JP5550856B2 - 銅合金材及び銅合金材の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の実施の形態に係る銅合金材は、本発明者が得た以下の知見に基づく。すなわち、本発明者は、良好な曲げ加工性を発揮する銅合金材料について、金属組織学における銅合金材料の塑性変形の観点から鋭意研究した結果得た以下の知見に基づく。
図1は、単結晶の引張り分解せん断応力を簡易的に説明するモデルを示す。
シュミット因子は、後方散乱電子線回折(Electron Backscatter Diffraction Pattern:EBSD、又はEBSP)測定によって得られたデータを解析することで算出できる。解析には、例えば、OIM Analysis Ver.5(株式会社TSLソリューションズ製)を用いることができる。具体的には、銅合金材の圧延面についてEBSD測定を実施すると、「菊池線」と呼ばれる回折パターンに関する情報を得ることができる。上記ソフトを用いてこの情報を解析することで、各結晶粒のシュミット因子の値を算出することができ、更に、所定のシュミット因子の値もしくは所定のシュミット因子の値の範囲の結晶粒が測定領域内に占める割合を面積率で算出することができる。
本実施の形態に係る銅合金材は、圧延工程を経て製造される銅合金材において、複数の結晶粒を有する圧延面を備え、圧延面は、0.4以上のシュミット因子を有する結晶粒を、面積率で55%以上有する。
(銅合金材の概要)
本発明の実施の形態に係るCu−Ni−Si系銅合金材は、圧延工程を経て製造される銅合金材であって、圧延工程によって形成され、複数の結晶粒を有する圧延面を備え、当該圧延面は、0.4以上のシュミット因子を有する結晶粒を面積率で55%以上有する。なお、面積率は、圧延面の所定の領域を基準にした場合に、所定の結晶粒が当該所定の領域を占める割合である。
図2は、本発明の実施の形態に係る銅合金材の製造工程の流れの一例を示す。
図3は、本発明の実施の形態の変形例に係る銅合金材の製造工程の流れの一例を示す。
本実施の形態では、Cu−Ni−Si系銅合金材(コルソン系銅合金材とも言う)について説明したが、圧延面が、0.4以上のシュミット因子を有する結晶粒を面積率で55%以上有する限り、合金材はCu−Ni−Si系銅合金材に限られない。例えば、りん青銅、黄銅、ベリリウム銅、及びその他の合金を用いることができる。
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る銅合金材は、圧延面に0.4以上のシュミット因子を有する結晶粒を、面積率で55%以上有するようにして製造するので、高い強度、高い耐力を有すると共に、曲げ加工性に優れた特性を発揮することができる。したがって、本実施の形態に係る銅合金材は、例えば、小型の電気・電子装置に用いられる端子、コネクタ用途に用いることができる。
表2に、実施例1〜4に係る銅合金材のシュミット因子の測定・解析結果、及び比較例1〜4に係る銅合金材のシュミット因子の測定・解析結果を示す。シュミット因子の測定は、銅合金材の圧延面に対して平行で任意の100μm×100μmの領域内の全域で実施した。また、シュミット因子の解析は、圧延面に平行な方向に引張り力と、圧延面に垂直な方向に圧縮力とを同時にかける条件で解析した。
実施例1〜4及び比較例1〜4に係る銅合金材それぞれについて、引張り強さ、0.2%耐力、及び曲げ加工性を評価した。引張り強さ及び0.2%耐力は、JIS Z2241に準拠した引張り試験を実施して測定した。曲げ加工性試験は、銅合金材から採取した試験片を用い、試験片の圧延方向と平行な方向を曲げ軸にしてJIS H3110、H3130、及び日本伸銅協会技術標準JCBA T307に準拠して実施した。曲げ加工性試験の試験条件は、試験片の厚さtを0.2mmにすると共に、曲げ半径をR=0.1mmにした場合(R/t=0.5)と、曲げ半径をR=0.2mmにした場合(R/t=1)との双方を実施した。表3に、実施例及び比較例に係る銅合金材それぞれについて、引張り強さ、0.2%耐力、及び曲げ加工性の評価結果を示す。なお、表3において、曲げ加工性の評価は、割れが大きい場合「××」と、割れが小さい場合「×」と、割れが微小の場合「△」と、割れがない場合「○」とした。
20 すべり面
25 すべり方向
30 すべり面の法線
Claims (4)
- 複数の結晶粒を有する圧延面を備え、
前記圧延面は、当該圧延面の100μm×100μmの範囲内において、0.4以上のシュミット因子を有する前記結晶粒を、面積率で55%以上有し、
前記圧延面は、0.35以上0.4未満の前記シュミット因子を有する前記結晶粒を、面積率で10%以上有し、
前記シュミット因子は、前記圧延面に平行な方向に引張り力と、前記圧延面に垂直な方向に圧縮力とを同時に加える条件において解析される値である
銅合金材。 - Niと、Siとを含み、残部がCu及び不可避的不純物から形成される請求項1に記載の銅合金材。
- Zn、Sn、及びPからなる群から選択される少なくとも1つの元素と、Niと、Siとを含み、残部がCu及び不可避的不純物から形成される請求項1に記載の銅合金材。
- 複数の結晶粒を有する圧延面を備え、前記圧延面は、当該圧延面の100μm×100μmの範囲内において、0.4以上のシュミット因子を有する前記結晶粒を、面積率で55%以上有し、前記圧延面は、0.35以上0.4未満の前記シュミット因子を有する前記結晶粒を、面積率で10%以上有し、前記シュミット因子は、前記圧延面に平行な方向に引張り力と、前記圧延面に垂直な方向に圧縮力とを同時に加える条件において解析される値である銅合金材の製造方法であって、
銅合金から成るインゴットを熱間圧延加工して前記銅合金の板材を製造する熱間圧延工程と、
前記板材を冷間圧延する冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程を経た前記板材に溶体化処理を施す溶体化処理工程と、
前記溶体化処理工程を経た前記板材を冷間圧延する仕上げ冷間圧延工程と
を備え、
前記冷間圧延工程は、前記熱間圧延工程後の前記板材の厚さをAとし、当該冷間圧延工程後の前記板材の厚さをBとした場合に、(A−B)/A×100の値が93以上になるように前記板材に冷間圧延を施し、
前記冷間圧延工程は、冷間圧延時の前記板材の前方張力成分の大きさを、前記板材の圧縮成分の大きさより大きくなるように、前記板材に冷間圧延を施す
銅合金材の製造方法。
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