JP5555935B2 - ポリ乳酸樹脂組成物成形体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、結晶化速度が改善されたポリ乳酸樹脂組成物に関する。
近年、石油資源の枯渇と二酸化炭素排出量低減の観点から、植物原料由来のポリ乳酸が大きく注目されている。ポリ乳酸は融点が140〜180℃と比較的高融点であり、剛性のある樹脂であるため、自動車の内装材料や家電製品の筐体などへの適用が検討されている。しかしながら、ポリ乳酸の欠点として、耐熱性の低さがあるため、耐熱性の改善が必要である。ポリ乳酸の耐熱性を改善するには、射出成形時に金型温度を高温にして冷却の時間を長くするか、成形後に成形品をアニール処理することで、ポリ乳酸を結晶化する必要があった。しかしながら、金型冷却の時間を長くするのは、生産効率の面から好ましくなく、またアニール処理では処理中に成形品が熱で変形したり、収縮するという欠点がある。
この問題を解決する方法として、ポリ乳酸に結晶核剤を配合し、ポリ乳酸の結晶化速度を改善する方法が知られている。例えば、特許文献1にはポリ乳酸にタルクやシリカ等の無機物を結晶核剤として配合する方法が開示されている。また特許文献2および特許文献3には結晶核剤としてリン酸エステル金属塩をポリ乳酸に配合する方法が開示されている。さらに特許文献4には結晶核剤としてトリメシン酸トリアミド化合物をポリ乳酸に配合する方法が開示されている。
特開1996−193165号公報 特開2003−192883号公報 特開2003−192884号公報 特開2006−328163号公報
特許文献1〜4に挙げたこれらの結晶核剤の特徴として、ポリ乳酸よりも高融点であるという点がある。特許文献1の結晶核剤は融点が遥かに高い無機物であり、ポリ乳酸との混練時には溶融しない。このためポリ乳酸中の結晶核剤の分散が不均一となるおそれがある。その結果、得られた組成物の結晶化速度にはバラツキがあり、安定した性能は望めない。また特許文献2〜4の方法では、いずれの結晶核剤も融点が200℃以上と高いため、結晶核剤を溶融して微分散させるにはポリ乳酸との混練は200℃以上で行う必要がある。このとき200℃以上で混練すると、融点が140〜180℃であるポリ乳酸は熱分解を起こし、得られる組成物の機械特性は低下する。
本発明の目的は、上記課題を解決し、結晶化速度が改善されたポリ乳酸樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリ乳酸よりも低融点の結晶核剤を用いることで、ポリ乳酸の結晶化時間を大幅に短縮することを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、以下の通りである。
<1> ポリ乳酸100質量部と、結晶核剤2〜10質量部とを含み、かつ前記ポリ乳酸よりも高融点の化合物を含まないポリ乳酸樹脂組成物を、200℃以下で溶融混練し、成形し、95〜125℃の結晶化温度で結晶化して得られる成形体であって、
前記結晶核剤が、融点が100℃以下の縮合リン酸エステルまたは室温で液体の縮合リン酸エステルであり、
示差走査熱量計(DSC)による等温結晶化過程における発熱ピークの発現から消失までに要した時間を意味する前記ポリ乳酸樹脂組成物の結晶化時間が、DSCの炉内を、室温から110℃まで100℃/minの昇温速度で昇温し、110℃に到達後は炉内を110℃で5〜10分間保持した測定によって0.9〜2.7分である、成形体。
<2> ポリ乳酸100質量部と、前記ポリ乳酸の融点よりも低い融点を有する結晶核剤2〜10質量部とを含み、かつ前記ポリ乳酸よりも高融点の化合物を含まないポリ乳酸樹脂組成物から形成され、95℃以上の結晶化温度で結晶化された成形体。
<3> 示差走査熱量計(DSC)による等温結晶化過程における発熱ピークの発現から消失までに要した時間を意味する前記ポリ乳酸樹脂組成物の結晶化時間が、DSCの炉内を、室温から110℃まで100℃/minの昇温速度で昇温し、110℃に到達後は炉内を110℃で5〜10分間保持した測定によって0.9〜2.7分である<2>に記載の成形体。
<4> 前記結晶核剤が、融点が100℃以下の化合物または室温で液体の化合物である、<2>または<3>に記載の成形体。
<5> 前記結晶核剤がリン酸エステルである、<2>〜<4>のいずれか1に記載の成形体。
<6> 前記結晶核剤が縮合リン酸エステルである、<2>〜<5>のいずれか1に記載の成形体。
<7> 結晶化温度が95〜125℃である、<2>〜<6>のいずれか1に記載の成形体。
<8> 前記ポリ乳酸と前記結晶核剤とを、200℃以下で溶融混練して得られる、<2>〜<7>のいずれか1に記載の成形体。
<9> ポリ乳酸100質量部と、前記ポリ乳酸の融点よりも低い融点を有する結晶核剤2〜10質量部とを含み、且つ前記ポリ乳酸よりも高融点の化合物を含まないポリ乳酸樹脂組成物を、200℃以下で溶融混練する工程、混練後の組成物を成形する工程、及び成形後の成形体を95℃以上の結晶化温度で結晶化する工程を含む、ポリ乳酸樹脂組成物成形体の製造方法。
本発明によれば、ポリ乳酸樹脂組成物の結晶化時間を大幅に短縮することができる。また、本発明における結晶核剤はポリ乳酸の融点(140〜180℃)よりも低融点であるため、ポリ乳酸と溶融混練した場合、ポリ乳酸中に均一に分散し、またポリ乳酸が熱分解する恐れはなく、ポリ乳酸樹脂組成物の機械特性を高く保つことができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物とは、乳酸、または乳酸を2分子間で環状エステル化した化合物で、立体規則性を有するモノマーであるラクタイドのうち少なくとも1つを主たる構成成分とするポリマーである。乳酸としては、例えば、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸が挙げられる。ラクタイドとしては、例えば、L−乳酸2分子からなるL−ラクタイド、D−乳酸2分子からなるD−ラクタイド及びL−乳酸及びD−乳酸からなるmeso−ラクタイドが存在する。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物では、高い分子量を発現するため、L−乳酸を総乳酸中75%以上含むものが好ましく、更に高い分子量を発現するためには、L−乳酸を総乳酸中90%以上含むものが好ましい。また、ラクタイドを使用する場合は、L−ラクタイドを総ラクタイド中、75%以上含むものが好ましく、更に高い分子量と熱物性を発現するためには、L−ラクタイドを総ラクタイド中90%以上含むものが好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、乳酸またはラクタイド以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドからなるブロックコポリマー等が用いられる。特に種類を問わないが、中でも生分解性、汎用性等を考えると直鎖状ポリエチレングリコール、直鎖状ポリプロピレングリコール、直鎖状ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)グリコールが特に好ましい。
また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドからなるブロックコポリマーの分子量は、重量平均分子量で200〜200,000であることが好ましい。更に生分解性の観点から、重量平均分子量で200〜10,000程度であることがより好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、さらに、結晶核剤を含む。結晶核剤は加熱処理を行う際に結晶核となり、その結果、ポリ乳酸樹脂の結晶化を促進させる効果を発揮する。本発明における結晶核剤は、その融点が、ポリ乳酸の融点(140〜180℃)よりも低いことを特徴とする。これにより、ポリ乳酸との溶融混練をポリ乳酸の融点以下で行うことができる。その結果、結晶核剤がポリ乳酸中に均一に分散し、またポリ乳酸が熱分解する恐れはなく、ポリ乳酸樹脂組成物の機械特性を高く保つことができる。また、従来の結晶核剤を含む場合よりも、ポリ乳酸樹脂組成物の結晶化時間を大幅に短縮することができる。本発明で使用する結晶核剤は、有機系結晶核剤であって、その融点が100℃以下の化合物または室温で液体の化合物が好ましい。
結晶核剤としては、リン酸エステル、縮合リン酸エステルなどが挙げられ、リン酸エステルが特に好ましい。リン酸エステルは、従来ポリ乳酸の結晶核剤として用いられてきたリン酸エステル金属塩等とは異なり、室温において液体、または固体であっても低融点(100℃以下)であるため、ポリ乳酸と混練する場合、従来の混練温度(200℃以上)より低い温度であってもポリ乳酸中に均一に分散する。そのため、混練時にポリ乳酸が熱分解する恐れはなく、ポリ乳酸の機械特性も低下しない。また、ポリ乳酸との混練温度が低温であるため、混練時に使用するエネルギーも低く抑えることが出来る。さらに、リン酸エステル類は安価に入手できることから経済的である。
リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステルおよびこれらの縮合物である縮合リン酸エステルが挙げられ、リン酸トリエステルが好ましい。リン酸トリエステルとしては下記式(1)に示す化合物が挙げられる。
Figure 0005555935
式(1)において、R1A〜R3Aはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の一価脂肪族基または炭素数6〜8の一価芳香族基を表す。炭素数1〜8の一価脂肪族基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−ブチル基が特に好ましい。炭素数6〜8の一価芳香族基としては、ベンゼン骨格が好ましく、フェニル基、トリル基、キシリル基が特に好ましい。
縮合リン酸エステルとしては、下記式(2)に示す化合物が好ましい。
Figure 0005555935
式(2)において、R1B〜R4Bはそれぞれ独立に、炭素数1〜8の一価脂肪族基または炭素数6〜8の一価芳香族基を表す。炭素数1〜8の一価脂肪族基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−ブチル基が特に好ましい。炭素数6〜8の一価芳香族基としては、ベンゼン骨格が好ましく、フェニル基、トリル基、キシリル基が特に好ましい。
式(2)において、Xは下記式(X1)〜(X3)のいずれかの構造を表す。なお(X3)中、Yは単結合、−CH−、−C(CH−、のいずれかを表す。
Figure 0005555935
リン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェート、ならびにこれらの縮合物などの縮合リン酸エステルを挙げることができる。市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば大八化学社製PX−200、CR−733S、CR−741などの芳香族縮合リン酸エステルを挙げることができる。特に、トリフェニルホスフェートがコストと取り扱いの容易さの観点から好ましく用いることができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物における結晶核剤の含有量は、ポリ乳酸100質量部に対して2〜20質量であり、好ましくは2〜10質量部である。結晶核剤の含有量が上記範囲であれば、トリフェニルホスフェートが可塑剤として働き,ポリ乳酸組成物の耐熱性を低下させる心配がないため好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物はさらに、必要に応じて他の添加剤を含むことができる。他の添加剤としては、タルク、マイカ、シリカ等の無機系結晶核剤、有機系結晶核剤等が挙げられる。
タルクは、従来の無機系結晶核剤であるが、本発明の結晶核剤と組み合わせて使用することで、ポリ乳酸の結晶化時間をさらに短縮することができる。タルクの含有量は、ポリ乳酸100質量部に対して2〜10質量部であることが好ましい。タルクの含有量が上記範囲であれば、ポリ乳酸樹脂組成物の溶融粘度が上がりすぎず、成形性が良好であるため好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、示差走査熱量計(DSC)での測定による結晶化時間が好ましくは0.9〜2.7分、より好ましくは0.9〜2.0分である。DSC測定による樹脂組成物の結晶化時間とは、DSCによる等温結晶化過程における発熱ピークの発現から消失までに要した時間を意味する。結晶化時間の測定は、例えば、DSCの炉内を、室温から設定した結晶化温度まで100℃/minの昇温速度で昇温し、設定温度に到達後は炉内を設定温度で5〜10分間保持することで行うことができる。
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、結晶化温度が好ましくは95〜125℃、より好ましくは110〜125℃である。結晶化温度は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂、結晶核剤および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、200℃以下、好ましくは195℃以下、特に好ましくは165〜195℃において、溶融混練することにより製造することができる。溶融混練に際しては、1軸または2軸押出機を用いることができる。溶融混練を200℃以下で行うことにより、ポリ乳酸が熱分解する恐れはなく、ポリ乳酸樹脂組成物の機械特性を高く保つことができ、また、ポリ乳酸樹脂組成物の結晶化時間を大幅に短縮することができる。また、溶融混練に際しては、材料のポリ乳酸とタルクが吸湿しやすいため,乾燥オーブン(90℃、4時間以上)で乾燥処理したものを使用することが好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、射出成形や押出成形などの方法によって、各種成形品に加工し利用することができる。成形方法としては、例えば、成形金型を結晶化可能な温度、好ましくは110〜125℃に設定し、40秒〜80秒の間保持する方法が挙げられる。また、これらの成形品は、電気・電子部品、機械部品、光学機器、建築部材、自動車部品および日用品など各種用途に利用することができる。
<実施例1−1〜1−7、比較例1−1>
(1)ポリ乳酸樹脂組成物の作製
ポリ乳酸ペレット(三井化学(株)製LACEA H−100、融点165℃)100質量部に対し、表1に示す各結晶核剤(リン酸エステル類)を5質量部配合し、2軸押出機で溶融混練してポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。また、比較例として結晶核剤を配合しないものを準備した。このとき、2軸押出機での樹脂の溶融温度は165℃〜195℃であった。
(2)ポリ乳酸樹脂組成物成形品の作製
上記(1)で得たポリ乳酸樹脂組成物のペレットを170℃〜190℃で射出成形し、ポリ乳酸樹脂組成物成形品を得た。このときの金型温度は40℃、成形サイクル時間は35秒(射出時間:10秒、冷却時間:25秒)であった。
(3)ポリ乳酸樹脂組成物成形品の結晶化時間測定
上記(2)で得たポリ乳酸樹脂組成物成形品の結晶化時間の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用いた。DSCによる等温結晶化過程における発熱ピークの発現から消失までに要した時間を結晶化時間と定義し、測定した。
結晶化時間の測定は、DSCの炉内を室温から設定した結晶化温度まで100℃/minの昇温速度で昇温し、設定温度に到達後は炉内を設定温度で5〜10分間保持することで行った。このときの設定温度は110℃とした。設定温度を110℃としたのは、一般的にポリ乳酸の結晶化に最も適した温度が110℃近辺と言われているためである。測定結果を表2に示す。
Figure 0005555935
Figure 0005555935
表2の結果から、結晶核剤を配合していない比較例1−1のポリ乳酸のみの結晶化時間に対し、結晶核剤を配合した実施例1−1〜1−7の組成物いずれについても結晶化時間の短縮が確認できた。
<実施例2−1〜2−6、比較例2−1〜2−3>
結晶核剤(リン酸エステル)の各配合量と各結晶化温度における組成物の結晶化時間との関係について以下の実験を行った。
(1)ポリ乳酸樹脂組成物の作製
ポリ乳酸ペレット(三井化学(株)製LACEA H−100、融点165℃)100質量部に対し、結晶核剤(TPP:大八化学(株)製)を2.5質量部または5.0質量部配合し、2軸押出機で溶融混練してポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。また、比較例として結晶核剤を配合しないものを準備した。このとき、2軸押出機での樹脂の溶融温度は165℃〜195℃であった。
(2)ポリ乳酸樹脂組成物成形品の作製
上記(1)で得たポリ乳酸樹脂組成物のペレットを170℃〜190℃で射出成形し、ポリ乳酸樹脂組成物成形品を得た。このときの金型温度は40℃、成形サイクル時間は35秒(射出時間:10秒、冷却時間:25秒)であった。
(3)ポリ乳酸樹脂組成物成形品の結晶化時間測定
上記(2)で得たポリ乳酸樹脂組成物成形品の結晶化時間測定には、示差走査熱量計(DSC)を用いた。DSCによる等温結晶化過程における発熱ピークの発現から消失までに要した時間を結晶化時間と定義し、測定した。結晶化時間の測定は、DSCの炉内を室温から設定した結晶化温度まで100℃/minの昇温速度で昇温し、設定温度に到達後は炉内を設定温度で5〜10分間保持することで行った。このときの結晶化温度は、95℃、110℃、125℃の3通りで行った。測定結果を表3に示す。
Figure 0005555935
表3の結果から、95〜125℃のどの温度域であってもTPPが配合されていない比較例のポリ乳酸に比べ、TPPを配合した実施例のポリ乳酸樹脂組成物の方が結晶化時間は短縮されることが確認できた。とくにTPPの配合量が2.5質量部、結晶化温度が125℃のとき、組成物の結晶化時間が最短(1.87分)となった。よって、ポリ乳酸に対する結晶核剤の最適条件は、配合量はポリ乳酸100質量部に対して結晶核剤(TPP)2.5質量部であり、また結晶化温度は125℃が最適であることが分かった。
参考例3−1〜3−8、比較例3−1〜3−4>
本発明に規定する結晶核剤に加え他の結晶核剤を配合したポリ乳酸樹脂組成物について、以下の実験を行った。
(1)ポリ乳酸樹脂組成物の作製
ポリ乳酸ペレット(三井化学(株)製LACEA H−100、融点165℃)100質量部に対し、結晶核剤(TPP:大八化学(株)製)を2.5質量部とタルク(勝光山研究所(株)SK−C)を2.5〜10質量部配合し、2軸押出機で溶融混練してポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。また、比較例として結晶核剤を配合しないものを準備した。このとき、2軸押出機での樹脂の溶融温度は165℃〜195℃であった。
(2)ポリ乳酸樹脂組成物成形品の作製
上記(1)で得たポリ乳酸樹脂組成物のペレットを170℃〜190℃で射出成形し、ポリ乳酸樹脂組成物成形品を得た。このときの金型温度は40℃、成形サイクル時間は35秒(射出時間:10秒、冷却時間:25秒)であった。
(3)ポリ乳酸樹脂組成物成形品の結晶化時間測定
上記(2)で得たポリ乳酸樹脂組成物成形品の結晶化時間測定には、示差走査熱量計(DSC)を用いた。DSCによる等温結晶化過程における発熱ピークの発現から消失までに要した時間を結晶化時間と定義し、測定した。結晶化時間の測定は、DSCの炉内を室温から設定した結晶化温度まで100℃/minの昇温速度で昇温し、設定温度に到達後は炉内を設定温度で5〜10分間保持することで行った。このときの結晶化温度は110℃、125℃の2通りで行った。測定結果を表4に示す。
Figure 0005555935
表4に示す通り、タルクを配合した組成物に対し、TPPとタルクを併用した組成物の方が結晶化時間が短いという結果を得られた。とくにポリ乳酸100質量部に対してTPPを2.5質量部、タルクを10質量部配合し、125℃で結晶化する場合、組成物の結晶化時間は0.99分となり、これまでの検討において最短時間であった。
上記結果から、TPPをはじめとするリン酸エステル類は、それ単独で結晶核剤として機能することでポリ乳酸の結晶化時間を短縮することが確認できた。また既存の結晶核剤と組合わせることでその効果はさらに向上することも確認できた。

Claims (9)

  1. ポリ乳酸100質量部と、結晶核剤2〜10質量部とを含み、かつ前記ポリ乳酸よりも高融点の化合物を含まないポリ乳酸樹脂組成物を、200℃以下で溶融混練し、成形し、95〜125℃の結晶化温度で結晶化して得られる成形体であって、
    前記結晶核剤が、融点が100℃以下の縮合リン酸エステルまたは室温で液体の縮合リン酸エステルであり、
    示差走査熱量計(DSC)による等温結晶化過程における発熱ピークの発現から消失までに要した時間を意味する前記ポリ乳酸樹脂組成物の結晶化時間が、DSCの炉内を、室温から110℃まで100℃/minの昇温速度で昇温し、110℃に到達後は炉内を110℃で5〜10分間保持した測定によって0.9〜2.7分である、成形体。
  2. ポリ乳酸100質量部と、前記ポリ乳酸の融点よりも低い融点を有する結晶核剤2〜10質量部とを含み、かつ前記ポリ乳酸よりも高融点の化合物を含まないポリ乳酸樹脂組成物から形成され、95℃以上の結晶化温度で結晶化された成形体。
  3. 示差走査熱量計(DSC)による等温結晶化過程における発熱ピークの発現から消失までに要した時間を意味する前記ポリ乳酸樹脂組成物の結晶化時間が、DSCの炉内を、室温から110℃まで100℃/minの昇温速度で昇温し、110℃に到達後は炉内を110℃で5〜10分間保持した測定によって0.9〜2.7分である請求項2に記載の成形体。
  4. 前記結晶核剤が、融点が100℃以下の化合物または室温で液体の化合物である、請求項2または3に記載の成形体。
  5. 前記結晶核剤がリン酸エステルである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の成形体。
  6. 前記結晶核剤が縮合リン酸エステルである、請求項2〜5のいずれか1項に記載の成形体。
  7. 結晶化温度が95〜125℃である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の成形体。
  8. 前記ポリ乳酸と前記結晶核剤とを、200℃以下で溶融混練して得られる、請求項2〜7のいずれか1項に記載の成形体。
  9. ポリ乳酸100質量部と、前記ポリ乳酸の融点よりも低い融点を有する結晶核剤2〜10質量部とを含み、且つ前記ポリ乳酸よりも高融点の化合物を含まないポリ乳酸樹脂組成物を、200℃以下で溶融混練する工程、混練後の組成物を成形する工程、及び成形後の成形体を95℃以上の結晶化温度で結晶化する工程を含む、ポリ乳酸樹脂組成物成形体の製造方法。
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