JP5586320B2 - 導電性シリコーンゴムシート - Google Patents

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本発明は、粘着性を付与した導電性シリコーンゴムシートに関し、より詳細には、シリコーンゴムシートに特定の性質を有する粘着層を積層した構成とすることで、再使用(リペア)可能であり、また導電性や放熱性の機能を併せもつ導電性シリコーンゴムシートに関する。
一般的にシリコーンゴムは、耐熱性、耐候性、電気絶縁性に優れていることから、電気機器や電子機器または液晶関連機器などの分野において、ゴム本来の弾性、高い摩擦係数、および柔らかな感触が望まれる部品の構成材料に利用されており、具体的にはクッション材、スペーサー、滑り止め、パッキング材、タッチパネル表面材などに、例えばシート状の形態のものが適用される。また、電子機器等に使用されている半導体集積回路(IC)等の電子部品には、必要に応じてノイズ対策、放熱対策が施される。この場合には、導電性や放熱性を付与したシリコーンゴムシートが使用される場合がある。
このように多くの用途があるシリコーンゴムシートは、装着される機器の小型・軽量化の要請および製造コスト低減の要請に応じて接着固定されることが多い。
しかしながら、シリコーンゴム自体には接着性はないので、シリコーンゴムを接着固定するには粘着剤や接着剤を使用することになる。その手法としては、シリコーン系の粘着剤や接着剤を使用するか、あるいはシリコーンゴム表面にプライマー処理等の表面処理を加えて、シリコーン系以外の粘着剤、接着剤を使用する方法が採用されてきた。その他には、シリコーンゲルの粘着性を利用して接着させる場合もある。
例えば、特許文献1には、シリコーンゲル原料(a)と熱伝導性フィラー(c)からなる粘着性ゲル層(A)に、シリコーンゴム原料(b)からなる非粘着性ゴム層(B)が接合されてなる、放熱性、耐久性、密着性に優れた熱伝導性シートについて開示されている。
また、特許文献2には、粘着性を有するシリコーンゲルシートの片面に特定のシリコーンゴム皮膜を形成した熱伝導性シリコーンゲルシートについて開示されており、より詳細には、シリコーンゴム皮膜が形成されていて粘着性が低下しているので、取扱作業性が優れており、発熱性の電気・電子部品を放熱フィンや金属製放熱板に取り付けるための熱伝導性シリコーンゲルシートとして使用できることが開示されている。
さらに、特許文献3には、熱伝導性とリワーク性をともに向上させることができる熱伝導性複合シートについて開示され、リワーク性を確保するため外層の少なくとも一方にシリコーンゴム層を設け、内層には対象物との追随性を向上させる熱軟化性の中間層を設ける3層構造により、熱伝導性とリワーク性をともに向上できることが開示されている。
特開2009-269337号公報 特許3280224号 特開2004−311577号公報
しかしながら、上記特許文献1や2に記載の熱伝導性シートは、熱伝導性や密着性に優れるものの、リペア性については考慮されていない。よって、貼り付けミスや被着体に不具合があった場合に剥離することができず、たとえ剥離できたとしても被着体の表面に糊残りが発生する場合がある。
また、シリコーンゲルは機械的強度が小さいために形状が簡単に変化したり、裂けたりして取り扱い性が悪い。このため、特許文献2に記載の発明では、片面にシリコーンゴム皮膜を形成し、取り扱い性を向上させているが、必ずしも十分とはいえない。
さらに、特許文献3では、リワーク性は考慮されているが、取扱い性に劣り、また3層構造を必須とするため薄膜化が難しいなどの問題がある。
このように、上記特許文献1〜3に記載されたシートよりも、より簡便に、優れた導電性、放熱性及びリペア性を有する取り扱い性に優れたシリコーン複合体が求められる。
そこで、本発明の課題は、簡便な構成でリペア可能であり、さらには導電性又は放熱性を併せ持つ導電性シリコーンゴムシートを提供することである。
本発明者らは、シリコーンゴムシートに積層する粘着層に着目して鋭意検討した結果、シリコーンゴムシートの片面側に、ポリオルガノシロキサンを含有する組成物の硬化物から成る粘着層が積層した構成を有し、該粘着層面のガラス板に対する180°剥離粘着力が0.2以上3.0N/25mm未満であることを特徴とする導電性シリコーンゴムシートによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、シリコーンゴムシートの片面側に、ポリオルガノシロキサンを含有する組成物の硬化物から成る粘着層が積層された構成を有し、該粘着層面のガラス板に対する180°剥離粘着力が0.2以上3.0N/25mm未満であることを特徴とする導電性シリコーンゴムシートである。
本発明において、前記粘着層は、周波数10Hz、温度23℃で測定した損失係数(Tanδ)が0.10〜0.50の範囲内にあることが好ましい。
また本発明において、厚さ方向の抵抗値は、1.0×1010Ω以下であることが好ましく、JIS R 2616に準拠して測定した熱伝導率は、0.4W/m・K以上であることが好ましい。
さらに本発明において、導電性シリコーンゴムシートは再使用可能であることが好ましい。
本発明のシリコーンゴムシート複合体によれば、粘着テープを貼り合わせたり、シリコーンゴム表面の処理をしたりせずに、リペア性に優れ、導電性や放熱性をもつ粘着層を形成したことにより、簡便に薄膜化(100〜600μm)することができるので、省スペース化の進む電子機器等の構成材料に好適に使用できるという利点がある。
図1は、本発明の導電性シリコーンゴムシートの一例を示した断面図である。
<シリコーンゴムシート複合体>
本発明のシリコーンゴムシート複合体としては、シリコーンゴムシートの少なくとも片面側に、ポリオルガノシロキサンを含有する組成物の硬化物から成る粘着層が積層された構成を有し、該粘着層面のガラス板に対する180°剥離粘着力が0.2以上3.0N/25mm未満であるものであれば、特に制限されず、粘着層面のガラス板に対する180°剥離粘着力を0.2以上3.0N/25mm未満とすることで、リペア性に優れたシリコーンゴム複合体とすることができる。剥離粘着力が0.2N/25mm未満であると粘着性に劣り、3.0N/25mm以上であると、被着体の表面に糊残りが発生するなどの問題が起こる。
粘着性とリペア性とはトレードオフの関係にあり、両者を両立させることは難しいことであるが、180°剥離粘着力を上記の範囲とすることによって、これらを両立することが可能となる。
(シリコーンゴムシート)
上記シリコーンゴムシートとしては、例えば、次に示すようなシロキサン骨格、すなわち、下記式(1)に示されるようなシロキサン骨格を有するポリオルガノシロキサンを架橋することにより得られるものを挙げることができる。
より具体的には、Rの全てがメチル基であるポリジメチルシロキサンをはじめ、メチル基の一部が他のアルキル基、ビニル基、フェニル基、フルオロアルキル基などの一種あるいはそれ以上と置換された各種のポリオルガノシロキサンを単独あるいは二種類以上ブレンドしたものを使用することができる。
Figure 0005586320
架橋方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法が適用できる。例えば、ポリオルガノシロキサンのメチル基あるいはビニル基をラジカル反応で架橋する方法が挙げられる。また、シラノール末端オルガノシロキサンと加水分解可能な官能基を有するシラン化合物との縮合反応で架橋する方法や、ビニル基へのヒドロシリル基の付加反応で架橋する方法等が挙げられる。
(添加剤)
さらに、シリコーンゴムシートには、従来添加することが知られている添加剤を本発明の物性を損なわない範囲で添加してもよい。フュームドシリカ、沈殿シリカ、ケイソウ土、石英粉などの補強性充填剤や各種加工助剤、耐熱性向上剤などの他、エラストマーとしての機能性を持たせる各種添加剤を含有するものである。この機能性添加剤としては、難燃性付与剤、放熱性フィラー、導電性フィラー等が挙げられる。
(粘着層)
本発明のシリコーンゴムシート複合体は、ポリオルガノシロキサンを含有する組成物の硬化物から成る粘着層が積層された構成を有し、粘着層の構成成分であるポリオルガノシロキサンとしては、上述と同様のものを挙げることができ、上述の添加剤を加えることもできる。
本発明のシリコーンゴムシート複合体は、粘着層面のガラス板に対する180°剥離粘着力が0.2以上3.0N/25mm未満であることを要するが、このような範囲とするには、例えば、粘着層の構成成分であるポリオルガノシロキサンの組成と架橋度を調整することによって、前記粘着力範囲の粘着性を付与することができる。
またシリコーンゴムシートに積層された粘着層は、周波数10Hz、温度23℃で測定した損失係数(Tanδ)が0.10〜0.50の範囲内とすることが好ましい。損失係数(Tanδ)が0.50以上では、糊残りしてしまう可能性があり、0.10以下では粘着性に欠ける虞がある。
このような損失係数(Tanδ)の値を有する粘着層を得るための方法について、以下説明する。損失係数(Tanδ)は、ポリオルガノシロキサンの分子構造を制御したり、架橋方法を選択したりすることで所望の範囲とすることができる。例えば、分子構造を制御する方法としては、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部を適当量、他の官能基(例えば、フェニル基)に置換して、その結晶性を低減させたものを挙げることができ、架橋方法としては、ビニル基とヒドロシリル基との付加反応を利用する方法であって、シリコーンゲルを得るための公知の官能基の比率及び架橋条件を選定して架橋させるという手法が挙げられる。
(厚み)
本発明のシリコーンゴムシート複合体の厚みとしては、例えば、100μm〜600μmの範囲とすることができ、好ましくは、200μm〜500μmの範囲であり、より好ましくは、300μm〜400μmの範囲である。
また、シリコーンゴムシートに積層される粘着層の厚みとしては、追従性や密着性などの観点から、100μm〜300μmとすることが好ましく、100〜200μmの範囲とすることがより好ましい。
(厚さ方向の抵抗値)
本発明のシリコーンゴムシート複合体の厚さ方向の抵抗値は、1.0×1010Ω以下であることが好ましい。抵抗値が高すぎるとノイズ対策の効果は薄れ、電子部品から放射されるノイズが、その周囲に配置された他の電子部品や電子回路を誤動作させたりする虞がある。厚さ方向の抵抗値を所望の範囲とするには、例えば、上述の添加剤の欄で示した機能性添加剤である導電性フィラーをシリコーンゴムシートや粘着層に添加する方法が挙げられる。
(熱伝導率)
本発明のシリコーンゴムシート複合体のJIS R 2616に準拠して測定した熱伝導率は、0.4W/m・K以上であることが好ましい。熱伝導率が低すぎると十分な放熱対策が取れず、この発熱が電子部品の特性を変化させるなどして、電子部品を誤動作させたりする虞がある。熱伝導率を所望の範囲とするには、例えば、上述の添加剤の欄で示した機能性添加剤である放熱性フィラーをシリコーンゴムシートや粘着層に添加する方法が挙げられる。
<製造方法>
シリコーンゴムシートに粘着層を積層する方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法を採用することができ、例えば、シリコーンゴムシート上に、ポリオルガノシロキサンを含有する組成物をコーティングすることにより粘着層を設けることができる。また、予め離型性のある基材、例えばフィルムおよびシート上に粘着層を設けておき、その後、離型性のある基材から粘着層をシリコーンゴムシート上に転写することにより、粘着層を設けてもよい。
(語句の説明など)
なお、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
次に、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
導電性のミラブル型シリコーンゴム原料(商品名「XE23−A6001」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を使用し、フラットPET(ポリエチレンテレフタレート)シートでサンドイッチした状態で架橋させ、厚さ300μmのシリコーンゴムシートを得た。
また、上記原料にミラブル型シリコーンゴム原料(商品名「X−30−1193−U」、信越化学工業株式会社)を40%加えブレンドしたものを、フラットPET(ポリエチレンテレフタレート)シートに挟んで100μmの厚さに成型し、上記300μm厚シートにプライマー無しで積層後、2層目が動的粘弾性測定により、周波数10Hz、温度23℃で測定した損失係数(Tanδ)が0.10〜0.60の範囲になるよう架橋度を調整し、厚さ400μmの粘着性を付与した導電性シリコーンゴムシートを得た。損失係数(Tanδ)は0.26であり、また、このシートの厚さ方向の抵抗値は15.3KΩであった。
(実施例2)
実施例1と同原料(商品名「XE23−A6001」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を使用し、フラットPET(ポリエチレンテレフタレート)シートでサンドイッチした状態で架橋させ、厚さ300μmのシリコーンゴムシートを得た。また、これと同じ原料(商品名「XE23−A6001」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)をフラットPETで挟んで100μmの厚さに成型し、上記300μm厚シートにプライマー無しで積層後、架橋させ、厚さ400μmの粘着性を付与した導電性シリコーンゴムシートを得た。この時の損失係数(Tanδ)は0.15であった。また、厚さ方向の抵抗値は1.8KΩであった。
(実施例3)
放熱性のミラブル型シリコーンゴム原料(商品名「XE20−A8579」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を使用し、フラットPET(ポリエチレンテレフタレート)シートでサンドイッチした状態で架橋させ、厚さ300μmのシリコーンゴムシートを得た。
また、同原料(商品名「XE20−A8579」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)をフラットPETで挟んで100mμmの厚さに成型し、上記300μm厚シートにプライマー無しで積層後、2層目が動的粘弾性測定により、周波数10Hz、温度23℃で測定した損失係数(Tanδ)が0.10〜0.50の範囲になるよう架橋度を調整し、厚さ400μmの粘着性を付与した放熱性シリコーンゴムシートを得た。損失係数(Tanδ)は0.37であり、また、このシートの熱伝導率は0.6W/m・Kあった。
(比較例1)
実施例1と同様の原料を使用し、フラットPET(ポリエチレンテレフタレート)シートと、片面にミラブル型シリコーンゴム用プライマー(商品名「XP81−A6361」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を塗布したフラットPET(ポリエチレンテレフタレート)シートでサンドイッチさせた状態で架橋し、厚さ365μmのシリコーンゴムシートを得た。
このプライマー処理したPETのゴム表面側に導電性アクリル粘着テープ(商品名「ダイタック#8035N」、DIC株式会社製)を貼り合わせ、厚さ400μmの粘着性を付与した導電性シリコーンゴムシートを得た。粘着テープの損失係数(tanδ)は0.67であり、また、このシートの厚さ方向の抵抗値は800KΩであった。
なお、前記実施例及び比較例において作製したシリコーンゴムシートの粘着力、抵抗値、熱伝導率及びリペア性は、次のようにして測定した。
(粘着力測定方法)
・測定方法:180度剥離法
PETを裏打ちした機能性シリコーンゴムシート(試料幅:25mm)の粘着性物質側をガラス板にハンドローラーを用いて1往復で貼り合わせ、常温で5分放置後の粘着力を測定した (試験速度:300mm/min) 。
(厚み方向の抵抗値測定方法)
・ 抵抗値は厚み方向の抵抗値を測定した。
50mm×50mmのSUS板(SUS304、厚み0.2mm)に40mm×40mmサイズにカットした測定試料を挟み、デジタルハイテスター3256(日置電機株式会社製)を使用して厚み方向の抵抗値を測定した。
(熱伝導率の測定方法)
熱伝導率はJIS R 2616に準拠して測定した。
(リペア性の測定方法)
リペア性については、50mm×50mmサイズにカットした各試料をガラスにラミネート用ローラーで貼り合わせ、常温で1時間放置後、ピンセットで剥がした際にガラスへの糊残り有無を確認した。
Figure 0005586320
表1の結果から、実施例1及び2のシリコーンゴム複合体は、リペア性及び電気特性に優れるものであった。さらに、実施例3のシリコーンゴム複合体は、リペア性及び熱伝導性に優れるものであった。
一方で、比較例1のシリコーンゴムシート複合体は、導電性には優れるもののリペア性に劣るものであった。
1 シリコーンゴムシート複合体
2 粘着層
3 シリコーンゴムシート

Claims (4)

  1. シリコーンゴムシートの片面側に、ポリオルガノシロキサンを含有する組成物の硬化物から成る粘着層が積層された構成を有し、該粘着層面のガラス板に対する180°剥離粘着力が0.2以上3.0N/25mm未満であって、かつ、厚さ方向の抵抗値が1.0×1010Ω以下であることを特徴とする導電性シリコーンゴムシート。
  2. 前記粘着層は、周波数10Hz、温度23℃で測定した損失係数(Tanδ)が0.10〜0.50の範囲内にある、請求項1に記載の導電性シリコーンゴムシート。
  3. JIS R 2616に準拠して測定した熱伝導率が、0.4W/m・K以上である、請求項1または2に記載の導電性シリコーンゴムシート。
  4. 再使用可能な請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性シリコーンゴムシート。
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