅相軸方向は、フィルム面内の屈折率が最大となる方向とする。
前記光学フィルムが低位相差である場合、面内位相差Reは10nm以下が好ましい。より好ましくは、5nm以下、さらに好ましくは3nm以下である。また、厚さ方向位相差Rthの絶対値は10nm以下が好ましい。より好ましくは、5nm以下、さらに好ましくは3nm以下である。
本発明の光学フィルムは、熱可塑性樹脂からなることが好ましい。熱可塑性樹脂としては公知の熱可塑性樹脂が可能である。加熱により軟化して塑性を示し、冷却すると固化する熱可塑性樹脂であれば、特には限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ノルボルネンポリマーなどのオレフィンポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などのハロゲン含有ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;トリアセチルセルロースなどのセルロース類;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルニトリル;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド等が挙げられ、これらを2種類以上含まれていてもよい。光学用途には非晶性熱可塑樹脂が好ましく、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シクロオレフィンポリマー(オレフィン樹脂)が挙げられる。
本発明の光学フィルムは、熱可塑性アクリル系重合体を含むことが好ましい。熱可塑性アクリル系重合体を含む熱可塑性アクリル樹脂からなる光学フィルムは脆いため、製造時の破断が起きやすく、本発明の効果が顕著である。
なお、本明細書における「樹脂」は「重合体」よりも広い概念である。樹脂は、例えば1種または2種以上の重合体からなってもよいし、必要に応じて、重合体以外の材料、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、フィラーなどの添加剤、相溶化剤、安定化剤などを含んでいてもよい。
前記熱可塑性アクリル系重合体のガラス転移温度は、110℃以上であることが好ましい。より好ましくは110℃以上300℃以下、さらに好ましくは115℃以上250℃以下、特に好ましくは120℃以上200℃以下である。ガラス転移温度が110℃以上であると、光学フィルムの可とう性が低下するため、製造時の破断が起こりやすくなり、本発明の効果が顕著に見られる。
本発明の光学フィルムが熱可塑性アクリル系重合体を含む場合、光学フィルムにおける熱可塑性アクリル系重合体の含有率は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。アクリル系重合体は高い光線透過率や低い屈折率の波長依存性などの優れた光学特性を有するため、光学フィルムとして好適である。
前記アクリル系重合体としては、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含む公知のアクリル系重合体を使用できる。アクリル系重合体の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有率の合計は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに特に好ましくは50質量%以上、さらに特に好ましくは70質量%以上である。また、アクリル系重合体は、環構造を有する単量体との共重合や重合後の環化反応などにより主鎖に環構造を導入してもよい。この場合、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位および環構造の合計が全構成単位の50質量%以上であれば、アクリル系重合体とする。
(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルおよび2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどのα−ヒドロキシアクリル酸メチルなどの各単量体に由来する構成単位である。アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸メチル単位を有することが特に好ましく、この場合、成形品の光学特性と熱安定性が向上する。アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、これらの構成単位を2種以上有していてもよい。
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位以外の構成単位を有していてもよい。環化反応により主鎖に環構造を導入する場合、アクリル系重合体は重合時に水酸基やカルボン酸基を有する単量体を共重合することが好ましい。具体的には、水酸基を有する単量体として、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ブチル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、また、カルボン酸基を有する単量体として(メタ)アクリル酸単位は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの単量体に由来する構成単位が挙げられる。これらの単量体を2種類以上共重合有していてもよい。水酸基やカルボン酸基を有する単量体は環化反応により環構造へと変化するが、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体に未反応の水酸基やカルボン酸基を有する単量体由来の構成単位が含まれていてもよい。
また、前記アクリル系重合体は、特に限定されず、その他の構成単位を有していてもよい。また、前記スチレン系重合体も、特に限定されず、その他の構成単位を有していてもよい。このような構成単位は、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタリルアルコール、アリルアルコール、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、酢酸ビニル、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、メチルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾールなどの単量体に由来する構成単位である。アクリル系重合体およびスチレン系重合体は、これらの構成単位を2種以上有していてもよい。
前記アクリル系重合体は、特に限定されないが、主鎖に環構造を有することが好ましい。主鎖が環構造を有することにより、得られる光学フィルムの耐熱性が向上する。主鎖の環構造としては、シクロヘキシルマレイミド、メチルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミドなどのN−置換マレイミド、または、無水マレイン酸を共重合してN−置換マレイミド由来の環構造や無水酸無水物由来の環構造を導入してもよいし、重合後の環化反応により、主鎖にラクトン環構造、グルタル酸無水物構造、グルタルイミド構造、N−置換マレイミド由来の環構造などを導入してもよい。耐熱性からは、ラクトン環構造、環状イミド構造(N−アルキル置換マレイミド由来の環構造やグルタルイミド環など)および環状酸無水物構造(無水マレイン酸由来の環構造やグルタル酸無水物など)を有するものが好ましい。樹脂に正の固有複屈折を付与し、結果として、得られる光学フィルムに正の位相差を付与できることから、ラクトン環構造、グルタルイミド環構造およびグルタル酸無水物構造が好ましい。この中では、波長依存性などの光学特性から、主鎖にラクトン環構造を持つものが特に好ましい。
なお、重合体の固有複屈折の正負は、重合体の分子鎖が一軸配向した層(例えば、シートあるいはフィルム)において、当前記層の主面に垂直に入射した光のうち、当前記層における分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な振動成分に対する層の屈折率n1から、配向軸に垂直な振動成分に対する層の屈折率n2を引いた値「n1−n2」に基づいて判断できる。固有複屈折の値は、各々の重合体について、その分子構造に基づく計算により求めることができる。また、樹脂の固有複屈折は、当前記樹脂が含む各重合体や添加剤の固有複屈折の兼ね合いにより決定される。
主鎖のラクトン環構造に関しては、4〜8員環でもよいが、構造の安定性から5〜6員環の方がより好ましく、6員環が更に好ましい。また、主鎖のラクトン環構造が6員環である場合、主鎖にラクトン環構造を導入する前の重合体を合成する上において重合収率が高い点や、ラクトン環構造の含有割合の高い重合体を得易い点、更にメタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルとの共重合性が良い点で、下記一般式(1)で表される構造であることが好ましい。
(式中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいても良い。有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数が1〜20の範囲のアルキル基;エテニル基、プロペニル基などの炭素数が1〜20の範囲の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数が1〜20の範囲の芳香族炭化水素基;前記アルキル基、前記不飽和脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、水素原子の一つ以上が水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;である。)
アクリル系重合体が主鎖に環構造を有する場合、環構造の含有率は特に限定されないが、通常、5〜90質量%であり、10〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%がさらに好ましい。前記含有率が過度に小さくなると、樹脂を成形して得た樹脂成形品の耐熱性が低下したり、耐溶剤性および表面硬度が不十分となることがある。一方、前記含有率が過度に大きくなると、樹脂の成形性、ハンドリング性が低下する。
前記アクリル系重合体の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは50,000〜300,000である。
前記アクリル系重合体は、特に限定されず、公知の製法で製造することが出来る。例えば、アクリル重合体は上述したアクリル酸エステルを含む単量体群を重合して形成できる。
重合方法としては特に限定されず、ラジカル性やイオン性の開始剤による重合が可能である。重合形態としても特に限定されず、バルク重合や溶液重合、エマルジョン重合や懸濁重合を行うことが可能である。また、重合後は必要に応じて、乾燥や脱揮などの処理を行い、粉体やペレットとすることも出来る。
主鎖に環構造を有するアクリル系重合体は公知の方法により製造できる。環構造が無水グルタル酸構造あるいはグルタルイミド構造であるアクリル系重合体は、例えば、WO2007/26659号公報あるいはWO2005/108438号公報に記載の方法により製造できる。環構造が無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド由来の構造であるアクリル系重合体は、例えば、特開昭57−153008号公報、特開2007−31537号公報に記載の方法により製造できる。環構造がラクトン環構造であるアクリル系重合体は、例えば、特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報あるいは特開2007−63541号公報に記載の方法により製造できる。
本発明の光学フィルムは、前記アクリル系重合体や以外のその他の熱可塑性樹脂(重合体)を含んでいてもよい。これらのその他の熱可塑性樹脂(重合体)は、特に種類は問わないが、例えば、スチレン系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール:ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド:ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン:ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリルゴムやブタジエンゴムなどを配合したゴム質重合体;などが挙げられる。その他の熱可塑性樹脂の添加量は好ましくは50質量%未満、より好ましくは20質量%未満、さらに好ましくは10質量%未満、とくに好ましくは3質量%未満である。
その他の熱可塑性樹脂がスチレン系重合体の場合、前記フィルムがアクリル系重合体とスチレン系重合体を含むことにより、アクリル系重合体の優れた光学特性とスチレン系重合体の負の固有複屈折を共に備えた光学フィルムとなり、負の位相差を有する位相差フィルムに好適に使用できる。また、熱可塑性アクリル系重合体が主鎖に正の位相差を付与できるラクトン環構造、グルタルイミド環構造およびグルタル酸無水物構造などの環構造を有する場合には熱可塑性アクリル重合体が正の固有複屈折となる場合が有り、スチレン系重合体の負の固有複屈折と相殺して、低位相差の光学フィルムとして好適に使用できる。
本発明の光学フィルムは、特に限定されないが、正の固有複屈折を有するアクリル系重合体と負の固有複屈折を有するスチレン系重合体を含むことが好ましい。この場合、正の固有複屈折を有するアクリル系重合体の含有率と負の固有複屈折を有するスチレン系重合体の含有率の比は、50/50〜100/0が好ましく、より好ましくは、60/40〜95/5、特に好ましくは70/30〜90/10である。正の固有複屈折を有するアクリル系重合体と負の固有複屈折を有するスチレン系重合体の含有率を変えることにより、正から負の広い範囲で光学フィルムの位相差の制御が可能となる。
前記スチレン系重合体としては特に限定されず、スチレン系単量体に由来する構成単位を含む公知のスチレン系重合体を使用できる。スチレン系単量体としては特に限定されず、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、クロロスチレンなどが挙げられる。スチレン系重合体のスチレン系単量体に由来する構成単位の含有率は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。また、スチレン系重合体は、環構造を有する単量体との共重合や重合後の環化反応などにより主鎖に環構造を導入してもよい。この場合、スチレン系単量体由来の構成単位および環構造の合計が全構成単位の50質量%以上であれば、スチレン系重合体とする。
スチレン系重合体の具体的な種類は特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−マレイミド共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などであってもよい。アクリル系重合体との相容性に優れることから、アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体に由来する構成単位を含むスチレン系重合体が好ましく、アクリロニトリルに由来する構成単位を含むスチレン系重合体がより好ましく、アクリロニトリル−スチレン共重合体やアクリロニトリル−スチレン−マレイミド共重合体が特に好ましい。
なお、スチレン系重合体がアクリル系重合体と相容性を有するか否かは、両者を混合して得た樹脂のTgを後述する方法によって測定することにより確認できる。一般的には、当前記樹脂のTgが1点のみ確認されれば、スチレン系重合体はアクリル系重合体と相容性を有しているといえる。
スチレン系重合体が、アクリロニトリル−スチレン共重合体である場合、当前記共重合体の全構成単位におけるスチレン単位が占める割合は特に限定されないが、通常、60〜80質量%程度の範囲であればよい。
スチレン系重合体がアクリロニトリル−スチレン−マレイミド共重合体である場合、当前記共重合体の全構成単位におけるスチレン単位が占める割合は特に限定されないが、通常、55〜80質量%程度の範囲であればよい。
スチレン系重合体はグラフト鎖にスチレン系重合体を有するゴム質重合体を含んでいてもよい。グラフト鎖にスチレン系重合体を有するゴム質重合体は、特に限定されないが、例えば、微粒子のアクリルゴムやブタジエンゴムなどの存在下にスチレン系単量体を含む単量体を重合することによって製造が可能である。
グラフト鎖にスチレン系重合体を有するゴム質重合体としては、グラフト鎖にアクリロニトリルに由来する構成単位を含むスチレン系重合体を有するゴム質重合体が好ましい。グラフト鎖がアクリロニトリルに由来する構成単位を含むと、アクリル重合体との相容性が向上するため、樹脂中でゴム質重合体が均一に分散し、得られる位相差フィルムの全光線透過率が向上する。具体的には、アクリルゴムやブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴムにアクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフトしたASA樹脂やABS樹脂、AES樹脂が挙げられ、スチレン系重合体の負の固有複屈折を低下させないことから、ASA樹脂が特に好ましい。
スチレン系重合体の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは50,000〜300,000である。
その他の熱可塑性樹脂がゴム質重合体を含む場合、光学フィルムも含めたフィルムの耐折り曲げ性の向上が期待できる。ゴム質量体を含む場合、光学フィルム中のゴム質重合体の含有割合は、好ましくは30質量%未満、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下ある。ゴム質重合体としては、アクリル系重合体と相溶し得る組成のグラフト部を有しているため、ゴム質量体が光学フィルム中に均一に分散することが可能となる。また、ゴム質重合体の平均粒子径は、フィルムとした際の透明性向上の観点から、300nm以下である事が好ましく、150nm以下である事が更に好ましい。
本発明の光学フィルムは、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤は、例えば、位相差上昇剤、位相差低減剤などの位相差調整剤;位相差安定剤、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;酸化防止剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤に代表される帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー;樹脂改質剤;可塑剤;滑剤;難燃剤;ASAやABSなどのゴム質量体などである。その他の添加剤の添加量は、例えば0〜5質量%であり、好ましくは0〜2質量%であり、より好ましくは0〜0.5質量%である。
本発明における熱可塑性樹脂の製造方法は特に限定されず、必要に応じて、上述した重合体や樹脂と公知の添加剤とを公知の方法により混合して製造できる。例えば、重合体や樹脂と添加剤を溶剤に溶解してから混合した後、溶液キャスト法により成膜、乾燥することで、フィルム状の熱可塑性樹脂が製造可能である。また、重合体や樹脂と添加剤を押出機などで溶融させて混合してもよく、必要に応じて、ペレタイザーなどによりペレット化してもよい。
本発明の光学フィルムは、2軸延伸フィルムであることが好ましい。2軸延伸フィルムであることにより、光学フィルムに含まれる重合体や樹脂のポリマー鎖が面内で配向し、前記軸(x)と軸(y)のフィルム面内で直交する両方向での可とう性が向上する。
本発明の光学フィルムは、長尺状のフィルムであって、前記軸(x)が流れ方向(MD)であり、前記軸(y)が幅方向(TD)であることが好ましい。軸(x)が流れ方向(MD)であり、前記軸(y)が幅方向(TD)であることにより、偏光フィルムとロール・ツー・ロールで貼り合わせて偏光板を効率よく製造することが容易となる。
本発明の光学フィルムには、目的に応じて、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、光拡散層、ガスバリヤー層等の種々の機能性コーティング層を各々積層塗工したり、光学フィルムに各々の単独の機能性コーティング層が塗工された部材を粘着剤や接着剤を介して積層した積層体であってもよい。なお、各層の積層順序は特に限定されるものではなく、積層方法も特に限定されない。
本発明の光学フィルムは、特に限定されるものではないが、光学用途に用いることが好適である。好ましくは、液晶表示装置用の偏光板に用いる偏光子保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルム、各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板の保護フィルム、拡散板、導光体、位相差板、プリズムシート等が挙げられ、この中でも、位相差フィルムであることが特に好ましい。例えば、STN型LCD、TFT−TN型LCD、OCB型LCD、VA型LCD、IPS型LCDなどの各種LCDの位相差フィルム、偏光子保護フィルムの機能を有する位相差フィルム、偏光板との積層フィルム、光学補償フィルム、偏光板光学補償フィルムに好適に使用できる。特に、低位相差や位相差機能付きの偏光子保護フィルムにおいては、市場で要望される位相差の要求性能を満たすために、温度や倍率などの延伸条件の制限が多く、本発明の効果が特に顕著に発現される。
次に、本発明の光学フィルムにおいて好適な製造方法について説明する。本発明の光学フィルムの製造方法は特に限定されず、公知の製法が可能である。
延伸前のフィルム成形の方法としては、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法など、公知のフィルム成形方法が挙げられる。これらの中でも、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が好ましい。
溶融押出法の具体的な例としては、押出混練に用いる混練機は特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機、あるいは加圧ニーダーなどの公知の混練機を用いることができる。また、熱可塑性樹脂と、必要に応じて添加剤を添加し、オムニミキサーなどの混合機でプレブレンドした後、得られた混合物を混練機から押出混練してもよい。
溶融押出法には、例えば、Tダイ法、インフレーション法などがあり、その際の成形温度は、好ましくは200〜350℃、より好ましくは250〜300℃、さらに好ましくは255〜300℃、特に好ましくは260〜300℃である。
Tダイ法を用いる場合、押出機の先端部にTダイを取り付け、このTダイから押し出したフィルムを巻き取ることで、ロール状に巻回させた樹脂フィルムを得ることができる。このとき、巻き取りの温度および速度を制御して、フィルムの押し出し方向に延伸(一軸延伸)を加えることも可能である。また、押し出し方向と垂直な方向にフィルムを延伸して、逐次二軸延伸あるいは同時二軸延伸などを実施してもよい。
押出成形に押出機を用いる場合、その種類は特に限定されず、単軸であっても二軸であっても多軸であってもよいが、そのL/D値は(Lは押出機のシリンダーの長さ、Dはシリンダー内径)、熱可塑性樹脂を十分に可塑化して良好な混練状態を得るために、好ましくは10以上100以下であり、より好ましくは15以上80以下であり、さらに好ましくは20以上60以下である。L/D値が10未満の場合、熱可塑性樹脂を十分に可塑化できず、良好な混練状態が得られないことがある。一方、L/D値が100を超えると、熱可塑性樹脂に対して過度に剪断発熱が加わることで、樹脂中の樹脂が熱分解する可能性がある。
またこの場合、シリンダーの設定温度は、好ましくは200〜350℃以下であり、より好ましくは250〜300℃以下である。設定温度が200℃未満では、熱可塑性樹脂の溶融粘度が過度に高くなって、樹脂フィルムの生産性が低下する。一方、設定温度が350℃を超えると、熱可塑性樹脂中の樹脂が熱分解する可能性がある。
押出成形に押出機を用いる場合、その形状は特に限定されないが、押出機が1個以上の開放ベント部を有することが好ましい。このような押出機を用いることによって、開放ベント部から分解ガスを吸引することができ、得られた樹脂フィルムに残存する揮発成分の量を低減できる。開放ベント部から分解ガスを吸引するためには、例えば、開放ベント部を減圧状態にすればよく、その減圧度は、開放ベント部の圧力にして、931〜1.3hPaの範囲が好ましく、798〜13.3hPaの範囲がより好ましい。開放ベント部の圧力が931hPaより高い場合、揮発成分、あるいは樹脂の分解により発生する単量体成分などが、熱可塑性樹脂中に残存しやすい。一方、開放ベント部の圧力を1.3hPaより低く保つことは工業的に困難である。
延伸前のフィルムを製造する場合、ポリマーフィルターで濾過するなどの濾過工程を取り入れることが好ましい。濾過工程を取り入れることにより、熱可塑性樹脂中に存在する異物を除去できるため、得られたフィルムの外観上の欠点を低減できる。なお、ポリマーフィルターによる濾過時には、熱可塑性樹脂は高温の溶融状態となる。このため、ポリマーフィルターを通過する際に熱可塑性樹脂が劣化し、劣化により形成されたガス成分や着色劣化物が樹脂中に流れだして、得られたフィルムに、穴あき、流れ模様、流れスジなどの欠点が観察されることがある。この欠点は、特にフィルムの連続成形時に観察されやすい。このため、ポリマーフィルターで濾過した熱可塑性樹脂を成形する際には、その成形温度は、熱可塑性樹脂の溶融粘度を低下させ、ポリマーフィルターにおける熱可塑性樹脂の滞留時間を短くするために、例えば255〜350℃であり、260〜320℃が好ましい。
ポリマーフィルターの構成は特に限定されないが、ハウジング内に多数枚のリーフディスク型フィルターを配したポリマーフィルターを好適に用いることができる。リーフディスク型フィルターの濾材は、金属繊維不織布を焼結したタイプ、金属粉末を焼結したタイプ、金網を数枚積層したタイプ、あるいはそれらを組み合わせたハイブリッドタイプのいずれでもよいが、金属繊維不織布を焼結したタイプが最も好ましい。
ポリマーフィルターによる濾過精度は特に限定されないが、通常15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。濾過精度が1μm以下になると、熱可塑性樹脂の滞留時間が長くなることで当該樹脂の熱劣化が大きくなる他、樹脂フィルムの生産性が低下する。一方、濾過精度が15μmを超えると、熱可塑性樹脂中の異物を除去することが難しくなる。
ポリマーフィルターにおける、時間あたりの樹脂処理量に対する濾過面積は特に限定されず、熱可塑性樹脂の処理量に応じて適宜設定できる。前記濾過面積は、例えば、0.001〜0.15m2/(kg/時間)である。
ポリマーフィルターの形状は特に限定されず、例えば、複数の樹脂流通口を有し、センターポール内に樹脂の流路を有する内流型;断面が複数の頂点もしくは面においてリーフディスクフィルタの内周面に接し、センターポールの外面に樹脂の流路がある外流型;などがある。特に、樹脂の滞留箇所の少ない外流型を用いることが好ましい。
ポリマーフィルターにおける熱可塑性樹脂の滞留時間に特に制限はないが、好ましくは20分以下であり、より好ましくは10分以下であり、さらに好ましくは5分以下である。また、濾過時におけるフィルター入口圧およびフィルター出口圧は、例えば、それぞれ、3〜15MPaおよび0.3〜10MPaであり、圧力損失(フィルターの入口圧と出口圧の圧力差)は、1MPa〜15MPaの範囲が好ましい。圧力損失が1MPa以下になると、熱可塑性樹脂がフィルターを通過する流路に偏りが生じやすく、得られた樹脂フィルムの品質が低下する傾向がある。一方、圧力損失が15MPaを超えると、ポリマーフィルターの破損が起こり易くなる。
ポリマーフィルターに導入される熱可塑性樹脂の温度は、その溶融粘度に応じて適宜設定すればよく、例えば250〜300℃であり、好ましくは255〜300℃であり、さらに好ましくは260〜300℃である。
ポリマーフィルターを用いた濾過処理により、異物、着色物の少ない樹脂フィルムを得る具体的な工程は、特に限定されない。例えば、(1)クリーン環境下で熱可塑性樹脂の形成および濾過処理を行い、引き続いてクリーン環境下で熱可塑性樹脂の成形を行うプロセス、(2)異物または着色物を有する熱可塑性樹脂を、クリーン環境下で濾過処理した後、引き続いてクリーン環境下で熱可塑性樹脂の成形を行うプロセス、(3)異物または着色物を有する熱可塑性樹脂を、クリーン環境下で濾過処理すると同時に成形を行うプロセス、などが挙げられる。それぞれの工程毎に、複数回、ポリマーフィルターによる熱可塑性樹脂の濾過処理を行ってもよい。
ポリマーフィルターによって熱可塑性樹脂を濾過する際には、押出機とポリマーフィルターとの間にギアポンプを設置して、フィルター内の熱可塑性樹脂の圧力を安定化することが好ましい。
熱可塑性樹脂は、その製造後、そのまま押出成形してフィルムとすることが好ましい。熱可塑性樹脂をペレット化した後に、得られたペレットを再溶融してフィルムを成形する場合に比べて、熱履歴を少なくできるため、熱可塑性樹脂の熱劣化を抑制できる。また、この手法では、環境からの異物の混入を抑制できるため、得られた光学フィルムに異物が存在したり、得られた光学フィルムが着色することを抑制できる。なお、押出機とTダイの間に、ギアポンプおよびポリマーフィルターを配置することが好ましい。
次に、本発明の光学フィルムの製造方法に好適な延伸方法について述べる。該延伸方法としては、特に限定されず、従来公知の延伸方法が適用できる。製膜時の流れ方向(MD)と幅方向(TD)の可とう性を両立させる点で、逐次二軸延伸が好ましい形態のひとつである。偏光フィルムとロール・ツー・ロールで貼り合わせるという観点からは、縦延伸後に横延伸を行う逐次二軸軸延伸が特に好ましい。また、未延伸フィルムの可とう性が良好な場合には、横一軸延伸も好ましい形態である。さらに、横延伸後のフィルムの幅方向の引き裂き強度を改善するためには、縦横の逐次二軸延伸にさらに縦方向の延伸を行う、縦横縦延伸も好ましい形態のひとつである。各延伸工程は押出製膜工程から連続して実施しても良いし、個別に行っても良い。なお、所望の位相差、所望の耐折れ曲げ性に応じて、延伸倍率、延伸温度、延伸速度等の延伸条件を適宜設定すればよく、特に限定はされない。
延伸等を行う装置としては、例えば、ロール延伸機、テンター型延伸機、オーブン延伸機、小型の実験用延伸装置として引張試験機、一軸延伸機、逐次二軸延伸機等が挙げられ、これら何れの装置を用いても、本発明の位相差フィルムを得ることができる。縦延伸工程は通常、ロール延伸機やオーブン延伸機で行い、横延伸工程はテンター型延伸機を用いることが多い。
延伸温度としては、フィルム原料の重合体、若しくは延伸前のフィルムのガラス転移温度近辺で行うことが好ましい。具体的には、(ガラス転移温度−30)℃〜(ガラス転移温度+50)℃で行うことが好ましく、より好ましくは(ガラス転移温度−20)℃〜(ガラス転移温度+20)℃、さらに好ましくは(ガラス転移温度−10)℃〜(ガラス転移温度+10)℃である。(ガラス転移温度−30)℃よりも低いと、十分な延伸倍率が得られないために好ましくない。(ガラス転移温度+50)℃よりも高いと、樹脂の流動(フロー)が起こり安定な延伸が行えなくなるために好ましくない。
本発明の光学フィルムにおいて好適な製造方法における多段延伸は、(Tg+20)℃以上で縦延伸後、(Tg+20)℃未満で横延伸する延伸方法が好ましい形態のひとつである。縦延伸−横延伸の2段延伸であってもよく、横延伸−縦延伸−横延伸の3段延伸や縦延伸−縦延伸−横延伸の3段延伸であってもよく、さらに延伸工程を重ねた延伸方法であってもよい。
面積比で定義した延伸倍率は、好ましくは1.1〜25倍の範囲、より好ましくは1.5〜10倍の範囲、さらに好ましくは2.5〜6倍の範囲で行われる。1.1倍よりも小さいと、延伸に伴う位相差性能の発現や靭性の向上につながらないために好ましくない。25倍よりも大きいと、延伸倍率を上げるだけの効果が認められない。
延伸速度(一方向)としては、好ましくは10〜20000%/分の範囲、より好ましくは100〜10000%/分の範囲である。10%/分よりも遅いと、十分な延伸倍率を得るために時間がかかり、製造コストが高くなるために好ましくない。20000%/分よりも早いと、延伸フィルムの破断等が起こるおそれがあるために好ましくない。
縦延伸は、周速差のあるニップロール間で延伸され、分子配向する事により縦方向の力学的特性が向上する。縦延伸には、公知の延伸方法が可能であり、例えば、オーブン延伸、ロール延伸のいずれの方法であってもかまわない。
オーブン延伸では、オーブン入口側と出口側にある搬送ロール(ニップロール)とオーブンとから構成されるオーブン延伸機を用いて、そのオーブン内で予熱から延伸、冷却までを行う。オーブン入口側と出口側にある搬送ロールに周速差をつけることによってフィルム流れ方向に延伸を行う。また、オーブンはフィルムを延伸可能な温度まで加熱すると共に、延伸後のフィルムに熱処理効果を与えることが可能である。
ロール延伸では、加熱可能な多数のロール或いはニップロール(予熱ロール)と冷却可能な多数のロール或いはニップロール(冷却ロール)とから構成されるロール延伸機を用いる。フィルムは多数の加熱ロールに連続接触しながら延伸する温度まで予熱され、場合によっては補助加熱ヒーターなどを用いて、短区間のニップロール間で延伸された後、冷却ロールによって冷却される。
縦延伸による流れ方向(MD)の延伸倍率は、1.2〜4.0倍が好ましく、1.2〜3.0倍がより好ましく、1.2〜2.0倍がより好ましく、1.5〜1.8倍が特に好ましい。1.2倍未満であると十分な強度が発現できないおそれがある。
縦延伸における延伸温度は、原フィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg+5)℃以上が好ましく、より好ましくは、(Tg+10)℃〜(Tg+60)℃であり、さらに好ましくは、(Tg+15)℃〜(Tg+50)℃である。(Tg+5℃)未満の場合、フィルムの破断が発生する場合があるため好ましくない。(Tg+60)℃を越えると、フィルムのたるみが大きくなるために、装置とのこすれや破断のおそれが生じるために好ましくない。
横延伸はテンター延伸機で行うことが好ましく、クリップ式でもピン式でもかまわないが、フィルムの引き裂けが生じにくいことから、クリップ式がより好ましい。クリップ式のテンター延伸機は、例えば、横延伸用のクリップ走行装置と予熱、延伸、熱処理の各ゾーンからなるオーブンとから構成される。横延伸行程では、走行するフィルムの横端部をクリップで掴んで搬送すると同時に、オーブン内の予熱ゾーンで延伸温度まで加熱してから延伸ゾーンでクリップ走行装置のガイドレールを開いて左右2列のクリップ間の距離を広げることによって横方向に引張って延伸し、その後必要により熱処理ゾーンで熱処理を行った後に冷却される。なお、フィルムの流れ方向にもクリップの拡縮機能を持たせた同時二軸延伸機であっても良い。また、オーブンはフィルムを延伸可能な温度まで加熱すると共に、延伸後は必要に応じて熱処理を行い、その後冷却する。
予熱および延伸の各ゾーンの温度は、光学フィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、Tg−10℃〜Tg+50℃が好ましく、より好ましくはTg−5℃〜Tg+30℃である。熱処理ゾーンの温度は、延伸ゾーンの温度より−40℃〜−2℃が好ましく、−35℃〜−5℃がより好ましい。冷却は、冷却ゾーンを設け強制的になされる場合もあるが、フィルム走行と共に温度低下させることも出来る。冷却後に、フィルムは、掴んでいたクリップから開放され、下流の引き取りロールで引張られる事になる。
横延伸における延伸温度は、原フィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg+30)℃未満が好ましく、より好ましくは(Tg−10)℃〜(Tg+20)℃未満であり、さらに好ましくは(Tg−5℃)℃〜(Tg+15)℃である。(Tg−10)℃未満であるとフィルムの破断が起こりやすくなるために好ましくない。また(Tg+30)℃を越えると、フィルムのたるみが大きくなるために、装置とのこすれや破断のおそれが生じるために好ましくない。
また横延伸は、厚みムラや位相差ムラの観点から、前段の延伸工程として延伸倍率の50〜95%まで延伸を実施した後に、残りの5〜50%を延伸することが好ましい。前段の延伸工程における延伸の割合は50〜95%が好ましく、より好ましくは、55〜90%、さらに好ましくは、65〜90%である。後段の延伸工程における延伸の割合は5〜50が好ましく、より好ましくは10〜45%、さらに好ましくは10〜35%である。前段の延伸工程における延伸温度の最高温度がT1℃であるとき、後段の延伸工程の延伸温度は(T1−12)℃〜(T1−2)℃であることが好ましく、より好ましくは、(T1−10)℃〜(T1−4)℃であり、さらに好ましくは(T1−9)℃〜(T1−5)℃。である。前記の延伸割合や温度範囲を外れると、厚みムラや光軸ムラが大きくなる傾向がある。また、延伸温度がTgに達するまで延伸は行わないことが好ましい。これにより、厚みムラ、位相差ムラが小さい光学フィルムとすることができる。なおここでいう横延伸工程とは、加熱、延伸、冷却の一連の操作を一つの工程として指し、同時二軸延伸については、横方向(幅方向)の延伸倍率についてのみ横延伸工程として計算するものとする。
横延伸における幅方向(TD)の延伸倍率は1.2倍〜10倍であることが好ましく、2倍〜5倍がより好ましく、2、5倍〜5倍がさらに好ましく、3〜5倍が特に好ましく、3.2倍〜5倍が最も好ましい。1.2倍未満であると十分な強度が発現できないおそれがある。
本発明の光学フィルムにおける好ましい製造方法においては、流れ方向(MD)の延伸倍率をM1、幅方向(TD)の延伸倍率をM2とした場合、延伸倍率の比M2/M1が1.5<M2/M1<5であることが好ましく、1.6<M2/M1<5がより好ましく、1.7<M2/M1<5がさらに好ましく、1.8<M2/M1<3が特に好ましい。M2/M1が5以上になると、フィルムの流れ方向と幅方向の強度バランスが崩れ、幅方向の引き裂きが頻発する恐れがある。また、一般的には、光学フィルムの縦横の可とう性のバランスを良くするため、特に、低位相差の光学フィルムの場合は面内位相差Reを低下させることが出来るため、M2/M1を1.5以下とするが、本発明では、M2/M1を1.5<M2/M1<5にすることにより、本発明の光学フィルムを製造することが容易となる。
[偏光板]
本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムが偏光フィルムの少なくとも一方の面に積層された偏光板であって、光学フィルムの60℃における線熱膨張係数αがフィルム面内で最大となる軸(x)と偏光フィルムの吸収軸とが±2°の範囲となるように積層されている偏光板である。上記の構成を取る事により、環境が変化してもカールの少ない偏光板となる。
本発明の偏光板において、偏光フィルムの本発明の光学フィルムとは反対側の面に、本発明の光学フィルム以外の樹脂フィルムを積層すると、偏光板がカールする傾向が大きくなり、本発明の効果が顕著となる。前記樹脂フィルムとしては、例えばトリアセチルセルロ−スなどのセルロ−ス系フィルム、ポリカ−ボネ−トフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、(メタ)アクリル系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレ−トフィルム、ポリナフタレンテレフタレ−トフィルム、等が挙げられる。光学特性からは、(メタ)アクリル系樹脂フィルムも好ましい。
前記樹脂フィルムとしては、本発明の効果を損なわないため、線熱膨張係数αが小さい樹脂フィルムが好ましく、樹脂フィルムの前記αxは50×10−6(/K)以下が好ましく、45×10−6(/K)以下がより好ましく、40×10−6(/K)以下がさらに好ましく、35×10−6(/K)以下が特に好ましい。さらに、線熱膨張係数αが大きい場合であっても、例えば、樹脂フィルムの前記αxとαyの関係が下式を満たすと、本発明の効果が発現されやすい。
αx−αy<10.0×10−6
また、樹脂フィルムとしては、未延伸フィルムか縦横均等に延伸されたフィルムが好ましい。例えば、樹脂フィルムが長尺状の延伸フィルムであれば、流れ方向(MD)の延伸倍率をM1、幅方向(TD)の延伸倍率をM2とした場合、例えば、延伸倍率の比M2/M1がM2/M1≦1.5であることが好ましい。
発明の偏光板は、本発明に使用される前記光学フィルムを偏光子保護フィルムとして少なくとも1枚含んでいれば良く、偏光フィルムの片面あるいは両面に本発明の光学フィルムを積層することも可能である。偏光フィルムの両面に本発明の光学フィルムを積層する場合、光学フィルムの60℃における線熱膨張係数αがフィルム面内で最大となる軸(x)と偏光フィルムの吸収軸とが±2°の範囲となるように両面とも積層されていれば、偏光板のカールを効果的に抑制できる。
本発明の光学フィルム以外は、公知の構成が可能で有り、公知の製法を用いて製造が可能である。本発明の偏光板の好ましい実施形態としては、例えば、ポリビニルアルコ−ル系脂フィルムを二色性物質(ヨウ素や二色性染料など)で染色して一軸延伸した偏光フィルムの片面あるいは両面に、接着剤層あるいはアンカ−層を介して光学フィルムを接着してなる形態である。
本発明の偏光板で用いる偏光フィルムとしては、特定の振動方向をもつ光のみを透過する機能を有する偏光フィルム(偏光子)であれば如何なるものでもよく、例えばポリビニルアルコ−ル系フィルム等を延伸し、ヨウ素や二色性染料などで染色したポリビニルアルコ−ル系偏光フィルム;ポリビニルアルコ−ルの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系偏光フィルム;多層積層体あるいはコレステリック液晶を用いた反射型偏光フィルム;薄膜結晶フィルム系偏光フィルム;等が挙げられ、これらのなかでもポリビニルアルコ−ル系脂フィルムを二色性物質で染色して一軸延伸した偏光フィルムが好適に用いられる。これら偏光フィルムの厚さは特に制限されず、一般的に、5〜100μm程度である。
本発明の偏光板においては、本発明の光学フィルムが前記偏光フィルムに接着剤層を介して接着されてなることが好ましい。好ましい接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコ−ル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂の接着剤、紫外線や電子線などの活性エネルギ−線で硬化する接着剤やアクリル系、シリコン系、ゴム系等の粘着剤が挙げられる。尚、偏光フィルムの偏光機能が低下しない条件で加熱圧着してもよいことはいうまでもなく、その場合は、ゆるやかな加熱圧着条件で接着することができる。
接着剤がポリビニルアルコ−ル系樹脂の場合、ポリビニルアルコ−ル系樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコ−ル;その誘導体;更に酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコ−ルをアセタ−ル化、ウレタン化、エ−テル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコ−ル;などが挙げられる。前記単量体としては、(無水)マレイン酸、フマ−ル酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソ−ダ)、スルホン酸ソ−ダ(モノアルキルマレ−ト)、ジスルホン酸ソ−ダアルキルマレ−ト、N−メチロ−ルアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらポリビニルアルコ−ル系樹脂は1種のみ用いても良いし2種以上を併用しても良い。
前記ポリビニルアルコ−ル系樹脂は、接着性の点からは、平均重合度が好ましくは100〜3000、より好ましくは500〜3000であり、平均ケン化度が好ましくは85〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%である。
前記ポリビニルアルコ−ル系樹脂としては、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコ−ル系樹脂を用いることができる。アセトアセチル基を有するポリビニルアルコ−ル系樹脂は、反応性の高い官能基を有するポリビニルアルコ−ル系接着剤であり、偏光板の耐久性が向上する点で好ましい。
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコ−ル系樹脂は、ポリビニルアルコ−ル系樹脂とジケテンとを公知の方法で反応して得られる。例えば、ポリビニルアルコ−ル系樹脂を酢酸等の溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ポリビニルアルコ−ル系樹脂をジメチルホルムアミドまたはジオキサン等の溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法等が挙げられる。また、ポリビニルアルコ−ルにジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法が挙げられる。
アセトアセチル基を有するポリビニルアルコ−ル系樹脂のアセトアセチル基変性度は、0.1モル%以上であれば特に制限はない。0.1モル%未満では接着剤層の耐水性が不十分であり不適当である。アセトアセチル基変性度は、好ましくは0.1〜40モル%、さらに好ましくは1〜20モル%である。アセトアセチル基変性度が40モル%を超えると架橋剤との反応点が少なくなり、耐水性の向上効果が小さい。アセトアセチル基変性度はNMRにより測定した値である。
前記架橋剤としては、ポリビニルアルコ−ル系接着剤に用いられているものを特に制限なく使用できる。架橋剤は、ポリビニルアルコ−ル系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物を使用できる。例えば、エチレンジアミン、トリエチレンアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類(なかでもヘキサメチレンジアミンが好ましい);トリレンジイソシアネ−ト、水素化トリレンジイソシアネ−ト、トリメチレンプロパントリレンジイソシアネ−トアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネ−ト、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−トおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノ−ルブロック物等のイソシアネ−ト類;エチレングリコ−ルジグリシジルエ−テル、ポリエチレングリコ−ルジグリシジルエ−テル、グリセリンジまたはトリグリシジルエ−テル、1,6−ヘキサンジオ−ルジグリシジルエ−テル、トリメチロ−ルプロパントリグリシジルエ−テル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザ−ル、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロ−ル尿素、メチロ−ルメラミン、アルキル化メチロ−ル尿素、アルキル化メチロ−ル化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;更にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、又は三価金属の塩及びその酸化物;などが挙げられる。架橋剤としては、メラミン系架橋剤が好ましく、特にメチロ−ルメラミンが好適である。
記架橋剤の配合量は、ポリビニルアルコ−ル系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜35重量部、より好ましくは10〜25重量部である。一方、耐久性をより向上させるには、ポリビニルアルコ−ル系樹脂100重量部に対して、架橋剤を30重量部を超え46重量部以下の範囲で配合することができる。特に、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコ−ル系樹脂を用いる場合には、架橋剤の使用量を30重量部を超えて用いるのが好ましい。架橋剤を30重量部を超え46重量部以下の範囲で配合することにより、耐水性が向上する。
なお、前記ポリビニルアルコ−ル系接着剤には、さらに金属化合物コロイド、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を配合することもできる。
金属化合物コロイドは、微粒子が分散媒中に分散しているものであり、微粒子の同種電荷の相互反発に起因して静電的安定化し、永続的に安定性を有するものである。金属化合物コロイド(微粒子)の平均粒径は1〜100nmである。前記コロイドの平均粒径が前記範囲であれば、接着剤層中において、金属化合物を略均一に分散させることができ、接着性を確保し、かつクニックを抑えることができることが知られている。前記平均粒径の範囲は、可視光の波長領域よりもかなり小さく、形成される接着剤層中において、金属化合物によって透過光が散乱したとしても、偏光特性には悪影響を及ぼさない。金属化合物コロイドの平均粒径は、1〜100nm、さらには1〜50nmであるのが好ましい。
金属化合物コロイドとしては、各種のものを用いることができる。例えば、金属化合物コロイドとしては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の金属酸化物のコロイド;炭酸アンモニウムアルミニウム、炭酸アンモニウムジルコニウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、リン酸カルシウム等の金属塩のコロイド;セライト、タルク、クレイ、カオリン等の鉱物のコロイドがあげられる。
金属化合物コロイドは、分散媒に分散してコロイド溶液の状態で存在している。分散媒は、主として水である。水の他に、アルコ−ル類等の他の分散媒を用いることもできる。コロイド溶液中の金属化合物コロイドの固形分濃度は、特に制限されないが、通常、1〜50重量%程度、さらには、1〜30重量%のものが一般的である。また、金属化合物コロイドは、安定剤として炭酸、硝酸、塩酸、酢酸などの酸を含有するものを用いることができる。
金属化合物コロイドは、静電的に安定化しており、正電荷を有するものと、負電荷を有するものに分けられるが、金属化合物コロイドは非導電性の材料である。正電荷と負電荷とは、接着剤調製後の溶液におけるコロイド表面電荷の電荷状態により、区別される。金属化合物コロイドの電荷は、例えば、ゼ−タ電位測定機により、ゼ−タ電位を測定することにより確認できる。本発明では、正電荷を有する金属化合物コロイドが、負電荷を有する金属化合物コロイドに比べて、クニックの発生を抑える効果が大きい。正電荷を有する金属化合物コロイドとしては、アルミナコロイド、ジルコニアコロイド、チタニアコロイド等があげられる。これらのなかでも、特に、アルミナコロイドおよび、ジルコニアコロイドが好適である。
金属化合物コロイドは、ポリビニルアルコ−ル系樹脂100重量部に対して、200重量部以下の割合(固形分の換算値)で配合することが好ましい。金属化合物コロイドの配合割合を前記範囲とすることで、偏光フィルムと光学フィルムとの接着性を確保しながら、クニックの発生を抑えることができる。金属化合物コロイドの配合割合は、10〜200重量部であるのが好ましく、さらには20〜175重量部、さらには30〜150重量部であるのが好ましい。ポリビニルアルコ−ル系樹脂に対する金属化合物コロイドの配合割合が過剰であると接着性に劣る場合があり、金属化合物コロイドの配合割合が小さいと、クニック発生を抑止する効果を十分に得られない場合がある。
接着剤が活性エネルギ−線硬化接着剤の場合、 硬化性成分としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物があげられる。これら硬化性成分は、単官能または二官能以上のいずれも用いることができる。これら硬化性成分は、硬化性成分により形成される接着剤層がTg60℃以上を満足するように、1種を選択し、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これら硬化性成分としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好適である。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、N−置換アミド系モノマ−が好適に用いられる。これらモノマ−は、接着性の点で好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味する。本発明では(メタ)は前記同様の意味である。
N−置換アミド系モノマ−の具体例としては、例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロ−ル−N−プロパン(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカアプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカアプトエチル(メタ)アクリルアミドなどがあげられる。また、複素環を有する複素環含有モノマ−としては、例えば、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン等があげられる。これらN−置換アミド系モノマ−は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記N−置換アミド系モノマ−は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができるが、2種以上を組み合わせる場合には、耐久性、接着性の点から、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドおよびN−アクリロイルモルホリンの組み合わせが好適である。また、当前記組み合わせの場合、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドおよびN−アクリロイルモルホリンの合計量に対するN−ヒドロキシエチルアクリルアミドの割合は、40重量%以上であることが、良好な接着性を得るうえで好ましい。前記割合は、40〜90重量%がより好ましく、さらには、60〜90重量%であるのが好ましい。
また、上記硬化性成分としては、上記の他に、(メタ)アクリロイル基を有する化合物として、例えば、各種のエポキシ(メタ)アクリレ−ト、ウレタン(メタ)アクリレ−ト、ポリエステル(メタ)アクリレ−トや、各種の(メタ)アクリレ−ト系モノマ−等があげられる。これらのなかでも、エポキシ(メタ)アクリレ−ト、特に、芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレ−トが好適に用いられる。これら硬化性成分は、単独で、Tg60℃以上の接着剤層を形成できない場合には、前記N−置換アミド系モノマ−と併用して用いられる。
芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレ−トは、芳香環およびヒドロキシ基を有する、各種の単官能の(メタ)アクリレ−トを用いることができる。ヒドロキシ基は、芳香環の置換基として存在してもよいが、本発明では、芳香環と(メタ)アクリレ−トとを結合する有機基(炭化水素基、特に、アルキレン基に結合したもの)として存在するものが好ましい。
前記芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレ−トとしては、例えば、芳香環を有する単官能のエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物があげられる。芳香環を有する単官能のエポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエ−テル、t−ブチルフェニルグリシジルエ−テル、フェニルポリエチレングリコ−ルグリシジルエ−テル等があげられる。芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレ−トの、具体例としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェノキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシ−3−フェニルポリエチレングリコ−ルプロピル(メタ)アクリレ−ト等があげられる。
また、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、カルボキシル基モノマ−があげられる。カルボキシル基モノマ−も接着性の点で好ましい。カルボキシル基モノマ−としては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレ−ト、カルボキシペンチル(メタ)アクリレ−ト、などがあげられる。これらのなかでもアクリル酸が好ましい。
上記の他、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、n−ブチル(メタ)アクリレ−ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレ−ト、イソオクチル(メタ)アクリレ−ト、イソノニル(メタ)アクリレ−ト、ラウリル(メタ)アクリレ−ト等の炭素数は1〜12のアルキル(メタ)アクリレ−ト;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマ−;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレ−トなどのヒドロキシル基含有モノマ−;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマ−;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレ−ト、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマ−;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェ−トなどの燐酸基含有モノマ−などがあげられる。また、(メタ)アクリルアミド;マレイミド、N−シクロへキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、3−(3−ピリニジル)プロピル(メタ)アクリレ−トなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマ−;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマ−などの窒素含有モノマ−があげられる。
上記の通り、活性エネルギ−線硬化型接着剤における、硬化性成分としては、N−置換アミド系モノマ−を単独で用いるか、または、N−置換アミド系モノマ−と芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレ−トを併用することが好ましい。これらを併用する場合には、N−置換アミド系モノマ−の割合を、40重量%以上、さらには50重量%以上、さらには60重量%以上、さらには70重量%以上、さらには80重量%以上とするのが好ましい。
上記硬化性成分としては、二官能以上の硬化性成分を用いることができる。二官能以上の硬化性成分としては、二官能以上の(メタ)アクリレ−ト、特に二官能以上のエポキシ(メタ)アクリレ−トが好ましい。二官能以上のエポキシ(メタ)アクリレ−トは、多官能のエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により得られる。多官能のエポキシ化合物は、各種のものを例示できる。多官能のエポキシ化合物としては、例えば、芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂があげられる。
芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノ−ルAのジグリシジルエ−テル、ビスフェ−ルFのジグリシジルエ−テル、ビスフェノ−ルSのジグリシジルエ−テルのようなビスフェノ−ル型エポキシ樹脂;フェノ−ルノボラックエポキシ樹脂、クレゾ−ルノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノ−ルノボラックエポキシ樹脂のようなノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエ−テル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエ−テル、エポキシ化ポリビニルフェノ−ルのような多官能型のエポキシ樹脂などがあげられる。
脂環式エポキシ樹脂としては、前記芳香族エポキシ樹脂の水添物、シクロヘキサン系、シクロヘキシルメチルエステル系、シクロヘキシルメチルエ−テル系、スピロ系、トリシクロデカン系等のエポキシ樹脂があげられる。
脂肪族エポキシ樹脂としては、脂肪族多価アルコ−ル又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエ−テルがあげられる。これらの例としては、1,4−ブタンジオ−ルのジグリシジルエ−テル、1,6−ヘキサンジオ−ルのジグリシジルエ−テル、グリセリンのトリグリシジルエ−テル、トリメチロ−ルプロパンのトリグリシジルエ−テル、ポリエチレングリコ−ルのジグリシジルエ−テル、プロピレングリコ−ルのジグリシジルエ−テル、エチレングリコ−ルやプロピレングリコ−ル、グリセリンのような脂肪族多価アルコ−ルに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエ−テルポリオ−ルのポリグリシジルエ−テルなどがあげられる。
前記エポキシ樹脂の、エポキシ当量は、通常30〜3000g/当量、好ましくは50〜1500g/当量の範囲である。
前記二官能以上のエポキシ(メタ)アクリレ−トは、脂肪族エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレ−トが好ましい、特に、二官能の脂肪族エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレ−トが好ましい。
本発明の活性エネルギ−線硬化型接着剤は、硬化性成分を含むが、前記成分に加えて、必要であれば適宜添加剤を添加してもよい。活性エネルギ−線硬化型接着剤は、電子線硬化型、紫外線硬化型の態様で用いることができる。前記接着剤を電子線硬化型で用いる場合には、前記接着剤には光重合開始剤を含有させることは特に必要ではないが、紫外線硬化型で用いる場合には、光重合開始剤が用いられる。光重合開始剤の使用量は硬化性成分100重量部あたり、通常0.1〜10重量部程度、好ましくは、0.5〜3重量部である。
また、添加剤の例としては、カルボニル化合物などで代表される電子線による硬化速度や感度を上がる増感剤、シランカップリング剤やエチレンオキシドで代表される接着促進剤、フィルムとの濡れ性を向上させる添加剤、アクリロキシ基化合物や炭化水素系(天然、合成樹脂)などに代表され、機械的強度や加工性などを向上させる添加剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、染料、加工助剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、粘着付与剤、充填剤(金属化合物フィラ−以外)、可塑剤、レベリング剤、発泡抑制剤、帯電防止割などがあげられる。
上記の接着剤を用いて接着する方法は、特に限定されず、例えば、キスコ−ト、スピンコ−ト、ロ−ルコ−ト、ディップコ−ト、カ−テンコ−ト、バ−コ−ト、ドクタ−ブレ−ドコ−ト、ナイフコ−ト、エアナイフコ−ト、ダイコ−ト、グラビアコ−ト、マイクログラビアコ−ト、オフセットグラビアコ−ト、リップコ−ト、スプレ−コ−ト、コンマコ−トなどの各種の方法を用い、偏光フィルム及び/又は接合されるフィルムの接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法などが可能である。接着剤を塗布した後、偏光フィルムとそれに接合されるフィルムをニップロ−ルなどにより挟んで、貼り合わせる。
本発明の光学フィルムは、偏光フィルムと接する面に接着性向上のために易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレ−ム(火炎)処理、ケン化処理やアンカ−層を形成する方法が挙げられ、これらを併用することもできる。これらの中でも、コロナ処理、アンカ−層を形成する方法、およびこれらを併用する方法が好ましい。アンカ−層としては、特に限定されず、公知のアンカ−層が使用され、アクリル系、セルロ−ス系、ポリウレタン系、シリコ−ン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系や分子中にアミノ基を含んだポリマ−等が使用される。これらのアンカ−層は、単独で用いても2種以上を併用・積層してもよい。
アンカ−層の厚さは、乾燥・硬化または乾燥後の厚さで、例えば、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.05〜3μm、さらに好ましくは0.1〜1μmである。アンカ−層の厚さが0.01μm未満であると、偏光フィルムと光学フィルムとの接着強度が不充分になることがある。逆に、アンカ−層の厚さが10μmを超えると、耐水性または耐湿性試験において、偏光板の色抜けや変色が起こりやすくなることがある。
光学フィルムの偏光フィルムと対向する面にアンカ−層コ−ティング組成物を塗布する方法は、バ−コ−タ−、ロ−ルコ−タ−、グラビアコ−タ−などを用いた通常のコ−ティング技術を採用すればよく、特に限定されるものではない。また、塗布したアンカ−層コ−ティング組成物を乾燥させる方法や条件は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥機や赤外線乾燥機を用いて、好ましくは50〜130℃、より好ましくは75〜110℃の温度で、乾燥させればよい。また、アンカ−層コ−ティング組成物のウレタン結合生成反応および/または硬化に関して、養生工程を設けても何ら問題ない。養生工程が必要な場合、養生温度は、例えば、好ましくは20〜100℃、より好ましくは20〜50℃であるが、前記組成物の乾燥に使用した熱である程度は進行し、接着剤を用いた偏光フィルムと光学フィルムとの接着工程でさらに進行するので、常温養生でも充分な物性が得られる。
なお、表面の濡れ張力を調整するために、アンカ−層を設けた光学フィルムの前記アンカ−層の表面には、後の接着工程の前に、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理、その他の従来公知の表面処理を施すことができる。
アンカ−層がアクリル系ポリマ−の場合、水性(メタ)アクリル系樹脂分散体が好ましい。水性(メタ)アクリル系樹脂分散体は、代表的には、乳化剤を用いて、モノマ−組成物を乳化重合させて得られる。
上記モノマ−組成物は、好ましくは、ポリアルキレングリコ−ル(メタ)アクリレ−ト、(メタ)アクリロイルモルホリンおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性モノマ−を含む。このような水溶性モノマ−を用いることにより、偏光フィルムと光学フィルムとの接着性(高温・高湿下においても)により優れた光学フィルムが得られ得る。
上記ポリアルキレングリコ−ル(メタ)アクリレ−トの具体例としては、ポリエチレングリコ−ルモノアクリレ−ト、ポリプロピレングリコ−ルモノアクリレ−ト、ポリブチレングリコ−ルモノアクリレ−ト、メトキシポリエチレングリコ−ルモノアクリレ−ト、メトキシポリプロピレングリコ−ルモノアクリレ−ト、メトキシポリブチレングリコ−ルモノアクリレ−ト、エトキシポリエチレングリコ−ルモノアクリレ−ト、エトキシポリプロピレングリコ−ルモノアクリレ−ト、エトキシポリブチレングリコ−ルモノアクリレ−ト等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。これらの中でも、アルキル基がエチル基またはプロピル基であるものが好ましく用いられる。
上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシイソプロピルアクリルアミド、N−1−エチル−2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエトキシエチルアクリルアミド、N−メチル−N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−エチル−N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジヒドロキシエチルアクリルアミド、1−アクリロイル−4−ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシイソプロピルアクリルアミドである。
上記モノマ−組成物は、上記モノマ−以外にも、任意の適切な他のモノマ−を含み得る。他のモノマ−としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト等の水酸基を有するモノマ−;シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロオクチル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−ト、イソボルニルメタクリレ−ト、イソボルニルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルメタクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−、4−メチロ−ルシクロヘキシルメチルアクリレ−ト、4−メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレ−ト、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレ−ト等のシクロアルキル基を有するモノマ−;グリシジル(メタ)アクリレ−ト、α−メチルグリシジルアクリレ−ト、グリシジルアリルエ−テル、オキソシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレ−ト、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレ−ト、α−メチルグリシジルメタクリレ−ト、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレ−ト等のエポキシ基を有するモノマ−が挙げられる。また、他のモノマ−としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のカルボキシル基を有するモノマ−;(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸2−アジリジニルエチル等のアジリジニル基を有するモノマ−;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基を有するモノマ−;(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド誘導体類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルメチルスチレン等のスチレン誘導体類;(メタ)アクリルニトリル等のシアノ基を有するモノマ−;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾ−ル、ビニルピロリドン等が挙げられる。
上記乳化剤としては、任意の適切な乳化剤を用い得る。好ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、分子中に1個以上の重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する重合性界面活性剤等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
上記アニオン性界面活性剤としては、任意の適切なアニオン性界面活性剤を用い得る。好ましくは、ナトリウムドデシルサルフェ−ト、カリウムドデシルサルフェ−ト等のアルカリ金属アルキルサルフェ−ト類;アンモニウムドデシルサルフェ−ト等のアンモニウムアルキルサルフェ−ト類;ナトリウムドデシルポリグリコ−ルエ−テルサルフェ−ト、ナトリウムスルホシノエ−ト、スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩類;スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネ−ト類;ナトリウムラウリレ−ト、トリエタノ−ルアミンオレエ−ト、トリエタノ−ルアミンアビエテ−ト等の脂肪酸塩類;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネ−ト、アルカリフェノ−ルヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェ−ト等のアルキルアリ−ルスルホネ−ト類;高級アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェ−ト塩、ポリオキシエチレンアルキルアリ−ルサルフェ−ト塩等が挙げられる。
上記ノニオン性界面活性剤としては、任意の適切なノニオン性界面活性剤を用い得る。好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレンアルキルアリ−ルエ−テル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロ−ルのモノラウレ−ト等の脂肪酸モノグリセライド類;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体、エチレンオキサイドと脂肪酸アミン、アミドまたは酸との縮合生成物等が挙げられる。
上記カチオン性界面活性剤としては、任意の適切なカチオン性界面活性剤を用い得る。好ましくは、アルキルピリジニルクロライド、アルキルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、任意の適切な両性界面活性剤を用い得る。好ましくは、ラウリルペタイン、ステアリルペタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
上記高分子界面活性剤としては、任意の適切な高分子界面活性剤を用い得る。好ましくは、ポリビニルアルコ−ル、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、これらの重合体の構成単位である重合性単量体の2種以上の共重合体または他の単量体との共重合体、クラウンエ−テル類の相関移動触媒等が挙げられる。
上記重合性界面活性剤としては、任意の適切な重合性界面活性剤を用い得る。好ましくは、プロペニル−2−エチルヘキシルベンゼンスルホコハク酸エステルナトリウム、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルエ−テル硫酸アンモニウム塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンエステルのリン酸エステル等のアニオン性重合性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルベンゼンエ−テル(メタ)アクリル酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル(メタ)アクリル酸エステル等のノニオン性重合性界面活性剤等が挙げられる。
上記乳化重合の方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、モノマ−組成物、乳化剤、重合開始剤、水性媒体を一括添加して重合する方法や、いわゆるモノマ−滴下法、プレエマルジョン法等が挙げられる。また、シ−ド重合、コア・シェル重合、パワ−フィ−ド重合等の多段重合を行い、エマルジョン粒子を異相構造化させてもよい。
上記乳化剤の配合量(合計配合量)は、任意の適切な値に設定され得る。乳化剤の配合量は、上記モノマ−組成物100重量部に対して、好ましくは0.5〜10重量部である。上記水性媒体としては、通常、水が用いられ、必要に応じて低級アルコ−ルやケトン等の親水性溶媒を併用することができる。上記重合開始剤としては、任意の適切な重合開始剤を用い得る。具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;過酸化水素、過酢酸、ベンゾイルパ−オキサイド、ジ−t−ブチルパ−オキサイド等の過酸化物等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。重合開始剤の配合量は、好ましくは、モノマ−組成物100重量部に対して0.01〜1重量部である。
上記乳化重合に際し、重合速度を促進させるため、または、低温で重合する場合には、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤を用い得る。また、上記乳化重合に際し、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノ−ル等の連鎖移動剤を用い得る。
上記乳化重合の重合温度および重合時間は、任意の適切な値に設定し得る。重合温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは50〜90℃である。重合時間は、好ましくは1〜15時間である。
上記水性(メタ)アクリル系樹脂分散体は、当前記分散体の安定性を向上させるため、中和剤により中和されていることが好ましい。水性(メタ)アクリル系樹脂分散体のpHは、好ましくは5〜10、より好ましくは6〜9.5、さらに好ましくは7〜9.5である。pHが5未満であると、当前記分散体の安定性、機械的安定性が低下するおそれがある。pHが10を超えると、耐水性の低下や臭気の発生など、実用性に問題があるおそれがある。
上記中和剤としては、任意の適切な中和剤を用い得る。具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物類;水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物類;アンモニア;ジメチルアミノエタノ−ル、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の水溶性有機アミン類等が挙げられる。これら中和剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。これらの中でも、アンモニアや、ジメチルアミノエタノ−ル、トリエタノ−ルアミン、トリメチルアミン等の3級アミン類が好ましく用いられ、より好ましくは、アンモニアや、ジメチルアミノエタノ−ル、トリメチルアミン等の低沸点アミン類である。このような中和剤を用いることにより、耐水性に優れた易接着層を得ることができる。
上記水性(メタ)アクリル系樹脂分散体は、任意の適切な添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、架橋剤、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、位相差低減剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、抗菌剤、防かび剤、防曇剤、帯電防止剤等が挙げられる。
上記水性(メタ)アクリル系樹脂分散体の樹脂固形分濃度は、好ましくは2〜35重量%、さらに好ましくは4〜15重量%である。易接着層形成時の作業性に優れ得るからである。
上記水性(メタ)アクリル系樹脂分散体で形成された易接着層のガラス転移温度は、好ましくは20℃以上、より好ましくは25〜100℃、さらに好ましくは30〜80℃である。易接着層のガラス転移温度が20℃以上であることにより、易接着層を積層した(メタ)アクリル系樹脂フィルムをロ−ル加工する際のブロッキングを防止することができる。また、基材(例えば、偏光フィルム)との高い接着性を得ることができる。
アンカ−層がセルロ−ス系ポリマ−の場合、セルロ−ス系ポリマ−層は、光学フィルムの少なくとも片面に設けられる。本発明におけるセルロ−ス系ポリマ−層の形成方法は、特に限定されない。好ましくは、セルロ−ス系ポリマ−を溶媒に溶解させてなるセルロ−ス系ポリマ−溶液を上記透明樹脂層の少なくとも片面に塗布して乾燥させ、セルロ−ス系ポリマ−層を形成する。
上記セルロ−ス系ポリマ−としては、特に限定されない。好ましくは、例えば、セルロ−スエステル系樹脂が挙げられる。セルロ−スエステル系樹脂としては、例えば、加水分解性を有するセルロ−スの脂肪酸エステルが挙げられ、セルロ−スの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。低級脂肪酸としては、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。
上記セルロ−スの低級脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、セルロ−スジアセテ−ト、セルロ−ストリアセテ−ト、セルロ−スプロピオネ−ト、セルロ−スブチレ−ト等の単独脂肪酸エステル、セルロ−スアセテ−トプロピオネ−ト、セルロ−スアセテ−トブチレ−ト等の混合脂肪酸エステル、およびこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、セルロ−スアセテ−トプロピオネ−ト、セルロ−スアセテ−トブチレ−トが好ましい。セルロ−スエステルを溶液にして上記透明樹脂層上にセルロ−スエステル層を付設する方法を用いる場合に、選択可能な溶媒が比較的広く、かつ前記層付設後の加水分解による表面改質が容易となるからである。
セルロ−ス系ポリマ−溶液を得るために用いる溶媒としては、セルロ−ス系ポリマ−を溶解または分散させて流動液を生成しうるもので、かつ本発明における透明樹脂層上に流延可能な親和性を有することが好ましい。例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、トルエン、キシレン、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロパノ−ル、n−プロパノ−ル等が挙げられる。これらは1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
セルロ−ス系ポリマ−溶液の濃度は特に制限されないが、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%である。上記濃度が1重量%未満の場合には、本発明の光学フィルムと偏光フィルムとの接着性が十分に発揮できないおそれがある。上記濃度が20重量%を超えると、本発明の光学フィルムにおいて高い耐熱性、高い透明性、高い光学的特性、高い機械的強度が十分に発揮できないおそれがある。
セルロ−ス系ポリマ−溶液を透明樹脂層上に塗布した後の乾燥温度は、好ましくは50〜130℃、より好ましくは80〜120℃である。乾燥時間は、好ましくは30秒間〜5分間、より好ましくは30秒間〜2分間である。乾燥温度を高くしたり、乾燥時間を長くしたりすることにより、残存溶剤量を低減することができるが、これら乾燥条件は生産効率が低下しないようにするのが好ましい。
本発明におけるセルロ−ス系ポリマ−層の乾燥厚みは、好ましくは0.3〜3μm、より好ましくは0.5〜2.5μmである。上記範囲を外れると、セルロ−ス系ポリマ−層中の溶剤残存量が多くなりやすく、セルロ−ス系ポリマ−層のTgの低下により、高温時の貯蔵弾性率が低下して、偏光板が加熱下に曝された場合に偏光フィルムの変化量が大きくなり偏光子クラックが発生しやすい。また、上記範囲を外れると、偏光板を構成した場合に、接着性(リワ−ク性)が低下したり、透過率の視野角特性が低下したりするおそれがある。
セルロ−ス系ポリマ−に架橋剤(本発明において「架橋剤」とは、セルロ−ス系ポリマ−が分子中に有する水酸基と反応して共有結合を形成し得る又は水素結合などの分子間結合を形成し得る官能基を有する化合物を意味する)を添加し、セルロ−ス系ポリマ−層の凝集力を向上させることにより、偏光フィルムとの接着性がさらに向上する。
上記架橋剤としては、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネ−ト、水素化トリレンジイソシアネ−ト、トリメチロ−ルプロパントリレンジイソシアネ−トアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネ−ト、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネ−ト)、イソホロンジイソシアネ−トおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノ−ルブロック物等のイソシアネ−ト類;エチレングリコ−ルジグリシジルエ−テル、ポリエチレングリコ−ルジグリシジルエ−テル、グリセリンジまたはトリグリシジルエ−テル、1,6−ヘキサンジオ−ルジグリシジルエ−テル、トリメチロ−ルプロパントリグリシジルエ−テル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザ−ル、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロ−ル尿素、メチロ−ルメラミン、アルキル化メチロ−ル尿素、アルキル化メチロ−ル化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、又は三価金属の塩及びその酸化物;などが挙げられる。また、シランカップリング剤やチタンカップリング剤などの各種カップリング剤を挙げることができる。
上記架橋剤の使用量は、セルロ−ス系ポリマ−が有する水酸基等の官能基数に対して、前記セルロ−ス系ポリマ−が有する官能基と反応又は相互作用し得る官能基の数が、好ましくは3倍以下、より好ましくは2倍以下、さらに好ましくは1.5倍以下となるようにする。具体的には、セルロ−ス系ポリマ−100重量部に対して、通常、0.1〜40重量部が好ましく、より好ましくは1〜35重量部、さらに好ましくは10〜30重量部である。かかる範囲において、均一な偏光特性を有し、且つ、偏光子との接着性に優れ、耐久性に優れた偏光板が得られ得る。
アンカ−層がポリウレタン系ポリマ−の場合、「ポリウレタン系ポリマ−」とは、ポリイソシアネ−ト成分と、ポリオ−ル、ポリアミン、水などの活性水素成分との反応により得られる樹脂を意味し、塗布前に予め前記反応が終了しているものを用いてもよく、また、塗布中および/または塗布後に反応してポリウレタン系ポリマ−になるものを用いてもよい。ポリウレタン系ポリマ−としては、塗料、接着剤、コ−ティング用途などに用いられている従来公知のポリウレタン系ポリマ−を用いることができ、例えば、ポリオ−ルとイソシアネ−ト系硬化剤とを含有する2液型ポリウレタン系ポリマ−、1液型ポリウレタン系ポリマ−、1液型湿気硬化型ポリウレタン系ポリマ−などが挙げられる。 ポリウレタン系ポリマ−は、代表的には、ポリオ−ルとポリイソシアネ−トとを反応させることにより得られる。ポリオ−ルとしては、分子中にヒドロキシル基を2個以上有するものであれば特に限定されず、任意の適切なポリオ−ルを採用し得る。例えば、ポリアクリルポリオ−ル、ポリエステルポリオ−ル、ポリエ−テルポリオ−ル等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
上記ポリアクリルポリオ−ルは、代表的には、(メタ)アクリル酸エステルと、水酸基を有する単量体とを共重合させることにより得られる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。水酸基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシペンチル等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;グリセリン、トリメチロ−ルプロパン等の多価アルコ−ルの(メタ)アクリル酸モノエステル;N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
上記ポリアクリルポリオ−ルは、上記単量体成分に加えて、他の単量体を共重合させていてもよい。他の単量体としては、共重合可能な限り、任意の適切な単量体を採用し得る。具体的には、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物およびモノまたはジエステル類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエ−テル等のビニルエ−テル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化α,β−不飽和脂肪族単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のα,β−不飽和芳香族単量体等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
上記ポリエステルポリオ−ルは、代表的には、多塩基酸成分とポリオ−ル成分とを反応させることにより得られる。多塩基酸成分としては、例えば、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、酒石酸、アルキルコハク酸、リノレイン酸、マレイン酸、フマ−ル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;あるいは、これらの酸無水物、アルキルエステル、酸ハライド等の反応性誘導体等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
上記ポリオ−ル成分としては、エチレングリコ−ル、1,2−プロパンジオ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、1,8−オクタンジオ−ル、1,10−デカンジオ−ル、1−メチル−1,3−ブチレングリコ−ル、2−メチル−1,3−ブチレングリコ−ル、1−メチル−1,4−ペンチレングリコ−ル、2−メチル−1,4−ペンチレングリコ−ル、1,2−ジメチル−ネオペンチルグリコ−ル、2,3−ジメチル−ネオペンチルグリコ−ル、1−メチル−1,5−ペンチレングリコ−ル、2−メチル−1,5−ペンチレングリコ−ル、3−メチル−1,5−ペンチレングリコ−ル、1,2−ジメチルブチレングリコ−ル、1,3−ジメチルブチレングリコ−ル、2,3−ジメチルブチレングリコ−ル、1,4−ジメチルブチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,4−シクロヘキサンジオ−ル、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルF、水添ビスフェノ−ルA、水添ビスフェノ−ルF等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
上記ポリエ−テルポリオ−ルは、代表的には、多価アルコ−ルにアルキレンオキシドを開環重合して付加させることにより得られる。多価アルコ−ルとしては、例えば、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン等が挙げられる。アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
上記ポリイソシアネ−トとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネ−ト、ドデカメチレンジイソシアネ−ト、1,4−ブタンジイソシアネ−ト、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ−ト、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネ−ト、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネ−ト等の脂肪族ジイソシアネ−ト;イソホロンジイソシアネ−ト、水添キシリレンジイソシアネ−ト、4,4’−シクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、1,4−シクロヘキサンジイソシアネ−ト、メチルシクロヘキシレンジイソシアネ−ト、1,3−ビス(イソシアネ−トメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネ−ト;トリレンジイソシアネ−ト、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネ−ト、4,4′−ジベンジルジイソシアネ−ト、1,5−ナフチレンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト、1,3−フェニレンジイソシアネ−ト、1,4−フェニレンジイソシアネ−ト等の芳香族ジイソシアネ−ト;ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネ−ト、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネ−ト、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト等の芳香脂肪族ジイソシアネ−ト等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
上記ポリウレタン系ポリマ−は、カルボキシル基を有することが好ましい。カルボキシル基を有することにより、偏光フィルムと光学フィルムの密着性(特に、高温における)に優れた偏光板を提供し得る。カルボキシル基を有するポリウレタン系ポリマ−は、例えば、上記ポリオ−ルと上記ポリイソシアネ−トとに加え、遊離カルボキシル基を有する鎖長剤を反応させることにより得られる。遊離カルボキシル基を有する鎖長剤は、例えば、ジヒドロキシカルボン酸、ジヒドロキシスクシン酸等が挙げられる。ジヒドロキシカルボン酸は、例えば、ジメチロ−ルアルカン酸(例えば、ジメチロ−ル酢酸、ジメチロ−ルブタン酸、ジメチロ−ルプロピオン酸、ジメチロ−ル酪酸、ジメチロ−ルペンタン酸)等のジアルキロ−ルアルカン酸が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
上記ポリウレタン系ポリマ−の製造において、上記の成分に加えて、他のポリオ−ル、他の鎖長剤を反応させ得る。他のポリオ−ルとしては、例えば、ソルビト−ル、1,2,3,6−ヘキサンテトラオ−ル、1,4−ソルビタン、1,2,4−ブタントリオ−ル、1,2,5−ペンタントリオ−ル、グリセリン、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ペンタエリスリト−ル等の水酸基数が3個以上のポリオ−ルが挙げられる。他の鎖長剤としては、例えば、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、プロピレングリコ−ル等のグリコ−ル類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、アミノエチルエタノ−ルアミン等の脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミン;キシリレンジアミン、トリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。
上記ポリウレタン系ポリマ−の製造方法は、任意の適切な方法を採用し得る。具体的には、上記各成分を一度に反応させるワンショット法、段階的に反応させる多段法が挙げられる。ポリウレタン系ポリマ−がカルボキシル基を有する場合、好ましくは、多段法である。カルボキシル基を容易に導入し得るからである。なお、上記ポリウレタン系ポリマ−の製造に際し、任意の適切なウレタン反応触媒を用い得る。
ポリウレタン系ポリマ−は水系や溶剤系を用いることが出来る。溶剤系としては、例えば、ポリオ−ルとイソシアネ−ト系硬化剤とを含有する2液型ポリウレタン系ポリマ−、1液型ポリウレタン系ポリマ−、1液型湿気硬化型ポリウレタン系ポリマ−などが挙げられる。これらのポリウレタン系ポリマ−は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。不揮発分の濃度としては、例えば、組成物全体に対して、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは5〜15質量%である。使用可能な溶剤としては、各組成物を構成する成分を溶解する限り、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テルアセテ−トなどが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリウレタン系ポリマ−が水系の場合、好ましくは、上記ポリウレタン系ポリマ−の製造において中和剤を用いる。中和剤を用いることにより、水中におけるポリウレタン系ポリマ−の安定性が向上し得る。中和剤としては、例えば、アンモニア、N−メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジメチルエタノ−ルアミン、メチルジエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、モルホリン、トリプロピルアミン、エタノ−ルアミン、トリイソプロパノ−ルアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノ−ル等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
ポリウレタン系ポリマ−が水系の場合、ポリウレタン系ポリマ−の製造に際し、好ましくは、上記ポリイソシアネ−トに対して不活性で、水と相溶する有機溶剤を用いる。当前記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテ−ト等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ジオキサン、テトラハイドロフラン、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル等のエ−テル系溶剤等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
上記ポリウレタン系ポリマ−の数平均分子量は、好ましくは5000〜600000、さらに好ましくは10000〜400000である。上記ポリウレタン系ポリマ−の酸価は、好ましくは10以上、さらに好ましくは10〜50、特に好ましくは20〜45である。酸価がこのような範囲内であることにより、偏光フィルムと光学フィルムとの密着性がより優れ得る。
ポリウレタン系ポリマ−の架橋剤は、カルボキシル基と反応し得る、任意の適切な架橋剤を採用し得る。好ましくは、カルボキシル基と反応し得る基を有するポリマ−や金属架橋剤が挙げられる。カルボキシル基と反応し得る基としては、例えば、有機アミノ基、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基等が挙げられる。金属架橋剤としては、例えば炭酸アンモニウムジルコニウムや、炭酸アンモニウム亜鉛等が挙げられる。好ましくは、架橋剤は、オキサゾリン基を有するポリマ−または、炭酸アンモニウムジルコニウムあるいは、これらを併用してもよい。これらの中でも、オキサゾリン基を有する架橋剤は、上記ポリウレタン系ポリマ−と混合したときの室温でのポットライフが長く、加熱することによって架橋反応が進行するため、作業性が良好である。
ポリウレタン系ポリマ−は、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、ブロッキング防止剤、分散安定剤、揺変剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、フィラ−、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。これらのポリウレタン系ポリマ−は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
なお、ポリウレタン系ポリマ−組成物には、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤;テルペン樹脂、フェノ−ル樹脂、テルペン−フェノ−ル樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂などの粘着性付与剤;レベリング剤;紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤;消泡剤;可塑剤;無機充填剤;などの従来公知の添加剤を配合することもできる。
アンカ−層がシリコ−ン系ポリマ−の場合、例えば、反応性官能基を有するシリコ−ン層が好ましい。反応性官能基を有するシリコ−ン層の材料は、特に制限されないが、例えば、イソシアネ−ト基含有のアルコキシシラノ−ル類、アミノ基含有アルコキシシラノ−ル類、メルカプト基含有アルコキシシラノ−ル類、カルボキシ含有アルコキシシラノ−ル類、エポキシ基含有アルコキシシラノ−ル類、ビニル型不飽和基含有アルコキシシラノ−ル類、ハロゲン基含有アルコキシラノ−ル類、イソシアネ−ト基含有アルコキシシラノ−ル類が挙げられ、アミノ系シラノ−ルが好ましい。さらに上記シラノ−ルを効率よく反応させるためのチタン系触媒や錫系触媒を添加することにより、接着力を強固にすることができる。また上記反応性官能基を有するシリコ−ンに他の添加剤を加えてもよい。具体的にはさらにはテルペン樹脂、フェノ−ル樹脂、テルペン−フェノ−ル樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂などの粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤等を用いても良い。
上記反応性官能基を有するシリコ−ン層は公知の技術により塗工、乾燥して形成される。シリコ−ン層の厚みは、乾燥後で、好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは10〜50nmである。塗工の際、反応性官能基を有するシリコ−ンを溶剤で希釈してもよい。希釈溶剤は特に制限はされないが、アルコ−ル類があげられる。希釈濃度は特に制限されないが、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは1〜3重量%である。
アンカ−層が分子中にアミノ基を含んだポリマ−の場合、分子中にアミノ基を含むポリマ−類としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリジン、前述アクリル系粘着剤の共重合モノマ−で示したジメチルアミノエチルアクリレ−ト等の含アミノ基含有モノマ−の重合体などを挙げることができる。
上記アンカ−層に帯電防止性を付与するために、帯電防止剤を添加することもできる。帯電防止性付与のための帯電防止剤としては、イオン性界面活性剤系、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ル、ポリキノキサリン等の導電ポリマ−系、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム等の金属酸化物系などが挙げられるが、特に光学特性、外観、帯電防止効果、および帯電防止効果の熱時、加湿時での安定性という観点から、導電性ポリマ−系が好ましく使用される。この中でも、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの水溶性導電性ポリマ−、もしくは水分散性導電性ポリマ−が特に好ましく使用される。これは、帯電防止層の形成材料として水溶性導電性ポリマ−や水分散性導電性ポリマ−を用いた場合、塗布工程に際して有機溶剤によるフィルム基材の変質を抑える事が出来るためである。
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い。他の偏光子保護フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。粘着剤層を形成する粘着剤は、特に限定されないが、例えばアクリル系重合体、シリコ−ン系ポリマ−、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエ−テル、フッ素系やゴム系などのポリマ−をベ−スポリマ−とするものを適宜に選択して用いることができる。
前記粘着剤層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベ−スポリマ−またはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上または偏光子保護フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレ−タ上に粘着剤層を形成してそれを偏光子保護フィルム面に移着する方式などがあげられる
本発明の偏光板は、片方/または両方の表面にセパレ−トフィルムなどの表面保護フィルムを積層して表面保護フィルム付き偏光板としてもよい。積層方法としては、特に限定されず、例えば、偏光板を作製した後に、ラミネ−トロ−ル等を用いて任意の適切な方法によって貼り合わせれば良い。
表面保護フィルムとしては任意の適切なフィルムを採用し得る。表面保護フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリカ−ボネ−トが挙げられる。好ましくは、離型処理されたポリエチレンテレフタレ−トである。特に好ましくは、曲げ弾性率が5000MPa以上のポリエチレンテレフタレ−トが挙げられる。
本発明において、表面保護フィルムの厚みは、好ましくは15〜200μm、より好ましくは30〜150μm、さらに好ましくは50〜100μmである。表面保護フィルムの厚みが15μm未満であると、本発明の効果が十分に発現できないおそれがある。表面保護フィルムの厚みが200μmより大きいと、経済的ではなく、また、ロ−ル搬送性が悪くなるおそれがある。
本発明の偏光板は、表面性、耐傷付き性を向上させる為に、少なくとも一層以上のハ−ドコ−ト層を積層することが出来る。前記ハ−ドコ−ト層としては、例えばシリコ−ン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、紫外線硬化型樹脂、ウレタン系ハ−ドコ−ト剤等よりなるハ−ドコ−ト層が挙げられる。紫外線硬化型樹脂としては、例えば紫外線硬化型アクリルウレタン、紫外線硬化型エポキシアクリレ−ト、紫外線硬化型(ポリ)エステルアクリレ−ト、紫外線硬化型オキセタン等から選ばれる一種類以上の紫外線硬化樹脂が挙げられる。ハ−ドコ−ト層の厚みは、0.1〜100μmである。また、ハ−ドコ−ト層の間にプライマ−処理をすることもできる。また、反射防止や低反射処理など公知の防眩処理を行うこともできる。
本発明の偏光板は種々の画像表示装置への使用が可能である。本発明の偏光板を用いた液晶パネルなどの画像形成素子を、表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明の画像表示装置を作製することが出来る。本発明の偏光板が適用可能な画像表示装置の具体例としては、反射型、透過型、半透過型LCDあるいはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型、IPS型等の各種駆動方式の液晶表示装置(LCD)で好ましく用いられ、また、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)の各種画像表示装置にも好ましく用いられる。
液晶表示装置の場合、偏光板は液晶セルの両側に配置されるが、本発明の光学フィルムが画像表示面の偏光フィルムと液晶セルの間に配置する構成が好ましい。また、液晶表示装置の形成に際しては、例えば位相差板、光学補償シ−ト、バックライト部(光源、反射シ−ト、導光板、拡散板、拡散シ−ト、プリズムシ−ト、輝度向上フィルム、等)などの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の偏光板を備える。本発明の偏光板を備少なくとも
1枚備えていれば良く、例えば、液晶表示装置の場合、本発明の偏光板は液晶セルの片側のみに備えても良いし、両側に備えても良い。
本発明の偏光板は種々の画像表示装置への使用が可能である。本発明の偏光板を用いた画像形成素子を、表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明の画像表示装置を作製することが出来る。本発明の偏光板が適用可能な画像表示装置の具体例としては、反射型、透過型、半透過型LCDあるいはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型、IPS型等の各種駆動方式の液晶表示装置(LCD)で好ましく用いられ、また、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)の各種画像表示装置にも好ましく用いられる。
液晶表示装置の場合、偏光板は液晶セルの両側に配置されるが、本発明の光学フィルムが低位相差や光学補償などの機能を有する場合は、画像表示面の偏光子と液晶セルの間に配置する構成が好ましい。また、液晶表示装置の形成に際しては、例えば位相差板、光学補償シート、バックライト部(光源、反射シート、導光板、拡散板、拡散シート、プリズムシート、輝度向上フィルム、等)などの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
次に、液晶表示装置について説明する。図1は、本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の画像表示面の概略断面図である。液晶表示装置は、液晶セル4(液晶層、ガラス基板、透明電極、配向膜、等を含む)と、液晶セル4を挟んで配置された偏光板9、10と、バックライト部8(光源、反射シート、導光板、拡散板、拡散シート、プリズムシート、輝度向上フィルム、等を含む)を備える。偏光板9、10は、偏光子2、6と、偏光子を挟んで配置された偏光子保護フィルム1、3,5,7を備える。偏光子保護フィルム1、3,5,7に本発明の光学フィルムが採用される。また、表示装置の視認性には偏光子2と偏光子6の間に存在するフィルムの影響が大きいため、偏光子保護フィルム3および/または5が本発明の光学フィルムであることが好ましい。本発明の液晶表示装置においては、偏光板9および/または10に本発明の偏光板が採用される。偏光子2と偏光子保護フィルム3の間、および/または、偏光子6と偏光子保護フィルム5の間に別に位相差フィルムや光学補償層を設置し、本発明に用いられる光学フィルムと組み合わせて光学補償を行うことが可能である。さらに、必要に応じて、液晶セル4と偏光板9、10の間に、別の位相差フィルムや光学補償層を設置し組み合わせることが出来る。その他、偏光子保護フィルム1と7には紫外線吸収剤を含有させて紫外線吸収能を付与したり、最表面となる偏光子保護フィルム1にハードコート処理および/または反射防止、低反射処理など公知の防眩処理を行うこともできる。
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の説明では、便宜上、「質量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。
<厚みの測定>
デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ製)を用いて測定した。
<線熱膨張係数>
フィルムの線熱膨張係数αは、熱機械分析装置TMA−60(島津製作所社製)を用い下記測定条件から60℃における傾きとして求めた。
・試料サイズ 5×20mm
・試料の前処理 60℃で15時間の前処理を行い室温まで冷却した
・測定加重 5g
・昇温速度 5℃/分
線熱膨張係数αがフィルム面内で最大となる軸(x)における線熱膨張係数をαx、軸(x)とフィルム面内で直交する方向の軸(y)における線熱膨張係数をαyとした。
<ガラス転移温度>
各サンプルのガラス転移温度(Tg)はJIS K7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温速度20℃/分で昇温して得られたDSC曲線から始点法により算出した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
<重量平均分子量>
重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により以下の条件で求めた。
システム:東ソー社製GPCシステム HLC−8220
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)、流量:0.6ml/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製、PS−オリゴマーキット)
測定側カラム構成:ガードカラム(東ソー社製、TSKguardcolumn SuperHZ−L)、分離カラム(東ソー社製、TSKgel SuperHZM−M)2本直列接続
リファレンス側カラム構成:リファレンスカラム(東ソー社製、TSKgel SuperH−RC)
<面内位相差Re>
フィルムの面内位相差Reは、全自動複屈折計(王子計測機器製、KOBRA−
WR)を用いて評価した。面内位相差Reは、波長589nmの光に対する値である。
面内位相差Reは、式Re=(nx−ny)×dにより示される。ここで、nxはフィルムの面内における遅相軸方向(フィルム面内において最大の屈折率を示す方向)の屈折率、nyはフィルムの面内における進相軸方向(フィルム面内におけるnxと垂直な方向)の屈折率、dはフィルムの厚さ(nm)である。
<厚さ方向の位相差Rth>
フィルムの厚さ方向の位相差Rthは、全自動複屈折計(王子計測機器製、KOBRA−WR)を用いて評価した。具体的には、遅相軸を傾斜軸として、フィルムを40°傾斜させて測定した値を基に算出した。厚さ方向の位相差Rthは、波長589nmの光に対する値である。
厚さ方向の位相差Rthは、式Rth={(nx+ny)/2−nz}×dにより示される。ここで、nxはフィルムの面内における遅相軸方向(フィルム面内において最大の屈折率を示す方向)の屈折率、nyはフィルムの面内における進相軸方向(フィルム面内におけるnxと垂直な方向)の屈折率、nzはフィルムの厚さ方向の屈折率、dはフィルムの厚さ(nm)である。
<耐折回数>
フィルムの耐折回数は、MIT耐折度試験機(テスター産業製、BE−201型)を用いて、23℃、50%RHの状態に1時間以上静置させた、折り曲げ線が60℃における線熱膨張係数αがフィルム面内で最大となる軸(x)に平行となる長さ90mm(幅15mm)の試験フィルムを使用し、荷重200gの条件で、JIS P8115に準拠して測定し、5枚のサンプルの平均値を軸(x)の測定結果とした。また、軸(x)とフィルム面内で直交する方向の軸(y)に平行となる試験フィルムを使用し、軸(x)と同じ条件で測定を行い、軸(y)の測定結果とした。
<偏光フィルムの作成>
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、5重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)のヨウ素水溶液中で染色した。次いで、3重量%のホウ酸および2重量%ヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬し、さらに4重量%のホウ酸および3重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液中で5.5倍まで延伸した後、5重量%のヨウ化カリウム水溶液に浸漬した。その後、40℃のオーブンで3分間乾燥を行い、厚さ30μmの偏光フィルムを得た。
得られた偏光フィルムの流れ方向(MD)と幅方向(TD)の60℃における線熱膨張係数は各々−3.6×10−6(/K)と47.8×10−6(/K)であった。
<接着剤>
日本合成化学社製 ゴーセファイマーZ200を、30℃の温度条件下で、純水に溶解し、固形分濃度10.0%に調整した接着剤水溶液を得た。
<偏光板の作成>
上記で得られた偏光フィルムの片側に、接着剤を介して、実施例、及び比較例で得られた光学フィルムを貼合し、偏光フィルムの他方の面には、厚さ80μmのケン化処理済み三酢酸セルロースからなる樹脂フィルムを貼合した。この際、偏光フィルムの吸収軸と光学フィルムの60℃における線熱膨張係数αがフィルム面内で最大となる軸(x)が±2°の範囲に入るように角度を調整して貼合した。樹脂フィルムは、偏光フィルムの吸収軸と樹脂フィルムの流れ方向(MD)が±2°の範囲に入るように調整した。樹脂フィルムの流れ方向(MD)と幅方向(TD)の60℃における線熱膨張係数は各々10.6×10−6(/K)と30.5×10−6(/K)であった。
<偏光板のカール試験>
試験片は、実施例、比較例で得られた偏光板を、偏光フィルムの吸収軸が長軸方向になるように5cm(幅1cm)切り出したものを使用した。20℃に調温した恒温恒湿機(ADVANTEC THE051FA)内に、垂直となるように試験片の上部をクリップで固定し、この時の試験片の最下部(中央)を直交座標系のゼロ点とした。次に60℃に昇温して、10時間後の試験片最下部(中央)の位置を測定した。尚、試験片の最下部が樹脂フィルム側にカールした場合を+(第一象限)、光学フィルム側にカールした場合を−(第二象限)と定義しセンチメートル単位の座標系で記録した。例えば偏光板がカールすることで、最下部(中央)の位置が樹脂フィルム側に1cm移動し、更に上部に0.5cm跳ね上がった形状になった場合、(1.0,0.5)と表記した。
(製造例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた内容積1000Lの反応釜に、40部のメタクリル酸メチル(MMA)、10部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、重合溶媒として50部のトルエン、および0.025部の酸化防止剤(旭電化工業製、アデカスタブ2112)を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.05部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)を添加するとともに、0.10部のt−アミルパーオキシイソノナノエートを3時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として0.05部のリン酸2−エチルヘキシル(堺化学工業製、Phoslex A−8)を加え、約90〜110℃の還流下において2時間、環化縮合反応を進行させた後、240℃のオートクレーブにより重合溶液を30分間加熱し、環化縮合反応をさらに進行させた。次に、得られた重合溶液を、バレル温度240℃、回転速度100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダが設けられており、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm、濾過面積1.5m2)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(Φ=50.0mm、L/D=30)に、樹脂量換算で45kg/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。その際、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を0.68kg/時の投入速度で第1ベントの後ろから、イオン交換水を0.22kg/時の投入速度で第2および第3ベントの後ろから、それぞれ投入した。酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液は、酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液には、50部の酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガノックス1010)と、失活剤として35部のオクチル酸亜鉛(日本化学産業製、ニッカオクチクス亜鉛3.6%)とを、トルエン200部に溶解させた溶液を用いた。また、上記サイドフィーダから、スチレン−アクリロニトリル共重合体(スチレン/アクリロニトリルの比率は73重量%/27重量%、重量平均分子量22万)のペレットを投入速度5kg/時で投入した。
次に、脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂を押出機の先端からポリマーフィルタにより濾過しながら排出し、ペレタイザーによりスチレン系重合体の含有割合が10重量%である熱可塑性樹脂(A)の樹脂ペレットを得た。熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度は125℃、重量平均分子量は12.7万であった。
(実施例1)
製造例1で得られた熱可塑性樹脂(A)の樹脂ペレットをポリマーフィルタ(濾過精度5μm)とTダイを備えた単軸押出機を用いて270℃にて溶融押出して、厚み228μmの未延伸フィルム(A−1)を成膜した。未延伸フィルム(A−1)のMIT耐折度試験機による耐折回数は、流れ方向(MD)流れ方向(MD)とも0回であった。次いで、温度145℃まで加熱して流れ方向(MD)に1.8倍に延伸を行い、次にフィルムの両端部から20mmの位置を2インチのクリップで掴みテンターへ供給し、以下の条件で3.4倍に幅方向(TD)への延伸を行った。
予熱ゾーン温度 ・・・130℃
予熱ゾーンでの拡縮 ・・・全延伸倍率の0%
延伸ゾーン温度 ・・・145℃
延伸ゾーンでの拡縮 ・・・全延伸倍率の90%
熱処理ゾーン温度 ・・・125℃
熱処理ゾーンでの拡縮 ・・・全延伸倍率の10%
得られた光学フィルム(B−1)の平均膜厚は50μm、膜厚精度は±2μmであった。また、線熱膨張係数はフィルムの流れ方向(MD)が面内で最大であり、MDを軸(x)としたαxは54×10−6(/K)、MDと面内で直交する幅方向(TD)を軸(y)としたαyは40×10−6(/K)であり、αx−αyは、14×10−6(/K)であった。光学フィルム(B−1)の測定結果を表―1にまとめた。
次に、光学フィルム(B−1)を用いて偏光板を作成した。得られた偏光板のカール試験の結果、試験片最下部の位置は(0.2,0.0)であり、殆どカールしないことが分かった。
(実施例2)
厚み242μmの未延伸フィルム(A−2)を成膜し、流れ方向(MD)に1.5倍、幅方向(TD)に3.3倍延伸した他は、実施例1と同様に光学フィルム(B−2)を作成した。
光学フィルム(B−2)の平均膜厚は60μm、膜厚精度は±2μmであった。また、線熱膨張係数はフィルムの流れ方向(MD)が面内で最大であり、αxは59×10−6(/K)、αyは44×10−6(/K)であり、αx−αyは、15×10−6(/K)であった。光学フィルム(B−2)の測定結果を表―1にまとめた。
次に、光学フィルム(B−2)を用いて偏光板を作成した。得られた偏光板のカール試験の結果、試験片最下部の位置は(0.1,0.0)であり、殆どカールしないことが分かった。
(比較例1)
厚み212μmの未延伸フィルム(A−3)を成膜し、流れ方向(MD)に2.0倍、幅方向(TD)に3.0倍延伸した他は、実施例1と同様に光学フィルムを作成した。
光学フィルム(B−3)の平均膜厚は50μm、膜厚精度は±2μmであった。また、線熱膨張係数はフィルムの流れ方向(MD)が面内で最大であり、αxは49×10−6(/K)、αyは45×10−6(/K)であり、αx−αyは4×10−6(/K)であった。光学フィルム(B−3)の測定結果を表―1にまとめた。
次に、光学フィルム(B−3)を用いて偏光板を作成した。得られた偏光板のカール試験の結果、試験片最下部の位置は(1.2,0.2)であり、大きくカールすることが分かった。
(比較例2)
厚み184μmの未延伸フィルム(A−4)を成膜し、流れ方向(MD)に2.0倍、幅方向(TD)に2.6倍延伸した他は、実施例1と同様に光学フィルムを作成した。
得られた光学フィルム(B−4)の平均膜厚は50μm、膜厚精度は±2μmであった。また、線熱膨張係数はフィルムの幅方向(TD)が面内で最大であり、αxは50×10−6(/K)、αyは45×10−6(/K)であり、αx−αyは5.0×10−6(/K)であった。光学フィルム(B−4)の測定結果を表―1にまとめた。
次に、光学フィルム(B−4)を用いて偏光板を作成した。得られた偏光板のカール試験の結果、試験片最下部の位置は(1.4,0.3)であり、大きくカールすることが分かった。