JP5588246B2 - 樹脂−金属複合材料及びその製造方法、並びにタイヤ - Google Patents

樹脂−金属複合材料及びその製造方法、並びにタイヤ Download PDF

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Description

本発明は、樹脂−金属複合材料及びその製造方法、並びにタイヤに関する。
従来、乗用車等の車両には、ゴム、有機繊維材料、スチール部材などから構成された空気入りタイヤが用いられており、例えば、有機繊維材料またはスチール部材のコードによるベルトにゴムが接着してタイヤが構成されている。
近年では、軽量化や、成形の容易さ、リサイクルのしやすさから、樹脂材料、特に熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性材料をタイヤ材料として用いることが求められている。
一方、樹脂材料と、スチール材料等の金属材料との接着体である樹脂−金属複合材料は、樹脂−金属間の接着強度が弱く、種々の試みがなされている。
例えば、特許文献1には、オレフィン系ポリマーと金属板とを接着する際に、予め金属板をアセトンで洗浄した上、シランカップリング剤を接着剤として用いることが開示されている。また、特許文献2には、金属鋼線(スチールコード)と樹脂との接着に、pHの異なるシランカップリング剤溶液を用いることが開示されている。
国際公開第2009/078389号 米国特許出願公開第2009/0181248号明細書
前記特許文献1及び2に記載の方法によれば金属と樹脂とを接着することはできたが、接着強度が不十分であった。タイヤには、自動車の走行のみならず、ブレーキをかけたり、コーナリング等で非常に大きな負担がかかるため、タイヤを構成する樹脂材料と金属鋼線との接着強度が大きいことが必要である。前記特許文献1及び2に記載の方法では、樹脂材料と金属鋼線との接着性は、タイヤに適用するには不十分であった。
上記事情に鑑み、本発明は、樹脂材料と金属鋼線との接着性に優れた樹脂−金属複合材料及びその製造方法、並びに前記樹脂−金属複合材料を備えたタイヤを提供することを課題とし、前記課題を解決することを目的とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである
<1> 金属鋼線の表面に、少なくとも酸を含むpH5以上7未満の処理液を付与する表面処理工程と、表面処理された前記金属鋼線の表面にシランカップリング剤を付与した後、樹脂材料として熱可塑性エラストマーを付与する樹脂材料層形成工程と、を有する樹脂−金属複合材料の製造方法である。
> 前記酸は、酢酸、シュウ酸、クエン酸、及びギ酸から選択される少なくとも1種の酸である前記<1>に記載の樹脂−金属複合材料の製造方法である。
> 前記金属鋼線の表面は、亜鉛メッキ、銅メッキ、ブロンズメッキ、または真鍮メッキでメッキ処理されたメッキ層である前記<1>または前記<2>に記載の樹脂−金属複合材料の製造方法である。
> 前記金属鋼線は、線径が0.1mm〜5.5mmである前記<1>〜前記<>のいずれか1つに記載の樹脂−金属複合材料の製造方法である。
> 前記処理液は、緩衝液である前記<1>〜前記<>のいずれか1つに記載の樹脂−金属複合材料の製造方法である。
> 前記酸は、酢酸である前記<1>〜前記<>のいずれか1つに記載の樹脂−金属複合材料の製造方法である。
> 前記樹脂材料層形成工程は、前記表面処理工程により表面処理され、かつ前記シランカップリング剤が付与された前記金属鋼線の表面に対して、射出成形または押出成形により前記樹脂材料を付与する前記<1>〜前記<>のいずれか1つに記載の樹脂−金属複合材料の製造方法である。
本発明によれば、樹脂材料と金属鋼線との接着性に優れた樹脂−金属複合材料及びその製造方法、並びに前記樹脂−金属複合材料を備えたタイヤを提供することができる。
(A)はタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面図である。(B)はタイヤにリムを嵌合させた状態のビード部のタイヤ幅方向に沿った断面の拡大図である。 本発明の樹脂−金属複合材料における樹脂材料と金属鋼線との接着性を表す引抜力−変位曲線の一例である。 実施例7及び8の樹脂−金属複合材料における樹脂材料と金属鋼線との接着性評価の評価結果を表す引抜力−浸漬時間曲線である。 実施例9〜実施例12の樹脂−金属複合材料における樹脂材料と金属鋼線との接着性評価の評価結果を表す引抜力−変位曲線である。 比較例4〜比較例7の樹脂−金属複合材料における樹脂材料と金属鋼線との接着性評価の評価結果を表す引抜力−変位曲線である。
<樹脂−金属複合材料>
本発明の樹脂−金属複合材料は、潤滑剤の付着量が1.5atom%以下であり、かつ、防錆剤の付着量が3.0atom%未満である表面を有する金属鋼線と、前記表面上にシランカップリング剤を介して形成された樹脂材料層と、を有する。
本発明の樹脂−金属複合材料は、金属鋼線と樹脂材料層との間にシランカップリング剤が介在している積層構造をしており、前記シランカップリング剤は、金属鋼線と樹脂材料層とを接着する機能を有している。
本発明の樹脂−金属複合材料が上記構成であることで、樹脂材料と金属鋼線との接着性に優れ、接着強度が大きい。自動車走行等で金属と樹脂とに大きな負荷がかかるタイヤの製造に樹脂−金属複合材料を用いた場合でも、樹脂材料と金属鋼線との接着強度が大きく、剥離しにくいため、タイヤ用途にも好適である。本発明の樹脂−金属複合材料が、タイヤに適用可能なほど樹脂材料と金属鋼線との接着性に優れることの理由は明らかではないが、次の理由によると考えられる。
射出成形、押出成形等により溶融した樹脂材料を金属鋼線に付着させても金属鋼線と樹脂材料とは接着しにくく、仮に接着したとしても、外力により容易に剥離する。また、金属鋼線と樹脂材料とを接着剤を用いて接着しても、接着力が弱い。これは、金属鋼線と樹脂材料とが、互いに異なる材質であることから材料間相互作用が弱いためと考えられる。また、金属鋼線は、取り扱いの便宜上、また、金属を腐食から守るために、潤滑剤と防錆剤が付着していることがある。かかる潤滑剤および防錆剤が、油膜となって、金属鋼線と樹脂材料との接着を妨げていたものと考えられる。さらに、樹脂と金属との接着に用いられるシランカップリング剤は、金属のOH基とシランカップリング剤のシラノール基とが化学結合をすることにより接着作用を奏するが、金属鋼線表面に潤滑剤等が付着していることで、金属鋼線−シランカップリング剤間の化学結合箇所の数が減り、接着不良を生じやすかったものと考えられる。
これに対し、本発明においては、樹脂−金属複合材料を構成する金属鋼線の表面が、
潤滑剤の付着量が1.5atom%以下であり、かつ、防錆剤の付着量が3.0atom%未満であることで、金属鋼線と樹脂材料との接着阻害が抑制されていると考えられる。つまり、潤滑剤および防錆剤の付着量が上記量以下であることで、金属鋼線表面のOH基は、潤滑剤等で覆い隠されにくく、金属鋼線表面のOH基とシランカップリング剤のシラノール基との化学結合箇所が多くなり、接着強度が高まるものと考えられる。
金属鋼線の表面に付着している潤滑剤の量(付着量)は、1.0atom%以下であることが好ましく、前記表面に全く付着していないこと(0atom%)がより好ましい。また、金属鋼線の表面に付着している防錆剤の量(付着量)は、2.0atom%以下であることが好ましく、前記表面に全く付着していないこと(0atom%)がより好ましい。
樹脂−金属複合材料における金属鋼線の潤滑剤及び防錆剤の付着量は、金属鋼線のXPS(X線光電子分光)により検出することができる。
ここで、金属鋼線の表面に付着している潤滑剤は、金属鋼線の伸線工程で、金属鋼線とダイスとの摩擦低減のために用いられる物質である。
潤滑剤は、一般に、グラファイト、二硫化モリブデン、リン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;シリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス;ミツロウのごとき動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物系、石油系のワックス、及びそれらの変性物などが用いられる。
また、防錆剤は、金属鋼線が錆びないようにするために金属鋼線表面に付着する物質であり、一般に、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、ベンゾトリアゾールなどが用いられる。
なお、金属鋼線の表面に付着している物質が、潤滑剤としても機能し得る防錆剤または防錆剤としても機能し得る潤滑剤である場合には、かかる物質の金属鋼線表面上の付着量が3.0atom%未満であればよく、前記表面に全く付着していないことが最も好ましい。
〔金属鋼線〕
本発明において、金属鋼線とは、鋼、すなわち、鉄を主成分(金属鋼線の全質量に対する鉄の質量が50質量%を超える)とする線状の金属をいい、鉄のみで構成されていてもよいし、鉄以外の、例えば、亜鉛、銅、アルミニウム、スズ等の金属を含んでいてもよい。
金属鋼線は、表面がメッキ処理されていなくてもよいし、表面がメッキ処理されていてもよい。
金属鋼線の表面をメッキ処理されたメッキ層とする場合、メッキ処理の種類としては、特に制限されず、例えば、亜鉛メッキ、銅メッキ、ブロンズメッキ、真鍮メッキ等が挙げられる。金属鋼線の表面がメッキ層であるとは、金属鋼線の表面に鉄が露出しているのではなく、鉄線(鉄100質量%)または鉄を含む金属線に対して、亜鉛メッキ、銅メッキ、ブロンズメッキ、真鍮メッキ等のメッキ処理が施されていることをいう。なお、鉄線に対してメッキが施されている場合、メッキ層の表面を有する鉄線を金属鋼線という。また、鉄を含む金属線に対してメッキが施されている場合、メッキ層の表面を有する当該金属線を金属鋼線という。
メッキは、上記の中でも真鍮メッキが好ましい。なお、真鍮メッキは、ブラスメッキとも称し、通常、銅と亜鉛との割合(銅:亜鉛)が、質量基準で60〜70:30〜40である。また、メッキ層の層厚は、一般に100nm〜300nmである。
金属鋼線は、線径が0.1mm〜5.5mmであることが好ましい。ここで、金属鋼線の線径とは、金属鋼線の軸線に対して垂直の断面形状における最長の長さをいう。金属鋼線の軸線に対して垂直の断面形状は特に制限されず、楕円状、矩形状、三角形状、多角形状等であってもよいが、一般に、円状である。
タイヤのカーカスやベルトに用いられるスチールコードは、スチールコードを構成するフィラメントの素線の軸線に対して垂直の断面形状が、一般に円状であり、該断面形状の線径が0.1mm〜0.5mmである。また、ビードコアは、ビードコアの軸線に対して垂直の断面形状が、一般に円状であり、該断面形状の線径が1mm〜1.5mmである。
従って、本発明における金属鋼線の線径を上記範囲とすることで、本発明における金属鋼線をタイヤに適用し易くなる。
金属鋼線の線径は、0.15mm〜5.26mmであることがより好ましい。
〔樹脂材料層〕
本発明の樹脂−金属複合材料を構成する樹脂材料層は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、及び熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1種の樹脂材料を含有する。
なお、熱可塑性樹脂とは、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり、かつ、ゴム状弾性を有しない高分子化合物をいい、熱可塑性エラストマーとは、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり、かつ、ゴム状弾性を有する高分子化合物をいう。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。樹脂材料層は、熱硬化性樹脂を1種のみ含んでも良いし、複数種の混合を含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。樹脂材料層は、熱可塑性樹脂を1種のみ含んでも良いし、複数種の混合を含んでいてもよい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。樹脂材料層は、熱可塑性エラストマーを1種のみ含んでも良いし、複数種の混合を含んでいてもよい。
樹脂材料層は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、または、熱可塑性エラストマーのいずれか1種のみを含むものであってもよいし、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、及び熱可塑性エラストマーのうちの2種または3種を含むものであってもよい。
樹脂−金属複合材料をタイヤに適用する場合、樹脂材料としては、走行時の弾性と製造時の成形性等を考慮すると熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
これらの樹脂材料としては、例えば、ISO75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78°C以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張降伏伸びが10%以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸び(JIS K7113)が50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130°C以上のものを用いることができる。
樹脂材料層は、樹脂材料以外に、無機フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加物を含んでいてもよく、前記添加物の樹脂材料層中の含有量は、樹脂材料層全質量に対して20質量%以下である。
樹脂−金属複合材料における樹脂材料層の層厚は、金属鋼線の線径により異なるが、通常、0.1mm〜5.0mmである。
例えば、金属撚り線の直径が、0.5mm〜2.0mmである場合、樹脂被覆した金属撚り線の外径は、0.6mm〜7.0mmであることが好ましく、2.0mm〜3.0mmであることがより好ましい。
また、金属鋼線の線径が、0.1mm〜5.5mmである場合、樹脂材料層の層厚は、0.1mm〜5.0mmであることが好ましく、0.5mm〜2.5mmであることがより好ましい。
〔シランカップリング剤〕
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤の樹脂−金属複合材料中の含有量は、金属鋼線表面1mあたり、1.66mg〜4.52mgであることが好ましく、1.79mg〜3.72mgであることがより好ましい。
本発明の樹脂−金属複合材料は、既述の構成を有することで、樹脂材料と金属鋼線との接着性に優れている。
樹脂材料と金属鋼線との接着性は、例えば、樹脂−金属複合材料の樹脂材料層を固定すると共に、金属鋼線を、金属鋼線の長さ方向に引っ張る金属鋼線の引き抜き試験により評価することができる。引抜試験には、例えば、株式会社島津製作所性のオートグラフAG−5kNXを用いることができる。
また、樹脂材料と金属鋼線との接着性は、樹脂材料と金属鋼線との接着面積にも依存する。
図2に、本発明の樹脂−金属複合材料の引抜力−変位曲線の一例を示す。図2は、横軸が金属鋼線の引き抜き変位〔mm〕であり、縦軸が引抜力〔N〕である。図2には、曲線が4つ示され、それぞれ、樹脂材料中への金属鋼線の埋め込み長さが10mm、20mm、40mm、及び60mmである樹脂−金属複合材料の引抜力−変位曲線である。図2では、埋め込み長さが長くなるにつれて、大きな引抜力を要している。
既述の樹脂−金属複合材料は、潤滑剤の付着量が1.5atom%以下であり、かつ、防錆剤の付着量が3.0atom%未満である表面を有する金属鋼線の表面上に、シランカップリング剤を介して形成された樹脂材料層が形成可能であれば、どのような方法で製造してもよい。
例えば、潤滑剤や防錆剤が付着した金属鋼線の表面を、洗剤で洗浄したり、ヤスリで研磨する等して、潤滑剤及び防錆剤を除去してから、金属鋼線表面に、シランカップリング剤を付与し、次いで樹脂材料を付与すればよい。樹脂材料は、シランカップリング剤が付与された金属鋼線表面に、流動性のある樹脂材料を塗布したり、シランカップリング剤が付与された金属鋼線を、流動性のある樹脂材料に浸漬して、樹脂材料層としてもよいし、射出成形や押出成形により樹脂材料を付与して樹脂材料層としてもよい。
しかしながら、樹脂−金属複合材料を、例えばタイヤに適用する場合、金属鋼線と樹脂材料との接着性が大きいことのみならず、金属鋼線の耐久性も要求される。このように、金属鋼線と樹脂材料との接着性が大きく、さらに金属鋼線の耐久性にも優れた樹脂−金属複合材料を製造するには、後述する本発明の樹脂−金属複合材料の製造方法によることがより好ましい。
<樹脂−金属複合材料の製造方法>
本発明の樹脂−金属複合材料の製造方法は、金属鋼線の表面に、少なくとも酸を含むpH7未満の処理液を付与する表面処理工程と、表面処理された前記金属鋼線の表面にシランカップリング剤を付与した後、樹脂材料を付与する樹脂材料層形成工程と、を有する。
さらに、処理液を付与した金属鋼線を水で洗浄する洗浄工程、金属鋼線の表面にシランカップリング剤を付与した後、樹脂材料を付与する前に金属鋼線を焼き付ける焼き付け工程等を含んでいてもよい。
但し、本発明においては、処理液のpHを5以上とし、また、樹脂材料として熱可塑性エラストマーを適用する。
なお、本発明の樹脂−金属複合材料の製造方法で用いられる金属鋼線及び樹脂材料は、既述の金属鋼線及び樹脂材料が用いられ、金属鋼線の表面は、既述の真鍮メッキ等でメッキ処理されたメッキ層であってもよい。
金属鋼線と樹脂材料との接着性は、既述のように、金属鋼線の表面上の潤滑剤や防錆剤の付着量が既述の量以下であることで向上すると考えられる。したがって、金属鋼線と樹脂材料とを、シランカップリング剤を用いて接着する前に、金属鋼線の表面から潤滑剤及び防錆剤を除去することが重要である。しかしながら、潤滑剤や防錆剤が付着した金属鋼線に、例えば、アセトンに代表される有機溶剤を用いて洗浄しても、潤滑剤及び防錆剤を十分に除去することはできず、アセトンは揮発性が高く引火性があることから、作業環境上も好ましくなかった。また、潤滑剤や防錆剤が付着した金属鋼線を、洗剤で洗浄して除去するには時間がかかり、生産効率に欠ける。
金属鋼線と樹脂材料とは、金属鋼線表面に形成される酸化膜が物理的又は化学的に除去され、金属鋼線の金属が表面に露出することで、接着性が向上すると考えられる。
金属鋼線の表面を紙やすり等で研磨すると、アンカー効果により樹脂材料と金属鋼線との接着性を増すことができるが、金属鋼線が摩耗し又は腐食することにより、金属鋼線の耐久性を損ない、ひいては樹脂−金属複合材料の耐久性を損なう場合がある。
特に、金属鋼線の表面が真鍮メッキ等のメッキ層である場合、メッキ層が摩耗し、あるいはメッキ層が削り取られると、下地の鉄が金属鋼線の表面に露出し易くなるため、金属鋼線が腐食し易くなると考えられる。従って、金属鋼線の表面がメッキ層である場合には、特に、メッキ層が、過度に摩耗し、あるいは除去されることのないように、金属鋼線表面に付着する潤滑剤及び防錆剤を除去することが好ましい。
このように、金属鋼線の耐久性を損ないようにしながら、金属鋼線表面の潤滑剤及び防錆剤を除去した上で(表面処理工程)、シランカップリング剤を用いて金属鋼線と樹脂材料とを接着することで(樹脂材料層形成工程)、樹脂−金属複合材料を製造する。
〔表面処理工程〕
表面処理工程は、金属鋼線の表面に、少なくとも酸を含むpH7未満の処理液を付与する工程である。
金属鋼線の表面に、少なくとも酸を含むpH7未満の処理液を付与する方法としては、金属鋼線に処理液を吹きかける方法、処理液に金属鋼線を浸漬する方法等が挙げられる。中でも、処理液に金属鋼線を浸漬する方法が好ましい。
表面処理工程は、複数回行なってもよい。例えば、金属鋼線を処理液に浸漬した後、水等で洗浄し、再度、処理液に浸漬してもよい。
表面処理工程で用いられる処理液は、少なくとも酸を含むpH7未満の液体である。処理液がpH7未満であることで、樹脂材料と金属鋼線との接着性を向上する。処理液は、金属構成の腐食を抑制する観点からpH5以上であることが好ましい。さらには、処理液は、pH5.5〜pH6.7であることがより好ましい。
酸としては、特に制限されず、塩酸や硝酸等の強酸を用いてもよいが、金属鋼線の耐久性の観点から、酢酸、シュウ酸、クエン酸、ギ酸等の弱酸を用いることが好ましく、中でも、酢酸が好ましい。また、酸は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
処理液は、本発明の効果を損なわない限度において、1種または2種以上の無機塩や、アルコール、水等を混合してもよい。
樹脂−金属複合材料を連続的に製造する場合や、金属鋼線を処理液に浸漬した後、水等で洗浄し、再度、処理液に浸漬する場合、処理液の酸が薄まり、表面処理の効果が弱まる可能性がある。また、処理液の酸濃度が変化すると、金属鋼線によって表面の潤滑剤や防錆剤の付着量がことなることとなり、一定の品質の樹脂−金属複合材料を得難い。そのため、処理液は、緩衝液であることが好ましい。
緩衝液としては、pH3以上pH7未満の範囲に緩衝能を有するものが好ましく、pH5.5〜pH6.7の範囲に緩衝能を有する緩衝液がより好ましい。
緩衝液は、具体的には、シュウ酸塩標準溶液、酒石酸塩標準溶液、フタル酸塩標準溶液、塩酸−塩化カリウム緩衝液、フタル酸水素カリウム−塩酸緩衝液、フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、グリシン・塩化ナトリウム−塩酸緩衝液、クエン酸ナトリウム−塩酸緩衝液、クエン酸ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、クエン酸カリウム−クエン酸、クエン酸二水素カリウム−塩酸緩衝液、クエン酸二水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、コハク酸−四ホウ酸ナトリウム緩衝液、クエン酸二水素カリウム−四ホウ酸ナトリウム緩衝液、酒石酸−酒石酸ナトリウム緩衝液、乳酸−乳酸ナトリウム緩衝液、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液などがある。
中でも、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液が好ましい。
処理液は、既述の酸をそのまま用いてもよいし、酸を水で希釈してpHを調整したり、必要に応じて無機塩やアルコール等を添加して調製してもよい。また、市販の酸や緩衝液を用いてもよい。
金属鋼線に処理液を付与する時間(表面処理時間)は、処理液のpHにより適宜変更すればよく、通常、1秒〜30秒の範囲である。
処理液のpHが小さい場合、例えば強酸を含む処理液を用いる場合、表面処理時間は短くて済む。処理液のpHが大きい場合、例えば弱酸を含む処理液を用いる場合、表面処理時間は長くすることができる。換言すれば、処理液のpHが大きな弱酸性の処理液を用いる場合、表面処理時間を調整することで、金属鋼線の表面処理度合いの加減を変え易い。
また、処理液の温度は、10℃〜30℃であることが好ましい。
例えば、pH5.5の処理液(25℃)を用いる場合、表面処理時間は、2秒〜15秒であることが好ましく、8秒〜12秒であることがより好ましい。pH6.8の処理液(25℃)を用いる場合、表面処理時間は、5秒〜20秒であることが好ましく、10秒〜15秒であることがより好ましい。
−洗浄工程−
本発明の樹脂−金属複合材料の製造方法は、さらに、処理液を付与した金属鋼線を水で洗浄する洗浄工程を含んでいることが好ましい。
処理液で表面処理された金属鋼線は、処理液が付着している限り腐食が進むため、金属鋼線の耐久性の観点から、処理液を付与した金属鋼線を水で洗浄することが好ましい。水は、イオン交換水であっても水道水であってもよいが、イオン交換水であることが好ましい。
〔樹脂材料層形成工程〕
樹脂材料層形成工程は、表面処理された前記金属鋼線の表面にシランカップリング剤を付与した後、樹脂材料を付与する工程である。
pH7未満の処理液が付与されることにより表面処理された金属鋼線に、樹脂材料との接着性を高める接着能を有するシランカップリング剤を付与する。シランカップリング剤の具体例は、既述の化合物を用いればよい。
シランカップリング剤の金属鋼線への付与方法は、シランカップリング剤を、金属鋼線に塗布または、シランカップリング剤中に金属鋼線を浸漬する方法が挙げられる。
シランカップリング剤は、そのまま用いてもよいし、溶剤で薄めて用いてもよいが、接着性の観点から、シランカップリング剤を、水又は有機溶剤を含む溶媒に溶解し、シランカップリング剤溶液として用いることが好ましい。すなわち、シランカップリング剤溶液を金属鋼線に塗布したり、シランカップリング剤溶液中に金属鋼線を浸漬すればよい。有機溶剤としては、エタノール等のアルコールが挙げられる。有機溶剤を含む溶媒には、既述の緩衝液や水を含んでいてもよい。
シランカップリング剤は、接着性の観点から、金属鋼線表面1mあたり、1.79g〜4.52gとなるように金属鋼線表面に付与することが好ましく、1.66g〜3.72gであることがより好ましい。
シランカップリング剤溶液を用いる場合は、シランカップリング剤溶液中のシランカップリング剤の含有量を、シランカップリング剤溶液の全質量に対し、0.2質量%〜2.0質量%とすることで、上記付与量とすることができる。
次いで、シランカップリング剤が付与された金属鋼線表面に、樹脂材料を付与する。樹脂材料は、既述の樹脂材料を用いればよく、中でも熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
金属鋼線表面への樹脂材料の付与方法は、シランカップリング剤が付与された金属表面に流動性を有する樹脂材料を塗布する方法、金属鋼線を収めた金型に、熱溶融した樹脂材料を流し込み冷却する射出成形による方法、押出成形により樹脂材料を金属鋼線に被覆する方法等を用いることができる。中でも、生産効率の観点から射出成形または押出成形によることが好ましい。
−焼き付け工程−
既述のように、本発明の樹脂−金属複合材料の製造方法は、表面処理工程と樹脂材料層形成工程のほかに、焼き付け工程を含んでいてもよい。
焼き付け工程は、金属鋼線の表面にシランカップリング剤を付与した後、樹脂材料を付与する前に金属鋼線を焼き付ける工程である。
シランカップリング剤が付与された金属鋼線を焼き付けることで、シランカップリング剤を金属鋼線に固着させ、金属鋼線表面への樹脂材料を付与したときに、樹脂材料と金属鋼線との接着性を高めることができる。
焼付け時間は5分〜10分であることが好ましく、焼き付け温度は110℃以上であることが好ましい。
上記の工程を経て製造された樹脂−金属複合材料は、樹脂材料と金属鋼線との接着性に優れ、また、金属鋼線の耐久性も損ない難いため、タイヤへの適用に好適である。
<タイヤ>
本発明の樹脂−金属複合材料及び、本発明の樹脂−金属複合材料の製造方法により製造された樹脂−金属複合材料は、既述のとおり、タイヤへの適用に好適である。
樹脂−金属複合材料を用いて構成されるタイヤの構成例を、図1を用いて説明する。
図1(A)に示すように、タイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。なお、以下の説明において、「幅方向」と記載した場合は、タイヤケース17及びタイヤ10の幅方向を指し、「周方向」と記載した場合は、タイヤケース17及びタイヤ10の周方向を指す。
図1(A)及び(B)に示すように、タイヤ10は、リム20のビードシート21及びリムフランジ22に接触する一対のビード部12、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16からなる環状のタイヤケース17(タイヤ骨格部材の一例)を備えている。
タイヤケース17は、単一の樹脂材料28で形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと同様に、タイヤケース17の各部位毎(ビード部12、サイド部14、クラウン部16など)に異なる特徴を有する樹脂材料を用いてもよい。
また、タイヤケース17(例えば、ビード部12、サイド部14、クラウン部16等)に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、補強材でタイヤケース17を補強してもよい。
ビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、金属鋼線(スチールコード)からなる円環状のビードコア18が埋設されている。ビード部12は、金属鋼線であるビードコア18がシランカップリング剤(図示せず)を介して形成された樹脂材料28の樹脂材料層を含み、本発明の樹脂−金属複合材料で構成されている。
また、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題なければ、ビードコア18を省略してもよい。
また、図1(B)に示すように、ビード部12のリム20との接触部分、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分にタイヤケース17を形成する樹脂材料よりも軟質である軟質材料からなる円環状のシール層24が形成されている。このシール層24はビードシート21と接触する部分にも形成されていてもよい。
シール層24を形成する上記軟質材料としては、弾性体の一例としてのゴムが好ましく、特に従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、タイヤケース17を形成する樹脂材料のみでリム20との間のシール性(気密性)が確保できれば、シール層24を省略してもよい。また、上記軟質材料としては、タイヤケース17を形成する樹脂材料よりも軟質な他の種類の樹脂材料を用いてもよい。
図1に示すように、クラウン部16には、金属鋼線のコード26が周方向に巻回されている。金属鋼線のコード26は、タイヤケース17の外周部を構成し、クラウン部16の周方向剛性を補強している。クラウン部16は、金属鋼線のコード26がシランカップリング剤(図示せず)を介して形成された樹脂材料28の樹脂材料層を含み、本発明の樹脂−金属複合材料で構成されている。
ビードコア18と金属鋼線のコード26とを、同じ金型に収納して溶融した樹脂材料28を射出成形することにより、ビード部12、サイド部14、及びクラウン部16が備わった樹脂−金属複合材料のタイヤケース17を製造することができる。
タイヤケース17は、製造の便宜上、ケース分割体17Aを溶接一体化して製造してもよい。
金属鋼線のコード26は、金属繊維のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)などを用いるとよい。
トレッド30に用いるゴムは、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。また、トレッド30の代わりに、タイヤケース17を形成する樹脂材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の樹脂材料で形成したトレッドを用いてもよい。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターン(図示省略)が形成されている。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
<樹脂−金属複合材料の製造>
(材料の用意)
金属鋼線、樹脂材料、及びシランカップリング剤として、次のものを用意した。
・金属鋼線
真鍮メッキスチールワイヤ(強力1124N、伸度3%、メッキ層の銅/亜鉛質量比=63/37、線径0.8mm)
・樹脂材料
宇部興産株式会社製、XPA9055X1(ナイロンエラストマー)
・シランカップリング剤
信越化学工業株式会社製、KBE−903(アミノ系シランカップリング剤;3−アミノプロピルトリエトキシシラン)
(シランカップリング剤溶液の調製)
KBE−903(信越化学工業株式会社製)をエタノールに溶解し、0.5質量%のシランカップリング剤溶液を調製した。
(処理液の調製)
酢酸ナトリウムと酢酸と水とを混合し、pH6.82の酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液を調製し、これを処理液とした。
(樹脂−金属複合材料の製造)
用意した金属鋼線を、調製した処理液中に12秒間(表面処理時間)浸漬した(表面処理工程)。その後、金属鋼線を流水で洗浄し、風乾した(洗浄工程)。次いで、シランカップリング剤溶液に浸漬し、110℃で5分間焼き付けた後、金属鋼線を、円筒状の金型内に固定すると共に、金型温度を50℃に加熱し、溶融した樹脂材料を投入して射出成形した(樹脂材料層形成工程)。なお、射出成形機として、ファナック株式会社製、ロボショットα−15cを用い、ホッパー下の温度は40℃、ノズルの温度は210℃、シリンダーの温度は215〜220とした。
射出成形後、実施例1の樹脂−金属複合材料を得た。
なお、金属鋼線は、直径10mmの円筒状樹脂材料中に、直線状に60mm埋め込まれた。
(接着性評価)
得られた実施例1の樹脂−金属複合材料について、樹脂−金属複合材料の樹脂材料層を固定すると共に、金属鋼線を、金属鋼線の長さ方向に引っ張る金属鋼線の引き抜き試験により、樹脂材料と金属鋼線との接着性を評価した。
引き抜き試験は、株式会社島津製作所性のオートグラフAG−5kNXを用い、試験温度23℃、引っ張り速度5mm/minとし、要した最大の力を引抜力〔N〕として評価した。評価結果を表1に示した。
〔実施例2〜実施例6、及び比較例1〜2〕
実施例1の樹脂−金属複合材料の製造において、処理液のpH及び表面処理時間を表1に示すように変更し、または表面処理を行なわなかったほかは、実施例1と同様にして、実施例2〜実施例6、及び比較例1〜比較例2の樹脂−金属複合材料を製造した。なお、比較例2の樹脂−金属複合材料の製造においては、金属鋼線の表面処理を行なうと共に、金属鋼線の表面にアセトンをかけて脱脂して樹脂−金属複合材料を製造した。
さらに、実施例2〜実施例6、及び比較例1〜2の樹脂−金属複合材料を、実施例1の樹脂−金属複合材料と同様にして、金属鋼線の引き抜き試験により樹脂材料と金属鋼線との接着性を評価した。評価結果を表1に示す。
〔比較例3〕
実施例1の樹脂−金属複合材料の製造において、処理液による表面処理に代えて、金属鋼線を市販の洗剤(クリームクレンザー ジフ、ユニリーバ・ジャパン株式会社製)で洗浄したほかは、実施例1と同様にして、比較例3の樹脂−金属複合材料を製造した。さらに、比較例3の樹脂−金属複合材料を、実施例1の樹脂−金属複合材料と同様にして、金属鋼線の引き抜き試験により樹脂材料と金属鋼線との接着性を評価した。評価結果を表1に示す。
(防錆剤及び潤滑剤の付着量検出)
実施例1〜実施例6及び比較例1〜比較例3の樹脂−金属複合材料について、XPS装置(アルバック・ファイ社製、Q2000)を用いて、各樹脂−金属複合材料の製造に用いられた金属鋼線表面の防錆剤及び潤滑剤の付着量を検出した。検出量を表1に示す。
〔実施例7及び実施例8〕
<表面処理時間の効果>
pH6.5の処理液を用いた実施例3の樹脂−金属複合材料の製造において、表面処理時間を、6秒、及び24秒に変更したほかは、実施例3と同様にして、実施例7及び実施例8の樹脂−金属複合材料を製造した。
実施例7及び実施例8の樹脂−金属複合材料を、実施例1の樹脂−金属複合材料と同様にして、金属鋼線の引き抜き試験により樹脂材料と金属鋼線との接着性を評価した。評価結果を図3に示す。図3には、横軸に金属鋼線の処理液への浸漬時間(表面処理時間)、縦軸に引抜力をとった実施例3、実施例7及び実施例8の樹脂−金属複合材料の接着性評価で得られた引抜力がプロットされた曲線(A)が示されている。図3から、表面処理時間が長くなるほど、引抜力が大きく、接着性が上がることがわかった。
〔実施例9〜実施例12、及び比較例4〜比較例7〕
<埋め込み長さの効果>
実施例1の樹脂−金属複合材料の製造において、シランカップリング剤を信越化学工業株式会社製、KBM−603(アミノ系シランカップリング剤;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)に変更し、円筒状樹脂材料中の金属鋼線の埋め込み長さを、10mm、20mm、40mm、及び60mmに変更したほかは、実施例1と同様にして、実施例9〜実施例12の樹脂−金属複合材料を製造した。
実施例9〜実施例12の樹脂−金属複合材料について、実施例1の樹脂−金属複合材料と同様にして、金属鋼線の引き抜き試験を行い、金属鋼線の引き抜き変位(樹脂材料から抜けた長さ)に対する引抜力の大きさの変化を評価した。評価結果を図4に示す。図4には、横軸に金属鋼線の引き抜き変位〔mm〕、縦軸に引抜力〔N〕をとった曲線が示されている。曲線は4つ示され、埋め込み長さ10mmが実施例9、埋め込み長さ20mmが実施例10、埋め込み長さ40mmが実施例11、埋め込み長さ60mmが実施例12である。埋め込み長さが長くなるにつれて、大きな引抜力を要することがわかった。
最後に、実施例1の樹脂−金属複合材料の製造において、表面処理を行なわず、円筒状樹脂材料中の金属鋼線の埋め込み長さを、10mm、20mm、40mm、及び60mmに変更したほかは、実施例1と同様にして、比較例4〜比較例7の樹脂−金属複合材料を製造した。
比較例4〜比較例7の樹脂−金属複合材料について、実施例9〜実施例12の樹脂−金属複合材料と同様にして、金属鋼線の引き抜き変位(樹脂材料から抜けた長さ)に対する引抜力の大きさの変化を評価した。評価結果を図5に示す。縦軸、横軸の詳細は、図4と同じである。曲線は4つ示され、埋め込み長さ10mmが比較例4、埋め込み長さ20mmが比較例5、埋め込み長さ40mmが比較例6、埋め込み長さ60mmが比較例7である。
〔実施例13〕
<タイヤの製造>
金属鋼線として、線径φ1.8mm及び線径φ1.4mmからなる真鍮メッキスチール製のビードコア、及び直径1.13mm真鍮メッキスチール製の撚り線コードを用意した。
実施例1の樹脂−金属複合材料の製造において、金属鋼線を、用意したビードコアとコードに変更し、射出成形の金型を、図1に示すタイヤケースのケース分割体17Aの型に適合した形状の金型に変更したほかは、同様にして、タイヤケースのケース分割体を製造した。タイヤケースのケース分割体を2つ用意し、張り合わせて一体化した後、タイヤケースのクラウン部にトレッドゴムを溶融接着してタイヤを製造した。
10 タイヤ
17 タイヤケース
26 金属鋼線
28 樹脂材料(樹脂材料層)
30 トレッド

Claims (7)

  1. 金属鋼線の表面に、少なくとも酸を含むpH5以上7未満の処理液を付与する表面処理工程と、
    表面処理された前記金属鋼線の表面にシランカップリング剤を付与した後、樹脂材料として熱可塑性エラストマーを付与する樹脂材料層形成工程と、
    を有する樹脂−金属複合材料の製造方法。
  2. 前記酸は、酢酸、シュウ酸、クエン酸、及びギ酸から選択される少なくとも1種の酸である請求項1に記載の樹脂−金属複合材料の製造方法。
  3. 前記金属鋼線の表面は、亜鉛メッキ、銅メッキ、ブロンズメッキ、または真鍮メッキでメッキ処理されたメッキ層である請求項1又は請求項に記載の樹脂−金属複合材料の製造方法。
  4. 前記金属鋼線は、線径が0.1mm〜5.5mmである請求項〜請求項のいずれか1項に記載の樹脂−金属複合材料の製造方法。
  5. 前記処理液は、緩衝液である請求項〜請求項のいずれか1項に記載の樹脂−金属複合材料の製造方法。
  6. 前記酸は、酢酸である請求項〜請求項のいずれか1項に記載の樹脂−金属複合材料の製造方法。
  7. 前記樹脂材料層形成工程は、前記表面処理工程により表面処理され、かつ前記シランカップリング剤が付与された前記金属鋼線の表面に対して、射出成形または押出成形により前記樹脂材料を付与する請求項〜請求項のいずれか1項に記載の樹脂−金属複合材料の製造方法。
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