JP5578670B2 - 道路用セメント組成物 - Google Patents

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本発明は、コンクリート舗装道路用セメント組成物、特に現場打ち道路用セメント組成物に関する。
舗装道路の多くは、アスファルト道路であるが、メンテナンスフリーのコンクリート舗装の需要が増加している。
また、高度成長期に大量に建設されたコンクリート道路橋は、約50年以上の供用を経て老朽化が進んでおり、コンクリート床版の補修や打ち替えが必要な橋梁数も増大している。
コンクリート舗装工事やコンクリート床版の補修工事において最も重要なことは、早く工事を終え、交通を早期開放することである。したがって、これらの用途に用いるコンクリートには、まずは早期強度発現性が求められることになる。そこで、通常は、セメントを急速に硬化させるため、超速硬セメントを使用したり、早強性をもたせる硬化促進剤、あるいは粉体系混和材を添加して用いたりしていた。
特許第2556531号公報
しかし、特許文献1記載の硬化促進剤は、コンクリート練り混ぜから打ち込みまでのフレッシュ状態において流動性の低下が大きく、バイブレーターなどを使用しても十分に締め固めることが困難であった。すなわち、コテ仕上げなどに必要な作業時間を十分に確保することが難しかった。これは、特許文献1記載の硬化促進剤に限らず、そのほかの粉体系混和材を添加する場合にも同様に当てはまることであった。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、先行技術に見られるような早強性を得る硬化促進剤、あるいは粉体系混和材を用いなくとも、通常のフレッシュコンクリート並みの作業性を確保したうえで、硬化時間の制御の可能な速硬コンクリートを提供することを目的とする。
セメント100重量部に対して、平均粒径10nm〜500nmの非晶質シリカを、水に分散させた状態で、固形分換算で3〜15重量部置換し、これを所定の材料と練り混ぜ、成形した後、55〜80℃の加温養生を行って硬化させたことを特徴とする道路用セメント組成物、を提供する。
ここで、所定の材料には、水、混和剤、細骨材及び/又は粗骨材が含まれ、セメント以外の混和材を含むこともできる。細骨材および粗骨材としては、一般のコンクリートに使用されるものを使用することが出来る。なお、既設コンクリート床版の部分補修用のコンクリートでは、鉄筋ピッチやはつり深さに応じて、最大寸法13〜15mmの粗骨材を選択するのが良い場合もある。
前記非晶質シリカが、水中に分散したゾル溶液状態で用いたものであり、さらにポゾラン反応性迅速判定法(API法)によるAPI値が55%以上であることを特徴とする、前記道路用セメント組成物、を提供する。
さらに、前記非晶質シリカの置換が、セメント中のエーライトの水和発熱ピークの現出時間を短縮させるものであることを特徴とする前記道路用セメント組成物、を提供する。
前記セメントとして、エーライトを50〜75重量%含有したものを用いることを特徴とする前記道路用セメント組成物、を提供する。
本発明で用いるセメントには、普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメント等、エーライト鉱物を50〜75重量%含有したセメントを使用することが好ましい。本願は、比較的初期の水和反応が早いとされるエーライト鉱物の水和を、非晶質シリカの添加と加熱養生によって制御または促進するものである。そして、この効果は、エーライト鉱物を50重量%以上含有したセメントを用いた場合に大きくなる。上限を75重量%としたのは、これを越えると初期強度に寄与する間隙質相の割合が減少してしまい、十分な初期強度を確保できなくなるおそれがあるからである。なお、骨材は通常の生コンで使用するものと同様のものを使用することができ、特に限定されない。
水/セメント比は、特に、限定するものではないが、25%〜60%の範囲が好ましい。水/セメント比の下限を25%としたのは、それ以下ではモルタルおよびコンクリートの混練自体が難しい上に、非晶質シリカをペースト中に均一に分散させることが難しいためである。また、上限を60%としたのは、それを超えると所定の強度を得るのが難しくなるからである。
本発明で用いる非晶質シリカは、平均粒径10nm〜500nmのものである。好ましい平均粒径は、10nm〜200nmである。シリカ粒子の平均粒径は、JIS K 8826の粒子径測定−光子相関法で得られる粒度分布の50%通過粒子径(メディアン径)とした。なお、この測定法は、分散液に単色かつ可干渉な光(真空中で単一波長を持つレーザ光)を照射する方法であり、対象となる粒子径は数nm〜1μmである。また、シリカ粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による直接観察からも推定することができ、今回行った光子相関法での測定結果は、TEMによる観察例から推定した直径と良く一致した。
非晶質シリカの平均粒径10nm未満では、コンクリートの練り混ぜ時にシリカの凝集が起こり、ペースト中に均一に分散させることができなくなる。このとき、セメント組成物のコンシステンシーが低下することがある。シリカの凝集箇所は数十μmの大きさで、セメントペースト硬化体中に点在する。これらの箇所は、材齢初期においては周囲のセメントペースト部分と比べてポーラスなため、初期強度を低下させるため好ましくない。一方、シリカの平均粒径が500nmを超えると単位重量当たりの粒子数が減るため、セメント粒子間に分散させることが困難となる。
上記の非晶質シリカは、乾燥重量ベースで、セメント100重量部に対して、3〜15重量部を添加する。3重量部未満では、粉体に対する非晶質シリカの割合が少ないため効果が現れ難い。15重量部を超えると、シリカの凝集が起こり易く、セメント組成物のコンシステンシーが低下するほか、セメント硬化体の強度が低下するおそれがあるためである。
平均粒径10nm〜500nmの非晶質シリカは、20℃の条件でpH8.0〜10.5のアルカリ性の溶媒に分散させた状態であることが好ましい。溶媒の液性をアルカリ性に保つことにより、その表面のシラノール基を安定に保ち、或いは増加させることができるからである。pH調節は、水酸化ナトリウムやアンモニア等を少量添加することでも行うことが出来る。ここで、pHの下限値を8.0としたのは、これ未満ではシリカの晶析が起こり、沈殿してしまうからであり、pHの上限値を10.5としたのは、これを超えるとシリカの溶解度が極端に大きくなって、シラノール基同士の縮合が急激に起こり、かえって非晶質シリカの活性が低下するためである。
さらに、上記非晶質シリカは水中に分散させたゾル溶液状態として用いることにより、粉体として添加する場合と比べて、練り混ぜ時のシリカ凝集を抑えることが出来る。また、適度にセメント組成物の粘性が高まるため、ブリーディングや材料分離の少ないコンクリートを製造することができる。
コンクリートへの非晶質シリカの添加方法は、上記非晶質シリカゾル溶液を練り混ぜ水と混ぜて用いることができる。非晶質シリカの添加でセメントペーストの粘性が高くなる場合や粉体量が多い配合の場合には、流動性を改善するために、一般のAE減水剤や高性能減水剤を併用することができる。
非晶質シリカの製法には種々あるが、本発明で用いたコロイダルシリカは、珪酸ナトリウム溶液に熱を加えて、縮合(重合)させることで、非晶質シリカをあらかじめ水中に分散させたゾル溶液状態として得ることができる。例えば、比較的高温、アルカリ性のpH領域で反応を進めることにより、シリカ一次粒子の成長を早く進行し、一次粒子がフロック状に凝集し沈降する。その後、pH領域や温度、塩濃度などの反応条件を操作することで、一次粒子を成長させ、所定の粒径のシリカ粒子とする湿式法で製造することができる。
コロイダルシリカは、前記製法のとき、Na等の不純物を含む。コロイダルシリカは、1〜100nm程度の大きさの負に帯電した無定形シリカ粒子が水中に分散してコロイド状をなしているものである。粒子の表面には−SiOH基(シラノール基)および−OHイオンが存在し、アルカリイオンにより電気二重層が形成され、粒子間の反発により安定化している。本発明で用いたコロイダルシリカは、前記湿式法により製造したものであり、乾式法で製造されるシリカと比べて、表面シラノール基が圧倒的に多い。
本発明で使用したコロイダルシリカは、例えば、粒径が10〜50nmのものは表面シラノール基を1平方ナノメートル当たり5個程度有する。粒径が大きくなると少なくなる傾向はある。一方、珪酸ナトリウムと鉱酸(一般には硫酸)の中和反応で製造したコロイダルシリカは1平方ナノメートル当たり1〜2個に過ぎない。
乾式法で製造される非晶質シリカの代表的なものにシリカフュームがあり、0.1μm(=100nm)程度の微粒子であるが、粒径が小さくなるほど表面エネルギーが高くなり、Ca(OH)との反応性は高いとされている。
シリカフュームなど粉末状の粒子では、ポゾラン反応が進行するためには、それぞれ非晶質相中のシリカあるいは非晶質シリカが高アルカリ性の細孔液中に溶ける必要がある。これにより、シリカ表面がシラノール化することで、Ca2+と反応して、水和物を生成するとの新たな知見に基づき、本願発明を完成した。即ち、あらかじめ水中に分散状態で製造されたコロイダルシリカの場合には、もともと非晶質シリカの表面がシラノール化しているため、シリカが溶解する過程が必要なくなり、ごく水和初期から反応性は高くなるものとの仮説をたてた。
そして、ポゾラン反応性迅速判定法(API法)による測定値で、非晶質シリカとセメント中のエーライトとの反応性を判定した。本法は、次文献に記載されている。山本武志ほか:フライアッシュのポゾラン反応性を評価するための促進化学試験法(API法)の提案、土木学会論文集E、Vol.62、No.2、pp.320−329、2006
API法は、普通ポルトランドセメントとシリカを純水に混合した分散液を反応させ、Ca2+イオン消費率APIを次の式により算出するものである。このAPI値が高いほどCa2+との反応は活性であり、非晶質シリカ自体の反応率だけでなくエーライト反応の促進にも寄与するものと考えられる。
API(%)=(([Ca(C)]−[Ca(F+C)])/[Ca(C)])×100
[Ca(C)]:標準試料のCa2+濃度(mg/L)
[Ca(F+C)]:評価試料のCa2+濃度(mg/L)
一例として、以下の4種類の非晶質シリカ材料を用いて行ったAPI法の結果を以下に示す。なお、セメントには普通ポルトランドセメント、水はイオン交換水を用いた。
・二酸化けい素(記号SI):沈降法で製造、粉末状固体、密度2.21g/cm、平均粒径31.0μm、比表面積0.73m/g
・コロイダルシリカMP−2040(記号CS1)、非晶質シリカゾル溶液、日産化学工業社製、密度1.30g/cm、SiO量40.7%
・コロイダルシリカスノーテックス30(記号CS3)、非晶質シリカゾル溶液、日産化学工業社製、密度1.21g/cm、SiO量30.5%
・シリカフューム(記号SF1):粉末状固体、密度2.34g/cm、平均粒径0.39μm、比表面積9.4m/g
表1に例示した各種シリカ材料の中では、シリカフューム(SF1)、コロイダルシリカMP−2040(CS1)、コロイダルシリカスノーテックス30(CS3)が、API値が55%以上となり、良好な結果が得られた。API値の下限を55%としたのは、この値未満であるとエーライトの水和を促進する効果が乏しく、初期強度の大幅な増進が期待できなくなるからである。
続いて、シリカフュームとコロイダルシリカの初期反応性の違いを明らかにするため、微少熱量計による水和発熱速度の測定を行った。水和発熱速度の測定は、例えば、東京理工社製の微小熱量計MMC−5116(以下、熱量計)を使用できる。装置の制御温度は20℃とし、測定時間は24時間とした。
一例として、水粉体比50%とし、コロイダルシリカあるいはシリカフュームをセメント重量に対して内割で3%、7%および15%添加した場合の水和発熱曲線をそれぞれ図1および図2に示す。図は、エーライト水和が活発となり、水酸化カルシウムの結晶化やC−S−Hの生成が起こるとされる第二ピーク周辺を拡大したものである。例えば、図中の記号CS15%は、コロイダルシリカ(CS1)をセメントに内割で15%添加したものの水和発熱速度を表す。これより、コロイダルシリカを添加した場合は、添加量が増えるにつれて第二ピークは高くなり、そのピーク位置は早期に現れた。一方、シリカフューム(SF1)を添加した場合は、コロイダルシリカと同様に、第二ピークは高くなるが、ピーク位置は遅れて現れた。
水和発熱曲線におけるコロイダルシリカとシリカフュームとの差異は、非晶質シリカの製法の違いによる表面シラノール化率の違いを反映したものと推察される。すなわち、あらかじめ水中に分散状態で製造されたコロイダルシリカの方がシリカフュームよりも表面シラノール基の数が圧倒的に多いため、ごく水和初期からの反応性が高かったと考えられる。シリカフューム等の乾式法で製造した非晶質シリカと湿式法で製造された本願発明中のコロイダルシリカとの相違である。乾式法で製造したシリカフューム粉体でも、アルカリ性の水に上手く分散させることが出来れば、表面シラノール基は若干増加するものの、実際には、わずかな温度やpH変動で凝集してしまうことが多く、水中に分散させた状態で得ることが難しい。
このような水和初期の非晶質シリカの反応性の違いがエーライト反応の促進に、おおきく寄与すると考え、加熱養生は水和発熱曲線における第二ピーク時期に合わせて行うと効果的であることを見出した。即ち、実施例1に示すように、コロイダルシリカを添加して加温養生した場合に、エーライト反応の促進効果が特に大きくなる。非晶質シリカの初期反応率はエーライト鉱物の反応に大きな影響を与えるものである。
上記道路用セメント組成物は、20℃程度の常温に置かれた場合は、通常の普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントを用いたものとほとんど同様の速度で、初期水和が進行すると思われ、硬化促進剤を用いる場合のように極端なスランプロスを生じることはない。非晶質シリカを添加することにより、セメント組成物の粘性は高くなることもあるが、一般のAE減水剤や高性能減水剤を併用することで、所定の流動性を付与することが可能となり、スランプロスが小さく、十分な可使時間をとることができる。
さらに、前記道路用セメント組成物を打設した後、蒸気養生など加温養生を4〜24時間、行うことによって、非晶質シリカを添加しない場合よりもエーライト反応を効率良く促進させることができる。ここで、養生時間の下限値を4時間としたのは、4時間未満の養生ではエーライト反応が活発となる第二ピーク時期をカバーできず、十分な反応促進を期待できないためであり、24時間を越える養生ではほぼエーライト反応が終了し、それ以上反応率は上がらないからである。さらに、コンクリートが乾燥するのを防ぎ、湿潤状態(さらなる加水は、必須ではない)で養生を行うことによって、未反応のエーライト鉱物や反応活性の小さいビーライト鉱物を長期にわたって反応させることができるため、長期強度をも増進させることができる。これにより高強度、高耐久なセメント硬化体を製造することができる。
蒸気養生など加温養生の条件は、コンクリート温度を55℃以上80℃以下となるよう制御する。55℃未満では非晶質シリカの反応を活性化させる効果が乏しく、強度発現に時間を要する。一方、80℃を越える温度履歴を与えることは、将来的にDEF(遅れエトリンガイト生成)と呼ばれるコンクリート膨張で劣化するリスクがあるので、望ましくない。特に、道路用セメント組成物打設後、4時間以内に60℃以上の温度で開始して、4時間以上の給熱を行うのが好ましい。温度保持時間が4時間未満ではエーライト反応の促進効果や非晶質シリカの十分な反応が期待できない。
なお、道路用セメント組成物は、マスコンクリートなどと比べて部材厚さが薄いため、断熱効果による内部温度の上昇はそれほど期待できない。一般的な配合条件の場合、断熱時の温度上昇量は20〜30℃となり、外気温度が5℃〜10℃の場合、コンクリートの内部温度は高々30℃〜40℃である。したがって、寒冷地における施工の場合などは、コンクリートの表面温度が、55〜80℃となるよう加温養生を行うのが望ましい。これによって、セメント自体の水和発熱と相まってコンクリート温度は上昇し、エーライト反応を促進するとともに非晶質シリカはほぼ完全に反応して十分な強度を発現することになる。
本発明のセメント組成物の55℃以上の加温による初期強度が大幅に向上する理由は、以下のように考えられる。表面にシラノール基を多く有し、ポゾラン活性の高い非晶質シリカが水中に分散状態で存在すると、通常、エーライト鉱物を取り囲むよう生成するC−S−Hからカルシウムを引っ張り出して、水和物を生成する。あるいは、通常、エーライト鉱物の水和を遅延させていた前記C−S−H相が、非晶質シリカの影響で別のサイトに生成するため、内部のエーライト反応を阻害しなくなると考えられる。こうして、セメントのエーライト反応が促進されることで、初期に高い強度発現が得られるものと考えられる。また、この非晶質シリカの反応は、反応温度によって制御することができるため、可使時間を延長することも可能である。すなわち、これらの反応が活発化するのは温度因子の影響が大きく、20℃程度の常温では通常のエーライトの水和速度程度であり、養生温度が高くなると急激に促進される。従って、適切な加温養生を行うことで、特に、エーライト鉱物と非晶質シリカの反応を効果的に促進、制御することが可能となった。
非晶質シリカの平均粒径が10nm〜500nmで、その製法が、例えば、珪酸ナトリウム溶液に熱を加えて、縮合(重合)させたコロイダルシリカであって、さらにポゾラン反応性迅速判定法(API法)によるAPI値が55%以上であるものは、特に、好適に用いることができる。
表面にシラノール基を多く有するコロイダルシリカは、水和初期の反応性が高いために、エーライト反応が活性化する時期に合わせ、所定温度以上で養生することで、エーライト反応を劇的に進めることを見出した。つまり、常温養生の場合、エーライト反応を促進する効果は少ないが、加温養生することでセメント中の主要鉱物であるエーライトを非常に短い時間で、ほぼ100%反応させることが出来る。同じ非晶質の粉体であるが、表面にシラノール基の乏しいシリカフューム粉末には、この促進効果はない。この相違は、微少熱量計により測定される水和発熱曲線の第二ピーク位置の変化により判定することができる。
本発明のセメント組成物は、主にコンクリート道路用現場打ちコンクリートとして使用することができる。コンクリート舗装工事やコンクリート床版上面の補修工事で第一に要求される早期強度発現性を有するとともに、想定外のトラブルで作業が遅延しても加温を遅らせることで硬化時間を制御できる特長がある。すなわち、一般的なAE減水剤や高性能減水剤などで所定の流動性に調整すれば、コンクリート練り混ぜ後、現場への運搬、施工作業までの時間は、通常の生コンクリートと同様に扱うことが出来る。したがって、思わぬ流動性低下などで、施工が困難になることはない。コンクリート打ち込み作業において、十分な作業時間を確保できるため、バイブレーターやコテなどを使って表面仕上げを行えばよい。何かの都合で作業が中断しても、凝結開始前であれば、その後の作業を問題なく継続することが出来る。そして、打ち込み終了後、打ち込んだコンクリートをビニールシートなどで覆い、任意の時間に60℃程度の加温養生を行うことで、数時間後には、交通開放できる強度にまでコンクリートを硬化させることが可能である。
コロイダルシリカ(CS1)を添加した場合の水和発熱曲線を示す図である。 シリカフューム粉末(SF1)を添加した場合の水和発熱曲線を示す図である。 本願発明(普通ポルトランドセメントとコロイダルシリカを含む組成物)の道路用セメント組成物中のエーライト反応率の経時変化を示す図である。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例ならびに比較例で使用した材料は、次の通りである。
セメント:太平洋セメント社製 普通ポルトランドセメント、密度3.16g/cm、ブレーン値3,480cm/g、エーライト量はXRD/リートベルト法により算出したところ60.5%であった。
コロイダルシリカ:非晶質シリカゾル溶液、日産化学工業社製
スノーテックス30(記号CS3)、密度1.21g/cm、SiO量30.5%、API法によるAPI値66.1%であった。また、微少熱量計による測定では、水和発熱曲線の第二ピークは何も添加しないものよりも早期に現れることを確認した。
シリカフューム(記号SF1):粉末状固体、密度2.34g/cm、平均粒径0.39μm、比表面積9.4m/g、API法によるAPI値55.8%であった。
水:水道水
混和剤:BASF社製 高性能AE減水剤SP8S(記号Ad1)
BASF社製 空気量調整剤マイクロエア404(記号Ad2)
実施例1
セメント186重量部、細骨材600重量部、非晶質シリカ固形分14重量部、水100重量部のモルタルを作製した。モルタルの水粉体比は50%、非晶質シリカの添加量はセメント重量に対して内割で7%とした。練り混ぜ後の作業性を確保するために、Ad1をセメントと非晶質シリカ200重量部に対して1.0%となるよう添加し、さらに、モルタル中の空気量を3%〜4%の範囲に調整するためにAd2を適宜添加した。練り混ぜは、JIS R 5201に準拠して行い、5Lホバートミキサーを使用した。その結果、練り混ぜ直後のモルタル15打フローは175mm、2時間経過後のモルタル15打フローは168mmとなり、フローロスが少なく、良好な流動性を有していた。練り混ぜから3時間後、ブリーディングが出なくなった時点で練り返しを行い、型枠内への成型を行った。その後、60℃で4時間の加熱養生を行ったところ、養生終了時点の圧縮強度は36.8N/mmとなり、早期交通開放に必要とされる約30N/mmを超えていた。また、強度発現の主因となるセメント中のエーライトの反応率を測定したところ95.2%であり、ほぼ反応が終了していた。
表2に、実験例における、非晶質シリカまたは硬化促進剤の種類、添加量、施工後の養生方法、得られた硬化体の材齢1日における圧縮強度、その時のエーライト反応率、練り上がり直後と2時間後のモルタルフローを記載した。比較例3の2時間後のモルタルは、ほとんど流動性を失っており、モルタルフロー測定自体ができなかった。
実施例2
使用材料は実施例1と同じで、60℃での加熱養生時間を24時間としたものである。その結果、圧縮強度は38.5N/mmとなり、エーライトの反応率は96.1%であった。
上記実験例で、他の組成は同一とし、細骨材の全部又はその一部を粗骨材に置き換えてコンクリートとした場合にも、モルタル強度に、ほぼ匹敵するコンクリート強度が得られた。また、減水剤などでモルタルの15打フローを168〜180mmに調整した本組成モルタルは、コンクリートとしても、スランプ8cm程度の良好なワーカビリティーを有することを確認した。
比較例1
使用材料は実施例1と同じで、加熱養生を行わず、20℃の標準水中養生を行ったものである。その結果、圧縮強度は23.1N/mmとなり、早期強度に必要とされる30N/mmに達しなかった。なお、エーライト反応率は40.8%にとどまった。以上より、コロイダルシリカを添加しただけでは、エーライト反応の促進効果は期待できないことが分かる。
比較例2
実施例1の使用材料で、コロイダルシリカを用いなかったものである。その結果、圧縮強度は29.7N/mmとなり、早期強度に必要とされる30N/mmに達しなかった。なお、加温養生による反応促進効果によりエーライトの反応率は69.8%であった。
比較例3
実施例1の使用材料で、コロイダルシリカの代わりに硬化促進剤である亜硝酸カルシウムをセメント100重量部に対して2重量部加えた。その結果、練りあがったモルタルは約10分で作業性が悪くなり、30分で作業が出来なくなった。圧縮強度は25.6N/mmとなり、早期強度に必要とされる30N/mmに達しなかった。
比較例4
実施例1の使用材料で、コロイダルシリカの代わりにシリカフューム(SF1)を粉体として同量添加したものである。使用したシリカフュームは、平均粒径が大きく(0.39μm)、比表面積が比較的小さい(9.4m/g)。前記API法によるAPI値は55.8%となる。一方、微少熱量計による水和発熱速度の測定によれば、SFを添加した場合の水和発熱曲線の第二ピークは何も添加しないものよりも約1時間遅れて発現した。成型後、60℃で4時間の加温養生を行ったが、強度は28.8N/mmとなり、早期交通開放の基準(約30N/mm)には達しなかった。しかし、この時のエーライト反応率は72.5%であり、コロイダルシリカ(CS3)を用いた場合と比べてエーライト反応を促進する効果は小さいものの、モルタルフローは練り上がり直後(170mm)よりも2時間後(180mm)の方が大きくなり、作業性の面からは望ましい結果であった。
図3に、本願発明(普通ポルトランドセメントとコロイダルシリカを含む組成物)と他の実験例について、エーライト反応率の経時変化を示す。横軸Tは、時間(hr)を、縦軸Sは、エーライト鉱物の反応率である。水和開始4時間は、運搬、施工時の時間経過であり、4時間経過直前に、60℃に加温し、急速にエーライトを反応させものである。
これより、コロイダルシリカあるいはシリカフュームを添加したものは、無添加のもの(比較例2)よりもエーライト反応率は高くなっており、さらに両者を比べるとコロイダルシリカを添加した方(実施例1)がよりエーライトの反応が促進されていた。これに対して、コロイダルシリカを添加しても加熱養生を行わないもの(比較例1)は、エーライトの反応はほとんど促進されなかった。非晶質シリカの添加と加温養生を組み合わせることによって、エーライトの反応が効果的に促進された。
一般のコンクリート舗装道路を建設する場合に好適なセメント組成物に関するものであり、特に、現場打ちされるコンクリート道路橋、あるいは既設コンクリート床版を補修する場合に好適なコンクリート材料を実現した。

Claims (2)

  1. エーライトを50〜75重量%含有するセメント100重量部に対して、平均粒径10nm〜500nmの非晶質シリカを、水中に分散したゾル溶液状態で、固形分換算で3〜15重量部置換し、これを水、減水剤、空気量調整剤、細骨材及び/又は粗骨材と練り混ぜ、成形した後、55〜80℃の加温養生を行って硬化させた道路用セメント組成物であって、
    前記非晶質シリカが、ポゾラン反応性迅速判定法(API法)によるAPI値が55%以上であることを特徴とする、道路用セメント組成物。
  2. さらに、前記非晶質シリカの置換が、セメント中のエーライトの水和発熱ピークの現出時間を短縮させるものであることを特徴とする請求項1に記載の道路用セメント組成物。
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