JP5590649B2 - 変異体ピロリジル−tRNA合成酵素及びこれを用いる非天然アミノ酸組み込みタンパク質の製造方法 - Google Patents

変異体ピロリジル−tRNA合成酵素及びこれを用いる非天然アミノ酸組み込みタンパク質の製造方法 Download PDF

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Description

[関連出願の記載]
本発明は、日本国特許出願:特願2007−243574号(2007年9月20日出願)の優先権主張に基づくものであり、同出願の全記載内容は引用をもって本書に組み込み記載されているものとする。
本発明は、変異体ピロリジル−tRNA合成酵素及びこれを用いる非天然アミノ酸組み込みタンパク質の製造方法に関する。より詳細には、メタノサルシナ属由来の変異体ピロリジル−tRNA合成酵素とサプレッサーtRNAとを用いてNε−ベンジルオキシカルボニル−リジン誘導体を部位特異的に目的タンパク質へ導入する方法に関する。
タンパク質中の所望の位置のアミノ酸残基を、通常のタンパク質合成に関わる20種類以外のアミノ酸(非天然アミノ酸)で置換した、非天然アミノ酸組み込みタンパク質(アロタンパク質)は、タンパク質の構造・機能解析のための有効な手段となりうる。様々な生物種由来のアミノアシル−tRNA合成酵素(aaRS)/tRNAペアを用いて、すでに30種類以上のアロタンパク質が合成されている。最も歴史が長くかつ多くの有用な非天然アミノ酸導入に応用されている系は、チロシル−tRNA合成酵素(TyrRS)変異体とアンバーサプレッサー化されたtRNATyrとのペアである。この方法は、真正細菌と、古細菌及び真核生物との2つのグループにおけるaaRSが、それぞれのグループ内ではtRNAをアミノアシル化するが、他のグループのtRNAをアミノアシル化できない直交性(orthogonal)の関係にあることが鍵となっている。例えば、古細菌メタノカルドコッカス・ジャナシイ(Methanocaldococcus jannaschii)のTyrRS/tRNATyrペアは大腸菌の系で、逆に大腸菌TyrRSとバチルス・ステアロサーモフィラスtRNATyrのペアは哺乳動物細胞の系で直交したペアとなるために、それらの系における遺伝暗号の拡張に使用することができる(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。
一方、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)由来のピロリジル−tRNA合成酵素(PylRS)及びアンバーサプレッサーtRNAPylは、大腸菌細胞内で直交性を有するaaRS/tRNAペアとして機能する(例えば、非特許文献2参照)。さらに、このペアは、真核細胞内においても遺伝暗号の拡張に使用しうることが報告されている(例えば、特許文献2参照)。ピロリジン(Pyrrolysine)は側鎖に嵩高いメチルピロリン部分を有するリジン誘導体である。野生型PylRSは、大腸菌内でNε−Boc−L−リジンをtRNAPylに結合させ得る(特許文献2参照)。また、野生型PylRSと、ATPアナログ、ピロリジン、又はピロリジンアナログとの複合体のX線結晶構造が報告されている(非特許文献3、4及び9参照)。
国際公開第2004/070024号パンフレット 特開2007−37445号公報 Sakamoto, K. et al., Nucleic Acids Research, 2002, Vol.30, pp.4692-4699. Blight S.K. et al., Nature, (2004) Vol. 431, pp.333-335. Yanagisawa, T. et al., Acta Cryst. (2006) F62, 1031-1033 Kavran, J.M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (2007) Vol. 104, pp. 11268-11273 Tsao, M.-L., Tian, F., Schultz, P. G. ChemBioChem Vol. 2005, Issue 6, pp. 2147-2149 Ohno, S. et al., J. Biochem. (Tokyo) Vol. 141, pp. 335-343 (2007) Mukai, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. Vol. 371, pp. 818-822 (2008) Liu, W. et al., Nat. Methods. Vol. 4, pp. 239-244 (2007) Yanagisawa, T. et al., J. Mol. Biol. (2008) 378, 634-652
以上の特許文献1、2及び非特許文献1〜9の開示事項は、本書に引用をもって繰り込み記載されているものとする。以下に本発明による関連技術の分析を与える。
TyrRS/tRNATyr系を用いてタンパク質の所望の位置にチロシンアナログを導入する方法は、芳香族環を有するチロシンアナログの固い構造から位相決定のための重原子含有アミノ酸の導入方法として有用である。一方、クロスリンカー、三重結合、二重結合などを有する反応性アミノ酸をタンパク質に導入し、当該タンパク質と細胞内で相互作用するターゲットを探すためには、導入される非天然アミノ酸の構造の柔軟性が必要である。このため、チロシンアナログよりもアミノ酸側鎖の構造が柔軟なリジン誘導体の方が優れていると考えられる。一般的に、リジン誘導体をタンパク質に導入するためには、リジル−tRNA合成酵素(LysRS)の基質特異性を改変する方法がある。しかしながら、LysRSはリジンに対する認識が厳密であるため、様々な大きさ、形の官能基を有するリジン誘導体を部位特異的にタンパク質に導入することはこれまで困難であった。本発明は、重原子、セレン、反応性官能基、蛍光基、クロスリンカー等、有用な官能基を有する非天然アミノ酸として好適なリジン誘導体、特にNε−ベンジルオキシカルボニル−リジン(Z−Lys)誘導体を所望のタンパク質に部位特異的に導入する方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、メタノサルシナ属由来のピロリジル−tRNA合成酵素が、アミノ酸基質特異性が低く、ピロリジンだけでなく様々な疎水性官能基をもつリジン誘導体を活性化できる特異なaaRSであることを発見した。さらに、嵩高い側鎖構造を有するZ−Lys誘導体を効率的にアミノアシル化しうる変異体PylRSを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、第一の視点において、本発明は配列番号2に示したピロリジル−tRNA合成酵素のアミノ酸配列において、ピロリジン結合部位を構成する306位のチロシン、309位のロイシン、及び348位のシステインから選択される少なくとも1つのアミノ酸残基が置換された変異体ピロリジル−tRNA合成酵素を提供する。当該アミノ酸置換は、306位のチロシンからグリシン又はアラニンへ、309位のロイシンからグリシン又はアラニンへ、及び348位のシステインからバリン、セリン又はアラニンへの置換であることを特徴とする。好ましい実施形態において、前記変異体ピロリジル−tRNA合成酵素は、さらに384位のチロシンからフェニルアラニン若しくはヒスチジンへのアミノ酸置換を含むことを特徴とする。
1つの実施形態において、本発明の変異体ピロリジル−tRNA合成酵素は前記306位、309位、348位及び384位以外の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつNε−ベンジルオキシカルボニル−リジンをアミノアシル化しうることを特徴とする。さらに異なる実施形態において、野生型ピロリジル−tRNA合成酵素が、配列番号2に示したアミノ酸配列の相同体であるメタノサルシナ属由来のピロリジル−tRNA合成酵素において、前記相同体のアミノ酸配列と配列番号2に示したアミノ酸配列とをアライメントしたとき、配列番号2に示したアミノ酸配列の306位に対応するチロシンがアラニンに置換され、及び/又は384位に対応するチロシンがフェニルアラニンに置換されてなる変異体ピロリジル−tRNA合成酵素が提供される。
本発明の他の視点において、前記変異体ピロリジル−tRNA合成酵素をコードする単離されたDNA、並びにこれを含む発現ベクター及び形質転換体等が提供される。
さらに異なる視点において、本発明は非天然アミノ酸組み込みタンパク質の製造方法であって、(a)Nε−ベンジルオキシカルボニル−リジン誘導体を活性化しうるアミノアシルtRNA合成酵素と、(b)前記アミノアシルtRNA合成酵素の存在下でNε−ベンジルオキシカルボニル−リジン誘導体と結合可能なサプレッサーtRNAと、(c)所望の位置にナンセンス変異又はフレームシフト変異を受けた所望のタンパク質をコードする遺伝子と、を前記Nε−ベンジルオキシカルボニル−リジン誘導体の存在下に細胞内又は細胞抽出液内で発現させることを特徴とする。前記Nε−ベンジルオキシカルボニル−リジン誘導体が、Nε−オルト−ヨード−ベンジルオキシカルボニル−リジン、ベンジルオキシカルボニル−アミノエチル−セレノシステイン、Nε−オルト−エチニル−ベンジルオキシカルボニル−リジン、Nε−オルト−アジド−ベンジルオキシカルボニル−リジン、又はNε−オルト−ジアジリル−ベンジルオキシカルボニル−リジンであることが好ましい。
さらになお異なる視点において、本発明の非天然アミノ酸組み込みタンパク質合成キットは、(a)細胞抽出液と、(b)Nε−ベンジルオキシカルボニル−リジン誘導体からなる非天然アミノ酸と、(c)本発明の変異体ピロリジル−tRNA合成酵素と、(d)前記変異体ピロリジル−tRNA合成酵素の存在下でNε−ベンジルオキシカルボニル−リジン誘導体と結合可能なサプレッサーtRNAと、を含むことを特徴とする。
本発明の変異体PylRSは、嵩高い側鎖構造を有するZ−Lys及びその誘導体に対する活性が増強されている。このため、大腸菌や動物細胞等の細胞内におけるタンパク質合成系において、効率よくZ−Lys誘導体を所望のタンパク質に部位特異的に組み込むことができる。
L−ピロリジンの化学構造(A)、メタノサルシナ・マゼイ由来のPylRSのドメイン構造(B)、tRNAPylへのピロリジン結合反応をPAGE及びメチレンブルー染色により検出した結果(C)、及びPylRS(c270)の全体構造(D)を示す。 メタノサルシナ・マゼイPylRS(c270)と、他のPylRS及びLysRSとの立体構造に基づくアミノ酸配列のアライメントを示す。 PylRS(c270)の活性部位(図3C参照)とLysRSの活性部位(図3D参照)の比較。 PylRS(c270)の活性部位へ導入した変異がピロリジンのアミノアシル化反応に及ぼす影響を調べた結果。 PylRS(c270)の活性部位の拡大図。 LysRSの活性部位の拡大図。 ピロリジンがアキシアル型の立体異性体の場合のPylRS(c270)の活性部位(図3F参照)とLysRSの活性部位(図3D参照)の比較。 ピロリジンがアキシアル型の立体異性体の場合のPylRS(c270)の活性部位の拡大図。 リジン誘導体の化学構造(A)及びこれら誘導体のアミノアシル化反応を酸性尿素PAGEで解析した結果(B)である。 PylRS(c270)及びPylRS(c270)(Y306A)活性部位へのZ−Lysの結合様式(A、B)及び各種変異体PylRSによるZ−Lysアミノアシル化反応を解析した結果(C)を示す。 PylRS及びtRNAPylを用いたアンバーサプレッションシステムの概略を説明する図である。 大腸菌内におけるBoc−Lys及びAloc−Lys依存性アンバーサプレッションの結果合成されたタンパク質のSDS−PAGEによる分析結果である。 大腸菌内におけるZ−Lys依存性アンバーサプレッションの結果合成されたタンパク質のSDS−PAGEによる分析結果である。 大腸菌内におけるアンバーサプレッションで合成されたGSTの精製タンパク質を分析した結果である。 精製GSTタンパク質をゲル内トリプシン消化し、MALDI−TOFにより質量分析した結果である。 メタノサルシナ・マゼイtRNAPylの推定2次構造である。 種々のナンセンスコドンに対するアミノアシル化活性を調べた結果である。 種々のNε−ベンジルオキシカルボニル−リジン誘導体の化学構造及びPylRS(Y306A)との結合様式を表した模式図である。 Z−Lys特異性の高い変異体酵素を用いて、大腸菌内で発現させたアンバーコドンを有するGSTのSDS−PAGEによる分析結果である。 GSTのアンバー遺伝子を発現させた大腸菌から得られた粗抽出液をSDS-PAGEで分離してタンパク質を染色して得られたパターンである。 FITC-PP3の化学構造。 蛍光修飾反応を2通りの方法で行ったGSTをSDS-PAGEで分離してUVライトで蛍光を検出した結果である。 lacZアンバー遺伝子からのLacZタンパク質の発現をLacZによる発色反応の相対強度で示した結果である。 Grb2遺伝子を発現させた動物細胞からの粗抽出液に蛍光修飾反応を行った後にSDS-PAGEで分離し蛍光検出器によって蛍光を検出した結果である。
[ピロリジル−tRNA合成酵素(PylRS)]
本発明に係るピロリジル−tRNA合成酵素(PylRS)は、古細菌、特に、メタン生成古細菌から取得した野生型PylRSを基に、種々の方法で変異を導入して作製することができる。野生型PylRSとしては、例えば、メタン生成古細菌であるメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)、メタノサルシナ・バルケリ(Methanosarcina barkeri)、及びメタノサルシナ・アセチボランス(Methanosarcina acetivorans)等から取得することできるがこれらに限定されない。これらの古細菌を含む多くの細菌ゲノム塩基配列及びこれに基づくアミノ酸配列は公知であり、例えばGenBank等の公共データベースから塩基配列やアミノ酸配列の相同性検索を行って、他の相同なPylRSを取得することも可能である。典型的な例として、メタノサルシナ・マゼイ由来のPylRSは、アクセッションNo.AAM31141として、メタノサルシナ・バルケリ由来のPylRSは、アクセッションNo.AAL40867として、及びメタノサルシナ・アセチボランス由来のPylRSは、アクセッションNo.AAM03608として登録されている。特に好ましくは、上記メタノサルシナ・マゼイ由来のPylRSであり、その遺伝子の塩基配列を配列番号1に、タンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示した。これらメタノサルシナ属のPylRS相同体の配列はよく保存されており、例えば、アミノ酸配列の相同性は、凡そ70%以上である。これらの野生型PylRSの立体構造を解析し、以下に詳細に説明する方法に従って本発明の変異体PylRSを作製する。
[変異体PylRSの作製]
本発明は、PylRSの触媒活性ドメインの立体構造の解析及びランダム変異導入法に基づいて作製した変異体PylRSを提供する。PylRS、基質アミノ酸(ピロリジン又はBoc−Lys)及びATPアナログであるAMPPNPとの複合体の結晶化及びそのX線構造解析の具体的な方法は、以下の実施例に記載したとおりである。メタノサルシナ・マゼイ由来のPylRS活性ドメインとピロリジンとAMPPNPとの複合体結晶の単位格子パラメーターは、空間群がP6であり、単位格子がa=b=104.88Å、c=70.43Å、α=β=90及びγ=120°である。ここで、単位格子とは、結晶の最も小さく単純な体積要素を意味し、空間群とは単位格子の対称性を意味する。PylRSの触媒活性ドメインの結晶化及びX線構造解析方法については、すでに本発明者らにより報告されており(上掲の非特許文献3参照)、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
PylRSのアミノ酸基質認識はリジン誘導体のεアミノ基に結合するカルボニル、及びその先に付加された疎水性官能基の存在が重要である。疎水性官能基が、ピロール環のようなある程度の大きさと嵩高さを持っていれば、野生型PylRSはそのリジン誘導体を活性化することができる。しかし野生型PylRSが活性化できるリジン誘導体の大きさには限界があり、例えばNε−ベンジルオキシカルボニル−リジン(Z−Lys)のように大きな官能基を持つリジン誘導体はタンパク質へ導入することができない。本発明の変異体PylRSによれば、野生型PylRSでは活性の低いZ−Lysについても、効率良くタンパク質へ導入することができる。
このような変異体PylRSとしては、配列番号2に示したピロリジル−tRNA合成酵素のアミノ酸配列においてピロリジン結合部位を構成する306位のチロシン、309位のロイシン、及び348位のシステインから選択される少なくとも1つのアミノ酸残基が置換された変異体PylRSである。当該アミノ酸置換は、配列番号2の306位のチロシンが、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン等の比較的小さな側鎖構造を有するアミノ酸へ置換されたものが好ましく、より好ましくはグリシン又はアラニンであり、最も好ましくはアラニンである。PylRSの306位のアミノ酸残基は、基質結合部位を構成し、特に、Z基のような嵩高い側鎖を有する基質の場合には基質が結合したときの立体障害を回避するために上記アミノ酸残基に置換されることが好ましいと考えられる。また、309位のロイシンがグリシン又はアラニンへ置換されてもよく、好ましくはアラニンへの置換である。この場合、同時に348位のシステインがバリン、セリン又はアラニンへ置換されることが好ましい。
さらに、配列番号2の384位のチロシンが、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン又はヒスチジン等へ置換されたものが好ましく、より好ましくはフェニルアラニン又はヒスチジンであり、最も好ましくはフェニルアラニンである。また、131位のグリシンがグルタミン酸に置換されていてもよい。これらのアミノ酸置換による活性増強効果については必ずしも明らかではないが、384位のアミノ酸残基は、基質アミノ酸の、特に主鎖部分と相互作用することが示されており(非特許文献4参照)、基質アミノ酸の種類に依存せずに触媒活性を増強する可能性がある。この384位のアミノ酸置換は、上記基質結合部位のアミノ酸置換と共存することが好ましく、306位若しくは309位のアミノ酸置換との二重変異体、又は309位及び348位のアミノ酸置換との三重変異体であることがさらに好ましい。
本発明の好ましい実施形態において、配列番号2で表されるアミノ酸配列において、306位及び384位のチロシンが、それぞれアラニン及びフェニルアラニンに置換されたアミノ酸配列からなる変異体PylRSが提供される。この変異体PylRS(Y306A、Y384F)は、Z−Lysのような嵩高い側鎖構造を有するリジン誘導体を効率よくアミノアシル化することができる。本明細書において「アミノアシル化しうる」又は「アミノアシル化活性」とは、リジン誘導体をサプレッサーtRNAに結合させてアミノアシルtRNAを合成する活性をいい、例えば、変異体酵素及びサプレッサーtRNAを精製し、インビトロにおいてATP及びリジン誘導体の存在下に酵素反応を行うことによって生成するピロリジル−tRNA(Pyl−tRNA)の量を測定することができる。
このような変異体を作製する方法としては、当業者に公知の種々の方法を用いることができ、例えば、目的のアミノ酸の位置をコードする塩基配列を改変すべきアミノ酸をコードする塩基配列に置換したプライマーを用いて、改変すべきアミノ酸をコードする塩基配列に置換したDNAをPCRにより増幅させて全長の変異体PylRSをコードするDNAを取得し、これを大腸菌等の宿主細胞を用いて発現させることができる。あるいは、Kunkel法又はギャップ二重鎖(Gapped duplex)法等の公知の部位特異的突然変異導入方法によって行うことができ、これらの手法を利用した変異導入用キット(例えばMutan−KやMutan−G(TAKARA)等)を利用することができる。
さらに、本発明は、上記変異体PylRSの有するアミノ酸配列において、306位、309位、348位及び384位以外の1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつZ−Lysをアミノアシル化しうるタンパク質を含む。「1又は数個のアミノ酸」とは、全長アミノ酸残基数の多くとも5〜10%程度をいい、例えば、1〜50個程度、好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、最も好ましくは1〜5個程度である。同様に、本発明の変異体PylRSは、上記アミノ酸配列中の306位、309位、348位及び384位に所定の変異を有し、所望の活性を維持する限り、その他のアミノ酸残基については、70%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性、より好ましくは90%以上の相同性を有するものも含まれる。
[非天然アミノ酸]
本発明に用いられる非天然アミノ酸としては、例えばNε−ベンジルオキシカルボニル−リジン(Z−Lys)誘導体を用いることができる。Z−Lys誘導体は、非天然のアミノ酸であり、リジン側鎖のアルキル部分がリンカーとして働くのでチロシンアナログに比べ柔軟性の高い反応性骨格をもつアミノ酸として適している。Z基はペプチド合成の保護基として一般的に知られているが、ベンゾイル(Bz)基よりも可変性が高いうえ側鎖に酸素を含むため水溶性が比較的高く水溶液条件下でも扱いやすい。またZ基は接触水素還元という温和な条件で脱保護できることから、クロスリンカー型Z−Lys誘導体によって架橋化したタンパク質同士を安定な状態で分離すること、また反応性官能基を介してタンパク質に結合させた蛍光プローブなどを必要に応じてタンパク質から切り離すことができる。
野生型及び変異体PylRS(Y306A)の活性部位へのZ−Lysの結合モデルに基づいて、いくつかの好ましい化合物が得られる。Z基のベンゼン環オルト位は活性部位の外側を向き立体障害を起こしにくいと予想されるため、比較的大きい官能基でも置換が可能である。例えば、オルト位にクロスリンカー(アジド、ジアジリン)、反応性官能基(アルキン)を含むZ−Lys誘導体やアルキル側鎖に構造解析位相決定用原子(セレン)を含むZ−Lys誘導体などを挙げることができ、変異体PylRS(Y306A)の基質結合部位と適合するようなZ−Lys誘導体として、Nε−オルト−ヨード−ベンジルオキシカルボニル−リジン、ベンジルオキシカルボニル−アミノエチル−セレノシステイン、Nε−オルト−エチニル−ベンジルオキシカルボニル−リジン、Nε−オルト−アジド−ベンジルオキシカルボニル−リジン、及びNε−オルト−ジアジリル−ベンジルオキシカルボニル−リジン等が挙げられる(図12参照)。
[サプレッサーtRNA]
上記ピロリジル−tRNA合成酵素(PylRS)と組み合わせて使用されるtRNAは、通常20種類のアミノ酸に割り当てられたコドンではないナンセンスコドンに割り当てられ、かつ、上記変異体PylRSにのみ認識され、宿主の通常のアミノアシルtRNA合成酵素には認識されない(orthogonal tRNA)という要件を備え、かつ真正細菌内又は哺乳動物細胞内で発現しなければならない。このようなtRNAとしては、古細菌由来のサプレッサーtRNAが挙げられる。
ここで、ナンセンスコドンとしては、UAG(アンバー)、UAA(オーカー)、UGA(オパール)が挙げられるが、UAG(アンバー)又はUGA(オパール)コドンを用いることが好ましい。また、ナンセンスコドンに代えて、4塩基以上(好ましくは4若しくは5塩基)の塩基からなるコドン(以下「フレームシフトコドン」という。)を用いることもできる。
このようなtRNAは、例えば、上記古細菌ゲノムからtRNAPylに対応する遺伝子を取得し、これをそのまま、又は所望の変異を導入してインビトロ又はインビボで発現させて調製することができる。一例として、メタノサルシナ・マゼイ由来の野生型tRNAは以下に示す塩基配列を有する。
tRNApyl:5'-GGAAACCUGAUCAUGUAGAUCGAAUGGACUCUAAAUCCGUUCAGCCGGGUUAGAUUCCCGGGGUUUCCGCCA-3'(配列番号3)
[本発明の変異体PylRSをコードするDNA、当該DNA含む発現ベクター及び形質転換細胞]
本発明はまた、上記のようにして得られる変異体PylRSをコードするDNAを包含する。好ましい実施形態において本発明のDNAは、配列番号1で表される野生型PylRSをコードするDNAにおいて、306位及び384位のチロシンに対応するコドン(TAC)及び(TAT)がそれぞれアラニンに対応するコドン(GCT、GCC、GCA又はGCG)及びフェニルアラニンに対応するコドン(TTT又はTTC)に置換されたDNAが含まれる。さらに306番目のアミノ酸のコドンがグリシンに対応するコドン(GGT、GGC、GGA又はGGG)であり、384番目のアミノ酸のコドンがヒスチジンに対応するコドン(CAT又はCAC)であってもよい。
また、本発明のDNAは、配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと、BLAST等を用いてデフォルトの条件で計算したときに、少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有しており、かつ306位及び384位のアミノ鎖のコドンがそれぞれアラニン及びフェニルアラニンに対応するコドンからなるDNAを含む。さらに、上記DNA対するRNA、例えば、上記DNAから転写されたmRNA、若しくはアンチセンスRNA等も含む。
また、上記DNAと相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNε−ベンジルオキシカルボニル−リジンをアミノアシル化しうる変異体PylRSをコードするDNAも本発明のDNAに含まれる。ここで「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは当業者において周知のハイブリダイゼーションの実験条件である。具体的には、「ストリンジェントな条件」とは0.7〜1MのNaCl存在下、60〜68℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍のSSC溶液(1×SSCとは、150mMのNaCl、15mMクエン酸ナトリウムからなる。)を用い、65〜68℃で洗浄することにより同定することができる条件をいう。ストリンジェンシーの選択のため、洗浄工程における塩濃度や温度を適宜最適化することができる。また、当業者であれば、ストリンジェンシーを上げるためにホルムアミドやSDS等を添加することも技術常識である。
本発明はまた、上記本発明のDNAを連結(挿入)することにより、変異体PylRSを発現することのできる発現ベクターを含む。本発明のDNAを挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。本発明の発現ベクターは、宿主細胞に導入したときに、当該宿主細胞内で上記変異体PylRSを産生し得るようにベクターに組み込まれることが好ましい。そこで、本発明のベクターには、プロモーター(例えば、T7プロモーター、CMVプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、tacプロモーター等)の他に、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などを含有するものを連結することができる。なお、選択マーカーとしては、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
本発明の発現ベクターを用いて形質転換された形質転換細胞、好ましくは真正細菌や真核細胞も本発明に含まれる。ここで、真正細菌とは、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌が挙げられる。また、真核細胞としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母、さらにCOS細胞、CHO細胞等の動物細胞が挙げられる。形質転換方法としては、例えば、カルシウムイオンを用いる方法(Cohen, S.N. et al. (1972) Proc. Natl. Acad. Sci., USA 69, 2110-2114)、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法等の公知の方法で行うことができる。
[Z−Lys誘導体組み込みタンパク質の製造]
こうして得られた変異体PylRSは、古細菌又は真核生物のサプレッサーtRNAと組み合わせて、インビトロ又はインビボでのZ−Lys誘導体組み込みタンパク質の製造に用いることができる。すなわち、(a)Z−Lys誘導体に対するアミノアシルtRNA合成酵素と、(b)前記アミノアシルtRNA合成酵素の存在下でZ−Lys誘導体と結合可能なサプレッサーtRNAと、(c)所望の位置にナンセンス変異又はフレームシフト変異を受けた所望のタンパク質をコードする遺伝子と、をZ−Lys誘導体の存在下に細胞内又は細胞抽出液内で発現させることを特徴とするZ−Lys誘導体組み込みタンパク質の製造方法が提供される。ここで、PylRSやサプレッサーtRNAの合成系としては特に制限されることはなく、任意の発現系を用いることができる。例えば、無細胞タンパク質合成系や真正細菌細胞内におけるタンパク質合成系、或いは、真核細胞、好ましくは動物細胞、特に好ましくは哺乳動物細胞である。
無細胞タンパク質合成系とは、タンパク質の翻訳に必要なタンパク質因子を細胞抽出液として取り出し、試験管内でこの反応を再構成することで目的とするタンパク質を合成させる系である。様々な生物種に由来する抽出液を利用して無細胞系を構成することができ、例えば、大腸菌や好熱性細菌等の細菌、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球、マウスL−細胞、エールリッヒ腹水癌細胞、HeLa細胞、CHO細胞及び出芽酵母等の、高いタンパク質合成活性の状態の真核細胞、及び原核細胞の抽出液を用いることができる(Clemens, M.J., Transcription and Translation - A Practical Approach, (1984), pp. 231-270, Henes, B.D. et al. eds., IRL Press, Oxford)。
大腸菌の抽出液としては、ズベイら(Zubay et al., Ann. Rev. Genet. Vol.7, pp.267-287 (1973))又はプラットら(Pratt, J.M. et al., Transcription and Translation - A Practical Approach, (1984), pp. 179-209, Henes, B.D. et al. eds., IRL Press, Oxford)に記載された方法により調製されたS30抽出液を用いることができる。大腸菌S30抽出液は、転写及び翻訳に必要な大腸菌の全ての酵素と因子を含んでいる。更に補充的な混合液を添加することができる。具体的な調製方法としては、最初に大腸菌を培養し、菌体を遠心分離等により回収する。回収された菌体は、洗浄後、緩衝液に再懸濁し、フレンチプレスやガラスビーズ、ワーリングブレンダー等を用いて破砕する。破砕された大腸菌の不溶物質を遠心分離で除去し、プレインキュベーション混合液と混合してインキュベーションする。この操作によって内在性のDNA、RNAが分解されるが、更に、カルシウム塩やマイクロコッカスのヌクレアーゼ等を添加して内在性の核酸を分解させてもよい。続いて、透析により内在性のアミノ酸、核酸、ヌクレオシド等を除き、適量ずつ分注して液体窒素又は−80℃にて保存する。
Z−Lys誘導体組み込みタンパク質の合成反応を行う際には、上記細胞抽出液に転写/翻訳鋳型となる所望の位置にナンセンス変異又はフレームシフト変異を受けた所望のタンパク質をコードするDNA又はRNA、Z−Lys誘導体を含むアミノ酸、本発明の変異体PylRS、前記変異体PylRSの存在下でZ−Lys誘導体と結合可能なサプレッサーtRNA、エネルギー源、各種イオン、緩衝液、ATP再生系、核酸分解酵素阻害剤、tRNA、還元剤、ポリエチレングリコール、cAMP、葉酸類、抗菌剤、また鋳型としてDNAを用いる場合にはRNA合成の基質、及びRNAポリメラーゼ等を含むことができる。これらは目的タンパク質や、用いるタンパク質合成系の種類によって適宜選択して調製される。例えば、大腸菌のS30抽出液の場合は、Tris−酢酸、DTT、NTPs(ATP、CTP、GTP、及びUTP)、ホスホエノールピルビン酸、ピルビン酸キナーゼ、アミノ酸(天然の20種類のアミノ酸に加えてホスホセリンを添加する。)、ポリエチレングリコール(PEG)、葉酸、cAMP、tRNA、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、グルタミン酸カリウム、及び至適濃度の酢酸マグネシウム等の一部あるいは全部を添加する。
変異体PylRSを哺乳動物細胞内で発現させるためには、メタノサルシナ・マゼイ由来の野生型PylRS遺伝子に、N末端領域にヒスチジンタグ等が付加するようにしたDNA配列をPCR法を用いて増幅し、これを市販のpcDNA3.1(インビトロジェン社)等の発現ベクターのNheI−BamHIサイトに組み込んで構築したプラスミドを哺乳動物細胞に導入すればよい。細胞へのベクターの導入方法としては、例えば、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
一方、サプレッサーtRNAの発現方法としては、特に限定されることなく当業者に公知の方法に従って、大腸菌等の真正細菌内で、又は哺乳動物細胞等の真核細胞内で発現させることができる。例えば、大腸菌内における発現は、サプレッサーtRNAをコードするDNAの5’末端にプロモーター配列を、3’末端にターミネーター配列を夫々連結する。真核細胞内でtRNAを転写するタイプIIプロモーターは、tRNAコーディング配列内の2つの領域から成り立つ内部プロモーターであり、そのコンセンサス配列は、ボックスA、ボックスBとして知られている。ボックスAのコンセンサス配列は、8位〜19位のTRGCNNAGYNGG(配列番号7)であり、ボックスBのコンセンサス配列は、52位〜62位のGGTTCGANTCC(配列番号8)である。従って、例えば、バチルス・ステアロサーモフィラスのサプレッサーチロシンtRNAのように、そのコーディング配列内にボックスAとボックスBが存在している場合は、なんら改変を加えなくても動物細胞内で発現させることができる。しかし、内部プロモーターを持たないサプレッサーtRNAの場合は、外部プロモーターを用いて真核細胞内で発現させることもできる。例えば、サプレッサーtRNA遺伝子の5’末端に、真核生物のtRNA核酸配列やU1又はU6snRNA遺伝子のプロモーター配列を結合させることによって動物細胞内で効果的に発現させうる。さらに、異なる実施形態として、T7ファージ由来のT7プロモーターを連結し、動物細胞内でT7RNAポリメラーゼと同時に発現させてもよい。
さらに、本発明は、(a)上記細胞抽出液と、(b)Nε−ベンジルオキシカルボニル−リジン誘導体からなる非天然アミノ酸と、(c)本発明に係る変異体PylRSと、(d)前記変異体PylRSの存在下でZ−Lys誘導体と結合可能なサプレッサーtRNAと、を含むZ−Lys誘導体組み込みタンパク質合成キットを提供する。上記(b)の非天然アミノ酸は、20種類の天然のアミノ酸との混合物であってもよい。これらの構成要素は、使用しやすいように一定量ごと分注して、Z−Lys誘導体組み込みタンパク質合成キットとして配送することができる。これらの製品は凍結又は乾燥状態で保存することができ、保存及び輸送に適した容器に収容してキットとして販売される。キットには取扱説明書やベクターDNA等を添付することができる。
[試料の調製と結晶化]
L−ピロリジン:N−[(2R,3R)−3−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール−2−イルカルボニル]−L−リジン(図1A参照)は化学的に合成し、H−NMRにてその化学構造を確認した。種々のL−リジン誘導体は、Bachem AG(スイス)から購入した。メタノサルシナ・マゼイ由来のtRNAPylは、インビトロ転写により合成し、リソースQカラムクロマトグラフィー(アマシャムバイオサイエンス社)にて精製した。
完全長のメタノサルシナ・マゼイ由来PylRSは454個のアミノ酸残基からなる分子量51kDaのタンパク質である。この完全長PylRSをコードする遺伝子を、メタノサルシナ・マゼイ、JCM9314株のゲノムDNA(理研バイオリソースセンター)から以下のプライマーを用いてPCRにより増幅し、ベクタープラスミドpET28c(ノバジェン社)のNdeI−SacI部位にクローン化した。これを大腸菌に導入して発現させたタンパク質は、N末端にpET28由来のHisタグコード領域(MGSSHHHHHHSSGLVPRGSH)(配列番号4)が付加されている。
N末端側プライマー:5'-AGGGGTAACCATATGGATAAAAAACCACTAAACAC-3'(配列番号5)
C末端側プライマー:5'-ACATGGTCCAGAGCTCTTACAGGTTGGTAGAAATCCCGTT-3'(配列番号6)
一方、完全長のPylRSを大腸菌で発現させて結晶を調製したが、X線構造解析に適した結晶は得られなかったため、N末端から184個のアミノ酸が欠失したPylRS(以下、これを「PylRS(c270)」という。図1B参照。)を作製した。PylRS(c270)タンパク質は、N末端に付加した6個のヒスチジンタグとの融合タンパク質として大腸菌BL21(DE3)コドンプラス−RIL株(ストラタジジーン社)で発現させた。天然のPylRS(c270)及びセレノメチオニンで標識したPylRS(c270)タンパク質は、前述の非特許文献3に記載の方法で精製及び結晶化した。なお、より良い結晶を得るために、次のような、わずかに変更した結晶化条件を用いた。5mMのピロリジン(又は3.45mMのBoc−Lys)及び5mMのAMPPNPの存在下に、5%PEG4000(又はPEG3350)及び5mMのMgClを含む50mMカコジル酸ナトリウム(pH7.0)中において20℃にて3分以内にPylRS(c270)の共結晶を取得した。
[データ採取]
X線結晶構造解析用データは、上述の非特許文献3に記載の方法により行い、PylRS(c270)/ピロリジン/AMPPNP複合体結晶からの1.8Åデータセット、及びPylRS(c270)/Boc−Lys/AMPPNP複合体結晶からの1.79ÅデータセットをSPring−8のビームラインBL41XUで収集した。
[構造解析]
MAD法を用いて位相を決定した。7つのセレン置換部位のうち5つはSnBを用いて局在化し、初期位相はSOLVEにより計算した。初期位相は、続いてRESOLVEによる密度修飾で改善した。部分的なモデルはRESOLVEにより自動的に構築され、残りは主にプログラムOで構築しCNSで精密化した。立体構造モデルの質はPROCHECKで解析した。
[アミノアシル化アッセイ]
野生型PylRSへの突然変異導入はQuikchange変異導入キット(ストラタジーン社)を用いて行った。完全長の変異体PylRSを大腸菌で過剰発現させた後、HisTrapカラム(アマシャムバイオサイエンス社)を用いて精製した。アミノアシル化反応は、37℃にて1時間行った。アミノアシル化反応溶液は、2.83μMのメタノサルシナ・マゼイ由来精製PylRS(又は9μMのPylRS(c270))、10mMのMgCl、2mMのATP、4mMのDTT、2.11μMのメタノサルシナ・マゼイ由来tRNAPyl転写物、及び100mMのHEPES緩衝液(pH7.2)に溶解した種々のアミノ酸濃縮溶液の適当量である。tRNAのアミノアシル化の有無は、酸−尿素ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて解析した。
[全体構造]
メタノサルシナ・マゼイのPylRSは454個のアミノ酸残基からなり、メタノサルシナ・バルケリのPylRSと相同性が高い(74%の同一性)。PylRSは、主に2つのドメインからなる。約250アミノ酸残基のC末端側ドメインは、クラス−IIアミノアシル−tRNA合成酵素と配列の相同性があるが、約140アミノ酸残基のN末端側ドメインは独特である(図1B参照)。アミノアシル−tRNA合成酵素様ドメインに対応するPylRS(c270)は、ピロリジンでtRNAPylをエステル化しうる(図1C参照)。このPylRS(c270)の結晶が成長するためにはATPアナログの添加が必要であり、ATPがPylRS(c270)に固く結合しその構造を安定化すると考えられる。
最初に、AMPPNPと結合したPylRS(c270)の構造を、セレノメチオニン置換体を用いた多波長異常分散法(MAD法)によって決定した。その立体構造は、リジル−tRNA合成酵素(LysRS)を含むクラスIIaaRSに特徴的であった。PylRS(c270)の構造において、N末端から195〜237番目の残基は、2つのα−ヘリックス(α1及びα2)を形成し、241〜432番目の残基が触媒ドメインを構成した(図1D参照)。触媒ドメインは、伸長した7個のアンチパラレルβ−シート(β1、β5、β6、β7、β8、β9及びβ10)とそれを取り囲むα−ヘリックスを有し、クラスIIaaRSに特徴的なトポロジーを示した。
図2は、メタノサルシナ・マゼイPylRS(c270)と、他のPylRS及びLysRSとの立体構造に基づくアミノ酸配列のアライメントを示した図である。配列は、プログラムCLUSTAL Wを用いて整列させ、部分的に手動にて最適化した。PylRSとLysRSとで高度に保存されているアミノ酸残基を枠で囲んだ。整列させた配列の上部には2次構造を模式的に示した。本発明に係る306位のチロシンと384位のチロシンのアミノ酸置換部位を矢印で示した。整列させた配列上部の数字はメタノサルシナ・マゼイPylRS(c270)のアミノ酸残基の位置を示し、それらの下部の数字は大腸菌LysRSのそれを示す。MmPylRScはメタノサルシナ・マゼイPylRS(c270);MbPylRSはメタノサルシナ・バルケリPylRS(AAL40867);MaPylRSはメタノサルシナ・アセチボランスPylRS(AAM03608);MtPylRSはメタノサルシナ・サーモフィラPylRS;DhPylRScはデサルフィトバクテリウム・ハフニエンスPylRS(AAU93507);EcLysUは大腸菌LysRS(AAA97029);MmLysRSはメタノサルシナ・マゼイのクラスIILysRS(AAK29404);HsLysRSはヒトの細胞質LysRS(AAH04132)を表す。
[ピロリジン及びATPの認識]
次に、ピロリジン及びAMPPNPと複合体を形成したPylRS(c270)の結晶構造から、PylRSのアミノ酸結合部位は正規のアミノアシル−tRNA合成酵素のそれよりもはるかに大きいことが分かった。ピロリジン分子は、クラス−IIアミノアシル−tRNA合成酵素に特徴的な7個のアンチパラレルβ−シートの表面に結合していた。嵩高い4−メチル−ピロリン環は、Ala−302、Leu−305、Tyr−306、Leu−309、Cys−348、Val−401、Leu−407、Ile−413及びTrp−417を含む主として疎水性の残基によって形成されるトンネルに収容されている(図3A及び図3C参照)。Asn−346側鎖のアミド部分は、基質アミノ酸の方に向いており2.82Åの距離でピロリジンの側鎖カルボニル基と水素結合を形成し、その位置を固定している。なお、ピロリジンがアキシアル型の立体異性体の場合、Asn−346側鎖のアミド部分とピロリジンの側鎖カルボニル基との間の距離は2.81Åであった(図3E及び図3F参照)。また、Asn346の側鎖のカルボニル基は水を介してピロリジンのα−アミノ基と間接的に水素結合している。高度に保存されたArg−330のグアニジウム基は、ピロリジンのα−カルボニル基と水素結合している。Asn−346及びArg−330によるこれら3つの水素結合以外に他の水素結合は存在せず、PylRSのこのようなアミノ酸認識様式は極めて特徴的である(図3C参照)。上記ピロリジンを収容するトンネルを形成する夫々のアミノ酸残基をアラニンに置換した変異体PylRSのアミノアシル化活性を測定すると、305位のロイシン、306位のチロシン、346位のアスパラギン、401位のバリン及び417位のトリプトファンを夫々アラニンに置換した5つの変異体は著しく活性が低下していた(図3B参照)。
[PylRS活性部位とLysRS活性部位との比較]
PylRSの構造及び基質結合様式について、大腸菌のLysRSのそれらと比較した。大腸菌LysRSの活性部位においては、高度に保存された残基(Glu−240、Arg−262、Glu−278、Tyr−280、Asn−424、Phe−426及びGlu−428)が、L−Lysの認識に関与している(図3D参照)。これらの残基に変異を導入するとLysRSの基質であるL−Lysに対するKm値が顕著に増大する。これに対し、メタノサルシナ・マゼイPylRS(c270)では、Arg−262が保存されているだけであり、その他の部位はより小さな、非荷電アミノ酸残基で占められている(夫々Ala−302、Asn−346、Cys−348、Ser−399、Val−401及びGly−403)。これらのアミノ酸置換によって、PylRSのアミノ酸結合部位(トンネル)はLysRSにおけるL−Lys結合ポケットよりも8〜9Å深くなっている(図3A参照)。上述したように、ピロリジンとPylRS(c270)との間では3つの水素結合のみが形成されているのに対し、L−LysとLysRSとの間には少なくとも7つの水素結合が形成されている。リジン部分と相互作用する水素結合が少ないことは、PylRSがL−Lysを基質として活性化することを困難にしている。実際、PylRSは1mMの濃度のピロリジンでtRNAPylを活性化するが、0.5Mの濃度でもリジンを含む20種類の正規のアミノ酸を活性化することができない。興味深いことに、PylRSによるピロリジンの認識は、リジンの側鎖に対応する部分が主鎖とメチルピロリンカルボニル部分との間のスペーサーとして働いている。疎水的な深いトンネルとリジン部分に対する弱い認識とがPylRS及びLysRSの基質認識における大きな違いである。
[PylRSによる非天然アミノ酸の活性化]
PylRSの基質結合部位の立体構造から、PylRSはピロリジン以外の非天然アミノ酸を活性化しうることが推測された。この仮説に基づいて、PylRSが図4Aに示した6種類のNε−リジン誘導体を活性化しうるかどうかを調べた。その結果を図4Bに示す。各レーンは、PylRSの存在下、左から順に次のような条件でアミノアシル化反応を行ったものである。アミノ酸無添加;0.5MのLys;100mMのAc−Lys;1mMのBoc−Lys;1mMのAloc−Lys;10mMのNic−Lys;7mMのNma−Lys;3.5mMのZ−Lys;1mMピロリジン;及びコントロールtRNAPylである。図4Bに示したように、tert−ブトキシカルボニル−リジン(Boc−Lys)及びアリルオキシカルボニル−リジン(Aloc−Lys)については、1mMの濃度においてピロリジンと同程度の効率で活性化した。さらに、効率は多少低下するが、野生型PylRSは、Nε−アセチル−L−リジン(Ac−Lys)、Nε−ニコチニル−L−リジン(Nic−Lys)、Nε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン(Z−Lys)及び蛍光アミノ酸であるNε−(N−メチル−アントラニロイル)−L−リジン(Nma−Lys)等のNε−修飾リジン誘導体でtRNAPylをエステル化することが分かった。一方、野生型PylRSは、メチル、ジメチル、トリメチル、イソプロピル、ダンシル、o,p−ジニトロフェニル、p−アジドベンゾイル、ビオチニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、及びp−トルエンスルホニル基でNε−連結したリジン誘導体を活性化することはできなかった。従って、PylRSは、ある程度の嵩高さを有するNε−置換体を認識することが分かった。
先に作製した変異体PylRSについて、Boc−Lysを基質としてアミノアシル化活性を測定したところ、天然の基質であるピロリジンと同様に、305位のロイシン、306位のチロシン、346位のアスパラギン、401位のバリン及び417位のトリプトファンを夫々アラニンに置換した5つの変異体は著しく活性が低下していた。興味深いことに、1つの変異体PylRS(Y306A)は、野生型PylRSよりも極めて効率的にZ−LysでtRNAPylをエステル化することが分かった(図5C参照)。この306位のチロシンからアラニンへ置換される変異は、PylRSの基質結合部位にベンジルオキシカルボニル(Z)基が収容されるための適切な空洞を生成するものと考えられる(図5A及びB参照)。
[Boc−Lys−tRNA合成酵素の選択]
インビトロにおけるアミノアシル化アッセイの結果、野生型PylRSはBoc−Lys等のリジン誘導体をアミノアシル化したにもかかわらず、大腸菌細胞内ではこれらの誘導体を効率的にタンパク質に組み込むことができなかった。そこで、インビボにおいてタンパク質へBoc−Lysを効率的に組み込むことのできる変異体PylRS(Y384F)を以下のような方法にてスクリーニングした。
完全長のPylRS遺伝子は、プラスミドpTK2−1において大腸菌TyrRSプロモーターとターミネーターの制御下で発現させた。このプラスミドpTK2−1は、プラスミドpACYC184の誘導体であって、カナマイシン耐性遺伝子と大腸菌lppプロモーターの制御下で1コピーのtRNAPyl遺伝子を発現する。PylRS遺伝子は、GeneMorph PCR変異導入キット(ストラタジーン社)を用いて無作為に1kbあたり3〜7個の割合で変異を導入し、元のプラスミドpTK2−1と連結してPylRSライブラリーを作製した。連結したベクターは大腸菌DH10Bコンピーテントセルに形質転換し、6×10個のコロニー形成単位のライブラリーを取得した。tRNAPyl遺伝子もまた、プラスミドpTK2−1におけるlppプロモーターとrrnCターミネーターの制御下において大腸菌DH10B中で発現させた。変異体PylRSライブラリーは、最初に、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子の非必須な位置に設けたアンバーストップコドンの抑制(サプレッション)に基づいて正の選択を行った。変異体PylRSライブラリー及び野生型tRNAPyl遺伝子で形質転換した細胞を1mMのBoc−Lysを含む培地中で生育させ、種々の濃度のクロラムフェニコールの存在下で生存するものをスクリーニングした。生存細胞は、次にクロラムフェニコールの存在下かつBoc−Lysの非存在下で生育させた。Boc−Lysの非存在下では、選択された変異体PylRS(Y384F)を発現する細胞は25μg/ml未満のクロラクフェニコール濃度でしか生存しないが、Boc−Lys存在下では、150μg/mlのクロラムフェニコール濃度でも生存した。PylRS非存在下の大腸菌のCAT耐性能(<13μg/ml)と比較すると、これらの結果は選択された変異体PylRS(Y384F)はBoc−Lysを受け入れるだけでなく、何れかの天然型アミノ酸もある程度アミノアシル化することを示す。
[大腸菌内におけるリジン誘導体依存性アンバーサプレッション]
大腸菌内においてアンバーサプレッション(アンバー変異抑制)が起こるか否かを確認するために、N末端から25番目のチロシンコドンがアンバーコドン(TAG)に変異したグルタチオンS−トラスフェラーゼ(GST)遺伝子をpET系プラスミドにクローン化した。一方、野生型及び種々の変異体PylRS遺伝子、並びにtRNAPyl遺伝子をpACYX系プラスミドにクローン化した(図6参照)。これら2つの発現ベクターを大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、カナマイシンとアンピシリンを含むLB寒天培地にて一晩静置培養した。生育したコロニーをリジン誘導体の存在又は非存在下でカナマイシンとアンピシリンを含むLB液体培地に接種し、37℃で培養して培地の吸光度が0.6になったとき最終濃度が1mMとなるようにIPTGを添加した。一晩培養して発現を誘導した後、大腸菌を回収して発現されたGSTをSDS−PAGEにて確認した。その結果、夫々4mMのBoc−Lys及びAloc−Lysの存在下に変異体PylRS(Y384F)とtRNAPylとを発現させたときに28kDaのGSTタンパク質の発現が認められた(図7参照)。5mMのZ−Lys存在下において、二重変異体PylRS(Y384F/Y306A)とtRNAPylとを発現させたときにも完全長のGSTタンパク質の産生が認められた(図8参照)。培養液10mlから回収した大腸菌に緩衝液A(リン酸カリウム(pH7.4)、0.15MのNaCl、10mMのβ−メルカプトエタノール)1mlを加えて超音波破砕し、遠心分離して得られた上清にグルタチオンアフィニティーカラム(GSTrap、アマシャムバイオサイエンス社)200μlを加え、4℃にて1時間攪拌後、緩衝液Aで3回洗浄し、20mMグルタチオンを含む緩衝液AでGSTタンパク質を溶出した。このようにして精製したGSTの収率は培養液1Lあたり1〜2mgのタンパク質であった(図9参照)。精製したGSTタンパク質をトリプシン分解後、MALDI−TOF質量分析法にて解析した。トリプシン消化により生ずるペプチドNSXSPIGYWK(Xは夫々Boc−Lys、Aloc−Lys及びZ−Lysを表す)に対応する検出ピークはm/z=1392.74、1376.79及び1426.70Daであり、何れも理論値とよく一致し、野生型トリプシンペプチドNSYSPILGYWK(m/z=1327.72Da)よりも夫々65.02、49.07及び98.98だけ大きかった(図10参照)。図10に示した質量スペクトルからの配列情報は、これらの非天然アミノ酸が部位特異的にGSTタンパク質へ導入されたことを示す。
[PylRS(c270)とtRNAとの結合様式]
PylRS(c270)が、tRNAのアミノアシル化活性を維持することは注目に値する(図1C参照)。これは、tRNAPylがN末端ドメインを欠失したPylRSに結合し得ることを示す。tRNAAspと複合体を形成した大腸菌アスパラギン酸−tRNA合成酵素の立体構造に、PylRS(c270)の触媒活性部位を重ね合わせ、tRNAAspを酵母のtRNAPheと置換したドッキングモデルを作成した。これによれば、PylRS(c270)はtRNAのアクセプターステム及びD−アームと接触する。α1及びα2ヘリックスは、1つのtRNAプロトマーのD−アームに隣接し、PylRS(c270)とT−アーム及びアンチコドンアームとの間には相互作用が認められなかった。tRNAPylの構造は、正規のtRNAPheと比べて著しく異なった特徴を示し、例えば図11Aに示したようにたった5塩基からなる小さなD−ループを有する。PylRS(c270)のN末端ヘリックスがT−アームの方向に向けて突き出していることから、メタノサルシナ・マゼイの完全長PylRSは、tRNAPylのT−アームと接触しているかもしれない。さらに、tRNAPylのアンチコドンの配列を異なる配列に変えた変異体を作製したところ、これらの何れもPylRSの酵素活性に影響を与えなかったことから、PylRSは、tRNAのアンチコドンループとは相互作用せず、アンチコドンをほとんど認識する必要がないことが分かった(図11B参照)。
[Z−Lys特異的な変異体PylRSのスクリーニング]
Boc−Lys及びAMPPNPと複合体を形成したPylRS(c270)の立体構造に基づいて、Z−Lys特異的な変異体PylRSを以下の方法によりスクリーニングした。当該複合体の立体構造から、Boc−Lysの側鎖と近接した位置にあるPylRSのアミノ酸残基を選択し、飽和突然変異誘発(saturation mutagenesis)を行った。大きなZ−Lys基を認識するためには、PylRSのアミノ酸認識ポケットの末端部が伸長及び拡張しなければならない。PylRSとBoc−Lys複合体の構造において、Tyr306、Leu309、Cys348及びTrp417がポケットの末端部を構成する。しかし、PylRSのTrp417を他のアミノ酸に置換した場合には酵素活性が失われることから、残りの3つのアミノ酸残基のコドンをNNK(Nは4種類の任意の塩基を表し、KはG又はTを表す。)で置換した変異体酵素のライブラリーを作製した(2.3×106個の独立した形質転換体を含む。)。
具体的には、Boc−Lysに対するアミノアシル化活性の向上したR61K、G131E及びY384F変異体PylRS遺伝子を、pBR322複製開始点とカナマイシン耐性遺伝子とを含むプラスミドpBRQ1のglnSプロモーターの制御下にクローン化した。このPylRS遺伝子の306位、309位及び348位のコドン配列をNNK(Nは4種類の任意の塩基を表し、KはG又はTを表す。)で無作為に置換したDNA断片を合成し、PCRによって増幅した。これらをオーバーラップPCR法にて組み立て、プラスミドpBRQ1のglnSプロモーターの下流に挿入した。これらのプラスミドを、アンバー変異を有するCAT遺伝子(Am112)及びlppプロモーターの制御下にtRNApyl遺伝子を含むプラスミドを保持する大腸菌DH10Bに導入した。ポジティブ選択としては、得られた形質転換体を50μg/mlのクロラムフェニコールと1mMのZ−Lysを含むLBプレートで選択し、プラスミドDNAを抽出及びアガロースゲル電気泳動で精製した。続いて、得られたプラスミドDNAを、細菌毒素であるバルナーゼ(barnase)遺伝子翻訳領域の2位、44位及び65位にアンバーコドンを含み、araCプロモーターにて制御されたDNAを含むpACYC184由来プラスミドを保持した大腸菌DH10Bに導入した。ネガティブ選択として、これらの細胞は0.02%アラビノースを含むLBプレート上にてインキュベートした。ポジティブ選択を3回、及びネガティブ選択を2回繰り返した。
その結果、75μg/mlのクロラムフェニコールによるポジティブ選択によって、最終的に5つの異なる変異体が得られた。これらの5つの変異体のうち、L309A及びC348Vの二重アミノ酸置換を有する酵素(以下、Z−LysRSと称する。)をもつ細胞は、アンバー抑制GSTを最も大量に発現し(1mMのZ−Lysを含むM9GMML培地中において6.9mg/L培地)、一方、Z−Lys無添加の条件ではほとんど発現が認められなかった(図13参照)。図13は、実施例1で得られた変異体PylRS(Y306A)と、本実施例で得られたZ−LysRSとを用いて、2種類の非天然アミノ酸Z−Lys又は2−クロロ−Z−Lysを添加してアンバー抑制された完全長GSTの発現を調べた結果である。図の上部は大腸菌粗抽出液について、下部は精製したGST溶液について、それぞれ12%SDS−PAGEにて分離、CBB染色した結果である。それぞれの条件における収率(M9GMML培地1LあたりのGST発現量mg)を、ブラッドフォードの方法(バイオラッド社プロテインアッセイキット使用)に従って測定し、その結果を上下2つのゲルの間に示した。図中、N.D.は検出不可を示す。
精製したGSTタンパク質をトリプシン分解後、MALDI−TOF質量分析法にて解析した結果、NSXSPIGYWK(XはZ−Lys残基、m/z=1426.75Da)に対応するペプチドピークのみが検出され、その他のアミノ酸が組み込まれたペプチドのピークは検出されなかった。従って、本実施例で得られた変異体酵素Z−LysRS(L309A、C348V)は、Z−Lysに特異的であることが分かった。また、図13に示したように、Z−LysRSは、Y306AよりもZ−Lysの導入効率が高く、また、基質としての2−クロロ誘導体の取り込み量は反対に少ないことから、Z−Lysに対する特異性がより高いと考えられる。
[大腸菌におけるNε‐オルト‐アジド‐ベンジルオキシカルボニル−リジン(AzZLys)のGSTタンパク質への導入及び蛍光修飾反応]
Y306A及びY384Fの二重アミノ酸置換を有するPylRS変異体とtRNAPylを大腸菌で発現させるために、実施例1と同じプラスミドpTK2−1を使用した。このプラスミドを用いたN末端から25番目にアンバーコドンを持つGSTへのリジン誘導体の導入は、実施例1と同じ方法によって行った。更に、同じプラスミドを用いたGSTのアンバー部位へのAzZLys[新成化学(大阪)から購入]の特異的導入も、実施例1と同じ方法によって行った。次いで、GSTのアンバー遺伝子を発現させた大腸菌から得られた粗抽出液をSDS−PAGEで分離し、染色した。その結果、1mMのAzZLys存在下(+)の場合にのみ、完全長GSTの発現が検出された(そのバンドの位置は図14に矢印GSTで示した)。なお、GSTの精製も実施例1と同じ方法で行った。
蛍光団とトリ・アリール・フォスフィンとのコンジュゲートと、精製された完全長GSTとは、Staudinger-Bertozzi反応によって連結した。コンジュゲートしてはFITCとのコンジュゲート(以下FITC−PP3という)(新成化学から購入)を用いた。図15に、FITC−PP3の化学構造を示す。連結反応は、2通りの反応条件、即ち、37℃で1時間(1hr)及び4℃で一晩(O/N)によって行った。次いで、これらのGSTをSDS−PAGEで分離し、UVライトで蛍光を検出した。その結果、37℃で1時間の反応条件の場合にのみ、蛍光修飾されたGSTが認められた(そのバンドの位置は図16に矢印GSTで示した)。Staudinger- Bertozzi反応については、上掲非特許文献5、6等参照。この結果は、PylRS(Y306A、Y384F)変異体を用いることにより、大腸菌内における所望の部位へのAzZLysの特異的導入が可能であること、及び、導入されたAzZLysとフォスフィンとの反応により、(任意の)タンパク質[GSTタンパク質]への蛍光団を含む任意の修飾基の導入が可能であることを示している。
[動物細胞におけるAzZLysのGrb2タンパク質への導入及び蛍光修飾反応]
PylRS(Y306A、Y384F)変異体とtRNAPylをHEK c−18細胞で発現するために、上掲非特許文献7に記載されたシステムを用いた。同様に、該非特許文献7に記載されたlacZ遺伝子及びGRB2遺伝子のコード領域にアンバー・コドンを導入した変異遺伝子並びにそれらの発現システムを用いた。
まず、動物細胞においてAzLysをタンパク質に部位特異的に導入するために最適なAzLysの濃度を決定した。0、0.01、0.025、0.05、0.1、0.25及び0.5mMのAzZLysを含有する培地においてlacZアンバー遺伝子からのLacZタンパク質の発現を行い、LacZによる発色反応によりLacZの発現量(相対値)を求めた。その結果、培地に添加したAzZLysの濃度が0.05mMの場合に、最も効率よくAzZLysがlacZのアンバー部位に取り込まれることが分かった(図17)。図17中のWTは、コード領域中にアンバーコドンを持っていない野生型(WT)のlacZの発現量(相対値)を示す。WTの結果との比較により、AzZLysの濃度が0.05mMの場合のサプレッション効率は30%程度であることがわかる。
GRB2のアンバー遺伝子を発現させた動物細胞の粗抽出液に蛍光フォスフィン・コンジュゲート(FITC−PP3)を添加して、Grb2タンパク質の蛍光標識をおこなった。次いで、SDS−PAGEで分離を行い、蛍光検出器によって蛍光を検出した(図18のレーン1〜3)。図18中、aaRSはZLysRSの発現の有無(+は発現有り)、Grb2はGRB2のアンバー遺伝子の発現の有無(Amは発現有り)、tRNAはtRNAPylの発現の有無(+は発現有り)、及びa.a.はAzZLysの添加の有無(+は添加)を示す。図18から明らかなとおり、aaRS(+)、Grb2(Am)、tRNA(+)かつa.a.(+)の場合(レーン3)にのみ、蛍光で標識されたGrb2タンパク質が検出された(そのバンドの位置は矢印Grb2で示した)。なお、レーン1はWTのGRB2遺伝子を用いた場合の結果を示すが、図18から明らかなとおり、蛍光標識されたバンドは現れなかった。対照として、para‐アジドフェニルアラニン(以下AzFという)をGrb2タンパク質の同じ部位に導入した。AzF特異的酵素(AzFRS)を用いて動物細胞においてAzFをアンバー部位に導入するために、上掲非特許文献8に記載されたシステムを用いた。図18から明らかなとおり、AzFRSを用いてもGrb2は蛍光修飾されたが(レーン5;そのバンドの位置は矢印Grb2で示した)、同時に、AzFRSも蛍光修飾された(レーン5及び6;そのバンドの位置は矢印AzFRSで示した)。このため、蛍光の検出だけでは、Grb2とAzFRSの区別することはできず、利便性が悪いことがわかる。
上記の結果は、PylRS(Y306A、Y384F)変異体を用いることにより、動物細胞内における所望の部位へのAzZLysの特異的導入が可能であること、及び、導入されたAzZLysとフォスフィンを反応させることにより、(任意の)タンパク質[GSTタンパク質]への、蛍光団を含む任意の修飾基の導入が可能であることを示している。上記の結果は、更に、この実施例で用いた本発明のシステムは、従来のAzFRSを用いてAzFをタンパク質に導入するシステムと比べて、修飾の選択性が優れていることを示している。
本発明の変異体PylRSは、これまで不可能であったZ−Lys誘導体のような非天然アミノ酸を部位特異的にタンパク質に導入することを可能とし、新しいアロタンパク質を合成するために有用である。本発明は、このような手段を提供することにより、タンパク質の構造と機能の解析を通じて、複雑な生命現象の理解を促進し、医薬、生命科学分野における産業にとって有用である。
本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。

Claims (12)

  1. 配列番号2に示したピロリジル−tRNA合成酵素のアミノ酸配列においてピロリジン結合部位を構成する306位のチロシンがグリシン又はアラニンへ置換されたアミノ酸配列、又は309位のロイシンがアラニンへ置換されるとともに348位のシステインがバリンへ置換されたアミノ酸配列を含む、変異体ピロリジル−tRNA合成酵素。
  2. 306位のアミノ酸がアラニンである請求項1に記載の変異体ピロリジル−tRNA合成酵素において、さらに384位のチロシンからフェニルアラニンへのアミノ酸置換を含む変異体ピロリジル−tRNA合成酵素。
  3. 309位のアミノ酸がアラニンであり、348位のアミノ酸がバリンである請求項1に記載の変異体ピロリジル−tRNA合成酵素において、さらに384位のチロシンからフェニルアラニンへのアミノ酸置換を含む変異体ピロリジル−tRNA合成酵素。
  4. 野生型のピロリジル−tRNA合成酵素であって、配列番号2に示したアミノ酸配列と70%以上のアミノ酸同一性を有する、配列番号2に示したアミノ酸配列の相同体であるメタノサルシナ属由来のピロリジル−tRNA合成酵素において、前記相同体のアミノ酸配列と配列番号2に示したアミノ酸配列とをアライメントしたとき、配列番号2に示したアミノ酸配列の306位に対応するチロシンがアラニンに置換され、又はアミノ酸配列の306位に対応するチロシンがアラニンに置換されるとともに384位に対応するチロシンがフェニルアラニンに置換されてなる変異体ピロリジル−tRNA合成酵素。
  5. 請求項1〜何れか1項に記載の変異体ピロリジル−tRNA合成酵素をコードする単離されたDNA。
  6. 宿主細胞に導入したときに、当該宿主細胞内で請求項1〜何れか1項に記載の変異体ピロリジル−tRNA合成酵素を産生し得る発現ベクターであって、該発現ベクターは、前記宿主細胞内における発現制御配列に機能的に結合された、請求項に記載のDNAを含む発現ベクター。
  7. 請求項に記載の発現ベクターによって形質転換されたことを特徴とする真正細菌。
  8. 請求項に記載の発現ベクターによって形質転換されたことを特徴とする大腸菌。
  9. 請求項に記載の発現ベクターによって形質転換されたことを特徴とする哺乳動物培養細胞。
  10. (a)請求項1〜何れか1項に記載の変異体ピロリジル−tRNA合成酵素と、
    (b)前記変異体ピロリジル−tRNA合成酵素の存在下でNε−ベンジルオキシカルボニル−リジン誘導体と結合可能なサプレッサーtRNAと、
    (c)前記サプレッサーtRNAに割り当てられたナンセンスコドン又はフレームシフトコドンを含む、非天然アミノ酸組み込みタンパク質をコードする遺伝子と、
    を前記Nε−ベンジルオキシカルボニル−リジン誘導体の存在下に細胞内又は細胞抽出液内で発現させることを特徴とする非天然アミノ酸組み込みタンパク質の製造方法。
  11. 前記Nε−ベンジルオキシカルボニル−リジン誘導体が、Nε−オルト−ヨード−ベンジルオキシカルボニル−リジン、ベンジルオキシカルボニル−アミノエチル−セレノシステイン、Nε−オルト−エチニル−ベンジルオキシカルボニル−リジン、Nε−オルト−アジド−ベンジルオキシカルボニル−リジン、又はNε−オルト−ジアジリル−ベンジルオキシカルボニル−リジンである請求項10に記載の方法。
  12. (a)細胞抽出液と、
    (b)請求項1〜何れか1項に記載の変異体ピロリジル−tRNA合成酵素と、
    (c)前記変異体ピロリジル−tRNA合成酵素によって活性化され得るNε−ベンジルオキシカルボニル−リジン誘導体からなる非天然アミノ酸と、
    (d)前記変異体ピロリジル−tRNA合成酵素の存在下でNε−ベンジルオキシカルボニル−リジン誘導体と結合可能なサプレッサーtRNAと、を含む非天然アミノ酸組み込みタンパク質合成キット。
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