以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
尚、実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、「前」とは車両の前側を、また、「後」とは車両の後側を、さらに、「左」とは車両の左側を、さらにまた、「右」とは車両の右側をそれぞれ表すこととしている。
図1は、本発明の実施形態にかかる車両用空調装置1の概略構造を示している。車両用空調装置1は、電気自動車やエンジンと電気モータを組み合わせたハイブリッド自動車に搭載されるものである。
本実施形態では、車両用空調装置1が搭載される車両が電気自動車である場合について説明する。車両には、走行用のモータ(図示せず)と、走行用モーターに電力を供給するためのバッテリ140とが搭載されている。バッテリ140は、外部電源に接続されて充電が可能となっている。
車両用空調装置1は、車室内に供給する空気を冷却するように構成されたヒートポンプHを有する冷却用装置Aと、車室内に供給する空気を加熱するように構成された加熱用装置Bと、車室内に配設される室内ユニットCと、制御装置Dと、外部熱交換器130とを備えている。
冷却用装置AのヒートポンプHは、コンプレッサ100と、第1減圧弁(第1減圧手段)101と、車室外熱交換器(第2車室外熱交換器)102と、膨張弁103と、エバポレータ104と、冷媒加熱器105と、第2減圧弁(第2減圧手段)106と、切替弁(ルート切替手段)107とを備えている。これらは配管109a〜109dにより接続されている。
加熱用装置Bは、ヒータコア120と、ポンプ121とを備えており、ヒートポンプHの冷媒とは異なる熱搬送流体である水が循環するようになっている。水には不凍液が混合されており、氷点下でも氷らないようになっている。また、加熱用装置Bのヒータコア120入口近傍には、水の温度を検出するための水温センサ122が設けられている。
室内ユニットCは、内外気切替ダンパ4と、室内ファン5と、上記エバポレータ104と、上記ヒータコア120と、温度調節ダンパ27と、ロータリダンパ35及びデフベント切替ダンパ55と、ケーシング3とを備えている。
ヒートポンプHのコンプレッサ100は、コンプレッサ駆動モータ100aで作動する圧縮機構100bを有し、吸入した冷媒を圧縮して吐出するように構成された周知のものである。図3に示すように、コンプレッサ駆動モータ100aは制御装置Dにより制御されるようになっている。このコンプレッサ100は、単位時間当たりの吐出量を変化させることができる可変容量型のものである。具体的には、コンプレッサ駆動モータ100aの回転数が制御装置Dにより変更されるように構成されている。尚、圧縮機構100bが有する圧縮室(図示せず)の容積を変化させるようにしてもよい。
車室外熱交換器102は、冷媒が流れるチューブと伝熱用フィン(共に図示せず)とを交互に積層してなるチューブアンドフィンタイプの熱交換器であり、車室外(例えばエンジンルーム等)に配設されている。
コンプレッサ100の冷媒吐出口と車室外熱交換器102とは、配管109aにより接続されている。
配管109aの中途部には、上記外部熱交換器130と、上記切替弁107と、上記第1減圧弁101とが、コンプレッサ100側から順に設けられている。切替弁107を介して配管109bが分岐している。
外部熱交換器130は、ヒートポンプHの冷媒と、加熱用装置Bの熱搬送流体とを熱交換させるためのものである。外部熱交換器130には、冷媒が流れる冷媒用流路(図示せず)と、熱搬送流体が流れる熱搬送流体用流路とが設けられ、冷媒用流路を流れる冷媒と、熱搬送流体用流路を流れる熱搬送流体とが互いに熱交換するようになっている。外部熱交換器130は、車室外(例えばエンジンルーム等)に配設されている。
切替弁107は、冷媒を、コンプレッサ100、外部熱交換器130、第1減圧弁101、車室外熱交換器102、膨張弁103及びエバポレータ104に順に流す第1ルートと、冷媒加熱器105、コンプレッサ100及び外部熱交換器130に順に流す第2ルートとに切り替えるためのものである。切替弁107は、電動式の三方弁等で構成されており、制御装置Dにより制御される。
第1減圧弁101は、一般のヒートポンプの減圧手段として用いられる周知の構造のものであり、アクチュエータ等によって冷媒の流路を開放した状態(非減圧状態)と、絞った状態(減圧状態)とに切り替えられるようになっている。第1減圧弁101は、制御装置Dによって制御される。
エバポレータ104は、冷媒が流れるチューブと伝熱用フィン(共に図示せず)とを交互に積層してなるチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。エバポレータ104の空気流れ下流側の面には、エバ後温度センサ152が設けられている。エバ後温度センサ152は、エバポレータ104の空気流れ下流側の面の温度を測定する。エバ後温度センサ152は、制御装置Dに接続されている。
また、膨張弁103は、一般のヒートポンプの膨張手段として用いられる周知の構造のものであり、吐出側の冷媒の温度変化を検出して弁開度を自動調節するように構成された温度式自動膨張弁(TXV)である。この膨張弁103は、金属製のブロックに内蔵されてエバポレータ104に直接固定されている。膨張弁103の冷媒入口部と車室外熱交換器102の冷媒出口部とは、配管109cにより接続されている。従って、車室外熱交換器102で凝縮された冷媒は、膨張弁103を通過した後、エバポレータ104に流入することになる。
エバポレータ104の冷媒出口部とコンプレッサ100の冷媒吸入口とは、配管109dで接続されている。配管109dの中途部からは、切替弁107まで延びる配管109bが分岐している。
配管109bの中途部には、上記冷媒加熱器105と、上記第2減圧弁106とが設けられている。冷媒加熱器105は、電熱線(発熱体)105aを絶縁した状態で金属パイプにより被覆してなる、いわゆるシーズヒーター(電気式ヒーター)で構成されている。制御装置Dにより冷媒加熱器105のON(作動状態)及びOFF(非作動状態)の切替と、電熱線105aへの電力供給量の変更がなされるようになっている。電力供給量により加熱量(能力)の調整が可能である。冷媒加熱器105の消費電力はコンプレッサ100の消費電力よりも小さい。
冷媒加熱器105には、冷媒温度センサ105aが設けられている。この冷媒温度センサ105aは、制御装置Dに接続されており、冷媒加熱器105に流入する冷媒の温度を検出するように構成されている。
第2減圧弁106は、上記第1減圧弁101と同様に構成されており、制御装置Dにより制御される。
エバポレータ104の冷媒入口部に接続される配管109cと、エバポレータ104の冷媒出口部に接続される配管109dとの中途部同士は、バイパス配管(バイパス流路)109fにより接続されている。バイパス配管109fの中途部には、バイパス弁(開閉弁)109gが設けられている。バイパス弁109gは、バイパス配管109fを開閉するためのものであり、制御装置Dにより制御される。バイパス弁109gが閉じられると、車室外熱交換器102から流出した冷媒はエバポレータ104に流れ、一方、バイパス弁109gが開かれると、車室外熱交換器102から流出した冷媒は、蒸発器104には殆ど流れず、バイパス配管109fを通ってコンプレッサ100に吸入されることになる。
配管109cには、冷媒状態検出センサ151が設けられている。冷媒状態検出センサ151は、配管109c内の温度及び圧力を得て、バイパス配管109fに流入する前の冷媒がスーパーヒート状態であるか否かを検出するためのものである。冷媒状態検出センサ151は制御装置Dに接続されている。
一方、加熱用装置Bのヒータコア120は、水が流れるチューブと伝熱用フィン(共に図示せず)とを交互に積層してなるチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。ポンプ121は、電動モータを備えた電動ポンプであり、制御装置DによってON及びOFFの切替と、回転数の変更(流量)とが可能となっている。
また、車両には、図3に示すように、車室外の気温(外気温度)を検出する外気温センサ(外気温度検出部)150が設けられている。外気温センサ150は、車両用空調装置1を構成するものであり、制御装置Dに接続されている。
また、図1に示すように、車両には、始動タイマ116、バッテリ残量検出センサ117及び充電状態検出センサ118が設けられている。始動タイマ116、バッテリ残量検出センサ117及び充電状態検出センサ(充電状態検出手段)118は、制御装置Dに接続されている。
始動タイマ116は、乗員が空調装置1を作動させる時刻をセットすることができるように構成されている。制御装置Dは、始動タイマ116の出力信号に基づいて、現在の時刻から何分後に空調装置1を作動させる必要があるかを得ることができる。
バッテリ残量検出センサ117は、車両に搭載されているバッテリ140に接続されており、バッテリ140の残量を検出するためのものである。バッテリ残量検出センサ117は、具体的には、バッテリ140の電圧値に基づいてバッテリ残量を得るように構成されている。
充電状態検出センサ118は、バッテリ140が充電中であるか否かを検出するためのものである。具体的には、充電器(図示せず)側の電流値を検出するように構成されており、電流が流れている場合には、バッテリ140が充電中であり、また、流れていない場合には非充電中であると検出するようになっている。
次に、室内ユニットCの構造について説明する。室内ユニットCのケーシング3は、樹脂製の左側ケース構成部材(図示せず)及び右側ケース構成部材2(図2に示す)を組み合わせてなる。このケーシング3の上半部前側には、室内ファン5を収容するファンハウジング7が他の部分と一体に形成されている。室内ファン5からの空気は、ケーシング3内部の前端側を下方へ流れて、該ケーシング3の下半部に収容された上流側車室内熱交換器10と、下流側車室内熱交換器11とを通過した後、ケーシング3の後側に形成されたデフロスタ口12、ベント口13及びフット口14から車室に供給されるようになっている。
上記ファンハウジング7は、左右方向に延びる中心線を有する円筒状をなし、このファンハウジング7の中央部分に、室内ファン5を構成するシロッコファンがその回転軸を左右方向に向けた状態で収容されている。ファンハウジング7の室内ファン5周りには、該室内ファン5から吹き出した空気の流れが集合する空気流出通路17が形成され、この空気流出通路17の下流端は、ファンハウジング7の下側で開口している。また、ファンハウジング7の左側壁には、上記室内ファン5を駆動するための室内ファンモータ5a(図1に示す)の取付口18が形成されている。モータ取付口18には、室内ファンモータ5aが気密状に取り付けられている。この室内ファンモータ5aの出力軸に上記室内ファン5が回転一体に取り付けられている。室内ファンモータ5aは制御装置Dに接続されており、制御装置DによりON/OFFの切替、回転数の変更が行われるようになっている。室内ファンモータ5aの回転数の変更は、印加電圧を変更することによって行われる。
上記ファンハウジング7の右側壁には吸込口19が形成され、該吸込口19には、インテークボックス3aが接続されている。このインテークボックス3aには、車室外の空気を導入する外気導入口3bと、車室内の空気を導入する内気導入口3cとが形成されている。インテークボックス3aの内部には、外気導入口3b及び内気導入口3cの開度を調節する内外気切替ダンパ4が配設されている。内外気切替ダンパ4は、内外気切替用アクチュエータ4a(図3に示す)により駆動され、外気導入口3bを全閉にし、かつ、内気導入口3cを全開にする位置から、外気導入口3bを全開とし、かつ、内気導入口3cを全閉とする位置まで動く。外気導入口3bが全開とされると、外気のみがケーシング3内に取り入れられ、内気導入口3cが全開とされると、内気のみがケーシング3内に取り入れられる。また、外気導入口3b及び内気導入口3cの開閉度合いにより、外気及び内気の導入割合を任意に変更することができる。内外気切替用アクチュエータ4aは、制御装置Aに接続されている。
図2に示すように、ケーシング3内部の下半部前端側には、上記空気流出通路17の下流端に接続されて下側へ向かって斜め後方に延びる導風通路20が形成されている。導風通路20には、エバポレータ104が該導風通路20を横切るように配置されて収容されている。エバポレータ104は、チューブの延びる方向が上下方向となるように向いている。
上記導風通路20には、加熱通路21の上流端が連通している。加熱通路21の上流端と導風通路20との間には、両通路21、20を仕切るようにケーシング3の底壁から上方へ延びる縦壁23が形成されている。この縦壁23の上半部には、加熱通路21の上流端開口をなす下側開口部24が形成されている。また、下側開口部24の直上方には、上記縦壁23上端から上流側車室内熱交換器10の下流側上端近傍に亘るように上側開口部25が形成されており、この上側開口部25が導風通路20の下流端開口をなしている。
縦壁23の上端近傍には、下側開口部24及び上側開口部25を選択的に開閉する板状の温度調節ダンパ27が配置され、該温度調節ダンパ27は、左右方向に延びる支軸27aによりケーシング3に支持されている。この温度調節ダンパ27は、温調用アクチュエータ27a(図3に示す)により駆動されるようになっており、図2に示すように、温度調節ダンパ27を下方へ回動させて上側開口部25を全開とすると下側開口部24が全閉になる一方、図10(a)に示すように、温度調節ダンパ27を上方へ回動させて下側開口部24を全開とすると上側開口部25が全閉になる。また、図10(b)に示すように、温度調節ダンパ27を上記下側開口部24と上側開口部25との中間位置まで回動させると、下側開口部24と上側開口部25との両方が開いた状態となり、このときの温度調節ダンパ27の回動角度により両開口部24、25を通過する空気の量が変化するようになっている。
加熱通路21の縦壁23近傍には、ヒータコア120が、その上側へ行くほど後方に位置する傾斜状態でかつ加熱通路21を横切るように配置されている。
上記上側開口部25の上方には、導風通路20の下流端と加熱通路21の下流端とが連通するエアミックス空間29が形成されている。このエアミックス空間29では、導風通路20を流れた空気及び加熱通路21を流れた空気を混合して温度調節を行っている。すなわち、温度調節ダンパ27の回動角度による下側開口部24及び上側開口部25の開度によって、エバポレータ104を通過する空気量が変化し、これにより、ケーシング3内で生成される空気の温度が変化するようになっている。
また、ケーシング3の後側には、大略上下方向に延びるダクト30が他の部分と一体に形成されている。ダクト30の上端部には、前側にデフロスタ口12が形成されその後側に近接してベント口13が形成されている。上記デフロスタ口12は、デフロスタダクト(図示せず)を介してインストルメントパネルのフロントウインド下端近傍に開口するデフロスタノズルに接続されている。また、インストルメントパネルには、乗員の顔や胸に向けて調和空気を吹き出させる複数のベントノズルが開口しており、ケーシング3のベント口13は、ベントダクト(図示せず)を介して各ベントノズルに接続されている。また、ダクト30の下端部にはフット口14が形成され、このフット口14には前席乗員の足下及び後席乗員の足下まで延びるフットダクト(図示せず)が接続されるようになっている。
ダクト30内の上半部には、上流端がエアミックス空間29の上部に連通し下流端が上記デフロスタ口12及びベント口13にそれぞれ接続される第1通路31が形成されている。
また、ダクト30内の下半部には、上流端がエアミックス空間29の後部に連通し下流端が上記フット口14に接続される第2通路32が形成されている。この第2通路32の上流端は、前方に開口するとともに、加熱通路21の下流端開口及び第1通路31の上流端開口の間で両開口に近接して位置付けられており、加熱通路21の下流端開口、第2通路32の上流端開口及び第1通路31の上流端開口は並んでいる。
第2通路32は、上流端開口から後方へ下降傾斜して延びた後、略鉛直下向きに屈曲して延びている。第2通路32と加熱通路21の下流側とは、ケーシング3に一体に形成された仕切壁51により仕切られている。該仕切壁51は、後側へ行くほど下側に位置するように下方へ湾曲形成され、この仕切壁51の前端部は、後述のロータリダンパ35のシール材が当接するように略平坦に形成されている。また、ケーシング3内壁における第1通路31の上流端開口と第2通路32の上流端開口との間には、ロータリダンパ35のシール材が当接するケーシング側シール部50が、前方へ下降傾斜して突出する板状に形成されている。このケーシング側シール部50も上記仕切壁51の前端部と同様に略平坦に形成されている。
上記エアミックス空間29には、上記第1通路31の上流端開口及び第2通路32の上流端開口を選択的に開閉することにより、第1通路31及び第2通路32を切り替えるロータリダンパ35が配設されている。該ロータリダンパ35は、第1通路31及び第2通路32の上流端開口が並ぶ方向に回動する閉止壁部36と、該閉止壁部36の回動軸方向である左右方向両端にそれぞれ連なる端壁部37とを備えている。閉止壁部36は、回動軸と略平行に延びる矩形の平板状をなし、また、左側及び右側端壁部37、37は閉止壁部36に対し略垂直に延びている。左側端壁部37には、支持軸38が左外方へ突出するように形成され、また、右側端壁部37には同様な支持軸38が右外方へ突出するように形成されており、これら左側及び右側の支持軸38は同軸上に位置付けられている。該左側及び右側支持軸38は、ケーシング3の左側壁及び右側壁に形成された貫通孔(図示せず)にそれぞれ挿通されて該貫通孔に支持されている。一方の支持軸38には、リンク機構を介して吹出方向切替用アクチュエータ35a(図3に示す)が連結され、このアクチュエータ35aによりロータリダンパ35が支持軸38周りに回動するようになっている。
そして、図11(b)に示すように、ロータリダンパ35を前側へ回動させて第2通路32の上流端開口を全開にすると、第1通路31の上流端開口はその前端側が僅かに開いた状態となり、この状態で、ロータリダンパ35の後側に位置しているシール材40が、ケーシング側シール部50の下面に当接するようになっている。
一方、図2に示すように、ロータリダンパ35を後側へ回動させて第1通路31の上流端開口を全開にすると第2通路32の上流端開口が全閉になる。この状態で、ロータリダンパ35の上側に位置しているシール材40が上記ケーシング側シール部50の上面に当接するとともに、ロータリダンパ35の下側に位置しているシール材40が仕切壁51の前端部に当接する。
また、図10(b)及び図11(a)に示すように、ロータリダンパ35を、上記第1通路31と第2通路32とを切り替える途中まで回動させた状態では、このロータリダンパ35の回動位置により両通路31、32への調和空気の分配量が変化する。また、閉止壁部36が平板状に形成されていて回動軌跡に沿った円弧形状でないため、ロータリダンパ35が上記第1通路31と第2通路32とを切り替える途中にあるときには、閉止壁部36とケーシング側シール部50との間に、第2通路32とエアミックス空間29の第1通路31側とを連通させる隙間52が生じることとなる。
また、第1通路31の下流側におけるデフロスタ口12の下側及びベント口13の下側には、デフベント切替ダンパ55により開閉されるデフロスタ側開口部56及びベント側開口部57がそれぞれ形成されている。上記デフベント切替ダンパ55は、上記温度調節ダンパ27と同様に板状に形成されて左右方向に延びる支軸55aによりケーシング3に支持されている。このデフベント切替ダンパ55は、上記ロータリダンパ35とリンク機構を介して連動するようになっていて、共通のアクチュエータ35aにより駆動される。図11(a)に示すように、デフベント切替ダンパ55を前側へ回動させてデフロスタ側開口部56を全閉にするとベント側開口部57が全開となる一方、図11(b)に示すように、デフベント切替ダンパ55を後側へ回動させてベント側開口部57を全閉にするとデフロスタ側開口部56が全開となる。
つまり、この実施形態の車両用空調装置1では、空気流出通路17、導風通路20、加熱通路21、エアミックス空間29、第1通路31及び第2通路32により空気通路Rが構成されている。そして、空気流路Rは、導入口を構成するファンハウジング7の吸込口19から導出口を構成するデフロスタ口12、ベント口13及びフット口14まで延びている。
図3に示すように、上記温調用アクチュエータ27a及び吹出方向切替用アクチュエータ35aは、制御装置Dに接続され、該制御装置Dにより制御されるようになっている。制御装置Dには、車室に配設された空調操作スイッチ41が接続されている。
また、車室内には、車室内の温度を検出する内気温センサ121が設けられている。内気温センサ121は、ケーシング3に吸入される前の空調用空気の温度を検出することがきるようになっている。内気温センサ121は制御装置Dに接続されている。
制御装置Dは、各センサの出力信号、空調操作スイッチ41の操作状態、バッテリ140の残量、室内の送風状態及びコンプレッサ100の動作状態を得て、冷却用装置Aと加熱用装置Bを所定のプログラムに基づいて制御する。
制御装置Dは、空調装置1の運転状態を、急速冷房モード、通常冷房モード、除湿暖房モード、高効率暖房モード、極低外気時暖房モード、予熱モードの6つのモードのうち、任意のモードに切り替える。
急速冷房モードとは、例えば夏季の炎天下放置後の車両に乗り込んだ直後のように、最大の冷房能力が要求されるときに選択されるモードである。
通常冷房モードとは、冷房が要求されているが、冷房の最大能力まで必要ないときに選択されるモードである。
除湿暖房モードとは、例えば窓ガラスが曇りやすい冬季に選択されるモードであり、空気を除湿した後、加熱して暖房を行う。
高効率暖房モードとは、例えば冬季において、ヒートポンプHが外気から吸熱できる気温(例えば0℃以上)のときに選択されるモードである。
極低外気時暖房モードとは、極寒季のように低外気(例えば−5℃よりも低い時)でヒートポンプHが外気から吸熱しにくいときに選択されるモードである。
予熱モードとは、低外気時に冷媒の温度を早く上昇させるときに選択されるモードである。
急速冷房モードが選択された場合は、制御装置Dは、加熱用装置Bの運転を停止させ、冷却用装置Aを運転させる。このとき、図9に示すように、ヒートポンプHの切替弁107は、冷媒の流れが第1ルートとなるようにしておく。第1減圧弁101は開放状態とし、車室外熱交換器102は放熱器とする。また、バイパス弁109gは閉じておく。これにより、コンプレッサ100で圧縮された冷媒は、配管109aを通って外部熱交換器130の冷媒用流路を流れた後、切替弁107及び第1減圧弁101を介して車室外熱交換器102に流れる。車室外熱交換器102で凝縮された冷媒は、配管109cを通って膨張弁103を介してエバポレータ104に流れる。エバポレータ104を流れる冷媒は、空気と熱交換し、空気が冷却される。エバポレータ104の内部を流れた冷媒は配管109dを流れてコンプレッサ100に吸入される。
加熱用装置Bは停止した状態なので水の流れはない。尚、同図における破線は、冷媒ないし水が流れていない部分を示している。
図8に示す通常冷房モードが選択された場合は、制御装置Dは、冷却用装置A及び加熱用装置Bの両方を運転させる。冷却用装置Aは、急速冷房モードと同様に運転させる。加熱用装置Bが運転を開始すると、水が外部熱交換器130の熱搬送流体用流路を流れる。熱搬送流体用流路を流れる水は、冷媒用流路を流れる冷媒と熱交換する。冷媒用流路を流れる冷媒はコンプレッサ100から吐出された後であるため、高温であり、従って、水が加熱される。外部熱交換器130で加熱された水は、ヒータコア120に流れる。ヒータコア120を流れる冷媒は、空気と熱交換し、空気が加熱される。通常冷房モードでは、基本的には、室内ユニットCで生成される空調風の温度が冷風となるように、温度調節ダンパ27が制御される。
図7に示す除湿暖房モードが選択された場合は、制御装置Dは、冷却用装置A及び加熱用装置Bの両方を運転させる。冷却用装置Aの第1減圧弁101は減圧状態とする。これにより、外気からの吸熱が行える。冷却用装置Aのバイパス弁109gは閉じておく。除湿暖房モードでは、基本的には、室内ユニットCで生成される空調風の温度が温風となるように、温度調節ダンパ27が制御される。
図6に示す高効率暖房モードが選択された場合には、制御装置Dは、冷却用装置A及び加熱用装置Bの両方を運転させる。冷却用装置Aの第1減圧弁101は減圧状態とする。これにより、外気からの吸熱が行える。また、バイパス弁109gは開く。これにより、冷却用装置Aの冷媒がエバポレータ104に流れなくなり、エバポレータ104によって空気から吸熱されなくなる。
図5に示す極低外気時暖房モードが選択された場合には、制御装置Dは、冷却用装置A及び加熱用装置Bの両方を運転させる。このとき、ヒートポンプHの切替弁107は、冷媒の流れが第2ルートとなるようにしておく。また、バイパス弁109gは閉じ、第2減圧弁106は減圧状態とする。さらに、冷媒加熱器105を作動させる。これにより、冷媒が冷媒加熱器105により加熱された後、コンプレッサ100に吸入されて圧縮される。コンプレッサ100から吐出された冷媒は、外部熱交換器130の冷媒用流路を流れた後、切替弁107を介して冷媒加熱器105に流れる。そして、加熱用装置Bの水が外部熱交換器130の熱搬送流体用流路を流れることで加熱される。このように、冷媒加熱器105で冷媒を加熱するようにしているので、極低外気であっても、暖房が行えるようになる。
図4に示す予熱モードが選択された場合には、制御装置Dは、加熱用装置Bの運転を停止させ、冷却用装置Aを運転させる。このとき、バイパス弁109gは閉じ、第2減圧弁106は開放状態とする。さらに、冷媒加熱器105を作動させる。これにより、冷媒は、コンプレッサ100で圧縮された後、冷媒加熱器105で加熱されて、再びコンプレッサ100で圧縮される。このようにして冷媒の温度が早期に上昇する。また、予熱モードでは室内ファン5は停止させておき、冷風が吹き出すのを防止する。
次に、室内ユニットCの動作について説明する。
図11(b)は、ケーシング3内の殆どの空気をフットダクトへ供給し、残りの若干量をインストルメントパネルのデフロスタノズルへ供給するヒートモードが選択された場合を示す。このヒートモードでは、温度調節ダンパ27は上側開口部25を全閉にするまで回動している。室内ファン5により送風された空気は、導風通路20を流れて上流側車室内熱交換器10を通過する。そして、上流側車室内熱交換器10を通過した空気の全量が加熱通路21に流れ、ヒータコア120を通過してエアミックス空間29へ流れていく。
ヒートモードでは、ロータリダンパ35が、第1通路31上流端開口の大部分を覆うまで回動し、デフベント切替ダンパ55が、ベント側開口部57を全閉にするまで回動している。従って、上記のようにして生成された高温の空気の殆どは、フット口14を介してフットダクトから乗員の足下に吹き出す。また、エアミックス空間29の若干量の空気がデフロスタ口12及びデフロスタダクトを介してデフロスタノズルからフロントウインド内面に吹き出す。
図2は、ケーシング3内の空気をインストルメントパネルのベントノズルへのみ供給するベントモードが選択された場合を示す。このベントモードでは、ロータリダンパ35は第2通路32を全閉にするまで回動し、また、デフベント切替ダンパ55はデフロスタ側開口部56を全閉にするまで回動する。さらに、温度調節ダンパ27は下側開口部24を全閉にするまで回動していて、導風通路20を流れた空気は加熱通路21を流れることなく、エアミックス空間29へ直接流入する。
そして、エアミックス空間29から第1通路31に流入した調和空気は、ベント口13及びベントダクトを介して各ベントノズルから乗員の顔や胸に吹き出す。
図10(a)は、調和空気をインストルメントパネルのデフロスタノズルへのみ供給するデフロスタモードが選択された場合を示す。このデフロスタモードでは、ロータリダンパ35は、上記ベントモードと同様に第2通路32を全閉にするまで回動し、また、デフベント切替ダンパ55は、ベント側開口部57を全閉にするまで回動し、さらに温度調節ダンパ27は上側開口部25を全閉にするまで回動している。そして、エアミックス空間29から第1通路31に流入した調和空気は、デフロスタ口12及びデフロスタダクトを介してデフロスタノズルからフロントウインド内面に吹き出す。
図10(b)は、調和空気をインストルメントパネルのデフロスタノズル及びフットダクトへ供給するデフフットモードが選択された場合を示す。このデフフットモードでは、ロータリダンパ35は、第1通路31と第2通路32とを切り替える途中の回動位置まで回動しており、ロータリダンパ35の閉止壁部36とケーシング側シール部50との間には隙間52が形成されている。また、デフベント切替ダンパ55はベント側開口部57を全閉にするまで回動し、さらに、温度調節ダンパ27は下側開口部24と上側開口部25との中間位置まで回動している。
このデフフットモードでは、導風通路20を流れる一部の空気が加熱通路21に流入して加熱され、この加熱通路21の空気と上記導風通路20の残りの空気とがエアミックス空間29に流入して混合される。このエアミックス空間29の調和空気の約半分は、主にエアミックス空間29の前側から第1通路31に流入し、残りはロータリダンパ35の閉止壁部36の下側から第2通路32へ流入する。この際、第2通路32の上流端は加熱通路21の下流端に近接しているので、第2通路32に流入する空気は、第1通路31へ流入する空気よりも温度が高くなる。
また、このモードでは、エアミックス空間29から第2通路32へ流入した空気が上記隙間52を介してエアミックス空間29の第1通路31側へ流れるようになる。このエアミックス空間29へ流れた第2通路32の空気は上記の如く温度が比較的高いため、上記エアミックス空間29の第1通路31側の空気と混合すると、該第1通路31側の空気の温度は上昇し、この空気が第1通路31へ流入する。
そして、第1通路31へ流入した調和空気は、デフロスタ口12及びデフロスタダクトを介してデフロスタノズルからフロントウインド内面に向けて吹き出す。さらに、第2通路32へ流入した空気は、フット口14を介してフットダクトから乗員の足下に吹き出す。この際、第2通路32へ流入する空気の温度は、第1通路31へ流入する空気の温度よりも高いので、乗員が足下に冷たさを感じることはない。
また、第2通路32の空気をエアミックス空間29の空気と混合させてから第1通路31へ流入させるようにしているので、デフロスタノズルから吹き出す空気の温度と、フットダクトから吹き出す空気の温度の差が適切な範囲に収まる。さらに、上記のように第1通路31へ流入する空気の温度が高まるので、フロントウインド内面の曇りを素早く晴らすことが可能となる。
図11(a)は、空気をインストルメントパネルのベントノズル及びフットダクトへ供給するバイレベルモードが選択された場合を示す。このバイレベルモードでは、ロータリダンパ35は、上記デフフットモードと同様に第1通路31と第2通路32とを切り替える途中の回動位置まで回動しており、ロータリダンパ35の閉止壁部36とケーシング側シール部50との間には隙間52が形成されている。また、デフベント切替ダンパ55はデフロスタ側開口部56を全閉にするまで回動し、さらに、温度調節ダンパ27は下側開口部24と上側開口部25との中間位置まで回動している。
このバイレベルモードでは、上記デフフットモードと同様に、エアミックス空間29の調和空気の約半分が第1通路31へ流入し、残りが第2通路32へ流入する。この際、第2通路32へは温度が比較的高い空気が流入するようになる。
また、このモードでは、エアミックス空間29から第2通路32へ流入した空気が、上記隙間52を介してエアミックス空間29の第1通路31側へ流れて該第1通路31側の空気と混合し、このことで温度が上昇した空気が第1通路31へ流入する。
そして、第1通路31へ流入した空気は、ベント口13及びベントダクトを介してベントノズルから乗員の顔や胸に吹き出し、また、第2通路32へ流入した空気は、フット口14を介してフットダクトから乗員の足下に吹き出す。この際、第2通路32へ流入する空気の温度は比較的高いので、乗員が足下に冷たさを感じることはない。また、第2通路32の空気をエアミックス空間29に流すようにしているので、ベントノズルから吹き出す空気の温度と、フットダクトから吹き出す空気の温度の差が適切な範囲に収まる。
次に、制御装置Dにより行われる具体的な制御の内容について図12のフローチャートに基づいて説明する。
図12のフローチャートのスタート後のステップSA1では、始動タイマ116がONであるか否か判定する。ステップSA1でYESと判定されて始動タイマ116がONである場合には、続くステップSA2に進む。ステップSA1でNOと判定されれば、始動タイマ116がONとなるまで次のステップには進まずに待つ。
ステップSA2では、外気温センサ150により外気温TGを検出する。ステップSA2に続くステップSA3では、外気温が−5℃よりも低いか、0℃よりも高いか、−5℃以上0℃以下であるか判定する。外気温が−5℃よりも低い場合(極寒季)には、ステップSA4に進み、−5℃以上0℃以下の場合には、ステップSA5に進み、0℃よりも高い場合には、ステップSA6に進む。
ステップSA3における外気温判定の基準となる温度は上記に限られるものではなく、大気からの吸熱がそれほど期待できない状況であるか、吸熱が期待できる状況であるか、暖房が不要な状況であるかを判定できる温度を基準とすればよい。
ステップSA4では、空調装置1が運転を開始する(空調装置1がONとなる)までの時間が所定時間以内であるか否かを判定する。空調装置1が運転を開始する時刻は、始動タイマ116で設定されており、この始動タイマ116の設定時刻と現在時刻とを比較することで、空調装置1が運転を開始するまでの時間が得られるようになっている。ステップSA4の所定時間とは、例えば10分程度が好ましいがこれに限られるものではない。
ステップSA4でYESと判定されて、空調装置1が運転を開始するまでの時間が所定時間以内である場合には、ステップSA7に進む。ステップSA4でNOと判定されれば、空調装置1が運転を開始するまでの時間が所定時間以内となるまで次のステップSA7に進まずに待つ。
ステップSA7では、予熱モードでヒートポンプHを作動させる。これにより、冷媒の温度が上昇し始める。 予熱モードでは、冷媒の温度が次第に上昇する。冷媒の温度が上昇したら、第2減圧弁106を減圧状態にする。
図示しないが、このステップSA7の前に、バッテリ残量が所定量以上であるか否かを判定するようにしてもよい。バッテリ残量が多ければステップSA7で冷媒加熱器105をONにするが、バッテリ残量が少ない場合には、冷媒加熱器105をONにせず、ステップSA8に進むようにするのが好ましい。
また、冷媒加熱器105への通電時間及び供給電力量は、バッテリ残量により変更するようにしてもよい。バッテリ残量が所定量よりも少なければ、所定量以上の場合に比べて冷媒加熱器105への通電時間を短くする、ないし、供給電力量を減少させる。所定量とは、車両の走行に支障をきたさない程度の量である。
尚、車両に充電用の外部電源が接続されている場合のようにバッテリ140が充電中である場合には、そのことを検出し、冷媒加熱器105への通電時間を長くする、ないし、供給電力量を増加させるようにしてもよい。
ステップSA7に続くステップSA8では、空調装置1が運転を開始したか否かを判定する。ステップSA8でYESと判定されれば、ステップSA9に進む。ステップSA8でNOと判定されれば、空調装置1が運転を開始するまで待つ。この間、ヒートポンプHは、予熱モードで運転しているので、冷媒の温度は上昇している。
ステップSA9では、冷媒加熱器105に流入する冷媒の温度を冷媒温度センサ105aで検出し、冷媒の温度が所定値よりも高いか否かを判定する。この所定値とは、外気温よりも高い値でコンプレッサ100での圧縮が効果的に行える程度の値である。
ステップSA9でYESと判定されて冷媒の温度が所定値よりも高ければ、ステップSA10に進み、ヒートポンプHを極低外気時暖房モードで運転する。すなわち、冷媒を第2減圧弁106で減圧し、また、加熱用装置Bのポンプ121を作動させて水を流動させる。冷媒を第2減圧弁106で減圧し始めるタイミングと、水を流動させ始めるタイミングとは異ならせてもよい。すなわち、冷媒の温度が水を温めることができる程度まで上昇してから、水を流動させ始めるようにするのが好ましい。
冷媒と水とが外部熱交換器130で熱交換して水が加熱される。加熱された水がヒータコア120を流れて、空気と熱交換して空気が加熱される。これにより、暖房が行われる。このとき、事前に予熱モードで運転しているので、暖房の立ち上がりは早い。
ステップSA10に続くステップSA11では、再び外気温TGを検出する。ステップSA11に続くステップSA12では、空調装置1がOFFとされたか否かを判定する。これは空調操作スイッチ41が乗員によりOFF操作されたか否かで判定することができる。ステップSA12でYESと判定されて空調装置1がOFFとされた場合には、ステップSA13に進んで運転を停止し、終了する。
ステップSA12でNOと判定されて空調装置1の運転を継続する場合には、ステップSA14に進んでステップSA3と同様な外気温判定を行う。外気温が−5℃よりも低い場合には、ステップSA10に戻って極低外気時暖房モードでの運転を継続し、−5℃以上0℃以下の場合には、ステップSA15に進み、0℃よりも高い場合には、後述するステップSA19に進む。
ステップSA15では、外気温が−5℃以上0℃以下であるため、上記した高効率暖房モードで空調装置1を運転する。
一方、図12に示すフローチャートのステップSA3において外気温が−5℃以上0℃以下と判定されて進んだステップSA5では、ステップSA8と同様に空調装置1が運転を開始したか否かを判定する。ステップSA5でYESと判定されれば、ステップSA16に進む。ステップSA5でNOと判定されれば、空調装置1が運転を開始するまで待つ。
ステップSA5でYESと判定されて進んだステップSA16では、高効率暖房モードが要求されているか否かを判定する。具体的には、車室内の温度と、乗員による設定温度とを比較し、両者の差が大きく開いている場合には、強めの暖房が必要であるとして、高効率暖房モードが要求されていると判定する。
ステップSA16でYESと判定されると、ステップSA17に進み、高効率暖房モードで運転する。高効率暖房モードでは、バイパス弁109gが開いてエバポレータ104に冷媒が流れないので、エバポレータ104によって空気から吸熱されない。よって、暖房効率が高まる。そして、ステップSA11に進む。
一方、ステップSA16でNOと判定されると、ステップSA18に進む。ステップSA18では、除湿暖房モードで運転する。除湿暖房モードでは、エバポレータ104に冷媒が流れるので、空気がエバポレータ104を通過する際に除湿される。除湿された空気がヒータコア120で加熱され、暖房が行われる。そして、ステップSA11に進む。
その後、上記ステップSA12へと進み、ステップSA12でYESと判定された場合にはステップSA13に進み空調装置1の運転を停止する。一方、ステップSA12でONと判定されれば、ステップSA14に進んで外気温判定を行い、外気温が−5℃よりも低い場合には、ステップSA10に戻って極低外気時暖房モードで運転を継続し、−5℃以上0℃以下の場合には、ステップSA15に進んで高効率暖房モードで運転を継続し、0℃よりも高い場合には、後述するステップSA19に進む。
また、ステップSA3において外気温が0℃よりも高いと判定されて進んだステップSA6では、空調装置1が運転を開始したか否かを判定する。ステップSA6でYESと判定されれば、ステップSA19に進む。ステップSA6でNOと判定されれば、空調装置1が運転を開始するまで待つ。
ステップSA6でYESと判定されて進んだステップSA19では、急速冷房モードが要求されているか否かを判定する。具体的には、車室内の温度と乗員による設定温度とを比較して両者の差が大きく開いている場合や、車室内の温度が極めて高い(炎天下放置状態)場合には、最大冷房能力が必要であるとして、急速冷房モードが要求されていると判定する。
ステップSA19でYESと判定されると、ステップSA20に進み、急速冷房モードで運転する。急速冷房モードでは、加熱用装置Bが停止しているので、ケーシング3内の空気がヒータコア120で加熱されない。よって、冷房効率が高まる。そして、ステップSA11に進む。
一方、ステップSA19でNOと判定されると、ステップSA21に進む。ステップSA21では、通常冷房モードで運転する。通常冷房モードでは、加熱用装置Bが作動しているので、ケーシング3内で空気の温度調整が行われる。そして、ステップSA11に進む。
ステップSA12でYESと判定された場合にはステップSA13に進み空調装置1の運転を停止する。一方、ステップSA12でONと判定されれば、ステップSA14に進んで外気温判定を行い、外気温が−5℃よりも低い場合には、ステップSA10に戻って低外気時暖房モードによる運転を継続し、−5℃以上0℃以下の場合には、ステップSA15に進んで高効率暖房モードによる運転を行い、0℃よりも高い場合には、ステップSA19に進む。
また、制御装置Dは、冷媒加熱器105の目標能力を算出してその目標能力となるように冷媒加熱器105を制御する。具体的には、加熱用装置Bの水の温度を水温センサ122により検出して、この温度から算出される暖房に必要な冷媒加熱器105の能力を得る。これは水温を少なくとも車室内の温度よりも高くするのに必要な能力である。また、コンプレッサ100に吸入される冷媒をスーパーヒート状態とするために必要な冷媒加熱器105の能力を得る。そして、制御装置Dは、これら2つの能力のうち、高い方の能力を発揮するように冷媒加熱器105を制御する。
また、上記制御では、極低外気時暖房モードで冷媒加熱器105とコンプレッサ100とを同時に作動させるようにしているが、これに限らず、例えば、冷媒加熱器105を先に作動させ、その後、コンプレッサ100を作動させるようにしてもよい。
また、充電状態検出センサ118によりバッテリ140が充電中であると検出されたときには、コンプレッサ100を作動させて空調を行い、一方、充電状態検出センサ118によりバッテリ140が非充電中であると検出されたときで、かつ、空調装置1が非作動状態であるときに、コンプレッサ100を非作動状態にして冷媒加熱器105を作動させるようにしてもよい。バッテリ140が充電中である場合には、外部電源から電力が供給されていて電力に余裕があるため、コンプレッサ100を作動させても、走行可能距離が短くなってしまうのを短縮できる。一方、バッテリ140が非充電中である場合には、外部電源からの電力が供給されていないので、冷媒加熱器105よりも消費電力の大きなコンプレッサ100を停止させて冷媒加熱器105を作動させて、冷媒を予熱することが可能になる。よって、暖房の立ち上がりが早くなる。
また、制御装置Dは、コンプレッサ100を制御するにあたり、コンプレッサ100の目標吐出量を算出する。外部熱交換器130に流入する冷媒の目標温度からコンプレッサ100の必要吐出量を算出し、また、エバポレータ104から流出する空気の目標温度からコンプレッサ100の必要吐出量を算出する。そして、これら算出した結果のうち、少ない方の必要吐出量を目標吐出量としてコンプレッサ100を制御する。一方、バイパス弁109gを開くときには、外部熱交換器130へ流入する冷媒の目標温度から算出した必要吐出量を目標吐出量としてコンプレッサ100を制御する。これにより、バイパス弁109gを開くときに高い暖房能力を得ることが可能になる。
また、冷媒状態検出センサ151により配管109cの冷媒がスーパーヒート状態であるか否かを検出し、外気温が所定値よりも低く、かつ、配管109cの冷媒がスーパーヒート状態であると検出された場合に、制御装置Dがバイパス弁109gを開くようにしてもよい。この所定値とは、高効率暖房モードが選択される程度の温度である。これによれば、外気温が低く暖房が必要な場合にバイパス弁109gが開かれることで、冷媒がエバポレータ104を流れなくなるので、エバポレータ104による吸熱を確実に防止でき、暖房効率をより一層高めることができる。
以上説明したように、この実施形態にかかる車両用空調装置1によれば、外気温が低いときに、冷媒加熱器105で冷媒を加熱した後、圧縮して外部熱交換器130に流し、この外部熱交換器130で水と熱交換させ、水を車室内のヒータコア120に流して車室内の暖房を行うようにしたので、外気温が低くても、暖房を行うことができる。
さらに、暖房時では冷媒がエバポレータ104に流れないので、冷媒が車室内の空気から吸熱することはなく、暖房効率を向上できる。また、従来例のサブコンデンサを車室内に配設せずに済むので、車室内に配設される熱交換器の数が減少するとともに、耐圧性の低いヒータコア120で済み、ヒータコア120を小型化することができ、その結果、室内ユニットCを小型化できる。
また、車室内で暖房が要求され、かつ、外気から吸熱しやすい状況であるときに減圧状態とするようにしたので、外気から吸熱して暖房効率を向上できる。
また、加熱用装置Bの水の温度が所定値よりも低い場合に、水の流通を停止させ、冷媒加熱器105により加熱された冷媒をコンプレッサ100に吸入させるようにすることで、冷媒の温度を早く上昇させて暖房を早期に立ち上げることができる。
また、冷媒の温度が高くなったときに冷媒を減圧することで、冷媒の圧力及び温度上昇を早めることができる。そして、冷媒の圧力もしくは温度が高まった状態で水を流動させることで、暖房を早期に立ち上げることができる。
また、加熱用装置Bの水の温度から算出される暖房に必要な能力と、コンプレッサ100に吸入される冷媒をスーパーヒート状態とするために必要な能力との高い方の能力を発揮するように冷媒加熱器105を制御するようにしたので、高い暖房能力を得ることができる。
また、外気温が所定値よりも低いときは、コンプレッサ100の運転状態に関わらず、冷媒加熱器105を作動させるようにすることで、暖房を早期に立ち上げることができる。
また、車両走行用のバッテリ140が充電中にあるときには空調を行い、非充電中にあるときで空調装置1が非作動状態のときに、コンプレッサ100を非作動状態にして冷媒加熱器105を作動可能にすることで、バッテリ140の消耗を抑制して車両の走行可能距離を長く確保しながら、空調性能を高めることができる。
また、バイパス流路109f及びバイパス弁109gを設け、外気温が低い場合に冷媒を膨張弁103とエバポレータ104とをバイパスさせて流すようにしている。これにより、エバポレータ104による吸熱を確実に防止でき、暖房の効率を向上させることができる。
また、バイパス弁109gを開くときには、外部熱交換器130へ流入する冷媒の目標温度から算出した必要吐出量を目標吐出量としてコンプレッサ1000を制御するようにしたので、暖房能力を高めることができる。
尚、図13に示す変形例のように、加熱用装置Bには、蓄熱装置160を設けてもよい。蓄熱装置160は、加熱用装置Bにおいてヒータコア120の水流れ方向下流側に配設されている。蓄熱装置160は、断熱構造を持った容器を備えており、この容器内に、加熱された水を蓄えることによって蓄熱効果を発揮するように構成されている。外気温が所定値よりも低くて暖房が必要なときで、かつ、充電状態検出センサ118によりバッテリ140が充電中であると検出したときには、ヒートポンプHを極低外気時モードや高効率暖房モードで作動させて高温冷媒との熱交換によって水を加熱し、加熱された水を蓄熱装置160に蓄える。このように充電中に蓄熱するようにしたことで、外部電源の電力を利用でき、バッテリ140の消耗を抑制できる。
一方、バッテリ140の充電が終了した後、加熱用装置Bの水の温度が所定値よりも高い場合には、暖房のためのコンプレッサ100の作動を禁止し、蓄熱装置160の温水により暖房効果を得る。これにより、バッテリ140の消耗を抑制しながら、暖房を行うことができる。
また、車室外熱交換器102に霜が付着しているか否かを推定して、車室外熱交換器102に霜が付着したと推定したときに、水の温度が所定値よりも高い場合には、第1減圧弁101を開放状態とし、高温冷媒を車室外熱交換器102に一定時間流して、冷媒によって霜を溶かすようにしてもよい。これにより、霜が素早く除去される。この場合、水の温度が所定値よりも低い場合には、第2ルートへ冷媒を流すようにする。これにより、暖房が行える。車室外熱交換器102に霜が付着しているか否かを推定する方法としては、例えば、車室外熱交換器102の冷媒入口温度と出口温度とそれぞれ検出する温度センサを設けておく。そして、入口温度と出口温度とを比較して、差が所定値以下であれば霜が付着していると推定し、差が所定値よりも大きければ霜が付着していないと推定する。これは、車室外熱交換器102に霜が付着すると車室外熱交換器102の熱交換効率が悪化して入口温度と出口温度との差が小さくなることを利用した推定方法である。
また、上記実施形態では、室内ファン5を上流側及び下流側熱交換器10、11と同じケーシング3に収容するようにしているが、ケーシング3には上流側及び下流側熱交換器10、11を収容する一方、室内ファンを別のケーシング(図示せず)に収容するように構成してもよい。
また、上記実施形態では、冷媒加熱器105を電気式ヒーターで構成したが、これに限らず、例えば、温水による加熱器であってもよい。
また、本発明にかかる車両用空調装置1は、電気自動車やハイブリッド自動車以外の車両に搭載することも可能である。