JP5573635B2 - ダイヤモンド被覆切削工具 - Google Patents

ダイヤモンド被覆切削工具 Download PDF

Info

Publication number
JP5573635B2
JP5573635B2 JP2010266350A JP2010266350A JP5573635B2 JP 5573635 B2 JP5573635 B2 JP 5573635B2 JP 2010266350 A JP2010266350 A JP 2010266350A JP 2010266350 A JP2010266350 A JP 2010266350A JP 5573635 B2 JP5573635 B2 JP 5573635B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
diamond
lower layer
edge
film
residual stress
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2010266350A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2012115928A5 (ja
JP2012115928A (ja
Inventor
秀充 高岡
秀夫 大島
英彰 高島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to JP2010266350A priority Critical patent/JP5573635B2/ja
Priority to CN2011103755230A priority patent/CN102554318A/zh
Publication of JP2012115928A publication Critical patent/JP2012115928A/ja
Publication of JP2012115928A5 publication Critical patent/JP2012115928A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5573635B2 publication Critical patent/JP5573635B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Drilling Tools (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Description

この発明は、炭化タングステン(WC)基超硬合金で構成された工具基体(以下、単に工具基体という)の表面に、ダイヤモンド皮膜を被覆したエンドミル、ドリル等のダイヤモンド被覆切削工具に関し、特に、CFRP材、高Si含有アルミニウム合金、グラファイト等の難削材の切削加工において、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するダイヤモンド被覆切削工具(以下、ダイヤモンド被覆工具という)に関するものである。
従来、工具基体の表面に、ダイヤモンド皮膜を被覆したダイヤモンド被覆工具が知られており、皮膜の強度、靭性を高めるために、結晶性の高いダイヤモンドと微結晶ダイヤモンド(あるいは非晶質ダイヤモンド)の積層構造としてダイヤモンド皮膜を構成すること、また、皮膜の表面平滑性、被削材の仕上げ面精度を高めることを目的として、粒径が2μm以下の微結晶ダイヤモンドの多層構造としてダイヤモンド皮膜を構成することが知られている。
例えば、特許文献1に示されるように、第1の層は、粒子径0.1〜10μmの多結晶ダイヤモンド層、第2の層は、粒子径0.05〜8μmの双晶ダイヤモンド層または非晶質ダイヤモンド層からなる積層構造でダイヤモンド皮膜を構成することにより、強度と靭性を高めたダイヤモンド被覆工具が知られている。
また、特許文献2に示されるように、ダイヤモンドの結晶成長の起点となる核を表面に付着させる核付着工程と、該核を起点としてCVD法によりダイヤモンドを結晶成長させる結晶成長工程とを繰り返すことにより、結晶粒径が2μm以下の微結晶ダイヤモンドの多層構造でダイヤモンド皮膜を構成することにより、皮膜の表面平滑性を高め、また、被削材の仕上げ面精度を高めたダイヤモンド被覆工具が知られている。
また、ダイヤモンド被覆工具ではないが、特許文献3に示すように、例えば、TiCN、TiN、(Ti,Al)N、(Al,Cr)N、(Al,Cr)CN等の硬質被膜を蒸着形成した被覆工具において、被膜表面から被膜の中間点までは圧縮応力が連続的に減少し、中間点において極小点を示し、中間点から被膜底面まで圧縮応力が連続的に増加するような圧縮応力分布を、硬質被膜内に形成することにより、靭性、耐チッピング性、耐摩耗性を改善した被覆工具が知られている。
特開平4−236779号公報 特開2002−79406号公報 特開2006−62074号公報
上記従来のダイヤモンド被覆工具においては、ダイヤモンドが積層構造で構成されていることから、Si含有量の少ないAl合金などの連続切削や断続切削ではすぐれた強度、靭性、仕上げ面精度等を示すが、金属材料より比強度、比剛性の高いCFRPあるいは溶着性の高い高Si含有Al合金、グラファイト等の難削材の切削加工に用いた場合には、ダイヤモンド膜表面の耐摩耗性が十分でないため、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、CFRP、高Si含有Al合金、グラファイト等の難削材の切削に用いても、すぐれた耐摩耗性を発揮するダイヤモンド被覆工具を開発すべく鋭意研究を行った結果、結晶性ダイヤモンド膜からなる下部層と微結晶ナノダイヤモンド膜からなる上部層を被覆したダイヤモンド被覆切削工具において、刃先稜線部の上部層を、例えば、ウエットブラスト処理によって除去して、刃先稜線部に下部層を露出させ、該露出した下部層の表面における圧縮残留応力σsを1.5〜3GPaとし、さらに、刃先稜線部に形成されている下部層の膜厚の1/2の位置における残留応力値をσ1/2とした場合、σs/σ1/2の値、0.8〜1.0となるような膜厚方向の圧縮残留応力分布を、刃先稜線部の下部層に形成することで、ダイヤモンド膜の耐摩耗性が格段に向上すること、また、その結果として、ダイヤモンド被覆切削工具の工具寿命が大幅に長寿命化することを見出したのである。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「 炭化タングステン基超硬合金で構成された工具基体表面に、5〜30μmの膜厚の結晶性ダイヤモンド膜からなる下部層と0.2〜3μmの膜厚の微結晶ナノダイヤモンド膜からなる上部層が被覆され、刃先稜線部は、上部層が除去されて下部層が露出しているダイヤモンド被覆切削工具において、
上記刃先稜線部に露出している下部層の上記結晶性ダイヤモンド膜について、その膜厚方向の圧縮残留応力分布を、下部層断面方向からラマン分光で測定した場合、上記露出している下部層の表面の残留応力値σsは1.5〜3GPaであって、しかも、刃先稜線部に形成されている下部層の膜厚の1/2の位置における残留応力値をσ1/2とした場合、σs/σ1/2の値は、0.8〜1.0であることを特徴とするダイヤモンド被覆切削工具。」
を特徴とするものである。
以下、本発明について、詳細に説明する。
この発明では、結晶性ダイヤモンド膜からなる下部層の膜厚を5〜30μmと定めているが、下部層の膜厚が5μm未満では、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮することができず、一方、下部層の膜厚が30μmを超えると結晶粒が粗大化しやすくなり、例え、微結晶ナノダイヤモンド膜をその上に被覆したとしても、表面粗さの低下、耐欠損性の低下を招くことになるという理由から、本発明では、下部層の膜厚を5〜30μmと定めた。
また、微結晶ナノダイヤモンド膜からなる上部層(但し、刃先稜線部については上部層を除去することから、刃先稜線部には、上部層は存在しない)の膜厚については、0.2〜3μmと定めているが、上部層の膜厚が0.2μm未満では、特に、すくい面の表面平滑性を保持することができず、溶着、チッピングが発生しやすくなり、一方、上部層の膜厚が3μmを超えると耐摩耗性が低下することから、上部層の膜厚は、0.2〜3μmと定めた。
本発明では、刃先稜線部の上部層を除去し、刃先稜線部には、下部層を露出させる。しかも、該露出した刃先稜線部の下部層には、次に述べるような圧縮残留応力分布を形成させる。
即ち、刃先稜線部の下部層を構成する結晶性ダイヤモンド膜について、その膜厚方向の圧縮残留応力分布を、下部層断面方向からラマン分光で測定した場合、上記露出している下部層の表面の残留応力値σsは1.5〜3GPaであって、しかも、刃先稜線部に形成されている下部層の膜厚の1/2の位置における残留応力値をσ1/2とした場合に、σs/σ1/2の値が0.8〜1.0となるような圧縮残留応力分布を形成させる。
ここで、ラマン分光法によるダイヤモンド膜の残留応力測定方法について、簡単に説明する。ラマン分光装置は波数分解能が0.1cm―1程度のものを用いる。標準試料として、天然ダイヤモンドを用い、1333cm―1付近のsp構造起因のピークについて、天然ダイヤモンドによるラマンバンドのシフト量をΔνとすると、算出される応力は次式で与えられる。
σ(GPa)= 1.08 × Δν (1)
本願では、式(1)により、残留応力を算出した。
露出させた下部層の表面の圧縮残留応力値σsが1.5GPa未満では、耐摩耗性が十分でないために、比較的短時間で使用寿命に至り、一方、圧縮残留応力値σsが3GPaを超える場合には、残留応力が高いために、剥離や破壊などの損傷を生じやすくなる傾向を示すため、下部層の表面の圧縮残留応力値σsを1.5〜3GPaと定めた。
また、下部層の表面の圧縮残留応力値σsが上記範囲内であっても、刃先稜線部に形成されている下部層の膜厚の1/2の位置における残留応力値をσ1/2とした場合に、σs/σ1/2の値が0.8未満の場合には、耐摩耗性向上の効果が得られず、一方、σs/σ1/2の値が1.0を超える場合には、膜と基体の界面付近で剥離する挙動が見られる様になり、結果として工具寿命が短くなってしまうことから、σs/σ1/2の値は0.8〜1.0と定めた。
つまり、σs値およびσs/σ1/2の値が、上記数値範囲内である圧縮残留応力分布が形成されている場合に、刃先稜線部の耐摩耗性が一段と向上し、ダイヤモンド被覆工具の工具寿命の長寿命化が図られる。
上記の圧縮残留応力分布が形成される本発明のダイヤモンド被覆切削工具の製造方法の一例を述べると、次のとおりである。
(a)まず、所望組成のWC基超硬合金からなる工具基体の表面近傍を酸処理してCoのエッチングを行い、最表面のCoを除去した後、これを、5〜100nmの平均粒径のダイヤモンド粒子を分散させたイソプロピルアルコール(以下、IPA)溶液中に浸漬して超音波を付与し、種ダイヤモンドの付着処理を行う。
(b)次いで、種ダイヤモンドの付着処理を行った工具基体を、熱フィラメントCVD装置に装入し、下部層として、例えば、下記(イ)の条件で、5〜30μmの膜厚の結晶性ダイヤモンドを成膜し、また、上部層として、例えば、下記(ロ)の条件で、0.2〜3μmの膜厚の微結晶ナノダイヤモンド膜を成膜する。
(イ)結晶性ダイヤモンドの成膜条件
フィラメント温度 2300 ℃、
基板温度 800 ℃、
反応圧力 2 kPa、
反応ガス CH:1.5 vol%,H:残、
(ロ)微結晶ナノダイヤモンド膜の成膜条件
フィラメント温度 2200 ℃、
基板温度 700 ℃、
反応圧力 4 kPa、
反応ガス CH:5 vol%,H:残、
(c)次いで、刃先稜線部に向けて、ウエットブラスト処理(吐出圧力:1.2MPa、メディア:平均粒径40μmのアルミナ)を施し、刃先稜線部に被覆されていた上部層を除去し、下部層を露出させる。
上記(a)〜(c)の工程により、刃先稜線部の下部層が、本発明で規定する圧縮残留応力分布を有する本発明のダイヤモンド被覆工具を作製することができる。
図1に、本発明のダイヤモンド被覆工具の膜構造の概略模式図を示す。
また、図2には、本発明のダイヤモンド被覆工具の刃先稜線部の下部層に形成される圧縮残留応力分布の一例を示す。
ダイヤモンド被覆工具のダイヤモンド膜には、通常、工具基体との熱膨張差に起因して圧縮残留応力が生じており、そして、その残留応力値は、ダイヤモンド皮膜と工具基体の界面が最も大きく、膜の表面に向かって緩和されていく。そのため、ダイヤモンド膜の表面では、相対的に耐摩耗性が低下する傾向があるが、本発明では、刃先稜線部の微結晶ナノダイヤモンド膜からなる上部層を除去し、結晶性ダイヤモンド膜からなる下部層を露出させることによって、刃先稜線部に形成されているダイヤモンド膜表面を、より大きな圧縮残留応力とすることができ、その結果として、刃先稜線部の耐摩耗性を高めることができる。
また、ウエットブラスト処理を施すことによって、刃先稜線部の微結晶ナノダイヤモンド膜(上部層)を除去した場合には、下部層を露出時に、下部層表面の圧縮残留応力をさらに高めることができるとともに、すくい面の微結晶ナノダイヤモンド膜(上部層)の表面平滑化をも同時に行うことができるため、切屑排出性、耐溶着性が改善され、より一段と工具寿命の長寿命化を図ることができる。
刃先稜線部に向けて(即ち、すくい面に対してほぼ45度の噴射角度)、平均粒径40μmのアルミナ吐出圧力1.2MPaでウエットブラスト処理を施し、約1μmの上部層の除去を行った場合には、刃先稜線部の下部層表面には、ほぼ1200MPaの圧縮残留応力が付与され、また同時に、すくい面表面は、表面粗さRa0.05μmにまで平滑化される(ウエットブラスト処理前のすくい面表面粗さRa0.3μm)。
この発明のダイヤモンド被覆工具は、下部層として結晶性ダイヤモンド膜、上部層として微結晶ナノダイヤモンド膜を被覆し、刃先稜線部のみ、ウエットブラスト処理等により下部層を露出させるとともに、刃先稜線部に形成されている下部層の露出表面の残留応力値σsが1.5〜3GPaであり、かつ、このσsと、刃先稜線部に形成されている下部層の膜厚の1/2の位置における残留応力値σ1/2との比の値σs/σ1/2が0.8〜1.0となるような圧縮残留応力分布が刃先稜線部の下部層に形成されていることによって、金属材料より比強度、比剛性の高いCFRPあるいは溶着性の高い高Si含有Al合金、グラファイト等の難削材の切削加工で用いた場合でも、ダイヤモンド皮膜が一段とすぐれた耐摩耗性を発揮し、工具の長寿命化が図られるのである。
本発明のダイヤモンド被覆工具の膜構造の概略模式図を示す。 本発明のダイヤモンド被覆工具の刃先稜線部の下部層に形成される圧縮残留応力分布の一例を示す。 比較例のダイヤモンド被覆工具の刃先稜線部の下部層に形成される圧縮残留応力分布の一例を示す。
つぎに、この発明のダイヤモンド被覆工具を実施例により具体的に説明する。
なお、以下ではダイヤモンド被覆ドリルについて説明するが、ドリルに何ら限定されるものではない。
まず、表1に示す、いずれも1〜3μmの範囲内の所定の平均粒径を有する原料粉末を用意し、同じく表1に示す配合組成となるように配合した混合粉末を調製し、これをボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力でプレス成形して、直径が10mm,8mmの丸棒圧粉体とし、これらの丸棒圧粉体を焼結して焼結体を製造し、さらに、研削加工にて溝形成部の外径を8mm、6mmの寸法に加工し、その際に、外周マージン部および切れ刃エッジ部に対しては、粒度#600のSiC砥粒を用いたエアーブラスト処理および粒度#1200のダイヤモンド砥石を用いた30μm以上の仕上研削加工処理を行い、外径8mmの工具基体1〜5および外径6mmの工具基体6〜10を製造した。
(a)ついで、上記工具基体1〜10に、硫酸、過酸化水素および水を1:1:1の割合で混合した溶液にて、室温で30秒間エッチングする酸処理を施し、ついで、平均粒径30〜60nmのダイヤモンド粒子を分散させたIPA溶液で超音波洗浄を行うことにより、工具基体1〜10の表面からのCo成分の除去および種ダイヤモンドの付着処理を行った。
(b)ついで、種ダイヤモンドの付着処理を行った工具基体を、熱フィラメントCVD装置に装入し、表2に示す条件で、まずは、結晶性ダイヤモンド(下部層)を所定膜厚になるように成膜し、次いで、同じく表2に示す条件で、微結晶ナノダイヤモンド(上部層)を所定膜厚になるように成膜する。
(c)この後、表3に示す条件で、刃先稜線部に向けて、アルミナ懸濁液を所定の圧力でブラストガンから吹き付けてウエットブラスト処理を施し、刃先稜線部から上記成膜した微結晶ナノダイヤモンド(上部層)を除去する。
上記(a)〜(c)の工程によって、図1に示される膜構造を有する本発明のダイヤモンド被覆工具1〜10(以下、本発明1〜10という)を作製した。
そして、上記本発明1〜10について、刃先稜線部の下部層について、ラマン分光装置を用いてspピークのシフト量を測定し、その数値から、刃先稜線部の下部層表面の残留応力値σsおよび刃先稜線部の下部層の膜厚の1/2の位置における残留応力値σ1/2を算出した。
なお、上記σs、σ1/2は、5点測定による平均値を用いた。
表4に、本発明1〜10について、下部層の膜厚、上部層の膜厚、すくい面の表面粗さRaおよび上記σs、σ1/2、σs/σ1/2の値を示す。
図2には、本発明例の刃先稜線部の下部層の圧縮残留応力分布グラフを示す。
比較のため、上記工具基体1〜7に対して、前記(a)、(b)の工程で、所定膜厚の結晶性ダイヤモンド(下部層)と微結晶ナノダイヤモンド(上部層)を成膜した後、表3に示す種々の条件でウエットブラスト処理を施し、刃先稜線部から微結晶ナノダイヤモンド(上部層)の一部または全部を除去し、刃先稜線部の結晶性ダイヤモンド(下部層)に種々の圧縮残留応力分布を形成した比較例のダイヤモンド被覆工具1〜7(以下、比較例1〜7という)を作製した。
さらに、上記工具基体8〜10に対して、前記(a)の工程で、Co成分の除去および種ダイヤモンドの付着処理を行った後、前記(b)の工程で、表2に示す条件で、所定膜厚の結晶性ダイヤモンド(下部層)と微結晶ナノダイヤモンド(上部層)を成膜した参考例のダイヤモンド被覆工具8〜10(以下、参考例8〜10という)を作製した。(つまり、参考例8〜10では、刃先稜線部の上部層の除去を行っていない。)
そして、上記比較例1〜7、参考例8〜10について、本発明1〜10と同様に、刃先稜線部の下部層について、ラマン分光装置を用いてspピークのシフト量を測定し、その数値から、刃先稜線部の下部層表面の残留応力値σsおよび刃先稜線部の下部層の膜厚の1/2の位置における残留応力値σ1/2を算出した。
なお、上記σs、σ1/2は、5点測定による平均値を用いた。
表5に、比較例1〜7、参考例8〜10について、下部層の膜厚、上部層の膜厚、すくい面の表面粗さRaおよび上記σs、σ1/2、σs/σ1/2の値を示す。
図3には、比較例1の刃先稜線部の下部層の圧縮残留応力分布グラフを示す。


つぎに、上記本発明1〜10、比較例1〜7および参考例8〜10については、次の条件A〜Cで乾式穴あけ切削加工試験を行った。
《切削条件A》
被削材:厚さ10mmのグラファイト板、
切削速度:200 m/min.、
送り:0.12 mm/rev.、
穴深さ:10 mm(貫通穴)、
エアブロー、
《切削条件B》
被削材:厚さ30mmの高アルミニウム合金AC9Aの板、
切削速度:350 m/min.、
送り:0.24 mm/rev.、
穴深さ:20 mm、
切削油剤使用、
《切削条件C》
被削材:厚さ20mmのCFRP板、
切削速度:135m/min.、
送り:0.07mm/rev.、
穴深さ:20mm(貫通穴)、
エアブロー、
いずれの穴あけ切削加工試験でも、切削不能になるまでの穴あけ加工数を測定した。
これらの測定結果を表6に示す。
表4〜6に示される結果から、この発明のダイヤモンド被覆工具は、下部層として結晶性ダイヤモンド膜、上部層として微結晶ナノダイヤモンド膜を被覆し、刃先稜線部のみ下部層を露出させるとともに、刃先稜線部に形成されている下部層の露出表面の残留応力値σsが1.5〜3GPaであり、かつ、このσs/σ1/2が0.8〜1.0となるような圧縮残留応力分布が刃先稜線部の下部層に形成されていることによって、CFRP、高Si含有Al合金、グラファイト等の難削材の切削加工で用いた場合でも、ダイヤモンド皮膜が一段とすぐれた耐摩耗性を発揮し、工具の長寿命化が図られる。
これに対して、比較例1〜7、参考例8〜10では、ダイヤモンド皮膜の耐摩耗性が十分でないため、短時間で使用寿命に至ることは明らかである。
この発明のダイヤモンド被覆工具は、金属材料より比強度、比剛性の高いCFRPあるいは溶着性の高いAl合金、グラファイト等の難削材の切削においても、ダイヤモンド皮膜の剥離が生じることなく長期の使用に亘って、すぐれた耐摩耗性を発揮するものであり、ドリルに限らず、インサート、フライス工具、エンドミル、カッター等の各種切削工具として幅広く利用することが可能である。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金で構成された工具基体表面に、5〜30μmの膜厚の結晶性ダイヤモンド膜からなる下部層と0.2〜3μmの膜厚の微結晶ナノダイヤモンド膜からなる上部層が被覆され、刃先稜線部は、上部層が除去されて下部層が露出しているダイヤモンド被覆切削工具において、
    上記刃先稜線部に露出している下部層の上記結晶性ダイヤモンド膜について、その膜厚方向の圧縮残留応力分布を、下部層断面方向からラマン分光で測定した場合、上記露出している下部層の表面の残留応力値σsは1.5〜3GPaであって、しかも、刃先稜線部に形成されている下部層の膜厚の1/2の位置における残留応力値をσ1/2とした場合、σs/σ1/2の値は、0.8〜1.0であることを特徴とするダイヤモンド被覆切削工具。
JP2010266350A 2010-11-30 2010-11-30 ダイヤモンド被覆切削工具 Expired - Fee Related JP5573635B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010266350A JP5573635B2 (ja) 2010-11-30 2010-11-30 ダイヤモンド被覆切削工具
CN2011103755230A CN102554318A (zh) 2010-11-30 2011-11-23 金刚石包覆切削工具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010266350A JP5573635B2 (ja) 2010-11-30 2010-11-30 ダイヤモンド被覆切削工具

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2012115928A JP2012115928A (ja) 2012-06-21
JP2012115928A5 JP2012115928A5 (ja) 2013-08-22
JP5573635B2 true JP5573635B2 (ja) 2014-08-20

Family

ID=46401675

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010266350A Expired - Fee Related JP5573635B2 (ja) 2010-11-30 2010-11-30 ダイヤモンド被覆切削工具

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP5573635B2 (ja)
CN (1) CN102554318A (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6330031B2 (ja) * 2014-04-24 2018-05-23 京セラ株式会社 被覆工具
CN105483640B (zh) * 2016-01-04 2017-11-17 上海应用技术学院 一种化学气相沉积金刚石涂层基体的前处理方法
CN109699176B (zh) * 2017-08-22 2020-06-26 住友电工硬质合金株式会社 旋转切削工具及其制造方法
JP6850990B2 (ja) * 2017-09-12 2021-03-31 三菱マテリアル株式会社 ダイヤモンド被覆切削工具及びその製造方法
KR102460611B1 (ko) * 2019-06-03 2022-10-27 오에스지 가부시키가이샤 볼엔드밀 및 절삭 인서트
WO2021079586A1 (ja) * 2019-10-24 2021-04-29 住友電工ハードメタル株式会社 ダイヤモンド切削工具およびその製造方法

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08243804A (ja) * 1995-03-10 1996-09-24 Mitsubishi Materials Corp 耐欠損性のすぐれたダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具
JPH09234604A (ja) * 1996-03-01 1997-09-09 Mitsubishi Materials Corp 耐摩耗性のすぐれた人工ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具
DE19914585C1 (de) * 1999-03-31 2000-09-14 Cemecon Ceramic Metal Coatings Diamantbeschichtetes Werkzeug und Verfahren zu seiner Herstellung
KR101035224B1 (ko) * 2004-07-08 2011-05-18 스미토모 덴키 고교 가부시키가이샤 압축 응력의 강도 분포를 갖는 피막을 구비한 표면 피복절삭공구
JP4593998B2 (ja) * 2004-07-30 2010-12-08 住友電工ハードメタル株式会社 表面被覆切削工具
WO2006046462A1 (ja) * 2004-10-29 2006-05-04 Sumitomo Electric Hardmetal Corp. 刃先交換型切削チップおよびその製造方法
EP1867416B1 (en) * 2005-03-29 2018-01-03 Sumitomo Electric Hardmetal Corp. Coated cutting insert and method of manufacturing a coated cutting insert
JP4878808B2 (ja) * 2005-10-21 2012-02-15 住友電工ハードメタル株式会社 刃先交換型切削チップ
KR101182566B1 (ko) * 2007-02-02 2012-09-12 스미또모 덴꼬오 하드메탈 가부시끼가이샤 다이아몬드 소결체 및 절삭공구용 날끝 교환식 팁

Also Published As

Publication number Publication date
CN102554318A (zh) 2012-07-11
JP2012115928A (ja) 2012-06-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101168464B1 (ko) 표면 피복 절삭 공구
JP4739236B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5573635B2 (ja) ダイヤモンド被覆切削工具
JP6499258B2 (ja) 切削工具および切削加工物の製造方法
JP5111379B2 (ja) 切削工具及びその製造方法並びに切削方法
KR102053677B1 (ko) 피복 부재
JP2011230286A (ja) 表面被覆切削工具
JP5488873B2 (ja) 耐欠損性と耐摩耗性にすぐれたダイヤモンド被覆工具
JP2012030309A (ja) 切削工具およびその製造方法
JP2017064840A (ja) ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具
JP5282911B2 (ja) ダイヤモンド被覆切削工具
JP5397689B2 (ja) ダイヤモンド被覆切削工具
JP5590326B2 (ja) ダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル
JP2001293603A (ja) 気相合成ダイヤモンド被覆切削工具
JP6102613B2 (ja) 刃先強度を向上させたダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具
JP4845615B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5459504B2 (ja) ダイヤモンド被覆切削工具
JP5838858B2 (ja) 耐摩耗性に優れたダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル
JP4845490B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5397688B2 (ja) ダイヤモンド被覆切削工具
JP2009248221A (ja) 耐欠損性と耐摩耗性にすぐれたダイヤモンド被覆工具
JP5477781B2 (ja) ダイヤモンド被覆切削工具
JP2006130578A (ja) ダイヤモンドコーティング工具
JPH08311652A (ja) ダイヤモンド被覆超硬合金工具およびその製造方法
JP2005220363A (ja) 高強度被覆焼結合金

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130709

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130927

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20140423

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140603

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140616

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5573635

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees