以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。
本発明の第1実施形態について図1及び図2をもとに説明する。本実施形態の印刷装置は図1(a)に示すように書き換え可能な版を形成する版形成体であってアモルファスシリコン感光体(a−Si)からなる感光ドラム1を有する。該感光ドラム1の周辺には、帯電器2、露光器3、現像器4、インキローラ5、除電器6、第1クリーナ7が配置される。露光器3は、版形成体となる感光ドラム1の表面に対して潜像を書き込む潜像形成手段である。現像器4は、版形成体となる感光ドラム1の表面上の潜像が形成されている部分に選択的に撥インキ粒子20を付着させて凸部を形成する凸部形成手段である。インキローラ5は、記録材料のインキ21を版形成体となる感光ドラム1の表面に供給する記録材料供給手段である。さらに版形成体となる感光ドラム1の表面に供給された記録材料のインキ21を転写する中間転写体としてのブランケット胴8が設けられる。さらに該ブランケット胴8の周辺には第2クリーナ9と、該ブランケット胴8表面の記録材料のインキ21を被記録媒体となる紙11に転写する際に押圧する押圧手段となる圧胴10が配置されている。ブランケット胴8及び圧胴10は、被記録媒体となる紙11を搬送する搬送手段を兼ねる。
図示しないホストコンピュータから送られてくるデジタル信号に対応して、図示しないモータに駆動されて図1(a)中の矢印の通りに感光ドラム1、インキローラ5、ブランケット胴8および圧胴10が回転する。またこの動作に対応して被記録媒体となる紙11を図示しない搬送手段によって、ブランケット胴8と圧胴10との間に搬送する。
本実施形態1では一般に市販されている油性インキ(サカタインクス株式会社製枚葉オフセットインキ ダイヤトーンエコピュアSOY−HPJ)を使用し、感光ドラム1は溶剤を含むインキにも安定に対応できるアモルファスシリコン系のものを使用した。アモルファスシリコン感光ドラム1の表面(表面保護層)は、シリコン及び炭素の少なくともいずれかを母体とする非晶質材料で構成されるもので親インキ性(親油性)である。この表面保護層は、高周波プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition;化学的気相成長)法、PCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition;プラズマ気相化学堆積)法により成膜することができる。
この感光ドラム1に対して、帯電器2により感光ドラム1の表面を−600Vに帯電させ(図2(a)中の電位VA)、この後に露光器3により非画像部に当たる位置に静電潜像を書き込み形成した(図2(b)中の電位VB)。本実施形態において電位VBは、−30V程度になった。
つぎにこの静電潜像に対して、マイナスに摩擦帯電させた撥インキ粒子20を格納している現像器4を、−400V(電位VC)に保持して、反転現像により非画像部(−30Vの部位)に付着させた(図2(c)参照)。この撥インキ粒子20の付着の原理は「電界ベクトルと力ベクトルとの関係」に基づくもので、−400Vの現像器4と−30Vの露光面との間には、露光面から現像器4に向かって電界ベクトルが形成される。したがって同時に、現像器4と非画像部(−30Vの部位)とのあいだに位置する撥インキ粒子20に対しては、力のベクトルは撥インキ粒子20を非画像部(−30Vの部位)に引き付ける方向に働く。他方、露光されていない−600Vの面と−400Vの現像器4との間には、現像器4から−600Vの面に向かって電界ベクトルが形成される。同時に力のベクトルは撥インキ粒子20を遠ざける方向に働く。これは電子写真方式の現像工程で一般的に用いられている考え方である。
また、ここではいわゆる接触現像方法により撥インキ粒子20を付着させた。この撥インキ粒子20の付着力の強弱は、VA,VB,VCがいずれも負の電位の場合に電位の絶対値の大小関係において、以下の数1式を維持しながら、電位VA,VB,VCの3者の電位差を制御して所望の条件で調整すれば良い。
[数1]
(電位VAの絶対値)>(電位VCの絶対値)>(電位VBの絶対値)
油性インキ21を用いる場合の撥インキ粒子20としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ナイロン、セルロースなどの親水性高分子からなる樹脂が適用できる。またはフッ素、シリコーンなどからなる疎水性、撥油性樹脂を撥インキ粒子20にして用いることができる。また、市販の粒子を撥インキ粒子20に用いることができる。例えば、ダイキン工業社製ポリテトラフルオロエチレン粒子(ルブロン(登録商標)L−5F)、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製ポリテトラフルオロエチレンのパウダー(テフロン(登録商標)7A)、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製PFA粒子(MP10)、デュポン社製FEP粒子(5328000)、DOW CORNIONG TORAY社製シリコーンのパウダー(トレフィル(登録商標)E−606)を用いることができる。また、以下のように製造しても良い。即ち、(1)所望の樹脂を溶融混練した後粉砕、液中への分散、気体中への噴霧などによって粒子化して製造する。(2)所望の樹脂に対応したモノマーを重合する際に同時に粒子化して製造する。撥インキ粒子20にはさらに、油脂成分、磁性体、荷電制御剤などを内添、外添しても良い。その他に撥インキ粒子20と混合される添加剤としては、無機微粉体、表面処理された無機微粉体及び有機微粉体が挙げられる。本実施形態では、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製ポリテトラフルオロエチレンのパウダー(テフロン(登録商標)7A)にシリカ微粒子を2wt%添加して撥インキ粒子20として用いた。
オフセット印刷の場合、最終的に紙11へ転写されるインキ21の厚みは2μm〜3μmが画質として優れている。そして、版形成体となる感光ドラム1の表面に供給されるインキ21の厚は2μm〜3μmよりも厚いことが必要となるので、撥インキ粒子20の重量平均粒径は5μm以上170μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましく、5μm以上10μm以下が更に好ましい。
上記露光器3としては、半導体レーザ発振器からのレーザをポリゴンミラーの回転により走査して感光ドラム1上に静電潜像を形成する方式のものを使用した。この露光器3としてはLED(発光ダイオード)を並べた光源のものを使用しても構わない。
つぎにインキローラ5により、インキ21が感光ドラム1上に供給される。この際、インキローラ5と感光ドラム1との接触位置での周方向の速度差はほぼゼロの状態で回転させることが望ましい。
インキローラ5と感光ドラム1が回転していくと、インキローラ5の周面に付着しているインキ21層が、撥インキ粒子20が付着している感光ドラム1に向かって押し付けられる状態が形成される。こうして押し付けられるインキローラ5表面のインキ21層の表面と撥インキ粒子20との間には、撥インキ性(インキをはじく性質)によりお互いを排除しようとする力が働く。したがってインキローラ5と感光ドラム1とがさらに回転して半径方向に間隙を広げていく過程において、インキ21層の表面と撥インキ粒子20とは、はじく性質(撥インキ性)によって分離する。
これに対して親インキ性の感光ドラム1表面(撥インキ粒子20が付着していない領域)はインキ21によって濡れて吸着する。したがって、インキローラ5と感光ドラム1とがさらに回転して半径方向にギャップを広げていく過程においては、インキローラ5の周面に付着しているインキ21層の厚みの一部を引き剥がして感光ドラム1表面にインキ21を保持する(図2(d)参照)。この過程はオフセット印刷と同様である。
即ち、本実施形態では、凸部形成手段である現像器4により版形成体である感光ドラム1の表面上の潜像が形成されている部分に付着される撥インキ粒子20の表面が、記録材料のインキ21をはじく性質である。そして、感光ドラム1の表面がインキ21をはじかない性質とされる。特に本実施形態では、記録材料は油性インキ21であり、撥インキ粒子20の表面は撥油性であり、感光ドラム1の表面は親油性である。
感光ドラム1表面へのインキ21の保持厚みは、「インキローラ5と感光ドラム1との間隙量」や「インキローラ5表面のインキ21層の厚み」の調整など、一般にオフセット印刷で実施されている調整方法によって制御される。また便宜上、図2においては、撥インキ粒子20を一層で表現しているが、充分な付着力が働く範囲であれば複数層の場合でも構わない。
その後、感光ドラム1表面に濡れ性により保持されているインキ21と、電磁気学の鏡像力によって保持されている撥インキ粒子20は、ブランケット胴8との接触位置へ移動する。ブランケット胴8の表面は、一般のオフセット印刷用のものと同様に親インキ性のゴム材を巻き付けた。ブランケット胴8は、一般のオフセット印刷用のものと同様に金属材料にて形成されたシリンダー部に親インキ性のゴム材を巻き付けた構成である。
さらにブランケット胴8の表面付近を−100Vに保持した。これにより「電界ベクトルと力ベクトルとの関係」に基づいて、撥インキ粒子20はブランケット胴8表面からは遠ざけられる方向に力のベクトルが発生して、ブランケット胴8表面に転移することはない。
感光ドラム1上に供給されたインキ21層の厚みの一部のみが、所望の間隙を設けて配置されているブランケット胴8に中間転写される(図1(b)参照)。この際の転写量(インキ21層の厚み)は、「感光ドラム1とブランケット胴8との間隙量」の調整など、一般にオフセット印刷で実施されている調整方法によって制御される。もちろん感光ドラム1表面へのインキ21の保持厚みを調整することも関連しているので、「インキローラ5と感光ドラム1との間隙量」や「インキローラ5表面のインキ21層の厚み」の調整なども必要となることもある。
その後、中間転写工程を終えた感光ドラム1上の領域は第1クリーナ7の位置に移動する。第1クリーナ7としては、ゴム製のブレードによる掻き取り動作により撥インキ粒子20およびインキ21を一括して除去した後に洗浄するものとした。また、必要に応じて第1クリーナ7によるクリーニング工程の後に乾燥手段を配置しても構わない。その後、感光ドラム1上の領域は除電器6の位置に移動し、電荷を除去する。
ブランケット胴8に中間転写されたインキ21による画像は、最後の工程として、ブランケット胴8と圧胴10によって挟まれた被記録媒体である紙11に転写されて印刷が完了する。紙11への転写を終えたブランケット胴8上の領域は第2クリーナ9によって残インキを除去して初期状態に復帰させた。その後、再度、帯電器2による動作を経て、露光器3に進む工程を経れば、オンデマンドのデジタルオフセット印刷の実現となる。
以上の説明は便宜上、例えば黒インキ1色による印刷をもとにしたものであるが、図1(a)の構成のものをシアン、マゼンタ、イエローなどのインキ21に対しても配置して、フルカラー印刷ができた。
即ち、本実施形態の印刷方法は、書き換え可能な版を用いる印刷方法である。そして、書き換え可能な版を形成する版形成体となる感光ドラム1の表面に対して潜像を書き込む第1の工程と、前記潜像をもとにして感光ドラム1の表面に撥インキ粒子20を付着させて凸部を形成する第2の工程とを有する。更に記録材料のインキ21を感光ドラム1の表面に供給して画像部を形成する第3の工程と、感光ドラム1の表面のインキ21を中間転写体となるブランケット胴8に転写させる第4の工程とを有する。更に、該ブランケット胴8の表面のインキ21を被記録媒体となる紙11に転写する第5の工程を備える。そして、撥インキ粒子20の表面がインキ21をはじく性質であり、かつ感光ドラム1の表面がインキ21をはじかない性質としたものである。
また、同じ内容の印刷物を出力する際には、撥インキ粒子20による現像を一度実施した後は、第1クリーナ7、除電器6、帯電器2、露光器3および現像器4による動作をスキップさせることにより高速に印刷できた。
前記第1実施形態では、潜像形成原理として静電方式を採用し、版形成体として感光ドラム1、潜像形成手段として露光器3、凸部形成手段として撥インキ粒子20を付着させる現像器4、帯電器2、除電器6を有する構成とした。一方、本実施形態では、潜像形成原理として磁気方式を採用し、版形成体として磁気ドラム31、潜像形成手段として磁気ヘッド32、凸部形成手段として撥インキ磁性粒子50を付着させる現像器34、消磁器36を有する構成とした場合の一例である。
本実施形態について図3及び図4をもとに説明する。本実施形態の印刷装置は、図3に示すように版形成体として磁気ドラム31を有し、この周辺に消磁器36、潜像形成手段となる磁気ヘッド32、凸部形成手段となる現像器34、記録材料供給手段となるインキローラ35、第1クリーナ37が配置されている。さらに中間転写体としてのブランケット胴38の周辺には第2クリーナ39と、押圧手段となる圧胴40を配置されている。
図示しないホストコンピュータから送られてくるデジタル信号に対応して、図示しないモータに駆動されて図3中の矢印の通りに磁気ドラム31、インキローラ35、ブランケット胴38および圧胴40が回転する。またこの動作に対応して被記録媒体となる紙11を搬送する図示しない搬送手段によって、紙11等の被記録媒体が搬送される。
本実施形態でも一般に市販されている油性インキ(サカタインクス株式会社製枚葉オフセットインキ ダイヤトーンエコピュアSOY−HPJ)21を使用し、磁気ドラム31としては表面をポリスチレンでオーバーコートして用いた。ポリスチレン以外にも任意の親インキ性材料、たとえばポリエチレン,ポリプロピレン,ポリメチルメタクリレート,ポリエチレンテレフタレート,ポリイミドなどでオーバーコートして用いることができる。その下層は磁性材料、たとえばフェライト等でアンダーコートされている。
この磁気ドラム31に対して、図4(a)に示すように、消磁器36によって消磁処理を施した後に、図4(b)に示すように、磁気ヘッド32により磁気ドラム31の非画像部に当たる表面を磁化させて磁気潜像を形成した。つぎにこの磁気潜像に対して、図4(c)に示すように、現像器34に格納されている撥インキ磁性粒子50を磁力によって付着させた。
上記撥インキ磁性粒子50としてはフェライト、マンガン−亜鉛フェライト、マンガン−ニッケルフェライト、マグネタイト、ニッケルおよびパーマロイ等の強磁性体であることが好ましい。そして、なるべく高い透磁率のものであって該撥インキ磁性粒子50の表面をフッ素、シリコーンなどで撥インキ性処理したものであれば良い。
オフセット印刷の場合、最終的に紙11へ転写されるインキ21の厚みは2μm〜3μmが画質として優れている。そして、版形成体となる磁気ドラム31の表面に供給されるインキ21厚は2μm〜3μmよりも厚いことが必要となるので、撥インキ磁性粒子50の重量平均粒径は5μm以上170μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましく、5μm以上10μm以下が更に好ましい。
つぎにインキローラ35により、インキ21が磁気ドラム31上に供給される。この際、インキローラ35と磁気ドラム31との接触位置での周方向の速度差はほぼゼロの状態で回転させることが望ましい。
インキローラ35と磁気ドラム31が回転していくと、インキローラ35の周面に付着しているインキ21層が、撥インキ磁性粒子50が付着している磁気ドラム31に向かって押し付けられる状態が形成される。こうして押し付けられるインキローラ35表面のインキ21層の表面と撥インキ磁性粒子50との間には、撥インキ性(インキ21をはじく性質)によりお互いを排除しようとする力が働く。したがってインキローラ35と磁気ドラム31とがさらに回転して半径方向に間隙を広げていく過程において、インキ21層の表面と撥インキ磁性粒子50とは、はじく性質(撥インキ性)によって分離する。
これに対して親インキ性の磁気ドラム31表面(撥インキ磁性粒子50が付着していない領域)はインキ21によって濡れて吸着する。したがってインキローラ35と磁気ドラム31とがさらに回転して半径方向にギャップを広げていく過程においては、インキローラ35の周面に付着しているインキ21層の厚みの一部を引き剥がして磁気ドラム31表面にインキ21を保持する(図4(d)参照)。この過程はオフセット印刷と同様である。
磁気ドラム31表面へのインキ21の保持厚みは、「インキローラ35と磁気ドラム31との間隙量」や「インキローラ35表面のインキ21層の厚み」の調整など、一般にオフセット印刷で実施されている調整方法によって制御される。また便宜上、図4においては、撥インキ磁性粒子50を一層で表現しているが、充分な付着力が働く範囲であれば複数層の場合でも構わない。
その後、磁気ドラム31表面に濡れ性により保持されているインキ21と、磁力によって保持されている撥インキ磁性粒子50は、ブランケット胴38との接触位置へ移動する。ブランケット胴38の表面は、一般のオフセット印刷用のものと同様に親インキ性のゴム材を巻き付けた。
さらに撥インキ磁性粒子50は磁力によってしっかりと磁気ドラム31表面に付着しているので、ブランケット胴38表面に転移することはない。場合によっては、ブランケット胴38内に撥インキ磁性粒子50を遠ざける磁力(磁界)を生成させる手段を組み込んでも良い。
そして、磁気ドラム31上に供給されたインキ21層の厚みの一部のみが、所望の間隙を設けて配置されているブランケット胴38に中間転写される。この際の転写量(厚み)は、「磁気ドラム31とブランケット胴38との間隙量」の調整など、一般にオフセット印刷で実施されている調整方法によって制御される。もちろん磁気ドラム31表面へのインキ21の保持厚みを調整することも関連しているので、「インキローラ35と磁気ドラム31との間隙量」や「インキローラ35表面のインキ21層の厚み」の調整なども必要となることもある。
その後、中間転写工程を終えた磁気ドラム31上の領域は第1クリーナ37の位置に移動する。第1クリーナ37としては、ゴム製のブレードによる掻き取り動作により撥インキ磁性粒子50およびインキ21を一括して除去後に洗浄するものとした。また、必要に応じて第1クリーナ37による工程の後に乾燥手段を配置しても構わない。その後、磁気ドラム31上の領域は消磁器36の位置に移動して消磁する。
ブランケット胴38に中間転写されたインキ21による画像は、最後の工程として、ブランケット胴38と圧胴40とによって挟まれた被記録媒体である紙11に転写されて印刷が完了する。紙11への転写を終えたブランケット胴38上の領域は第2クリーナ39によって残インキ21を除去して初期状態に復帰させた。その後、再度、消磁器36による動作を経て、磁気ヘッド32に進む工程を経れば、オンデマンドのデジタルオフセット印刷の実現となる。
以上の説明は便宜上、例えば黒インキ1色による印刷をもとにしたものであるが、図3及び図4の構成のものをシアン、マゼンタ、イエローなどのインキに対しても配置して、フルカラー印刷ができた。また、同じ内容の印刷物を出力する際には、撥インキ磁性粒子50による現像を一度実施した後は、第1クリーナ37、消磁器36、磁気ヘッド32および現像器34による動作をスキップさせることにより高速に印刷できた。他の構成は前記第1実施形態と同様に構成される。
以上述べたように、前記第1、第2実施形態では、選択的に撥インキ粒子20,50を付着させて版形成体の表面に凸部を形成する際の潜像形成原理として、静電方式、磁気方式を例に挙げたが、他の原理を使っても構わない。
本実施形態では、記録材料として水性インキを使用し、撥インキ磁性粒子50の表面は撥水性であり、かつ版形成体となる磁気ドラム31の表面は親水性とした場合の一例である。
本実施形態では、記録材料として一般に市販されている水性インキ(富士インキ製造株式会社製NSG−Tタイプ)を使用した例であって、その他の構成および動作原理は前記第2実施形態と同じである。ただし、版形成体となる磁気ドラム31の表面は親水性のポリビニルアルコールでコートした。ポリビニルアルコール以外にもポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース、ナイロンなどの親水性高分子からなる材料でコートしても良い。コート表面を多孔あるいは微小な凹凸面を形成して親水性を向上させても良い。また、撥インキ磁性粒子50表面は撥水性とし、フッ素、シリコーンなどで疎水化処理した。
図3と同様の構成のものを黒、シアン、マゼンタ、イエローなどの水性インキに対して配置して、フルカラー印刷ができた。また、同じ内容の印刷物を出力する際には、撥インキ磁性粒子50による現像を一度実施した後は、第1クリーナ37、消磁器36、磁気ヘッド32および現像器34による動作をスキップさせることにより高速に印刷できた。
本実施形態では、記録材料として油性インキを使用し、撥インキ粒子20の表面は撥油性であり、かつ版形成体となる接着ドラム41の表面は親油性とした場合の一例である。
本実施形態について図5及び図6をもとに説明する。本実施形態の印刷装置は図5に示すように版形成体として接着ドラム41を有し、この周辺に潜像形成手段となるディスペンサ42、凸部形成手段となる現像器44、乾燥ノズル46、記録材料供給手段となるインキローラ45、第1クリーナ47を配置する。さらに中間転写体としてのブランケット胴48の周辺には第2クリーナ49と、押圧手段となる圧胴40が配置されている。
図示しないホストコンピュータから送られてくるデジタル信号に対応して、図示しないモータに駆動されて図5中の矢印の通りに接着ドラム41、インキローラ45、ブランケット胴48および圧胴40が回転する。またこの動作に対応して被記録媒体となる紙11を搬送する図示しない搬送手段によって、紙11等の被記録媒体が搬送される。
本実施形態でも一般に市販されている油性インキ(サカタインクス株式会社製枚葉オフセットインキ ダイヤトーンエコピュアSOY−HPJ)21を使用し、接着ドラム41としては表面をポリスチレンでオーバーコートして用いた。ポリスチレン以外にも任意の親インキ性材料、たとえばポリエチレン,ポリプロピレン,ポリメチルメタクリレート,ポリエチレンテレフタレート,ポリイミドなどでオーバーコートして用いることができる。
この接着ドラム41に対して、図6(a)から図6(b)に示すように、ディスペンサ(岩下エンジニアリング株式会社のACCURA9)42により接着ドラム41の非画像部に当たる表面にシリコーン系接着剤をドット供給して潜像を形成した。供給する接着剤43はこの他にエポキシ系、ゴム系、ウレタン系の樹脂系接着剤も利用できる。つぎにこの接着剤潜像に対して、図6(c)に示すように、現像器44に格納されている撥インキ粒子20を接着力によって付着させた。接着剤潜像がない部分には、撥インキ粒子20は付着しない。その後、乾燥ノズル46により接着剤43の乾燥・硬化を促進させて撥インキ粒子20の保持力を向上させる。
油性インキ21を用いる場合の撥インキ粒子20としては、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製ポリテトラフルオロエチレンのパウダー(テフロン(登録商標)7A)にシリカ微粒子を2wt%添加して用いた。
オフセット印刷の場合、最終的に紙11へ転写されるインキ21の厚みは2μm〜3μmが画質として優れている。そして、版形成体となる接着ドラム41の表面に供給されるインキ21厚は2μm〜3μmよりも厚いことが必要となるので、撥インキ粒子20の重量平均粒径は5μm以上170μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましく、5μm以上10μm以下が更に好ましい。
つぎにインキローラ45により、インキ21が接着ドラム41上に供給される。この際、インキローラ45と接着ドラム41との接触位置での周方向の速度差はほぼゼロの状態で回転させることが望ましい。
インキローラ45と接着ドラム41が回転していくと、インキローラ45の周面に付着しているインキ21層が、撥インキ粒子20が付着している接着ドラム41に向かって押し付けられる状態が形成される。こうして押し付けられるインキローラ45表面のインキ21層の表面と撥インキ粒子20との間には、撥インキ性(インキ21をはじく性質)によりお互いを排除しようとする力が働く。したがってインキローラ45と接着ドラム41とがさらに回転して半径方向に間隙を広げていく過程において、インキ21層の表面と撥インキ粒子20とは、はじく性質(撥インキ性)によって分離する。
これに対して親インキ性の接着ドラム41表面(撥インキ粒子20が付着していない領域)はインキ21によって濡れて吸着する。したがってインキローラ45と接着ドラム41とがさらに回転して半径方向にギャップを広げていく過程においては、インキローラ45の周面に付着しているインキ21層の厚みの一部を引き剥がして接着ドラム41表面にインキ21を保持する(図6(d)参照)。この過程はオフセット印刷と同様である。
接着ドラム41表面へのインキ21の保持厚みは、「インキローラ45と接着ドラム41との間隙量」や「インキローラ45表面のインキ21層の厚み」の調整など、一般にオフセット印刷で実施されている調整方法によって制御される。
その後、接着ドラム41表面に濡れ性により保持されているインキ21と、接着力によって保持されている撥インキ粒子20は、ブランケット胴48との接触位置へ移動する。ブランケット胴48の表面は、一般のオフセット印刷用のものと同様に親インキ性のゴム材を巻き付けた。
さらに撥インキ粒子20は接着力によってしっかりと接着ドラム41表面に付着しているので、ブランケット胴48表面に転移することはない。
そして、接着ドラム41上に供給されたインキ21層の厚みの一部のみが、所望の間隙を設けて配置されているブランケット胴48に中間転写される。この際の転写量(厚み)は、「接着ドラム41とブランケット胴48との間隙量」の調整など、一般にオフセット印刷で実施されている調整方法によって制御される。もちろん接着ドラム41表面へのインキ21の保持厚みを調整することも関連しているので、「インキローラ45と接着ドラム41との間隙量」や「インキローラ45表面のインキ21層の厚み」の調整なども必要となることもある。
その後、中間転写工程を終えた接着ドラム41上の領域は第1クリーナ47の位置に移動する。第1クリーナ47としては、ゴム製のブレードによる掻き取り動作により撥インキ粒子20、接着剤43およびインキ21を一括して除去後に洗浄するものとした。また、必要に応じて第1クリーナ47による工程の後に乾燥手段を配置しても構わない。
ブランケット胴48に中間転写されたインキ21による画像は、最後の工程として、ブランケット胴48と圧胴40とによって挟まれた被記録媒体である紙11に転写されて印刷が完了する。紙11への転写を終えたブランケット胴48上の領域は第2クリーナ49によって残インキ21を除去して初期状態に復帰させた。その後、再度ディスペンサ42による工程を経れば、オンデマンドのデジタルオフセット印刷の実現となる。
以上の説明は便宜上、例えば黒インキ1色による印刷をもとにしたものであるが、図5と同様の構成のものを黒、シアン、マゼンタ、イエローなどの油性インキに対して配置して、フルカラー印刷ができた。また、同じ内容の印刷物を出力する際には、撥インキ粒子20による現像を一度実施した後は、第1クリーナ47、乾燥ノズル46、ディスペンサ42および現像器44による動作をスキップさせることにより高速に印刷できた。
また、場合によっては一部の技術分野において、「油性」とも「水性」とも分類されないインキがあったとしても、前記撥インキ粒子20,50がそのインキをはじく性質であるとする。そして、感光ドラム1、磁気ドラム31や接着ドラム41などの版形成体表面がそのインキをはじかない性質であるとする。その性質を利用する形態であれば、本発明に含まれるものである。
本実施形態は、版形成体であるアモルファスシリコン感光体(a−Si)からなる感光ドラム1上の撥インキ粒子を加熱融解して感光体ドラム1上に加熱圧着させた場合の一例である。その他の構成は、実施形態1と同様である。
本実施形態の印刷装置は、図7に示すように書き換え可能な版を形成する版形成体であってアモルファスシリコン感光体(a−Si)からなる感光ドラム1を有する。該感光ドラム1の周辺には、帯電器2、露光器3、現像器4、加熱圧着器70、インキローラ5、除電器6、第1クリーナ7が配置される。露光器3は版形成体となる感光ドラム1の表面に対して潜像を書き込む潜像形成手段として構成される。現像器4は版形成体となる感光ドラム1の表面上の潜像が形成されている部分に選択的に撥インキ粒子20を付着させて凸部を形成する凸部形成手段として構成される。加熱圧着器70は、感光ドラム1上に付着された撥インキ粒子20を加熱融解させ、撥インキ粒子20を感光体ドラム1上に加熱圧着させる。
インキローラ5は記録材料のインキ21を版形成体となる感光ドラム1の表面に供給する記録材料供給手段として構成される。さらに版形成体となる感光ドラム1の表面に供給された記録材料のインキ21を転写する中間転写体としてのブランケット胴8が設けられる。さらに該ブランケット胴8の周辺には第2クリーナ9と、該ブランケット胴8表面の記録材料のインキ21を被記録媒体となる紙11に転写する際に押圧する押圧手段となる圧胴10を配置して構成されている。ブランケット胴8及び圧胴10は被記録媒体となる紙11を搬送する搬送手段を兼ねる。
図示しないホストコンピュータから送られてくるデジタル信号に対応して、図示しないモータに駆動されて図7中の矢印の通りに感光ドラム1、インキローラ5、ブランケット胴8および圧胴10が回転する。またこの動作に対応して被記録媒体となる紙11を図示しない搬送手段によって、ブランケット胴8と圧胴10との間に搬送する。
本実施形態5では、実施形態1と同様に一般に市販されている油性インキ(サカタインクス株式会社製枚葉オフセットインキ ダイヤトーンエコピュアSOY−HPJ)を使用し、感光ドラム1としては溶剤を含むインキにも安定に対応できるアモルファスシリコン系のものを使用した。アモルファスシリコン感光ドラム1の表面(表面保護層)は、シリコン及び炭素の少なくともいずれかを母体とする非晶質材料で構成されるもので親インキ性(親油性)である。この表面保護層は、高周波プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition;化学的気相成長)法、PCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition;プラズマ気相化学堆積)法により成膜することができる。
この感光ドラム1に対して、帯電器2により感光ドラム1の表面を−600Vに帯電させ(図8(a)中の電位VA)、この後に露光器3により非画像部に当たる位置に静電潜像を書き込み形成した(図8(b)中の電位VB)。本実施形態において電位VBは、−30V程度になった。
つぎにこの静電潜像に対して、マイナスに摩擦帯電させた撥インキ粒子20を格納している現像器4を、−400V(電位VC)に保持して、反転現像により非画像部(−30Vの部位)に付着させた(図8(c)参照)。この撥インキ粒子20の付着の原理は「電界ベクトルと力ベクトルとの関係」に基づくもので、−400Vの現像器4と−30Vの露光面との間には、露光面から現像器4に向かって電界ベクトルが形成される。したがって同時に、現像器4と非画像部(−30Vの部位)とのあいだに位置する撥インキ粒子20に対しては、力のベクトルは撥インキ粒子20を非画像部(−30Vの部位)に引き付ける方向に働く。他方、露光されていない−600Vの面と−400Vの現像器4との間には、現像器4から−600Vの面に向かって電界ベクトルが形成される。同時に力のベクトルは撥インキ粒子20を遠ざける方向に働く。これは電子写真方式の現像工程で一般的に用いられている考え方である。
また、ここではいわゆる接触現像方法により撥インキ粒子20を付着させた。この撥インキ粒子20の付着力の強弱は、VA,VB,VCがいずれも負の電位の場合に電位の絶対値の大小関係において、以下の数1式を維持しながら、電位VA,VB,VCの3者の電位差を制御して所望の条件で調整すれば良い。
[数1]
(電位VAの絶対値)>(電位VCの絶対値)>(電位VBの絶対値)
油性インキ21を用いる場合の撥インキ粒子20としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ナイロン、セルロースなどの親水性高分子からなる樹脂が適用できる。またはフッ素、シリコーンなどからなる疎水性、撥油性樹脂を撥インキ粒子20にして用いることができる。また、市販の粒子を撥インキ粒子20に用いることができる。例えば、ダイキン工業社製ポリテトラフルオロエチレン粒子(ルブロン(登録商標)L−5F)、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製ポリテトラフルオロエチレンのパウダー(テフロン(登録商標)7A)、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製PFA粒子(MP10)、デュポン社製FEP粒子(5328000)、DOW CORNIONG TORAY社製シリコーンのパウダー(トレフィル(登録商標)E−606)を用いることができる。また、以下のように製造しても良い。即ち、(1)所望の樹脂を溶融混練した後粉砕、液中への分散、気体中への噴霧などによって粒子化して製造する。(2)所望の樹脂に対応したモノマーを重合する際に同時に粒子化して製造する。撥インキ粒子20にはさらに、油脂成分、磁性体、荷電制御剤などを内添、外添しても良い。その他に撥インキ粒子20と混合される添加剤としては、無機微粉体、表面処理された無機微粉体及び有機微粉体が挙げられる。本実施形態では、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製ポリテトラフルオロエチレンのパウダー(テフロン(登録商標)7A)にシリカ微粒子を2wt%添加して撥インキ粒子20として用いた。
つぎに感光ドラム1表面に付着させた撥インキ粒子20を加熱圧着器70により加熱融解させ、撥インキ粒子20を感光ドラム1表面に加熱圧着器70にて圧着することで加熱圧着させた(図8(d)参照)。撥インキ粒子20の主成分はポリテトラフルオロエチレンであり、ポリテトラフルオロエチレンの融点は327℃である。そのため、撥インキ粒子20を327℃以上の温度に加熱することで、撥インキ粒子20は融解する。撥インキ粒子20を加熱圧着器70により加熱融解させ、感光ドラム1に加熱圧着させることで、撥インキ粒子20は、感光ドラム1表面から剥がれにくくなる。
つぎにインキローラ5により、インキ21が感光ドラム1上に供給される。この際、インキローラ5と感光ドラム1との接触位置での周方向の速度差はほぼゼロの状態で回転させることが望ましい。
インキローラ5と感光ドラム1が回転していくと、インキローラ5の周面に付着しているインキ21層が、圧着された撥インキ粒子71が付着している感光ドラム1に向かって押し付けられる状態が形成される。こうして押し付けられるインキローラ5表面のインキ21層の表面と圧着された撥インキ粒子71との間には、撥インキ性(インキをはじく性質)によりお互いを排除しようとする力が働く。したがってインキローラ5と感光ドラム1とがさらに回転して半径方向に間隙を広げていく過程において、インキ21層の表面と圧着された撥インキ粒子71とは、はじく性質(撥インキ性)によって分離する。
これに対して親インキ性の感光ドラム1表面(圧着された撥インキ粒子71が付着していない領域)はインキ21によって濡れて吸着する。したがって、インキローラ5と感光ドラム1とがさらに回転して半径方向にギャップを広げていく過程においては、インキローラ5の周面に付着しているインキ21層の厚みの一部を引き剥がして感光ドラム1表面にインキ21を保持する。この過程はオフセット印刷と同様である。
即ち、本実施形態では、凸部形成手段である現像器4により版形成体である感光ドラム1の表面上の潜像が形成されている部分の圧着された撥インキ粒子71の表面が、記録材料であるインキ21をはじく性質である。そして、感光ドラム1の表面がインキ21をはじかない性質とされる。特に本実施形態では、記録材料は油性インキ21であって、撥インキ粒子20の表面は撥油性であり、感光ドラム1の表面は親油性とされる。
感光ドラム1表面へのインキ21の保持厚みは、「インキローラ5と感光ドラム1との間隙量」や「インキローラ5表面のインキ21層の厚み」の調整など、一般にオフセット印刷で実施されている調整方法によって制御される。
その後、感光ドラム1表面に濡れ性により保持されているインキ21と、感光ドラム1表面の圧着された撥インキ粒子71は、ブランケット胴8との接触位置へ移動する。ブランケット胴8の表面は、一般のオフセット印刷用のものと同様に親インキ性のゴム材を巻き付けた。
感光ドラム1上に供給されたインキ21層の厚みの一部のみが、所望の間隙を設けて配置されているブランケット胴8に中間転写される。この際の転写量(インキ21層の厚み)は、「感光ドラム1とブランケット胴8との間隙量」の調整など、一般にオフセット印刷で実施されている調整方法によって制御される。もちろん感光ドラム1表面へのインキ21の保持厚みを調整することも関連しているので、「インキローラ5と感光ドラム1との間隙量」や「インキローラ5表面のインキ21層の厚み」の調整なども必要となることもある。版胴60は、耐久性を有するアルミ材等の金属で構成する。版胴60の表面は、平滑であることが望ましい。
その後、中間転写工程を終えた感光ドラム1上の領域は第1クリーナ7の位置に移動する。第1クリーナ7としては、ゴム製のブレードによる掻き取り動作により圧着された撥インキ粒子71およびインキ21を一括して除去した後に洗浄するものとした。また、必要に応じて第1クリーナ7内または、第1クリーナ7の周囲に加熱器を設け、圧着された撥インキ粒子71を融解させ、第1クリーナ7にて除去しても良い。必要に応じて第1クリーナ7によるクリーニング工程の後に乾燥手段を配置しても構わない。その後、感光ドラム1上の領域は除電器6の位置に移動し、電荷を除去する。
ブランケット胴8に中間転写されたインキ21による画像は、最後の工程として、ブランケット胴8と圧胴10によって挟まれた被記録媒体である紙11に転写されて印刷が完了する。紙11への転写を終えたブランケット胴8上の領域は第2クリーナ9によって残インキを除去して初期状態に復帰させた。その後、再度、帯電器2による動作を経て、露光器3に進む工程を経れば、オンデマンドのデジタルオフセット印刷の実現となる。
以上の説明は便宜上、例えば黒インキ1色による印刷をもとにしたものであるが、図7の構成のものをシアン、マゼンタ、イエローなどのインキ21に対しても配置して、フルカラー印刷ができた。
即ち、本実施形態の印刷方法は、書き換え可能な版を用いる印刷方法である。そして、書き換え可能な版を形成する版形成体となる感光ドラム1の表面に対して潜像を書き込む第1の工程と、前記潜像をもとにして感光ドラム1の表面に撥インキ粒子20を付着させて凸部を形成する第2の工程とを有する。そして、版形成体である感光ドラム1の表面に付着させた撥インキ粒子20を加熱圧着器70により加熱融解させ感光ドラム1表面に加熱圧着させる第3の工程を有する。更に記録材料のインキ21を感光ドラム1の表面に供給して画像部を形成する第4の工程と、感光ドラム1の表面のインキ21を中間転写体となるブランケット胴8に転写させる第5の工程とを有する。更に、該ブランケット胴8の表面のインキ21を被記録媒体となる紙11に転写する第6の工程を備える。そして、圧着された撥インキ粒子71の表面がインキ21をはじく性質であり、かつ感光ドラム1の表面がインキ21をはじかない性質としたものである。
また、同じ内容の印刷物を出力する際には、撥インキ粒子20による現像を一度実施した後は、第1クリーナ7、除電器6、帯電器2、露光器3、現像器4および加熱圧着器70による動作をスキップさせることにより高速に印刷できた。
前記第5実施形態では、潜像形成原理として静電方式を採用し、前記第1実施形態に対して、更に版形成体である感光体1表面の撥インキ粒子20を加熱融解させる加熱圧着器70を有する構成とした。一方、本実施形態では、潜像形成原理として磁気方式を採用し、前記第2実施形態に対して、版形成体である磁気ドラム31表面の撥インキ磁性粒子50を加熱融解させる加熱圧着器80を有する構成とした場合の一例である。その他の構成は、実施形態2と同様である。
本実施形態について図9をもとに説明する。本実施形態の印刷装置は図9に示すように版形成体として磁気ドラム31を有し、この周辺に消磁器36、潜像形成手段となる磁気ヘッド32、凸部形成手段となる現像器34、記録材料供給手段となるインキローラ35、第1クリーナ37を配置する。さらに中間転写体としてのブランケット胴38の周辺には第2クリーナ39と、押圧手段となる圧胴40を配置して構成されている。
図示しないホストコンピュータから送られてくるデジタル信号に対応して、図示しないモータに駆動されて図9中の矢印の通りに磁気ドラム31、インキローラ35、ブランケット胴38および圧胴40が回転する。またこの動作に対応して被記録媒体となる紙11を搬送する図示しない搬送手段によって、紙11等の被記録媒体が搬送される。
本実施形態でも一般に市販されている油性インキ(サカタインクス株式会社製枚葉オフセットインキ ダイヤトーンエコピュアSOY−HPJ)21を使用し、磁気ドラム31としては表面をポリスチレンでオーバーコートして用いた。ポリスチレン以外にも任意の親インキ性材料、たとえばポリエチレン,ポリプロピレン,ポリメチルメタクリレート,ポリエチレンテレフタレート,ポリイミドなどでオーバーコートして用いることができる。その下層は磁性材料、たとえばフェライト等でアンダーコートされている。
この磁気ドラム31に対して、図10(a)に示すように、消磁器36によって消磁処理を施した後に、図10(b)に示すように、磁気ヘッド32により磁気ドラム31の非画像部に当たる表面を磁化させて磁気潜像を形成した。つぎにこの磁気潜像に対して、図10(c)に示すように、現像器34に格納されている撥インキ磁性粒子50を磁力によって付着させた。
上記撥インキ磁性粒子50としてはフェライト、マンガン−亜鉛フェライト、マンガン−ニッケルフェライト、マグネタイト、ニッケルおよびパーマロイ等の強磁性体であることが好ましい。そして、なるべく高い透磁率のものであって該撥インキ磁性粒子50の表面をフッ素、シリコーンなどで撥インキ性処理したものであれば良い。撥インキ磁性粒子50の表面をフッ素樹脂の1つであるポリテトラフルオロエチレンで撥インキ性処理を行った場合、ポリテトラフルオロエチレンの融点は327℃であるので、撥インキ磁性粒子50を327℃以上の温度に加熱することで融解する。
つぎに磁気ドラム31表面に付着させた撥インキ磁性粒子50を加熱圧着器80により加熱融解させ、加熱圧着器80により撥インキ磁性粒子50を磁気ドラム31表面に加熱圧着させた(図10(d)参照)。撥インキ磁性粒子50を加熱圧着器80により加熱融解させ、圧着された撥インキ磁性粒子81として磁気ドラム31に固着させることで、圧着された撥インキ磁性粒子81は、磁気ドラム31表面から剥がれにくくなる。
つぎにインキローラ35により、インキ21が磁気ドラム31上に供給される。この際、インキローラ35と磁気ドラム31との接触位置での周方向の速度差はほぼゼロの状態で回転させることが望ましい。
インキローラ35と磁気ドラム31が回転していくと、インキローラ35の周面に付着しているインキ21層が、圧着された撥インキ磁性粒子81が固着している磁気ドラム31に向かって押し付けられる状態が形成される。こうして押し付けられるインキローラ35表面のインキ21層の表面と圧着された撥インキ磁性粒子81との間には、撥インキ性(インキ21をはじく性質)によりお互いを排除しようとする力が働く。したがってインキローラ35と磁気ドラム31とがさらに回転して半径方向に間隙を広げていく過程において、インキ21層の表面と圧着された撥インキ磁性粒子81とは、はじく性質(撥インキ性)によって分離する。
これに対して親インキ性の磁気ドラム31表面(圧着された撥インキ磁性粒子81が付着していない領域)はインキ21によって濡れて吸着する。したがってインキローラ35と磁気ドラム31とがさらに回転して半径方向にギャップを広げていく過程においては、インキローラ35の周面に付着しているインキ21層の厚みの一部を引き剥がして磁気ドラム31表面にインキ21を保持する。この過程はオフセット印刷と同様である。
磁気ドラム31表面へのインキ21の保持厚みは、「インキローラ35と磁気ドラム31との間隙量」や「インキローラ35表面のインキ21層の厚み」の調整など、一般にオフセット印刷で実施されている調整方法によって制御される。
その後、磁気ドラム31表面に濡れ性により保持されているインキ21と、圧着された撥インキ磁性粒子81は、ブランケット胴38との接触位置へ移動する。ブランケット胴38の表面は、一般のオフセット印刷用のものと同様に親インキ性のゴム材を巻き付けた。
そして、磁気ドラム31上に供給されたインキ21層の厚みの一部のみが、所望の間隙を設けて配置されているブランケット胴38に中間転写される。この際の転写量(厚み)は、「磁気ドラム31とブランケット胴38との間隙量」の調整など、一般にオフセット印刷で実施されている調整方法によって制御される。もちろん磁気ドラム31表面へのインキ21の保持厚みを調整することも関連しているので、「インキローラ35と磁気ドラム31との間隙量」や「インキローラ35表面のインキ21層の厚み」の調整なども必要となることもある。
その後、中間転写工程を終えた磁気ドラム31上の領域は第1クリーナ37の位置に移動する。第1クリーナ37としては、ゴム製のブレードによる掻き取り動作により撥インキ磁性粒子50およびインキ21を一括して除去後に洗浄するものとした。また、必要に応じて第1クリーナ37内または、第1クリーナ37の周囲に加熱器を設け、圧着された撥インキ磁性粒子81を融解させ、第1クリーナ37にて除去しても良い。必要に応じて第1クリーナ37による工程の後に乾燥手段を配置しても構わない。その後、磁気ドラム31上の領域は消磁器36の位置に移動して消磁する。
ブランケット胴38に中間転写されたインキ21による画像は、最後の工程として、ブランケット胴38と圧胴40とによって挟まれた被記録媒体である紙11に転写されて印刷が完了する。紙11への転写を終えたブランケット胴38上の領域は第2クリーナ39によって残インキ21を除去して初期状態に復帰させた。その後、再度、消磁器36による動作を経て、磁気ヘッド32に進む工程を経れば、オンデマンドのデジタルオフセット印刷の実現となる。
以上の説明は便宜上、例えば黒インキ1色による印刷をもとにしたものであるが、図9の構成のものをシアン、マゼンタ、イエローなどのインキに対しても配置して、フルカラー印刷ができた。また、同じ内容の印刷物を出力する際には、撥インキ磁性粒子50による現像を一度実施した後は、第1クリーナ37、消磁器36、磁気ヘッド32、現像器34および加熱圧着器80による動作をスキップさせることにより高速に印刷できた。
以上述べたように、前記第5、第6実施形態では、選択的に撥インキ粒子20,50を付着させて版形成体の表面に凸部を形成する際の潜像形成原理として、静電方式、磁気方式を例に挙げたが、他の原理を使っても構わない。
本実施形態は、実施形態6において記録材料として水性インキを使用し、撥インキ磁性粒子50の表面は撥水性であり、かつ版形成体となる磁気ドラム31の表面は親水性とした場合の一例である。
本実施形態では、記録材料として一般に市販されている水性インキ(富士インキ製造株式会社製NSG−Tタイプ)を使用した例であって、その他の構成および動作原理は前記第5実施形態と同じである。ただし、版形成体となる磁気ドラム31の表面は親水性のポリビニルアルコールでコートした。ポリビニルアルコール以外にもポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース、ナイロンなどの親水性高分子からなる材料でコートしても良い。コート表面を多孔あるいは微小な凹凸面を形成して親水性を向上させても良い。また、撥インキ磁性粒子50表面は撥水性とし、フッ素、シリコーンなどで疎水化処理した。
図9と同様の構成のものを黒、シアン、マゼンタ、イエローなどの水性インキに対して配置して、フルカラー印刷ができた。また、同じ内容の印刷物を出力する際には、撥インキ磁性粒子50による現像を一度実施した後は、第1クリーナ37、消磁器36、磁気ヘッド32、現像器34および加熱圧着器80による動作をスキップさせることにより高速に印刷できた。
本実施形態は、版形成体であるアモルファスシリコン感光体(a−Si)からなる感光ドラム1上の撥インキ粒子をアルミ等の耐久性を有する第二の版形成体上に転写した場合の一例である。その他の構成は、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態の印刷装置は、図11に示すように書き換え可能な版を形成する版形成体であってアモルファスシリコン感光体(a−Si)からなる感光ドラム1を有する。該感光ドラム1の周辺には、帯電器2、露光器3、現像器4、版胴60、除電器6、第1クリーナ7が配置される。露光器3は、版形成体となる感光ドラム1の表面に対して潜像を書き込む潜像形成手段である。現像器4は、版形成体となる感光ドラム1の表面上の潜像が形成されている部分に選択的に撥インキ粒子20を付着させて凸部を形成する凸部形成手段である。さらに、版形成体となる感光ドラム1の表面上に付着している撥インキ粒子20を第二の版形成体となる版胴60表面に転移させる。インキローラ5は記録材料のインキ21を第二の版形成体となる版胴60の表面に供給する記録材料供給手段として構成される。第二の版形成体となる版胴60の周辺には、第三クリーナ61が配置される。第二の版形成体となる版胴60の表面に供給された記録材料のインキ21を転写する中間転写体としてのブランケット胴8が設けられる。さらに該ブランケット胴8の周辺には第2クリーナ9と、該ブランケット胴8表面の記録材料のインキ21を被記録媒体となる紙11に転写する際に押圧する押圧手段となる圧胴10が配置されている。ブランケット胴8及び圧胴10は被記録媒体となる紙11を搬送する搬送手段を兼ねる。
図示しないホストコンピュータから送られてくるデジタル信号(画像部データは鏡像データである)に対応して、図示しないモータに駆動されて図11中の矢印の通りに感光ドラム1、版胴60、インキローラ5、ブランケット胴8および圧胴10が回転する。またこの動作に対応して被記録媒体となる紙11を図示しない搬送手段によって、ブランケット胴8と圧胴10との間に搬送する。
実施形態1と同様に、一般に市販されている油性インキ(サカタインクス株式会社製枚葉オフセットインキ ダイヤトーンエコピュアSOY−HPJ)を使用した。感光ドラム1としては、実施形態1と同様に、溶剤を含むインキにも安定に対応できるアモルファスシリコン系のものを使用した。
実施形態1と同様に、感光ドラム1に対して、帯電器2により感光ドラム1の表面を−600Vに帯電させ(図12(a)中の電位VA)、この後に露光器3により非画像部に当たる位置に静電潜像を書き込み形成した(図12(b)中の電位VB)。本実施形態において電位VBは、−30V程度になった。
つぎにこの静電潜像に対して、マイナスに摩擦帯電させた撥インキ粒子20を格納している現像器4を、−400V(電位VC)に保持して、反転現像により非画像部(−30Vの部位)に付着させた(図12(c)参照)。この撥インキ粒子20の付着の原理は「電界ベクトルと力ベクトルとの関係」に基づくもので、−400V(電位VC)の現像器4と−30V(電位VB)の露光面との間には、露光面から現像器4に向かって電界ベクトルが形成される。したがって同時に、現像器4と非画像部(−30Vの部位)とのあいだに位置する撥インキ粒子20に対しては、力のベクトルは撥インキ粒子20を非画像部(−30Vの部位)に引き付ける方向に働く。他方、露光されていない−600Vの面と−400Vの現像器4との間には、現像器4から−600Vの面に向かって電界ベクトルが形成される。同時に力のベクトルは撥インキ粒子20を遠ざける方向に働く。これは電子写真方式の現像工程で一般的に用いられている考え方である。
また、ここではいわゆる接触現像方法により撥インキ粒子20を付着させた。この撥インキ粒子20の付着力の強弱は、電位の絶対値の大小関係において、以下の数1式を維持しながら、電位VA,VB,VCの3者の電位差を制御して所望の条件で調整すれば良い。ここまでは、実施形態1と同様である。
[数1]
(電位VAの絶対値)>(電位VCの絶対値)>(電位VBの絶対値)
実施形態1と同様に、油性インキ21を用いる場合の撥インキ粒子20としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ナイロン、セルロースなどの親水性高分子からなる樹脂が適用できる。またはフッ素、シリコーンなどからなる疎水性、撥油性樹脂を撥インキ粒子20にして用いることができる。また、市販の粒子を撥インキ粒子20に用いることができる。例えば、ダイキン工業社製ポリテトラフルオロエチレン粒子(ルブロン(登録商標)L−5F)、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製ポリテトラフルオロエチレンのパウダー(テフロン(登録商標)7A)、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製PFA粒子(MP10)、デュポン社製FEP粒子(5328000)、DOW CORNIONG TORAY社製シリコーンのパウダー(トレフィル(登録商標)E−606)を用いることができる。また、以下のように製造しても良い。即ち、(1)所望の樹脂を溶融混練した後粉砕、液中への分散、気体中への噴霧などによって粒子化して製造する。(2)所望の樹脂に対応したモノマーを重合する際に同時に粒子化して製造する。撥インキ粒子20にはさらに、油脂成分、磁性体、荷電制御剤などを内添、外添しても良い。その他に撥インキ粒子20と混合される添加剤としては、無機微粉体、表面処理された無機微粉体及び有機微粉体が挙げられる。本実施形態では、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製ポリテトラフルオロエチレンのパウダー(テフロン(登録商標)7A)にシリカ微粒子を2wt%添加して撥インキ粒子20として用いた。
つぎに転写チャージャの原理を用いて撥インキ粒子20を、感光ドラム1表面から版胴60表面に転移させる。すなわち、感光ドラム1表面に鏡像力で付着しているマイナスに摩擦帯電させた撥インキ粒子20を版胴60との間隙位置に移動する(図12(d))。版胴60表面は、−5V(電位VD)に保持されており、感光ドラム1と版胴60との間隙位置にて粒子20は版胴60表面に転写される(図12(e))。これも「電界ベクトルと力ベクトルとの関係」に基づくもので、−30V(電位VB)の感光ドラム1表面(露光部)と−5V(電位VD)の版胴60との間には、版胴60から感光ドラム1表面(露光部)に向かって電界ベクトルが形成される。したがって同時に、版胴60と感光ドラム1表面(露光部)とのあいだに位置する撥インキ粒子20に対しては、力のベクトルは撥インキ粒子20を版胴60表面に引き付ける方向に働く。撥インキ粒子20の版胴60への付着力の強弱は、電位VB、電位VDの電位の絶対値の大小関係において、以下の数2式を維持しながら電位差を制御して調整すれば良い。
[数2]
(電位VBの絶対値)>(電位VDの絶対値)
つぎにインキローラ5により、インキ21が版胴60上に供給される。この際、インキローラ5と版胴60との接触位置での周方向の速度差はほぼゼロの状態で回転させることが望ましい。
インキローラ5と版胴60が回転していくと、インキローラ5の周面に付着しているインキ21層が、撥インキ粒子20が付着している版胴60に向かって押し付けられる状態が形成される。こうして押し付けられるインキローラ5表面のインキ21層の表面と撥インキ粒子20との間には、撥インキ性(インキをはじく性質)によりお互いを排除しようとする力が働く。したがってインキローラ5と版胴60とがさらに回転して半径方向に間隙を広げていく過程において、インキ21層の表面と撥インキ粒子20とは、はじく性質(撥インキ性)によって分離する。
これに対して親インキ性の版胴60表面(撥インキ粒子20が付着していない領域)はインキ21によって濡れて吸着する。したがって、インキローラ5と版胴60とがさらに回転して半径方向にギャップを広げていく過程においては、インキローラ5の周面に付着しているインキ21層の厚みの一部を版胴60表面にインキ21を保持する。この過程はオフセット印刷と同様である。
即ち、本実施形態では、撥インキ粒子20の表面が、記録材料のインキ21をはじく性質であり、版胴60の表面がインキ21をはじかない性質である。特に本実施形態では、記録材料は油性インキ21であって、撥インキ粒子20の表面は撥油性であり、版胴60の表面は親油性である。
版胴60表面へのインキ21の保持厚みは、「インキローラ5と版胴60との間隙量」や「インキローラ5表面のインキ21層の厚み」の調整など、一般にオフセット印刷で実施されている調整方法によって制御される。
その後、版胴60表面に濡れ性により保持されているインキ21と、電磁気学の鏡像力によって版胴60表面に保持されている撥インキ粒子20は、ブランケット胴8との接触位置へ移動する。ブランケット胴8の表面は、一般のオフセット印刷用のものと同様に親インキ性のゴム材を巻き付けた。
版胴60上に供給されたインキ21層の厚みの一部のみが、所望の間隙を設けて配置されているブランケット胴8に中間転写される。この際の転写量(インキ21層の厚み)は、「版胴60とブランケット胴8との間隙量」の調整など、一般にオフセット印刷で実施されている調整方法によって制御される。もちろん版胴60表面へのインキ21の保持厚みを調整することも関連しているので、「インキローラ5と版胴60との間隙量」や「インキローラ5表面のインキ21層の厚み」の調整なども必要となることもある。
その後、版胴60への転写工程を終えた感光ドラム1上の領域は第1クリーナ7の位置に移動する。第1クリーナ7としては、ゴム製のブレードによる掻き取り動作により清掃するものとした。その後、感光ドラム1上の領域は除電器6の位置に移動し、電荷を除去する。
またブランケット胴8への転写工程を終えた版胴60上の領域は第3クリーナ61の位置に移動する。第3クリーナ61としては、ゴム製のブレードによる掻き取り動作により撥インキ粒子20およびインキ21を一括して除去した後に洗浄するものとした。また、必要に応じて第3クリーナ61によるクリーニング工程の後に乾燥手段を配置しても構わない。
ブランケット胴8に中間転写されたインキ21による画像は、最後の工程として、ブランケット胴8と圧胴10によって挟まれた被記録媒体である紙11に転写されて印刷が完了する。紙11への転写を終えたブランケット胴8上の領域は第2クリーナ9によって残インキを除去して初期状態に復帰させた。その後、再度、帯電器2による動作を経て、露光器3に進む工程を経れば、オンデマンドのデジタルオフセット印刷の実現となる。
以上の説明は便宜上、例えば黒インキ1色による印刷をもとにしたものであるが、図11の構成のものをシアン、マゼンタ、イエローなどのインキ21に対しても配置して、フルカラー印刷ができた。
感光ドラム1と比較して、耐久性の良いアルミ材などから形成された版胴60を第二の版形成体として使用することで、インキの付着及び除去を版胴60上で実施でき、感光ドラム1の劣化を防止することができる。その結果、感光ドラム1を長期間使用可能となり、装置のランニングコストを低減できる。
即ち、本実施形態の印刷方法は、書き換え可能な版を用いる印刷方法である。そして、書き換え可能な版を形成する版形成体となる感光ドラム1の表面に対して潜像を書き込む第1の工程と、前記潜像をもとにして感光ドラム1の表面に撥インキ粒子20を付着させて凸部を形成する第2の工程とを有する。更に感光体ドラム1表面に付着した撥インキ粒子20を第二の版形成体となる版胴60表面に転写させ画像部を形成する第3の工程を有する。また、記録材料のインキ21を版胴60の表面に供給して画像部を形成する第4の工程と、版胴60の表面のインキ21を中間転写体となるブランケット胴8に転写させる第5の工程とを有する。更に、該ブランケット胴8の表面のインキ21を被記録媒体となる紙11に転写する第6の工程を備える。そして、撥インキ粒子20の表面がインキ21をはじく性質であり、かつ版胴60の表面がインキ21をはじかない性質としたものである。
また、同じ内容の印刷物を出力する際には、撥インキ粒子20による現像を一度実施した後は、第1クリーナ7、除電器6、帯電器2、露光器3、現像器4、第2クリーナ9および第3クリーナ61による動作をスキップさせることにより高速に印刷できた。
本実施形態は、第二の版形成体である版胴60上の撥インキ粒子20を加熱融解して版胴60上に加熱圧着させた場合の一例である。その他の構成は、実施形態8と同様である。
本実施形態の印刷装置は、図13に示すように書き換え可能な版を形成する版形成体であってアモルファスシリコン感光体(a−Si)からなる感光ドラム1を有する。該感光ドラム1の周辺には、帯電器2、露光器3、現像器4、版胴60、除電器6、第1クリーナ7が配置される。露光器3は版形成体となる感光ドラム1の表面に対して潜像を書き込む潜像形成手段として構成される。現像器4は版形成体となる感光ドラム1の表面上の潜像が形成されている部分に選択的に撥インキ粒子20を付着させて凸部を形成する凸部形成手段として構成される。さらに、版形成体となる感光ドラム1の表面上に付着している撥インキ粒子20を第二の版形成体となる版胴60表面に転移させる。インキローラ5は記録材料のインキ21を第二の版形成体となる版胴60の表面に供給する記録材料供給手段として構成される。第二の版形成体となる版胴60の周辺には、第三クリーナ61、加熱圧着器62が配置される。加熱圧着器62は、版胴60上に付着された撥インキ粒子20を加熱融解させ、撥インキ粒子20を版胴60上に加熱圧着させる。第二の版形成体となる版胴60の表面に供給された記録材料のインキ21を転写する中間転写体としてのブランケット胴8が設けられる。さらに該ブランケット胴8の周辺には第2クリーナ9と、該ブランケット胴8表面の記録材料のインキ21を被記録媒体となる紙11に転写する際に押圧する押圧手段となる圧胴10を配置して構成されている。ブランケット胴8及び圧胴10は被記録媒体となる紙11を搬送する搬送手段を兼ねる。
図示しないホストコンピュータから送られてくるデジタル信号(画像部データは鏡像データである)に対応して、図示しないモータに駆動されて図13中の矢印の通りに感光ドラム1、版胴60、インキローラ5、ブランケット胴8および圧胴10が回転する。またこの動作に対応して被記録媒体となる紙11を図示しない搬送手段によって、ブランケット胴8と圧胴10との間に搬送する。
実施形態8と同様に、一般に市販されている油性インキ(サカタインクス株式会社製枚葉オフセットインキ ダイヤトーンエコピュアSOY−HPJ)を使用した。感光ドラム1としては、実施形態1と同様に、溶剤を含むインキにも安定に対応できるアモルファスシリコン系のものを使用した。
実施形態8と同様に、感光ドラム1に対して、帯電器2により感光ドラム1の表面を−600Vに帯電させ(図14(a)中の電位VA)、この後に露光器3により非画像部に当たる位置に静電潜像を書き込み形成した(図14(b)中の電位VB)。本実施形態において電位VBは、−30V程度になった。
つぎにこの静電潜像に対して、マイナスに摩擦帯電させた撥インキ粒子20を格納している現像器4を、−400V(電位VC)に保持して、反転現像により非画像部(−30Vの部位)に付着させた(図14(c)参照)。この撥インキ粒子20の付着の原理は「電界ベクトルと力ベクトルとの関係」に基づくもので、−400V(電位VC)の現像器4と−30V(電位VB)の露光面との間には、露光面から現像器4に向かって電界ベクトルが形成される。したがって同時に、現像器4と非画像部(−30Vの部位)とのあいだに位置する撥インキ粒子20に対しては、力のベクトルは撥インキ粒子20を非画像部(−30Vの部位)に引き付ける方向に働く。他方、露光されていない−600Vの面と−400Vの現像器4との間には、現像器4から−600Vの面に向かって電界ベクトルが形成される。同時に力のベクトルは撥インキ粒子20を遠ざける方向に働く。これは電子写真方式の現像工程で一般的に用いられている考え方である。
また、ここではいわゆる接触現像方法により撥インキ粒子20を付着させた。この撥インキ粒子20の付着力の強弱は、電位の絶対値の大小関係において、以下の数1式を維持しながら、電位VA,VB,VCの3者の電位差を制御して所望の条件で調整すれば良い。
[数1]
(電位VAの絶対値)>(電位VCの絶対値)>(電位VBの絶対値)
つぎに転写チャージャの原理を用いて撥インキ粒子20を、感光ドラム1表面から版胴60表面に転移させる。すなわち、感光ドラム1表面に鏡像力で付着しているマイナスに摩擦帯電させた撥インキ粒子20を版胴60との間隙位置に移動する(図14(d))。版胴60表面は、−5V(電位VD)に保持されており、感光ドラム1と版胴60との間隙位置にて粒子20は版胴60表面に転写される(図14(e))。これも「電界ベクトルと力ベクトルとの関係」に基づくもので、−30V(電位VB)の感光ドラム1表面(露光部)と−5V(電位VD)の版胴60との間には、版胴60から感光ドラム1表面(露光部)に向かって電界ベクトルが形成される。したがって同時に、版胴60と感光ドラム1表面(露光部)とのあいだに位置する撥インキ粒子20に対しては、力のベクトルは撥インキ粒子20を版胴60表面に引き付ける方向に働く。撥インキ粒子20の版胴60への付着力の強弱は、電位VB、電位VDの電位の絶対値の大小関係において、以下の数2式を維持しながら電位差を制御して調整すれば良い。ここまでは、実施形態7と同様である。
[数2]
(電位VBの絶対値)>(電位VDの絶対値)
つぎに版胴60表面に付着させた撥インキ粒子20を加熱圧着器62により加熱融解させ、撥インキ粒子20を版胴60表面に加熱圧着器62にて圧着することで加熱圧着させた(図14(f)参照)。撥インキ粒子20の主成分はポリテトラフルオロエチレンであり、ポリテトラフルオロエチレンの融点は327℃である。そのため、撥インキ粒子20を327℃以上の温度に加熱することで、撥インキ粒子20は融解する。撥インキ粒子20を加熱圧着器62により加熱融解させ、版胴60に加熱圧着させることで、撥インキ粒子20は、版胴60表面から剥がれにくくなる。
つぎにインキローラ5により、インキ21が版胴60上に供給される。この際、インキローラ5と版胴60との接触位置での周方向の速度差はほぼゼロの状態で回転させることが望ましい。
インキローラ5と版胴60が回転していくと、インキローラ5の周面に付着しているインキ21層が、圧着された撥インキ粒子63が付着している版胴60に向かって押し付けられる状態が形成される。こうして押し付けられるインキローラ5表面のインキ21層の表面と圧着された撥インキ粒子63との間には、撥インキ性(インキをはじく性質)によりお互いを排除しようとする力が働く。したがってインキローラ5と版胴60とがさらに回転して半径方向に間隙を広げていく過程において、インキ21層の表面と圧着された撥インキ粒子63とは、はじく性質(撥インキ性)によって分離する。
これに対して親インキ性の版胴60表面(撥インキ粒子20が付着していない領域)はインキ21によって濡れて吸着する。したがって、インキローラ5と版胴60とがさらに回転して半径方向にギャップを広げていく過程においては、インキローラ5の周面に付着しているインキ21層の厚みの一部を版胴60表面にインキ21を保持する。この過程はオフセット印刷と同様である。
即ち、本実施形態では、圧着された撥インキ粒子63の表面が、記録材料のインキ21をはじく性質であり、版胴60の表面がインキ21をはじかない性質である。特に本実施形態では、記録材料は油性インキ21であって、撥インキ粒子20の表面は撥油性であり、版胴60の表面は親油性である。
版胴60表面へのインキ21の保持厚みは、「インキローラ5と版胴60との間隙量」や「インキローラ5表面のインキ21層の厚み」の調整など、一般にオフセット印刷で実施されている調整方法によって制御される。
その後、版胴60表面に濡れ性により保持されているインキ21と、電磁気学の鏡像力によって版胴60表面に保持されている撥インキ粒子20は、ブランケット胴8との接触位置へ移動する。ブランケット胴8の表面は、一般のオフセット印刷用のものと同様に親インキ性のゴム材を巻き付けた。
版胴60上に供給されたインキ21層の厚みの一部のみが、所望の間隙を設けて配置されているブランケット胴8に中間転写される。この際の転写量(インキ21層の厚み)は、「版胴60とブランケット胴8との間隙量」の調整など、一般にオフセット印刷で実施されている調整方法によって制御される。もちろん版胴60表面へのインキ21の保持厚みを調整することも関連しているので、「インキローラ5と版胴60との間隙量」や「インキローラ5表面のインキ21層の厚み」の調整なども必要となることもある。
その後、版胴60への転写工程を終えた感光ドラム1上の領域は第1クリーナ7の位置に移動する。第1クリーナ7としては、ゴム製のブレードによる掻き取り動作により清掃するものとした。その後、感光ドラム1上の領域は除電器6の位置に移動し、電荷を除去する。
またブランケット胴8への転写工程を終えた版胴60上の領域は第3クリーナ61の位置に移動する。第3クリーナ61としては、ゴム製のブレードによる掻き取り動作により圧着された撥インキ粒子63およびインキ21を一括して除去した後に洗浄するものとした。必要に応じて第3クリーナ61内または、第3クリーナ61の周囲に加熱器を設け、圧着された撥インキ粒子63を融解させ、第3クリーナ61にて除去しても良い。また、必要に応じて第3クリーナ61によるクリーニング工程の後に乾燥手段を配置しても構わない。
ブランケット胴8に中間転写されたインキ21による画像は、最後の工程として、ブランケット胴8と圧胴10によって挟まれた被記録媒体である紙11に転写されて印刷が完了する。紙11への転写を終えたブランケット胴8上の領域は第2クリーナ9によって残インキを除去して初期状態に復帰させた。その後、再度、帯電器2による動作を経て、露光器3に進む工程を経れば、オンデマンドのデジタルオフセット印刷の実現となる。
以上の説明は便宜上、例えば黒インキ1色による印刷をもとにしたものであるが、図13の構成のものをシアン、マゼンタ、イエローなどのインキ21に対しても配置して、フルカラー印刷ができた。
即ち、本実施形態の印刷方法は、書き換え可能な版を用いる印刷方法である。そして、書き換え可能な版を形成する版形成体となる感光ドラム1の表面に対して潜像を書き込む第1の工程と、前記潜像をもとにして感光ドラム1の表面に撥インキ粒子20を付着させて凸部を形成する第2の工程とを有する。更に感光体ドラム1表面に付着した撥インキ粒子20を第二の版形成体となる版胴60表面に転写させ画像部を形成する第3の工程を有する。そして、版形成体である版胴60の表面に付着させた撥インキ粒子20を加熱圧着器62により加熱融解させ版胴60表面に加熱圧着させる第4の工程を有する。また、記録材料のインキ21を版胴60の表面に供給して画像部を形成する第5の工程と、版胴60の表面のインキ21を中間転写体となるブランケット胴8に転写させる第6の工程とを有する。更に、該ブランケット胴8の表面のインキ21を被記録媒体となる紙11に転写する第7の工程を備える。そして、圧着させた撥インキ粒子63の表面がインキ21をはじく性質であり、かつ版胴60の表面がインキ21をはじかない性質としたものである。
また、同じ内容の印刷物を出力する際には、撥インキ粒子20による現像を一度実施した後は、第1クリーナ7、除電器6、帯電器2、露光器3、現像器4、第2クリーナ9、加熱圧着器62および第3クリーナ61による動作をスキップさせることにより高速に印刷できた。