本発明の第1実施形態は、第1の絶縁シート上面に形成された柱体状のヘッド部を有する熱伝導部材を備えた熱電変換装置100に関する。
図1は本発明の第1実施形態の熱電変換装置平面図であり、第1の絶縁シート1の上面1aに形成された熱電変換素子5、配線11、及び、第1及び第2の熱伝導部材3、4の一部をなす第1及び第2のヘッド部3a、4aの平面配置を表している。図2は本発明の第1実施形態の熱電変換装置断面図であり、図1中のAA’に沿う熱電変換装置100の断面を表している。図3は本発明の第1実施形態の熱電変換装置斜視図である。なお、図3では、理解を容易にするために第2の絶縁シート2を透明に描いている。
図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る熱電変換装置100は、第1の絶縁シート1と、その上面1a上に接着剤6が充填された隙間9を介して積層された第2の絶縁シート2とを有する。
第1及び第2の絶縁シート1、2として、絶縁性及び断熱性に優れた材料からなるシート、例えばポリイミド又はポリエステル樹脂のシートを用いることが好ましい。これらの樹脂からなる絶縁シート1、2は柔軟性に優れるため、フレキシブルなシート状の熱電変換装置100を製造することができる。もちろん、柔軟性が不要ならば、剛性の高い材料を用いることもできる。
本第1実施形態では、第1及び第2の絶縁シート1、2として、厚さ50μmのポリイミド又はポリエステル樹脂シートを用いた。絶縁シート1、2の厚さは、熱電変換装置100の上下面の間、即ち、第2の絶縁シート2の上面2aと第1の絶縁シート1の下面1bとの間に発電のために温度差が印加されたとき、その上下面間を第1及び第2の絶縁シート1、2内の熱伝導により漏洩する熱量に起因する熱電変換効率の低下が、実用上許容される程度に小さくなる厚さに設計される。
第1の絶縁シート1の上面1aに、高熱伝導率材料、例えば銅からなるヘッド部3a、4aが行列状(即ち格子状に)に設けられている。このヘッド部4a、3aは柱体状、例えば高さ8μm、縦横の幅が60μmの正方形の水平断面を有する4角柱状に形成され、その上面及び側面は熱伝導率の高い絶縁膜7、例えば厚さ1μmのシリコン酸化膜で被覆されている。また、この絶縁膜7は、第1の絶縁シート1の上面1aをも被覆するように形成することが好ましい、このように第1の絶縁シート1の上面1aをシリコン酸化膜からなる絶縁膜7で被覆することで、その上に形成される熱電変換素子5の特性劣化が抑制される。なお、この絶縁膜7は、熱電変換素子5とヘッド部4a、3aとの間を熱的に接続しかつ電気的に絶縁するためのもので、ヘッド部4a、3aが絶縁材料から形成されるときは設けなくてもよい。また、熱電変換素子5の経年変化に起因する特性劣化が問題にならない場合は、熱伝導率の高い絶縁膜7を絶縁シート1上面1aに形成しない。こうすることで、絶縁膜7を介して流れる漏洩熱流を小さくすることができる。
これらの第1及び第2のヘッド部3a、4aは、互いに2次元格子の面心位置を占めるように互い違いに配列される。即ち、第1のヘッド部3aが2次元面心格子を形成するように配置され、同様に第2のヘッド部4aも他の2次元面心格子を形成するように配置される。そして、第1及び第2のヘッド部3a、4aがそれぞれ形成する2つの2次元面心格子が、互いに縦及び横方向に1/2格子ずれて配置され、その結果、第1のヘッド部3aと第2のヘッド部4aはそれぞれ互いの面心格子の面心位置に配置される。言い換えれば、第1のヘッド部3aの縦横に隣接して第2のヘッド部4aが配置され、第2のヘッド部4aの縦横に隣接して第1のヘッド部3aが配置される。さらに繰り返すと、行方向及び列方向に沿って、第1のヘッド部3a及び第2のヘッド部4aが交互に配置される。なお、第1及び第2のヘッド部3a、4aは、列方向(図1の紙面内上下方向)に互いに60μmの間隔を設けて配置され(即ち120μmピッチで配置され)、行方向(図1の紙面内左右向)には互いに160μmの間隔を設けて配置され(即ち220μmピッチで配置され)る。
第1のヘッド部3aの下面には、第1の絶縁シート1を貫通する貫通部3bが設けられる。この貫通部3bは、柱状、例えば直径50μmの円柱をなし、上面がヘッド部3a下面に密接し、下面が第1の絶縁シート1の下面1bに表出する。
また、第2のヘッド部4aの上面には、第2の絶縁シート2を貫通する貫通部4bが設けられる。この貫通部4bは、柱状、例えば直径50μmの円柱をなし、下面がヘッド部3a上面に密接し、上面が第1の絶縁シート1の上面2aに表出する。
この第1のヘッド部3a及びこれに接する貫通部3bは第1の熱伝導部材3を構成し、第2のヘッド部4a及びこれに接する貫通部4bは第2の熱伝導部材4を構成する。これら第1及び第2の熱伝導部材3、4を構成するヘッド部3a、4a及び貫通部3b、4bは、第1及び第2の絶縁シート1、2より高い熱伝導率を有する高熱伝導率材料、例えば銅又はアルミニウム等の金属,はんだ、高熱伝導率を有する導電性ペースト、或いはセラミックス材料を用いて形成される。従って、第1及び第2の熱伝導部材3、4は、その周囲を埋め込む第1及び第2の絶縁シート1、2材料より高い熱伝導率を有する。このため、下面1bと隙間9との間、及び、上面2aと隙間9との間の熱伝達は主としてこの第1及び第2の熱伝導部材3内の熱伝導を通してなされる。
第1の絶縁シート1の上面1aには、さらに薄膜パターンからなる熱電変換素子5 及び熱電変換素子5 間を接続し、発電した電力を外部へ出力するための配線11が形成されている。
熱電変換素子5は、熱電変換材料の薄膜パターンからなり、第1の絶縁シート1の上面1aに絶縁膜7を介して設けられる。この熱電変換素子5は、第1の熱伝導部材3のヘッド部3aと第2の熱伝導部材4のヘッド部4aとの間に設けられ、ヘッド部3aの側面に絶縁膜7を介して一端が接し、ヘッド部4aの側面に他端が接するように形成される。
かかる熱電変換素子5は、行列状に配置されたヘッド部3a、4aの列方向(図1の紙面上下方向)に交互に並ぶヘッド部3a、4aの間に設けることができる。このとき、熱電変換素子5をp型及びn型の薄膜熱電変換材料から形成し、p型及びn型の熱電変換素子5p、5nが列方向に交互に並ぶように配置することが好ましい。このように配置することで、詳しくは次に説明するように、隣接する熱電変換素子5間を配線11で接続するだけで、容易に全ての熱電変換素子5を直列に接続することができる。
列方向に交互に並ぶように列設されたp型の熱電変換素子5pとn型の熱電変換素子5nは、配線11(配線11a〜11c)により直列に接続される。配線11aは、絶縁膜7上から、列方向に隣接する熱電変換素子5p、5nの対向する端部の上面に延在し、その隣接する熱電変換素子5p、5nを電気的に直列に接続する。さらに、配線11bは、列の一端に位置する熱電変換素子5と隣接する列のその一端側に位置する熱電変換素子5との間を電気的に接続する。この配線11bは、列ごとに直列接続された熱電変換素子5を、さらに他の列に直列に接続するように、両隣のうちの一方の側の列の熱電変換素子5を列の一端側で接続し、両隣の他方の側の熱電変換素子5を列の他端側で接続する。従って、配線11は、行列状に配置された全ての熱電変換素子5を、つづら折り状の経路で直列接続する。
なお、本第1実施形態では、ヘッド部3a、4bの間に導電型の異なる熱電変換素子5p、5nを交互に配置した。この配置では、例えば第1の熱伝導部材3のヘッド部3aに、列方向に沿って一方(図1の紙面上方)からp型の熱電変換素子5aが、他方(図1の紙面下方)からn型の熱電変換素子5nがヘッド部3aを挟むように当接する。この熱電変換素子5p、5nの他端は第2の熱伝導部材4のヘッド部4aに接するので、第1及び第2の熱伝導部材3、4の間に印加された温度差に基づき、同じ列の熱電変換素子5p、5nには同じ向きの起電力が発生する。従って、これらの熱電変換素子5p、5nを直列に接続することで、熱電変換素子5p、5nの個数倍の電圧が出力される。このように、熱電変換素子5p、5nの出力は、配線11により直列に接続され、配線11の両端に設けられた電極パッド11cから外部に出力される。
上述した熱電変換素子5の材料は、ゼーベック効果を生ずる熱電変換材料であればよく、薄膜材料の他バルク材料であってもよい。しかし、薄膜材料は製造容易であり、さらに柔軟性に優れる材料を容易に選択できるので、とくに安価にフレキシブル熱電変換装置を製造するに適している。かかる薄膜熱電変換材料として、例えばp型熱電変換材料としてクロメル(Ni90Cr10)、n型熱電変換材料としてコンスタンタン(Ni48Cu52)を用いることができる。また、化合物半導体、例えばBi2 Te2 、CoSb、SiGe又はPbTeを用いることもでき、単体金属、例えばBi、Pt、Au、Cu又はNiを用いてもよい。
第1及び第2の絶縁シート1、2の隙間9は、ヘッド部3a、3b及び熱電変換素子5がその隙間9に挟持される間隔があればとくに制限はなく、例えば8μmとする。また、ヘッド部3a、3bの上面が、上方の第2の絶縁シート2の下面2bに埋め込まれても、例えば1μ程度、即ち絶縁膜7の厚さ程度埋め込まれてもよい。隙間9は、接着剤6が充填され、この接着剤6により第1及び第2の絶縁シート1、2が貼着される。この接着剤6は絶縁シート1、2間の熱の漏洩を抑制する観点から熱伝導率が低いことが望ましく、また、素子の電気的絶縁を担保するため絶縁性を有することが好ましい。かかる観点から、例えば熱硬化性樹脂からなる接着剤6を用いることが好ましい。
次に、上述した本発明の第1実施形態の熱電変換装置100の製造方法を説明する。
図4は本発明の第1実施形態の熱電変換装置の製造工程断面図(その1)、図5は本発明の第1実施形態の熱電変換装置の製造工程断面図(その2)であり、製造途中の熱電変換装置100の断面を表している。なお、図4(a)〜(c)、(d)及び図5(f)〜(j)は図1中のAA’断面を、図4(c−B)、(d−B)〜(e−B)は図1中のBB’断面を表している。
図4(a)を参照して、まず、上面1aに厚さ8μmの銅層1dが積層された、厚さ50μmのポリエステル樹脂からなる第1の絶縁シート1を準備する。次いで、第1の絶縁シート1の下面から第1の絶縁シート1を貫通し、銅層1dの下面を表出する、例えば直径50μmの円柱状の穴cを開口する。この穴1cは、図1及び図2を参照して、第1の熱伝導部材3の貫通部3bの位置、即ち、行方向に440μm、列方向に240μmの格子間隔を有する面心格子の格子点に形成される。かかる穴1cは、例えばレーザ加工によりなされる。他に、エッチングにより形成することもできる。
次いで、図4(b)を参照して、無電解銅めっき法を用いて、穴1cを埋め込む銅からなる貫通部3bを形成する。このとき、無電解めっき銅を穴1cの表面を被覆するように形成し、その後、穴1cの残りの部分に他の方法で形成された高熱伝導率材料、例えば高熱伝導率のペースト、導電性ペースト、電解めっき銅或いははんだを埋め込むことで形成してもよい。次いで、後工程での下面1bの損傷を防ぐために、下面1bに樹脂からなる保護シート1eを貼着する。
次いで、図4(c)を参照して、ホトエッチング法を用いて銅層1dをパターニングし、第1の絶縁シート上面1aに、例えば辺長60μmの正方形の銅パターンからなるヘッド部3a、3bを形成する。このうち、第1のヘッド部3aは、第1の絶縁シート1に形成された穴1cの直上に、穴1cを塞ぐように設けられる。この第1のヘッド部3aは、その直下に接して形成された貫通部3bと共に第1の熱伝導部材3を構成する。一方、第2のヘッド部4aは、第1のヘッド部3aが形成する面心格子の面心位置、即ち行及び列方向にそれぞれ最近接位置に位置する4個の穴1cの中心(4個の穴1cが形成する菱形の対角線の交点)に位置するように形成される。
次いで、第1の絶縁シート1の上面1a全面に厚さ1μmのシリコン酸化膜をスパッタして、シリコン酸化膜からなる絶縁膜7を形成する。この絶縁膜7は、ヘッド部3a、3bの上面及び側面及びヘッド部3a、3bの外側に表出する第1の絶縁シート1の上面1aを被覆するように形成される。
図4(c−B)を参照して、絶縁膜7が形成されたとき、第1の絶縁シート1の上面1aは絶縁膜7により、下面1bは保護シート1eにより被覆され、その絶縁シート1の上面1aに絶縁膜7で被覆されたヘッド部3a、4aが突出する。
次いで、図4(d)を参照して、例えばメタルマスクを用いたスパッタ法により、熱電変換材料を、例えば厚さ1μmの平板状のパターンとして形成し、熱電変換素子5を形成する。この熱電変換素子5は、列及び行方向にそれぞれp型熱電変換素子5pとn型熱電変換素子5nとが交互に位置するように形成される。なお、p型及びn型熱電変換素子5p、5nは、それぞれ別個になされる2回のスパッタリングにより形成される。
これらの熱電変換素子5は、図1、及び図4(d−B)を参照して、例えば、中央部分が60μm幅の帯状をなし、両端部分が幅120μmまで拡幅されてヘッド部3a、4aを抱持するような平面パターンに形成される。
なお、熱電変換素子5の形成は、スパッタに限られず、熱電変換素子5に必要とされる熱電変換特性を維持しかつその特性を劣化することなくパターニング可能であれば、他の方法を用いてもよい。例えば、スパッタに代えて、蒸着法、イオンプレーテング法、スクリーン印刷法又はフラッシュ蒸着法を用いることもできる。これらの薄膜形成方法は、200℃以下の形成温度で優れた特性を有する熱電変換材料を形成することができるので、耐熱性が200℃程度の樹脂シートからなる第1の絶縁シート1の変形を回避することができる。さらに、CVD法、レーザアブレーション法、ゾルゲル法又は溶射法を用いてもよい。
次いで、図4(e−B)を参照して、メタルマスクを用いたスパッタリング法により、導電性金属膜からなる、例えは厚さ0.2μmの銅薄膜パターンからなる配線11を形成する。図1及び図4(e−B)を参照して、配線11aは、列方向に隣接するp型及びn型熱電変換素子5p、5nの端部の上面から熱電変換素子5p、5nの端面を覆い、熱電変換素子5p、5nの間に表出する絶縁膜7上に延在して、この熱電変換素子5p、5nを直列に接続する。また、各列間は、配線11bにより接続され、その結果、配線11a、11bにより全ての熱電変換素子5が直列に接続される。なお、配線11の両端には、外部に電力を出力するための電極パッド11cが設けられている。
次いで、図5(f)を参照して、第1の絶縁シート1の上面1aに、下面2bに熱硬化性の接着剤6が積層された厚さ50μmのポリエステル樹脂からなる第2の絶縁シート2を載置し、次いで、図5(g)を参照して、例えば押圧5MP、温度150℃で2時間圧着し、接着剤6を熱硬化させて積層した。このとき、ヘッド部3a、4bの上面を軟化した第2の絶縁シート2の下面2bに食い込ませ、第1及び第2の絶縁シート3、4の隙間9の間隔を8μmにした。
次いで、図5(h)を参照して、第2のヘッド部4aの直上に、第2の絶縁シート2を貫通する例えば直径50μmの穴2cを開口する。この穴2cは、穴1cと同様の方法、例えばレーザ加工により形成され、第2の絶縁シート2及び絶縁膜7を貫通してその下面にヘッド部4aを表出する。
次いで、図5(i)を参照して、穴2cを穴1cと同様に、高熱伝導率の材料、例えば無電解銅めっきで埋め込み貫通部4bを形成する。この貫通部4bは、貫通部3bと同様の方法で形成することができる。その結果、貫通部4bの下面に第2のヘッド部4aが密接した第2の熱伝導部材4が形成された。
次いで、図5(j)を参照して、第1の絶縁シート1の下面1bに貼着された保護シート1eを除去して、本発明の第1実施形態の熱電変換装置100が製造される。
上述した本発明の第1実施形態の熱電変換装置100では、各熱電変換素子5は、熱電変換材料からなる一層の薄膜から構成されていた。しかし、各熱電変換素子5を多層にすることもできる。
図6は本発明の第1実施形態の変形例にかかる熱電変換素子断面図であり、多層の熱電変換材料薄膜から構成された熱電変換素子5の層構造を表している。なお、図6(a)及び図6(b)はそれぞれ、第1実施形態の第1変形例及び第2変形例を表している。
図6(a)を参照して、本第1実施形態の第1変形例では、単層の熱電変換材料薄膜からなる第1実施形態の熱電変換素子5に代えて、熱電変換素子5を複数層の、例えば4層の熱電変換材料薄膜5aにより構成する。各熱電変換材料薄膜5a間は、熱伝導率の低い絶縁材料、例えば樹脂からなる層間絶縁膜8により絶縁されている。
これらの熱電変換材料薄膜5a及び層間絶縁膜8は、メタルマスクを用いたスパッタ法又は蒸着法により、熱電変換材料薄膜5aと層間絶縁膜8とを交互に積層して形成することができる。積層した後、この熱電変換材料薄膜5aと層間絶縁膜8からなる多層構造の端面に被着した層間絶縁膜8を除去して、多層構造の端面に熱電変換材料薄膜5aの端面を露出させる。この端面に被着した層間絶縁膜8の除去は、例えば樹脂のアッシング又はエッチングによりなすことができる。また、層間絶縁膜8としてレジストを用い、現像により除去することもできる。
また、熱電変換材料薄膜5aと層間絶縁膜8との積層を第1の絶縁シート1の上面1a全面に形成した後、ホトエッチングによりパターニングして、端面に熱電変換材料薄膜5aが露出した多層構造の熱電変換素子5を形成してもよい。
多層構造の熱電変換素子5の形成後、第1実施形態と同様に配線11を形成する。この配線11は、熱電変換素子5の上面から多層構造の端面を被覆し、絶縁膜7上へ延在する。従って、配線11は、熱電変換素子5の上面及び多層構造の端面に表出する熱電変換材料薄膜5aの端面と接触して、熱電変換素子5と電気的に接続する。なお、必要ならば、熱電変換素子5の劣化を防止するために、さらにシリコン酸化膜からなる絶縁膜7を第1の絶縁シート1の上面1a全面にに形成する。その後、第1実施形態の図5に示す工程と同様の工程を経て、本発明の第1実施形態の第1変形例にかかる熱電変換素子5が製造される。
本発明の第1実施形態の第2変形例にかかる熱電変換素子5は、配線11を熱電変換材料薄膜5aの上面で接触させ、広い接触面積を確保したものである。
図6(b)を参照して、第1実施形態の第2変形例にかかる熱電変換素子5では、熱電変換材料薄膜5a上に配線11が形成される配線接触領域11Dに、層間絶縁膜8を形成しない。従って、配線接触領域11Dでは、全ての熱電変換材料薄膜5aは直接接して積層される。このため、各熱電変換材料薄膜5aはこの配線接触領域11Dで上下の薄膜が電気的に接続され、さらに配線接触領域11D上に形成された配線11に接続される。このように、熱電変換材料薄膜5a相互間及び熱電変換材料薄膜5aと配線11間の接続は、熱電変換材料薄膜5a端面より広い配線接触領域11Dでなされるから、第1変形例に比べて低い接触抵抗で接続することができる。
図6(b)に示した第2変形例は、最下層の熱電変換材料薄膜5aをメタルマスクを用いたスパッタリングにより形成したのち、その上にレジストからなる最下層の層間絶縁膜7を形成し、露光、現像して配線接触領域11Dのレジストを除去する。次いで、下から2層目の熱電変換材料薄膜5aを最下層と同様の方法で形成したのち、下から2層目のレジストを形成し、露光、現像して配線接触領域11Dのレジストを除去する。この工程を繰り返して、4層の熱電変換材料薄膜5aと、その間に介在する3層のレジストからなる層間絶縁膜8を形成した。その後、第1変形例と同様に配線11を形成して、本第1実施形態の第2変形例にかかる熱電変換素子5を用いた熱電変換装置が製造される。
なお、上述した第1及び第2変形例では、第1実施形態においてp熱電変換素子5pが形成される位置には、熱電変換材料薄膜の全層がp型からなる熱電変換素子5が形成され、第1実施形態においてn型熱電変換素子5nが形成される位置には、熱電変換材料薄膜の全層がn型からなる熱電変換素子5が形成される。
図7は本発明の第1実施形態の他の変形例にかかる熱電変換装置断面図であり、熱電変換装置の上下面に高熱伝導率材料からなる熱拡散板12を設けた熱電変換装置101に関する。
図7を参照して、本発明の第1実施形態の他の変形例にかかる熱電変換装置101は、第1実施形態の熱電変換装置100の上面2a及び下面1bの全面を被覆する、高熱伝導率材料、例えば銅又はAl等の金属からなる熱拡散板12が設けられる。
後述するように、熱電変換装置100の上面2aと下面1b間の熱移動は、主に熱伝導部材3、4を介してなされる。従って,熱伝導部材3、4が表出する上下面2a、1bには、熱伝導部材3、4を中心とした温度分布を生ずるおそれがある。このような温度分布が大きくなると、熱伝導部材3、4の表出面と熱源との間に温度差を生じさせ、熱電変換装置100の熱電変換効率を低下させる。本第1実施形態の他の変形例では、上下面2a、1bに設けられた熱拡散板12により上下面2a、1b内に発生する温度分布が緩和されるので、かかる上下面2a、1bの面内温度分布の発生による熱電変換効率の低下が抑制される。
上述した熱電変換装置100、101は、その上下面2a、1bがそれぞれ異なる温度の熱源に接触し、その上下面2a、1bに印加された温度差を熱電変換素子5の両端の温度差に変換することで発電する。以下、その変換効率について説明する。
図2を参照して、例えば、第1の絶縁シート1の下面1bに高温、例えば36℃の熱源を接触させ、第2の絶縁シート2の上面2aに低温、例えば6℃の熱源を接触させた場合について説明する。
本発明の熱電変換装置では、第1及び第2の絶縁シート1、2は断熱性に優れたポリエステル樹脂であり、上下面2a、1bを熱伝導で厚さ方向に流れる漏洩熱流は十分に抑制される。他方、熱伝導部材1,2は熱伝導率の高い材料、例えば銅で形成される。また、熱電変換素子5は通常は絶縁シート1、2より熱伝導率の高い材料、例えばクロメル、コンスタンタン等の金属又は化合物半導体材料で形成される。さらに、熱電変換素子5は電気伝導によっても伝熱するので、熱伝達材料として機能する。従って、下面1bから上面2aに流れる熱流は、主として、第1の絶縁シート1を貫通して設けられた熱伝導部材1、熱伝導部材1、2の間に配置された熱伝導素子5、及び第2の絶縁シート2を貫通して設けられた熱伝導部材2の経路で流れる。
本発明の第1実施形態では、熱電変換素子は、第1の絶縁シート1上面1a上に設けられる。また、第1及び第2の熱伝導部材3,4は、それぞれ第1及び第2の絶縁シートから突出して設けられたヘッド部3a、4aにより、熱電変換素子5をその両端から挟むように設けられる。即ち、熱電変換素子の両端は、第1及び第2の熱伝導部材の突出部分(ヘッド部3a、4a)の側面に接して又は近接して配置される。
この構成では、第1及び第2の熱伝導部材3,4と熱電変換素子5との間の熱伝導は、第1及び第2の熱伝導部材3,4の側面と熱電変換素子5の両端面とを通してなされる。一方、第1及び第2の熱伝導部材3、4は大きな熱伝導率を有し、かつ熱流に垂直な断面積も熱電変換素子5の断面に比べて著しく大きいので、第1及び第2の熱伝導部材3、4内部の温度差(温度分布)は熱電変換素子5内で生ずる温度差に比べて非常に小さい。従って、熱電変換素子5の両端面の温度は第1及び第2の熱伝導部材3、4にほぼ等しい温度に保持され、厚さ方向には極めて小さな温度分布しか生じない。このように、熱電変換素子5の端面は、温度分布が小さなヘッド部3a、4aの側面に接して又は近接しているから、熱電変換素子5が厚くかつ熱電変換素子5の上下方向(厚さ方向)の熱伝導率が小さい場合でも、その端面の温度は熱伝導部材3、4にほぼ等しい温度に保持される。その結果、熱電変換素子5の両端の温度差は上下方向であまり変わらず、ほぼ一定に保たれる。このため、熱電変換素子5の両端の温度差の厚さ方向分布に起因して生ずる熱電変換効率の低下が回避され、高い熱電変換効率を有する熱電変換装置100が実現される。かかる厚さ方向の温度差は、とくに、低熱伝導率の層間絶縁膜8を介して熱電変換素子又は熱電変換材料薄膜5aを多層に積層した場合に大きくなる。しかし、本第1実施形態では、上述した厚い熱電変換素子5の場合と同様に、多層であっても各層を構成する熱電変換素子5の両端の温度差はあまり変わらないので、高い熱電変換効率が実現される。
図8は本発明の第1実施形態の熱電変換素子両端の温度差を表すグラフであり、第1実施形態の熱電変換装置100の熱電変換素子5の両端に印加される温度差をシミュレーションにより算出した値を表している。なお、図8中の棒グラフAは第1実施形態の熱電変換装置100のシミュレーション結果であり、図8中の棒グラフA、Bは、従来用いられている通常の熱電変換装置のシミュレーション結果を比較例として合わせて表示したものである。図9は比較例の熱電変換装置断面図であり、図9(a)及び(b)は、図8中にそれぞれ比較例A、Bとして示すシミュレーションの対象とされた通常の熱電変換装置61、62の構造を表している。
図9(a)を参照して,通常の熱電変換装置61は、熱電変換材料薄膜からなる熱電変換素子64を上下から、低熱伝導率材料からなる断熱性シート63で挟み込む。そして,熱電変換素子64の一端近傍の上面に絶縁膜を介して接し、断熱性シート63を貫通して断熱性シート63上面に表出する高熱電率材料65が設けられる。一方、熱電変換素子64の他端近傍の下面に絶縁膜を介して接し、断熱性シート63を貫通して下面に表出する高熱電率材料65が設けられる。
図9(b)を参照して,他の通常の熱電変換装置62は、p型及びn型の熱電変換材料薄膜64p、64nを突き合わせてpn接合を形成する熱電変換素子64を上下から低熱伝導率材料からなる断熱性シート63で挟み込む。そして,p型熱電変換材料薄膜64pの上方及びn型熱電変換材料薄膜65nの下方に、それぞれ断熱性シート63の上面及び下面に高熱電率材料65が埋め込まれる。この通常の熱電変換装置61では、高熱電率材料65と熱電変換素子64との間に、厚さ15μmのポリエステルからなる断熱性シート63が介在している。
図8に結果を示した通常の熱電変換装置61、62のシミュレートでは、断熱性シート63を厚さ50μmのポリエステル樹脂とし、高熱電率材料65を辺長50μmの正方形の平面パターンを有する銅の柱体とした。また、通常の熱電変換装置61で、高熱電率材料65と熱電変換素子64との間に介在する絶縁膜を、厚さ1μmのシリコン酸化膜とし、通常の熱電変換装置62で、高熱電率材料65と熱電変換素子64との間に介在する断熱性シート63の厚さを12μmとした。また、熱電変換素子64の形状は本発明の第1実施形態と同様とした。なお、熱電変換素子64の材料は全てクロメルとし、熱電変換素子64を複数層とする場合は、層間絶縁膜8を厚さ4μmのレジストとした。
図8中の棒グラフAを参照して、本発明の第1実施形態にかかる熱電変換装置100では、熱電変換素子5の両端に印加される温度差は、熱電変換素子64が1層の場合はほぼ24℃であり、熱電変換素子64の層数を2層、3層と増加するに従い、ほぼ直線的に減少し、3層では22.5℃まで小さくなる。
なお、シミュレーションは、熱電変換装置101の下面(即ち、第1の絶縁シート1の下面1a)に36℃の熱源を接触させ、熱電変換装置101の上面(即ち、第2の絶縁シート1の上面2a)に6℃の熱源を接触させた場合の、熱電変換素子64の両端の温度差を算出した。ここで、図8中の温度差は、複数層の熱電変換素子64の両端の温度差を平均した値である。
これを通常の熱電変換装置61と比較すると、図8中の棒グラフBを参照して、通常の熱電変換装置61では、1層のときの温度差は、第1実施形態の熱電変換装置100とほぼ同じであるが、2層、3層では第1実施形態の熱電変換装置100よりも層当たりの温度差の減少が大きい。熱電変換効率は、この温度差に大きく依存する。従って、第1実施形態の熱電変換装置100は、熱電変換素子5を多層としたときに、従来用いられている通常の熱電変換装置61に較べて高い熱電変換効率を有する。
このように、通常の熱電変換装置61で、熱電変換素子5の多層化による温度差の減少が大きい理由を、以下のように推測している。
本発明の熱電変換装置100では、多層の熱電変換素子5の全ての層が、その両端面を熱伝導部材3、4(正確にはヘッド部3a、4a)の側面に絶縁膜7を介して接している。熱伝導部材3、4及び絶縁膜7の熱伝導率は高いから、これらの内部及び表面の温度分布は小さい。従って、全ての熱電変換素子5に、熱伝導部材3、4間の温度差にほぼ等しい温度差が印加されるので、層数が増加しても温度差はあまり減少しない。
これに対して,通常の熱電変換装置61では、1層では両端が高熱伝導率材料65に絶縁膜を介して接し、その両端の温度差は、高熱伝導率材料65間の温度差と大差がない。しかし、多層になると上下の熱電変換素子64間に熱伝導率の低い層間絶縁膜が介在するため、この低熱伝導率の層間絶縁膜中の厚さ方向に大きな温度分布(温度勾配)が発生する。このため、層間絶縁膜中の温度勾配の分だけ、いい換えれば層間絶縁膜の層数に応じて、熱電変換素子64の両端の温度差が小さくなる。
さらに、通常の熱電変換装置62では、1層の場合でも高熱伝導率材料65と熱電変換素子64p、64nとの間に低熱伝導率の断熱性シート63が介在する。従って、この介在する断熱性シート63中での大きな温度勾配により、1層の場合でも熱電変換素子64p、64nの両端に印加される温度差は小さくなる。本発明の発明者は、このように推測している。
本発明の第2実施形態は、第2の熱伝導部材4の一部が埋め込まれた第2の絶縁シート2を用いて製造される熱電変換装置102に関する。
図10は本発明の第2実施形態の熱電変換装置断面図であり、図1のAA’断面に相当している。なお、本第2実施形態の熱電変換装置102の平面構造は図1と同様であり、説明を簡明にするため図1を参照しつつ説明する。
図10を参照して、本第2実施形態の熱電変換装置102では、第2の絶縁シート2を貫通する貫通部4bが、第1の絶縁シート1の上面1aに形成された第2のヘッド部4a上面に当接するように設けられる。即ち、第2の熱伝導部材4を構成する第2のヘッド部4aと貫通部4bとはそれぞれ別個に製造され,その後当接するように組み立てられる。熱電変換装置102は、上述の貫通部4bとヘッド部4aとが分離している点、及び、第1実施形態の絶縁膜7に代えて側壁7aによる電気的絶縁が採られる点で、第1実施形態と異なる。その他の構造は、第1実施形態の熱電変換装置100と同様である。以下、製造工程を参照しつつ本第2実施形態の熱電変換装置102を説明する。
図11及び図12は、それぞれ本発明の第2実施形態の熱電変換装置の製造工程断面図(その1)及び本発明の第2実施形態の熱電変換装置の製造工程断面図(その2)であり、製造途中の熱電変換装置102の断面を表している。
図11(a)を参照して、まず、例えばポリイミド又はポリエステル樹脂からなる絶縁シート2を準備し、この絶縁シート2を貫通する穴2cを例えばレーザ加工を用いて開口する。この穴2cの配置及び直径は、図1に示す貫通部4bの形成位置及び直径と同じである。
次いで、この絶縁シート2を、上面に金属膜15が積層された支持シート16上に載置し、押圧して密着する。このとき、穴2cの底面に金属膜15が表出する。
次いで、図11(b)を参照して、例えば無電解めっき法を用いて、穴2cの底面に表出する金属膜15上に高熱伝導率材料、例えば銅を堆積し、穴2cを埋め込む高熱伝導率材料からなる貫通部4bを形成する。次いで、支持シート16を剥離し、金属膜15をエッチング除去する。
次いで、図11(c)を参照して、絶縁シート2の上面に、後工程において絶縁シート2の上面を保護するための保護シート2eをラミネートして積層する。次いで図11(d)を参照して、絶縁シート2の下面に、熱硬化性樹脂からなる絶縁性の接着層を例えばラミネートにより積層する。
他方、図4(a)〜(b)に示す第1実施形態と同様の工程を経て、第1実施形態と同様に、第1の絶縁シート1の上面1a上にヘッド部4a、3aを、ヘッド部4a直下に貫通部3bを形成し、さらに第1の絶縁シート1の上面1a全面を被覆するシリコン酸化膜からなる絶縁膜7を形成する(図4(c)参照)。
次いで、図12(e)を参照して、絶縁膜7をエッチバックして、ヘッド部4a、3aの上面を表出すると同時に、ヘッド部4a、3aの側面にシリコン酸化膜からなる側壁7aを形成する。
次いで、図4(d)〜図4(e−B)に示す第1実施形態と同様の工程を経て、図12(f)を参照して、熱電変換素子5p、5n及び配線11a〜11c(図1及び図4(e−B)を参照)を形成する。
次いで、図12(g)を参照して、絶縁シート1上に、予め製造されている図11(d)に示す絶縁シート2を、貫通部4がヘッド部4a上に位置するように位置合わせした後、接着剤6を介して圧着する。この圧着は、例えば温度150℃、5MPの下に2時間放置しておこない、同時に接着剤6を熱効果させた。
以上の工程を経て、本第2実施形態の熱電変換装置102が製造される。本第2実施形態では、熱電変換素子、ヘッド部4a、第1の熱伝導部材3、配線等が形成される第1の絶縁シート1と、貫通部4bが形成される第2の絶縁シート2とを,それぞれ各別に製造することができるから、製造工程が簡素になる。
本発明の第3実施形態は、2層に積層された熱電変換素子を直列接続した熱電変換装置に関する。
図13は本発明の第3実施形態の熱電変換装置平面図であり、図13(a)は下層の熱電変換素子5p、5nと下層の配線11の配置を、図13(b)は上層の熱電変換素子5p、5nと上層の配線11の配置を表している。図14は本発明の第3実施形態の熱電変換装置断面図であり、図13中のAA’断面を表している。
図13及び図14を参照して、本発明の第3実施形態の熱電変換装置103は、図1に示す第1実施形態の熱電変換装置100と同様の配置及び形状を有する第1及び第2の熱伝導部材3、4を備え、そのヘッド部3a、4aは、第1実施形態の熱電変換装置100と同様、行列状に互いに面心位置を占めるように配置されている。
なお、第3実施形態の熱電変換装置103では、第1実施形態の熱電変換装置100と同様の平面パターンを有する熱電変換素子5p、5nが、同様の面内位置に2層に重ねて配置されている。その他は、第3実施形態の熱電変換装置103は第1実施形態の熱電変換装置100と同様である。以下、第3実施形態の熱電変換装置103の熱電変換素子5p、5n及びそれを接続する配線11についてより詳細に説明する。
図13及び図14を参照して、本第3実施形態では、熱電変換素子5は同一平面パターンを有する下層の熱電変換素子5と上層の熱電変換素子5とからなり、この上下層の熱電変換素子5は層間絶縁膜8を介して電気的に分離されている。なお、この上下層の熱電変換素子5は、第1実施形態の熱電変換装置100の熱電変換素子5と同様の平面パターンを有し同様の面内位置に配置されている。
図13(a)を参照して、下層の熱電変換素子5p、5nでは、p型熱電変換素子5p及びn型熱電変換素子5nが第1実施形態と同様の配列で配置される。また、熱電変換素子5p、5n間を接続する配線11a、11bも第1実施形態と同様に配置され、これにより下層の全ての熱電変換素子5p,5nが直列に接続される。なお、下層の配線11の一端は、第1実施形態と同様に外部接続用の電極パッド11cを構成し、他方、下層の配線11の他端は、ビア11vを介して上層の配線11に接続するための電極パッド11c’を構成する。
図13(b)を参照して、上層の熱電変化素子5p、5nは、第1実施形態のp型熱電変換素子5pの位置にn型熱電変換素子5nが、第1実施形態のn型熱電変換素子5nの位置にp型熱電変換素子5pが位置するように配置される。、従って、下層のp型熱電変換素子5p直上に上層のn型熱電変換素子5nが積層され、下層のn型熱電変換素子5nの直上にp型熱電変換素子5pが積層される。
また、上層の熱電変換素子5p、5n間を接続する配線11a、11bは、下層の配線11と同様に、上層の全ての熱電変換素子5p,5nを直列に接続するように配置される。なお、上層の配線11の一端が外部接続用の電極パッド11c’を構成し、他端が、下層の電極パッド11c’とビア11vを介して接続する電極パッド11c’を構成する。その結果、上下層の全ての熱電変換素子5は配線11及びビア11vを介して直列に接続され、その直列出力が外部接続用の2個の電極パッド11cから出力される。
図15は本発明の第3実施形態の熱電変換素子断面図であり、図14に示す2層の熱電変換素子5p、5nの断面を拡大して表している。
図15を参照して、例えば厚さ1μmのクロメルからなる下層のp型熱電変換素子5pが、絶縁シート1上に例えば厚さ1μmのシリコン酸化膜からなる絶縁膜7を介して形成されている。その上に、例えば厚さ1μmのコンスタンタンからなる上層のn型熱電変換素子5nが、例えば厚さ4μmのレジストからなる層間絶縁膜8を介して形成されている。その上に,例えば熱硬化性接着剤6を介して第2の絶縁シート2が貼着されている。この層間絶縁膜8は、上下の熱電変換素子5p、5nを電気的に絶縁し、また、熱の無用な漏洩を抑制するために、優れた絶縁性と高い断熱性を有することが望まれる。この観点から,絶縁性の高い樹脂が好ましく、特にパターニングが容易なレジスト(感光性樹脂)が好ましい。
上述した本第3実施形態の熱電変換装置103では、熱電変換素子5が2層に設けられ、面積当たりの熱電変換素子5数が多い。また、これらの熱電変換素子5が全て直列に接続されている。従って、高い出力電圧と大きな出力電力を発生することができる。
以下本第3実施形態の熱電変換装置103の製造工程を説明する。
図16は本発明の第3実施形態の熱電変換装置の製造工程断面図であり、製造途中の熱電変換装置の断面構造を表している。なお、図16(a)〜(b)、(d)及び(f)〜(g)は図13中のAA’断面を、図16(c−B)及び(e−B)は図13中のBB’断面を表している。但し、図16(e−B)では、下層の熱電変換素子5については図13(a)中のBB’断面で表示し、上層の熱電変換素子5については図13(b)中のBB’断面で表示している。
図16(a)を参照して、まず、図4(a)〜(c)に示した第1実施形態の製造工程と同様の工程を経て、絶縁シート1上面に配列されたヘッド部3a、4bと、ヘッド部3a直下に絶縁シート1を貫通する高熱伝導率材料、例えば銅からなる貫通部3bと、上面全面を被覆するシリコン酸化膜からなる絶縁膜7と、絶縁シート1下面に貼着された保護シート1eとを形成する。
次いで、図16(b)を参照して、メタルマスクを用いたスパッタ法により、下層のp型熱電変換素子5p及びn型熱電変換素子5nを順次形成する。次いで、図16(c−B)を参照して、下層の配線11を例えはメタルマスクを用いたスパッタ法により形成する。
次いで、図16(d)を参照して、絶縁シート1の上面全面に、下層の熱電変換素子5上で厚さ4μmになるように層間絶縁膜8となるレジスト8をスピン塗布する。その後、露光、現像して、電極パッド11c’を表出する開口8aを開設する。この露光、現像では、下層の熱電変換素子5及び下層の配線11の余分な部分、例えばヘッド部3a、4aの側面に這い上がる部分、あるいはメタルマスクからはみ出す部分を表出するようにレジスト8をパターニングして、このレジスト8(層間絶縁膜8)をマスクとしてこれらの余分な部分をエッチング除去することもできる。
次いで、レジスト8上に、下層と同様の方法で、上層の熱電変換素子5p、5nを順次形成する。次いで、図16(e−B)を参照して、下層と同様の方法で、上層の配線11を形成する。このとき、電極パッド11c’は、レジスト8(層間絶縁膜8)上面から開口8aの側面及び底面に延在して形成され、開口8a底面に表出する下層の電極パッド11c’と接続される。即ち、開口8aの側面上に形成された配線11を介して、上下層の電極パッド11c’を接続するビア11vが形成される。
次いで、図16(f)を参照して、下面に接着剤6を設けた絶縁シート2を熱圧着し、次いで、上面2aから絶縁シート2及び絶縁膜7を貫通し、底面にヘッド部4aを表出する穴2cを開口する。この熱圧着は例えば温度150℃、5MPの圧力下に2時間保持してなされる。また、穴2cは、例えばレーザ加工、必要ならばレーザ加工に続く絶縁膜7のエッチングにより形成することがてきる。
次いで、図16(g)を参照して、無電解銅めっきにより穴2cを埋め込み、絶縁シード2を貫通してヘッド部4aに接続する貫通部4bを形成する。最後に保護シート1eを剥離して本第3実施形態の熱電変換装置104が製造される。
本発明の第4実施形態は、単一の導電型の熱電変換素子5を用いた熱電変換装置104に関する。
図17は本発明の第4実施形態の熱電変換装置平面図であり、絶縁シート1上に配置 されたヘッド部3a、4a、熱電変換素子5−1〜5−12及び配線11b〜11dを表している。
図17を参照して、本第4実施形態の熱電変換装置104では、ヘッド部3a、4a及び熱電変換素子5が、第1実施形態と同様の位置と形状で絶縁シート1上に形成される。この構成では、縦及び横に隣接する熱電変換素子5には互いに逆向きに起電力が発生する。例えば、熱電変換素子5−1の下に隣接する熱電変換素子5−9及び横に隣接する熱電変換素子5−2には、熱電変換素子5−1と逆向きの起電力が発生する。本第4実施形態の配線11は、これら熱電変換素子5−1〜5−12の全てを直列に接続するように配置される。
配線11の始点となる外部接続用の電極パッド11c−1は、1行1列目に配置された熱電変換素子5−1の下端(図17の紙面内下方の端)に接続される。次いで、この熱電変換素子5−1の上端は、配線11bを介して1行2列目に配置された熱電変換素子5−2の上端に接続される。熱電変換素子5−1と熱電変換素子5−2とは互いに起電力が逆向きなので、この配線11bにより、配線11の延在方向に沿う起電力の方向が同じ向きになるように、即ち直列に接続される。
さらに、熱電変換素子5−2とその右横に隣接する熱電変換素子5−3との下端同士を配線11bで接続し、熱電変換素子5−3とその右横に隣接する熱電変換素子5−4との上端同士を配線11bで接続する。これにより、横に並ぶ熱電変換素子5−1〜5−4は直列に接続される。
次いで、熱電変換素子5−4の下端とその下方に隣接する熱電変換素子5−5の下端とを、配線11dを介して接続する。これにより、熱電変換素子5−4、5−5は直列に接続される。
さらに、1行目と同様に、熱電変換素子5−5の上端と熱電変換素子5−6の上端、熱電変換素子5−6の下端と熱電変換素子5−7の下端、及び、熱電変換素子5−7の上端と熱電変換素子5−8の上端を接続する配線11bにより、2行目の熱電変換素子5−4〜熱電変換素子5−8は直列に接続される。
同様に、2行目左端の熱電変換素子5−8と3行目左端の熱電変換素子5−9は配線11dにより直列に接続され、また、3行目の熱電変換素子5−9〜5−12は配線11bにより直列に接続される。その結果、全ての熱電変換素子5−1〜5−12は直列に接続される。
本第4実施形態の熱電変換装置104は、同一導電型の熱電変換素子5を用いるので製造工程が簡易になる。
本発明の第5実施形態は、柱体状の熱伝導部材を有する熱電変換装置105に関する。以下、その製造工程を参照して詳細を説明する。
図18は本発明の第5実施形態の熱電変換装置の製造工程断面図であり、製造途中及び製造された熱電変換装置の断面を表している。なお、本第5実施形態の熱電変換装置106の平面図は図1に示す第1実施形態の平面図と同様である。また、図18(a)、(b)〜(d)は図18中のAA’断面を、図18(a−B)は図18中のBB’断面を表している。ここで、図(a)及び図(a−B)は同一製造工程における2断面を表している。
図18(a)〜(a−B)、及び図18(b)を参照して、本第5実施形態では、初めに、第1の中間部材1Aと第2の中間部材2Aとを製造する。
図18(a)〜(a−B)を参照して、第1の中間部材1Aは、第1の熱伝導部材3が設けられた第1の絶縁シート1の上面に絶縁膜7を介して熱電変換素子5p、5nが形成され、その上を覆う絶縁膜7b及び下面を覆う保護膜1eを備えている。これら、第1の熱伝導部材3、熱電変換素子5p、5nは第1の実施形態と同様である。
第1の中間部材1Aの製造では、まず、第1の絶縁シート1に第1の熱伝導部材3を形成したのち、絶縁シート1の上面全面を覆う絶縁膜7を形成し、次いで、第1の熱伝導部材3のヘッド部3aの側面に一端を接する熱電変換素子5p、5nを形成する。次いで、熱電変換素子5p、5nを接続する配線11a〜11cを形成する。これらの工程は、以下の点を除き、図4(a)〜図4(f−B)に示す第1実施形態の製造工程と同様にしてよい。
本第5実施形態では、第1実施形態と異なり、第1の絶縁シート1には第1の熱伝導部材3が形成され,第2の熱伝導部材4はヘッド部4aを含めて全く形成されない。従って、熱電変換素子5p、5nの他端は、第2の熱伝導部材4に接することなく、第2の熱伝導部材4のヘッド部4aが緩嵌可能な間隔を設けて互いに対向している。なお、絶縁膜7を柔軟性ある断熱材料、例えは厚さ1μmの樹脂薄膜とすることが好ましい。
次いで、絶縁シート1上全面に絶縁膜7bを形成する。この絶縁膜7bは、熱電変換素子5p、5nの保護のために設けられ、必要なければ設けなくともよい。
図18(b)を参照して、第2の中間部材2Aは、第2の絶縁シート2と、第2の絶縁シート2を貫通する貫通部4b及び貫通部4b上に形成されたヘッド部4aとからなる第2の熱伝導部材4と、第2の絶縁シート2上にヘッド部4aを埋め込む接着剤6とを備える。また、ヘッド部4a形成面の反対面を被覆する保護膜2eが設けられる。この第2の熱伝導部材4は第1実施形態の第2の熱伝導部材4と同様の材料、形状を有す。
かかる第2の中間部材2Aは、図4(a)〜(c)に示す第1実施形態での熱伝導部材3、4の製造工程と同様の工程により製造することがてきる。但し、図4(c)に示す第1の熱伝導部材3を形成することなく、第2の熱伝導部材4のみを形成する。さらに、図4(c)に示す絶縁膜7を形成しない。
次いで、図18(c)を参照して、第2の中間部材2Aを上下反転して、第1の中間部材1A上に、第2の熱伝導部材4のヘッド部4aが熱電変換素子5p、5nの対向する他端面の間に位置するように位置合わせして載置する。その後、図18(d)を参照して、圧力5MP、温度150℃に2時間保持して接着剤6を硬化させ、第1及び第2の中間部材1A、2Aを貼着する。最後に、保護膜1e、2eを剥離して、本第5実施形態の熱電変換素子105が製造される。この貼着の際、ヘッド部3a、4aの先端が第1及び第2の絶縁シート1、2の表面に埋め込まれ、これに伴いヘッド部3a、4aの先端周縁近くの絶縁膜7、7bも絶縁シート1、2に埋め込まれるように変形する。従って、絶縁膜7、7bは、かかる変形により破壊されないように、断熱性及び絶縁性の他に柔軟性を有する薄膜、例えばレジストのような樹脂薄膜とすることが好ましい。
本第5実施形態では、熱伝導部材3a及び熱電変換素子5p、5nが形成された第1の中間部材1Aと、熱伝導部材4aが形成された第2の中間部材を各別に製造した後、貼着することで製造する。この第1及び第2の中間部材1A、2Aの熱伝導部材3a、4aは同様の工程5で形成され、また、貼着後は穴あけ又はパターニング等の複雑な工程がないので、製造工程が簡素である。
本発明の第6実施形態は、柱状の熱伝導部材3a、4aを有する熱電変換装置106に関する。以下、第6実施形態の熱電変換装置106をその製造工程を参照しつつ説明する。
図19は本発明の第6実施形態の熱電変換装置の製造工程断面図であり、製造途中の熱電変換装置を表している。
図19(a)を参照して、まず、第1の絶縁シート上に短冊状の平面パターンを有する熱電変換素子5p、5nを行列状に配置して形成する。なお、図19の左右方向を列方向としている。次いで、図19(b)を参照して、列方向に隣接する熱電変換素子5p、5n間を接続する導電膜11Aを形成する。この導電膜11Aは、必要ならば後に形成される熱伝導部材3、4の外周を廻り隣接する熱電変換素子5p、5nを互いに接続するか、あるいは、熱伝導部材3、4形成用の穴1c、2cの形成により隣接する熱電変換素子5p、5n間の接続が切断されるように平面パターンが設計される。
次いで、図19(c)を参照して、下面に接着剤6を設けた第2の絶縁シート2を第1の絶縁シート1上に貼着する。この貼着は、温度150℃、圧力5MPの下に2時間保持することでなされた。
次いで、図19(d)を参照して、第1の絶縁シート1の下面から第1の絶縁シート1、導電膜11及び接着剤6を貫通し、底面(上面)に第2の絶縁シート2を表出する穴1cを形成する。また、第2の絶縁シート2の上面から第2の絶縁シート2、導電膜11及び接着剤6を貫通し、底面(下面)に第1の絶縁シート1を表出する穴2cを形成する。この穴1c、2cの形成により、導電膜11Aはパターニングされ、熱電変換素子5p、5n間を接続する配線11aが形成される。これらの穴1c、2cは、柱状、例えば4角柱または円柱の形状に開設され、第1実施形態のヘッド部3a、4aと同様の配置、即ち熱電変換素子5p、5nの間に設けられる。かかる穴1c、2cの開口は、レーザ加工によりなすことができる。
次いで、図19(e)を参照して、例えばCVD法を用いて貼着された絶縁シート2、2の全面にシリコン酸化膜を形成し、上下面上のシリコン酸化膜を除去することで、穴1c、2cの内壁を覆うシリコン酸化膜からなる絶縁膜7cを形成する。この絶縁膜7cは、穴1c、2cの側壁面に露出する導電膜11A(配線11a)の端面を被覆するもので、穴1c、2cの底面に形成されていなくても差し支えない。
次いで、図19(f)を参照して、穴1c、2cを高熱伝導率材料、例えば無電解めっきを用いた銅で埋込み、絶縁シート1、2を貫通する高熱伝導率材料の柱体からなる第1及び第2の熱伝導部材3、4を形成する。これにより、本第6実施形成の熱電変換装置106が製造される。
さらに、図19(g)を参照して、第1の絶縁シート1の下面及び第2の絶縁シート2の上面全面に、高熱伝導率材料、例えば銅の薄板からなる熱拡散板12を形成することもできる。この熱拡散板12は、熱源と熱伝導部材3、4との間の吸熱及び放熱に起因して生ずる絶縁シート1、2上下面の温度分布を緩和する。これにより、熱電変換装置の変換効率の低下が抑制される。
上述した本第6実施形成の熱電変換装置106は、熱電変換素子5p、5n及び導電膜11Aを平坦な絶縁シート1上面に形成するので、容易に精密なパターンを形成することができる。また、ヘッド部3a、4aを形成する工程が無いので、製造工程が簡素である。
本発明の第7実施形態は、錐体状の熱伝導部材を用いた熱電変換装置107に関する。
図20は本発明の第7実施形態の熱電変換装置平面図であり、支持シート20上に形成された熱電変換素子5n、5p及び熱伝達部材25と、熱伝導部材23a、24aとの配置を表している。なお、図20は、熱電変換素子5n、5pの上面近傍の配置を表している。図21は本発明の第7実施形態の熱電変換装置断面図であり、図20中のAA’断面を表している。
図20及び図21を参照して、本第7実施形態の熱電変換装置107では、支持シート20の上面に、例えば幅60μm、長さ90μmの熱電変換素子5n、5pが所与の間隔、例えば120μmの間隔をあけて図20の紙面の上下方向に一列に配置されている。この熱電変換素子5n、5pは、p型とn型とが交互に位置するように配置される。さらに、かかる熱電変換素子5n、5pの列を複数列、例えば480μmのピッチ間隔で互いに平行に配置される。従って、熱電変換素子5n、5pは行列状に配置される。このとき、隣接する列のp型とn型の熱電変換素子5p、5nが、互いに同一導電型となるように配置すると、全ての熱電変換素子5p、5nを容易に直列接続できるので好ましい。
なお、図20では図を簡明にするため、熱電変換素子5n、5pを3行4列に配置した図を示したが、実用的な電圧を発生するために多数の素子を、例えば4000個の熱電変換素子5n、5pを100行40列に配置することもできる。図21はかかる多数の熱電変換素子5n、5pが配列された熱電変換装置107を描いている。
支持シート20は、断熱性及び絶縁性に優れ、少なくとも後述の接合工程において必要とされる可塑性を有する材料、例えばポリエチレン樹脂シートが用いられる。支持シート20の厚さは、熱電変換素子、熱伝達部を形成し、支持できる強度を必要とし、例えば厚さ30μmとされる。
熱伝達部材25は、少なくとも後述の接合工程において必要とされる可塑性を有する高熱伝導率材料からなり、列方向に隣接する熱電変換素子5n、5p間に、両端が隣接する熱電変換素子5n、5pの対向する端に接して設けられる。
例えば熱伝達部材25は、幅150μm、列方向の長さ180μmの矩形パターンに形成され、熱電変換素子5n、5pの端から30μmの距離まで熱電変換素子5n、5pの上面を覆うように設けられる。あるいは、直径180μmの円形パターン(熱電変換素子5n、5pの対向する端の周辺上面に30μm延在する。)としても差し支えない。
この熱伝達部材25を、熱伝導率の高い導電体、例えば導電ペーストにより形成することができる。同時に、隣接する列を接続する配線11b、必要ならば外部接続用の電極パッド11cをも導電ペーストにより形成してもよい。これにより、熱電変換素子5n、5p間を接続する配線を、熱伝達部材25で兼用することができ、配線11形成工程を省略することがてきる。なお、熱伝達部材25を絶縁体で形成するときは、第1 実施形態と同様に、熱電変換素子5n、5p間を接続する配線11a〜11cを熱伝達部材25とは別に形成する。
図21を参照して、上面に熱電変換素子5n、5p及び熱伝達部材25が形成された支持シート20の上面に、接着剤6が充填された隙間9を介して第4の絶縁シート22が貼着されている。また、支持シート20の下面に、第3の絶縁シート21が貼着される。この第3及び第4の絶縁シート21、22の材料は、断熱性及び可撓性を有する絶縁材料、例えば厚さ40μmのポリエステル樹脂が用いられる。
第3の絶縁シート21の下面及び第4の絶縁シート22のそれぞれの上面に、錐体状の、例えば円錐又は角錐の高熱伝導率材料、例えば銅からなる熱伝導部材23、24のヘッド部23a、24aが形成されている。なお、これらヘッド部23a、24aは、少なくとも先端部分が錐体であればよく、例えは先端が尖った柱体とすることもできる。
第3の絶縁シート21上面に設けられたヘッド部23aは、支持シート20を貫通し、さらに熱伝達部材25のほぼ中央を貫通し、その上端が第4の絶縁シート22の下面に突き刺さるように設けられている。一方、第4の絶縁シート22下面に設けられたヘッド部24aは、熱伝達部材25のほぼ中央を貫通し、さらに支持シート20を貫通したのち、その下端が第3の絶縁シート21の上面に突き刺さるように設けられている。なお、これらのヘッド部23a、24aは熱伝達部材25を貫通していれば、必ずしもその先端が対向する絶縁シート21、22に接していなくてもよい。
再び図20及び図21を参照して、ヘッド部23a、24aは、その断面が支持シート20上面でほぼ等しい大きさを有するように形成される。具体的には、ヘッド部23a、24aをそれぞれ、直径180μm及び120μm、高さが共にほぼ50μmの円錐体とした。その結果、支持シート20上面で、ヘッド部23a、24aの直径はほぼ60μmとなる。なお、先端のみが尖った柱状のヘッド部23a、24aを用いて、ヘッド部23a、24aの底面を小さくしてもよい。
これらのヘッド部23a、24aは、熱伝達部材25のほぼ中央を貫通するように、即ち、列方向に隣接する熱電変換素子5p、5nの間のほぼ中央を貫通するように設けられる。従って、ヘッド部23a、24aの一つに両側から隣接する熱電変換素子5p、5nは、その一つのヘッド部に対し、熱伝達部材25を介してほぼ対称に配置される。
さらに、第3の絶縁シート21に、錐体状ヘッド部23aの底面に接し絶縁シート21を貫通する柱体状の貫通部23bが、第4の絶縁シート22に、錐体状ヘッド部24aの底面に接し絶縁シート21を貫通する柱体状の貫通部24bが形成されている。このヘッド部23a、24aと貫通部23b、24bはそれぞれ一体として熱伝導部材23、24を構成する。熱電変換素子5p、5nの端面は、この熱伝導部材23、24の側面(錐面)に熱伝達部材25を介して熱的に接続される。従って、第1実施形態の熱電変換装置101と同様、膜厚が厚い又は多層膜からなる熱電変換素子5p、5nを用いた場合でも、熱電変換素子5p、5nの両端の温度差を大きく維持することができ、高い熱電変換効率が実現される。
以下、本第7実施形態の熱電変換装置107の製造工程を説明する。
図22〜図24は本発明の第7実施形態の熱電変換装置製造工程断面図(その1)〜(その3)であり、製造途中の熱電変換装置107を表している。なお、図22は熱電変換素子5p、5nが形成されたシート中間体20Aの製造工程を、図23は熱伝導部材23、24が形成されたシート中間体21A、22Aの製造工程を、及び図24はこれらのシート中間体20A、21A、22Aを貼着して熱電変換装置107を製造する工程を表している。
図22(a)を参照して、シート中間体20Aの製造では、まず、厚さ30μmのポリエステル樹脂からなる支持シート20の上面に、例えばメタルマスクを用いたスパッタ法により、行列状に配置された熱電変換素子5p、5nを形成する。この熱電変換素子5p、5nは、例えば支持シート20の幅方向に40列、延在方向に100行設けられる。
次いで、図22(b)を参照して、列方向に隣接する熱電変換素子5p、5nの間に、熱電変換素子5p、5nの対向する端を接続する導電性ペーストからなる熱伝達部材25を、例えば導電性ペーストの印刷又は滴下により形成する。この熱伝達部材25は、熱電変換素子5p、5nの対向する端の周辺上面を被覆するように形成される。
次いで、図22(c)を参照して、絶縁性の熱硬化型の接着剤6を15μmの厚さに塗布した。これらの工程を経て、支持シート20上面に熱電変換素子5p、5n,熱伝達部材25及び上面が平坦な接着剤6が形成されたシート状のシート中間体20Aが形成される。
次に、シート中間体21A、22Aの製造工程を説明する。
図23(a)を参照して、シート中間体21Aの製造では、まず、上面に厚さ50μmの銅層が積層された例えは厚さ40μmのポリエステル樹脂からなる第3の絶縁シート21を準備する。次いで、例えば第3の絶縁シート21の下面にレーザ光を照射して、絶縁シート21を貫通し、底面に銅層を表出する穴21cを開口する。次いで、穴21cを銅で埋め込み、銅柱からなる貫通部23bを形成する。この貫通部23bは、例えば銅の無電解めっき又電解めっきにより形成することができる。その後、絶縁シート21の下面に、厚さ10μmの銅層を形成する。この下面の銅層は、蒸着又はスパッタにより、或いは電解めっきによる貫通部23bの形成に続く電解めっきにより形成することができる。
次いで、絶縁シート21下面の銅層をホトエッチングして、各貫通部23bごとに島状に残る銅層からなる金属層26を形成する。この金属層26は、後工程で貫通部23bが絶縁シート21から剥落することを防止する。また、熱拡散板としても機能する。
次いで、絶縁シート21上面の銅層上に円形平面パターンを有するマスク28を形成し、反応性イオンエッチングにより直径がヘッド部23aの最大直径(錐体の底面直径)を有する円柱状の銅からなる柱状突起27を形成する。なお、マスク28を例えば矩形パターンとすることで矩形の柱状突起を形成することもできる。
次いで、図23(b)を参照して、柱状突起27をイオンミリングする。このとき、柱状突起27は、マスク28の端面からの直径の減少に伴い、上面外周から傾斜面を形成するように除去される。その結果、図23(c)を参照して、ついには柱状突起27は円錐状に加工され、ヘッド部23aが形成される。
この工程を経て、第3の絶縁シート21の上面に円錐状のヘッド部23aを備える第3の熱伝導部材23が形成され、下面に貫通部23bに接する島状の金属層26を備えたシート中間体21Aが製造される。さらに、同様の製造工程により,第4の絶縁シート22の下面に円錐状のヘッド部24aを備える第4の熱伝導部材24が形成され、上面に貫通部24bに接する島状の金属層26を備えたシート中間体22Aが形成される。このシート中間体22Aは、柱状突起27の直径が異なること、及び、上下が反転していることを除きシート中間体21Aと同様であり、同様の工程により製造することができる。
このシート中間体21A、22Aは、絶縁シート21、22のヘッド部23a、24a形成面に、ヘッド部23a、24aを被覆して保護する軟質の保護テープを貼着し、ロール状に巻回して保存することもできる。
次に、図24を参照して、上述した図22に示す工程により製造されたシート中間体20Aの上下面に、それぞれ図23に示す工程により製造されたシート中間体21A、22Aを圧着する。
この圧着工程では、まず、ロール状に巻かれたシート中間体20Aを水平に引き出し、水平に張持する。次いで、ロール状に巻かれたシート中間体22A、21Aを水平に引き出し、それぞれシート中間体20Aの上下に水平に保持する。このとき、ヘッド部21a、22a形成面(21a、22b)を、シート中間体20Aの上下面に平行に対向させる。この状態で、平面視したとき、ヘッド部21a、22aが熱伝達部材25の中心に位置するように、シート中間体22A、21Aを位置合わせする。
次いで、上下からローラで加熱,押圧して、シート中間体20Aの上面にシート中間体22Aを、シート中間体20Aの下面にシート中間体21Aを熱圧着する。この熱圧着は、例えば温度150℃、圧力10MPの下でなされ、その後接着剤及び熱伝達部材25を熱硬化させるための熱処理を温度150℃で2時間行った。
この熱圧着の際、シート中間体21Aの上面21aに形成されている錐体状のヘッド部21aは、加熱されて軟化した支持シート20に食い込み、支持シート20を貫通して、さらに導電ペーストからなる熱伝達部材25を貫通する。さらに、シート中間体20Aの上面に貼着(熱密着)されたシート中間体21Aの絶縁シート22の下面22bに、ヘッド部21aの先端を食い込ませても差し支えない。その後、熱圧着されたシート中間体20A、21A、22Aを幅方向に切断し、各熱電変換装置107ごとに分離する。
以上の熱雨着工程を経て、本第7実施形態の熱電変換装置107が製造される。この第7実施形態では、3種類のシート中間体20A、21A、22Aを各別に製造したのち、熱圧着により製造される。これらのシート中間体20A、21A、22Aはロール状に巻いて保存、運搬することができ、また熱圧着はロールを用いた連続工程により製造することができるので、大量生産を行うに適している。