JP5577156B2 - 燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、電解質の両側に一対の電極が設けられる電解質・電極構造体とセパレータとが積層され、電極面に沿って反応ガスを供給する反応ガス流路が形成されるとともに、前記反応ガスを前記セパレータの積層方向に流通させる反応ガス入口連通孔及び反応ガス出口連通孔が形成される燃料電池に関する。
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の両側に、それぞれアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を、一対のセパレータによって挟持した単位セルを備えている。この種の燃料電池は、通常、所定の数の単位セルを積層することにより、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
上記の燃料電池では、一方のセパレータの面内に、アノード側電極に対向して燃料ガスを流すための燃料ガス流路(反応ガス流路)が設けられるとともに、他方のセパレータの面内に、カソード側電極に対向して酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路(反応ガス流路)が設けられている。さらに、各燃料電池毎又は複数の燃料電池毎に、電極範囲内に冷却媒体を流すための冷却媒体流路がセパレータの面方向に沿って形成されている。
燃料電池は、セパレータの積層方向に貫通する反応ガス連通孔及び冷却媒体連通孔が内部に設けられる、所謂、内部マニホールド燃料電池型を構成する場合がある。例えば、特許文献1に開示されている燃料電池スタックは、図12に示すように、単位セル1を備えるとともに、前記単位セル1は、膜電極構造体2の両面にセパレータ3a、3bが配置されている。
単位セル1の長手方向上端部には、流体連通孔である燃料ガス供給口4a及び酸化剤ガス供給口5aが積層方向に貫通して設けられるとともに、前記単位セル1の長手方向下端部には、流体連通孔である燃料ガス排出口4b及び酸化剤ガス排出口5bが、積層方向に貫通形成されている。単位セル1の短手方向両端部には、流体連通孔である4つの冷却水供給口6aと、4つの冷却水排出口6bとが鉛直方向に配列されている。
セパレータ3aの膜電極構造体2に対向する面には、燃料ガス供給口4aと燃料ガス排出口4bとに連通し、長手方向に延在する波状の複数の燃料ガス流路7aが形成されている。セパレータ3bの膜電極構造体2に対抗する面には、酸化剤ガス供給口5aと酸化剤ガス排出口5bとに連通し、長手方向に延在する波状の複数の酸化剤ガス流路8aが形成されている。
単位セル1同士が積層されることにより、一方の単位セル1を構成するセパレータ3aと、他方の単位セル1を構成するセパレータ3bとの間には、冷却水流路が形成される。この冷却水流路は、燃料ガス流路7aの裏面側の溝形状7bと、酸化剤ガス流路8aの裏面側の溝形状8bとが重なり合うことにより、短手方向(水平方向)に冷却水の流れを許容して冷却水供給口6aと冷却水排出口6bとを連通している。
セパレータ3a、3bの冷却水流路側の面には、燃料ガス供給口4a及び燃料ガス排出口4bをそれぞれ周回してシールする第1シール部9aと、酸化剤ガス供給口5a及び酸化剤ガス排出口5bをそれぞれ周回してシールする第2シール部9bとが設けられている。セパレータ3a、3bの膜電極構造体2に対向する面には、冷却水供給口6a及び冷却水排出口6bをそれぞれ周回してシールする第3シール部9cが設けられている。第1シール部9a、第2シール部9b及び第3シール部9cは、同一の断面積に設定されており、金属製のセパレータ3a、3bに一体成形されている。
特開2007−141552号公報
上記の特許文献1では、例えば、膜電極構造体2のアノード側電極に燃料ガスを供給するために、波状の複数の燃料ガス流路7aが設けられている。このため、発電面全体に燃料ガスが到達するまでに時間がかかってしまい、特に燃料電池車両が急加速された際には、十分な発電電力を得ることができないという問題がある。
特に、燃料電池起動時には、燃料ガス流路7aには、空気が存在している。従って、燃料ガス供給口4aから燃料ガス流路7aの上部にのみ燃料ガスが供給されている状況下で、発電されると、発電可能領域が小さくて発電状態が不安定になってしまう。しかも、電位が安定するまでに時間がかかり、高電位に曝されることによる劣化のおそれがある。
本発明は、この種の問題を解決するものであり、特に起動時における迅速な発電の安定化を図ることが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
本発明は、電解質の両側に一対の電極が設けられる電解質・電極構造体とセパレータとが積層され、電極面に沿って反応ガスを供給する反応ガス流路が形成されるとともに、前記反応ガスを前記セパレータの積層方向に流通させる反応ガス入口連通孔及び反応ガス出口連通孔が形成される燃料電池に関するものである。
この燃料電池では、反応ガス流路が複数の反応ガス流路溝を有するとともに、前記反応ガス流路の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ複数のエンボスを有する入口バッファ部及び出口バッファ部が設けられ、前記反応ガス流路溝は、反応ガスが反応ガス入口連通孔から反応ガス出口連通孔に向かって他の反応ガス流路溝よりも速く到達する複数の起動用流路部を構成し、1以上の前記起動用流路部と1以上の他の前記反応ガス流路溝とが、前記反応ガス流路の流路幅方向に沿って交互に配設されている。
また、この燃料電池では、起動用流路部が、他の反応ガス流路溝よりも圧力損失の小さな部位を有することが好ましい。
さらに、この燃料電池では、電極がガス拡散層を有し、前記ガス拡散層は、起動用流路部に配置される部位の厚さが、他の反応ガス流路溝に配置される部位の厚さよりも小さく設定されることが好ましい。
さらにまた、この燃料電池では、起動用流路部が互いに隣接する複数の波状の反応ガス流路溝を有し、互いに隣接する前記反応ガス流路溝には、反応ガスをそれぞれの前記反応ガス流路溝に導入させるための分岐部が設けられることが好ましい。
また、反応ガスは、燃料ガスであることが好ましい。
本発明によれば、起動用流路部に導入された反応ガスは、他の反応ガス流路溝に導入された反応ガスよりも速く、反応ガス出口連通孔に到達することができる。このため、反応ガスは、発電面内の広範囲に対してより速く到達し、急加速時等にも前記発電面内全体で発電を行うことが可能になる。従って、起動直後に、発電の安定化が迅速に遂行され、燃料電池の電位が良好に安定化するとともに、高電位に曝される時間が短縮され、劣化の抑制が確実に行われる。
本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。 前記燃料電池の、図1中、II−II線断面説明図である。 前記燃料電池を構成する第1金属セパレータの正面の説明図である。 前記燃料電池を構成する第2金属セパレータの正面の説明図である。 本発明と比較例との時間と電位との関係説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る燃料電池を構成する反応ガス流路の正面説明図である。 本発明の第3の実施形態に係る燃料電池を構成する反応ガス流路の正面説明図である。 本発明の第4の実施形態に係る燃料電池を構成する反応ガス流路の正面説明図である。 本発明の第5の実施形態に係る燃料電池を構成する反応ガス流路の正面説明図である。 本発明の第6の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。 前記燃料電池の、図10中、XI−XI線断面説明図である。 特許文献1に開示されている単位セルの分解斜視説明図である。
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10は、矢印A方向(水平方向)に複数積層されることにより、燃料電池スタック11を構成する。燃料電池10は、電解質膜・電極構造体12と、前記電解質膜・電極構造体12を挟持する第1金属セパレータ14及び第2金属セパレータ16とを備える。
第1金属セパレータ14及び第2金属セパレータ16は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板により構成される。第1金属セパレータ14及び第2金属セパレータ16は、平面が矩形状を有するとともに、金属製薄板を波形状にプレス加工することにより、断面凹凸形状に成形される。
なお、第1金属セパレータ14及び第2金属セパレータ16に代えて、例えば、第1カーボンセパレータ(図示せず)及び第2カーボンセパレータ(図示せず)を使用してもよい。
図1に示すように、第1金属セパレータ14及び第2金属セパレータ16は、縦長形状(長方形状)を有するとともに、長辺が重力方向(矢印C方向)に向かい且つ短辺が水平方向(矢印B方向)に向かう(水平方向の積層)ように構成される。なお、第1金属セパレータ14及び第2金属セパレータ16は、長辺が水平方向に向かい且つ短辺が重力方向に向かうように構成してもよく、また、セパレータ面が水平方向に向かう(鉛直方向の積層)ように構成してもよい。
燃料電池10の長辺方向(矢印C方向)の上端両角部近傍には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔18aと、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔20aとが設けられる。
燃料電池10の長辺方向の下端両角部近傍には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔20bと、酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔18bとが設けられる。
燃料電池10の短辺方向(矢印B方向)の両端縁部上方には、矢印A方向に互いに連通して、冷却媒体を供給するための2つの冷却媒体入口連通孔22aが対称位置に設けられるとともに、前記燃料電池10の両端縁部下方には、前記冷却媒体を排出するための2つの冷却媒体出口連通孔22bが対称位置に設けられる。
電解質膜・電極構造体12は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜24と、前記固体高分子電解質膜24を挟持するカソード側電極26及びアノード側電極28とを備える。
カソード側電極26及びアノード側電極28は、図2に示すように、カーボンペーパ等からなるガス拡散層26a、28aと、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層26a、28aの表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層(図示せず)とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜24の両面に形成される。
図3に示すように、第1金属セパレータ14の電解質膜・電極構造体12に向かう面14aには、酸化剤ガス入口連通孔18aと酸化剤ガス出口連通孔18bとを連通する酸化剤ガス流路30が形成される。酸化剤ガス流路30は、矢印C方向に延在する複数本の波状凸部間に形成される複数本の波状の酸化剤ガス流路溝30aを有するとともに、前記酸化剤ガス流路30の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ複数のエンボスを有する入口バッファ部32a及び出口バッファ部32bが設けられる。複数本の波状の酸化剤ガス流路溝30aは、面内で互いに均一の幅寸法を有する。
複数の酸化剤ガス流路溝30aの中、少なくとも1つの前記酸化剤ガス流路溝30aにより、第1の実施形態では、間に2つの前記酸化剤ガス流路溝30aを挟んで、複数の前記酸化剤ガス流路溝30aにより、起動用流路部33が設けられる。起動用流路部33は、所定の酸化剤ガス流路溝30aにより構成されるとともに、酸化剤ガスが酸化剤ガス入口連通孔18aから酸化剤ガス出口連通孔18bに向かって他の酸化剤ガス流路溝30aよりも速く到達する機能を有する。
具体的には、図2及び図3に示すように、起動用流路部33を構成する酸化剤ガス流路溝30aは、第1金属セパレータ14の面14aを平滑にして構成される。一方、他の酸化剤ガス流路溝30aは、面14aに粗加工部位RFが設けられることにより、前記酸化剤ガス流路溝30aにおける酸化剤ガスの圧力損失が高く設定される。粗加工部位RFは、図3に示すように、酸化剤ガス流路30の上流から所定の高さHまでの間に設けられることが好ましい。
図1に示すように、第1金属セパレータ14の面14b(面14aとは反対の面)には、酸化剤ガス流路30を構成する酸化剤ガス流路溝30aの裏面形状である冷却媒体流路溝30bが設けられる。冷却媒体流路溝30bは、後述する冷却媒体流路38の一部を構成する。
図4に示すように、第2金属セパレータ16の電解質膜・電極構造体12に向かう面16aには、燃料ガス入口連通孔20aと燃料ガス出口連通孔20bとを連通する燃料ガス流路34が形成される。燃料ガス流路34は、矢印C方向に延在する複数本の波状凸部間に形成される複数本の波状の燃料ガス流路溝34aを有するとともに、前記燃料ガス流路34の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ複数のエンボスを有する入口バッファ部36a及び出口バッファ部36bが設けられる。複数本の波状の燃料ガス流路溝34aは、面内で互いに均一の幅寸法を有する。
複数の燃料ガス流路溝34aの中、少なくとも1つの前記燃料ガス流路溝34aにより、第1の実施形態では、間に2つの他の燃料ガス流路溝34aを挟んで、複数の前記燃料ガス流路溝34aにより、起動用流路部35が構成される。
起動用流路部35は、所定の燃料ガス流路溝34aに対応する第2金属セパレータ16の面16aを平滑にして構成される。他の燃料ガス流路溝34aには、面16aに粗加工部位RFを設けることにより、燃料ガスの圧力損失を大きく設定している。粗加工部位RFは、燃料ガス流路34の上流から所定の高さHの間に設けられる。
なお、酸化剤ガス流路30及び燃料ガス流路34の所定の酸化剤ガス流路溝30a及び燃料ガス流路溝34aにおいて、それぞれの圧力損失を大きくするためには、粗加工部位RFの他、例えば、起毛材の他、種々の摩擦発生部材を貼り付けることにより、構成してもよい。また、酸化剤ガス流路30には、圧力損失を大きくする必要がない場合があり、燃料ガス流路34のみに粗加工部位RF等の処理を施してもよい。以下に説明する第2の実施形態以降においても、同様である。
第2金属セパレータ16の面16bと第1金属セパレータ14の面14bとの間には、冷却媒体入口連通孔22a、22aと冷却媒体出口連通孔22b、22bとに連通する冷却媒体流路38が形成される(図1及び図2参照)。この冷却媒体流路38は、電解質膜・電極構造体12の電極範囲を周回して矢印C方向に冷却媒体を流通させる。冷却媒体流路38の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ複数のエンボスを有する入口バッファ部40a及び出口バッファ部40bが設けられる。
図1に示すように、第1金属セパレータ14の面14a、14bには、この第1金属セパレータ14の外周端縁部を周回して第1シール部材42が一体成形される。第2金属セパレータ16の面16a、16bには、この第2金属セパレータ16の外周端縁部を周回して第2シール部材44が一体成形される。第1シール部材42及び第2シール部材44としては、例えば、弾性を有するEPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。
図1及び図3に示すように、第1金属セパレータ14の面14aには、第1シール部材42を切り欠いて酸化剤ガス入口連通孔18aと酸化剤ガス流路30とを連通する複数の連結通路46aが形成される。面14aには、第1シール部材42を切り欠いて酸化剤ガス出口連通孔18bと酸化剤ガス流路30とを連通する複数の連結通路46bが形成される。
図4に示すように、第2金属セパレータ16の面16aには、第2シール部材44を切り欠いて燃料ガス入口連通孔20aと燃料ガス流路34とを連通する複数の連結通路50aが形成される。面16aには、第2シール部材44を切り欠いて燃料ガス出口連通孔20bと燃料ガス流路34とを連通する複数の連結通路50bが形成される。
図1に示すように、第2金属セパレータ16の面16bには、第2シール部材44を切り欠いて一対の冷却媒体入口連通孔22a、22aと冷却媒体流路38とを連通する複数の連結通路52aが形成される。面16bには、第2シール部材44を切り欠いて一対の冷却媒体出口連通孔22b、22bと冷却媒体流路38とを連通する複数の連結通路52bが形成される。
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
先ず、図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔18aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔20aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、一対の冷却媒体入口連通孔22aには、純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
このため、酸化剤ガスは、図3に示すように、酸化剤ガス入口連通孔18aから第1金属セパレータ14の酸化剤ガス流路30に導入される。酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路30に沿って矢印C方向(重力方向)に移動し、電解質膜・電極構造体12のカソード側電極26に供給される。
一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔20aから第2金属セパレータ16の燃料ガス流路34に供給される。燃料ガスは、図4に示すように、燃料ガス流路34に沿って重力方向(矢印C方向)に移動し、電解質膜・電極構造体12のアノード側電極28に供給される。
従って、電解質膜・電極構造体12では、カソード側電極26に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極28に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
次いで、電解質膜・電極構造体12のカソード側電極26に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔18bに沿って矢印A方向に排出される。一方、電解質膜・電極構造体12のアノード側電極28に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔20bに沿って矢印A方向に排出される。
また、一対の冷却媒体入口連通孔22aに供給された冷却媒体は、図1に示すように、第1金属セパレータ14及び第2金属セパレータ16間の冷却媒体流路38に導入される。冷却媒体は、一旦矢印B方向(水平方向)に沿って流動した後、矢印C方向(重力方向)に移動して電解質膜・電極構造体12を冷却する。この冷却媒体は、矢印B方向両側に移動した後、一対の冷却媒体出口連通孔22bに排出される。
この場合、燃料電池10の停止時には、例えば、空気掃気によって燃料ガス流路34に空気が存在している。このため、燃料電池10の起動時には、燃料ガス入口連通孔20aから燃料ガス流路34の上流に供給された燃料ガスは、この燃料ガス流路34を構成する各燃料ガス流路溝34aに沿って、比較的ゆっくりと燃料ガス出口連通孔20b側に流通し易い。
その際、第1の実施形態では、複数の燃料ガス流路溝34aの中、所定数の前記燃料ガス流路溝34aを、他の前記燃料ガス流路溝34aよりも圧力損失の小さな起動用流路部35として構成している。具体的には、起動用流路部35以外の燃料ガス流路溝34aには、粗加工部位RFを設けることにより、燃料ガス流通面の摩擦係数を大きくしている。
このため、図4に示すように、燃料ガス入口連通孔20aから燃料ガス流路34に導入された燃料ガスは、圧力損失の小さな起動用流路部35に優先的に導入され、この起動用流路部35を構成する燃料ガス流路溝34aに沿って、迅速に燃料ガス出口連通孔20bに到達することができる。
従って、燃料ガスは、発電面内の広範囲に対してより早く到達し、急加速時等にも、前記発電面内全体で発電を行うことが可能になる。これにより、起動直後に、発電の安定化が迅速に遂行され、燃料電池10の電位が良好に安定化するという効果が得られる。しかも、燃料電池10では、高電位に曝される時間が有効に短縮され、劣化の抑制が確実に行われる。
また、燃料ガス流路溝34aの粗加工部位RFは、燃料ガス流路34の上流側に所定の距離Hの範囲内にわたって設けられている。このため、燃料ガス流路34の下流側では、各燃料ガス流路溝34aの摩擦係数が小さくなる。従って、前記燃料ガス流路溝34aに凝縮水が滞留することがなく、良好な排水性を維持することができるという利点がある。
なお、酸化剤ガス流路30では、図3に示すように、上記の燃料ガス流路34と同様に、粗加工部位RFを設けて圧力損失が大きく設定された酸化剤ガス流路溝30aと、平坦状を有して圧力損失が小さく設定された酸化剤ガス流路溝30aからなる起動用流路部33とを備えている。
従って、酸化剤ガス入口連通孔18aから酸化剤ガス流路30に導入された酸化剤ガスは、起動用流路部33に沿って、迅速に酸化剤ガス出口連通孔18bに到達することができ、上記の燃料ガス流路34と同様の効果が得られる。
図5は、第1の実施形態の燃料電池10(本発明)と、粗加工部位RFを設けない一般的な燃料電池(比較例)とにおける起動時の電位を検出した結果が示されている。これにより、第1の実施形態では、燃料ガス及び酸化剤ガスは、発電面内の広範囲に対し比較例に比べて迅速に到達することができ、短時間で安定した電位を得ることが可能になる。しかも、カソード側では、比較例に比べて高電位に曝される時間が有効に短尺化され、劣化の抑制が容易に遂行可能になるという効果が得られる。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池を構成する反応ガス流路70の正面説明図である。
反応ガス流路70は、燃料ガス流路のみ、又は前記燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路の両方を構成することができる。なお、以下に説明する第3の実施形態以降においても、同様である。
反応ガス流路70は、矢印C方向に延在する複数本の波状凸部70b間に形成される複数本の波状の反応ガス流路溝70aを有する。反応ガス流路溝70aの中、所定数(少なくとも1つ)の反応ガス流路溝70aは、起動用流路部72を構成する。
起動用流路部72では、反応ガス流路溝70aの上流側に、隣接する反応ガス流路溝70a側に膨出する波状凸部70bの内方コーナ部上側を切欠いて分岐部74aが設けられる。反応ガス流路溝70aの下流側には、隣接する反応ガス流路溝70aの外方に湾曲する波状凸部70bの外側コーナ部上側を切欠いて分岐部74bが設けられる。分岐部74a、74bは、セパレータに波状凸部70bをプレス加工する際に、プレスしない部位を設けることによって予め形成される。
このように構成される第2の実施形態では、反応ガス(少なくとも燃料ガス)が反応ガス流路70に導入されると、この反応ガスは、各反応ガス流路溝70aに振り分けられる。そして、反応ガス流路溝70aに供給された反応ガスの一部は、分岐部74aを通って起動用流路部72を構成する反応ガス流路溝70aに導入される一方、残余の反応ガスは、起動用流路部72隣接する反応ガス流路溝70aに沿って矢印C方向に流通する。
従って、起動用流路部72では、隣接する反応ガス流路溝70aを流動する反応ガス流量が、起動用流路部72を構成する反応ガス流路溝70aを流動する反応ガス流量よりも削減され、前記起動用流路部72の反応ガス流量が増加し、反応ガスは、前記起動用流路部72において、矢印C方向に沿って迅速に流通することができる。これにより、反応ガスは、発電面内の広範囲に対してより早く到達し、急加速時等にも良好に発電を行うことが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
また、起動用流路部72の下流側では、隣り合う反応ガス流路溝70a分岐部74bを通って、反応ガスが合流される。このため、反応ガス流路70の下流では、各反応ガス流路溝70aに略同量の反応ガスが流通することになる。
図7は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池を構成する反応ガス流路80の正面説明図である。
反応ガス流路80は、矢印C方向に延在する複数本の波状凸部間に形成される複数の波状の反応ガス流路溝80aを有する。少なくとも1つ以上の反応ガス流路溝80aは、他の反応ガス流路溝80aよりも発電面内の広範囲に対してより早く到達する起動用流路部82を構成する。起動用流路部82は、反応ガス流路溝80aの流路幅S1を、他の反応ガス流路溝80aの流路幅S2よりも大きく設定することにより構成される。
このように構成される第3の実施形態では、他の反応ガス流路溝80aよりも流路幅S1の大きな反応ガス流路溝80aを用いて起動用流路部82が構成されている。このため、起動用流路部82には、反応ガスの流入量が増大している。従って、発電面内の広範囲に対してより早く反応ガスを到達することができ、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
図8は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池を構成する反応ガス流路90の正面説明図であり、図9は、本発明の第5の実施形態に係る燃料電池を構成する反応ガス流路100の正面説明図である。
図8に示すように、反応ガス流路90は、矢印C方向に延在する複数本の波状凸部90b間に形成される複数本の波状の反応ガス流路溝90aを有する。波状凸部90bの中、少なくとも一本には、上流側に延在するガイド部90b1が一体に設けられることにより、前記ガイド部90b1に隣接する反応ガス流路溝90aが起動用流路部94を構成する。
図9に示すように、反応ガス流路100は、矢印C方向に延在する複数本の波状凸部100b間に形成される複数本の波状の反応ガス流路溝100aを有する。複数の波状凸部100bの中、少なくとも一以上の上端には、切欠き部100b1が設けられることにより、流量長が短く構成される反応ガス流路溝100aを有する起動用流路部102が構成される。
上記の第4の実施形態では、ガイド部90b1の案内作用下に、起動用流路部94を構成する反応ガス流路溝90aに反応ガスが円滑且つ迅速に導入され、前記反応ガスを発電面内の広範囲に対してより早く到達させることができる。
また、上記の第5の実施形態では、切欠き部100b1を有する、すなわち、流量長の短かな反応ガス流路溝100aにより起動用流路部102が構成されている。この起動用流路部102では、他の反応ガス流路溝100aに比べて圧損が低減され、反応ガスの流入が円滑に行われる。これにより、第4及び第5の実施形態では、上記の第1〜第3の実施形態と同様の効果が得られる。
図10は、本発明の第6の実施形態に係る燃料電池110の要部分解斜視説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付してその詳細な説明は省略する。
燃料電池110は、電解質膜・電極構造体112と、前記電解質膜・電極構造体112を挟持する第1セパレータ114及び第2セパレータ116とを備える。第1セパレータ114及び第2セパレータ116は、例えば、カーボンセパレータや、金属セパレータにより構成される。
第1セパレータ114は、矢印C方向に延在する複数本の直線状凸部間に形成される複数本の直線状の酸化剤ガス流路溝118を有する。第2セパレータ116は、同様に矢印C方向に延在する複数本の直線状凸部間に形成される複数本の直線状の燃料ガス流路溝120を有する。
図11に示すように、複数の酸化剤ガス流路溝118の中、少なくとも1つ以上の前記酸化剤ガス流路溝118に対応して、カソード側電極26のガス拡散層に切欠き部位122を設けることにより、起動用流路部124が構成される。同様に複数の燃料ガス流路溝120の中、少なくとも一以上の前記燃料ガス流路溝120に対応して、アノード側電極28を構成するガス拡散層に切欠き部位126を設けることにより、起動用流路部128が構成される。
各ガス拡散層は、切欠き部位122、126を設けることにより、起動用流路部124、128に配置される部位の厚さが、他の酸化剤ガス流路溝118及び燃料ガス流路溝120に配置される部位の厚さよりも小さく設定される。切欠き部位122、126は、矢印C方向に延在して設けられる。
このように構成される第6の実施形態では、カソード側電極26のガス拡散層26aに切欠き部位122を設けることにより、他の部位に比べて厚さの小さな部位に起動用流路部124が構成されている。同様に、アノード側電極28を構成するガス拡散層28aに切欠き部位126を設けることにより、他の部位よりも厚さの小さな部位に対応して起動用流路部128が構成されている。
従って、各酸化剤ガス流路溝118に供給された酸化剤ガスは、起動用流路部124で電極触媒層に対し迅速に供給されるとともに、矢印C方向に対して迅速に流動し、発電反応が早期に遂行される。同様に、各燃料ガス流路溝120に供給された燃料ガスは、切欠き部位126が設けられている起動用流路部128で電極触媒層に迅速に供給されるとともに、矢印C方向に対して迅速に流動する。
これにより、酸化剤ガス及び燃料ガスは、発電面内の広範囲に対してより早く到達し、発電の安定化が迅速に遂行される等、上記の第1〜第5の実施形態と同様の効果が得られる。
10、110…燃料電池 11…燃料電池スタック
12、112…電解質膜・電極構造体
14、16、114、116…金属セパレータ
18a…酸化剤ガス入口連通孔 18b…酸化剤ガス出口連通孔
20a…燃料ガス入口連通孔 20b…燃料ガス出口連通孔
22a…冷却媒体入口連通孔 22b…冷却媒体出口連通孔
24…固体高分子電解質膜 26…カソード側電極
28…アノード側電極 30…酸化剤ガス流路
30a、118…酸化剤ガス流路溝
33、35、72、82、94、102、124、128…起動用流路部
34…燃料ガス流路 34a、120…燃料ガス流路溝
38…冷却媒体流路 42、44…シール部材
70、80、90、100…反応ガス流路
70a、80a、90a、100a…反応ガス流路溝
70b、90b、100b…波状凸部
74a、74b…分岐部 90b1…ガイド部
122、126…切欠き部位

Claims (5)

  1. 電解質の両側に一対の電極が設けられる電解質・電極構造体とセパレータとが積層され、電極面に沿って反応ガスを供給する反応ガス流路が形成されるとともに、前記反応ガスを前記セパレータの積層方向に流通させる反応ガス入口連通孔及び反応ガス出口連通孔が形成される燃料電池であって、
    前記反応ガス流路は、複数の反応ガス流路溝を有するとともに、
    前記反応ガス流路の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ複数のエンボスを有する入口バッファ部及び出口バッファ部が設けられ、
    記反応ガス流路溝は、前記反応ガスが、前記反応ガス入口連通孔から前記反応ガス出口連通孔に向かって他の前記反応ガス流路溝よりも速く到達する複数の起動用流路部を構成し、
    1以上の前記起動用流路部と1以上の他の前記反応ガス流路溝とが、前記反応ガス流路の流路幅方向に沿って交互に配設されることを特徴とする燃料電池。
  2. 請求項1記載の燃料電池において、前記起動用流路部は、他の前記反応ガス流路溝よりも圧力損失の小さな部位を有することを特徴とする燃料電池。
  3. 請求項1記載の燃料電池において、前記電極は、ガス拡散層を有し、
    前記ガス拡散層は、前記起動用流路部に配置される部位の厚さが、他の前記反応ガス流路溝に配置される部位の厚さよりも小さく設定されることを特徴とする燃料電池。
  4. 請求項1記載の燃料電池において、前記起動用流路部は、互いに隣接する複数の波状の前記反応ガス流路溝を有し、
    互いに隣接する前記反応ガス流路溝には、前記反応ガスをそれぞれの前記反応ガス流路溝に導入させるための分岐部が設けられることを特徴とする燃料電池。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池において、前記反応ガスは、燃料ガスであることを特徴とする燃料電池。
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