JP5579364B2 - 熱交換器用チューブ及びこれと外部フィンとを結合した熱交換器 - Google Patents
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Description
本発明に係るチューブは、心材と、チューブの内面側の心材上に設けられたろう材と、チューブの外面側の心材上に設けられた犠牲防食材とから成る。そして、ろう付加熱時において、Cuを含有する溶融ろうがチューブ外面に滲み出るための間隙も備える。なお、チューブの心材、ろう材及び犠牲防食材はいずれもAl材からなる。ここで、Al材とは、アルミニウム合金又は純アルミニウムをいうものとする。
上述の接触部の耐食性を向上させる効果を十分に発揮するためには、上記(1)の場合における心材のCu含有量を0.15mass%以上、上記(2)の場合には、0.1mass%以上とする必要がある。一方、多量にCuを含有し過ぎると、接合部のCu濃度が高くなり過ぎて、その近傍のフィン及びチューブの腐食が促進されてしまう。この弊害を回避するために、上記(1)の場合における心材のCu含有量は1.0mass%以下、上記(2)の場合における場合には、0.6mass%以下とする必要がある。
本発明においてチューブのろう材のCu含有量は、上記(1)の場合には0.1mass%以下とする。結合部のCu源として、心材中のCuを利用できるので腐食促進の原因となるCu含有量を低く抑えるためである。一方、上記(2)の場合には0.1〜0.6mass%とする。下限値を0.1mass%としたのは、接合部のCu濃度を高めて電位を貴にすることにより接触部の耐食性を向上させる効果を得るためである。上限値を0.6mass%としたのは、接合部のCu濃度が高くなり過ぎて、その近傍のフィン及びチューブの腐食が促進されるのを防止するためである。
本発明においてチューブの犠牲防食材のCu含有量は、0.1mass%以下であるのが好ましい。Cuは、材料製造時の熱履歴及びろう付加熱によって、Al合金中にCu系金属間化合物として析出する。このCu系金属間化合物はマトリックスをアノードとした際のカソード反応を促進させるため、犠牲防食材の腐食速度が増大する。また、Cu添加はAl合金の自然電位を貴にする働きもあり、犠牲材によるチューブ心材の防食効果を減ずる。以上の理由から、チューブの犠牲防食材のCu含有量は0.1mass%以下に制限するのが好ましい。
本発明に係るろう付け前のチューブTと外部フィンOFを組み合わせた構造例の正面断面図を図1に、部分側面図を図2に示す。この構造例では、チューブTは二つのL字状の板材T1、T2を互いの長辺と短辺が平行となるように組み合わされ、これら板材T1、T2によって囲まれた空間部分が流体の流路となる。二つの板材T1、T2の端面が接する境界部位G1、G2においては、少なくとも一点で両者が接しつつ、不可避的に狭い間隙(不図示)が形成される。このような間隙の両板材間における幅は1mm以下とするのが好ましい。
なお、チューブ形状やその内部構造は、ろう付加熱時においてCu含有溶融ろうがチューブ外面に滲み出ることができれば、図1〜3に示すものに限定されるものではない。
本発明に係る外部フィンには、心材の両面にろう材がクラッドされた3層ブレージングシートを用いるのが好ましい。しかしながら、心材のいずれか一方の面にのみろう材がクラッドされた2層ブレージングシートでも、心材のみでろう材がクラッドされていない単層のものも用いられる。心材のチューブ側にろう材がクラッドされていれば、チューブのろう材と一緒に大きな結合部を形成できる。また、心材のチューブ側とは反対側にろう材がクラッドされていても、溶融ろうがチューブ側に流出するので、これまたチューブ内面側のろう材と一緒に大きな結合部を形成できる。一方、ろう材がクラッドされていない単層の場合であっても、チューブ内面側の溶融ろうのみでも外部フィンとチューブを接合できる。以下、外部フィンにおいて「ブレージングシート」と記す際には、3層ブレージングシート及び2層ブレージングシートの両方を意味するものとする。
なお、外部フィンの心材及びろう材はいずれもAl材からなる。ここで、Al材とは、アルミニウム合金又は純アルミニウムをいうものとする。
本発明において、外部フィンとしてブレージングシートを用いた際における心材のCu含有量、ならびに、単層を用いた際における心材のCu含有量は、いずれも0.1mass%以下とする。Cuは、材料製造時の熱履歴及びろう付加熱によって、Al合金中にCu系金属間化合物として析出する。このCu系金属間化合物はマトリックスをアノードとした際のカソード反応を促進させるため、フィンの腐食速度が増大する。また、Cu添加はAl合金の自然電位を貴にする働きもあり、フィンによるチューブの防食効果を減ずる。以上の理由から、ブレージングシートの場合における心材のCu含有量、ならびに、単層の場合におけるCu含有量はともに、0.1mass%以下に制限される。
本発明において、外部フィンとしてブレージングシートを用いた際におけるろう材のSi含有量、ならびに、単層を用いた際におけるろう材のSi含有量は、いずれも6.5〜13.0mass%の成分範囲とするのが好ましい。ろう材に含有されるSiは融点を低下させる作用を有し、良好なろう流れに寄与する。融点低下の十分な効果を得るためには、6.5mass%以上のSiを添加するのが好ましい。一方、Si含有量が13.0mass%を越えると加工性の低下を招くため、Si量の上限は13.0mass%とするのが好ましい。
本発明に係る熱交換器は、上記チューブ及び外部フィンを必須の構成要素とし、他の部材が適宜組み合わされこれらをろう付けして製造される。ろう付加熱方法、ろう付加熱条件は特に限定しないが、ろう付け方法としては、フラックスを用いるノコロックブレージング法が好適に用いられる。ろう付け操作における、400℃からろう付け温度に達してろう凝固が終了するに至るまでのろう付加熱工程に要する時間と、その後の冷却工程に要する時間とは特に限定されるものではないが、7〜60分が好適に用いられる。また、チューブ内面側のろう材が溶融してチューブ外面に溶融ろうが滲み出るのに要する時間として、580℃以上に保持される時間は3〜20分が好適に用いられる。
(1)外部フィンの作成
外部フィン材は通常の半連続鋳造を行い、鋳塊の両面を10mmずつ面削し、ブレージングシートの場合は重ね合わせを行い、総厚さが550mmとなるようにした。次いで、500℃で6時間の予備加熱を行い、熱間圧延で5mmまで圧延し、0.25mmまで冷間圧延を行い、400℃で3時間の中間焼鈍を行い、最終冷間圧延により厚さ0.1mmのシートを得た。Al−0.2mass%Si−0.4mass%Fe−1.0mass%Mn−2.0mass%Znに表1に示すCuを添加したAl合金を心材の素材として用い、Al−10mass%Si−0.4mass%Fe−0.05mass%CuのAl合金をろう材の素材として用いた。心材の両面にクラッド率10%のろう材を設けて、全体板厚0.1mmのブレージングシートを作製した(表1のイ、ロ)。また、同様の工程によりろう材を備えていない心材のみのAl合金シートも作製した(表1のハ、ニ)。次いで、このブレージングシート及びAl合金シートにコルゲート加工を施して外部フィンを作製した。
Al−0.2mass%Si−0.4mass%Fe−1.0mass%Mn−0.10mass%Tiに表2に示す量のCuを添加したAl合金を心材の素材として、Al−10mass%Si−0.4mass%Feに表2に示す量のCuを添加したAl合金をろう材の素材として、表2に示す組成のAl合金を犠牲防食材の素材として用いた。これらの素材板を、通常の半連続鋳造を行い、鋳塊の両面を10mmずつ面削し、3層重ね合わせ総厚さが550mmとなるようにした。次いで、500℃で6時間の予備加熱を行い、熱間圧延により板厚5mmまで圧延し、更に板厚0.3mmまで冷間圧延を行い、350度で3時間の最終焼鈍を行なって、厚さ0.3mmの板状チューブ材を作製した。次いで、この板状チューブ材を折り曲げ加工によって所定のチューブ形状とした。これら実施例及び比較例では図1に示す形状Aのチューブを用いた。
上記のようにして作製したチューブと外部フィンを組合せ、チューブの内面及び外面に非腐食性フラックスを10g/m2塗布し、窒素雰囲気中で400℃で30分間加熱処理を施し、次いで600℃まで40℃/minの速度で昇温し、580℃〜600℃の温度範囲に5分間保持しろう付を行った。次いで、これを室温で冷却して熱交換器コアを作製した。なお、表2に示すように、各実施例及び比較例において外部フィンとしては表1に示す外部フィン用シートを用いた。
比較例2では、チューブのろう材のCu含有量が多いために、接合部のCu濃度が高かった。そのため、接合部近傍のチューブ及びフィンの腐食が促進されたため、最大孔食深さが深くなり耐食性を満足できなかった。
比較例4、5では、フィンのCu含有量が多いために、接合部のCu濃度が高かった。そのため、接合部近傍のチューブ及びフィンの腐食が促進されたため、最大孔食深さが深くなり耐食性を満足できなかった。
G1、G2‥‥‥不可避的な間隙
J‥‥‥接合部
OF‥‥‥外部フィン
OS1、OS2‥‥‥外部フィン側のチューブ外面
S‥‥‥チューブの犠牲防食材
T‥‥‥チューブ
T1、T2‥‥‥チューブの板材
W‥‥‥チューブのろう材
Claims (6)
- Cu含有量が0.1mass%未満のAl材からなる外部フィンと結合する熱交換器用チューブであって、Cu含有量が0.15〜1.0mass%であり融点が600℃以上のAl材からなる心材と、Cu含有量が0.1mass%未満のAl材からなりチューブの内面側の心材上に設けられたろう材と、融点が600℃以上のAl材からなりチューブの外面側の心材上に設けられた犠牲防食材とを備え、ろう付け時において心材に含有されるCuがろう材の溶融ろう中に拡散して当該溶融ろうとともにチューブ外面に滲み出る間隙を有し、ろう付け時において前記拡散したCuを含有しチューブ外面に滲み出た溶融ろうが溜まり、この溶融ろうが冷却時に凝固してチューブと外部フィンとの接合部を形成する間隙をチューブ外面と外部フィンとの間に備え、当該間隙の溶融ろうのピークCu濃度が0.68mass%以上であることを特徴とする熱交換器用チューブ。
- Cu含有量が0.1mass%未満のAl材からなる外部フィンと結合する熱交換器用チューブであって、Cu含有量が0.1〜0.6mass%であり融点が600℃以上のAl材からなる心材と、Cu含有量が0.1〜0.6mass%のAl材からなりチューブの内面側の心材上に設けられたろう材と、融点が600℃以上のAl材からなりチューブの外面側の心材上に設けられた犠牲防食材とを備え、ろう付け時においてろう材の溶融ろうがチューブ外面に滲み出る間隙を有し、ろう付け時において前記チューブ外面に滲み出た溶融ろうが溜まり、この溶融ろうが冷却時に凝固してチューブと外部フィンとの接合部を形成する間隙をチューブ外面と外部フィンとの間に備え、当該間隙の溶融ろうのピークCu濃度が0.68mass%以上であることを特徴とする熱交換器用チューブ。
- チューブと、Cu含有量が0.1mass%未満のAl材からなる外部フィンとを結合した熱交換器であって、
前記チューブが、Cu含有量が0.15〜1.0mass%であり融点が600℃以上のAl材からなる心材と、Cu含有量が0.1mass%未満のAl材からなりチューブの内面側の心材上に設けられたろう材と、融点が600℃以上のAl材からなりチューブの外面側の心材上に設けられた犠牲防食材とを備え、ろう付け時において心材に含有されるCuがろう材の溶融ろう中に拡散して当該溶融ろうとともにチューブ外面に滲み出る間隙を有し、
ろう付け時において、前記拡散したCuを含有しチューブ外面に滲み出た溶融ろうがチューブ外面と外部フィンとの間隙に溜まり、この溶融ろうが冷却時において凝固して形成されるチューブと外部フィンとの接合部を備え、当該接合部のピークCu濃度が0.68mass%以上であることを特徴とする熱交換器。 - チューブと、Cu含有量が0.1mass%未満のAl材からなる外部フィンとを結合した熱交換器であって、
前記チューブが、Cu含有量が0.1〜0.6mass%であり融点が600℃以上のAl材からなる心材と、Cu含有量が0.1〜0.6mass%のAl材からなりチューブの内面側の心材上に設けられたろう材と、融点が600℃以上のAl材からなりチューブの外面側の心材上に設けられた犠牲防食材とを備え、ろう付け時においてろう材の溶融ろうがチューブ外面に滲み出る間隙を有し、
ろう付け時において、前記チューブ外面に滲み出た溶融ろうがチューブ外面と外部フィンとの隙間に溜まり、この溶融ろうが冷却時において凝固して形成されるチューブと外部フィンとの接合部を備え、当該接合部のピークCu濃度が0.68mass%以上であることを特徴とする熱交換器。 - 前記外部フィンが、心材と、その両側に形成されたろう材とを備えるブレージングシートである、請求項1又は2に記載の熱交換器用チューブ。
- 前記外部フィンが、心材と、その両側に形成されたろう材とを備えるブレージングシートである、請求項3又は4に記載の熱交換器。
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