JP2009045864A - ゴム付き繊維材料の製造方法及び空気入りタイヤ - Google Patents

ゴム付き繊維材料の製造方法及び空気入りタイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)のような高コストの繊維コードに対し、小ロット生産にも対応可能であり、且つスクラップの発生を最小化し経済性にも優れたゴム付き繊維材料の製造方法及び該ゴム付き材料繊維材料を使用した空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】クリールから繊維コードを引き出し、コードガイドに通した後に該繊維コードにコーティングゴムをゴム引きし、その後にダイから押し出し、最後に加速電圧200kV以上600kV未満、照射線量10〜100kGyの条件で電子線を照射して予備加硫してなる。前記繊維コードはポリエチレン−2,6−ナフタレートのフィラメント束を2本撚り合わせてなり、前記フィラメント束の繊度は500〜1400dtexである。また、前記繊維コードは撚り係数Rが0.35〜0.60であり、前記繊維コードと前記コーティングゴムとを所定の接着剤組成物で接着する。
【選択図】図4

Description

本発明は、小ロット生産にも対応可能であり、且つスクラップの発生を最小化し経済性にも優れたゴム付き繊維材料の製造方法及び該ゴム付き材料繊維材料を使用した空気入りタイヤを提供することに関する。
近年の車両の高級化、高品質化に伴い、特に乗用車においては車両の低振動化、乗心地性の改良が急激に進みつつある。すなわち、乗心地の改良と共に、特に社内に生じるノイズの低減が望まれており、かかるノイズの一つとして、走行中のタイヤが路面の凹凸をひろい、その振動が伝達されて社内の空気を振動させることに基づいて発生するいわゆるロードノイズの改良要求は極めて高くなっている。
ロードノイズ低減には様々な手法が考案されているが、その一つとして剛性の高い繊維であるポリエチレン−2,6−ナフタレート等からなる繊維コードをゴム引きしてゴム付き繊維材料を製造し、これを交差ベルト層の外周側にらせん状に巻き付けてベルト補強層とすることによってベルト部の振動を抑える手法が知られている。一般に、繊維コードは繊度が大きいほど剛性が高くロードノイズ低減効果が大きいことから1670dtexのフィラメント束を2本撚り合わせてベルト補強層を構成することが多い。
該ベルト補強層は、一般的にはポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる経糸と、繊度数100dtexの再生セルロース等からなる緯糸を製織して数十cm〜数mのスダレ状とし、このスダレ織物をレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス等を重合させてなる接着剤組成物で処理し、ゴム引きした上で幅数mm〜十数mmにカットし、リボン状の部材に加工してからタイヤ成形時にベルト上にらせん巻きして形成される。
しかしながら、ポリエチレン−2,6−ナフタレートは、そのコストの高さからタイヤへの使用は限定的であり、小ロット生産となることが多い。前述したスダレ織物からのゴム付き繊維材料の製造方法では幅数十cm〜数mのスダレ状織物を幅数mm〜十数mmにカットするため、一度に大量のリボン状のゴム付き繊維材料が生産され、生産性に優れる反面、少ロット生産への対応が困難である。上記方法で生産されたゴム付き繊維材料を少ロットのタイヤ生産に使用し、残りをスクラップとしてしまうと、元々コストの高いポリエチレン−2,6−ナフタレートを使用したゴム付き繊維材料の経済性が悪化する。また、スダレ織物は緯糸の打込みの密度の差等により、その部位によって剛性に差が生じる。そのため、該スダレ織物をカットして製造したリボン状のゴム付き繊維材料間にも剛性の差が生じ、結果として該ゴム付き繊維材料をベルト補強層として使用した空気入りタイヤにも剛性の差が生じてしまう問題もある。
従って、小ロット生産に対応可能であり、且つスクラップの発生を最小化し経済性に優れ、製造した製品間に剛性の差を生じないようなゴム付き繊維材料の製造方法が必要とされていた。
本発明者が上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等の高剛性の繊維コードをスダレ状に加工することなく、単線で接着処理をし、コードガイドを通して引き揃えて数mm〜十数mmの幅とし、ギヤポンプにてコーティングゴムでゴム引きし、ダイを通してゲージを調整し、これを巻き取る事で、少ロット生産にも対応可能で製品間に剛性の差を生じない、数mm〜十数mmの幅のリボン状のゴム付き繊維材料を生産する事を可能にし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のゴム付き繊維材料の製造方法は、クリールから繊維コードを引き出し、コードガイドに通した後に該繊維コードをコーティングゴムでゴム引きし、その後にダイから押し出すことを特徴とする。
また、本発明のゴム付き繊維材料の製造方法は、前記ゴム付き繊維材料に、更に加速電圧200kV以上600kV未満、照射線量10〜100kGyの条件で電子線を照射して予備加硫することが好ましい。
本発明のゴム付き繊維材料の製造方法においては、前記繊維コードが、フィラメント束を2本撚り合わせるてなることが好適である。
また、本発明のゴム付き繊維材料の製造方法の好適例においては、前記フィラメント束が、ポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる。
ここで、本発明のゴム付き繊維材料の製造方法においては、前記フィラメント束の一本あたりの繊度が500〜1400dtexであることが好適である。
本発明のゴム付き繊維材料の製造方法においては、前記繊維コードは、下記式(I):
R=N×(0.125×D/ρ)1/2×10−3 ・・・ (I)
(式中、N:コードの撚り数(回/10cm)、D:コードの総表示デシテックス数(dtex)、ρ:コードの比重(g/cm))で定義される撚り係数Rが0.35〜0.60であることが好ましい。
また、本発明のゴム付き繊維材料の製造方法においては、前記繊維コードと前記コーティングゴムとが、
ペンダント基に架橋性官能基を含有し、アリル位に水素を有する炭素−炭素二重結合を主鎖に実質的に含有しない熱可塑性高分子重合体(A)と水溶性高分子(B)と極性官能基を有する芳香族類をメチレン結合した構造を含有する化合物(C)を含む接着剤組成物(1)、
前記熱可塑性高分子重合体(A)と、芳香族類をメチレン結合した構造を含む有機ポリイソシアネート化合物(α)、複数の活性水素を有する化合物(β)、及びイソシアネート基の熱解離性ブロック化剤(γ)を反応させて得られる水性ウレタン化合物(D)を含む接着剤組成物(2)、又は
前記水溶性高分子(B)と前記水溶性ウレタン化合物(D)とを含む接着剤組成物(3)で接着されていることが好ましい。
本発明のゴム付き繊維材料の製造方法の好適例においては、前記コーティングゴムは、加硫後の100%伸長時モジュラス(室温)が2.0MPa〜4.0MPaである。
ここで、本発明のゴム付き繊維材料の製造方法においては、前記コーティングゴムは、加硫後の反発弾性率が60%以上であることが好ましい。
また、本発明タイヤは、一対のビート部及び一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるトレッド部とを有し、前記一対のビード部間にトロイド状に延在させたカーカスと、該カーカスのクラウン部のタイヤ半径方向外方に配置したベルトと、該ベルトのタイヤ半径方向外方に配置したベルト補強層とを具える、該ベルト補強層が上記の方法により製造されたゴム付き繊維材料を実質的にタイヤ周方向に対して平行になる様にらせん状に巻き付けてなることを特徴とする。
本発明によれば、小ロット生産にも対応可能であり、且つスクラップの発生を最小化し経済性にも優れているゴム付き繊維材料の製造方法が提供できる。
以下に、図を参照しながら、本発明の空気入りタイヤの製造方法を詳細に説明する。図1は、本発明のゴム付き繊維材料の製造方法の一例である。本発明のゴム付き繊維材料の製造方法は、クリール1から繊維コードを引き出す工程1と、引き出した繊維コードをコードガイド2に通すことにより繊維コードを数mm〜十数mmの幅に引き揃える工程2(図2参照)と、それからギヤポンプ3で繊維コードの上下にコーティングゴムを押し出して繊維コードをゴム引きする工程3と、続いてダイ4から押し出すことによりゴム付き繊維材料を所望の形状とする工程4(図3参照)と、巻き取り部6にて製造したゴム付き繊維材料を巻き取る工程6と、を有することを特徴とする。図1では、クリール1から10本の繊維コードを引き出してコーティングゴムでゴム引きした後、これらの5本ずつをダイ4から押し出して成型しているが、繊維コードの本数、並びにコードガイド2及びダイ4のサイズ等は特に限定されない。本発明のゴム付き繊維材料の製造方法は少ロットの生産にも対応可能であり、且つスクラップの発生を最小化出来るため経済性にも優れている。また、本発明の方法により生産されるゴム付き繊維材料は、従来の方法により製造したゴム付き繊維材料とは異なり、全て同じ断面を有するため製品間に剛性の差が生じない。そのため、本発明のゴム付き繊維材料を使用して製造したベルト補強層を具える空気入りタイヤは、製品間にベルト補強層の剛性の差が生じない。
しかしながら、上記方法では押出直後のコーティングゴムは軟らかく、そのままタイヤを成形して加硫を行うと、コーティングゴムが流動して加硫拡張時にベルト補強層を構成する有機繊維コードとベルトを構成するスチールコード間のゲージが極端に薄くなってしまう。押し出し後しばらく静置し、コーティングゴムを冷却することでこの不具合はある程度緩和されるものの、ポリエチレン−2,6−ナフタレートのように高剛性の繊維コードをベルト補強層として使用する場合、繊維コードが加硫時におけるタイヤ拡張に追従出来ず、ベルトを構成するスチールコードとベルト補強層を構成する繊維コード間のゲージが薄くなり、酷い場合にはコード同士が接触してしまう場合がある。この傾向は加硫時拡張率の大きいタイヤほど顕著である。
この問題を解決するために、本発明のゴム付き繊維材料の製造方法は、前記工程4と工程6の間に電子線照射部5にて加速電圧200kV以上600kV未満、照射線量10〜100kGyの条件で電子線を照射して予備加硫する工程5を含むことが好ましい(図4参照)。ゴム付き繊維材料に電子線を照射することにより、該ゴム付き繊維材料のゴム分子の炭素原子と炭素原子の間に有効架橋反応を起こし、タイヤの加硫拡張時にけるゴム流動性を著しく下げるため、加硫拡張率の高いタイヤであってもベルトを構成するスチールコードとベルト補強層を構成する繊維コード間のゲージを一定量確保可能なタイヤが生産可能になる。また、ゴム付き繊維材料に電子線処理を施すことによりコーティングゴムのタック性が低下するため、完成したゴム付き繊維材料を巻き取り部6で巻き取る際にコーティングゴム同士が接着することも防止できる。ここで、電子線を照射する際の加速電圧が200kV未満であると、電子線の透過力が不十分なためゴム付き繊維材料の表面のみでしか予備加硫が行われず、ベルトを構成するスチールコードとベルト補強層を構成する繊維コード間のゲージを確保する効果が不十分となり、600kV以上であるとゴム付き繊維材料の表面の予備加硫が過度に進行する結果、該ゴム付き繊維材料のコーティングゴムの、ベルトのコーティングゴムやトレッドゴムとのタッキネスが低下し、タイヤの成形性や高速耐久性に悪影響を及ぼす。ここで、電子線の照射線量が10kGy未満であるとゴム付き繊維材料の予備加硫が不十分となりベルトを構成するスチールコードとベルト補強層を構成する繊維コード間のゲージを確保する効果が得られず、100kGyを超えるとゴム付き繊維材料の予備加硫が過度に進行し、タイヤの成形性や耐久性に悪影響を及ぼす。
また、欧州や北米等、車両が高速で走行する機会の多い市場において、高速走行に伴ってタイヤ温度が一旦上昇し、その後駐車時にタイヤが空冷された際にタイヤに「型付き」が生じ、再走行時に振動が発生する所謂フラットスポット現象が問題視され、改善を求められている。特に高剛性の繊維コードをベルト補強層として使用した場合、タイヤ回転時のコードが延び縮みした際に発生する熱量が大きいため高速走行時においてタイヤ温度が上昇し、フラットスポット現象の悪化を招く。
こうしたフラットスポット現象を解決するために、本発明のゴム付き繊維材料の製造方法に使用する繊維コードはフィラメント束を2本撚り合わせてなり、該フィラメント束の一本あたりの繊度が500〜1400dtexであることが好ましく、1050〜1380dtexであることが更に好ましい。このように、比較的細いフィラメント束をゴム付き繊維材料に使用することにより、高速走行時のタイヤの発熱量を抑えることができるため、フラットスポット現象を改善することが可能になる。該フィラメント束としては、高剛性の繊維であれば特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PEN、ナイロン66、ナイロン46、アラミド、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられ、PENが好ましい。ここで、フィラメント束の1本あたりの繊度が500dtex未満であると剛性が不十分でロードノイズ低減効果が不十分となり、1400dtexを超えるとコードの発熱が大きくなりフラットスポット現象の悪化を招く。
ただし、一本あたりの繊度が1400dtex以下のフィラメント束を撚った繊維コードと、通常使用される1670dtexのフィラメント束を撚った繊維コードの撚り係数を同一にした場合、フィラメント束が細くなっているため繊維コードの剛性の低下を招き、十分なロードノイズ低減効果が得られない。そのため、
本発明で使用する繊維コードは、フィラメント束を2本撚り合わせてなり、また下記式(I):
R=N×(0.125×D/ρ)1/2×10−3 ・・・ (I)
(式中、N:コードの撚り数(回/10cm)、D:コードの総表示デシテックス数(dtex)、ρ:コードの比重(g/cm))で定義される撚り係数Rが0.35〜0.60であることが好ましい。このように、繊維コードの撚り係数を低く設定することにより、ロードノイズを低減しうる十分な剛性を繊維コードに持たせることが可能になる。ここで、繊維コードの撚り係数Rが0.35未満であると繊維コードの拘束力が弱くなり、0.60を超えると繊維コードの剛性が弱くなる。
一方、繊維コードの撚り係数を低くすると繊維コードとコーティングゴムとの接着性が低下する。特に、PENは一般的にタイヤコードの接着剤として広く使用されているレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス重合物(RFL)に対して不活性である。そのため、PENをゴム付き繊維材料の繊維コードとして使用する場合、一般に、ベルト補強層としての十分な耐久性を確保するため、該繊維コードの撚り係数を多めに設定し且つノボラックス反応により得られるフェノール類・ホルムアルデヒド縮合物などのメチレンジフェニル類からなる鎖状構造を分子中に含有する化合物(接着性改良剤)を、RFLと混合して得られる接着剤組成物(国際公開第97/13818号パンフレットを参照)を該繊維コードに被覆する方法等により処理した後に所定のコーティングゴムでゴム引きすることにより、該繊維コードとコーティングゴムの接着性を向上させている。しかしながら、本発明のように、剛性を確保するために繊維コードの撚り係数を下げた場合、繊維コードとコーティングゴムとの接着性が下がるためベルト補強層としての十分な耐久性が得られなくなる。
こうした繊維コードとコーティングゴムとの接着性の低下を改善するために、本発明のゴム付き繊維材料の製造方法によって製造されるゴム付き繊維材料は、繊維コードとコーティングゴムとが、ペンダント基に架橋性官能基を含有し、アリル位に水素を有する炭素−炭素二重結合を主鎖に実質的に含有しない熱可塑性高分子重合体(A)と水溶性高分子(B)と極性官能基を有する芳香族類をメチレン結合した構造を含有する化合物(C)を含む接着剤組成物(1)、前記熱可塑性高分子重合体(A)と、芳香族類をメチレン結合した構造を含む有機ポリイソシアネート化合物(α)、複数の活性水素を有する化合物(β)、及びイソシアネート基の熱解離性ブロック化剤(γ)を反応させて得られる水性ウレタン化合物(D)を含む接着剤組成物(2)、又は前記水溶性高分子(B)と前記水溶性ウレタン化合物(D)とを含む接着剤組成物(3)で接着されていることが好ましい。また、前記接着剤組成物1〜3は、前記成分に加えて、更に脂肪族エポキシド化合物(E)、金属塩(F)、金属酸化物(G)、ゴムラテックス(H)、2つ以上の(ブロックド)イソシアネート基を有するベンゼン誘導体(I)のうち少なくとも1種の成分を好適に含むことができる。これら接着剤組成物1〜3を単独で又は組み合わせて接着剤組成物を調製し、該接着剤組成物を用いて本発明のゴム付き繊維材料を製造することにより、繊度及び撚り係数の低いPEN等の繊維コードとコーティングゴムであっても、従来の接着剤組成物に較べて良好な接着性を実現できる。従って、本発明のゴム付き繊維材料をベルト補強層に使用した空気入りタイヤは、ロードノイズ及びフラットスポット現象を低減させる一方で、十分な高速耐久性も維持できる。以下で接着剤組成物に使用する(A)〜(I)等について詳細に説明する。
前記熱可塑性高分子重合体(A)は、ペンダント基に架橋性官能基を含有し、アリル位に水素を有する炭素−炭素二重結合を主鎖に実質的に含有しないことを特徴とする。ここで、「ペンダント基」とは高分子鎖を修飾する官能基を指し、「アリル位に水素を有する炭素−炭素二重結合」とは、「アリル位の飽和炭素原子に水素を有する炭素−炭素二重結合」のことを指す。前記架橋性官能基は、オキサゾリン基、ビスマレイミド基、(ブロックド)イソシアネート基、エポキシ基、アジリジン基、カルボジイミド基、ヒドラジノ基、エピチオ基であることが好ましく、オキサゾリン基、ヒドラジノ基、または(ブロックド)イソシアネート基が特に好ましい。前記主鎖には、アクリル系重合体、酢酸ビニル系重合体、酢酸ビニル・エチレン系重合体などのエチレン性付加重合体、および直鎖構造を主体とするウレタン系高分子重合体を好ましく用いることができ、これらの重合体を、1種もしくは複数種組み合わせて使用できる。
前記熱可塑性高分子重合体(A)がエチレン性付加重合体からなる場合には、その単位は、(a)炭素−炭素二重結合を1つ有するエチレン性不飽和単量体および(b)炭素−炭素二重結合を2つ以上含有する単量体からなる。
(a)炭素−炭素二重結合を1つ有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のα-オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、スチレン、スルホン酸ナトリウム等のα,β−不飽和芳香族単量体類;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、ブテントリカルボン酸などのエチレン性カルボン酸類及びその塩;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチエレングリコール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル等の不飽和カルボン酸のエステル類;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどのエチレン性ジカルボン酸のモノエステル類;イタコン酸ジエチルエステル、フマル酸ジブチルエステルなどのエチレン性ジカルボン酸のジエステル類;アクリルアミド、マレイン酸アミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、マレイン酸アミド等のα,β−エチレン性不飽和酸のアミド類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリルニトリル等の不飽和ニトリル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルケトン;ビニルアミド;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等の含ハロゲンα,β−不飽和単量体類;酢酸ビニル、吉草酸ビニル、カプリル酸ビニル、ビニルピリジン等のビニル化合物;2−イソプロペニル−2−オキサゾリンなどの付加重合性オキサゾリン類;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;ビニルエトキシシラン、α−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の不飽和結合含有シラン化合物などが挙げられる。また、(b)炭素−炭素二重結合を2つ以上含有する単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2、3−ジメチル−1,3−ブタジエン、クロロプレンなどのハロゲン置換ブタジエンなどの共役ジエン系単量体などが挙げられ、また、非共役ジエン系単量体としては、ビニルノーボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン系単量体等が挙げられる。これらの単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記熱可塑性高分子重合体(A)がウレタン系高分子重合体からなる場合、その主鎖構造には、主に、ポリイソシアネートと2個以上の活性水素を有する化合物とを重付加反応させ得られるウレタン結合やウレア結合などの、イソシアネート基と活性水素の反応に起因する結合が多数存在する。なお、同時に、イソシアネート基と活性水素の反応に起因する結合のみならず、活性水素を有する化合物の分子内に含まれるエステル結合、エーテル結合、アミド結合、および、イソシアネート基同士の反応で生成するウレトジオン、カルボジイミド等をも含むことは言うまでもない。
また、前記熱可塑性高分子重合体(A)は、直鎖状構造を主体とする比較的高分子量域の高分子重合体であることが好ましく、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で重量平均分子量が10,000以上であることが更に好ましく、20,000以上であることがまた更に好ましい。
前記水溶性高分子(B)は、水または電解質を含む水溶液に水溶性であり、その構造に特に制限はなく、直鎖であっても、分岐していても、あるいは二次元、三次元に架橋していてもよいが、性能の点から直鎖あるいは分岐鎖の構造のみの重合体であると好ましい。具体的な水溶性高分子(B)の例としては、ポリアクリル酸;ポリ(α−ヒドロキシカルボン酸);アクリルアミド−アクリル酸;(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル−無水マレイン酸;スチレン−マレイン共重合体;エチレン−アクリル酸共重合体;(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体;イソブテン−無水マレイン酸などのα−オレフィン−無水マレイン酸共重合体;メチルビニルエーテル−無水マレイン酸、アリルエーテル−無水マレイン酸などのアルキルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体;スチレン−アクリル共重合体;α−オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル−マレイン酸共重合体またはこれら水溶性高分子の塩基性物質による中和物が挙げられ、特にイソブテン−無水マレイン酸共重合体またはこれらの塩基性物質による中和物であると好ましい。
前記水溶性高分子(B)は、実質的に炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体由来の単位からなり、重量平均分子量が3,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは80,000以上の比較的高分子量域の高分子重合体であることが好ましい。
前記化合物(C)は、極性官能基を有する芳香族類をメチレン結合した構造を含む。ここで、前記極性官能基は、接着剤組成物中に含まれるカルボキシル基、架橋性成分であるエポキシ基、(ブロックド)イソシアネート基などと反応する基であることが好ましい。具体的には、エポキシ基、(ブロックド)イソシアネート基などの架橋性官能基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などが挙げられる。また、芳香族類をメチレン結合した分子構造としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、あるいはフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物などにみられる分子構造が挙げられる。芳香族類をメチレン結合した分子構造部分は、分岐などせず直鎖状であることが好ましい。この芳香族類をメチレン結合した分子構造は、メチレンジフェニル、または、比較的に線状な分子構造のポリメチレンポリフェニルの構造が好ましい。なお、芳香族類をメチレン結合した分子構造部分の分子量は、特に規制されないが、好ましくは6,000以下、より好ましくは2,000以下である。また、前記化合物(C)としては、好ましくは比較的低〜中分子量領域の分子で、分子量9,000以下が好ましい。さらに、前記化合物(C)は、水性(水溶性あるいは水分散性)であることが好ましい。
前記化合物(C)としては、芳香族ポリイソシアネートと熱解離性ブロック化剤を含む化合物、ジフェニルメタンジイソシアネートまたは芳香族ポリイソシアネートを熱解離性ブロック化剤でブロック化した成分を含む水分散性化合物、ビスフェノール系エポキシド化合物、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物またはその変性体、ノボラック化反応により得られるレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物、クロロフェノール・レゾルシノール・ホルムアルデヒド縮合物、エポキシ基を有するクレゾールノボラック樹脂などのフェノール樹脂類あるいはその変性体、前記水性ウレタン化合物(D)などを挙げることができる。
前記芳香族ポリイソシアネートと熱解離性ブロック化剤とを含む化合物としては、好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネートと公知のイソシアネートブロック化剤を含むブロックドイソシアネート化合物などが挙げられる。ジフェニルメタンジイソシアネートまたは芳香族ポリイソシアネートを熱解離性ブロック化剤でブロック化した成分を含む水分散性化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネートまたはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを、前述のイソシアネート基をブロックする公知のブロック化剤でブロックした反応物が挙げられる。具体的には、エラストロンBN69(第一工業製薬(株)製)、DELION PAS-03(竹本油脂(株)製)など市販のブロックドポリイソシアネート化合物を用いることができる。
前記フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物の具体例としては、ノボラック化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物、アミノフェノールとクレゾールとホルムアルデヒドの縮合物、p−クロロフェノールとホルムアルデヒドの縮合物、クロロフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドの縮合物などが挙げられるが、好ましくは、ノボラック化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物、p−クロロフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドの縮合物などを挙ことができる。より具体的には、ノボラック化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物はWO97/13818公報の実施例に記載のノボラック化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物や、クロロフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドの縮合物はナガセ化成工業(株)のデナボンド、デナボンド−AL、デナボンド−AFなどを用いることができる。
エポキシクレゾールノボラック樹脂としては、旭チバ(株)のアラルダイトECN1400、ナガセ化成工業(株)のデナコールEM-150などの市販の製品を用いることができる。このエポキシノボラック樹脂はエポキシド化合物でもあるため、接着剤組成物の高温での流動化を抑制する接着剤分子の分子間架橋成分としても作用する。フェノール類とホルムアルデヒド縮合物のスルホメチル化変性した化合物は、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応の、反応の前、反応中、あるいは反応の後にスルホメチル化剤を加熱反応させた化合物である。スルホメチル化剤としては亜硫酸、重亜硫酸と塩基性物質の塩が挙げられる。具体的には特願平10−203356号公報の実施例に記載のフェノール類とホルムアルデヒド縮合物のスルホメチル化変性物などを用いることができる。
前記水性ウレタン化合物(D)は、芳香族類をメチレン結合した構造を含有する有機ポリイソシアネート化合物(α)と、複数の活性水素を有する化合物(β)と、イソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤(γ)とを反応させて得られる。ここで、「水性」とは、とは必ずしも完全な水溶性を意味するのではなく、部分的に水溶性のもの、あるいは本発明の接着剤組成物の水溶液中で相分離しないことをも意味する。
前記水性ウレタン化合物(D)は、好ましくは、有機ポリイソシアネート化合物(α)40〜85重量%、化合物(β)5〜35重量%、ブロック化剤(γ)5〜35重量%、および化合物(δ)5〜35重量%の反応生成物であり、かつ反応生成物の分子量中、熱解離性ブロックドイソシアネート基が0.5〜11重量%(NCO=42として換算)であるとより好ましい。また、前記水性ウレタン化合物(D)は、下記式(II):
Figure 2009045864
[式中、Aは芳香族類をメチレン結合した構造を有する有機ポリイソシアネート化合物(α)の活性水素が脱離した残基を示し、Yはイソシアネート基に対する熱解離性ブロック化剤(γ)の活性水素が脱離した残基を示し、Zは化合物(δ)の活性水素が脱離した残基を示し、Xは化合物(β)の活性水素が脱離した残基であり、nは2〜4の整数であり、p+mは2〜4の整数(m≧0.25)である]で表されると好ましい。
前記化合物(α)としては、メチレンジフェニルポリイソシアネート及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられ、好ましくは分子量6,000以下の、より好ましくは分子量4,000以下のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートである。
前記化合物(β)は、好ましくは2〜4個の活性水素を有し、平均分子量が5,000以下の化合物であるが、このような複数の活性水素を有する化合物としては、(i) 2〜4個の水酸基を有する多価アルコール類、(ii) 2〜4個の第一級及び/又は第二級アミノ基を有する多価アミン類、(iii)2〜4個の第一級及び/又は第二級アミノ基と水酸基を有するアミノアルコール類、(iv) 2〜4個の水酸基を有するポリエステルポリオール類、(v)2〜4個の水酸基を有するポリブタジエンポリオール類及びそれらと他のビニルモノマーとの共重合体(vi)2〜4個の水酸基を有するポリクロロプレンポリオール類及びそれらと他のビニルモノマーとの共重合体(vii)2〜4個の水酸基を有するポリエーテルポリオール類であって、多価アミン、多価フェノール及びアミノアルコール類のC2〜C4のアルキレンオキサイド重付加物、C3以上の多価アルコール類のC2〜C4のアルキレンオキサイド重付加物、 C2〜C4のアルキレンオキサイド共重合物、またはC3〜C4のアルキレンオキサイド重合物、が挙げられる。
前記熱解離性ブロック化剤(γ)は、熱処理によりイソシアネート基を遊離することが可能な化合物であり、公知のイソシアネートブロック化剤が挙げられる。
前記化合物(δ)は、少なくとも1つの活性水素とアニオン性及び/又は非イオン性の親水性基を有する化合物である。少なくとも1つの活性水素とアニオン性の親水基を有する化合物としては、例えば、タウリン、N−メチルタウリン、N−ブチルタウリン、スルファニル酸等のアミノスルホン酸類、グリシン、アラニン等のアミノカルボン酸類等が挙げられる。一方、少なくとも1つの活性水素と非イオン性の親水基を有する化合物としては、例えば、親水性ポリエーテル鎖を有する化合物類が挙げられる。
前記脂肪族エポキシド(E)は、接着剤組成物の架橋剤として作用する化合物であって、分子中に2個以上、好ましくは4個以上のエポキシ基を有する化合物である。脂肪族エポキシド(E)として、具体的には、ジエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ポリエチレン・ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール・ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール・ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオール・ジグリシジルエーテル、グリセロール・ポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン・ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ペンタエリチオール・ポリグリシジルエーテル、ジグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ソルビトール・ポリグリシジルエーテル等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンとの反応生成物が挙げられる。
前記金属塩(F)及び金属酸化物(G)は、接着剤組成物の安価な充填剤として作用し、接着剤組成物に延性や、強靭性を付与することができる。なお、ここで「金属」とは、ホウ素や、珪素等の類金属をも包含する。金属塩(F)としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の金属の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、塩化物、水酸化物、珪酸塩等が挙げられる。一方、金属酸化物(G)としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ホウ素、珪素、ビスマス、マンガン、鉄、ニッケル等の酸化物、又はこれら酸化物が構成要素となるベントナイト、シリカ、ゼオライト、クレー、タルク、サテン白、スメクタイト等が挙げられる。
前記ゴムラテックス(H)は、特に制限されず、公知のゴムラテックスを用いることができる。例えば、ビニルピリジン−共役ジエン化合物系共重合体ラテックス又はその変性ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス又はその変性ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体ラテックス又はその変性ラテックス等の合成ラテックスや、天然ゴムラテックス等が挙げられる。なお、これらゴムラテックス(H)は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ビニルピリジン−共役ジエン化合物系共重合体ラテックスとしては、国際公開第97/13818号パンフレット等で開示の、接着性能を損なわずに低ブタジエン量化した、マルチステージフィード重合方法で得られる共重合体を用いることができる。
前記ベンゼン誘導体(I)は、2つ以上の(ブロックド)イソシアネート基を有することを特徴とし、具体例としては、トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソプロペニルジメチルベンジルジイソシアネート等のベンゼン類のイソシアネート誘導体又はその2量体等が挙げられる。ベンゼン誘導体(I)の含有率は、乾燥質量で、接着剤組成物中、50質量%以下であることが好ましく、20質量%であることが更に好ましい。
前記接着剤組成物1の組成は、接着剤組成物中、乾燥重量で、熱可塑性高分子重合体(A)が2〜75%、水溶性高分子(B)が5〜75%、化合物(C)が15〜77%であることが好ましく、前記接着剤組成物2は、熱可塑性高分子重合体(A)が2〜75%、水性ウレタン化合物(D)が15〜87重量%であることが好ましく、前記接着剤組成物3は、水溶性高分子(B)が5〜75%、水性ウレタン化合物(D)が15〜77%であることが好ましい。また、前記(E)〜(I)の接着剤組成物1〜3への配合量は、接着剤組成物中、乾燥重量で、脂肪族エポキシド化合物(E)が70%以下、金属塩(F)が50%以下、金属酸化物(G)が50%以下、ゴムラテックス(H)が18%以下、2つ以上の(ブロックド)イソシアネート基を有するベンゼン誘導体(I)が50%以下であることが好ましい。
本発明において、前記繊維コードに前記接着剤組成物を塗布する時期に関しては、繊維コードをコーティングゴムでゴム引きする前であれば特に限定されない。すなわち、繊維コードがクリールに巻いてある状態で既に接着剤組成物が既に塗布してあっても、繊維コードに接着剤組成物を塗布する工程を工程1と工程2の間に新たに設けてもよい。
前記接着剤組成物は、国際公開第97/13818号パンフレット等で示されている接着剤組成物に較べて繊維コードとコーティングゴムの間の大幅な接着性の向上を実現しているとはいえ、ゴム付き繊維材料に使用するコーティングゴムの物性もタイヤの耐久性向上に重要である。そのため、本発明の工程3において繊維コードをゴム引きするために使用するコーティングゴムは、加硫後の100%伸長時モジュラス(室温)が2.0MPa〜4.0MPa、また加硫後の反発弾性率が60%以上であることが好ましい。該コーティングゴムの加硫後の100%伸長時モジュラス(室温)が2.0MPa未満であると、コーティングゴムと繊維コードの剛性段差の為に、タイヤ回転時の応力がコーティングゴムに集中し、コーティングゴム破壊によるタイヤの耐久性低下に繋がり、4.0MPaを超えると接着剤組成物に応力が集中し、繊維コードとコーティングゴムが剥離するため、同様にタイヤの耐久性低下に繋がる。更に、加硫後の反発弾性率が60%以上であることによりタイヤ回転時におけるコーティングゴムの発熱を抑制して耐久性を高め、更にフラットスポット現象を低減できる。なお、本発明のゴム付き繊維材料において使用する物性を有するコーティングゴムは、当業者に周知の放射線架橋型ゴム等を適宜配合することによって製造できる。
本発明の空気入りタイヤは、一対のビート部及び一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるトレッド部とを有し、前記一対のビード部間にトロイド状に延在させたカーカスと、該カーカスのクラウン部のタイヤ半径方向外方に配置したベルトと、該ベルトのタイヤ半径方向外方に配置したベルト補強層とを具える空気入りタイヤにおいて、前記ベルト補強層が本発明のゴム付き繊維材料の製造方法によって製造されたゴム付き繊維材料を、実質的にタイヤ周方向に対して平行になる様にらせん状に巻き付けてなることを特徴とし、これ以外については定法により製造できる。なお、本発明の空気入りタイヤにおいて、該空気入りタイヤ内に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスを用いることができる。
以下に、図を参照しながら本発明の空気入りタイヤにおけるベルト補強層の配置について詳細に説明する。図5は、本発明の空気入りタイヤの一実施態様の断面図であり、図6及び図7は、本発明の空気入りタイヤの他の実施態様の断面図である。
図5に示す空気入りタイヤは、一対のビード部7及び一対のサイドウォール部8と、両サイドウォール部8に連なるトレッド部9とを有し、上記一対のビード部3間にトロイド状に延在してこれら各部7、8、9を補強するカーカス10と、該カーカス10のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置された少なくとも二枚のベルト層からなるベルト11と、該ベルト11のタイヤ半径方向外側でベルト11の全体を覆うように配置したベルト補強層12Aと、該ベルト補強層12Aのタイヤ半径方向外側でベルト11の両端部を覆うように配置した一対のベルト補強層12Bとを具える。
図示例のカーカス10は、一枚のカーカスプライから構成され、また、上記ビード部7内に夫々埋設した一対のビードコア13間にトロイド状に延在する本体部と、各ビードコア13の周りでタイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部とからなるが、本発明の空気入りタイヤにおいて、カーカス10のプライ数及び構造は、これに限られるものではない。
また、図示例の空気入りタイヤにおいては、上記カーカス10のクラウン部のタイヤ半径方向外側には二枚のベルト層からなるベルト11が配置されており、該ベルト層は、通常、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるコードのゴム引き層、好ましくは、スチールコードのゴム引き層からなり、更に、二枚のベルト層が、該ベルト層を構成するコードが互いにタイヤ赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト11を構成する。なお、図中のベルト11は、二枚のベルト層からなるが、本発明の空気入りタイヤにおいては、ベルト11を構成するベルト層の枚数は、3枚以上であってもよい。
ここで、図5に示す空気入りタイヤにおいては、ベルト11の全体を覆うベルト補強層12A及びベルト11の両端部を覆うベルト補強層12Bが、ベルト11のタイヤ半径方向外側に一層づつ配置されているが、ベルト補強層12A及びベルト補強層12Bの層数は、二層以上であってもよい。
本発明の空気入りタイヤは、ベルト11のタイヤ半径方向外側に一層以上のベルト補強層を具える限り特に制限されるものではなく、例えば、図6に示す空気入りタイヤのように、ベルト11のタイヤ半径方向外側にベルト11の全体を覆うベルト補強層12Aのみが配置された態様や、図7に示す空気入りタイヤのように、ベルト11のタイヤ半径方向外側にベルト11の両端部を覆うベルト補強層12Bのみが配置された態様も、本発明の空気入りタイヤの好適態様の一例である。なお、図6中、ベルト補強層12Aは一層で、図7中、ベルト補強層12Bは二層であるが、ベルト補強層12A、12Bの層数はこれに限られるものではない。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
(実施例1〜8)
以下に示す方法によってあらかじめ接着剤処理された、表1に示す物性を有する繊維コード5本をクリールから引き出し、縦0.8mm、横0.8mmの開口部を有するコードガイドで引き揃え、表1に示す加硫後の物性を有するコーティングゴムをギヤポンプから繊維材料の上下に押し出して繊維コードをゴム引きし、その後に縦0.9mm、横5.0mmの開口部を有するダイから繊維コード5本ずつを押し出し、表1に示す条件で電子線を照射することにより幅5.0mm、厚さ0.9mmで繊維コード5本を含むゴム付き繊維材料を作製した。該ゴム付き繊維材料を、空気入りタイヤのベルト補強層として実質的にタイヤ周方向に対して平行になる様にらせん状に巻き付けること以外は常法に従い、図3に示す構造で、ベルトの幅が165mm、ベルト補強層の幅が175mmであるサイズ:205/65R15の空気入りタイヤを製造した。得られた空気入りタイヤについて、下記の方法により、ロードノイズ、100km/h走行時のトレッド表面温度、フラットスポット、及び高速耐久性を評価した。また、コーティングゴムの室温での100%伸長時のモジュラス及びコーティングゴムの反発弾性率は、それぞれJIS K6251及びJIS K6255に準拠して測定した。結果を表1に示す。なお、スチールコード/有機繊維コード間ゲージとはタイヤ周上の8カ所で断面サンプルを作製し、ベルト端部5本分のベルトコードと最接近傍のキャップコードの距離の平均であり、タイヤ加硫前は0.4mmである。
(接着剤処理Aの方法)
接着剤処理Aは、まず繊維コードを接着剤組成物Aで処理し、次に接着剤液Aで処理することによって実行した。ここで、接着剤組成物Aは前記接着剤組成物(2)の一種であり(特開2000-248254号公報に記載の接着剤組成物S−67)、前記熱可塑性高分子重合体(A)としてエポクロスK1010E((株)日本触媒製、固形分濃度40%、2−オキソザリン基を含有するアクリル・スチレン系共重合体エマルジョン)45質量%、前記水性ウレタン化合物(D)としてエラストロンBN77(第一工業製薬(株)製、固形分濃度31%、メチレンジフェニルの分子構造を含む熱反応型水性ウレタン樹脂)30質量%、及びデナコールEX614B(ナガセ化成工業(株)製、ソルビトールポリグリシジルエーテル)25質量%を含む。また、接着剤液Aは特開2000-248254号公報に記載の接着剤液T−1であり、水524.01質量部、レゾルシン15.12質量部、ホルマリン(37%)16.72質量部、10%の水酸化ナトリウム水溶液4.00質量部を、この順によく攪拌しながら混合し、室温で8時間熟成し、次にここにビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(JSR0655、JSR(株)製、固形分濃度41%、pH実測値=10.7)233.15質量部と、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(JSR2108、JSR(株)製、固形分濃度40%、pH実測値=10.6)207.00質量部を添加して、室温で12時間熟成することによって調製した。
(接着剤処理Bの方法)
接着剤処理Bは、接着剤組成物Bで繊維コードを接着剤処理することにより実行した。ここで、接着剤組成物Bは国際公開第97/13818号パンフレットに記載の実施例1の接着剤組成物であり、この調製方法は以下の通りである。2−ビニルピリジン12.5質量部、スチレン60質量部、1,3−ブタジエン27.5質量部からなる単量体混合物(a)とt−ドデシルメルカプタン0.2質量部を仕込み乳化させた。その後、50℃に昇温させた後、過硫酸カリウム0.5質量部を加え重合させた。単量体混合物(a)の反応率が80〜90%に達した後、2−ビニルピリジン13.5質量部、スチレン15質量部、及び1,3-ブタジエン15質量部からなる単量体混合物(b)とt−ドデシルメルカプタン0.2質量部を添加し、更に重合させる。反応率が95%に達した後、ハイドロキノン0.1質量部を加え重合を停止させた。次に、減圧下、未反応単量体を除去し、共重合ゴムラテックスを得た。該共重合ラテックス400質量部と、軟水145.13質量部、レゾルシン9.94質量部、ホルマリン10.99質量部及び苛性ソーダ水溶液3.94質量部からなるレゾール型縮合物原料とを混合した液を混合し、25℃で24時間熟成し、ゴムラテックスとレゾール型縮合物とからなる組成物を得た。ここに、軟水199.72質量部、苛性ソーダ水溶液(10%)10.28質量部及びペナコライトR50(インドスペック社製、固形分濃度50%)140.00質量部を混合してなる接着促進剤液を添加し、接着剤組成物Bを調製した。
(ロードノイズの測定方法)
タイヤをリム(リムサイズ:6J15)に組み付け、2.0kgf/cmの内圧を充填し、排気量2000ccのセダンタイプの乗用車の4輪全てに装着し、2名乗車してロードノイズ評価路のテストコースを60km/hの速度で走行させながら、運転席の背もたれの中央部分に取り付けた集音マイクを介して周波数100〜500Hzの全音圧(デシベル)を測定し、該測定値からロードノイズを評価した。ここで、比較例1のタイヤのロードノイズを100として指数表示し、指数値が大きいほど、ロードノイズが小さく良好であることを示す。
(100km/h走行時のトレッドの表面温度の測定方法)
6J15リムに組み付け、2.0kgf/cmの内圧を充填し、ドラム表面が平滑で且つ直径が1.707mであるドラム試験機を用い、内圧2.0kgf/cm2、荷重5.0kN、室温38±3℃において100km/hで30分走行した後に赤外線式温度計にて測定した。
(フラットスポットの評価方法)
タイヤを前記表面温度測定と同様の条件において150(km/h)で30分間ドラム走行させた後、同荷重をかけたまま1時間ドラムを停止し、ドラム走行前後でのタイヤの直円性を測定した。
(高速耐久性の評価方法)
タイヤの高速耐久性の評価は、米国規格FMVSS No.109のテスト方法に準拠し、ステップスピード方式にて行った。より具体的には、タイヤが故障するまで30分ごとにスピードを増加させ、タイヤが故障したときの速度(km/h)及びその速度での経過時間(分)を測定した。ここで、比較例1のタイヤの高速耐久性を100として他の測定結果を指数表示した。該指数が大きいほど高速耐久性が良好であることを示す。
Figure 2009045864
繊維コード及びコーティングゴムの物性並びに接着剤処理に使用した接着剤組成物の組成は前記規定の範囲内にあるものの予備加硫を行っていないゴム付き繊維材料をベルト補強層に使用した実施例2の空気入りタイヤに対して、フィラメント束の繊度及び繊維コードの撚り係数が前記規定の範囲外である実施例1は、ロードノイズの値は改善されるもののフラットスポットの指数及び高速耐久性の値は悪化する。また、実施例2のゴム付き繊維材料に電子線を照射して予備加硫を行った後にベルト補強層に使用した実施例3の空気入りタイヤは、ロードノイズ、高速耐久性及びフラットスポットの指数が改善される。なお、実施例3と異なりフィラメント束の繊度及び撚り係数が前記規定の範囲外である実施例4の空気入りタイヤはロードノイズ及び高速耐久性が改善するもののフラットスポットの指数が改善しない。このことは、本発明のゴム付き繊維材料のフィラメント束の一本あたりの繊度が500〜1400dtexであること、及び繊維コードの撚り係数が0.35〜0.60であることが好ましいことを示している。また、実施例3と異なり、接着剤処理に使用した接着剤組成物の組成が前記規定の範囲外である実施例5の空気入りタイヤはフラットスポットの指数は維持されるが高速耐久性が悪化し、コーティングゴムの加硫後の100%伸長時モジュラスの値が前記規定の範囲外である実施例6〜7の空気入りタイヤ、及びコーティングゴムの加硫後の反発弾性率の値が前記規定の範囲外である実施例8の空気入りタイヤは、いずれもフラットスポットの指数及び高速耐久性が改善するが、高速耐久性の改善の程度は実施例3に及ばない。このことは、本発明のゴム付き繊維材料は、本発明の接着剤組成物で繊維コードとコーティングゴムが接着されていること、並びにコーティングゴムは加硫後の100%伸長時モジュラス(室温)が2.0MPa〜4.0MPaであること及び加硫後の反発弾性率が60%以上であることが好ましいことを示している。
本発明のゴム付き繊維材料の製造方法の一例である。 本発明の製造方法におけるコードガイド周辺の斜視透視図である 本発明の製造方法におけるダイ周辺の斜視透視図である 本発明のゴム付き繊維材料の製造方法の他の例である。 本発明の空気入りタイヤの一実施態様の断面図である。 本発明の空気入りタイヤの他の実施態様の断面図である。 本発明の空気入りタイヤのその他の実施態様の断面図である。
符号の説明
1 クリール
2 コードガイド
3 ギヤポンプ
4 ダイ
5 電子線照射部
6 巻き取り部
7 ビード部
8 サイドウォール部
9 トレッド部
10 カーカス
11 ベルト
12A、12B ベルト補強層
13 ビードコア

Claims (10)

  1. クリールから繊維コードを引き出し、コードガイドに通した後に該繊維コードをコーティングゴムでゴム引きし、その後にダイから押し出すことを特徴とするゴム付き繊維材料の製造方法。
  2. 前記ゴム付き繊維材料に、更に加速電圧200kV以上600kV未満、照射線量10〜100kGyの条件で電子線を照射して予備加硫することを特徴とする請求項1に記載のゴム付き繊維材料の製造方法。
  3. 前記繊維コードが、フィラメント束を2本撚り合わせるてなることを特徴とする請求項1に記載のゴム付き繊維材料の製造方法。
  4. 前記フィラメント束が、ポリエチレン−2,6−ナフタレートからなることを特徴とする請求項1に記載のゴム付き繊維材料の製造方法。
  5. 前記フィラメント束の一本あたりの繊度が500〜1400dtexであることを特徴とする請求項1に記載のゴム付き繊維材料の製造方法。
  6. 前記繊維コードは、下記式(I):
    R=N×(0.125×D/ρ)1/2×10−3 ・・・ (I)
    (式中、N:コードの撚り数(回/10cm)、D:コードの総表示デシテックス数(dtex)、ρ:コードの比重(g/cm))で定義される撚り係数Rが0.35〜0.60であることを特徴とする請求項1に記載のゴム付き繊維材料の製造方法。
  7. 前記繊維コードと前記コーティングゴムとが、
    ペンダント基に架橋性官能基を含有し、アリル位に水素を有する炭素−炭素二重結合を主鎖に実質的に含有しない熱可塑性高分子重合体(A)と水溶性高分子(B)と極性官能基を有する芳香族類をメチレン結合した構造を含有する化合物(C)を含む接着剤組成物(1)、
    前記熱可塑性高分子重合体(A)と、芳香族類をメチレン結合した構造を含む有機ポリイソシアネート化合物(α)、複数の活性水素を有する化合物(β)、及びイソシアネート基の熱解離性ブロック化剤(γ)を反応させて得られる水性ウレタン化合物(D)を含む接着剤組成物(2)、又は
    前記水溶性高分子(B)と前記水溶性ウレタン化合物(D)とを含む接着剤組成物(3)で接着されていること、を特徴とする請求項1に記載のゴム付き繊維材料の製造方法。
  8. 前記コーティングゴムは、加硫後の100%伸長時モジュラス(室温)が2.0MPa〜4.0MPaであることを特徴とする請求項1に記載のゴム付き繊維材料の製造方法。
  9. 前記コーティングゴムは、加硫後の反発弾性率が60%以上であることを特徴とする請求項1に記載のゴム付き繊維材料の製造方法。
  10. 一対のビート部及び一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるトレッド部とを有し、前記一対のビード部間にトロイド状に延在させたカーカスと、該カーカスのクラウン部のタイヤ半径方向外方に配置したベルトと、該ベルトのタイヤ半径方向外方に配置したベルト補強層とを具える空気入りタイヤにおいて、
    前記ベルト補強層は請求項1〜9の何れか一項に記載の製造方法により製造されたゴム付き繊維材料を、実質的にタイヤ周方向に対して平行になる様にらせん状に巻き付けてなることを特徴とする空気入りタイヤ。
JP2007215162A 2007-08-21 2007-08-21 ゴム付き繊維材料の製造方法及び空気入りタイヤ Withdrawn JP2009045864A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010274519A (ja) * 2009-05-28 2010-12-09 Toyo Tire & Rubber Co Ltd 空気入りラジアルタイヤの製造方法
JP2016036947A (ja) * 2014-08-06 2016-03-22 住友ゴム工業株式会社 プライ材料の製造方法

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