以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
尚、実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、「前」とは車両の前側を、また、「後」とは車両の後側を、さらに、「左」とは車両の左側を、さらにまた、「右」とは車両の右側をそれぞれ表すこととしている。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1の概略構造を示している。車両用空調装置1は、電気自動車やエンジンと電気モータを組み合わせたハイブリッド自動車に搭載されるものである。
車両用空調装置1は、自動車の車室内に搭載される室内ユニットU1と、自動車の車室外に搭載される室外ユニットU2と、室内ユニットU1及び室外ユニットU2を制御する制御装置Aとを備えている。室内ユニットU1は、自動車のインストルメントパネル(図示せず)内の左右方向中央部に配設されている。また、室外ユニットU2は、主にエンジンルーム(図示せず)に配設されている。
室内ユニットU1は、内外気切替ダンパ4と、室内ファン5と、上流側車室内熱交換器10及び下流側車室内熱交換器11と、温度調節ダンパ27と、ロータリダンパ35及びデフベント切替ダンパ55と、ケーシング3とを備えている。一方、室外ユニットU2は、冷媒を圧縮するコンプレッサ100と、減圧弁101と、電動減圧弁(第1開閉弁)102と、電磁弁(第2開閉弁)103と、冷媒加熱器105と、四方弁(モード切替弁)106と、アキュムレータ107と、車室外熱交換器109とを備えている。
上記上流側車室内熱交換器10及び下流側車室内熱交換器11と、コンプレッサ100と、減圧弁101と、冷媒加熱器105と、四方弁106と、アキュムレータ107と、車室外熱交換器109とは、配管104a〜104hにより環状に接続されており、上流側車室内熱交換器10及び下流側車室内熱交換器11と室外ユニットU2とでヒートポンプが構成されている。
コンプレッサ100は、コンプレッサ駆動モータ100aで作動する圧縮機構100bを有し、吸入した冷媒を圧縮して吐出するように構成された周知のものである。図3に示すように、コンプレッサ駆動モータ100aは制御装置Aにより制御されるようになっている。このコンプレッサ100は、単位時間当たりの吐出量を変化させることができる可変容量型のものである。具体的には、コンプレッサ駆動モータ100aの回転数が制御装置Aにより変更されるように構成されている。尚、圧縮機構100bが有する圧縮室(図示せず)の容積を変化させるようにしてもよい。
下流側車室内熱交換器11は、冷媒が流れるチューブと伝熱用フィン(共に図示せず)とを交互に積層してなるチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。下流側車室内熱交換器11の冷媒給排口の一方(図示せず)が配管104aを介してコンプレッサ100の冷媒吐出口(図示せず)に接続されており、コンプレッサ100から吐出された高温冷媒が下流側車室内熱交換器11に流入するようになっている。
上流側車室内熱交換器10も、下流側車室内熱交換器11と同様に構成されたチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。上流側車室内熱交換器10は下流側車室内熱交換器11よりも大型である。具体的には、上流側車室内熱交換器10のチューブ長さ及び幅寸法は下流側車室内熱交換器11のチューブ長さ及び幅寸法よりもそれぞれ長く設定されている。上流側車室内熱交換器10の冷媒給排口の一方(図示せず)には配管104cが接続されている。下流側車室内熱交換器11の冷媒給排口の他方(図示せず)には、配管104dが接続されている。配管104bと配管104cとの間に四方弁106が配設されている。
上流側車室内熱交換器10の冷媒給排口の他方(図示せず)から延びる配管104dは、2つに分岐しており、一方は、冷媒加熱器105の冷媒給排口の一方(図示せず)まで延び、他方は、車室外熱交換器109の冷媒給排口の一方(図示せず)まで延びている。
配管104dの冷媒加熱器105側には、減圧弁101が設けられている。この減圧弁101は、配管104dの上流側車室内熱交換器10側から流れる冷媒を減圧して冷媒加熱器105側へ流すように構成された周知のものである。
配管104dの車室外熱交換器109側には、電動減圧弁102が設けられている。電動減圧弁102は、制御装置Aにより制御されるようになっており、配管104dの上流側車室内熱交換器10側から流れる冷媒を減圧して車室外熱交換器109側へ流すこと、及び、配管104dの車室外熱交換器109側から流れる冷媒を減圧して上流側車室内熱交換器10側へ流すことができるようになっている。また、電動減圧弁102は、配管104dを開閉する開閉弁としても機能し、閉状態では車室外熱交換器109に冷媒が流れなくなる。
冷媒加熱器105は、電熱線(発熱体)105aを絶縁した状態で金属パイプにより被覆してなる、いわゆるシーズヒーター(電気式ヒーター)で構成されている。制御装置Aにより冷媒加熱器105のON(作動状態)及びOFF(非作動状態)の切替と、電熱線105aへの電力供給量の変更がなされるようになっている。電力供給量により加熱量の調整が可能である。
車室外熱交換器109は、チューブアンドフィンタイプの熱交換器であり、例えば、車両のエンジンルームにおける前端部に配設されている。車室外熱交換器109には、該車室外熱交換器109に空気を送るための室外ファン109aと、該室外ファン109aを回転駆動する室外ファンモータ109bとが設けられている。室外ファンモータ109bは、制御装置Aにより制御され、ON及びOFFの切替と、回転数の変更とが可能である。
車室外熱交換器109には、内部を流動する冷媒の圧力を検出する冷媒圧力センサ109cと、車室外熱交換器109の表面温度を検出する表面温度検出センサ109dとが設けられている。冷媒圧力センサ109c及び表面温度検出センサ109dは制御装置Aに接続されている。
冷媒加熱器105の冷媒給排口の他方(図示せず)には配管104eが接続されている。また、アキュムレータ107の冷媒給排口の一方(図示せず)には配管104gが接続されている。四方弁106の4つのポートには、配管104b、配管104c、配管104e及び配管104gが接続されている。四方弁106は、制御装置Aにより制御され、配管104bと配管104cとを連通させ、かつ、配管104eと配管104gとを連通させる状態(図1、図4〜6に示す)と、配管104bと配管104eとを連通させ、かつ、配管104cと配管104gとを連通させる状態(図7に示す)とに切り替えられるようになっている。
また、車室外熱交換器109の冷媒給排口の他方(図示せず)から延びる配管104fは、配管104eの中途部に接続されている。配管104fと配管104eとの接続部には、電磁弁103が設けられている。電磁弁103は、制御装置Aに接続され、配管104f及び配管104eを各々開閉できるようになっている。
アキュムレータ107は、冷媒を貯留するように構成された周知のものである。アキュムレータ107の冷媒給排口の他方(図示せず)は、配管104hによりコンプレッサ100の冷媒吸入口(図示せず)に接続されている。配管104hには、コンプレッサ100に吸入される前の冷媒の圧力及び温度をそれぞれ検出する吸入冷媒圧センサ112及び吸入冷媒温度センサ113が設けられている。吸入冷媒圧センサ112及び吸入冷媒温度センサ113は、コンプレッサ100に吸入される前の冷媒がスーパーヒート状態(過熱状態)であるか否かを検出するためのものであり、制御装置Aに接続されている。
室外ユニットU2には、コンプレッサ100の冷媒吐出口と車室外熱交換器109とを接続し、コンプレッサ100から吐出された冷媒を車室外熱交換器109に供給するバイパス配管110と、バイパス配管110の通路を開閉するバイパス弁111とが設けられている。バイパス配管110の上流端は、配管104aの中途部に接続されている。バイパス弁111は、バイパス配管110の上流端に位置付けられている。バイパス配管110の下流端は、配管104dの中途部に接続されている。バイパス弁111は制御装置Aにより制御されるようになっている。
また、車両には、図3に示すように、車室外の気温(外気温度)を検出する外気温センサ114、車室外の湿度を検出する車室外湿度センサ115及び車室内の湿度を検出する車室内湿度センサ116が設けられている。外気温センサ114、車室外湿度センサ115及び車室内湿度センサ116は、車両用空調装置1を構成するものであり、制御装置Aに接続されている。
また、車両には、始動タイマ118及びバッテリ残量検出センサ117が設けられている。始動タイマ118及びバッテリ残量検出センサ117は、制御装置Aに接続されている。
始動タイマ118は、乗員が空調装置1を作動させる時刻をセットすることができるように構成されている。制御装置Aは、始動タイマ118の出力信号に基づいて、何分後に空調装置1を作動させる必要があるかを得ることができる。
バッテリ残量検出センサ117は、車両に搭載されているバッテリ120に接続されており、バッテリ120の残量を検出するためのものである。バッテリ残量検出センサ117は、具体的には、バッテリ120の電圧値に基づいてバッテリ残量を得るように構成されている。
次に、室内ユニットU1の構造について説明する。室内ユニットU1のケーシング3は、樹脂製の左側ケース構成部材(図示せず)及び右側ケース構成部材2(図2に示す)を組み合わせてなる。このケーシング3の上半部前側には、室内ファン5を収容するファンハウジング7が他の部分と一体に形成されている。室内ファン5からの空気は、ケーシング3内部の前端側を下方へ流れて、該ケーシング3の下半部に収容された上流側車室内熱交換器10と、下流側車室内熱交換器11とを通過した後、ケーシング3の後側に形成されたデフロスタ口12、ベント口13及びフット口14から車室に供給されるようになっている。
上記ファンハウジング7は、左右方向に延びる中心線を有する円筒状をなし、このファンハウジング7の中央部分に、室内ファン5を構成するシロッコファンがその回転軸を左右方向に向けた状態で収容されている。ファンハウジング7の室内ファン5周りには、該室内ファン5から吹き出した空気の流れが集合する空気流出通路17が形成され、この空気流出通路17の下流端は、ファンハウジング7の下側で開口している。また、ファンハウジング7の左側壁には、上記室内ファン5を駆動するための室内ファンモータ5a(図1に示す)の取付口18が形成されている。モータ取付口18には、室内ファンモータ5aが気密状に取り付けられている。この室内ファンモータ5aの出力軸に上記室内ファン5が回転一体に取り付けられている。室内ファンモータ5aは制御装置Aに接続されており、制御装置AによりON/OFFの切替、回転数の変更が行われるようになっている。室内ファンモータ5aの回転数の変更は、印加電圧を変更することによって行われる。
上記ファンハウジング7の右側壁には吸込口19が形成され、該吸込口19には、インテークボックス3aが接続されている。このインテークボックス3aには、車室外の空気を導入する外気導入口3bと、車室内の空気を導入する内気導入口3cとが形成されている。インテークボックス3aの内部には、外気導入口3b及び内気導入口3cの開度を調節する内外気切替ダンパ4が配設されている。内外気切替ダンパ4は、内外気切替用アクチュエータ4a(図3に示す)により駆動され、外気導入口3bを全閉にし、かつ、内気導入口3cを全開にする位置から、外気導入口3bを全開とし、かつ、内気導入口3cを全閉とする位置まで動く。外気導入口3bが全開とされると、外気のみがケーシング3内に取り入れられ、内気導入口3cが全開とされると、内気のみがケーシング3内に取り入れられる。また、外気導入口3b及び内気導入口3cの開閉度合いにより、外気及び内気の導入割合を任意に変更することができる。内外気切替用アクチュエータ4aは、制御装置Aに接続されている。
図2に示すように、ケーシング3内部の下半部前端側には、上記空気流出通路17の下流端に接続されて下側へ向かって斜め後方に延びる導風通路20が形成されている。導風通路20には、上流側車室内熱交換器10が該導風通路20を横切るように配置されて収容されている。上流側車室内熱交換器10は、チューブの延びる方向が上下方向となるように向いている。
上記導風通路20には、加熱通路21の上流端が連通している。加熱通路21の上流端と導風通路20との間には、両通路21、20を仕切るようにケーシング3の底壁から上方へ延びる縦壁23が形成されている。この縦壁23の上半部には、加熱通路21の上流端開口をなす下側開口部24が形成されている。また、下側開口部24の直上方には、上記縦壁23上端から上流側車室内熱交換器10の下流側上端近傍に亘るように上側開口部25が形成されており、この上側開口部25が導風通路20の下流端開口をなしている。
縦壁23の上端近傍には、下側開口部24及び上側開口部25を選択的に開閉する板状の温度調節ダンパ27が配置され、該温度調節ダンパ27は、左右方向に延びる支軸27aによりケーシング3に支持されている。この温度調節ダンパ27は、温調用アクチュエータ27a(図3に示す)により駆動されるようになっており、図2に示すように、温度調節ダンパ27を下方へ回動させて上側開口部25を全開とすると下側開口部24が全閉になる一方、図8(a)に示すように、温度調節ダンパ27を上方へ回動させて下側開口部24を全開とすると上側開口部25が全閉になる。また、図8(b)に示すように、温度調節ダンパ27を上記下側開口部24と上側開口部25との中間位置まで回動させると、下側開口部24と上側開口部25との両方が開いた状態となり、このときの温度調節ダンパ27の回動角度により両開口部24、25を通過する空気の量が変化するようになっている。
加熱通路21の縦壁23近傍には、下流側車室内熱交換器11が、その上側へ行くほど後方に位置する傾斜状態でかつ加熱通路21を横切るように配置されている。
上記上側開口部25の上方には、導風通路20の下流端と加熱通路21の下流端とが連通するエアミックス空間29が形成されている。このエアミックス空間29では、導風通路20を流れた空気及び加熱通路21を流れた空気を混合して温度調節を行っている。すなわち、温度調節ダンパ27の回動角度による下側開口部24及び上側開口部25の開度によって、下流側車室内熱交換器11を流れる空気量が変化し、これにより、ケーシング3内で生成される空気の温度が変化するようになっている。
また、ケーシング3の後側には、大略上下方向に延びるダクト30が他の部分と一体に形成されている。ダクト30の上端部には、前側にデフロスタ口12が形成されその後側に近接してベント口13が形成されている。上記デフロスタ口12は、デフロスタダクト(図示せず)を介してインストルメントパネルのフロントウインド下端近傍に開口するデフロスタノズルに接続されている。また、インストルメントパネルには、乗員の顔や胸に向けて調和空気を吹き出させる複数のベントノズルが開口しており、ケーシング3のベント口13は、ベントダクト(図示せず)を介して各ベントノズルに接続されている。また、ダクト30の下端部にはフット口14が形成され、このフット口14には前席乗員の足下及び後席乗員の足下まで延びるフットダクト(図示せず)が接続されるようになっている。
ダクト30内の上半部には、上流端がエアミックス空間29の上部に連通し下流端が上記デフロスタ口12及びベント口13にそれぞれ接続される第1通路31が形成されている。
また、ダクト30内の下半部には、上流端がエアミックス空間29の後部に連通し下流端が上記フット口14に接続される第2通路32が形成されている。この第2通路32の上流端は、前方に開口するとともに、加熱通路21の下流端開口及び第1通路31の上流端開口の間で両開口に近接して位置付けられており、加熱通路21の下流端開口、第2通路32の上流端開口及び第1通路31の上流端開口は並んでいる。
第2通路32は、上流端開口から後方へ下降傾斜して延びた後、略鉛直下向きに屈曲して延びている。第2通路32と加熱通路21の下流側とは、ケーシング3に一体に形成された仕切壁51により仕切られている。該仕切壁51は、後側へ行くほど下側に位置するように下方へ湾曲形成され、この仕切壁51の前端部は、後述のロータリダンパ35のシール材が当接するように略平坦に形成されている。また、ケーシング3内壁における第1通路31の上流端開口と第2通路32の上流端開口との間には、ロータリダンパ35のシール材が当接するケーシング側シール部50が、前方へ下降傾斜して突出する板状に形成されている。このケーシング側シール部50も上記仕切壁51の前端部と同様に略平坦に形成されている。
上記エアミックス空間29には、上記第1通路31の上流端開口及び第2通路32の上流端開口を選択的に開閉することにより、第1通路31及び第2通路32を切り替えるロータリダンパ35が配設されている。該ロータリダンパ35は、第1通路31及び第2通路32の上流端開口が並ぶ方向に回動する閉止壁部36と、該閉止壁部36の回動軸方向である左右方向両端にそれぞれ連なる端壁部37とを備えている。閉止壁部36は、回動軸と略平行に延びる矩形の平板状をなし、また、左側及び右側端壁部37、37は閉止壁部36に対し略垂直に延びている。左側端壁部37には、支持軸38が左外方へ突出するように形成され、また、右側端壁部37には同様な支持軸38が右外方へ突出するように形成されており、これら左側及び右側の支持軸38は同軸上に位置付けられている。該左側及び右側支持軸38は、ケーシング3の左側壁及び右側壁に形成された貫通孔(図示せず)にそれぞれ挿通されて該貫通孔に支持されている。一方の支持軸38には、リンク機構を介して吹出方向切替用アクチュエータ35a(図3に示す)が連結され、このアクチュエータ35aによりロータリダンパ35が支持軸38周りに回動するようになっている。
そして、図9(b)に示すように、ロータリダンパ35を前側へ回動させて第2通路32の上流端開口を全開にすると、第1通路31の上流端開口はその前端側が僅かに開いた状態となり、この状態で、ロータリダンパ35の後側に位置しているシール材40が、ケーシング側シール部50の下面に当接するようになっている。
一方、図2に示すように、ロータリダンパ35を後側へ回動させて第1通路31の上流端開口を全開にすると第2通路32の上流端開口が全閉になる。この状態で、ロータリダンパ35の上側に位置しているシール材40が上記ケーシング側シール部50の上面に当接するとともに、ロータリダンパ35の下側に位置しているシール材40が仕切壁51の前端部に当接する。
また、図8(b)及び図9(a)に示すように、ロータリダンパ35を、上記第1通路31と第2通路32とを切り替える途中まで回動させた状態では、このロータリダンパ35の回動位置により両通路31、32への調和空気の分配量が変化する。また、閉止壁部36が平板状に形成されていて回動軌跡に沿った円弧形状でないため、ロータリダンパ35が上記第1通路31と第2通路32とを切り替える途中にあるときには、閉止壁部36とケーシング側シール部50との間に、第2通路32とエアミックス空間29の第1通路31側とを連通させる隙間52が生じることとなる。
また、第1通路31の下流側におけるデフロスタ口12の下側及びベント口13の下側には、デフベント切替ダンパ55により開閉されるデフロスタ側開口部56及びベント側開口部57がそれぞれ形成されている。上記デフベント切替ダンパ55は、上記温度調節ダンパ27と同様に板状に形成されて左右方向に延びる支軸55aによりケーシング3に支持されている。このデフベント切替ダンパ55は、上記ロータリダンパ35とリンク機構を介して連動するようになっていて、共通のアクチュエータ35aにより駆動される。図9(a)に示すように、デフベント切替ダンパ55を前側へ回動させてデフロスタ側開口部56を全閉にするとベント側開口部57が全開となる一方、図9(b)に示すように、デフベント切替ダンパ55を後側へ回動させてベント側開口部57を全閉にするとデフロスタ側開口部56が全開となる。
つまり、この実施形態の車両用空調装置1では、空気流出通路17、導風通路20、加熱通路21、エアミックス空間29、第1通路31及び第2通路32により空気通路Rが構成されている。そして、空気流路Rは、導入口を構成するファンハウジング7の吸込口19から導出口を構成するデフロスタ口12、ベント口13及びフット口14まで延びている。
図3に示すように、上記温調用アクチュエータ27a及び吹出方向切替用アクチュエータ35aは、制御装置Aに接続され、該制御装置Aにより制御されるようになっている。制御装置Aには、車室に配設された空調操作スイッチ41が接続されている。
また、車室内には、車室内の温度を検出する内気温センサ(温度検出部)121が設けられている。内気温センサ121は、ケーシング3に吸入される前の空調用空気の温度を検出することがきるようになっている。内気温センサ121は制御装置Aに接続されている。
制御装置Aは、各センサ109c、109d、112〜117、121の出力信号、空調操作スイッチ41の操作状態、始動タイマ118の動作状態、バッテリ120の残量、室内の送風状態及びコンプレッサ100の動作状態を得て、室内ユニットU1及び室外ユニットU2を所定のプログラムに基づいて制御する。
制御装置Aには、送風状態検出部125が設けられている。送風状態検出部125は、ケーシング3内への空調用空気の送風量を検出するためのものである。室内ファンモータ5aは、制御装置Aから印加される電圧の大きさにより回転数が変更されるようになっており、送風状態検出部125は、室内ファンモータ5aへの印加電圧に基づいて車室内への送風量を間接的に検出することができる。
制御装置Aには、コンプレッサ吐出状態検出部126が設けられている。コンプレッサ吐出状態検出部126は、コンプレッサ100から吐出される冷媒の単位時間当たりの量を検出するためのものである。コンプレッサ100は、制御装置Aから出力された信号により回転数が変更されるようになっているので、この信号に基づいてコンプレッサ100から吐出される冷媒の量が間接的に得られる。
制御装置Aは、空調装置1の運転状態を、低外気時暖房運転モード、通常暖房運転モード、除霜運転モード及び冷房運転モードの4つのモードのうち、任意のモードに切り替える。低外気時暖房運転モードとは、極寒季のように低外気時(例えば−5℃よりも低い時)に選択されるモードである。通常暖房運転モードとは、冬季において外気が例えば−5℃以上0℃以下のときに選択されるモードである。除霜運転モードとは、車室外熱交換器109が着霜状態にあると推定された場合に選択されるモードである。冷房運転モードとは、主に冬季以外で選択されるモードである。
低外気時暖房運転モードが選択された場合には、制御装置Aは上流側車室内熱交換器10及び下流側車室内熱交換器11が放熱器となるように、次の制御を行う。図4に示すように、まず、四方弁106により配管104bと配管104cとを連通させ、かつ、配管104eと配管104gとを連通させる。また、電動減圧弁102を閉状態とし、電磁弁103により配管104eの通路を開き、配管104fの通路を閉じる。さらに、バイパス弁111を閉状態としてバイパス配管110の通路を閉じる。これにより、車室外熱交換器109には冷媒が流れない。尚、同図における破線は、冷媒が流れない部分を示している。
低外気時暖房運転モード時に車室外熱交換器109に冷媒を流さないのは、外気温が低く大気からの吸熱がそれほど期待できないためである。そして、冷媒加熱器105をONにするとともに、コンプレッサ100を作動させる。
低外気時暖房運転モードでは、同図に矢印で示すように、コンプレッサ100から吐出された高温高圧冷媒が、配管104aから下流側車室内熱交換器11に流入した後、配管104b及び配管104cから上流側車室内熱交換器10に流入する。上流側車室内熱交換器10を流れた冷媒は、配管104dから減圧弁101を通って減圧された後、冷媒加熱器105により加熱される。冷媒加熱器105により加熱された冷媒は、配管104eから四方弁106を経て配管104g、アキュムレータ107、配管104hを順に流れてコンプレッサ100に吸入される。
低外気時暖房運転モードの場合には、下流側車室内熱交換器11を流動する冷媒の温度の方が、上流側車室内熱交換器10を流動する冷媒の温度よりも高くなるので、上流側車室内熱交換器10を通過して加熱された空気は、下流側車室内熱交換器11を通過する際に再加熱される。これにより、高温の空調風を得ることが可能になる。また、温度調節ダンパ27の回動動作により、空調風の温度調節も可能である。
通常暖房運転モードが選択された場合には、制御装置Aは、次の制御を行う。図5に示すように、まず、四方弁106を上記低外気時暖房運転モードと同様にする。また、電動減圧弁102を開く。さらに、電磁弁103により配管104eの冷媒加熱器105側の通路を閉じ、配管104fの通路を開く。そして、コンプレッサ100を作動させる。この通常暖房運転モードでは、冷媒加熱器105をOFFにする。大気吸熱が期待できるからである。
通常暖房運転モードでは、図5に示すように、コンプレッサ100から吐出された高温高圧冷媒が、配管104aから下流側車室内熱交換器11に流入した後、配管104b及び配管104cを経て上流側車室内熱交換器10に流入する。上流側車室内熱交換器10を流れた冷媒は、配管104dから電動減圧弁102を通って減圧された後、車室外熱交換器109に流入する。車室外熱交換器109に流入した冷媒は大気と熱交換して吸熱した後、配管104fから四方弁106を経て、配管104g、アキュムレータ107、配管104hを順に流れてコンプレッサ100に吸入される。
通常暖房運転モードにおいても、低外気時暖房運転モードと同様に、高温の空調風を得ることができるとともに、温度調節ダンパ27の回動動作により空調風の温度調節も可能である。
除霜運転モードが選択された場合には、制御装置Aは、次の制御を行う。図6に示すように、まず、四方弁106を上記低外気時暖房運転モードと同様にする。また、電動減圧弁102を閉状態とし、電磁弁103により配管104eと配管104fの両方の通路を開く。さらに、バイパス弁111を開状態としてバイパス配管110の通路を開く。そして、冷媒加熱器105をONにするとともに、コンプレッサ100を作動させる。
除霜運転モードでは、低外気時暖房運転モードと同様に、コンプレッサ100から吐出された高温高圧冷媒が、下流側車室内熱交換器11及び上流側車室内熱交換器10を経て、減圧弁101を通って減圧された後、冷媒加熱器105により加熱される。冷媒加熱器105により加熱された冷媒は、四方弁106及びアキュムレータ107を経てコンプレッサ100に吸入される。また、コンプレッサ100から吐出された高温高圧冷媒は、バイパス配管110を通って車室外熱交換器109に流入する。これにより、車室外熱交換器109の表面温度が上昇して霜が解ける。
除霜運転モードでは、コンプレッサ100に吸入される前の冷媒を冷媒加熱器105で加熱するようにしているので、室内熱交換器10、11には高温の冷媒を供給することが可能になり、暖房能力は十分に得られる。
冷房運転モードが選択された場合には、制御装置Aは、次の制御を行う。図7に示すように、まず、四方弁106により配管104bと配管104eとを連通させ、かつ、配管104cと配管104gとを連通させる。また、電動減圧弁102を開状態とし、電磁弁103により配管104eの通路を閉じて配管104fの通路を開く。さらに、バイパス弁111を閉状態としてバイパス配管110の通路を閉じる。
冷房運転モードでは、コンプレッサ100から吐出された高温高圧冷媒が、配管104aを通って下流側車室内熱交換器11に流入した後、配管104b及び配管104eを経て、配管104fを流れて車室外熱交換器109に流入する。車室外熱交換器109に流出した冷媒は、電動減圧弁102を経て減圧された後、配管104dを通り、上流側車室内熱交換器10に流入する。上流側車室内熱交換器10から流出した冷媒は、配管104cを通り、四方弁106を経て、配管104g、アキュムレータ107、配管104hを順に流れてコンプレッサ100に吸入される。
冷房運転モードでは、上流側車室内熱交換器10が冷却器として機能し、下流側車室内熱交換器11が加熱器として機能する。これにより、導風通路20を通過する空気が上流側車室内熱交換器10により冷却され、加熱通路21を通過する空気が下流側車室内熱交換器11により加熱される。そして、温度調節ダンパ27の回動動作により空調風の温度調節が可能である。尚、冷房運転モードでは、上流側熱交換器10により空気の湿度を低下させ、その後、空気を下流側熱交換器11で加熱して温風を生成することもできる。
次に、室内ユニットU1の動作について説明する。
図9(b)は、ケーシング3内の殆どの空気をフットダクトへ供給し、残りの若干量をインストルメントパネルのデフロスタノズルへ供給するヒートモードが選択された場合を示す。このヒートモードでは、温度調節ダンパ27は上側開口部25を全閉にするまで回動している。室内ファン5により送風された空気は、導風通路20を流れて上流側車室内熱交換器10を通過する。そして、上流側車室内熱交換器10を通過した空気の全量が加熱通路21に流れ、下流側車室内熱交換器11を通過してエアミックス空間29へ流れていく。
ヒートモードでは、ロータリダンパ35が、第1通路31上流端開口の大部分を覆うまで回動し、デフベント切替ダンパ55が、ベント側開口部57を全閉にするまで回動している。従って、上記のようにして生成された高温の空気の殆どは、フット口14を介してフットダクトから乗員の足下に吹き出す。また、エアミックス空間29の若干量の空気がデフロスタ口12及びデフロスタダクトを介してデフロスタノズルからフロントウインド内面に吹き出す。
図2は、ケーシング3内の空気をインストルメントパネルのベントノズルへのみ供給するベントモードが選択された場合を示す。このベントモードでは、ロータリダンパ35は第2通路32を全閉にするまで回動し、また、デフベント切替ダンパ55はデフロスタ側開口部56を全閉にするまで回動する。さらに、温度調節ダンパ27は下側開口部24を全閉にするまで回動していて、導風通路20を流れた空気は加熱通路21を流れることなく、エアミックス空間29へ直接流入する。
そして、エアミックス空間29から第1通路31に流入した調和空気は、ベント口13及びベントダクトを介して各ベントノズルから乗員の顔や胸に吹き出す。
図8(a)は、調和空気をインストルメントパネルのデフロスタノズルへのみ供給するデフロスタモードが選択された場合を示す。このデフロスタモードでは、ロータリダンパ35は、上記ベントモードと同様に第2通路32を全閉にするまで回動し、また、デフベント切替ダンパ55は、ベント側開口部57を全閉にするまで回動し、さらに温度調節ダンパ27は上側開口部25を全閉にするまで回動している。そして、エアミックス空間29から第1通路31に流入した調和空気は、デフロスタ口12及びデフロスタダクトを介してデフロスタノズルからフロントウインド内面に吹き出す。
図8(b)は、調和空気をインストルメントパネルのデフロスタノズル及びフットダクトへ供給するデフフットモードが選択された場合を示す。このデフフットモードでは、ロータリダンパ35は、第1通路31と第2通路32とを切り替える途中の回動位置まで回動しており、ロータリダンパ35の閉止壁部36とケーシング側シール部50との間には隙間52が形成されている。また、デフベント切替ダンパ55はベント側開口部57を全閉にするまで回動し、さらに、温度調節ダンパ27は下側開口部24と上側開口部25との中間位置まで回動している。
このデフフットモードでは、導風通路20を流れる一部の空気が加熱通路21に流入して加熱され、この加熱通路21の空気と上記導風通路20の残りの空気とがエアミックス空間29に流入して混合される。このエアミックス空間29の調和空気の約半分は、主にエアミックス空間29の前側から第1通路31に流入し、残りはロータリダンパ35の閉止壁部36の下側から第2通路32へ流入する。この際、第2通路32の上流端は加熱通路21の下流端に近接しているので、第2通路32に流入する空気は、第1通路31へ流入する空気よりも温度が高くなる。
また、このモードでは、エアミックス空間29から第2通路32へ流入した空気が上記隙間52を介してエアミックス空間29の第1通路31側へ流れるようになる。このエアミックス空間29へ流れた第2通路32の空気は上記の如く温度が比較的高いため、上記エアミックス空間29の第1通路31側の空気と混合すると、該第1通路31側の空気の温度は上昇し、この空気が第1通路31へ流入する。
そして、第1通路31へ流入した調和空気は、デフロスタ口12及びデフロスタダクトを介してデフロスタノズルからフロントウインド内面に向けて吹き出す。さらに、第2通路32へ流入した空気は、フット口14を介してフットダクトから乗員の足下に吹き出す。この際、第2通路32へ流入する空気の温度は、第1通路31へ流入する空気の温度よりも高いので、乗員が足下に冷たさを感じることはない。また、第2通路32の空気をエアミックス空間29の空気と混合させてから第1通路31へ流入させるようにしているので、デフロスタノズルから吹き出す空気の温度と、フットダクトから吹き出す空気の温度の差が適切な範囲に収まる。さらに、上記のように第1通路31へ流入する空気の温度が高まるので、フロントウインド内面の曇りを素早く晴らすことが可能となる。
図9(a)は、空気をインストルメントパネルのベントノズル及びフットダクトへ供給するバイレベルモードが選択された場合を示す。このバイレベルモードでは、ロータリダンパ35は、上記デフフットモードと同様に第1通路31と第2通路32とを切り替える途中の回動位置まで回動しており、ロータリダンパ35の閉止壁部36とケーシング側シール部50との間には隙間52が形成されている。また、デフベント切替ダンパ55はデフロスタ側開口部56を全閉にするまで回動し、さらに、温度調節ダンパ27は下側開口部24と上側開口部25との中間位置まで回動している。
このバイレベルモードでは、上記デフフットモードと同様に、エアミックス空間29の調和空気の約半分が第1通路31へ流入し、残りが第2通路32へ流入する。この際、第2通路32へは温度が比較的高い空気が流入するようになる。
また、このモードでは、エアミックス空間29から第2通路32へ流入した空気が、上記隙間52を介してエアミックス空間29の第1通路31側へ流れて該第1通路31側の空気と混合し、このことで温度が上昇した空気が第1通路31へ流入する。
そして、第1通路31へ流入した空気は、ベント口13及びベントダクトを介してベントノズルから乗員の顔や胸に吹き出し、また、第2通路32へ流入した空気は、フット口14を介してフットダクトから乗員の足下に吹き出す。この際、第2通路32へ流入する空気の温度は比較的高いので、乗員が足下に冷たさを感じることはない。また、第2通路32の空気をエアミックス空間29に流すようにしているので、ベントノズルから吹き出す空気の温度と、フットダクトから吹き出す空気の温度の差が適切な範囲に収まる。
次に、制御装置Aにより行われる具体的な制御の内容について図10及び図11のフローチャートに基づいて説明する。
図10のフローチャートのスタート後のステップSA1では、始動タイマ118がONであるか否か判定する。ステップSA1でYESと判定されて始動タイマ118がONである場合には、続くステップSA2に進む。ステップSA1でNOと判定されれば、始動タイマ118がONとなるまで次のステップには進まずに待つ。
ステップSA2では、外気温センサ114により外気温TGを検出する。ステップSA2に続くステップSA3では、外気温が−5℃よりも低いか、0℃よりも高いか、−5℃以上0℃以下であるか判定する。外気温が−5℃よりも低い場合(極寒季)には、ステップSA4に進み、−5℃以上0℃以下の場合には、ステップSA5に進み、0℃よりも高い場合には、ステップSA6に進む。
ステップSA3における外気温判定の基準となる温度は上記に限られるものではなく、大気からの吸熱がそれほど期待できない状況であるか、吸熱が期待できる状況であるか、暖房が不要な状況であるかを判定できる温度を基準とすればよい。
ステップSA4では、空調装置1が運転を開始する(空調装置1がONとなる)までの時間が所定時間以内であるか否かを判定する。空調装置1が運転を開始する時刻は、始動タイマ118で設定されており、この始動タイマ118の設定時刻と現在時刻とを比較することで、空調装置1が運転を開始するまでの時間が得られるようになっている。ステップSA4の所定時間とは、例えば10分程度が好ましいがこれに限られるものではない。
ステップSA4でYESと判定されて、空調装置1が運転を開始するまでの時間が所定時間以内である場合には、ステップSA7に進む。ステップSA4でNOと判定されれば、空調装置1が運転を開始するまでの時間が所定時間以内となるまで次のステップSA7に進まずに待つ。
ステップSA7では、冷媒加熱器105をONにして作動状態とする。これにより、空調装置1の運転前に冷媒を予め暖めることができる。図示しないが、このステップSA7の前に、バッテリ残量が所定量以上であるか否かを判定する。バッテリ残量が所定量以上であればステップSA7で冷媒加熱器105をONにするが、バッテリ残量が所定量に満たない場合には、冷媒加熱器105をONにせず、ステップSA8に進む。
尚、冷媒加熱器105への通電時間及び供給電力量は、バッテリ残量により変更することも可能である。バッテリ残量が少なければ冷媒加熱器105への通電時間を短くする、ないし、供給電力量を減少させる。また、車両に充電用の外部電源が接続されている場合のようにバッテリが充電中である場合には、そのことを検出し、冷媒加熱器105への通電時間を長くする、ないし、供給電力量を増加させるようにしてもよい。
また、始動タイマ118を省略して、空調操作スイッチ41の乗員によるON操作で本制御を開始させるようにしてもよい。この場合、ステップSA4〜SA8が無くなる。
ステップSA7に続くステップSA8では、空調装置1が運転を開始したか否かを判定する。ステップSA8でYESと判定されれば、ステップSA9に進む。ステップSA8でNOと判定されれば、空調装置1が運転を開始するまで待つ。
ステップSA9では上記した低外気時暖房運転モードで空調装置1を運転する。このとき、ステップSA7において冷媒を予め暖めていることにより、暖房の立ち上がりを早めることができる。また、低外気時暖房運転モードでは、上述の如く高温の空調風を生成して車室に供給できるので快適性を向上できる。
ステップSA9に続くステップSA10では、コンプレッサ100の吐出量を演算する。これは、制御装置Aのコンプレッサ吐出状態検出部126において行われる。
ステップSA10に続くステップSA11では、再び外気温TGを検出する。ステップSA11に続くステップSA12では、空調装置1がOFFとされたか否かを判定する。これは空調操作スイッチ41が乗員によりOFF操作されたか否かで判定することができる。ステップSA12でYESと判定されて空調装置1がOFFとされた場合には、ステップSA13に進んで運転を停止し、終了する。
ステップSA12でNOと判定されて空調装置1の運転を継続する場合には、ステップSA14に進んでステップSA3と同様な外気温判定を行う。外気温が−5℃よりも低い場合には、ステップSA9に戻って低外気時暖房運転モードでの運転を継続し、−5℃以上0℃以下の場合には、ステップSA15に進み、0℃よりも高い場合には、後述するステップSA18に進む。
ステップSA15では、ステップSA10と同様にコンプレッサ100の吐出量を演算する。ステップSA15に続くステップSA16では、外気温が−5℃以上0℃以下であるため、上記した通常暖房運転モードで空調装置1を運転する。そして、図11に示す着霜判定及び除霜制御フローに進む。この着霜判定及び除霜制御フローについては後述する。
一方、図10に示すフローチャートのステップSA3において外気温が−5℃以上0℃以下と判定されて進んだステップSA5では、ステップSA8と同様に空調装置1が運転を開始したか否かを判定する。ステップSA5でYESと判定されれば、ステップSA17に進む。ステップSA5でNOと判定されれば、空調装置1が運転を開始するまで待つ。
ステップSA5でYESと判定されて進んだステップSA17では、上記した通常暖房運転モードで空調装置1を運転する。その後、上記ステップSA11、SA12へと進み、ステップSA12でYESと判定された場合にはステップSA13に進み空調装置1の運転を停止する。一方、ステップSA12でONと判定されれば、ステップSA14に進んで外気温判定を行い、外気温が−5℃よりも低い場合には、ステップSA9に戻って低外気時暖房運転モードで運転を継続し、−5℃以上0℃以下の場合には、ステップSA15、SA16に進んで通常暖房運転モードで運転を継続し、0℃よりも高い場合には、後述するステップSA18に進む。
また、ステップSA3において外気温が0℃よりも高いと判定されて進んだステップSA6では、空調装置1が運転を開始したか否かを判定する。ステップSA6でYESと判定されれば、ステップSA18に進む。ステップSA6でNOと判定されれば、空調装置1が運転を開始するまで待つ。
ステップSA6でYESと判定されて進んだステップSA18では、上記した冷房運転モードで空調装置1を運転する。その後、ステップSA19に進んで上記ステップSA10と同様にコンプレッサ100の吐出量を演算する。その後、ステップSA11、SA12へと進み、ステップSA12でYESと判定された場合にはステップSA13に進み空調装置1の運転を停止する。一方、ステップSA12でONと判定されれば、ステップSA14に進んで外気温判定を行い、外気温が−5℃よりも低い場合には、ステップSA9に戻って低外気時暖房運転モードによる運転を継続し、−5℃以上0℃以下の場合には、ステップSA15、SA16に進んで通常暖房運転モードによる運転を継続し、0℃よりも高い場合には、ステップSA18に進んで冷房運転モードで運転する。
次に、着霜判定及び除霜制御について図11に示すフローチャートに基づいて説明する。着霜判定及び除霜制御は、上記したステップSA16を経て行われるものである。
スタート後のステップSB1では、各センサ109c、109d、112〜117、121の出力信号を取り込む。その後のステップSB2では車室外熱交換器109が着霜状態であるか否かを推定する。
ステップSB2における推定手順について具体的に説明する。まず、車室外熱交換器109の表面温度検出センサ109dの出力信号に基づいて車室外熱交換器109の表面温度を得る。車室外熱交換器109の表面温度が氷点下近傍で着霜しやすい温度にあるときに、車室外熱交換器109が着霜状態であると推定する。着霜しやすい温度とは、例えば、−3℃以下である。また、車室外熱交換器109の表面温度が着霜しやすい温度となっってから所定時間経過した時点で、車室外熱交換器109が着霜状態であると推定するのが好ましい。また、車室外熱交換器109が着霜状態を推定する際、外気温や空調装置1の運転状態を考慮するようにしてもよい。
尚、表面温度検出センサ109dは、車室外熱交換器109の表面の温度を直接検出するように配設してもよいし、車室外熱交換器109の近傍に配設して表面温度を間接的に検出するようにしてもよい。
また、ステップSB2においては、車室外熱交換器109の表面温度の変化度合いを検出し、その検出結果に基づいて着霜状態であると推定するようにしてもよい。すなわち、車室外熱交換器109の表面温度の低下度合いが所定以上(例えば、毎分5℃以上の低下速度)の場合には、車室外熱交換器109の表面に霜が形成されやすい状況であるため、このことが検出された場合に車室外熱交換器109が着霜状態であると推定する。
また、ステップSB2においては、車室外熱交換器109を流動する冷媒の圧力を冷媒圧力センサ109cにより得て、この圧力が所定値以下であるときに、車室外熱交換器109が着霜状態であると推定するようにしてもよい。すなわち、車室外熱交換器109に着霜が始まると伝熱面積が減少して吸熱量が低下し、その結果、冷媒温度(蒸発圧力)が低下し、この冷媒温度の低下により着霜が進行していく。従って、着霜が進行するほど、車室外熱交換器109を流動する冷媒の圧力が低下していくことになり、この圧力値に基づいて着霜状態であるか否かを的確に推定することが可能になる。所定値の設定方法としては、車室外熱交換器109に着霜がないときの圧力値を測定しておき、この圧力値の例えば20%程度低い値を所定値とすればよい。
また、ステップSB2においては、車室外熱交換器109を流動する冷媒の圧力の変化度合いを検出し、その検出結果に基づいて着霜状態であると推定するようにしてもよい。車室外熱交換器109を流動する冷媒の圧力の低下度合いが大きいということは、着霜が進行しているということであり、この圧力の変化速度に基づいて着霜状態であるか否かを的確に推定することが可能になる。
尚、ステップSB2においては、車室外熱交換器109の表面温度及び車室外熱交換器109を流動する冷媒の圧力の両方に基づいて車室外熱交換器109が着霜状態であるか否か推定するようにしてもよい。
ステップSB2でYESと判定されて車室外熱交換器109が着霜状態であると推定された場合には、ステップSB3に進み、一方、ステップSB2でNOと判定されて車室外熱交換器109が着霜状態でないと推定された場合には、図10に示すフローチャートのステップSA11に戻り、通常暖房運転モードによる運転が継続される。
ステップSB2でYESと判定されて進んだステップSB3では、コンプレッサ100の吐出量を演算する。吐出量は、基本的には、図10に示すフローチャートのステップSA15で演算した量よりも多くする。また、吐出量は、外気温度が低いほど多くし、室内ファン5による送風量が多いほど多くし、内気温度が低いほど多くする。例えば、外気温度が−10℃よりも低いと、−10℃以上の場合に比べて吐出量を多くし、また、送風量が最大風量と最小風量との中央の量よりも多いと、それ以下の場合に比べて吐出量を多くする。また、ステップSA15で演算したコンプレッサ100の吐出量が最大吐出量と最小吐出量との中央の量よりも多いと、それ以下の場合に比べて吐出量を多くする。
その後、ステップSB4では、冷媒加熱器105の加熱量を演算する。ステップSB4の加熱量は、外気温度が低いほど多くし、ステップSB3で演算したコンプレッサ100の吐出量が多いほど多くし、室内ファン5による送風量が多いほど多くする。また、加熱量は、内気温度が低いほど多くする。例えば、外気温度が−10℃よりも低いと、−10℃以上の場合に比べて加熱量を多くし、また、送風量が最大風量と最小風量との中央の量よりも多いと、それ以下の場合に比べて加熱量を多くする。また、ステップSA15で演算したコンプレッサ100の吐出量が最大吐出量と最小吐出量との中央の量よりも多いと、それ以下の場合に比べて加熱量を多くする。
ステップSB4に続くステップSB5では、冷媒加熱器105をONにする。このとき冷媒加熱器105に供給する電力は、ステップSB4で演算した加熱量となるように設定する。ステップSB5に続くステップSB6では、コンプレッサ100の吐出量を、ステップSB3で演算した吐出量となるように増加させる。
ステップSB6に続くステップSB7では、コンプレッサ100の吸入側の冷媒がスーパーヒート状態となるように冷媒加熱器105の加熱量を制御するスーパーヒート制御を行う。ステップSB7では、まず、コンプレッサ100の吸入側の冷媒の圧力及び温度を吸入冷媒圧センサ112及び吸入冷媒温度センサ113により得て、これら検出結果により吸入側の冷媒がスーパーヒート状態にあるか否かを得る。そして、コンプレッサ100の吸入側の冷媒がスーパーヒート状態となるように、冷媒加熱器105の加熱量を補正し、それに見合うように供給電力量を制御する。これにより、コンプレッサ100の液圧縮が防止される。
ステップSB7に続くステップSB8では、車室内の空気と車室外の空気との導入割合を演算する。ステップSB8では、基本的には、車室内の空気の導入割合を増加させる。また、ステップSB8では、車室外湿度センサ115及び車室内湿度センサ116の出力信号に基づいて車室外の湿度及び車室内の湿度を得る。そして、湿度の差が大きい場合には、湿度が低い方の空気の導入割合が多くなるように導入割合を補正する。尚、ステップSB8では、外気温センサ114及び内気温センサ121の出力信号に基づいて車室外の温度及び車室内の温度を得て、温度の高い方の空気の導入割合を多くするように補正してもよい。
ステップSB8に続くステップSB9では、ステップSB8で演算された導入割合となるように内外気切替用アクチュエータ4aを制御して内外気切替ダンパ4を動かす。
ステップSB9に続くステップSB10では、上記した除霜運転モードで空調装置1を運転する。除霜運転モードでは、コンプレッサ100から吐出された冷媒が車室外熱交換器109に流入することにより霜が解ける。さらに、冷媒加熱器105により冷媒が加熱されていることにより、コンプレッサ100から吐出される冷媒の温度及び圧力を十分に高めることが可能になるので、上流側車室内熱交換器10及び下流側車室内熱交換器11に高温冷媒が供給されて十分な暖房能力が得られる。
ステップSB10に続くステップSB11では、室外ファンモータ109bをOFFにする。これにより、車室外の冷気が車室外熱交換器109に積極的に送風されなくなるので、霜を早く解かすことが可能になる。
ステップSB11に続くステップSB12では、除霜終了の所定時間前であるか否かを判定する。すなわち、除霜終了予定時間が予め設定されており、この時間と除霜運転を開始した時刻とに基づいて除霜終了の所定時間前であるか否かを判定できる。除霜終了予定時間は、運転状態に関わらず一定時間としてもよいし、例えば外気温度に応じて変更するようにしてよい。この場合の所定時間とは例えば数分程度が好ましい。
ステップSB12でNOと判定されれば、除霜終了の所定時間前となるまで待つ。一方、ステップSB12でYESと判定されて進んだステップSB13では、冷媒加熱器105をOFFにする。冷媒加熱器105をOFFにしてもしばらくの間は予熱を利用して冷媒を加熱することが可能である。
ステップSB13に続くステップSB14では、除霜が終了したか否かを判定する。除霜が終了したタイミングとしては、車室外熱交換器109の表面温度が0℃以上に上昇して所定時間経過した時点としてもよいし、除霜運転を開始して一定時間が経過した時点としてもよい。
ステップSB14でYESと判定されて進んだステップSB15では、室外ファンモータ109bをONにする。これにより、車外熱交換器109に付着している水が風により吹き飛ばされるので、再着霜が抑制される。
一方、ステップSB14でNOと判定されて進んだステップSB16では、空調装置1から吹き出す空調風の温度が目標温度に達しているか否かを判定する。空調風の温度は、ケーシング3内に温度センサ(図示せず)を設けておくことで得ることができる。また、目標温度は、乗員による空調操作スイッチ41による温度設定と、内気温センサ121及び外気温センサ114等により設定される。
ステップSB16でYESと判定されて空調風の温度が目標温度に達していない場合には、ステップSB17に進む。ステップSB17では、上記低外気時暖房運転モードで空調装置1を運転するので、冷媒加熱器105がONにされる。これにより、空調風の温度が高まって目標温度に近づいていき、乗員が不快感を感じ難くなる。
ステップSB17に続くステップSB18では、空調風の温度が目標温度に達したか否かを判定する。ステップSB18でYESと判定されて空調風の温度が目標温度に達した場合には、ステップSB14に戻る。ステップSB18でNOと判定されれば、ステップSB17に戻り、低外気時暖房運転モードによる運転を継続する。
以上説明したように、この実施形態に係る車両用空調装置1によれば、大気からの吸熱量が十分に得られない極寒季に冷媒加熱器105が作動して冷媒が加熱されるので、車室内熱交換器10、11に高温冷媒が供給されるようになる。一方、大気からの吸熱量が十分に得られる場合には、冷媒加熱器105を非作動状態にするので、エネルギの消費量を低減される。これにより、エネルギの消費量を低減しながら、極寒季に必要な暖房能力を得て車室内の空調環境を向上できる。
また、制御装置Aは、冷媒加熱器105を作動状態とするときに車室外熱交換器109に冷媒が流れなくなるので、冷媒加熱器105による加熱する冷媒の量を多くでき、暖房能力を高めることができる。
また、暖房モードとする前に冷媒加熱器105を作動状態とすることで、暖房の立ち上がりが早くなり、乗員の快適性を向上できる。
また、外気温度に基づいて冷媒加熱器105による加熱量を変更できるので、無駄なエネルギの消費を抑制しながら、必要時には高い暖房能力を確保して快適性を高めることができる。
尚、上記実施形態では、室内ファン5を上流側及び下流側熱交換器10、11と同じケーシング3に収容するようにしているが、ケーシング3には上流側及び下流側熱交換器10、11を収容する一方、室内ファンを別のケーシング(図示せず)に収容するように構成してもよい。
また、上記実施形態では、冷媒加熱器102を電気式ヒーターで構成したが、これに限らず、温水による加熱器、車両エンジンの排気ガスによる加熱器であってもよい。
また、本発明に係る車両用空調装置1は、電気自動車やハイブリッド自動車以外の車両に搭載することも可能である。