JP5554423B2 - ポリウレタン樹脂製造用ポリオール成分、ポリウレタン樹脂およびその成形品 - Google Patents
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Description
本発明の課題は、カーボンニュートラルの観点から、環境負荷を小さくでき、かつ、生物由来原料を高い比率で使用しても、通常使用されているウレタン樹脂と同等の物性を実現できるウレタン樹脂を提供することである。
(Z)とポリイソシアネート成分(Q)が反応してなるポリウレタン樹脂(C)は、その全重量中の生物由来率(XC)が36重量%以上であり、好ましくは40重量%以上であり、さらに好ましくは45重量%以上である。(C)は(XC)が36重量%以上であれば、カーボンニュートラルの観点から、環境負荷を小さくできるという効果を十分に奏することができる。
本発明における生物由来ポリオール(a)とは、生物由来グリセリンのアルキレンオキサイド付加物(a1)、ショ糖のアルキレンオキサイド付加物(a2)、およびソルビトールのアルキレンオキサイド付加物(a3)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、かつ数平均分子量が200〜1200であるポリオールである。
ここで生物由来グリセリン、ショ糖、ソルビトールはいずれも生物由来のものである。上記数平均分子量は、通常ポリオール(a)の水酸基価から算出される。本発明における水酸基価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定される。
本発明におけるショ糖のアルキレンオキサイド付加物(a2)とは、ショ糖に上記AO付加した化合物であり、AOの付加モル数は、(a)の数平均分子量の範囲を逸脱しない限り特に限定されないが、通常1〜18モル、好ましくは2〜15モルである。
本発明におけるソルビトールのアルキレンオキサイド付加物(a3)とは、ソルビトールに上記AO付加した化合物であり、AOの付加モル数は、(a)の数平均分子量の範囲を逸脱しない限り特に限定されないが、通常1〜13モル、好ましくは2〜11モルである。
(a)の数平均分子量が1200を超えると水酸基価が小さくなり、当量のポリイソシアネート量(水酸基量に対して必要とされるポリイソシアネート量)が少なくなって強度が低くなってしまうため好ましくない。(a)の数平均分子量が200未満では、当量のポリイソシアネート量が多くなってウレタン樹脂中の(a)の量が少なくなり、生物由来構造の割合が小さくなってしまうため好ましくない。
生物由来ポリオール(a)の25℃における粘度は、成形性や混合性の観点から、好ましくは100〜20000mPa・sであり、さらに好ましくは100〜10000mPa・s/25℃である。
ひまし油(k0)とは、トウダイグサ科のヒマ(トウゴマ)の種子から抽出された天然植物油のことを示すが、ウレタン反応の阻害や、副反応の発生を少なくするため工業原料用として精製されていることが好ましく、水分は0.1%以下、酸価は1.0以下であることが好ましい。
また、ひまし油誘導体(k1)とは、ひまし油に他の化合物を反応させたひまし油誘導体のことであり、数平均分子量は1000〜1500が好ましい。(k1)の生物由来率は60〜95%が好ましい。(k1)の具体例としては、k0に上記AOを付加した化合物が挙げられる。AOとしては炭素数2〜8のものが好ましく、上記EO、PO、BO等が挙げられ、2種以上用いてもよい。(k0)は分子量が小さくてウレタン樹脂の物性も低下せず、また生物由来率も低下しないため、好ましい。
本発明における生物由来炭酸塩(b)は現代に生息している生物資源から得られる炭酸塩を示し、例えば、ホタテ貝、アコヤ貝、牡蠣、サザエ、シジミ、アワビ等の貝殻、エビ、カニなどの甲殻類の殻、卵殻の粉末から得られる炭酸カルシウムがあげられる。品質安定性、入手安定性、価格面から、ホタテ貝殻粉末から得られる炭酸カルシウムであることが好ましい。地下資源として採取される炭酸カルシウムを主成分とする鉱石(石灰岩等)には、古代の有孔虫、珊瑚、石灰藻などの生物の殻が堆積してできたものもあるが、これらは化石であり、カーボンオフセットを実現する炭素循環サイクルには含まれないため、本発明における生物由来炭酸塩には含まれない。
(b)の製造方法は一般的に使用されている製造法ならば特に限定されないが、通常、得られた貝殻を洗浄した後、粉砕、焼成による有機成分の焼却除去、分級することで(b)の粉末を得ることができる。この製造方法において、有機成分除去の為の焼成の温度が900℃以上では、炭酸カルシウムが分解して酸化カルシウムになるため、通常80℃〜300℃、好ましくは100℃〜250℃で焼成されていることが好ましい。
(k)の含有重量%は、(Z)の重量に基づいて、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。(k)の含有重量%が60重量%以下であると高い樹脂物性を得ることができ、(k)の含有重量%が5重量%以上であると、(k)が生物由来率が100重量%、又は高い生物由来率である為、(Z)中の生物由来率を上昇させることができる。
本発明の製造方法に用いるポリイソシアネート成分(Q)としては、イソシアネート基を分子内に2個以上有する化合物であればよく、従来からポリウレタンフォームの製造に使用されているものがすべて使用できる。このようなイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらの変性物(例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシヌアレート基、またはオキサゾリドン基含有変性物など)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。また、(Q)中には必要に応じて各種添加剤、生物由来炭酸塩(b)等を含有することができる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜10の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数8〜12の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
変性ポリイソシアネートの具体例としては、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDIなどが挙げられる。本発明におけるポリイソシアネート(Q)として、好ましくは、芳香族ポリイソシアネートおよびその変性物であり、さらに好ましくは、ポリメチレンポリフェニレンイソシアネート(粗製MDI)である。反応に用いるポリイソシアネート(Q)全体のイソシアネート基含有率は、10〜35重量%が好ましい。
本発明における、非生物由来ポリオール(d)としては、例えば
(1)ポリオキシアルキレンポリオール
非生物由来の出発物質(例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールなどの多価アルコール、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トルエンジアミンなどのアミン、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の多価フェノール等およびそれらの混合物)に、AOが付加された化合物であり、上記の出発物質に付加させるAOとしては、生物由来ポリオール(a)で使用される上記と同じものが使用できる。
前記の多価アルコール[とくに、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−または1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;前記ポリエーテルポリオール(とくにジオール);またはこれらとグリセリン、トリメチロールプロパン等の3価又はそれ以上の多価アルコールとの混合物]と、前記ポリカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体〔酸無水物、低級アルキル(アルキル基の炭素数:1〜4)エステル等〕(例えば、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テレフタル酸ジメチル)とのポリエステルポリオール、または前記カルボン酸無水物およびAOとの縮合反応物;それらのAO(EO、PO等)付加物;ポリラクトンポリオール、例えば前記多価アルコールを開始剤としてラクトン(ε−カプロラクトン等)を開環重合させることにより得られるもの;ポリカーボネートポリオール、例えば前記多価アルコールとアルキレンカーボネートとの反応物;等が挙げられる。
非生物由来ポリオール(d)の数平均分子量は通常200〜1200、好ましくは250〜1100、より好ましくは300〜1000である。(d)の平均官能基数は、通常2〜8、好ましくは2〜6である。(d)の平均水酸基価は、通常120〜900、好ましくは150〜700である。
本発明におけるウレタン化触媒(E)としては、ウレタン化反応を促進する通常のウレタン化触媒はすべて使用でき、例として、トリエチレンジアミン、ビス(N,N−ジメチルアミノ−2−エチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンのPO付加物などの3級アミンおよびそのカルボン酸塩、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、スタナスオクトエート等のカルボン酸金属塩、ジブチルチンジラウレート等の有機金属化合物が挙げられる。
本発明における界面活性剤(F)としては、通常のポリウレタン樹脂の製造に用いられるものはすべて使用でき、例として、ジメチルシロキサン系界面活性剤[例えば、東レ・ダ
ウコーニング(株)製の「SRX−253」等]、ポリエーテル変性ジメチルシロキサン
系界面活性剤[例えば、モメンティブ(株)製の「L−5309」、東レ・ダウコーニン
グ(株)製の「SF−2969」、「SZ−1671」、ゴールドシュミットAG(株)
製の「B−8462」、「B−8474」などが挙げられる。(F)の添加量は(Z)に
対して、通常0〜6重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。
本発明における発泡剤(G)としては、ポリイソシアネートと反応して二酸化炭素を発生
する水、反応熱によって気化・体積膨張する低沸点炭化水素及び水素原子含有ハロゲン化
炭化水素系発泡剤が挙げられる。低沸点炭化水素は、通常沸点が−5〜70℃の炭化水素
であり、その具体例としては、ブタン、ペンタン、シクロペンタンおよびこれらの混合物
が挙げられる。低沸点炭化水素を用いる場合の使用量(重量部)は、ポリオール成分
(Z)100部に対して、好ましくは30部以下、さらに好ましくは20部以下である。
水素原子含有ハロゲン化炭化水素系発泡剤の具体例としてHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)タイプのもの(例えばHCFC−123、HCFC−141b、HCFC−22およびHCFC−142b);HFC(ハイドロフルオロカーボン)タイプのもの(例えばHFC−134a、HFC−152a、HFC−356mff、HFC−236ea、HFC−245ca、HFC−245fa、およびHFC−365mfc)等が挙げられる。
本発明において、ポリウレタンフォームまたはフォームとは、発泡ウレタン樹脂、および弾力性のあるいわゆるポリウレタンフォームを指すものとする。また、非フォームとは、非発泡ウレタン樹脂を指すものとする。
また非発泡ポリウレタン樹脂も、例えば切削加工用材料として特に好適に使用され、該切削加工用材料は切削されて高強度治具、高強度金型等として使用される。
実施例および比較例におけるポリウレタン樹脂原料は次の通りである。
生物由来ポリオール(a)
(1)生物由来グリセリン誘導体(a1−1):生物由来グリセリン(阪本薬品工業(株)製、精製グリセリン)1モルに、水酸化カリウムの存在下2.7モルのPOを付加して得られる、平均官能基数3.0、数平均分子量250、水酸基価約670のポリオール。生物由来率36.8%、粘度950mPa・s
(2)ショ糖誘導体(a2−1):ショ糖1モルに、水酸化カリウムの存在下5.6モルのPOを付加して得られる、平均官能基数8、数平均分子量約1070、水酸基価約420、であるショ糖のPO付加物。生物由来率31.9%、粘度20000mPa・s
(3)ソルビトール誘導体(a3−1):平均官能基数約6、数平均分子量約700、水酸基価490のソルビトールのPO付加物。生物由来率24.3%、粘度16000mPa・s(三洋化成工業(株)製、サンニックスSP−750)
(5)ひまし油(k−1):平均官能基数2.7、数平均分子量950、水酸基価約160の精製ひまし油[伊藤製油製ひまし油 SL]生物由来率100%、粘度680mPa・s
(6)生物由来炭酸塩フィラー(b−1):平均粒子径約5μmのホタテ貝粉末〔日本理化学工業(株)社製、ホタテ貝粉末〕生物由来率100%
(7)生物由来炭酸塩フィラー(b−2):平均粒子径約11μmの卵殻粉末〔キューピータマゴ(株)製、カルホープ〕生物由来率100%
(8)石油由来グリセリン誘導体(d−1):石油由来(エピクロルヒドリン由来)グリセリン1モルに、水酸化カリウムの存在下PO2.7モルを付加重合して得られる、平均官能基数3.0、数平均分子量400、水酸基価約420の石油由来グリセリンのPO付加物、生物由来率0%
(9)ウレタン化触媒:日東化成(株)製「ネオスタン U−600」生物由来率0%
(10)界面活性剤:東レ・ダウコーニング(株)製「SZ−1671」生物由来率0%
(11)充填材:メジアン径4μmのタルク「ソープストーンA」[日本ミストロン(株)製]生物由来率0%
(12)脱水剤:ユニオン昭和製「モレキュラーシーブ3A−Bパウダー」
(13)ポリイソシアネ−ト(Q−1):イソシアネート基含有率31重量%のポリメリックMDI系イソシアネート。〔BASFジャパン(株)製 ルプラネートM−20S〕生物由来率0%。
メカニカルフロス発泡機、東邦機械工業製「MF−350型メカニカルフロス発泡装置」を用いて、表1に示す重量部のポリオール成分とポリイソシアネート成分と必要に応じて窒素とを共に連続的に混合し、混合物を吐出した。
このときのメカニカルフロスヘッドの回転数は300RPM、成形品の密度が0.8g/cm3の場合の窒素流量は1.5L/分、同1.3g/cm3の場合は窒素の注入は不要(非発泡)であった。ポリオール成分プレミックス液とイソシアネートプレミックス液をイソシアネートインデックスが105となるように送液し、送液速度は1L/分で行った。ミキサー部で混合された液は連続的に吐出口から供給されるため、予め吐出口に、金属製の金型を取り付け、供給されてきた混合液を受け、受けた混合液は、硬化炉にて、110℃にて10時間硬化させることにより当該ポリウレタンフォーム成形品、及びポリウレタン樹脂(非発泡)成形品を得た。
ショアーD硬度:
直方体形状の成形品をJIS K6253に従い、タイプDデュロメーターで5回測定して平均値を求め、これをショアーD硬さとした。
線膨張係数:
直方体形状の成形品の片端部と中央部から、それぞれタテ×ヨコ×厚さ=10×4×4mmで切り出した試験片を各3ずつ、25℃、55%RHで12時間状態調節した後、線膨張係数測定機[型名「TMA/SS6100」、セイコーインスツル(株)製]を用いて、JIS K7197に準じて測定した。25〜80℃における寸法変化を測定し、そのうち30〜60℃における1℃あたりの平均寸法変化率を算出した。この測定を各試験片の端部3個、中央部3個について行い、平均値を求めた。さらに3個の各試験片の平均値を求め、これを成形品の線膨張係数とした。
熱変形温度(HDT):
作製した成形品を127×12.7×12.7mmに切断して試験片とし、
JIS K6911に準じて測定した。
測定は荷重たわみ温度試験機[型番S3−FH](株)東洋精機製作所製を使用した。
特に、実施例3と比較例1、実施例4と比較例2、実施例8と比較例3、実施例9と比較例4のそれぞれの比較で、密度、フィラー成分、ポリイソシアネート使用量がほぼ同一の条件で、同等の物性が実現できていることが確認できた。
Claims (8)
- 生物由来グリセリンのアルキレンオキサイド付加物(a1)、ショ糖のアルキレンオキサイド付加物(a2)、およびソルビトールのアルキレンオキサイド付加物(a3)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、かつ数平均分子量が200〜1200である生物由来ポリオール(a)、ひまし油又はひまし油誘導体(k)、および生物由来炭酸塩(b)を含有してなるポリオール成分であって、該ポリオール成分中の該(a)が5〜60重量%、該(b)が1〜50重量%、該(k)が22〜60重量%であり、かつ、その全重量中の生物由来率が50重量%以上であるポリウレタン樹脂製造用ポリオール成分(Z)。
- 生物由来炭酸塩(b)が、ホタテ貝殻粉末である請求項1に記載のポリオール成分(Z)。
- 請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂製造用ポリオール成分(Z)とポリイソシアネート成分(Q)が反応してなるポリウレタン樹脂(C)。
- ポリウレタン樹脂(C)中の生物由来率が、36重量%以上である請求項3に記載のポリウレタン樹脂(C)。
- 請求項3または4に記載のポリウレタン樹脂(C)を含有してなるポリウレタンフォーム。
- 請求項5に記載のポリウレタンフォームからなるポリウレタンフォーム成形品。
- 切削加工用ポリウレタンフォーム成形品である請求項6に記載のポリウレタンフォーム成形品。
- 請求項3または4に記載のポリウレタン樹脂(C)を含有してなる非発泡ポリウレタン樹脂成形品。
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