JP5552840B2 - 樹脂フィルムロールの製造方法及び保管方法 - Google Patents

樹脂フィルムロールの製造方法及び保管方法 Download PDF

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Description

本発明は、フィルム表面に皺等が生じにくい樹脂フィルムロールの製造方法及び保管方法に関する。
工業的に生産される樹脂フィルムは、保管効率や搬送効率を向上させるため、巻取りコアなどに所定長さ巻取って樹脂フィルムロールとしている。
柔軟性のある樹脂フィルムを巻取った樹脂フィルムロールであれば、巻取り末端部の樹脂フィルムを固定などしなくても、巻戻りは生じにくい。しかしながら、ポリイミドフィルムなどのような剛性の高い樹脂フィルムを巻取った樹脂フィルムロールの場合、巻取り末端部の樹脂フィルムを固定しないまま保管や搬送などを行うと、巻戻り等が発生して、巻姿などの外観を損なったり、樹脂フィルム表面に皺等が発生し易かった。
このため、特許文献1に示されるように、巻取り末端部の樹脂フィルムを樹脂フィルムロールの表面などに粘着テープなどで固定して巻戻りを抑制する試みが行われている。
特開2008−94576号公報
しかしながら、特に、ポリイミドフィルムのような剛性の高いフィルムの場合、巻取り末端部の樹脂フィルムを切断すると、その時点で張力が開放されてしまい、樹脂フィルムロールの表層が巻緩み易かった。巻緩みが生じると、巻ズレが生じたり、空気をかみこんで樹脂フィルム間に空気が介在し易かった。
また、巻緩みが生じてロール内に空気をかみこんだ場合、巻取った樹脂フィルムの幅方向の厚みにバラつきがあると、厚い部分と薄い部分とで空気の介在量が異なってくる。空気の介在量が多い部分は、樹脂フィルムが弱く固定される傾向にあり、空気の介在量が少ない部分は強く固定される傾向にあるので、この固定力差によって、固定の弱い部分で変形(皺)が生じ易かった。
また、樹脂フィルム間に空気が介在している樹脂フィルムロールを、内部雰囲気を所定の真空度とした真空チャンバー内に配置して樹脂フィルムロールから樹脂フィルム引き出しつつスパッタリング等を行った場合、樹脂フィルムロールが減圧環境下に曝されることによりロール内の空気が抜け、樹脂フィルム表面に皺が発生し易かった。
よって、本発明の目的は、使用時や保管時において、樹脂フィルム表面に皺等が発生し難い樹脂フィルムロールの製造方法及び保管方法を提供することにある。
上記目的を達成するにあたり、本発明の樹脂フィルムロールの製造方法は、樹脂フィルムを、巻取り張力をかけながら巻取りコアに巻取る樹脂フィルムロールの製造方法であって、巻取り末端部の樹脂フィルムを、巻取り時の張力をかけた状態で、前記樹脂フィルムロールの表面に固定し、次いで、該樹脂フィルムの末端部を切断することを特徴とする。
本発明の樹脂フィルムロールの製造方法によれば、巻取り末端部の樹脂フィルムを、巻取り時の張力をかけた状態で樹脂フィルムロールの表面に固定し、次いで、該樹脂フィルムロールの末端部を切断するので、樹脂フィルムロールの表層の巻緩みを抑制しつつ、樹脂フィルムを固定することができる。このため、樹脂フィルムの巻ズレや、空気のかみこみを抑制でき、使用時や保管時における、樹脂フィルム表面の皺の発生を防止できる。
本発明の樹脂フィルムロールの製造方法は、巻取り末端部の樹脂フィルムの裏面に両面テープを貼付し、該巻き取り末端部の樹脂フィルムを最外層に巻付けて前記樹脂フィルムロールの表面に固定し、次いで該樹脂フィルムの末端部を切断するか、あるいは、樹脂フィルムロールの最外層に両面テープを貼付し、巻き取り末端部の樹脂フィルムを最外層に巻付けて前記樹脂フィルムロールの表面に固定し、次いで該樹脂フィルムの末端部を切断することが好ましい。また、この態様においては、前記樹脂フィルムの末端部を切断した後、更に固定テープによって該末端部を表面側から前記樹脂フィルムロールの表面に固定することが好ましい。
本発明の樹脂フィルムロールの製造方法は、前記樹脂フィルムの平均厚みが5〜125μmであることが好ましい。
本発明の樹脂フィルムロールの製造方法は、前記樹脂フィルムが、ポリイミドフィルム、アラミドフィルムなどのポリアミドフィルム、ポリエステル系フィルム及び液晶系フィルムから選ばれる1種以上であることが好ましい。これらの樹脂フィルムは比較的剛性が強いため、本発明により適している。
本発明の樹脂フィルムロールの製造方法は、前記樹脂フィルムが、スパッタリングなどのメタライジング法に用いられる基板用フィルムであることが好ましい。本発明によって得られる樹脂フィルムロールは、樹脂フィルム間の空気の介在量が極めて少ないので、スパッタリングなどのメタライジング時における樹脂フィルム表面の皺の発生を効率よく抑制できる。
本発明の樹脂フィルムロールの製造方法は、前記巻取りコアの50℃〜200℃における線膨張係数が10×10−6cm/cm/℃以下で、吸水率が1%以下であることが好ましい。この態様によれば、巻取りコアの変形を抑制でき、樹脂フィルム表面に皺が発生し難くなる。
また、本発明の樹脂フィルムロールの保管方法は、上記製造方法で得られた樹脂フィルムロールを、温度5〜35℃、湿度35〜85%RHの条件下で保管することを特徴とする。
本発明の製造方法で得られた樹脂フィルムロールは、巻ズレが殆どなく、更には空気のかみこみ量が極めて少ないので、上記温度及び湿度条件で保管することで、気温や湿度によるフィルムの変形を抑えて、長期にわたって、保管時における皺の発生を抑制できる。
本発明によれば、使用時及び保管時において、樹脂フィルム表面に皺等が発生し難い樹脂フィルムロールを製造できる。
本発明の樹脂フィルムロールの製造工程の概略図である。
本発明の樹脂フィルムロールの製造方法において用いる樹脂フィルムとしては、特に限定はなく、メタライジング法により樹脂フィルム表面に金属や金属酸化物などの層を形成する用途などに好ましく用いられる。具体的には、ポリイミドフィルム、アラミドフィルムなどのポリアミドフィルム、ポリエステル系フィルム、液晶系フィルムが挙げられる。なかでも、ポリイミドフィルム、液晶系フィルム及びアラミドフィルムは、高耐熱性、高電気絶縁性を有し、薄手のフィルムであっても取扱上必要な剛性や耐熱性や電気絶縁性が満たされ、電気絶縁フィルム、断熱性フィルム、フレキシブル回路基板のベースフィルム等、産業分野において幅広く使用されているので、好ましく用いることができる。
樹脂フィルムの線膨張係数は、使用する目的に応じてどのようなもの範囲でも良いが、フレキシブル回路基板のベースフィルム、カバー基材、ベース基材として用いる場合には、50〜200℃における線膨張係数が30×10−6cm/cm/℃以下、さらに1×10−6〜30×10−6cm/cm/℃であることが好ましい。
メタライジング法は、金属メッキや金属箔の積層とは異なる金属層を設ける方法であり、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム等の公知の方法を用いることができ、特にスパッタリングが好ましい。
メタライジング法に用いる金属としては、銅、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉄、モリブデン、コバルト、タングステン、バナジウム、チタン、タンタル等の金属、又はそれらの合金、或いはそれらの金属の酸化物、それらの金属の炭化物等を用いることができるが、特にこれらの材料に限定されない。
ポリイミドフィルムは、例えば、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液を支持体に流延又は塗布し、加熱などの処理を行ってイミド化することで得られる。
上記ポリアミック酸溶液は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを公知の方法で反応させて得ることができる。例えば、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、ポリイミドの製造に通常使用される有機溶媒中で重合して製造することができる。
テトラカルボン酸成分としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。具体例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
ジアミン成分としては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン等を挙げることができる。具体例としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、m−トリジン、p−トリジン、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
テトラカルボン酸成分とジアミン成分との組み合わせの一例としては、機械的特性、耐熱性の観点より、以下の1)〜3)が挙げられる。
1)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、p−フェニレンジアミン、又はp−フェニレンジアミン及び4,4−ジアミノジフェニルエ−テル(例えば、p−フェニレンジアミン/4,4−ジアミノジフェニルエ−テル(モル比)は100/0〜85/15であることが好ましい。)との組み合わせ。
2)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物(例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/ピロメリット酸二無水物(モル比)は0/100〜90/10であることが好ましい)と、p−フェニレンジアミン、又はp−フェニレンジアミン及び4,4−ジアミノジフェニルエ−テル(例えば、p−フェニレンジアミン/4,4−ジアミノジフェニルエ−テル(モル比)は90/10〜10/90であることが好ましい。)との組み合わせ。
3)ピロメリット酸二無水物と、p−フェニレンジアミン及び4,4−ジアミノジフェニルエ−テル(例えば、p−フェニレンジアミン/4,4−ジアミノジフェニルエ−テル(モル比)は90/10〜10/90であることが好ましい。)との組み合わせ。
有機溶媒としては、公知の溶媒を用いることができ、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂フィルムの平均膜厚は、フィルムが通紙できるような厚みであれば良く、5〜125μmが好ましく、さらに6〜50μmであり、特に7〜25μmが好ましい。樹脂フィルムの平均膜厚は、JIS・C2318に準拠した方法で測定した値である。
樹脂フィルムの幅方向の膜厚の最大厚みと最少厚みの差(以下、「膜厚差」とする)は、平均膜厚の10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下であり、特に好ましくは4%以下である。幅方向の膜厚差が、平均膜厚の10%以下であれば、得られる樹脂フィルムロールの外周の表面凹凸をより小さくできる。
樹脂フィルムの弾性率は、3〜15GPaであり、より好ましくは6〜13GPaであり、特に好ましくは7〜12GPaである。樹脂フィルムの弾性率は、ASTM・D882に準拠した方法で測定した値である。
本発明の樹脂フィルムロールの製造方法において用いる巻取りコアとしては、特に限定はなく、樹脂、繊維強化樹脂、金属などの材料を、円筒状ないし円柱状に成形したものが用いられる。樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ABS樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。金属としては、鉄、アルミニウム、銅、チタン、鉛、亜鉛、金、ニッケル、クロム、スズ、銀、パラジウム、白金などが挙げられる。繊維強化樹脂に用いる繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ポリイミド繊維、アラミド繊維などが挙げられる。なかでも、気温変化や湿度変化による変形が生じにくいもの、すなわち、50℃〜200℃における線膨脹係数、及び吸水率の小さいものを用いることが好ましい。より好ましくは、50℃〜200℃における線膨脹係数が10×10−6cm/cm/℃以下、さらに好ましくは5×10−6cm/cm/℃以下、特に好ましくは2×10−6cm/cm/℃以下であり、吸水率が1%以下であるものを用いる。なお、吸水率は、ASTM・D570に準拠した方法で測定した値である。
巻取りコアの弾性率は、200kgf/mm以上が好ましく、500〜7000kgf/mmがより好ましく、1500〜7000kgf/mmが特に好ましい。巻取りコアの弾性率が200kgf/mm未満であると、樹脂フィルムを巻取った際に、巻取りコアが変形し易く、周方向残留応力が多くなって、フィルム表面に経時的に皺が発生し易くなる傾向にある。なお、本発明において、巻取りコアの弾性率の値は、JIS・K7171の三点曲げ法に基づいて測定した値である。
次に、本発明の樹脂フィルムロールの製造方法について説明する。まず、樹脂フィルムを、巻取り張力をかけながら巻取りコアに巻取る。
樹脂フィルムの巻取り条件としては、特に限定はなく、樹脂フィルムの種類に応じて適宜調整できる。例えば、ポリイミドフィルムの場合、巻取り張力40〜60N/m、巻取り速度20〜100m/分の条件で巻取ることが好ましい。
樹脂フィルムの巻取りは、幅方向に揺動を加えながら行うことが好ましい。幅方向に厚みムラがある樹脂フィルムをロール状に巻き取ると、わずかな厚みムラであっても巻き重ねられてゆくことによってロールの外周表面に凹凸が生じる。特に、ポリイミドフィルムのような剛直な樹脂フィルムを巻取った場合、凹凸が顕著に表れやすい。このような幅方向に厚みムラがある樹脂フィルムであっても、揺動を加えながら巻取ることで、樹脂フィルムの厚みムラがほぼ均一になるように巻取ることができ、得られる樹脂フィルムロール外周の表面凹凸をより小さくできる。揺動幅は、厚みムラの周期により、適宜揺動幅を選択すればよく、揺動幅を60〜120mmとすることが好ましい。
樹脂フィルムの巻取り長さは、1000m以上が好ましく、より好ましくは1500〜5000mであり、特に好ましくは2000〜4000mである。また、樹脂フィルムの巻き数は、使用するコア径にもよるが、1000巻回以上であることが好ましく、より好ましくは1000〜5000回であり、特に好ましくは2000〜4000回である。
このようにして巻取りコアに樹脂フィルムを所定長さ巻き取った後、本発明では、巻取り末端部の樹脂フィルムを巻取り時の張力をかけた状態、好ましくは30N/m〜220N/mの範囲で張力をかけた状態、で樹脂フィルムロールの表面に固定する。
図1を参照しながら説明すると、樹脂フィルムロールの最外層に両面テープを貼付した後(図1(a))、巻き取り末端部の樹脂フィルムを樹脂フィルムロールの最外層に巻付けて、両面テープにて巻き取り末端部の樹脂フィルムを前記樹脂フィルムロールの表面に固定する(図1(b))。次に、巻取り末端部の樹脂フィルムにかかっている張力を解放した後、樹脂フィルムの末端部を切断する(図1(c))。そして、固定テープによって、樹脂フィルムの末端部を、表面側から前記樹脂フィルムロールの表面に固定する(図1(d))。
このように製造された樹脂フィルムロールは、樹脂フィルムの巻ズレや、ロール内の空気のかみこみが極めて少なく、樹脂フィルム表面に皺が発生し難い。そして、ロール内の空気のかみこみが極めて少ないことから、減圧環境下に置いても樹脂フィルムロールから空気が抜けて皺が発生するといったトラブルの発生を抑制できる。このため、この樹脂フィルムロールから引き出される樹脂フィルムは、皺による変形が極めて少なく、スパッタリングに用いられる配線基板用フィルムして使用する際において、加工性を向上でき、更には歩留りを改善できる。
本発明の製造方法で得られる樹脂フィルムロール外周の表面凹凸は、0.8mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.6mm以下であり、特に好ましくは0.4mm以下がより好ましい。上記表面凹凸が0.8mm以下であれば、凹凸部分を起点とした、樹脂フィルムロール内部で発生する応力をより低減できるため、樹脂フィルム表面に皺が生じにくくなる。樹脂フィルムロールの外周の表面凹凸は、赤外線厚み計を用い、ロール表面の幅方向(TD方向)の全幅を10mmの測定ピッチでスキャンして測定した厚みデータのロール全長の積算値から求めることができる。樹脂フィルムロール外周の表面凹凸は、0.8mm以下にするには、フィルムの厚み差にロールの巻き数を掛けた数値が0.8mm以下になるようにフィルム厚み差や揺動幅を調整すればよい。
本発明の製造方法で得られる樹脂フィルムロールの表面硬度の最大値は、40×9.8m/sec以上が好ましい。これによれば、保管時や搬送時における巻きズレを抑制することができる。また、樹脂フィルムロールの表面硬度の最大値と最小値との差(以下、「表面硬度差」とする)は、100×9.8m/sec以下が好ましく、80×9.8m/sec以下がより好ましい。表面硬度差が大きいと、樹脂フィルムロール内部で発生する応力によって、表面硬度の低い部分で皺が生じ易くなる。表面硬度差が100×9.8m/sec以下であれば、樹脂フィルムロール内部で発生する応力をより低減でき、樹脂フィルム表面に皺が生じにくくなる。なお、本発明において、樹脂フィルムロールの表面硬度は、硬度計(tapio社製 RQP)を用いて、ロール表面の幅方向(TD方向)の全幅を0.5mmの測定ピッチでスキャンして測定し、3回測定の平均値である。表面硬度差を100×9.8m/sec以下にするには、巻取り張力や揺動幅を調整すればよい。
この実施形態では、樹脂フィルムロールの最外層に両面テープを貼付し、巻き取り末端部の樹脂フィルムを最外層に巻付けて樹脂フィルムロールの表面に固定したが、巻取り末端部の樹脂フィルムの裏面に両面テープを貼付し、該巻き取り末端部の樹脂フィルムを最外層に巻付けて樹脂フィルムロールの表面に固定してもよい。
このようにして得られた樹脂フィルムロールを、5〜35℃、好ましくは15〜25℃で、35〜85%RH以下、好ましくは50〜70%RHの環境下で保管することが好ましい。
本発明の製造方法で得られた樹脂フィルムロールは、表面凹凸が小さく、更には空気のかみこみ量が極めて少ないので、上記温度及び湿度条件で保管することで、気温や湿度によるフィルムの変形を抑えることができ、長期にわたって、保管時における皺の発生を抑制できる。そして、巻取りコアとして気温変化や湿度変化による変形が生じにくいもの、すなわち、線膨脹係数及び吸水率の小さいものを用いた場合、巻取りコアの変形を抑えることができるので、より効果的に保管時における皺の発生を抑制できる。
(実施例1)
使用したポリイミドフィルムは、厚さ12.5μm、弾性率9GPa、フィルムの幅方向の膜厚差は、平均膜厚の5%であった。
ポリイミドフィルムを、線膨脹係数1.4×10−6cm/cm/℃、吸水率1%以下、弾性率1500kgf/mmの巻取りコア(FWPコア、直径:6インチ)に1000m巻取った後、張力がかかった状態で巻取りを停止し、ロールの最外層に両面テープを貼付した後、巻き取り末端部のポリイミドフィルムを最外層に巻付けてロールの表面に固定した。その後、張力をOFFし、ポリイミドフィルムの末端部を切断した後、更に固定テープによって該末端部を表面側からロールの表面に固定してポリイミドフィルムロールを得た。得られたポリイミドフィルムロール外周の表面凹凸は0.3mmで、表面硬度差は100×9.8m/secであった。また、ロール表面には皺がなかった。また、このポリイミドフィルムロールを立ててみたところ、巻緩みによる巻ズレは発生しなかった。また、このポリイミドフィルムロールを、23℃、60RH%にて30日間保管したところ、皺は発生しなかった。
(実施例2)
使用したポリイミドフィルムは、厚さ125μm、弾性率7.5GPa、フィルムの幅方向の膜厚差は、平均膜厚の5%であった。
このポリイミドフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムロールを得た。得られたポリイミドフィルムロール外周の表面凹凸は0.6mmで、表面硬度差は100×9.8m/secであった。また、ロール表面には皺がなかった。また、このポリイミドフィルムロールを立ててみたところ、巻緩みによる巻ズレは発生しなかった。また、このポリイミドフィルムロールを、23℃、60RH%にて30日間保管したところ、皺は発生しなかった。
(実施例3)
使用したポリイミドフィルムは、厚さ35μm、弾性率10GPa、フィルムの幅方向の膜厚差は、平均膜厚の3%であった。
このポリイミドフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムロールを得た。得られたポリイミドフィルムロール外周の表面凹凸は0.4mmで、表面硬度差は70×9.8m/secであった。また、ロール表面には皺がなかった。また、このポリイミドフィルムロールを立ててみたところ、巻緩みによる巻ズレは発生しなかった。また、このポリイミドフィルムロールを、23℃、60RH%にて30日間保管したところ、皺は発生しなかった。また、スパッタリング工程において、このポリイミドフィルムロールからポリイミドフィルムを取り出したところ皺の発生は見られなかった。
(比較例1)
実施例1のポリイミドフィルムを、実施例1と同様にして巻取りコア(FWPコア、直径:6インチ)に1000m巻取った後、張力をOFFにした。そして、ポリイミドフィルムの末端部を切断した後、該末端部を表面側からロールの表面に粘着テープで固定して、ポリイミドフィルムロールを得た。
このポリイミドフィルムロールを立ててみたところ、巻緩みによる巻ズレは発生しなかったが、ロール表面に粘着テープを起点とした皺の発生が見られた。
(比較例2)
実施例2のポリイミドフィルムを、実施例2と同様にして巻取りコア(FWPコア、直径:6インチ)に1000m巻取った後、張力をOFFにした。そして、ポリイミドフィルムの末端部を切断した後、該末端部を表面側からロールの表面に粘着テープで固定して、ポリイミドフィルムロールを得た。
このポリイミドフィルムロールは、ロール表面に皺は見られなかった。しかしながら、このポリイミドフィルムロールを立ててみたところ、巻緩みによる巻ズレが発生した。
(比較例3)
実施例3のポリイミドフィルムを、実施例1と同様にして巻取りコア(FWPコア、直径:6インチ)に1500m巻取った後、張力をOFFにした。そして、ポリイミドフィルムの末端部を切断した後、該末端部を表面側からロールの表面に粘着テープで固定して、ポリイミドフィルムロールを得た。
このポリイミドフィルムロールは、ロール表面に皺は見られなかった。また、このポリイミドフィルムロールを立ててみたところ、巻緩みによる巻ズレは発生しなかった。しかしながら、23℃、60RH%にて30日間保管したところ、皺が発生した。

Claims (5)

  1. 平均厚みが5〜125μm、幅方向の膜厚の最大厚みと最少厚みの差が5%以下、弾性率が7〜12GPaのポリイミドフィルムを、
    巻取り張力をかけながら50℃〜200℃における線膨脹係数が10×10 −6 cm/cm/℃以下で、吸水率が1%以下である巻取りコアに巻取り、
    前記巻取り末端部のポリイミドフィルムの裏面に両面テープを貼付し、巻取り時の張力をかけた状態で、前記巻き取り末端部のポリイミドフィルムを最外層に巻付けて前記ポリイミドフィルムロールの表面に固定し、
    前記ポリイミドフィルムの末端部を切断し、
    更に固定テープによって該末端部を表面側から前記ポリイミドフィルムロールの表面に固定するポリイミドフィルムロールの製造方法。
  2. 平均厚みが5〜125μm、幅方向の膜厚の最大厚みと最少厚みの差が5%以下、弾性率が7〜12GPaのポリイミドフィルムを、
    巻取り張力をかけながら50℃〜200℃における線膨脹係数が10×10 −6 cm/cm/℃以下で、吸水率が1%以下である巻取りコアに巻取り、
    前記ポリイミドフィルムロールの最外層に両面テープを貼付し、巻取り時の張力をかけた状態で、前記巻き取り末端部のポリイミドフィルムを最外層に巻付けて前記ポリイミドフィルムロールの表面に固定し、
    前記ポリイミドフィルムの末端部を切断し、
    更に固定テープによって該末端部を表面側から前記ポリイミドフィルムロールの表面に固定するポリイミドフィルムロールの製造方法。
  3. 前記ポリイミドフィルムに30N/m〜220N/mの張力をかけた状態で、前記両面テープにより、前記巻取り末端部のポリイミドフィルムを前記ポリイミドフィルムロールの表面に固定する請求項1又は2に記載のポリイミドフィルムロールの製造方法。
  4. 前記ポリイミドフィルムが、メタライジング法に用いられる配線基板用フィルムである、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムロールの製造方法。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の製造方法で得られたポリイミドフィルムロールを、温度5〜35℃、湿度35〜85%RHの条件下で保管することを特徴とするポリイミドフィルムロールの保管方法。
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