JP5159709B2 - 熱交換器用チューブ向けアルミニウム合金クラッド材およびそれを用いた熱交換器コア - Google Patents

熱交換器用チューブ向けアルミニウム合金クラッド材およびそれを用いた熱交換器コア Download PDF

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この発明は、コンデンサやエバポレータ等の主として自動車に使用される熱交換器において、媒体流路を構成するためのチューブとして用いられるクラッド材に関するものであり、特に優れた耐食性を有すると同時にチューブとして外部ろう付け機能を発揮し得るクラッド材に関するものである。
自動車用熱交換器において冷却水等の媒体の流路を構成するためのチューブ材としては、一般に3004合金などのAl−Mn系合金を心材とし、その片面にAl−Si系合金からなるろう材や、Al−Mn系合金からなる犠牲陽極材をクラッドした2層クラッド材、あるいは前記同様の心材の一方の片面にろう材を、他方の片面に犠牲陽極材をクラッドしてなる3層クラッド材などが広く使用されている。
このようなクラッド材によって媒体流路となるべきチューブを形成して熱交換器を作製するにあたっては、板状のクラッド材に曲げ加工を施して管状(通常は偏平チューブ状)に成形し、その両端部分を重ね合せ、その重ね合せ部分をろう付け接合し、チューブとすることが多い。またこのようなチューブを用いて熱交換器を作製する場合、チューブの外面(偏平チューブでは一般に幅広な偏平面)に例えばコルゲート状のフィンをろう付け接合するとともに、チューブの両端部分をヘッダプレートにろう付け接合して熱交換器コアとするのが通常である。さらに、場合によってはチューブの内側にインナーフィンを配置して、これをチューブ内面にろう付け接合することもある。
なおこのような熱交換器の製作過程においては、チューブ形成のためのクラッド材の両端重ね合せ部分のろう付け接合と、チューブに対するフィンのろう付け接合と、チューブの両端部のヘッダプレートへのろう付け接合、さらにはインナーフィンのろう付け接合は、同時に1回のろう付け加熱によって行なうのが通常である。
ところでフィン材としては、心材の片面もしくは両面にろう材をクラッドしてなる、いわゆるブレージングシートを用いることも多いが、放熱性やコストの点からは、フィン材としてろう材をクラッドしていない裸のもの、すなわちいわゆるベアフィン材を用いることが望ましい。このようなベアフィン材を用いる場合、そのベアフィン材がろう付け接合されるチューブ材に対しては、その外面側の表面が高いろう付け性を有していること、すなわち外部ろう付け機能を有していることが要求される。またチューブ材に対しては、後にも改めて説明するように、高い耐食性も要求されるのが通常である。
従来、上述のようなチューブとしての外部ろう付け機能と耐食性との両者を満足させるためには、犠牲陽極効果を付与するべくZnを添加したAl−Si系ろう材を、チューブ外側となる心材の一方の面にクラッドしてなるクラッド材を用いることが一般的であった。しかしながらこのようにZnを添加しただけのAl−Si系ろう材を心材にクラッドしたクラッド材では、チューブに対するフィン材のろう付け接合時において、溶融ろうの流動と同時にZnも流動してしまい、ろう付け接合後のチューブ材の表面層、特にフィン間の中央部分に残存するZn量が少なくなってしまい、充分な耐食性を確保することが困難となってしまう。その問題を解決するためには、ろう材に添加するZn量を増量することが考えられるが、その場合には、フィン材のろう付け接合後の接合部(フィレット部分)に、流動したZnが著しく濃化してしまい、そのためフィレット部分が優先腐食されてしまうという新たな問題が発生し、結局耐食性を確保することが困難となってしまう。
これらの観点から、熱交換器コアに使用されるチューブ用のクラッド材としては、外部ろう付け機能と耐食性との両者を充分に満足し得る新たなクラッド材の開発が強く求められている。
このような要求に対し、既に特許文献1においては、チューブの外面側となる面にクラッドされるZn含有犠牲陽極材として、外部ろう付け性を付与するために1.5%を越え3.0%未満のSiを添加し、かつその犠牲陽極材のZn量を3.0〜10.0%の範囲内とし、また心材に0.05〜0.35%のTiを添加したクラッド材が提案されている。またこの特許文献1の場合、犠牲陽極材層中のSi粒子を微細かつ均一にするために、犠牲陽極材に微量のSrを添加することも示されている。
一方、特許文献2においては、チューブの内面となる内面犠牲陽極材として、犠牲陽極効果を付与するためにZnを1.0〜10.0%含有させると同時にろう付け性付与のためにSiを3.0〜12.0%含有させ、さらに耐エロージョン性向上のためにSrを添加したものが示されている。そしてまたこの特許文献2においては、内面犠牲陽極材にさらにFeを0.15〜1.2%含有させること、さらに内面犠牲陽極材中のSi粒子を微細かつ均一に分散させることにより、耐エロージョン性を向上させることも記載されている。なお特許文献2に示されているのは、上述のように犠牲陽極材をチューブの内面側に配置するものではあるが、その犠牲陽極材の位置を反転させてチューブの外面側とし、フィン材に対する外部ろう付け機能と、チューブの外面側の環境に対する耐食性を確保しようとすることも、考えられないでもない。
しかしながら、これらの特許文献1、特許文献2に示される熱交換器のチューブ用のクラッド材は、良好なろう付け性と充分な耐食性、特にチューブ外面側の環境(外部環境)に対する耐食性を確保するには、未だ不充分であった。
すなわち、ラジエータなどのようにチューブ内に冷却水が常に流れている環境下では、インナーフィンに犠牲防食効果を持たせることが可能であり、また一般にチューブ内面に常に水膜が広がっている使用環境であるため、チューブ内面での犠牲防食効果を充分に発揮させることは比較的容易である。しかしながら、熱交換器のチューブの外面側は、一般に湿潤と乾燥が繰返されて、水膜が途切れがちな環境下にあるのが通常であり、このようなチューブ外面側の環境に対する耐食性については、上記の特許文献1、2に示される技術では未だ不充分であった。また、フィン間チューブ部でも、乾燥時の水膜の途切れと腐食加速イオンの局部的な濃縮により、犠牲防食効果を充分に機能させ難く、したがって、より高いレベルの防食能力が要求されるのが実情である。
また特許文献2の提案の場合、ろう付け性を付与したチューブ内面側の犠牲陽極材について、Fe量を0.15〜1.2%と規定し、外部耐食性を向上させることが示されており、このような犠牲陽極材をチューブの外面側に適用することによって、チューブ外面側の耐食性、ろう付け性を確保することも考えられるが、このようなFe量では、Al−Fe系、Al−Fe−Si系の化合物がろう付け接合時においてフィレット部分に集中し、その結果フィレット部分が強いカソードサイトとなってしまって、優先的な腐食の進行を招いてしまうおそれがある。
さらに特許文献2の提案では、チューブ内面側についてではあるが、犠牲陽極材中のSi粒子を微細かつ均一にして、ろう付け接合時のフィレット形成状態を良好にするために、微量のSrを添加することが記載されている。しかしながら、Srを添加した場合、Si粒子は微細化するものの、ろう付け加熱中においてろう材の酸化を進め、溶融ろうの流動性を阻害することが認められ、そのため逆にろう付け性が不安定化してしまうおそれがある。そしてまた特許文献2では、犠牲陽極材中のSi粒子分布を、耐エロージョンコロージョン性およびエロージョン性の観点から、0.1〜1.0μmのSi粒子を1mm当り2×10〜1×10個存在させる、と規定しているが、本願で対象としているように犠牲陽極材をチューブ外面側に用いて特にベアフィン材とろう付け接合する場合、Si粒子が上記の範囲内では充分なろう付け性を確保することは困難であった。
特開2005−307252号公報 特開2000−309837号公報
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、板材を曲げ成形して両端部を重ね合せ、その重ね合せ部分をろう付け接合してチューブ状とし、かつそのチューブの外面側にベアフィン材がろう付け接合される熱交換器用チューブ向けのクラッド材として、充分な外部ろう付け機能を有すると同時に、優れた耐食性、特にチューブ外面側の環境に対する良好な耐食性を確保し得るクラッド材を提供することを課題とするものである。
上述のような課題を解決するため、本発明者等は、心材におけるチューブの外面側となるべき面に犠牲陽極材を配置し、芯材におけるチューブ内面側となるべき面にろう材を配置してなる3層構造のクラッド材を基本とし、種々実験、検討を重ねた結果、そのクラッド材構成材料、特に心材および犠牲陽極材の成分組成を適切に調整すると同時に、犠牲陽極材の組織状態を適切に制御することによって、犠牲陽極材側のベアフィン材に対するろう付け性を充分に向上させ、同時にチューブ外面側の環境に対する耐食性を充分に確保し得ることを見出し、この発明をなすに至ったのである。
具体的には、請求項1の発明は、板材を曲げ成形して両端部を重ね合せ、その重ね合せ部分をろう付け接合してチューブ状とし、かつそのチューブの外面側にベアフィン材がろう付け接合される熱交換器用チューブ向けのクラッド材において;
心材として、Si0.6〜0.9%(mass%、以下同じ)、Fe0.2〜0.5%、Cu0.4〜0.7%、Mn1.0〜1.8%、Ti0.05〜0.2%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金が用いられ、その心材の両面のうち、チューブの外面側となるべき一方の面に、Si2.5〜4.5%、Zn2.5〜5.5%、Fe0.2〜0.5%、Na0.005〜0.1%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる、ろう付け機能を有する犠牲陽極材がクラッドされ、前記心材の他方の面に、Si7.5〜12%、Fe0.2〜0.5%、Na0.005〜0.1%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるAl−Si系ろう材がクラッドされ、かつ全板厚が0.1〜0.25mmの範囲内であって、しかも前記犠牲陽極材のマトリックス中に、粒子径0.1〜1.0μmのSi粒子が、単位面積当たり15000〜45000個/mm存在することを特徴とするものである。
さらに請求項2の発明は、請求項1に記載の熱交換器用チューブ向けアルミニウム合金クラッド材において、前記犠牲陽極材の厚さが、25μm以上、35μm以下であり、かつ前記Al−Si系ろう材の厚さが、10μm以上、30μm以下であることを特徴とするものである。
さらに請求項3の発明は、請求項1もしくは請求項2に記載の熱交換器用チューブ向けアルミニウム合金クラッド材において、心材におけるろう付け加熱後の結晶粒の大きさが30μm以上、200μm以下であることを特徴とするものである。
そしてまた請求項4の発明は、上述のようなクラッド材を用いて作成した熱交換器コアについてのものであり、この請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のクラッド材を用い、そのクラッド材に曲げ成形を施し、両端を重ね合せてろう付け接合してチューブとすると同時にそのチューブの外面にベアフィン材をろう付け接合してなる熱交換器コアにおいて、ろう付け接合後のチューブとベアフィン材との接合部のフィレット幅が、400〜650μmの範囲内にあることを特徴とするものである。
この発明のクラッド材は、板材を曲げ成形して両端部を重ね合せ、その重ね合せ部分をろう付け接合してチューブ状とし、かつそのチューブの外面側にベアフィン材がろう付け接合される熱交換器用チューブ向けのクラッド材として、充分な外部ろう付け機能を示すと同時に、優れた耐食性、特にチューブ外面側の環境に対する良好な耐食性を発揮することができる。したがってこの発明のクラッド材を自動車用熱交換器などの種々の熱交換器のチューブに使用すれば、ろう付け接合不良を招くことなく充分な構造強度を有しかつ耐食性が優れていて充分な耐久性を有する熱交換器を作成することができる。
図1は、この発明のクラッド材を用いて作成した偏平チューブの模式的な断面図である。 図2は、この発明で規定するベアフィンとチューブとの接合部のフィレット幅の測定箇所を示す模式的な断面図である。 図3は、この発明の実施例および比較例で使用した模擬コンデンサコアの外観を示す模式的な斜視図である。
この発明のアルミニウム合金クラッド材は、例えば図1に示すように、板材(板状クラッド材)10として、曲げ成形を施してチューブ(通常は偏平チューブ状)に丸め、その両端部10A,10Bを重ね合せて、その重ね合せ部分10Cをろう付け接合して、冷却水などの媒体を流すための通路としてのチューブ(通常は偏平チューブ)4として使用するものである。またこのチューブを用いて熱交換器を組立てるにあたっては、チューブ4の外面(通常は偏平チューブにおける幅広な偏平面4A)に放熱のためのベアフィン材(図示せず)をろう付け接合し、さらに通常はそのチューブ4の両端部分をヘッダープレート(図示せず)にろう付け接合し、また必要に応じてチューブ内面にインナーフィンを配置、接合して、熱交換器コアとする。なお、クラッド材10をチューブに成形した後の両端重ね合せ部分10Cの接合のためのろう付けと、ベアフィン材をチューブの外面に接合するためのろう付け、さらにチューブの両端をヘッダープレートに接合するためのろう付けは、同時に1回のろう付け加熱によって行なうのが通常である。またチューブの内側にいわゆるインナーフィンを設ける場合も、そのインナーフィンを同時にろう付けするのが通常である。
ここで、この発明の場合、クラッド材10としての積層構造は、図1中に示しているように、心材1の両面のうち、チューブ4としての外側となるべき側の面、すなわち外部環境に曝される側の面に犠牲陽極材2を、また心材1の両面のうち、チューブ10としての内側となるべき側の面にAl−Si系ろう材3を、それぞれクラッドしてなるものである。そしてまた上記犠牲陽極材は、ベアフィン材とのろう付けのため、外部ろう付け機能を有するものとしている。なおチューブ内面側に相当するろう材は、主として、クラッド材を曲げ成形してその両端部を重ね合せた状態での、その重ね合せ部のろう付け接合のために配置しているものであるが、チューブ内面側にインナーフィンを配置する場合には、そのインナーフィンのろう付け接合にも利用可能である。
そこで次にこの発明のアルミニウム合金クラッド材の各構成材についてさらに詳細に説明する。
先ず心材としては、Si0.6〜0.9%、Fe0.2〜0.5%、Cu0.4〜0.7%、Mn1.0〜1.8%、Ti0.05〜0.2%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を用いる。このような心材の成分組成の限定理由は次の通りである。
Si:
心材のSi量は、犠牲陽極材面のろう付け性に影響を与える。Si量が0.6%未満では、犠牲陽極材と心材間のSi濃度差が大きくなるため、犠牲陽極材のSiが心材へと拡散し、ろう付け性が低下する。また0.9%を越えてSiを添加すれば、心材の融点が低下するため、チューブの重ね合せ接合部にエロージョンが発生してしまうおそれがある。そこで心材のSi量は0.6〜0.9%の範囲内とした。
Fe:
Feは、心材に添加することにより、Al−Fe系化合物やAl−Fe−Si系化合物として心材合金中に存在し、ろう付け後の強度を向上させる効果がある。Fe量が0.2%未満では、これらの化合物量が少ないため、ろう付け後の強度が不足する。またFe量が0.5%を越えれば、これらの化合物が多くなるため、カソードサイトが増加して、心材の耐食性が低下する。そこで心材のFe量は0.2〜0.5%の範囲内とした。
Cu:
Cuは、心材の強度を向上させる元素であるが、Cuが0.4%未満では、心材の強度を向上させることができない。一方Cu量が0.7%を越えれば、粒界腐食感受性が増加し、耐食性を低下させる。そこで心材のCu量は0.4〜0.7%の範囲内とした。
Mn:
Mnは心材の強度を向上させる元素であるが、Mn量が1.0%未満では、心材の強度を向上させることができない。一方Mn量が1.8%を越えれば、粗大金属間化合物が生成されて、加工性と耐食性が低下してしまう。そこで心材のMn添加量は1.0〜1.8%の範囲内とした。
Ti:
Tiは、心材合金の耐食性を向上させる元素であり、心材にTiが含有されていれば、心材中へ層状にTiが析出して、孔食が深さ方向に進行することを抑制する効果がある。但し、Ti量が0.05%未満では、その効果が充分ではなく、耐食性向上に影響を与えない。一方、Ti量が0.2%を越えれば、粗大な金属間化合物が生成されるため、加工性と耐食性が低下してしまう。そこで心材のTi量は0.05〜0.2%の範囲内とした。
心材における以上の各元素のほかは、Alおよび不可避的不純物とすれば良い。
さらに心材としては、その成分組成を前述のように調整するばかりでなく、ろう付け加熱後の状態での結晶粒の大きさとして、板平面方向で30μm以上、200μm以下の範囲内であることが望ましい。
ろう付け加熱後の結晶粒径が30μm未満となるような場合、心材の結晶粒が細かいため、ろう付け加熱時に犠牲陽極材層内のSiが心材へ拡散し易くなり、そのためクラッド材の表層に流出する液相量が減少するため、ろう付け性が低下してしまう。また、ろう付け加熱後の結晶粒径が200μmを越えるような場合、心材の結晶粒の粗大化により、ろう付け加熱後の強度が低下する。なおここで結晶粒径の測定は、JIS H:501に記載されている切断法により実施するものとする。またここで規定する結晶粒の大きさは、ろう付け加熱後のものとするが、一般にろう付け加熱は、590〜610℃程度の範囲内の温度で2〜10分程度で行われ、上記の結晶粒径の測定もその範囲内の代表的な条件すなわち600℃で3分間の加熱を行った後のものとする。
次に上述のような心材の片面(チューブとして外側となるべき面)にクラッドされる犠牲陽極材は、基本的には犠牲陽極機能のみならず、ベアフィン材をろう付け接合するに適したろう付け機能(外部ろう付け機能)を有するものであって、Si2.5〜4.5%、Zn2.5〜5.5%、Fe0.2〜0.5%、Na0.005〜0.1%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる成分組成とする。このような犠牲陽極材の成分限定理由は次の通りである。
Si:
Siは、犠牲陽極材の融点を低下させてろう付け加熱時において液相を生じやすくし、ベアフィン材とのろう付け(外部ろう付け)を可能にする。Si量が2.5%未満では、生じる液相がわずかとなって、外部ろう付けが機能しにくくなる。一方Si量が4.5%を越えれば、ろう付け加熱時に生じる液相量が多くなるために、残存固相として存在する犠牲陽極材部分が少なくなってしまって、耐食性が低下する。そこで犠牲陽極材のSi量は2.5〜4.5%の範囲とした。なおろう付け性と耐食性の観点からより好ましいSi量範囲は、3.1%以上、4.5%以下である。
Zn:
Znは、心材よりも犠牲陽極材の自然電位を下げる作用を有し、犠牲防食効果によりクラッド材の耐食性を向上させるために効果がある。またZnを添加すれば、犠牲陽極材の融点が下がるため、ろう付け加熱時に生じる液相量が多くなり、外部ろう付け性を向上させる効果も示す。犠牲陽極材のZn量が2.5%未満では、犠牲防食効果が発揮されにくくなり、耐食性が低下する。一方Zn量が5.5%を越えれば、犠牲陽極材の自己耐食性が低下するため、耐食性が逆に低下し、またフィン/チューブ接合部のZn量が増加するため、フィン剥がれが発生する。そこで犠牲陽極材のZn量は2.5〜5.5%の範囲内とした。
Fe:
Feは、犠牲陽極材の合金に添加することにより、犠牲陽極材の表層や、チューブ重ね合せ接合部内の共晶部内にAl−Fe系やAl−Fe−Si系化合物を形成する。フィン間部のチューブ材表層に存在するこれらの化合物は、腐食の起点となるため犠牲陽極効果により耐食性を向上させるが、その一方、チューブ接合部内の共晶部では、これらの化合物がカソードサイトとなり、優先腐食の発生を助長してしまう。ここでFe量が0.2%未満では、表層に存在するAl−Fe−Si系化合物が少ないため、犠牲陽極材の耐食性が低下し、一方Fe量が0.5%を越えれば、重ね合せ接合部内の共晶部分のAl−Fe系やAl−Fe−Si系化合物が増えるため、チューブ重ね合せ接合部の耐食性が低下してしまう。そこでチューブの耐食性と、重ね合せ接合部の耐食性とを両立させるため、犠牲陽極材のFe量は0.2〜0.5%の範囲内とした。なお、より確実にこれらの効果を確保するためには、Fe量は0.2%以上、0.4%以下とすることが好ましい。
Na:
Naは、犠牲陽極材合金に添加することにより、犠牲陽極材層中のSi粒子のサイズを細かく均一に分散させることができ、粗大なSi粒子の発生を抑制する効果がある。また、このようなSi粒子の微細化、均一化により、ろう付け加熱時にSi粒子間のネットワークが形成されやすくなり、ろう付け加熱時に表層に形成される液相量を増加させる効果もある。ここで、Srを添加することによっても同様な効果が得られるが、Sr添加の場合は、ろう付け加熱時にろう材の酸化が進み、ろう材の流動性を低下させて、ろう付け性を逆に低下させてしまうおそれがある。一方、Na添加の場合は、ろう付け加熱時にろう材の流動性は低下しないため、ろう付け性を損なうことはない。ここで、Na量が0.005%未満では、上記の効果が発現せず、一方0.1%を越えてNaを添加しても、その効果は飽和してしまう。そこでNaの添加量は、0.005〜0.1%の範囲内とした。
犠牲陽極材の成分組成は、以上の各元素のほかは、Alおよび不可避的不純物とすれば良い。
さらにこの犠牲陽極材は、その厚みが25μm以上、35μm以下であることが望ましい。すなわち、犠牲陽極材の厚さが25μm未満では、犠牲陽極材中のSiがろう付け加熱中に心材へ拡散してしまうために、ろう付け時の残存Si量が少なくなり、ろう付けのための液相量確保が困難となる。一方、犠牲陽極材の厚さが35μmを越えれば、圧延後の適正なクラッド率の確保が困難になる。
さらに犠牲陽極材は、その組織として、粒径0.1〜1.0μmのSi粒子が1mm当り15000個以上45000個以下存在することが望ましい。但しここでSi粒子の粒径とは、短径と長径の平均値を意味するものとする。犠牲陽極材層内における上記サイズのSi粒子分散状況は、ろう付け性および耐食性に影響を与える。上記サイズのSi粒子が1mmあたり15000個未満では、Si粒子の個数が少ないため、ろう付け加熱時に、溶解したSi粒子間にネットワークが形成されにくくなり、表層に形成される液相量が低下するため、ろう付け性が低下する。また上記サイズのSi粒子が1mmあたり45000個を越えて存在すれば、ろう付け加熱時に形成される液相が多くなるため、残存固相として存在する犠牲陽極材部分が減少し、耐食性が低下してしまう。
一方、心材におけるチューブとしての内面側の面にクラッドされるAl−Si系ろう材としては、Si7.5〜12%、Fe0.2〜0.5%、Na0.005〜0.1%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を用いる。このようなAl−Si系ろう材の成分限定理由は次の通りである。
Si:
ろう材のSi量が7.5%未満では、形成される溶融ろう量が少なくなるため、チューブ重ね合せ接合部のろう付け性が低下してしまう。一方ろう材のSi量が12%を越えれば、鋳造時に粗大なSiが晶出するため、クラッド圧延時に割れが発生してしまう。そこでろう材のSi量は7.5〜12%の範囲内とした。
Fe:
Feは、Al−Si系ろう材に添加することにより、チューブ重ね合せ接合部内の初晶部分や共晶部分内にAl−Fe系やAl−Fe−Si系化合物を形成する。これらの化合物は、カソードサイトとなるため、腐食発生の起点となるが、0.2〜0.5%のFe量範囲内においては、初晶部分と共晶部分が均等に腐食するため、優先腐食を抑制することができる。すなわち、Fe量が0.2%未満では、チューブ重ね合せ接合部内の初晶部分内、共晶部分内ともに、存在する化合物量が少ないため、より電位構成が卑となる共晶部分が優先腐食してしまい、一方Fe量が0.5%を越えれば、共晶部分内のAl−Fe系やAl−Fe−Si系化合物量が増えるため、共晶部分が優先腐食してしまう。そこでAl−Si系ろう材のFe量は0.2〜0.5%の範囲内とした。なおチューブ重ね合せ接合部の耐食性をより充分に確保するためには、Fe量は0.2%以上、0.4%以下の範囲内とすることが好ましい。
Na:
Naは、Al−Si系ろう材に添加することにより、Al−Si系ろう材中のSi粒子のサイズを細かく均一に分散させて、粗大なSi粒子の発生を抑制し、Al−Si系ろう材の心材部やチューブ重ね合せ接合部の局部溶融やエロージョンを抑制させることができる。Na以外にSrを添加することによっても同様な効果が得られるが、Sr添加の場合は、ろう付け加熱時にろう材の酸化が進み、ろう材の流動性を低下させて、ろう付け性を低下させてしまう。一方、Na添加の場合は、ろう付け加熱時においてろう材の流動性は低下しないため、ろう付け性を向上させることができる。ここでNa添加量が0.005%未満では、上記の効果が発現せず、また0.1%を越えてNaを添加しても、上記の効果は飽和してしまう。そこでAl−Si系ろう材におけるNa量は0.005〜0.1%の範囲内とした。
なおAl−Si系ろう材における上記各元素の残部は、Alおよび不可避的不純物とすれば良い。
ここで、Al−Si系ろう材の厚さは、10μm以上、30μm以下の範囲内とすることが望ましい。すなわち、Al−Si系ろう材の厚さが、10μm未満では、ろう材厚が薄いため、圧延後の適正なクラッド率の確保が困難になる。一方Al−Si系ろう材の厚さが30μmを越えれば、心材の比率が低下し、クラッド材の強度が低下し、またろう付け加熱時に多量の溶融ろうが形成されるため、チューブ重ね合せ接合部のエロージョンが発生してしまう。
以上のような成分組成からなる心材、犠牲陽極材、およびAl−Si系アルミニウム合金ろう材からなるクラッド材の全体の厚み(合計厚み)は、0.1mm以上、0.25mm以下とする。
クラッド材全厚みが0.1mm未満では、犠牲陽極材の厚みとして、チューブに成形してベアフィン材とろう付け接合する際のフィレット幅を確保するために必要な厚みを確保することが困難となる。また全厚みが0.25mmを越えれば、耐食性およびろう付け性については特に問題はないが、熱交換器として使用する際に放熱性が悪くなってしまう問題がある。そこでクラッド材全厚みは0.1〜0.25mmの範囲内とした。
このようなクラッド材を製造する方法は特に限定されるものではないが、代表的な例について次にその概要を説明する。
先ず心材、犠牲陽極材、Al−Si系ろう材のそれぞれについて、常法にしたがってDC鋳造法、連続鋳造法等によって鋳造し、鋳塊とする。ここで、犠牲陽極材については、鋳造時に晶出するSi粒子を微細化するため、鋳造時の鋳塊中心の冷却速度が0.5℃/sec以上となるように鋳造条件を調整することが望ましい。
各鋳塊のうち、犠牲陽極材鋳塊、Al−Si系ろう材鋳塊については、面削して所定の板厚とした後、熱間圧延を施し、必要に応じて冷間圧延を施してそれぞれ所定の板厚の圧延板とする。また心材については、均質化処理および面削を施してその所定の板厚としたまま、あるいはさらに熱間圧延や冷間圧延を施して所定の板厚とする。そして心材の一方の片面に犠牲陽極材を、他方の片面にAl−Si系ろう材を配し、通常のクラッド板製造方法に従ってクラッドする。例えば、これらを3層に重ね合せて熱間圧延し、さらに冷間圧延を施して所定の最終板厚とする。またこの冷間圧延の中途、あるいは冷間圧延の前には、中間焼鈍を施してもよい。
以上のようにして得られたクラッド材を実際に熱交換器に適用するにあたっては、犠牲陽極材の側の面が外側となるように特定の断面形状の管状(通常は偏平チューブ状)となるように曲げ成形し、その両端を重ね合せてろう付け接合し、冷却水などの媒体を流すための流路を構成するチューブ(通常は偏平チューブ)として使用する。またそのチューブの外面(通常は偏平チューブにおける幅広な偏平面)には、ベアフィン材をろう付け接合し、さらに必要に応じてチューブの両端部分をヘッダープレートにろう付け接合して、熱交換器コアとする。ここで、クラッド材をチューブに成形した後の両端部の重ね合せ部分の接合のためのろう付けと、ベアフィン材をチューブの外面に接合するためのろう付け、さらにはヘッダープレートとのろう付け接合は、同時に1回のろう付け加熱によって行なうのが通常である。またチューブの内側にいわゆるインナーフィンを設ける場合も、そのインナーフィンを同時にろう付けするのが通常である。
ここで、チューブの外面にベアフィン材をろう付け接合するにあたっては、この発明のクラッド材を用いたチューブでは、その外面に存在する犠牲陽極材が充分なろう付け性を有しているため、ベアフィン材を確実にろう付け接合することができる。なおこのろう付け接合方法としては、主にフッ化物系フラックスを用いた方法を適用することが望ましい。また一般にろう付け加熱は、前述のように、590〜610℃程度の範囲内の温度で2〜10分程度で行うのが通常である。
さらに、チューブの外面にろう付け接合されるベアフィン材の形状、寸法は特に限定されないが、通常は、板厚40〜100μmで、フィンピッチ2.5〜4mmとなるようにコルゲート加工されたフィン(いわゆるコルゲートフィン)を用いることが望ましい。
一方、チューブの外面にベアフィン材をろう付け接合するにあたっては、図2に示すように、ろう付け接合後の状態として、チューブ4とコルゲート加工されたベアフィン材5とのろう付け接合部分のフィレット7の幅、すなわちフィレット7の幅Wが、400μm以上、650μm以下となるようにすることが望ましい。換言すれば、チューブとコゲートフィンとをろう付け接合してなる熱交換器コアの状態で、上記のフィレット7の幅Wが、400μm以上、650μm以下となるようにすることが望ましい。フィレット幅Wが400μm未満では、熱交換器としての強度を保つことが困難となり、一方650μmを越えれば、ろう付け加熱時に生成される液相量が多くなって接合部近傍においてフィンが溶解する部位が多くなってしまうおそれがある。ここで、フィレット幅Wは、より好ましくは、500μm以上、650μm以下の範囲内が望ましい。
以下に、この発明の実施例を比較例と対比して説明する。なおこれらの実施例は、この発明の一実施態様を示すものに過ぎず、この発明の技術的範囲を限定するものでないことはもちろんである。
実施例:
表1の合金符号A1〜A10に示すこの発明の成分組成範囲内の犠牲陽極材、表2の合金符号B1〜B13に示すこの発明の成分組成範囲内の心材、および表3の合金符号C1〜C6に示すこの発明の成分組成範囲内のAl−Si系ろう材について、それぞれDC鋳造し、鋳塊を作製した。
犠牲陽極材とAl−Si系ろう材については、面削を実施後に、500℃にて熱間圧延により所定の板厚に圧延して板形状にした。心材用鋳塊は、520℃×6時間の均質化処理を行い、厚さ40mmに面削をした。それぞれ犠牲陽極材板、心材用鋳塊、Al−Si系ろう材用板をこの順に表4〜表8に示す組合せで重ねて、480℃で熱間圧延を施して厚さ3.5mmの3層クラッド材とし、これを0.23mmまで冷間圧延を行い、次いで360℃で3時間の焼鈍を施した後に、板厚0.2mmまで冷間圧延を実施し、評価用クラッド材とした。
比較例:
表1の合金符号A11〜A17に示す犠牲陽極材、表2の合金符号B14〜B25、表2の合金符号B14〜B25に示す心材、および表3の合金符号C7〜C11に示すAl−Si系ろう材を用い、実施例1と同様にして表9、表10に示す組合せのクラッド材を作製した。
なおここで表1〜表3に示す各成分組成値は発光分光分析装置によって、鋳造後の犠牲陽極材、心材、Al−Si系ろう材より測定された値である。
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得られた各々のクラッド材について、製造性、引張強度、ろう付け性、耐食性について、次のように評価した。その結果を表4〜表10に示す。
製造性評価:
犠牲陽極材、心材、およびAl−Si系ろう材を重ね合せてクラッド材を製造した際に、健全なクラッド材ができた場合を◎とし、鋳造時に割れが発生した場合や、クラッド率の制御ができなかった場合を×とした。
引張強度測定:
各アルミニウム合金クラッド材からJIS5号試験片を切り出し、ろう付け相当加熱処理として窒素雰囲気中で600℃×3分の加熱を実施し、引張試験を行ない、引張強度を調べた。そしてろう付け相当加熱処理後の引張強度が140MPa以上を◎、140MPa以下を×とした。
ろう付け性評価:
各アルミニウム合金クラッド材について、犠牲陽極材面を外側として、図1に示すような偏平断面形状に成形し、両端部の重ね合せ幅を3mm、チューブ長さを20cmとした。この偏平チューブを9本作製し、図3に示すように、偏平チューブ4の外側面にベアフィン材5を、また偏平チューブ4の両端にヘッダプレート8を組合せて、KF−AlF系のフラックス(KAlF等)粉末を塗布して乾燥後、窒素雰囲気中で600℃×3分間のろう付け加熱を実施し、偏平チューブが9段の模擬コンデンサコアを作製した。ここでフィン材としては、JIS 3003合金にZnを1%添加した板厚0.08mmのベア材を使用して、フィンピッチ3mm、コルゲート後のフィンの長さが18cm、偏平チューブとの接合点数が60箇所となるようにコルゲート加工を施したものを用いた。またヘッダプレート材としては、JIS 3003合金の片面にクラッド率10%でJIS 4045合金をクラッドし、厚さ1mmに圧延した2層クラッド材を使用した。
上述のようにしてろう付け接合して得られた模擬コンデンサコアについて、以下の(1)、(2)の2箇所の接合部を調査した。
(1)フィン/チューブ接合部フィレット幅
図3に示すようなろう付け接合を施して得られた模擬コンデンサコアについて、9段の偏平チューブのうち下から3段目を切り出した。その3段目の60箇所の接合部のうちで、中央近傍の21番目から40番目までの計20箇所のベアフィンと偏平チューブとの接合部のフィレット幅Wを、図2に示すように測定してその平均値を算出した。測定したフィレット幅Wの平均値が500μm以上、650μm以下の場合を◎、400μm以上、500μm未満の場合を○、400μm未満の場合を×とした。
(2)チューブ重ね合せ接合部
図3に示すような、ろう付け接合により得られた模擬コンデンサコアについて、9段の偏平チューブのうち、下から4段目を切り出して、偏平チューブの断面組織観察を実施した。チューブ重ね合せ接合部が正常にろう付けされている場合を◎、ろう付け接合がされていない場合や、エロージョンが発生した場合を×とした。
耐食性評価:
図3に示すような、ろう付け接合により得られた模擬コンデンサコアについて、9段の偏平チューブのうち、下から5段目と6段目を切り出し、耐食性評価としてSWAAT試験を実施した。すなわち、切断したヘッダプレート材の両端をテープでマスキングし、試験期間を1000時間として、SWAAT試験を行ない、その後の模擬コンデンサコアについて、次の(1)、(2)の2箇所の腐食状況を調査した。
(1)フィン間のチューブ部分
SWAAT試験後の模擬コンデンサコアについて、フィン間のチューブ部分の孔食深さを測定した。フィン間のチューブの最大孔食深さが、60μm未満を◎、80μm未満を○、80μm以上を×とした。
(2)偏平チューブの重ね合せ接合部
SWAAT試験後の模擬コンデンサコアについて、偏平チューブの重ね合せ接合部の腐食状況を調査した。重ね合せ接合部に発生した優先腐食の長さが0.3mm未満のものを◎、0.3mm以上、0.5mm未満を○、0.5mm以上を×とした。
Figure 0005159709
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表4〜表10に示すように、各種試験の結果、この発明の実施例1〜69では、いずれも製造性、引張強度、ろう付け性、耐食性について、この発明のクラッド材が適用される用途および環境に適していることが確認されたが、比較例70〜98では、次に述べるように、この発明のクラッド材が使用される用途、環境において、不当な結果となることが判明した。
すなわち、比較例70の場合は、犠牲陽極材のSi量が少ないため、ろう付け加熱時に形成される液相量が少なくなり、フィン/チューブ接合部のフィレット幅が小さくなった。
比較例71の場合は、犠牲陽極材のSi量が多いため、残存犠牲陽極材部分が少なくなり、フィン間チューブ部の耐食性が低下した。
比較例72の場合は、犠牲陽極材のZn量が少ないため、フィン間チューブ部の耐食性が低下した。
比較例73の場合は、犠牲陽極材のZn量が多いため、フィン間チューブ部の耐食性が低下した。
比較例74の場合は、犠牲陽極材のFe量が少ないため、フィン間チューブ部の耐食性が低下した。
比較例75の場合は、犠牲陽極材のFe量が多いため、チューブ重ね合せ接合部の耐食性が低下した。
比較例76の場合は、犠牲陽極材にNaを添加していないため、犠牲陽極材内のSi粒子が微細化されず、そのためろう付け加熱時に表層に形成される液相量が少なく、フィン/チューブ接合部において接合不充分となった。
比較例77の場合は、犠牲陽極材の厚さが小さいため、フィン/チューブ接合部のフィレット幅が小さくなり、フィン間チューブ部の耐食性も低下した。
比較例78の場合は、犠牲陽極材の厚さが大きいため、健全なクラッド材が製造できなかった。
比較例79の場合は、芯材のSi量が少ないため、ろう付け加熱中に犠牲陽極材のSiが芯材へ拡散してしまい、フィン/チューブ接合部のフィレット幅が小さくなった。
比較例80は、芯材のSi量が多いため、チューブ重ね合せ接合部にエロージョンが発生した。
比較例81の場合は、芯材のFe量が少ないため、強度が低下した。
比較例82の場合は、芯材のFe量が多いため、フィン間チューブ部の耐食性が低下した。
比較例83の場合は、芯材のMn量が少ないため、ろう付け加熱後の引張強度が低下した。
比較例84の場合は、芯材のMn量が多いため、粗大金属間化合物が形成されて、健全なクラッド材が製造できなかった。
比較例85の場合は、芯材のCu量が少ないため、ろう付け加熱後の強度が低下した。
比較例86の場合は、芯材のCu量が多いため、粒界腐食が発生して、フィン間チューブ部の耐食性が低下した。
比較例87の場合は、芯材のTi量が少ないため、フィン間チューブ部の耐食性が低下した。
比較例88の場合は、芯材のTi量が多いため、粗大金属間化合物が形成されて、健全なクラッド材が製造できなかった。
比較例89の場合は、芯材の結晶粒径が小さいため、犠牲陽極材のSiが芯材へ拡散し、フィン/チューブ接合部のフィレット幅が小さくなった。
比較例90の場合は、芯材の結晶粒径が大きいため、ろう付け接合後の引張強度が低下した。
比較例91の場合は、Al−Si系ろう材のSi量が少ないため、チューブ重ね合せ接合部が正常にろう付けされなかった。
比較例92の場合は、Al−Si系ろう材のSi量が多いため、健全なクラッド材が製造できなかった。
比較例93の場合は、Al−Si系ろう材のFe量が少ないため、扁平チューブの重ね合せ接合部の耐食性が低下した。
比較例94の場合は、Al−Si系ろう材のFe量が多いため、扁平チューブの重ね合せ接合部の耐食性が低下した。
比較例95の場合は、Al−Si系ろう材にNaを添加していないため、扁平チューブの重ね合せ接合部にエロージョンが発生した。
比較例96の場合は、Al−Si系ろう材の厚さが小さいため、健全なクラッド材が製造できなかった。
比較例97の場合は、Al−Si系ろう材の厚みが大きいため、ろう付け加熱時に生成される溶融ろう量が多くなり、重ね合せ接合部にエロージョンが発生した。
比較例98の場合は、クラッド材の板厚が薄いため、健全なクラッド材が製造できなかった。
一方、比較例99の場合は、今回調査した製造性、引張強度、ろう付け性、耐食性の各項目について、良好な結果を示した。そこで、同じ材料構成でチューブ材の全板厚のみが異なる実施例2と比較例99をそれぞれ用いて、熱交換器のコアとしての放熱性を調査したところ、チューブ板厚が厚い比較例99は、放熱性が劣っていることが確認された。
1 心材
2 犠牲陽極材
3 Al−Si系ろう材
4 チューブ(偏平チューブ)
5 ベアフィン材
7 フィレット
10 クラッド材
W フィレット幅

Claims (4)

  1. 板材を曲げ成形して両端部を重ね合せ、その重ね合せ部分をろう付け接合してチューブ状とし、かつそのチューブの外面側にベアフィン材がろう付け接合される熱交換器用チューブ向けのクラッド材において;
    心材として、Si0.6〜0.9%(mass%、以下同じ)、Fe0.2〜0.5%、Cu0.4〜0.7%、Mn1.0〜1.8%、Ti0.05〜0.2%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金が用いられ、その心材の両面のうち、チューブの外面側となるべき一方の面に、Si2.5〜4.5%、Zn2.5〜5.5%、Fe0.2〜0.5%、Na0.005〜0.1%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる、ろう付け機能を有する犠牲陽極材がクラッドされ、前記心材の他方の面に、Si7.5〜12%、Fe0.2〜0.5%、Na0.005〜0.1%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるAl−Si系ろう材がクラッドされ、かつ全板厚が0.1〜0.25mmの範囲内であって、しかも前記犠牲陽極材のマトリックス中に、粒子径0.1〜1.0μmのSi粒子が、単位面積当たり15000〜45000個/mm存在することを特徴とする、熱交換器用チューブ向けアルミニウム合金クラッド材。
  2. 請求項1に記載の熱交換器用チューブ向けアルミニウム合金クラッド材において、
    前記犠牲陽極材の厚さが、25μm以上、35μm以下であり、かつ前記Al−Si系ろう材の厚さが、10μm以上、30μm以下であることを特徴とする、アルミニウム合金クラッド材。
  3. 請求項1もしくは請求項2に記載の熱交換器用チューブ向けアルミニウム合金クラッド材において、
    心材におけるろう付け加熱後の結晶粒の大きさが30μm以上、200μm以下であることを特徴とする、アルミニウム合金クラッド材。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載のクラッド材を用い、そのクラッド材に曲げ成形を施し、両端を重ね合せてろう付け接合してチューブとすると同時にそのチューブの外面にベアフィン材をろう付け接合してなる熱交換器コアにおいて、
    ろう付け接合後のチューブとベアフィン材との接合部のフィレット幅が、400〜650μmの範囲内にあることを特徴とする、熱交換器コア。
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