以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる車両用空調装置1の概略構成図である。車両用空調装置1が搭載された車両は、走行用蓄電池及び走行用モーターを備えた電気自動車である。
車両用空調装置1は、ヒートポンプ装置20と、車室内空調ユニット21と、ヒートポンプ装置20及び車室内空調ユニット21を制御する空調制御装置22(図2に示す)とを備えている。
ヒートポンプ装置20は、冷媒を圧縮する電動コンプレッサ(圧縮機)30と、車室内に配設される下流側車室内熱交換器31と、車室内において下流側車室内熱交換器31の空気流れ方向上流側に配設される上流側車室内熱交換器32と、車室外に配設される車室外熱交換器33と、アキュムレータ34と、これら機器30〜34を接続する主冷媒配管40〜43と、低温冷媒専用配管42aと、高温冷媒専用配管44と、第1及び第2分岐冷媒配管45、46とを備えている。
電動コンプレッサ30は、従来から周知の車載用のものであり、電動モーターによって駆動される。電動コンプレッサ30の回転数を変更することによって単位時間当たりの吐出量を変化させることができる。電動コンプレッサ30は、空調制御装置22に接続されてON及びOFFの切り替えと、回転数が制御されるようになっている。電動コンプレッサ30には、走行用蓄電池から電力が供給される。
下流側車室内熱交換器31は、図3に示すように、上側ヘッダタンク47と、下側ヘッダタンク48と、コア49とを備えている。コア49は、上下方向に延びるチューブ49aとフィン49bとを交互に左右方向(図3の左右方向)に配列して一体化したものであり、空調用空気がチューブ49a間を通過するようになっている。空調用空気の流れ方向を白抜きの矢印で示している。チューブ49aは、空気流れ方向に2列並んでいる。
空気流れ上流側のチューブ49a及び下流側のチューブ49aの上端部は、上側ヘッダタンク47に接続されて連通している。上側ヘッダタンク47の内部には、該上側ヘッダタンク47を空気流れ方向上流側と下流側とに仕切る第1仕切部47aが設けられている。第1仕切部47aよりも空気流れ方向上流側の空間が上流側のチューブ49aの上端に連通し、第1仕切部47aよりも空気流れ方向下流側の空間が下流側のチューブ49aの上端に連通している。
また、上側ヘッダタンク47の内部には、該上側ヘッダタンク47を左右方向に仕切る第2仕切部47bが設けられている。第1仕切部47aにおける第2仕切部47bよりも右側には、連通孔47eが形成されている。
上側ヘッダタンク47の左側面の空気流れ下流側には冷媒の流入口47cが形成され、また、上流側には冷媒の流出口47dが形成されている。
下側ヘッダタンク48の内部には、上側ヘッダタンク47の第1仕切部47aと同様に、空気流れ方向上流側と下流側とに仕切る仕切部48aが設けられている。仕切部48aよりも空気流れ方向上流側の空間が上流側のチューブ49aの下端に連通し、仕切部48aよりも空気流れ方向下流側の空間が下流側のチューブ49aの下端に連通している。
この下流側車室内熱交換器31は、上記のように構成したことで合計4つのパスを有している。すなわち、流入口47cから流入した冷媒は、まず、上側ヘッダタンク47の第1仕切部47aよりも空気流れ方向下流側で、かつ、第2仕切部47bよりも左側の空間R1に流入し、空間R1に連通するチューブ49a内を下へ向かって流れる。
その後、下側ヘッダタンク48の仕切部48aよりも空気流れ方向下流側の空間S1に流入して右側へ流れてチューブ49a内を上へ向かって流れた後、上側ヘッダタンク47の第1仕切部47aよりも空気流れ方向下流側で、かつ、第2仕切部47bよりも右側の空間R2に流入する。
次いで、空間R2内の冷媒は第1仕切部47aの連通孔47eを通り、上側ヘッダタンク47の第1仕切部47aよりも空気流れ方向上流側で、かつ、第2仕切部47bよりも右側の空間R3に流入し、空間R3に連通するチューブ49a内を下へ向かって流れる。
しかる後、下側ヘッダタンク48の仕切部48aよりも空気流れ方向上流側の空間S2に流入して左側へ流れてチューブ49a内を上へ向かって流れた後、上側ヘッダタンク47の第1仕切部47aよりも空気流れ方向上流側で、かつ、第2仕切部47bよりも左側の空間R4に流入し、流出口47dから外部へ流出する。
上流側車室内熱交換器32は、大きさが下流側車室内熱交換器31よりも大きいだけであり、下流側車室内熱交換器31と同様な構造を有しているので詳細な説明は省略する。
車室外熱交換器33は、車両の前部に設けられたモータルーム(エンジン駆動車両におけるエンジンルームに相当)において該モータルームの前端近傍に配設され、走行風が当たるようになっている。車室外熱交換器33は、図4に示すように、上側ヘッダタンク57と、下側ヘッダタンク58と、コア59とを備えている。コア59は、上下方向に延びるチューブ59aとフィン59bとを交互に左右方向に配列して一体化したものであり、空調用空気がチューブ59a間を通過するようになっている。
チューブ59aの上端部は上側ヘッダタンク57に接続されて連通している。また、チューブ59aの下端部は下側ヘッダタンク58に接続されて連通している。
下側ヘッダタンク58の内部には、該下側ヘッダタンク58の内部を左右方向一側と他側とに仕切るための仕切部58aが設けられている。下側ヘッダタンク58の左側には冷媒が流入する流入管58bが設けられ、右側には冷媒が流出する流出管58cが設けられている。
従って、この車室外熱交換器33では、流入管58bから流入した冷媒は、下側ヘッダタンク58の仕切部58aよりも左側の空間T1に流入した後、該空間T1に連通するチューブ59aを上へ向かって流れた後、上側ヘッダタンク57に流入して右側へ流れてからチューブ59aを下へ向かって流れる。その後、下側ヘッダタンク58の仕切部58aよりも右側の空間T2に流入した後、流出管58cから外部へ流出する。
図1に示すように、車両にはクーリングファン37が設けられている。このクーリングファン37は、ファンモーター38によって駆動され、車室外熱交換器33に空気を送風するように構成されている。ファンモーター38は、空調制御装置22に接続されてON及びOFFの切り替えと、回転数が制御されるようになっている。ファンモーター38にも走行用蓄電池から電力が供給される。尚、クーリングファン37は、例えば走行用インバータ等を冷却するためのラジエータに空気を送風することもできるものであり、空調の要求時以外にも作動させることが可能である。
アキュムレータ34は、主冷媒配管43の中途部において電動コンプレッサ30の吸入口近傍に配設されている。
一方、主冷媒配管40は、電動コンプレッサ30の吐出口と下流側車室内熱交換器31の冷媒流入口とを接続するものである。また、主冷媒配管41は、下流側車室内熱交換器31の冷媒流出口と車室外熱交換器33の冷媒流入口とを接続するものである。
主冷媒配管42は、車室外熱交換器33の冷媒流出口と上流側車室内熱交換器32の冷媒流入口とを接続するものである。主冷媒配管43は、上流側車室内熱交換器32の冷媒流出口と電動コンプレッサ30の吸入口とを接続するものである。
また、第1分岐冷媒配管45は、主冷媒配管41から分岐しており、主冷媒配管43に接続されている。第2分岐冷媒配管46は、主冷媒配管42の低温冷媒専用配管42aよりも車室外熱交換器33側から分岐しており、主冷媒配管43に接続されている。
高温冷媒専用配管44は、主冷媒配管41から分岐しており、上流側車室内熱交換器32の一部を構成する流入配管に対し接続部材(図示せず)を介して接続されている。高温冷媒専用配管44は、高温冷媒(高圧冷媒)のみを上流側車室内熱交換器32に供給するための配管である。
また、高温冷媒専用配管44は、上記のように下流側車室内熱交換器31の冷媒出口側に接続された主冷媒配管41から分岐して上流側車室内熱交換器32の流入配管に接続されているので、下流側車室内熱交換器31の冷媒出口側と上流側車室内熱交換器32の冷媒入口側とを接続する接続配管を構成している。
低温冷媒専用配管42aは、主冷媒配管42における上流側車室内熱交換器32側の部分で構成されており、低温冷媒(低圧冷媒)のみを上流側車室内熱交換器32に供給するための配管である。
また、ヒートポンプ装置20は、高圧側流路切替装置50、低圧側流路切替弁51、第1膨張弁52、第2膨張弁53、第1逆止弁54及び第2逆止弁55を備えている。
高圧側流路切替装置50は、冷媒入口部50aと、暖房側冷媒出口部50bと、非暖房側冷媒出口部50cと、切替弁50dと、制御弁50eを有している。冷媒入口部50aは、下流側車室内熱交換器31の流出口47d(図3に示す)に接続され、該下流側車室内熱交換器31からの冷媒が流入するようになっている。暖房側冷媒出口部50bは、上流側車室内熱交換器32の冷媒流入口に対して高温冷媒専用配管44を介して接続され、該上流側車室内熱交換器32に冷媒を流入させるようになっている。非暖房側冷媒出口部50cは、ヒートポンプ装置20における上流側車室内熱交換器32以外の部分、具体的には、第1膨張弁52よりも冷媒流れ方向上流側に接続されて冷媒を当該部分に流入させるようになっている。
高圧側流路切替装置50の切替弁50dは、上流側車室内熱交換器32の冷媒入口側の冷媒圧力によって作動する機械式弁で構成されている。切替弁50dは、上流側車室内熱交換器32の冷媒入口側の冷媒圧力が所定圧力未満であるときには、冷媒入口部50aと非暖房側冷媒出口部50cとの連通を遮断する一方、上流側車室内熱交換器32の冷媒入口側の冷媒圧力が所定圧力になると、冷媒入口部50aと非暖房側冷媒出口部50cとを連通させて冷媒を非暖房側冷媒出口部50cに流すように開閉動作する。上流側車室内熱交換器32の冷媒入口側の冷媒圧力は、上流側車室内熱交換器32の内圧とほぼ等しいので、上記の切替弁50dの動作により、上流側車室内熱交換器32の内圧が所定圧力を越えるのを抑制することが可能になる。
上記所定圧力とは、切替弁50dのない従来のヒートポンプ装置の上流側車室内熱交換器の最大内圧よりも、本実施形態の上流側車室内熱交換器32の最大内圧の方が低くなるように設定された圧力である。
尚、電気的に制御信号を送信しなくても冷媒圧力によって自動的に開閉動作する機械式弁は周知のものであるので、切替弁50dの詳細構造の説明は省略する。
高圧側流路切替装置50の制御弁50eは、電動タイプの三方弁で構成されており、空調制御装置22によって制御され、冷媒入口部50aと暖房側冷媒出口部50bとを連通させる状態と、冷媒入口部50aと非暖房側冷媒出口部50cとを連通させる状態とに切り替えられる。
低圧側流路切替弁51は電動タイプの三方弁で構成されており、空調制御装置22によって制御される。低圧側流路切替弁51は、主冷媒配管43の中途部に設けられており、第2分岐冷媒配管46が接続されている。
第1膨張弁52及び第2膨張弁53は、電動タイプのものであり、流路を絞って冷媒を膨張させる膨張状態と、流路を開放して冷媒を膨張させずに流す非膨張状態とに切り替えられるようになっている。第1膨張弁52及び第2膨張弁53は空調制御装置22によって制御される。膨張状態では、空調負荷の状態に応じて開度が設定される。
第1膨張弁52は、主冷媒配管41の高圧側流路切替装置50よりも車室外熱交換器33側に配設されている。第2膨張弁53は、主冷媒配管42の中途部に配設されている。低温冷媒専用配管42aは、主冷媒配管42における第2膨張弁53から上流側車室内熱交換器32の流入配管までの部位である。
第1逆止弁54は、低温冷媒専用配管42aの中途部に配設されており、低温冷媒専用配管42aの車室外熱交換器33側から上流側車室内熱交換器32側へ向けての冷媒を流れを許容し、逆方向への冷媒の流れを阻止するように構成されている。
第2逆止弁55は、第1分岐冷媒配管45の中途部に配設されており、第1分岐冷媒配管45の主冷媒配管43側から主冷媒配管41側へ向けての冷媒を流れを許容し、逆方向への冷媒の流れを阻止するように構成されている。
また、車室内空調ユニット21は、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32を収容するケーシング60と、ケーシング60に収容される空気加熱器61と、エアミックスドア(温度調節ドア)62と、エアミックスドア62を駆動するエアミックスドアアクチュエータ63と、吹出モード切替ドア64と、送風機65とを備えている。
送風機65は、車室内の空気(内気)と車室外の空気(外気)との一方を選択してケーシング60内に空調用空気として送風するためのものである。送風機65は、シロッコファン65aと、シロッコファン65aを回転駆動する送風モーター65bとを備えている。送風モーター65bは、空調制御装置22に接続されてON及びOFFの切り替えと、回転数が制御されるようになっている。送風モーター65bにも走行用蓄電池から電力が供給される。
ケーシング60は、車室内においてインストルメントパネル(図示せず)の内部に配設されている。ケーシング60には、デフロスタ吹出口60a、ベント吹出口60b及びヒート吹出口60cが形成されている。これら吹出口60a〜60cはそれぞれ吹出モード切替ドア64によって開閉される。吹出モード切替ドア64は、図示しないが、空調制御装置22に接続されたアクチュエータによって動作するようになっている。吹出モードとしては、例えば、デフロスタ吹出口60aに空調風を流すデフロスタモード、ベント吹出口60bに空調風を流すベントモード、ヒート吹出口60cに空調風を流すヒートモード、デフロスタ吹出口60a及びヒート吹出口60cに空調風を流すデフ/ヒートモード、ベント吹出口60b及びヒート吹出口60cに空調風を流すバイレベルモード等である。
ケーシング60内に導入された空調用空気は、全量が上流側車室内熱交換器32を通過するようになっている。
エアミックスドア62は、ケーシング60内において、上流側車室内熱交換器32と下流側車室内熱交換器31との間に収容されている。エアミックスドア62は、上流側車室内熱交換器32を通過した空気のうち、下流側車室内熱交換器31を通過する空気量を変更することによって、上流側車室内熱交換器32を通過した空気と、下流側車室内熱交換器31を通過した空気との混合割合を決定して吹出空気の温度調節を行うためのものである。
ケーシング60における下流側車室内熱交換器31の下流側には、上記空気加熱器61が収容されている。空気加熱器61は、例えば電流を流すことによって発熱するPTC素子を用いたPTCヒータで構成することができる。空気加熱器61は空調制御装置22に接続され、ON及びOFFの切り替えと、発熱量(電力供給量)が制御されるようになっている。空気加熱器61にも走行用蓄電池から電力が供給される。
さらに、車両用空調装置1は、外気温度センサ70と、車室外熱交換器温度センサ71と、高圧側冷媒圧力検出センサ72と、上流側車室内熱交換器温度検出センサ73と、下流側車室内熱交換器温度検出センサ74と、吹出空気温度センサ75とを備えている。これらセンサ70〜75は空調制御装置22に接続されている。
外気温度センサ70は、車室外熱交換器33よりも空気流れ方向上流側に配設されており、車室外熱交換器33に流入する前の外部空気の温度(外気温度TG)を検出するためのものである。車室外熱交換器温度センサ71は、車室外熱交換器33の空気流れ方向下流側の面に配設されており、車室外熱交換器33の表面温度を検出するためのものである。
高圧側冷媒圧力検出センサ72は、主冷媒配管40における電動コンプレッサ30の吐出口側に配設されており、ヒートポンプ装置20の高圧側の冷媒圧力を検出するためのものである。
上流側車室内熱交換器温度検出センサ73は、上流側車室内熱交換器32の空気流れ方向下流側に配設されており、上流側車室内熱交換器32の表面温度を検出するためのものである。下流側車室内熱交換器温度検出センサ74は、下流側車室内熱交換器31の空気流れ方向下流側に配設されており、下流側車室内熱交換器31の表面温度を検出するためのものである。
吹出空気温度センサ75は、ケーシング60から吹き出す吹出空気の温度を検出するためのものであり、車室の所定箇所に配設されている。
空調制御装置22は、例えば、乗員による設定温度や外気温、車室内温度、日射量等の情報に基づいてヒートポンプ装置20の運転モードを設定し、送風機65の風量やエアミックスドア62の開度を設定する。そして、その設定した運転モードとなるようにヒートポンプ装置20を制御し、さらに、設定風量となるように送風機65を制御し、エアミックスドア62が設定開度となるようにエアミックスドアアクチュエータ63を制御するものであり、周知の中央演算装置やROM、RAM等によって構成されている。また、空調の負荷に応じて電動コンプレッサ30やファンモーター38を制御し、また、必要に応じて空気加熱器61も制御する。
空調制御装置22は、通常のオートエアコン制御と同様に、後述するメインルーチンにおいて、ヒートポンプ装置20の運転モードの切り替え、送風機65の風量、エアミックスドア62の開度、吹出モードの切り替え、電動コンプレッサ30、送風モーター65bの制御を行い、例えば、ファンモーター38は、基本的には電動コンプレッサ30の作動中には作動するが、電動コンプレッサ30が停止状態であっても、走行用インバーター等の冷却が必要な場合には作動するようになっている。
ヒートポンプ装置20の運転モードは、暖房運転モード、除湿暖房運転モード、冷房運転モード、極低外気時除霜運転モード、低外気時除霜運転モードの5種類ある。
暖房運転モードは、例えば外気温度が0℃よりも低い場合(極低外気時)に選択される運転モードである。暖房運転モードでは、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32を放熱器とし、車室外熱交換器33を吸熱器として作用させる。
すなわち、図5に示すように、高圧側流路切替装置50は、下流側車室内熱交換器31から流出した冷媒を上流側車室内熱交換器32の流入口に流入させるように流路を切り替える。また、低圧側流路切替弁51は、車室外熱交換器33から流出した冷媒をアキュムレータ34に流入させるように流路を切り替える。第1膨張弁52は膨張状態にし、第2膨張弁53は非膨張状態にする。
また、電動コンプレッサ30を作動させる前は、上流側車室内熱交換器32の冷媒入口側の冷媒圧力が所定圧力未満であるので、高圧側流路切替装置50の切替弁50dは、その冷媒圧力によって自動的に動作して冷媒入口部50aと非暖房側冷媒出口部50cとの連通を遮断する。また、高圧側流路切替装置50の制御弁50eは、冷媒入口部50aと暖房側冷媒出口部50bとを連通させるように動作する。
この状態で電動コンプレッサ30を作動させると、電動コンプレッサ30から吐出された高圧冷媒が主冷媒配管40を流れて下流側車室内熱交換器31に流入し、下流側車室内熱交換器31を循環する。下流側車室内熱交換器31を循環した冷媒は、主冷媒配管41から高圧側流路切替装置50を経て高温冷媒専用配管44に流入する。その後、上流側車室内熱交換器32の流入配管を流れて上流側車室内熱交換器32に流入し、上流側車室内熱交換器32を循環する。
つまり、暖房運転モードでは、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32に高温状態の冷媒が流入するので、空調用空気は、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32の両方によって加熱されることになり、よって、高い暖房能力が得られる。
暖房運転モードにおいて上流側車室内熱交換器32の冷媒入口側の冷媒圧力が高まって所定圧力になると、高圧側流路切替装置50の切替弁50dは、その冷媒圧力によって自動的に動作して冷媒入口部50aと非暖房側冷媒出口部50cとを連通させる。冷媒入口部50aと非暖房側冷媒出口部50cとを連通させることにより、冷媒入口部50aに流入した冷媒の一部が、上流側車室内熱交換器32をバイパスして非暖房側冷媒出口部50cから第1膨張弁52の冷媒流れ方向上流側に供給される。
これにより、上流側車室内熱交換器32の内圧が所定圧力を越えないようにすることができるので、切替弁50dのない従来のヒートポンプ装置の上流側車室内熱交換器に比べて、本実施形態の上流側車室内熱交換器32の耐圧強度及び繰り返し加圧強度は低くて済む。
また、冷媒の一部のみを、上流側車室内熱交換器32をバイパスさせているので、上流側車室内熱交換器32には残りの高温冷媒を流通させておくことができる。これにより、上流側車室内熱交換器32の暖房能力を確保できる。
上流側車室内熱交換器32を循環した冷媒は、主冷媒配管43から第1分岐冷媒配管45を通って主冷媒配管41に流入する。主冷媒配管41に流入した冷媒は、第1膨張弁52を通過することで膨張し、車室外熱交換器33に流入する。車室外熱交換器33に流入した冷媒は、外部空気から吸熱する。
また、高圧側流路切替装置50の切替弁50dの動作によって上流側車室内熱交換器32をバイパスした冷媒は第1膨張弁52に直接的に供給されることになるので、車室外熱交換器33による吸熱量が十分に確保される。
車室外熱交換器33を流出した冷媒は、主冷媒配管42、第2分岐冷媒配管46を順に通ってアキュムレータ34を経て電動コンプレッサ30に吸入される。
図6に示すように、除湿暖房運転モードは、例えば外気温度が0℃以上25℃以下の場合に選択される運転モードである。除湿暖房運転モードでは、下流側車室内熱交換器31を放熱器とし、上流側車室内熱交換器32及び車室外熱交換器33を吸熱器として作用させる。
すなわち、高圧側流路切替装置50の制御弁50eは、下流側車室内熱交換器31から流出した冷媒を上流側車室内熱交換器32の流入口に流入しないように、第1膨張弁52側へ流すように流路を切り替える。また、低圧側流路切替弁51は、上流側車室内熱交換器32から流出した冷媒をアキュムレータ34に流入させるように流路を切り替える。第1膨張弁52は膨張状態にし、第2膨張弁53は非膨張状態にする。
この状態で電動コンプレッサ30を作動させると、電動コンプレッサ30から吐出された高圧冷媒が主冷媒配管40を流れて下流側車室内熱交換器31に流入し、下流側車室内熱交換器31を循環する。下流側車室内熱交換器31を循環した冷媒は、主冷媒配管41を通って第1膨張弁52を通過することで膨張し、車室外熱交換器33に流入する。車室外熱交換器33に流入した冷媒は、外部空気から吸熱して主冷媒配管42、低温冷媒専用配管42aを順に流れて上流側車室内熱交換器32に流入し、上流側車室内熱交換器32を循環して空調用空気から吸熱する。上流側車室内熱交換器32を循環した冷媒は、主冷媒配管43を通ってアキュムレータ34を経て電動コンプレッサ30に吸入される。
図7に示すように、冷房運転モードは、例えば外気温度が25℃よりも高い場合に選択される運転モードである。冷房運転モードでは、下流側車室内熱交換器31を放熱器とし、上流側車室内熱交換器32を吸熱器とし、車室外熱交換器33を放熱器として作用させる。
すなわち、高圧側流路切替装置50は、下流側車室内熱交換器31から流出した冷媒を上流側車室内熱交換器32の流入口に流入しないように、第1膨張弁52側へ流すように流路を切り替える。また、低圧側流路切替弁51は、上流側車室内熱交換器32から流出した冷媒をアキュムレータ34に流入させるように流路を切り替える。第1膨張弁52は非膨張状態にし、第2膨張弁53は膨張状態にする。
この状態で電動コンプレッサ30を作動させると、電動コンプレッサ30から吐出された高圧冷媒が主冷媒配管40を流れて下流側車室内熱交換器31に流入し、下流側車室内熱交換器31を循環する。下流側車室内熱交換器31を循環した冷媒は、主冷媒配管41を通って膨張することなく、車室外熱交換器33に流入する。車室外熱交換器33に流入した冷媒は放熱して主冷媒配管42を通って第2膨張弁53を通過することで膨張する。そして、低温冷媒専用配管42aを通って上流側車室内熱交換器32に流入する。このように、冷房運転モード時には上流側車室内熱交換器32に低圧の冷媒が流入するので、上流側車室内熱交換器32の耐圧強度及び繰り返し加圧強度が低くて済む。
上流側車室内熱交換器32に流入した冷媒は、上流側車室内熱交換器32を循環して空調用空気から吸熱する。上流側車室内熱交換器32を循環した冷媒は、主冷媒配管43を通ってアキュムレータ34を経て電動コンプレッサ30に吸入される。
図8に示すように、極低外気時除霜運転モードは、暖房運転モード時に車室外熱交換器33に霜が付着した場合に選択される運転モードである。暖房運転モードでは、上述のように下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32が放熱器となっている。極低外気時除霜運転モードでは、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32を放熱器としたまま、車室外熱交換器33に電動コンプレッサ30から吐出した高圧冷媒を導く。
すなわち、高圧側流路切替装置50及び低圧側流路切替弁51は、暖房運転モードと同じ状態にしておき、第1膨張弁52を非膨張状態にし、第2膨張弁53を膨張状態にする。
第1膨張弁52を非膨張状態にすることで、下流側車室内熱交換器31から流出した高温の冷媒はそのまま車室外熱交換器33に流入することになるので、車室外熱交換器33の表面温度が上昇して霜が溶ける。
図9に示すように、低外気時除霜運転モードは、除湿暖房運転モード時に車室外熱交換器33に霜が付着した場合に選択される運転モードである。除湿暖房運転モードでは、上述のように下流側車室内熱交換器31が放熱器となり、上流側車室内熱交換器32が吸熱器となっている。低外気時除霜運転モードでは、下流側車室内熱交換器31を放熱器とし、かつ、上流側車室内熱交換器32を吸熱器としたまま、車室外熱交換器33に電動コンプレッサ30から吐出した高圧冷媒を導く。
すなわち、高圧側流路切替装置50及び低圧側流路切替弁51は、除湿暖房運転モードと同じ状態にしておき、第1膨張弁52を非膨張状態にし、第2膨張弁53を膨張状態にする。
第1膨張弁52を非膨張状態にすることで、下流側車室内熱交換器31から流出した高温の冷媒はそのまま車室外熱交換器33に流入することになるので、車室外熱交換器33の表面温度が上昇して霜が溶ける。
暖房運転モード、除湿暖房運転モード、冷房運転モード、極低外気時除霜運転モード、低外気時除霜運転モードのいずれの運転モードであっても、下流側車室内熱交換器31は放熱器として作用する。
従って、いずれの運転モードであっても下流側車室内熱交換器31から流出する冷媒は高温冷媒であり、高圧側流路切替装置50から高温冷媒専用配管44に流入する冷媒は高温冷媒となる。
また、いずれの運転モードであっても、主冷媒配管42の第2膨張弁53よりも上流側車室内熱交換器32側の低温冷媒専用配管42aには、低温冷媒が流れることになる。
また、いずれの運転モードであっても、車室外熱交換器33に対して冷媒を流入させる冷媒配管は主冷媒配管41であり、また、車室外熱交換器33から冷媒を流出させる冷媒配管は主冷媒配管42である。従って、車室外熱交換器33では、常に同一方向に冷媒が流れることなり、冷媒が逆方向にも流れる構成のヒートポンプ装置と比較した場合に、冷媒の分流性について同方向の分流性をのみを考慮した車室外熱交換器33とすればよく、車室外熱交換器33の熱交換性能を比較的容易に高めることができる。
また、いずれの運転モードであっても、下流側車室内熱交換器31の空気流れ方向下流側のチューブ49aに冷媒を流通させた後、上流側のチューブ49aに冷媒を流通させてから排出するようにできる。これにより、下流側車室内熱交換器31の冷媒の流れを外部空気の流れ方向と対向させる、対向流配置となるように下流側車室内熱交換器31を配置することができる。また、いずれの運転モードであっても、同様に、上流側車室内熱交換器32の空気流れ方向下流側のチューブ(図示せず)に冷媒を流通させた後、上流側のチューブ(図示せず)に冷媒を流通させてから排出するようにできるので、上流側車室内熱交換器32も対向流配置が可能となる。
下流側車室内熱交換器31を対向流配置とすることで、特に暖房モードにおいてより高温の冷媒が下流側車室内熱交換器31における空気流れ方向下流側を流れることになるので、効率よく暖房を行うことができ、暖房性能が向上する。
また、上流側車室内熱交換器32を対向流配置とすることで、特に冷房モードにおいてより低温の冷媒が上流側車室内熱交換器32における空気流れ方向下流側を流れることになるので、効率よく冷房を行うことができ、冷房性能が向上する。同様に、暖房運転モード時にも冷媒を対向流とすることができるので、暖房性能が向上する。
図2に示すように、空調制御装置22は、車室外熱交換器33に霜が付着しているか否かを判定する着霜判定部22aを有している。着霜判定部22aは、外気温度センサ70で検出された外気温度TGから、車室外熱交換器温度センサ71で検出された車室外熱交換器33の表面温度を差し引いて、その値が例えば20(℃)よりも大きな値である場合には、着霜していると判定する。すなわち、車室外熱交換器33に霜が付着していると、車室外熱交換器33において冷媒が吸熱できず、冷媒温度が上昇しないことを利用して着霜判定を行っている。従って、上記の20という値は、車室外熱交換器33が着霜しているか否かを判定できる値であればよく、他の値であってもよい。
次に、図10〜図12に基づいて空調制御装置22による制御手順を説明する。図10はメインルーチンを示すものである。スタート後のステップSA1では外気温度センサ70で検出された外気温度TGを読み込む。ステップSA1に続くステップSA2では、外気温度TGが0℃よりも低いか、0℃以上25℃以下であるか、25℃よりも高いか判定する。
ステップSA2で外気温度TGが0℃よりも低いと判定された場合には、ステップSA3に進み、ヒートポンプ装置20を暖房運転モードに切り替えてメインルーチンのエンドに進む。暖房運転モードでは、車室内空調ユニット21の吹出モードは主にヒートモードが選択される。また、吹出空気の温度が目標温度となるように、エアミックスドア62を動作させる。
ステップSA2で外気温度TGが0℃以上25℃以下と判定された場合には、ステップSA4に進み、ヒートポンプ装置20を除湿暖房運転モードに切り替えてメインルーチンのエンドに進む。ステップSA2で外気温度TGが25℃よりも高いと判定された場合には、ステップSA5に進み、ヒートポンプ装置20を冷房運転モードに切り替えてメインルーチンのエンドに進む。
ステップSA3では、図11に示す暖房運転モード選択時のサブルーチン制御が行われる。この制御は、ステップSB1において車室外熱交換器33に霜が付着しているか否かを判定する。これは着霜判定部22aで行われ、外気温度TGから車室外熱交換器33の表面温度を差し引いたときの値が20よりも大きな値である場合には着霜していると判定してステップSB2に進む。一方、外気温度TGから車室外熱交換器33の表面温度を差し引いたときの値が20以下である場合には着霜していないと判定してメインルーチンに戻る。
ステップSB2では、極低外気時除霜運転モードに切り替える。電動コンプレッサ30は作動させたまま運転モードを切り替える。
暖房運転モード(図5に示す)から極低外気時除霜運転モード(図8に示す)に切り替える際には、ヒートポンプ装置20の第1膨張弁52を膨張状態から非膨張状態に切り替える。これにより、車室外熱交換器33に高圧冷媒が供給されて放熱器として作用するので車室外熱交換器33の表面温度が上昇し、車室外熱交換器33の表面の霜が溶けていく。
また、極低外気時除霜運転モードに切り替える際に第1膨張弁52を非膨張状態に切り替えるだけなので、暖房運転モード時に冷媒が流れている冷媒配管と同じ冷媒配管に冷媒を流したまま極低外気時除霜運転モードを行うことができる。よって、冷媒配管が変わることに起因する冷媒の無駄な放熱や吸熱が起こらない。
極低外気時除霜運転モードに切り替えると、車室外熱交換器33が放熱器となるので、下流側車室内熱交換器31や上流側車室内熱交換器32に流入する冷媒の温度が低下する懸念がある。
そこで、本実施形態では、ステップSB2で極低外気時除霜運転モードに切り替えた後、ステップSB3に進み、車室内空調ユニット21から車室内へ吹き出す吹出空気の温度を補正する吹出空気補正制御を行う。
具体的には、エアミックスドア制御、コンプレッサ制御、空気加熱器制御、送風機制御の4つが行われる。
エアミックスドア制御は、エアミックスドア62の動作を、吹出空気の温度が上昇する側に補正する制御である。すなわち、下流側車室内熱交換器31が上流側車室内熱交換器32よりも冷媒流れ方向で上流側に位置しているので、下流側車室内熱交換器31には、上流側車室内熱交換器32に比べて高温の冷媒が流通しており、下流側車室内熱交換器31の表面温度の方が高くなっている。この下流側車室内熱交換器31を通過する空気量が増えるようにエアミックスドア62を動作させる。
コンプレッサ制御は、極低外気時除霜運転モードにおける電動コンプレッサ30の吐出量を暖房運転モード時の吐出量に比べて増加させる制御である。電動コンプレッサ30の吐出量を増加させることによって下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32に流入する冷媒の温度が上昇するので、吹出空気の温度低下を抑制できる。
コンプレッサ制御では、高圧側冷媒圧力検出センサ72で検出されたヒートポンプ装置20の高圧側の冷媒圧力に基づいて電動コンプレッサ30の吐出量の上限を設定する。具体的には、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32内の圧力が異常に上昇しないように、高圧側の冷媒圧力が所定値まで高まった場合に電動コンプレッサ30の吐出量を抑制する。
空気加熱器制御は、空気加熱器61を作動させて空調用空気を暖める制御である。空気加熱器61の発熱量は、外気温度、上流側車室内熱交換器温度検出センサ73で検出された上流側車室内熱交換器32の表面温度、下流側車室内熱交換器温度検出センサ74で検出された下流側車室内熱交換器31の表面温度等によって変更することが可能である。
送風機制御では、送風量が減少するように送風機65を制御する。具体的には、極低外気時除霜運転モードにおける送風機65の送風量を、暖房運転モード時の送風量よりも減少させる。これにより、吹出空気の温度低下を抑制することが可能になる。
上記エアミックスドア制御、コンプレッサ制御、空気加熱器制御、送風機制御は、この順に時間的に優先順位を付けて行われるが、例えば、エアミックスドア制御のみで吹出空気の温度低下を抑制できる場合には、エアミックスドア制御のみ行ってもよい。
また、同様に、エアミックスドア制御とコンプレッサ制御のみ行ってもよいし、エアミックスドア制御、コンプレッサ制御及び空気加熱器制御のみ行ってもよい。
エアミックスドア62の制御は消費電力が少ないという利点がある。エアミックスドア制御を最優先させているので、車両の電力消費が抑制される。
また、コンプレッサ制御の優先順位を高めているので、電動コンプレッサ30の吐出量を変化させることによる吹出空気温度の調整をきめ細かく行うことが可能になる。さらに、空気加熱器制御の優先順位を下げていることで、空気加熱器61を作動させることによる電力消費を抑制することが可能になる。また、送風機制御の優先順位を最も下げていることで、吹出空気温度が多少低下した場合にも乗員が違和感を感じにくくなるという利点がある。このように時間的に優先順位をつけているので、消費電力を抑制しながら、乗員が違和感を感じにくくすることができる。
尚、エアミックスドア制御、コンプレッサ制御、空気加熱器制御、送風機制御のうち、任意の2つ以上の制御を行うように構成してもよい。この場合も優先順位は上記したとおりに設定するのが好ましい。
上記のようにして吹出空気補正制御を行った後、ステップSB4に進み、車室外熱交換器33の除霜が完了したか否かを判定する。この除霜判定としては、例えばタイマを用い、極低外気時除霜運転モードが開始されてから経過した時間が所定時間(例えば1分)経過した場合に、除霜が完了したと判定してもよいし、上記した外気温度TGと車室外熱交換器33の表面温度との差に基づいて判定してもよい。
ステップSB4においてNOと判定されて除霜が完了していない場合には、ステップSB2に戻って極低外気時除霜運転を継続るステップSB4においてYESと判定されて除霜が完了している(完了していると推定される)場合には、ステップSB5に進む。
ステップSB5では、暖房運転モードに復帰する。すなわち、ヒートポンプ装置20の非膨張状態にある第1膨張弁52を膨張状態に切り替える。このとき、電動コンプレッサ30は作動させたままにしておく。
極低外気時除霜運転モードから暖房運転モードに切り替える際に第1膨張弁52を膨張状態に切り替えるだけなので、極低外気時除霜運転モード時に冷媒が流れている冷媒配管と同じ冷媒配管に冷媒を流したまま暖房運転モードに復帰できる。よって、冷媒配管が変わることに起因する冷媒の無駄な放熱や吸熱が起こらない。
暖房モードに復帰した後、ステップSB6に進み、ステップSB3で行った吹出空気温度補正制御を終了させる。このステップSB6では、送風機制御の終了、空気加熱器制御の終了、コンプレッサ制御の終了、エアミックスドア制御の終了の順で時間的に優先順位を付けて行う。
送風機制御の終了を最優先で行うことで、吹出空気温度が多少低下している場合に早期に終了させることが可能になり、乗員が違和感を感じにくくなる。また、空気加熱器制御の終了の優先順位を高めているので、電力消費を抑制することが可能になる。また、エアミックスドア制御の終了の優先順位を最も下げていることで、消費電力を抑制しながら乗員の快適性を維持することが可能になる。
ステップSB6を経た後、メインルーチンに戻る。
また、図10に示すメインルーチンにおいてステップSA4に進んで除湿暖房運転モードが選択された場合には、図12に示す除湿暖房運転モードのサブルーチン制御が行われる。この制御は、ステップSC1において着霜判定を行う。これは暖房運転モードのステップSB1と同じである。車室外熱交換器33に霜が付着していない場合にはメインルーチンに戻り、霜が付着している場合には、ステップSC2に進み、低外気時除霜運転モードに切り替える。このとき、電動コンプレッサ30は作動させたままにしておく。
除湿暖房運転モード(図6に示す)から低外気時除霜運転モード(図9に示す)に切り替える際には、ヒートポンプ装置20の第1膨張弁52を膨張状態から非膨張状態に切り替える。これにより、車室外熱交換器33に高圧冷媒が供給されて放熱器として作用するので車室外熱交換器33の表面温度が上昇し、車室外熱交換器33の表面の霜が溶けていく。
また、低外気時除霜運転モードに切り替える際に第1膨張弁52を非膨張状態に切り替えるだけなので、除湿暖房運転モード時に冷媒が流れている冷媒配管と同じ冷媒配管に冷媒を流したまま低外気時除霜運転モードを行うことができる。よって、冷媒配管が変わることに起因する冷媒の無駄な放熱や吸熱が起こらない。
低外気時除霜運転モードに切り替えると、車室外熱交換器33が放熱器となるので、下流側車室内熱交換器31や上流側車室内熱交換器32に流入する冷媒の温度が低下する懸念がある。
そこで、本実施形態では、ステップSC3において極低外気時除霜運転モードのステップSB3と同様に吹出空気補正制御を行う。
吹出空気補正制御を行った後、ステップSC4に進み、車室外熱交換器33の除霜が完了したか否かを判定する。ステップSC4では、極低外気時除霜運転モードのステップSB4と同様である。
ステップSC4においてNOと判定されて除霜が完了していない場合には、ステップSC2に戻る。ステップSC4においてYESと判定されて除霜が完了している(完了していると推定される)場合には、ステップSC5に進む。
ステップSC5では、除湿暖房運転モードに復帰する。すなわち、ヒートポンプ装置20の非膨張状態にある第1膨張弁52を膨張状態に切り替える。このとき、電動コンプレッサ30は作動させたままにしておく。
低外気時除霜運転モードから除湿暖房運転モードに切り替える際に第1膨張弁52を膨張状態に切り替えるだけなので、低外気時除霜運転モード時に冷媒が流れている冷媒配管と同じ冷媒配管に冷媒を流したまま除湿暖房運転モードに復帰できる。よって、冷媒配管が変わることに起因する冷媒の無駄な放熱や吸熱が起こらない。
除湿暖房モードに復帰した後、ステップSC6に進み、ステップSC3で行った吹出空気温度補正制御を終了させる。このステップSC6では、極低外気時除霜運転モードのステップSB6と同様な制御を行う。ステップSC6を経た後、メインルーチンに戻る。
以上説明したように、この実施形態1にかかる車両用空調装置1によれば、下流側及び上流側車室内熱交換器31,32を放熱器とする暖房運転モード時に、上流側車室内熱交換器32の内圧が所定圧力となった場合に、冷媒をヒートポンプ装置20における上流側車室内熱交換器32以外の部分に流すようにしている。これにより、暖房運転モード時の暖房能力を十分に高めながら、冷房運転モード時に吸熱器として作用する上流側車室内熱交換器32の耐圧強度及び繰り返し加圧強度が低くて済むようになり、よって、低コスト化を図ることができる。
また、切替弁50dを機械式弁で構成したので、簡単な構成としてより一層低コスト化を図ることができる。
また、非暖房側冷媒出口部50cから流出した冷媒を、暖房運転モード時に減圧手段となる第1膨張弁52に供給するようにしたので、暖房運転モード時に車室外熱交換器33による吸熱量を十分に確保して暖房性能を高めながら、ヒートポンプ装置20全体の圧力上昇を抑制できる。
(実施形態2)
図13は、本発明の実施形態2にかかる車両用空調装置1の概略構成図である。実施形態2の車両用空調装置1では、切替弁50dを電気的に制御するようにしている点で実施形態1とものとは異なっている。以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
実施形態2のヒートポンプ装置20は、上流側車室内熱交換器32の冷媒入口側の冷媒圧力を検出する圧力センサ(本発明の圧力センサに相当)69を備えている。圧力センサ69は、上流側車室内熱交換器32の冷媒入口に接続される配管に設けられており、該配管内の圧力を検出することによって上流側車室内熱交換器32の冷媒入口側の冷媒圧力を得るように構成されている。上流側車室内熱交換器32の冷媒入口側の冷媒圧力は、上流側車室内熱交換器32の内圧とほぼ等しい。尚、上流側車室内熱交換器32の内圧を直接検出するようにしてもよい。
圧力センサ69は、空調制御装置22に接続されている。空調制御装置22は、圧力センサ69で検出された冷媒圧力に基づいて高圧側流路切替装置50の切替弁50dを制御する。具体的には、上流側車室内熱交換器32の内圧が所定圧力になる前は、冷媒入口部50aと非暖房側冷媒出口部50cとの連通を遮断しておき、所定圧力になったと判定した場合には、冷媒入口部50aに流入した冷媒が非暖房側冷媒出口部50cに流通するように、冷媒入口部50aと非暖房側冷媒出口部50cとを連通させる。
このように圧力センサ69によって上流側車室内熱交換器32の内圧を検出しながら制御弁50dを制御するようにしたので、上流側車室内熱交換器32の内圧制御を緻密に行うことができる。これにより、暖房性能と上流側車室内熱交換器32の耐久性とを高い次元で両立することが可能になる。
実施形態2の車両用空調装置1によれば、実施形態1のものと同様に、暖房運転モード時の暖房能力を十分に高めながら、冷房運転モード時に吸熱器として作用する上流側車室内熱交換器32の耐圧強度及び繰り返し加圧強度が低くて済むようになり、よって、低コスト化を図ることができる。
尚、上記実施形態では、上流側車室内熱交換器32の内圧が所定圧力となった場合に、冷媒を第1膨張弁52に供給するようにしているが、これに限らず、例えば、下流側車室内熱交換器31の冷媒入口側等に供給するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、ヒートポンプ装置20の運転モードが、暖房運転モード、除湿暖房運転モード、冷房運転モード、極低外気時除霜運転モード、低外気時除霜運転モードの5種類に切り替え可能な場合について説明したが、これに限らず、少なくとも暖房運転モードと冷房運転モードとの2種類に切り替え可能であればよい。
また、上記実施形態では、車両用空調装置1を電気自動車に搭載する場合について説明したが、これに限らず、例えばエンジン及び走行用モーターを備えたハイブリッド自動車等、様々なタイプの自動車に車両用空調装置1を搭載することが可能である。