JP5159709B2 - 熱交換器用チューブ向けアルミニウム合金クラッド材およびそれを用いた熱交換器コア - Google Patents
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心材として、Si0.6〜0.9%(mass%、以下同じ)、Fe0.2〜0.5%、Cu0.4〜0.7%、Mn1.0〜1.8%、Ti0.05〜0.2%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金が用いられ、その心材の両面のうち、チューブの外面側となるべき一方の面に、Si2.5〜4.5%、Zn2.5〜5.5%、Fe0.2〜0.5%、Na0.005〜0.1%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる、ろう付け機能を有する犠牲陽極材がクラッドされ、前記心材の他方の面に、Si7.5〜12%、Fe0.2〜0.5%、Na0.005〜0.1%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるAl−Si系ろう材がクラッドされ、かつ全板厚が0.1〜0.25mmの範囲内であって、しかも前記犠牲陽極材のマトリックス中に、粒子径0.1〜1.0μmのSi粒子が、単位面積当たり15000〜45000個/mm2存在することを特徴とするものである。
心材のSi量は、犠牲陽極材面のろう付け性に影響を与える。Si量が0.6%未満では、犠牲陽極材と心材間のSi濃度差が大きくなるため、犠牲陽極材のSiが心材へと拡散し、ろう付け性が低下する。また0.9%を越えてSiを添加すれば、心材の融点が低下するため、チューブの重ね合せ接合部にエロージョンが発生してしまうおそれがある。そこで心材のSi量は0.6〜0.9%の範囲内とした。
Feは、心材に添加することにより、Al−Fe系化合物やAl−Fe−Si系化合物として心材合金中に存在し、ろう付け後の強度を向上させる効果がある。Fe量が0.2%未満では、これらの化合物量が少ないため、ろう付け後の強度が不足する。またFe量が0.5%を越えれば、これらの化合物が多くなるため、カソードサイトが増加して、心材の耐食性が低下する。そこで心材のFe量は0.2〜0.5%の範囲内とした。
Cuは、心材の強度を向上させる元素であるが、Cuが0.4%未満では、心材の強度を向上させることができない。一方Cu量が0.7%を越えれば、粒界腐食感受性が増加し、耐食性を低下させる。そこで心材のCu量は0.4〜0.7%の範囲内とした。
Mnは心材の強度を向上させる元素であるが、Mn量が1.0%未満では、心材の強度を向上させることができない。一方Mn量が1.8%を越えれば、粗大金属間化合物が生成されて、加工性と耐食性が低下してしまう。そこで心材のMn添加量は1.0〜1.8%の範囲内とした。
Tiは、心材合金の耐食性を向上させる元素であり、心材にTiが含有されていれば、心材中へ層状にTiが析出して、孔食が深さ方向に進行することを抑制する効果がある。但し、Ti量が0.05%未満では、その効果が充分ではなく、耐食性向上に影響を与えない。一方、Ti量が0.2%を越えれば、粗大な金属間化合物が生成されるため、加工性と耐食性が低下してしまう。そこで心材のTi量は0.05〜0.2%の範囲内とした。
Siは、犠牲陽極材の融点を低下させてろう付け加熱時において液相を生じやすくし、ベアフィン材とのろう付け(外部ろう付け)を可能にする。Si量が2.5%未満では、生じる液相がわずかとなって、外部ろう付けが機能しにくくなる。一方Si量が4.5%を越えれば、ろう付け加熱時に生じる液相量が多くなるために、残存固相として存在する犠牲陽極材部分が少なくなってしまって、耐食性が低下する。そこで犠牲陽極材のSi量は2.5〜4.5%の範囲とした。なおろう付け性と耐食性の観点からより好ましいSi量範囲は、3.1%以上、4.5%以下である。
Znは、心材よりも犠牲陽極材の自然電位を下げる作用を有し、犠牲防食効果によりクラッド材の耐食性を向上させるために効果がある。またZnを添加すれば、犠牲陽極材の融点が下がるため、ろう付け加熱時に生じる液相量が多くなり、外部ろう付け性を向上させる効果も示す。犠牲陽極材のZn量が2.5%未満では、犠牲防食効果が発揮されにくくなり、耐食性が低下する。一方Zn量が5.5%を越えれば、犠牲陽極材の自己耐食性が低下するため、耐食性が逆に低下し、またフィン/チューブ接合部のZn量が増加するため、フィン剥がれが発生する。そこで犠牲陽極材のZn量は2.5〜5.5%の範囲内とした。
Feは、犠牲陽極材の合金に添加することにより、犠牲陽極材の表層や、チューブ重ね合せ接合部内の共晶部内にAl−Fe系やAl−Fe−Si系化合物を形成する。フィン間部のチューブ材表層に存在するこれらの化合物は、腐食の起点となるため犠牲陽極効果により耐食性を向上させるが、その一方、チューブ接合部内の共晶部では、これらの化合物がカソードサイトとなり、優先腐食の発生を助長してしまう。ここでFe量が0.2%未満では、表層に存在するAl−Fe−Si系化合物が少ないため、犠牲陽極材の耐食性が低下し、一方Fe量が0.5%を越えれば、重ね合せ接合部内の共晶部分のAl−Fe系やAl−Fe−Si系化合物が増えるため、チューブ重ね合せ接合部の耐食性が低下してしまう。そこでチューブの耐食性と、重ね合せ接合部の耐食性とを両立させるため、犠牲陽極材のFe量は0.2〜0.5%の範囲内とした。なお、より確実にこれらの効果を確保するためには、Fe量は0.2%以上、0.4%以下とすることが好ましい。
Naは、犠牲陽極材合金に添加することにより、犠牲陽極材層中のSi粒子のサイズを細かく均一に分散させることができ、粗大なSi粒子の発生を抑制する効果がある。また、このようなSi粒子の微細化、均一化により、ろう付け加熱時にSi粒子間のネットワークが形成されやすくなり、ろう付け加熱時に表層に形成される液相量を増加させる効果もある。ここで、Srを添加することによっても同様な効果が得られるが、Sr添加の場合は、ろう付け加熱時にろう材の酸化が進み、ろう材の流動性を低下させて、ろう付け性を逆に低下させてしまうおそれがある。一方、Na添加の場合は、ろう付け加熱時にろう材の流動性は低下しないため、ろう付け性を損なうことはない。ここで、Na量が0.005%未満では、上記の効果が発現せず、一方0.1%を越えてNaを添加しても、その効果は飽和してしまう。そこでNaの添加量は、0.005〜0.1%の範囲内とした。
ろう材のSi量が7.5%未満では、形成される溶融ろう量が少なくなるため、チューブ重ね合せ接合部のろう付け性が低下してしまう。一方ろう材のSi量が12%を越えれば、鋳造時に粗大なSiが晶出するため、クラッド圧延時に割れが発生してしまう。そこでろう材のSi量は7.5〜12%の範囲内とした。
Feは、Al−Si系ろう材に添加することにより、チューブ重ね合せ接合部内の初晶部分や共晶部分内にAl−Fe系やAl−Fe−Si系化合物を形成する。これらの化合物は、カソードサイトとなるため、腐食発生の起点となるが、0.2〜0.5%のFe量範囲内においては、初晶部分と共晶部分が均等に腐食するため、優先腐食を抑制することができる。すなわち、Fe量が0.2%未満では、チューブ重ね合せ接合部内の初晶部分内、共晶部分内ともに、存在する化合物量が少ないため、より電位構成が卑となる共晶部分が優先腐食してしまい、一方Fe量が0.5%を越えれば、共晶部分内のAl−Fe系やAl−Fe−Si系化合物量が増えるため、共晶部分が優先腐食してしまう。そこでAl−Si系ろう材のFe量は0.2〜0.5%の範囲内とした。なおチューブ重ね合せ接合部の耐食性をより充分に確保するためには、Fe量は0.2%以上、0.4%以下の範囲内とすることが好ましい。
Naは、Al−Si系ろう材に添加することにより、Al−Si系ろう材中のSi粒子のサイズを細かく均一に分散させて、粗大なSi粒子の発生を抑制し、Al−Si系ろう材の心材部やチューブ重ね合せ接合部の局部溶融やエロージョンを抑制させることができる。Na以外にSrを添加することによっても同様な効果が得られるが、Sr添加の場合は、ろう付け加熱時にろう材の酸化が進み、ろう材の流動性を低下させて、ろう付け性を低下させてしまう。一方、Na添加の場合は、ろう付け加熱時においてろう材の流動性は低下しないため、ろう付け性を向上させることができる。ここでNa添加量が0.005%未満では、上記の効果が発現せず、また0.1%を越えてNaを添加しても、上記の効果は飽和してしまう。そこでAl−Si系ろう材におけるNa量は0.005〜0.1%の範囲内とした。
表1の合金符号A1〜A10に示すこの発明の成分組成範囲内の犠牲陽極材、表2の合金符号B1〜B13に示すこの発明の成分組成範囲内の心材、および表3の合金符号C1〜C6に示すこの発明の成分組成範囲内のAl−Si系ろう材について、それぞれDC鋳造し、鋳塊を作製した。
表1の合金符号A11〜A17に示す犠牲陽極材、表2の合金符号B14〜B25、表2の合金符号B14〜B25に示す心材、および表3の合金符号C7〜C11に示すAl−Si系ろう材を用い、実施例1と同様にして表9、表10に示す組合せのクラッド材を作製した。
犠牲陽極材、心材、およびAl−Si系ろう材を重ね合せてクラッド材を製造した際に、健全なクラッド材ができた場合を◎とし、鋳造時に割れが発生した場合や、クラッド率の制御ができなかった場合を×とした。
各アルミニウム合金クラッド材からJIS5号試験片を切り出し、ろう付け相当加熱処理として窒素雰囲気中で600℃×3分の加熱を実施し、引張試験を行ない、引張強度を調べた。そしてろう付け相当加熱処理後の引張強度が140MPa以上を◎、140MPa以下を×とした。
各アルミニウム合金クラッド材について、犠牲陽極材面を外側として、図1に示すような偏平断面形状に成形し、両端部の重ね合せ幅を3mm、チューブ長さを20cmとした。この偏平チューブを9本作製し、図3に示すように、偏平チューブ4の外側面にベアフィン材5を、また偏平チューブ4の両端にヘッダプレート8を組合せて、KF−AlF3系のフラックス(KAlF4等)粉末を塗布して乾燥後、窒素雰囲気中で600℃×3分間のろう付け加熱を実施し、偏平チューブが9段の模擬コンデンサコアを作製した。ここでフィン材としては、JIS 3003合金にZnを1%添加した板厚0.08mmのベア材を使用して、フィンピッチ3mm、コルゲート後のフィンの長さが18cm、偏平チューブとの接合点数が60箇所となるようにコルゲート加工を施したものを用いた。またヘッダプレート材としては、JIS 3003合金の片面にクラッド率10%でJIS 4045合金をクラッドし、厚さ1mmに圧延した2層クラッド材を使用した。
(1)フィン/チューブ接合部フィレット幅
図3に示すようなろう付け接合を施して得られた模擬コンデンサコアについて、9段の偏平チューブのうち下から3段目を切り出した。その3段目の60箇所の接合部のうちで、中央近傍の21番目から40番目までの計20箇所のベアフィンと偏平チューブとの接合部のフィレット幅Wを、図2に示すように測定してその平均値を算出した。測定したフィレット幅Wの平均値が500μm以上、650μm以下の場合を◎、400μm以上、500μm未満の場合を○、400μm未満の場合を×とした。
(2)チューブ重ね合せ接合部
図3に示すような、ろう付け接合により得られた模擬コンデンサコアについて、9段の偏平チューブのうち、下から4段目を切り出して、偏平チューブの断面組織観察を実施した。チューブ重ね合せ接合部が正常にろう付けされている場合を◎、ろう付け接合がされていない場合や、エロージョンが発生した場合を×とした。
図3に示すような、ろう付け接合により得られた模擬コンデンサコアについて、9段の偏平チューブのうち、下から5段目と6段目を切り出し、耐食性評価としてSWAAT試験を実施した。すなわち、切断したヘッダプレート材の両端をテープでマスキングし、試験期間を1000時間として、SWAAT試験を行ない、その後の模擬コンデンサコアについて、次の(1)、(2)の2箇所の腐食状況を調査した。
(1)フィン間のチューブ部分
SWAAT試験後の模擬コンデンサコアについて、フィン間のチューブ部分の孔食深さを測定した。フィン間のチューブの最大孔食深さが、60μm未満を◎、80μm未満を○、80μm以上を×とした。
(2)偏平チューブの重ね合せ接合部
SWAAT試験後の模擬コンデンサコアについて、偏平チューブの重ね合せ接合部の腐食状況を調査した。重ね合せ接合部に発生した優先腐食の長さが0.3mm未満のものを◎、0.3mm以上、0.5mm未満を○、0.5mm以上を×とした。
2 犠牲陽極材
3 Al−Si系ろう材
4 チューブ(偏平チューブ)
5 ベアフィン材
7 フィレット
10 クラッド材
W フィレット幅
Claims (4)
- 板材を曲げ成形して両端部を重ね合せ、その重ね合せ部分をろう付け接合してチューブ状とし、かつそのチューブの外面側にベアフィン材がろう付け接合される熱交換器用チューブ向けのクラッド材において;
心材として、Si0.6〜0.9%(mass%、以下同じ)、Fe0.2〜0.5%、Cu0.4〜0.7%、Mn1.0〜1.8%、Ti0.05〜0.2%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金が用いられ、その心材の両面のうち、チューブの外面側となるべき一方の面に、Si2.5〜4.5%、Zn2.5〜5.5%、Fe0.2〜0.5%、Na0.005〜0.1%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる、ろう付け機能を有する犠牲陽極材がクラッドされ、前記心材の他方の面に、Si7.5〜12%、Fe0.2〜0.5%、Na0.005〜0.1%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるAl−Si系ろう材がクラッドされ、かつ全板厚が0.1〜0.25mmの範囲内であって、しかも前記犠牲陽極材のマトリックス中に、粒子径0.1〜1.0μmのSi粒子が、単位面積当たり15000〜45000個/mm2存在することを特徴とする、熱交換器用チューブ向けアルミニウム合金クラッド材。 - 請求項1に記載の熱交換器用チューブ向けアルミニウム合金クラッド材において、
前記犠牲陽極材の厚さが、25μm以上、35μm以下であり、かつ前記Al−Si系ろう材の厚さが、10μm以上、30μm以下であることを特徴とする、アルミニウム合金クラッド材。 - 請求項1もしくは請求項2に記載の熱交換器用チューブ向けアルミニウム合金クラッド材において、
心材におけるろう付け加熱後の結晶粒の大きさが30μm以上、200μm以下であることを特徴とする、アルミニウム合金クラッド材。 - 請求項1〜請求項3のいずれかに記載のクラッド材を用い、そのクラッド材に曲げ成形を施し、両端を重ね合せてろう付け接合してチューブとすると同時にそのチューブの外面にベアフィン材をろう付け接合してなる熱交換器コアにおいて、
ろう付け接合後のチューブとベアフィン材との接合部のフィレット幅が、400〜650μmの範囲内にあることを特徴とする、熱交換器コア。
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