本発明の第1実施形態に係る定着装置及び画像形成装置の一例について説明する。
図1には、第1実施形態の画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、記録媒体である連続用紙Pに画像を形成するものであり、図1の矢印X方向における右側(上流側)から左側(下流側)へ向けて、連続用紙Pを搬送する用紙搬送部20と、画像を形成して連続用紙Pに転写する画像形成手段の一例としての画像形成部30と、連続用紙Pに転写された画像を定着する定着装置50を有する定着部40とで構成されている。
用紙搬送部20は、連続用紙Pが巻き掛けられるとともに連続用紙Pを搬送する複数の搬送ロール22が設けられており、連続用紙Pに張力を付与しながら画像形成部30へ向けて連続用紙Pを搬送するようになっている。
画像形成部30は、連続用紙Pの搬送方向上流側から下流側へ向けて順に、現像剤の一例としてのブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のトナーにより可視像であるトナー画像を形成する4つの画像形成ユニット24K、24C、24M、24Yが設けられている。各トナーは、後述する定着装置50のレーザ光Lを吸収する材料が用いられている。なお、以後の説明において、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色を区別する際には、符号の後にK、C、M、Yの英字を付与して説明するが、各色を区別する必要がない場合は、符号の後のK、C、M、Yを省略する。
画像形成ユニット24は、導電性材料からなる円筒状部材の外周面に光導電性層が形成された感光体26を有している。感光体26の周囲には、感光体26の回転方向(図示の反時計回り方向)上流側から下流側へ向けて、感光体26の表面を帯電させる帯電装置28と、帯電された感光体26に光を照射して感光体26の表面に潜像を形成する露光装置32と、感光体26上の潜像にトナーを転移させてトナー画像を形成する(現像する)現像ロール35を有する現像装置34と、感光体26と対向配置されて転写部42を構成するとともに感光体26上に形成されたトナー画像を連続用紙P上に転写する転写ロール36と、トナー画像が転写された後の感光体26の表面に残留するトナーを除去するクリーニング装置38と、が設けられている。
また、現像装置34K、34C、34M、34Yの上方には、該現像装置34が収容するトナーと対応する色のトナーを現像装置34に補給するトナー補給容器44K、44C、44M、44Yが設けられており、備えられており、現像により消費されるトナーを補充可能となっている。
定着部40は、画像形成部30で連続用紙P上に転写された未定着トナー画像を連続用紙Pに定着する定着装置50と、連続用紙Pが巻き掛けられるとともに該連続用紙Pを定着装置50に搬送する搬送ロール46と、トナー画像が定着された連続用紙Pを画像形成装置10の外側へ排出する排出ロール48とが設けられている。
ここで、画像形成装置10の画像形成方法について説明する。
図1に示すように、画像形成装置10において画像形成動作が開始されると、画像形成部30では、各感光体26の外周面が帯電装置28によって帯電(一例として、負極性帯電)される。そして、各露光装置32が、帯電された各感光体26の外周面に画像データに基づき光(露光光)を照射し、各感光体26の外周面には露光部位と非露光部位との電位差による潜像が形成される。
続いて、各現像装置34では、各現像ロール35の外周面上に現像剤(トナー含む)の薄層が形成され、該現像ロール35の回転により薄層化されたトナーが各感光体26の外周面と対向する現像位置に搬送される。この現像位置では、感光体26と現像ロール35との間に電界が形成されており、この電界内において、現像ロール35上のトナーが感光体26の潜像に転移してトナー画像が形成される。このようにして形成されたトナー画像は、感光体26の回転により転写ロール36が接触する転写部42へと搬送される。
一方、用紙搬送部20から搬送された連続用紙Pは転写部42へ送り込まれる。転写部42では、転写ロール36に印加された転写バイアス電圧によって電界が形成されており、この電界内でトナー像が連続用紙Pに転写される。そして、連続用紙Pは、各画像形成ユニット24の転写部42へ順次搬送され、各色のトナー像が重ねて転写される。
続いて、トナー像が転写された連続用紙Pは、トナー像を保持した状態で搬送ロール46に巻きまわされながら定着装置50へと送られる。定着装置50では、レーザ光LA(後に詳述する)が連続用紙Pに照射され、後に詳述する如く連続用紙P上のトナーを加熱及び溶融して定着する。トナー像が定着された連続用紙Pは、排出ロール48によって画像形成装置10の外側に排出される。このようにして、連続用紙Pへの画像形成が行われる。
次に、定着装置50の構成について説明する。
図2及び図3に示すように、定着装置50は、連続用紙Pと対向配置され連続用紙Pの搬送方向(矢印+Y方向とする)と直交する第1方向(矢印−X方向)にレーザ光LAを照射する光照射手段の一例としてのレーザ光発生装置52と、レーザ光LAが連続用紙Pで反射されることによって生じた散乱光LBを再び連続用紙Pへ向けて反射させる反射体の一例としての第1反射体54と、連続用紙Pを透過して散乱した透過光LCを再び連続用紙Pへ向けて反射させる第2反射体56と、で主要部が構成されている。
レーザ光発生装置52は、連続用紙Pの搬送方向及び第1方向に対し直交する第2方向(連続用紙Pの幅方向であり矢印Z方向)に一列で複数設けられ、連続用紙Pの幅方向全体にわたってレーザ光LAを照射するようになっている。そして、複数のレーザ光発生装置52は、連続用紙Pの搬送方向で予め設定された範囲において、該連続用紙Pの画像面に向けて射出されるレーザ光LAの照射エネルギーが、ほぼ均等となるように配置されている。さらに、レーザ光LAの照射エネルギーは、連続用紙Pにおけるレーザ光LAの照射領域を通過するトナーが加熱及び溶融され連続用紙P上に定着されるように、予め調整されている。なお、本実施形態では、レーザ光発生装置52の一例として半導体レーザを用いており、矢印Y方向に約1mmのビーム幅でレーザ光LAの照射を行うようになっている。また、レーザ光は矢印Z方向に広がりをもっているが、以下ではX−Y面で見たときのレーザ光の進行状態について説明する。
第1反射体54は、X−Y面において、設計上の中心軸O(連続用紙Pが矢印X方向の撓みや変位が無い状態で静止しているときの連続用紙Pの設計上の位置に相当)を中心とし、矢印Y方向を長軸方向、矢印X方向を短軸方向とする半楕円形状の金属ミラーで構成されている。また、第1反射体54は、矢印Z方向を長手方向とする形状となっており、連続用紙Pの画像面に対して凹状の曲面である第1反射面54Bが対向するように配置されている。そして、第1反射面54Bの周方向における中央部には、矢印Z方向を長手方向とする光入射口54Aが形成されている。これにより、レーザ光発生装置52から連続用紙Pに向けて射出されたレーザ光LAが、光入射口54Aを通って連続用紙Pの画像面に照射されるようになっている。
第1反射面54Bは、定着装置50の側面視(X−Y面)でレーザ光LAが最初に連続用紙Pを照射する位置であり且つトナーの定着が行われる定着位置PXを覆うと共に、矢印Z方向で連続用紙Pの画像領域の全幅を覆うように配置されている。これにより、第1反射体54は、レーザ光LAが連続用紙P上で反射された散乱光LBの多くを反射して、定着位置PX又はこの付近に集光するようになっている。なお、本実施形態では一例として、第1反射体54の長軸方向と短軸方向の比を50:49.5としており、第1反射体54のX−Y面における周方向両端部54Cと連続用紙Pとの間隔は5mmとなっている。
一方、第2反射体56は、X−Y面において、設計上の中心軸Oを中心とし、矢印Y方向を長軸方向、矢印X方向を短軸方向とする半楕円形状の金属ミラーで構成されており、該中心軸Oを中心として第1反射体54と対称配置されている。また、第2反射体56は、矢印Z方向を長手方向とする形状となっており、連続用紙Pの画像面とは反対側の面に対して凹状の曲面である第2反射面56Aが対向するように配置されている。
第2反射面56Aは、連続用紙Pの定着位置PXの裏側の位置(連続用紙Pの背面側の位置)を覆うと共に、矢印Z方向で連続用紙Pの全幅を覆うように、連続用紙Pを挟んで第1反射面54Bと対向配置されている。これにより、第2反射体56は、レーザ光LAのうち連続用紙Pを透過した透過光LCの多くを定着位置PXの裏側の位置付近に反射させるようになっている。
次に、比較例としての定着装置200及びその作用について説明する。
図7には、比較例の定着装置200においてレーザ光が反射又は集光する状態が示されている。定着装置200は、本実施形態のレーザ光発生装置52(図示省略)と、レーザ光LAが連続用紙Pで反射されることによって生じた散乱光LBを再び連続用紙Pへ向けて反射させる第1反射体202と、連続用紙Pを透過して散乱した透過光LCを再び連続用紙Pへ向けて反射させる第2反射体(図示省略)と、で主要部が構成されている。ここでは、比較例の第1反射体202と第2反射体が同じ寸法形状で、且つ設計上の中心軸Oを中心として第2反射体が第1反射体202と対称配置されているものとして、第2反射体によるレーザ光の反射については説明を省略し、第1反射体202について説明する。
第1反射体202は、X−Y面において、設計上の中心軸Oを中心とする半円筒形状の金属ミラーで構成されている。また、第1反射体202は、矢印Z方向(図7の紙面と垂直な方向)を長手方向とする形状となっており、連続用紙Pの画像面に対して凹状の曲面である第1反射面202Bが対向するように配置されている。そして、第1反射面202Bの周方向における中央部には、矢印Z方向を長手方向とする光入射口202Aが形成されている。これにより、レーザ光発生装置52から連続用紙Pに向けて射出されたレーザ光LAが、光入射口202Aを通って連続用紙Pの画像面に照射されるようになっている。
第1反射面202Bは、定着装置200の側面視でレーザ光LAが最初に連続用紙Pを照射する位置である定着位置PXを覆うと共に、矢印Z方向で連続用紙Pの画像領域の全幅を覆うように配置されている。これにより、第1反射体202は、レーザ光LAが連続用紙P上で反射された散乱光LBの多くを反射して、定着位置PX又はこの付近に集光するようになっている。
比較例の定着装置200では、レーザ光発生装置52から連続用紙Pへ向けてレーザ光LAを照射すると、レーザ光LAは、定着位置PXにおいて反射されて散乱光LBとなり、又は連続用紙Pを透過して透過光LCとなる。そして、散乱光LBは、第1反射体202の第1反射面202Bで反射される。ここで、定着位置PXが設計上の中心軸Oと一致している場合、第1反射面202Bで反射されたレーザ光(これを反射光LDとする)は、第1反射面202Bへの散乱光LBの入射方向に沿って、定着位置PXへ向けて進む。
図8に示すように、定着装置200において、レーザ光発生装置52(図2参照)により照射されたレーザ光LAのうち、連続用紙P上の定着位置PXで反射(散乱)されたレーザ光の第1角度成分をLB1、第2角度成分をLB2、第3角度成分をLB3、第4角度成分をLB4とする。例えば、第1角度成分LB1は、矢印+Y方向に対して角度θ1の方向に反射されたレーザ光であり、第2角度成分LB2は、矢印−Y方向(矢印+Y方向とは逆方向)に対して角度θ2(>θ1)の方向に反射されたレーザ光であるとする。また、例えば、第3角度成分LB3は、矢印+Y方向に対して角度θ3(θ1<θ3<θ2)の方向に反射されたレーザ光であり、第4角度成分LB4は、矢印−Y方向に対して角度θ4(>θ1、θ2、θ3)の方向に反射されたレーザ光であるとする。なお、実際のレーザ光は無数にあるが、ここでは第1角度成分LB1、第2角度成分LB2、第3角度成分LB3、第4角度成分LB4に着目する。
さらに、第1反射体202で反射されたレーザ光について、第1角度成分LB1が第1反射面202Bで反射されたものを第1角度成分LD1、第2角度成分LB2が第1反射面202Bで反射されたものを第2角度成分LD2、第3角度成分LB3が第1反射面202Bで反射されたものを第3角度成分LD3、第4角度成分LB4が第1反射面202Bで反射されたものを第4角度成分LD4とする。ここで、定着装置200では、第1角度成分LD1、第2角度成分LD2、第3角度成分LD3、及び第4角度成分LD4が常にX−Y面の一点で交差する。
いま、定着装置200(図7参照)において、図8に示すように、例えば搬送時の連続用紙Pに作用する張力が変化し、撓みなどにより連続用紙Pが矢印−X方向(レーザ光発生装置52とは反対側)に変位して、第1反射体202の中心軸Oの位置とレーザ光LAの定着位置PXとがずれたとする。このとき、X−Y面において、第1角度成分LD1と第3角度成分LD3の交点、及び第2角度成分LD2と第4角度成分LD4の交点は、連続用紙Pの変位方向(矢印−X方向)で同じ位置となる。即ち、定着位置PXで反射されると共に第1反射体202で反射されたレーザ光は、レーザ光LAの光軸上で且つX−Y面において交点K0に集光すると共に、この交点K0を通り直進することになる。なお、レーザ光LAは、X−Y面では集光しているが、矢印Z方向には集光はしていない。
ここで、図9(b)に示すように、定着装置200では、矢印X方向において連続用紙Pの基準位置となる前述の中心軸Oの位置(図8参照)に連続用紙Pがあるとき、定着位置PXに照射されたレーザ光LAは、連続用紙Pで反射されて散乱光LBとなり、この散乱光LBがさらに第1反射面202B(図7参照)で反射されて反射光LDとなる。そして、反射光LDは、再度、定着位置PXに集光する。これにより、X−Y面において、前述の交点K0は、定着位置PXと同じ位置となり、定着位置PXでの照射エネルギー密度が高くなる。即ち、定着位置PXでのトナー加熱に用いられる光エネルギー(連続用紙Pの搬送による定着位置PX通過時間当たりの光エネルギー:以下、加熱エネルギーという)が高くなる。
一方、図9(a)に示すように、定着装置200では、連続用紙Pの位置が中心軸Oの位置よりも矢印+X方向(レーザ光発生装置52側)に変位したとき、即ち、定着位置PXが矢印+X方向にずれたとき、第1反射面202Bで反射された反射光LDのX−Y面における交点K0は、中心軸Oの位置よりも矢印−X方向にずれた位置となる。また、図9(c)に示すように、連続用紙Pの位置が中心軸Oの位置よりも矢印−X方向に変位したとき、即ち、定着位置PXが矢印−X方向にずれたとき、第1反射面202Bで反射された反射光LDのX−Y面における交点K0は、中心軸Oの位置よりも矢印+X方向にずれた位置となる。
このように、比較例の定着装置200では、第1反射面202Bからの反射光LDがX−Y面における1つの交点K0に集光するようになっている。
次に、第1実施形態の作用について説明する。
図4には、第1実施形態の定着装置50(図2参照)においてレーザ光が反射又は集光する状態が示されている。ここでは、第1反射体54と第2反射体56(図2参照)が同じ寸法形状で、且つ設計上の中心軸Oを中心として、第2反射体56が第1反射体54と対称配置されているものとして、第2反射体56によるレーザ光の反射については説明を省略し、第1反射体54について説明する。なお、図4の点F1、F2は、楕円形状の第1反射体54の焦点を表している。
定着装置50では、レーザ光発生装置52(図2参照)から連続用紙Pへ向けてレーザ光LAを照射すると、レーザ光LAは、定着位置PXにおいて反射されて散乱光LBとなり、又は連続用紙Pを透過して透過光LCとなる。そして、散乱光LBは、第1反射体54の第1反射面54Bで反射される。このとき、定着位置PXが第1反射体54のX−Y面での設計上の中心軸Oに位置しているものとすると、第1反射面54Bで反射されたレーザ光(これを反射光LDとする)は、第1反射面54Bへの散乱光LBの入射角に応じた反射角方向に沿って、定着位置PXと異なる位置へ向けて進む。
図5に示すように、定着装置50において、レーザ光発生装置52(図2参照)により照射されたレーザ光LAのうち、連続用紙P上の定着位置PXで反射(散乱)されたレーザ光の第1角度成分をLB1、第2角度成分をLB2、第3角度成分をLB3、第4角度成分をLB4とする。例えば、第1角度成分LB1は、矢印+Y方向に対して角度θ1の方向に反射されたレーザ光であり、第2角度成分LB2は、矢印−Y方向に対して角度θ2(>θ1)の方向に反射されたレーザ光であるとする。また、例えば、第3角度成分LB3は、矢印+Y方向に対して角度θ3(θ1<θ3<θ2)の方向に反射されたレーザ光であり、第4角度成分LB4は、矢印−Y方向に対して角度θ4(>θ1、θ2、θ3)の方向に反射されたレーザ光であるとする。なお、実際のレーザ光は無数にあるが、ここでは第1角度成分LB1、第2角度成分LB2、第3角度成分LB3、第4角度成分LB4に着目する。
さらに、第1反射体54で反射されたレーザ光について、第1角度成分LB1が第1反射面54Bで反射されたものを第1角度成分LD1、第2角度成分LB2が第1反射面54Bで反射されたものを第2角度成分LD2、第3角度成分LB3が第1反射面54Bで反射されたものを第3角度成分LD3、第4角度成分LB4が第1反射面54Bで反射されたものを第4角度成分LD4とする。
いま、定着装置50(図2参照)において、図5に示すように、例えば搬送時の連続用紙Pに作用する張力が変化し、撓みなどにより連続用紙Pが矢印−X方向に変位して、設計上の中心軸Oの位置とレーザ光LAの定着位置PXとがずれたとする。このとき、X−Y面において、第1反射体54で反射されたレーザ光の第1角度成分LD1と第3角度成分LD3とが交差する第1交点K1の位置と、第2角度成分LD2と第4角度成分LD4とが交差する第2交点K2の位置は、矢印X方向及び矢印Y方向で異なる位置となる。即ち、定着位置PXで反射されると共に第1反射体54で反射されたレーザ光は、X−Y面における矢印X方向及び矢印Y方向の位置が異なる複数の点を通り直進することになる。なお、連続用紙Pは矢印Y方向に搬送されるので、矢印X方向、矢印Y方向いずれも連続用紙Pの変位方向とする。
ここで、図6(b)に示すように、定着装置50では、矢印X方向において連続用紙Pの基準位置となる前述の設計上の中心軸Oの位置(図では(0、0)の原点に相当)に連続用紙Pがあるとき、定着位置PXに照射されたレーザ光LAは、連続用紙Pで反射されて散乱光LBとなり、この散乱光LBがさらに第1反射面54B(図4参照)で反射されて反射光LDとなる。そして、反射光LDは、X−Y面において、定着位置PXとは異なり且つそれぞれ異なる位置の第1交点K1、第2交点K2を含む複数の点(黒丸で図示)に集光する。
一方、図6(a)に示すように、連続用紙Pの位置が設計上の中心軸Oの位置よりも矢印+X方向に変位したとき、即ち、定着位置PXが矢印+X方向にずれたとき、第1反射面54Bで反射された反射光LDのX−Y面における第1交点K1、第2交点K2の位置は、定着位置PXよりも矢印−X方向で且つ矢印+Y方向又は−Y方向にずれており、それぞれ異なる位置となる。
また、図6(c)に示すように、連続用紙Pの位置が設計上の中心軸Oの位置よりも矢印−X方向に変位したとき、即ち、定着位置PXが矢印−X方向にずれたとき、第1反射面54Bで反射された反射光LDのX−Y面における第1交点K1、第2交点K2の位置は、矢印+X方向で且つ矢印+Y方向又は−Y方向にずれており、それぞれ異なる位置となる。このように、第1実施形態の定着装置50では、第1反射面54Bからの反射光LDが集光するX−Y面における複数の点(第1交点K1、第2交点K2含む黒丸で図示した点)の位置が、連続用紙Pの変位方向で異なっている。
ここで、第1実施形態の定着装置50における反射光LDの集光状態と、前述の比較例の定着装置200(図7参照)における反射光LDの集光状態とを比べると、比較例の定着装置200は、反射光LDがX−Y面における一点に集光しているのに対し、第1実施形態の定着装置50は、反射光LDがX−Y面における連続用紙Pの変位方向に分布する複数の点にそれぞれ集光していることが異なっている。即ち、反射光LDの集光領域は、比較例の定着装置200では、X−Y面におけるほぼ一点で狭い領域であるのに対し、第1実施形態の定着装置50では、X−Y面における矢印X、Y方向に広がりを持ち比較例の定着装置200よりも広い領域となっており、反射光LDの集光状態が異なっている。
上記のことから、第1実施形態の定着装置50の方が比較例の定着装置200に比べて、反射光LDの照射範囲(以後、焦点深度という)が広く、連続用紙Pが変位しても一定以上の光エネルギーがトナーに与えられることが分かる。そこで、第1実施形態の定着装置50と比較例の定着装置200について、連続用紙Pが矢印X方向に変位したときの連続用紙P上の矢印Y方向位置とその位置における光強度との関係を確認した。
図10(a)には、第1実施形態の定着装置50における光強度分布が示されており、図10(b)には、比較例の定着装置200における光強度分布が示されている。なお、定着装置50では、連続用紙Pを設計上の中心軸Oに相当する基準位置(X=0.0mm)からX=−0.2、−0.4、−0.6、−0.8、−1.0、−1.2、−1.4mmと変位させたときの光強度分布が測定されており、定着装置200では、連続用紙Pを基準位置(X=0.0mm)からX=−0.2、−0.4、−0.6、−0.8、−1.0mmと変位させたときの光強度分布が測定されている。
図10(a)及び図10(b)に示すように、第1実施形態の定着装置50における光強度分布と比較例の定着装置200における光強度分布とを、連続用紙Pの変位が0.0mmから−1.0mmまでの範囲で比較すると、比較例の定着装置200では、基準位置で光強度が0.095程度あったものが位置−1.0mmで0.025程度まで減少しており、基準位置の光強度に対して減少率が75%程度となっている。
一方、第1実施形態の定着装置50における光強度分布では、基準位置で光強度が0.025程度あったものが位置−1.0mmで0.055程度まで増加しており、位置−1.0mmでの光強度を基準としたときの基準位置での光強度の減少率は55%程度となっている。これにより、第1実施形態の定着装置50の方が比較例の定着装置200に比べて、連続用紙Pが変位したときの光強度、即ち連続用紙P上のトナーへの照射エネルギー密度及びトナーに与えられる加熱エネルギーの変動が小さいことが確認された。
図11(a)、(b)には、第1実施形態の定着装置50と比較例の定着装置200について、連続用紙Pの高さ(矢印X方向の位置)を0.0mm、+0.6mm、−0.6mmと3段階で変化させたときの連続用紙P上のトナー画像の濃度と定着エネルギー低減効率の関係がグラフで示されている。なお、図11(a)、(b)において、縦軸の定着エネルギー低減効率とは、定着位置PXからの散乱光LBを反射させる反射体が無い状態におけるトナーに与えられる加熱エネルギーと、反射体がある状態におけるトナーに与えられる加熱エネルギーとの比であり、反射体が無い場合を100%としている。また、横軸の画像濃度とは、連続用紙Pの単位面積においてトナーが覆っている範囲を比率で表したものである。
図11(b)に示すように、比較例の定着装置200では、連続用紙Pの高さが+0.6mm、−0.6mmのときに、定着エネルギー低減効率が120%から140%程度となっているのに対し、連続用紙Pの高さが0.0mmのときに、定着エネルギー低減効率が120%から350%程度と大きく変化している。これは、連続用紙Pの高さが変化したときのトナーへの照射エネルギー密度及びトナーに与えられる加熱エネルギーが大きく変化することを表しており、例えば、連続用紙Pが変位したときを基準として照射エネルギーを大きく設定すると、連続用紙Pが変位しないときにトナーに対して過剰な加熱エネルギーを与えることになり、画質が悪化する。また、連続用紙Pが変位しないときを基準として照射エネルギーを小さく設定すると、連続用紙Pが変位したときにトナーに対して必要な加熱エネルギーを与えることができず、定着性が悪化することになる。
一方、図11(a)示すように、第1実施形態の定着装置50では、連続用紙Pの高さが+0.6mm、−0.6mmのときに、定着エネルギー低減効率が120%から150%程度となっており、連続用紙Pの高さが0.0mmのときに、定着エネルギー低減効率が120%から230%程度の変化となっている。このことから、第1実施形態の定着装置50を用いた場合は、比較例の定着装置200を用いた場合に比べて、連続用紙Pが変位したときの連続用紙P上のトナーに与えられる加熱エネルギーの変化が小さく、即ち、トナーに対して必要な加熱エネルギーを与えると共に過剰な加熱エネルギーを与えず、トナーの定着性や画質が安定することが分かる。
このように、比較例の定着装置200のような反射光LDがX−Y面の一点で集光する構成では、連続用紙Pが変位した場合でもトナーに対して定着に必要な加熱エネルギーが与えられるように照射エネルギーを大きく設定すると、設計上の中心軸Oと定着位置PXが一致したときに、連続用紙P上のトナーに対して過剰な加熱エネルギーを与えて画質が悪化する。また、連続用紙Pが変位しないときを基準として照射エネルギーを小さく設定すると、連続用紙Pが変位したときにトナーに対して必要な加熱エネルギーを与えることができず、定着性が悪化することになる。
一方、第1実施形態の定着装置50では、第1反射体54で反射された反射光LDがX−Y面における連続用紙Pの変位方向の異なる位置で交わることにより、レーザ光がある場所に極度に集中はしないが、連続用紙Pの変位する幅にわたってレーザ光がある程度集中する。これにより、定着装置50では、設計上の中心軸Oと定着位置PXの一致、不一致(連続用紙Pの変位)に関わらず、連続用紙P上のトナーに対して必要な加熱エネルギーを与え、且つ過剰な加熱エネルギーを与えることがなく、連続用紙Pへのトナーの定着性や画質の悪化が抑制される。
なお、図3の定着装置50において、連続用紙PへのトナーTの付着によって形成される画像は、一般的に画像濃度が高い部分と低い部分とが混在する。ここで、第1実施形態の定着装置50において、レーザ光LAが照射される範囲は連続用紙Pの搬送方向に1mm程度と小さくなっている。そして、レーザ光LAが照射された範囲の画像濃度が高いときには、トナーTで大半の照射エネルギーが吸収されるため、散乱光LBが少なくなり、定着位置PXに再照射される反射光LDの照射エネルギーも小さくなる。一方、レーザ光LAが照射される範囲の画像濃度が低いときには、連続用紙P上で反射される散乱光LB及び連続用紙Pを透過した透過光LCが増加し、トナーTに再照射される照射エネルギー及び連続用紙Pの背面側から定着位置PXに再照射されるエネルギーが増大する。したがって、画像濃度の高い部分、低い部分のいずれにおいても良好な定着が可能となる。
また、定着装置50では、第2反射体56も楕円形状であるため、第1反射体54と同様に、定着位置PXへ再反射された透過光LCが、X−Y面における連続用紙Pの変位方向の異なる位置で交わり、レーザ光がある場所に極度に集中はしないが、連続用紙Pの変位する幅にわたってレーザ光がある程度集中する。これにより、さらに連続用紙Pへのトナーの定着性や画質の悪化が抑制される。
次に、本発明の第2実施形態に係る定着装置及び画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図12には、第2実施形態の定着装置60が示されている。定着装置60は、レーザ光発生装置52(図示省略)と、レーザ光LAが連続用紙Pで反射されることによって生じた散乱光LBを再び連続用紙Pへ向けて反射させる反射体及び円弧部材の一例としての第3反射体62、第4反射体64、及び第5反射体66と、連続用紙Pを透過して散乱した透過光LCを再び連続用紙Pへ向けて反射させる第2反射体(図示省略)と、で主要部が構成されている。ここでは、第3反射体62、第4反射体64、及び第5反射体66と第2反射体が同じ寸法形状で、且つ設計上の中心軸Oを中心として第2反射体が第3反射体62、第4反射体64、及び第5反射体66と対称配置されているものとして、第2反射体によるレーザ光の反射については説明を省略し、第3反射体62、第4反射体64、及び第5反射体66について説明する。
第3反射体62は、X−Y面において、断面形状が半径R1の円弧状で且つレーザ光LAを中心とした半円のほぼ1/3の幅(中心角60°程度)の金属ミラーで構成されている。また、第3反射体62は、矢印Z方向(図12の紙面と垂直な方向)を長手方向とする形状となっており、連続用紙Pの画像面に対して凹状の曲面である第3反射面62Bが対向するように配置されている。
ここで、X−Y面における第3反射体62の円の中心となる設計上の中心軸(図13の点F3に相当)は、連続用紙Pが矢印X方向の撓みや変位が無い状態で静止しているときに連続用紙Pよりも矢印−X方向側の位置となるように配置されている。これにより、第3反射体62は、連続用紙P上で反射された散乱光LBの多くを定着位置PXよりも矢印−X方向側に集光するようになっている。
第3反射面62Bは、レーザ光LAの定着位置PXを覆うと共に、矢印Z方向で連続用紙Pの画像領域の全幅を覆うように配置されている。そして、第3反射面62Bの周方向における中央部には、矢印Z方向を長手方向とする光入射口62Aが形成されている。これにより、レーザ光発生装置52(図2参照)から連続用紙Pに向けて射出されたレーザ光LAが、光入射口62Aを通って連続用紙Pの画像面に照射されるようになっている。
一方、第4反射体64は、X−Y面において、断面形状が半径R2(>半径R1)の円弧状で且つレーザ光LAを中心とした半円のほぼ1/3の幅(中心角60°程度)の金属ミラーで構成されている。また、第4反射体64は、矢印Z方向(図12の紙面と垂直な方向)を長手方向とする形状となっており、連続用紙Pの画像面に対して凹状の曲面である第4反射面64Aが、図示の左斜め方向で対向するように配置されている。そして、第4反射体64の右上端部と第3反射体62の左下端部が重なっている。
第4反射面64Aは、矢印Z方向で連続用紙Pの画像領域の全幅を覆うように配置されている。また、X−Y面における第4反射体64の中心軸(図13の点F4に相当)は、設計上の中心軸Oの位置に配置されている。これにより、第4反射体64は、連続用紙P上で反射された散乱光LBの多くを定着位置PX(中心軸O)又はこの付近に集光するようになっている。
同様にして、第5反射体66は、X−Y面において、断面形状が半径R2(>半径R1)の円弧状で且つレーザ光LAを中心とした半円のほぼ1/3の幅(中心角60°程度)の金属ミラーで構成されている。また、第5反射体66は、矢印Z方向(図12の紙面と垂直な方向)を長手方向とする形状となっており、連続用紙Pの画像面に対して凹状の曲面である第5反射面66Aが、図示の右斜め方向で対向するように配置されている。そして、第5反射体66の左上端部と第3反射体62の右下端部が重なっている。
第5反射面66Aは、矢印Z方向で連続用紙Pの画像領域の全幅を覆うように配置されている。また、X−Y面における第5反射体66の中心軸(図13の点F4に相当)は、設計上の中心軸Oの位置に配置されている。これにより、第5反射体66は、連続用紙P上で反射された散乱光LBの多くを定着位置PX(中心軸O)又はこの付近に集光するようになっている。このように、定着装置60では、半径方向の大きさの異なる第3反射面62B、第4反射面64A、第5反射面66Aを連続用紙Pの変位方向にずらして配置した構成とされている。
図13に示すように、定着装置60において、レーザ光発生装置52(図2参照)により照射されたレーザ光LAのうち、連続用紙P上の定着位置PXで反射(散乱)されたレーザ光の第1角度成分をLB1、第2角度成分をLB2、第3角度成分をLB5、第4角度成分をLB6とする。例えば、第1角度成分LB1は、矢印+Y方向に対して角度θ1の方向に反射されたレーザ光であり、第2角度成分LB2は、矢印−Y方向に対して角度θ2(>θ1)の方向に反射されたレーザ光であるとする。また、例えば、第3角度成分LB5は、矢印+Y方向に対して角度θ5(>θ1、θ2)の方向に反射されたレーザ光であり、第4角度成分LB6は、矢印−Y方向に対して角度θ6(>θ5)の方向に反射されたレーザ光であるとする。なお、実際のレーザ光は無数にあるが、ここでは第1角度成分LB1、第2角度成分LB2、第3角度成分LB5、第4角度成分LB6に着目する。
さらに、第3反射体62で反射されたレーザ光について、第3角度成分LB5が第3反射面62Bで反射されたものを第3角度成分LD5、第4角度成分LB6が第3反射面62Bで反射されたものを第4角度成分LD6とする。また、第4反射体64で反射されたレーザ光について、第2角度成分LB2が第4反射面64Aで反射されたものを第2角度成分LD2とする。加えて、第5反射体66で反射されたレーザ光について、第1角度成分LB1が第5反射面66Aで反射されたものを第1角度成分LD1とする。
次に、第2実施形態の作用について説明する。
図12に示すように、定着装置60では、レーザ光発生装置52(図3参照)から連続用紙Pへ向けてレーザ光LAを照射すると、レーザ光LAは、定着位置PXにおいて反射されて散乱光LBとなり又は連続用紙Pを透過して透過光LCとなる。そして、散乱光LBは、第3反射面62B、第4反射面64A、及び第5反射面66Aで反射される。このとき、定着位置PXが設計上の中心軸Oに位置しているものとすると、第3反射面62Bで反射された反射光LDは、散乱光LBの入射角に応じた反射角方向に沿って、定着位置PXと異なる位置へ向けて進む。また、第4反射面64A及び第5反射面66Aで反射された反射光LDは、散乱光LBの入射角に応じた反射角方向に沿って定着位置PXへ向けて進む。
いま、定着装置60において、図13に示すように、例えば搬送時の連続用紙Pに作用する張力が変化し、撓みなどにより連続用紙Pが矢印−X方向に変位して、設計上の中心軸Oの位置とレーザ光LAの定着位置PXとがずれたとする。このとき、X−Y面において、第5反射体66で反射されたレーザ光の第1角度成分LD1と第3反射体62で反射されたレーザ光の第3角度成分LD5とが交差する第1交点K3の位置と、第4反射体64で反射されたレーザ光の第2角度成分LD2と第3反射体62で反射された第4角度成分LD6とが交差する第2交点K4の位置は、矢印X方向及び矢印Y方向で異なる位置となる。即ち、定着位置PXで反射されると共に第3反射体62、第4反射体64、及び第5反射体66で反射されたレーザ光は、X−Y面における矢印X方向及び矢印Y方向の位置が異なる複数の点を通り直進することになる。
ここで、図14(b)に示すように、定着装置60では、矢印X方向において連続用紙Pが設計上の中心軸O(図では(0、0)の原点に相当)にあるとき、定着位置PXに照射されたレーザ光LAは、連続用紙Pで反射されて散乱光LBとなり、この散乱光LBがさらに第3反射体62、第4反射体64、及び第5反射体66で反射されて反射光LDとなる。そして、第3反射体62及び第5反射体66からの反射光LDは、X−Y面において、定着位置PXと異なる第1交点K3を含む複数の点に集光し、第3反射体62及び第4反射体64からの反射光LDは、定着位置PXと異なる第2交点K4を含む複数の点に集光する。
一方、図14(a)に示すように、連続用紙Pの位置が設計上の中心軸Oの位置よりも矢印+X方向に変位したとき、即ち、定着位置PXが矢印+X方向にずれたとき、X−Y面において、第3反射体62及び第5反射体66で反射された反射光LDの第1交点K3と、第3反射体62及び第4反射体64で反射された反射光LDの第2交点K4の位置は、定着位置PXよりも矢印−X方向にずれており、それぞれ異なる位置となる。
また、図14(c)に示すように、連続用紙Pの位置が設計上の中心軸Oの位置よりも矢印−X方向に変位したとき、即ち、定着位置PXが矢印−X方向にずれたとき、X−Y面において、第3反射体62及び第5反射体66で反射された反射光LDの第1交点K3と、第3反射体62及び第4反射体64で反射された反射光LDの第2交点K4の位置は、定着位置PXよりも矢印+X方向にずれており、それぞれ異なる位置となる。このように、第2実施形態の定着装置60では、X−Y面において、第3反射体62、第4反射体64、及び第5反射体66からの反射光LDが集光する第1交点K3又は第2交点K4を含む複数の集光点の位置が、連続用紙Pの変位方向で異なっている。
ここで、第2実施形態の定着装置60における反射光LDの集光状態と、前述の比較例の定着装置200(図7参照)における反射光LDの集光状態とを比べると、比較例の定着装置200は、反射光LDがX−Y面における一点に集光しているのに対し、第2実施形態の定着装置60は、反射光LDがX−Y面における連続用紙Pの変位方向に分布する複数の点にそれぞれ集光していることが異なっている。即ち、反射光LDの集光領域は、比較例の定着装置200では、X−Y面におけるほぼ一点で狭い領域であるのに対し、第2実施形態の定着装置60では、X−Y面における矢印X、Y方向に広がりを持ち比較例の定着装置200よりも広い領域となっており、反射光LDの集光状態が異なっている。
上記のことから、第2実施形態の定着装置60の方が比較例の定着装置200に比べて、連続用紙Pが変位したときの反射光LDの焦点深度が広く、連続用紙Pが変位しても一定以上の光エネルギーがトナーに与えられることが分かる。そこで、第2実施形態の定着装置60と比較例の定着装置200について、連続用紙Pが矢印X方向に変位したときの連続用紙P上の矢印Y方向位置とその位置における光強度との関係を確認した。
図15(a)には、第2実施形態の定着装置60における光強度分布が示されており、図15(b)には、比較例の定着装置200における光強度分布が示されている。なお、定着装置60では、連続用紙Pを設計上の中心軸Oに相当する基準位置(X=0.0mm)からX=−0.2、−0.4、−0.6、−0.8、−1.0、−1.2、−1.4mmと変位させたときの光強度分布が測定されており、定着装置200では、連続用紙Pを基準位置(X=0.0mm)からX=−0.2、−0.4、−0.6、−0.8、−1.0mmと変位させたときの光強度分布が測定されている。
図15(a)及び図15(b)に示すように、第2実施形態の定着装置60における光強度分布と比較例の定着装置200における光強度分布とを、連続用紙Pの変位が0.0mmから−1.0mmまでの範囲で比較すると、比較例の定着装置200では、基準位置で光強度が0.095程度あったものが位置−1.0mmで0.025程度まで減少しており、基準位置の光強度に対して減少率が75%程度となっている。
一方、第2実施形態の定着装置60における光強度分布では、基準位置で光強度が0.07程度あったものが位置−1.0mmで0.047程度の減少となっており、基準位置での光強度を基準としたときの光強度の減少率は31%程度となっている。これにより、第2実施形態の定着装置60の方が比較例の定着装置200に比べて、連続用紙Pが変位したときの光強度、即ち連続用紙P上のトナーへの照射エネルギー密度及びトナーに与えられる加熱エネルギーの変動が小さいことが確認された。
図16(a)、(b)には、第2実施形態の定着装置60と比較例の定着装置200について、連続用紙Pの高さ(矢印X方向の位置)を0.0mm、+0.6mm、−0.6mmと3段階で変化させたときの連続用紙P上のトナー画像の濃度と定着エネルギー低減効率の関係がグラフで示されている。なお、図16(a)、(b)において、縦軸の定着エネルギー低減効率と横軸の画像濃度の定義は、前述の図11(a)、(b)と同様である。
図16(b)に示すように、比較例の定着装置200では、連続用紙Pの高さが+0.6mm、−0.6mmのときに、定着エネルギー低減効率が120%から140%程度となっているのに対し、連続用紙Pの高さが0.0mmのときに、定着エネルギー低減効率が120%から350%程度と大きく変化している。これは、連続用紙Pの高さが変化したときのトナーへ与えられる加熱エネルギーが大きく変化することを表している。
一方、図16(a)に示すように、第2実施形態の定着装置60では、連続用紙Pの高さが+0.6mm、0.0mm、−0.6mmのいずれのときにおいても、定着エネルギー低減効率がほぼ120%から150%程度となっている。このことから、第2実施形態の定着装置60を用いた場合は、比較例の定着装置200を用いた場合に比べて、連続用紙Pが変位したときの連続用紙P上のトナーに与えられる加熱エネルギーの変化が小さく、即ち、トナーの定着性や画質が安定することが分かる。
このように、第2実施形態の定着装置60では、第3反射体62、第4反射体64、及び第5反射体66(図12参照)で反射された反射光LDが、連続用紙Pの変位方向の異なる位置で交わることにより、レーザ光がある場所に極度に集中はしないが、連続用紙Pの変位する幅にわたってレーザ光がある程度集中する。これにより、定着装置60では、設計上の中心軸Oと定着位置PXの一致、不一致(連続用紙Pの変位)に関わらず、連続用紙P上のトナーに対して必要な加熱エネルギーを与え、且つ過剰な加熱エネルギーを与えることがなく、連続用紙Pへのトナーの定着性や画質の悪化が抑制される。
次に、本発明の第3実施形態に係る定着装置及び画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1、第2実施形態と基本的に同一の部材には、前記第1、第2実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図17には、第3実施形態の定着装置70が示されている。定着装置70は、レーザ光発生装置52(図示省略)と、レーザ光LAが連続用紙Pで反射されることによって生じた散乱光LBを再び連続用紙Pへ向けて反射させる反射体の一例としての第6反射体72及び第7反射体74と、連続用紙Pを透過して散乱した透過光LCを再び連続用紙Pへ向けて反射させる第2反射体(図示省略)と、で主要部が構成されている。ここでは、第6反射体72及び第7反射体74と第2反射体が同じ寸法形状で、且つ設計上の中心軸Oを中心として第2反射体が第6反射体72及び第7反射体74と対称配置されているものとして、第2反射体によるレーザ光の反射については説明を省略し、第6反射体72及び第7反射体74について説明する。
第6反射体72は、X−Y面において、断面形状が半径R3の円弧状でほぼ1/4円の幅(中心角90°程度)の金属ミラーで構成されている。また、第6反射体72は、矢印Z方向(図17の紙面と垂直な方向)を長手方向とする形状となっており、連続用紙Pの定着位置PXから矢印−Y方向側の画像面に対して、凹状の曲面である第6反射面72Bが対向するように配置されている。
X−Y面における第6反射体72の円の中心となる設計上の中心軸(図18の点F5に相当)は、連続用紙Pが矢印X方向の撓みや変位が無い状態で静止しているときに連続用紙Pよりも矢印−X方向側の位置となるように配置されている。そして、第6反射面72Bは、定着位置PXから矢印−Y方向側を覆うと共に、矢印Z方向(図示省略)で連続用紙Pの画像領域の全幅を覆っている。これにより、第6反射体72は、連続用紙P上で反射された散乱光LBの多くを定着位置PXよりも矢印−X方向側に集光するようになっている。
一方、第7反射体74は、X−Y面において、断面形状が半径R4(>半径R3)の円弧状でほぼ1/4円の幅(中心角90°程度)の金属ミラーで構成されている。また、第7反射体74は、矢印Z方向(図12の紙面と垂直な方向)を長手方向とする形状となっており、連続用紙Pの定着位置PXから矢印+Y方向側の画像面に対して、凹状の曲面である第7反射面74Bが対向するように配置されている。
X−Y面における第7反射体74の円の中心となる設計上の中心軸(図18の点F6に相当)は、連続用紙Pが矢印X方向の撓みや変位が無い状態で静止しているときに連続用紙Pの定着位置PXとなるように配置されている。そして、第7反射面74Bは、定着位置PXから矢印+Y方向側を覆うと共に、矢印Z方向(図示省略)で連続用紙Pの画像領域の全幅を覆っている。これにより、第7反射体74は、連続用紙P上で反射された散乱光LBの多くを定着位置PX又は定着位置PXよりも矢印+X方向側に集光するようになっている。
ここで、第6反射体72の右上端部72Aと第7反射体74の左上端部74Aとが離れて配置されており、これらによって矢印Z方向を長手方向とする光入射口76が形成されている。これにより、レーザ光発生装置52(図2参照)から連続用紙Pに向けて射出されたレーザ光LAが、光入射口76を通って連続用紙Pの画像面に照射されるようになっている。
図18に示すように、定着装置70において、レーザ光発生装置52(図2参照)により照射されたレーザ光LAのうち、連続用紙P上の定着位置PXで反射(散乱)されたレーザ光の第1角度成分をLB1、第2角度成分をLB2、第3角度成分をLB3、第4角度成分をLB4とする。例えば、第1角度成分LB1は、矢印+Y方向に対して角度θ1の方向に反射されたレーザ光であり、第2角度成分LB2は、矢印−Y方向に対して角度θ2(>θ1)の方向に反射されたレーザ光であるとする。また、例えば、第3角度成分LB3は、矢印+Y方向に対して角度θ3(θ1<θ3<θ2)の方向に反射されたレーザ光であり、第4角度成分LB4は、矢印−Y方向に対して角度θ4(>θ1、θ2、θ3)の方向に反射されたレーザ光であるとする。なお、実際のレーザ光は無数にあるが、ここでは第1角度成分LB1、第2角度成分LB2、第3角度成分LB3、第4角度成分LB4に着目する。
さらに、第6反射体72で反射されたレーザ光について、第2角度成分LB2が第6反射面72Bで反射されたものを第2角度成分LD2、第4角度成分LB4が第6反射面72Bで反射されたものを第4角度成分LD4とする。また、第7反射体74で反射されたレーザ光について、第1角度成分LB1が第7反射面74Bで反射されたものを第1角度成分LD1、第3角度成分LB3が第7反射面74Bで反射されたものを第3角度成分LD3とする。
次に、第3実施形態の作用について説明する。
図17に示すように、定着装置70では、レーザ光発生装置52(図3参照)から連続用紙Pへ向けてレーザ光LAを照射すると、レーザ光LAは、定着位置PXにおいて反射されて散乱光LBとなり又は連続用紙Pを透過して透過光LCとなる。そして、散乱光LBは、第6反射面72B及び第7反射面74Bで反射される。このとき、定着位置PXが設計上の中心軸Oに位置しているものとすると、第6反射面72Bで反射された反射光LDは、散乱光LBの入射角に応じた反射角方向に沿って、定着位置PXと異なる位置へ向けて進む。また、第7反射面74Bで反射された反射光LDは、散乱光LBの入射角に応じた反射角方向に沿って定着位置PXへ向けて進む。
いま、定着装置70(図17参照)において、図18に示すように、例えば搬送時の連続用紙Pに作用する張力が変化し、撓みなどにより連続用紙Pが点Oよりも矢印−X方向に変位して、設計上の中心軸Oの位置とレーザ光LAの定着位置PXとがずれたとする。このとき、X−Y面において、第7反射体74で反射されたレーザ光の第1角度成分LD1と第3角度成分LD5とが交差する第1交点K5の位置と、第6反射体72で反射されたレーザ光の第2角度成分LD2と第4角度成分LD4とが交差する第2交点K6の位置は、矢印X方向で異なる位置となる。即ち、定着位置PXで反射されると共に第6反射体72及び第7反射体74で反射されたレーザ光は、X−Y面において矢印X方向の位置が異なる複数の点を通り直進することになる。
ここで、図19(b)に示すように、定着装置70では、連続用紙Pが設計上の中心軸O(図では(0、0)の原点に相当)にあるとき、定着位置PXに照射されたレーザ光LAは、連続用紙Pで反射されて散乱光LBとなり、この散乱光LBがさらに第6反射体72及び第7反射体74で反射されて反射光LDとなる。そして、X−Y面において、第6反射体72からの反射光LDは定着位置PXと異なる第2交点K6の位置に集光し、第7反射体74からの反射光LDは定着位置PXと同位置である第1交点K5の位置に集光する。
一方、図19(a)に示すように、連続用紙Pの位置が設計上の中心軸Oの位置よりも矢印+X方向に変位したとき、即ち、定着位置PXが矢印+X方向にずれたとき、X−Y面において、第6反射体72で反射された反射光LDの第2交点K6と、第7反射体74で反射された反射光LDの第1交点K5の位置は、定着位置PXよりも矢印−X方向にずれており、それぞれ異なる位置となる。
また、図19(c)に示すように、連続用紙Pの位置が設計上の中心軸Oの位置よりも矢印−X方向に変位したとき、即ち、定着位置PXが矢印−X方向にずれたとき、X−Y面において、第6反射体72で反射された反射光LDの第2交点K6と、第7反射体74で反射された反射光LDの第1交点K5の位置は、定着位置PXよりも矢印+X方向にずれており、それぞれ異なる位置となる。このように、第3実施形態の定着装置70では、X−Y面において、第7反射体74からの反射光が集光する第1交点K5の位置と、第6反射体72からの反射光LDが集光する第2交点K6の位置が、連続用紙Pの変位方向で異なっている。
ここで、第3実施形態の定着装置70における反射光LDの集光状態と、前述の比較例の定着装置200(図7参照)における反射光LDの集光状態とを比べると、比較例の定着装置200は、反射光LDがX−Y面における一点に集光しているのに対し、第3実施形態の定着装置70は、反射光LDがX−Y面における連続用紙Pの変位方向で複数の点に集光していることが異なっている。即ち、反射光LDの集光領域は、比較例の定着装置200では、X−Y面におけるほぼ一点で狭い領域であるのに対し、第3実施形態の定着装置70では、矢印X方向に広がりを持ち比較例の定着装置200よりも広い領域となっており、反射光LDの集光状態が異なっている。
上記のことから、第3実施形態の定着装置70の方が比較例の定着装置200に比べて、連続用紙Pが変位したときの反射光LDの焦点深度が広く、連続用紙Pが変位しても一定以上の光エネルギーがトナーに与えられていることが分かる。そこで、第3実施形態の定着装置70と比較例の定着装置200について、連続用紙Pが矢印X方向に変位したときの連続用紙P上の矢印Y方向位置とその位置における光強度との関係を確認した。
図20(a)には、第3実施形態の定着装置70における光強度分布が示されており、図20(b)には、比較例の定着装置200における光強度分布が示されている。なお、定着装置70では、連続用紙Pを設計上の中心軸Oに相当する基準位置(X=0.0mm)からX=+0.4mm又はX=−0.4、−0.8、−1.2、−1.6mmと変位させたときの光強度分布が測定されており、定着装置200では、連続用紙Pを基準位置(X=0.0mm)からX=−0.2、−0.4、−0.6、−0.8、−1.0mmと変位させたときの光強度分布が測定されている。
図20(a)及び図20(b)に示すように、第3実施形態の定着装置70における光強度分布と比較例の定着装置200における光強度分布とを、連続用紙Pの変位が0.0mmから−0.8mmまでの範囲で比較すると、比較例の定着装置200では、基準位置で光強度が0.095程度あったものが位置−0.8mmで0.03程度まで減少しており、基準位置の光強度に対して減少率が68%程度となっている。
一方、第3実施形態の定着装置70における光強度分布では、基準位置で光強度が0.06程度あったものが位置−0.8mmで0.052程度の減少となっており、基準位置での光強度を基準としたときの光強度の減少率は13%程度となっている。これにより、第3実施形態の定着装置70の方が比較例の定着装置200に比べて、連続用紙Pが変位したときの光強度、即ち連続用紙P上のトナーへの照射エネルギー密度及びトナーに与えられる加熱エネルギーの変動が小さいことが確認された。
図21(a)、(b)には、第3実施形態の定着装置70と比較例の定着装置200について、連続用紙Pの高さ(矢印X方向の位置)を0.0mm、+0.6mm、−0.6mmと3段階で変化させたときの連続用紙P上のトナー画像の濃度と定着エネルギー低減効率の関係がグラフで示されている。なお、図21(a)、(b)において、縦軸の定着エネルギー低減効率と横軸の画像濃度の定義は、前述の図11(a)、(b)と同様である。
図21(b)に示すように、比較例の定着装置200では、連続用紙Pの高さが+0.6mm、−0.6mmのときに、定着エネルギー低減効率が120%から140%程度となっているのに対し、連続用紙Pの高さが0.0mmのときに、定着エネルギー低減効率が120%から350%程度と大きく変化している。これは、連続用紙Pの高さが変化したときのトナーへ与えられる加熱エネルギーが大きく変化することを表している。
一方、図21(a)に示すように、第3実施形態の定着装置70では、連続用紙Pの高さが+0.6mm、−0.6mmのときに、定着エネルギー低減効率が、ほぼ100%から150%程度となっており、連続用紙Pの高さが0.0mmのときに、ほぼ100%から190%程度となっている。このことから、第3実施形態の定着装置70を用いた場合は、比較例の定着装置200を用いた場合に比べて、連続用紙Pが変位したときの連続用紙P上のトナーに与えられる加熱エネルギーの変化が小さく、即ち、トナーの定着性や画質が安定することが分かる。
このように、第3実施形態の定着装置70では、X−Y面における断面形状が非対称形状の第6反射体72及び第7反射体74(図17参照)で反射された反射光LDが連続用紙Pの変位方向の異なる位置で交わることにより、レーザ光がある場所に極度に集中はしないが、連続用紙Pの変位する幅にわたってレーザ光がある程度集中する。これにより、定着装置70では、設計上の中心軸Oと定着位置PXの一致、不一致(連続用紙Pの変位)に関わらず、連続用紙P上のトナーに対して必要な加熱エネルギーを与え、且つ過剰な加熱エネルギーを与えることがなく、連続用紙Pへのトナーの定着性や画質の悪化が抑制される。
ここで、図22には、第1、第2、第3実施形態に係る定着装置50、60、70と比較例の定着装置200とにおいて、連続用紙Pの基準面からの矢印X方向のずれ(変位量)と、定着位置PXでの戻り光プロファイルのピーク強度との関係が示されている。図22を見て分かるように、例えば、連続用紙Pの位置が±0.5mm変動したとき、比較例の定着装置200(円)では、ピーク強度が大きく変化するのに対し、第1実施形態の定着装置50(楕円)、第2実施形態の定着装置60(3分割)、及び第3実施形態の定着装置70(左右分割)が、いずれも比較例の定着装置200に比べてピーク強度の変化が小さくなっている。このことからも、本実施形態の定着装置50、60、70が比較例の定着装置200に比べて定着性や画質が安定化することが分かる。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
画像形成装置10は、記録媒体として連続用紙Pを用いるだけでなく、一般的な規格に基づいた大きさのカット紙を一枚ずつ搬送するものであってもよい。また、連続用紙Pの背面側に第2反射体を用いずに定着位置PXに集光するものであってもよい。さらに、各反射体として用いた金属ミラーの他に、屈折率の高い誘電体と低い誘電体を積層して反射率を高めた誘電体ミラーを用いてもよい。
また、各反射体の連続用紙P側の部位に各反射面を覆うようにガラス板を配置して、各反射面の汚れを防ぐようにしてもよい。さらに、第2反射体が、連続用紙Pを挟んで対向する第1反射体54から第7反射体74までの何れかの反射体と異なる形状であってもよい。