JP5550163B1 - 製麦装置及び製麦方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 大麦を洗浄し、浸麦・発芽させ、焙燥し、除根して麦芽を製造するまでの全工程を一貫して行うことが可能な製麦装置1を提供する。
【解決手段】 製麦装置1は、内部に大麦を収納した状態で回転することが可能な回転ドラム3と、その収納容器2とを有するものである。回転ドラム3の側面には、多数の穿孔3dを有しており、軸心4は中空な円筒形状をし、冷風や熱風を回転ドラム3の内部に供給するための多数の開孔部4cが螺旋状に形成されている。収納容器2には、水を供給する水ポンプ41と、収納容器2内の水を冷却するチラー13とを有している。回転ドラム3及び収納容器2には、暖冷送風機15から冷風及び熱風が供給される。回転ドラム3の底面部3aとスポーク部4aとの間に跨るように、撹拌羽根4bが固定されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ビールや発泡酒などの原材料となる麦芽の製造装置及び製造方法に関するものである。
近年、国内の地域ごとに生産される大麦や天然水などの原材料を用いて、それらの特色を明確にした地ビールの生産が活発に行われるようになってきている。なお、ビールの製造方法については、紀元前からの改良が重ねられており、図6乃至図8に記載されているような製造工程が既に確立されている。
ここで、ビールの製造工程としては、製麦工程と仕込・醸造工程の2つの工程に大きく分類することができる。本発明は、これらの二つの製造工程のうちの製麦工程に関するものである。
製麦工程は、原材料である乾燥された大麦、例えば二条大麦から麦芽を製造するまでの工程である。すなわち、大麦をあらかじめ水(以下において、水と湯との温度上の相違点は明確ではないので、一般的には湯と呼ばれているものについても水と呼ぶ場合がある。)で洗浄して表面の汚れを除去する。
次に、洗浄した大麦(以下において、一部が発芽や発根した大麦についても単に大麦と呼ぶ場合がある。)を水に浸麦し、比較的低温、高湿度の雰囲気に保持して発芽させる。もっとも、乾燥している大麦は、生物学的には水に浸麦された後、短時間で発芽に向けての活動が開始されるものと考えられているので、図6乃至図8では浸麦と発芽との区別をしないことにして、同一の製造工程(浸麦・発芽工程)として扱っている。
水に浸麦されて、発芽をした大麦は、焙燥工程で徐々に温度を上げられて、乾燥されて成長を止められた後、通常の黄金色をしたビール(いわゆる、ピルスナー・ビール、図6)ではさらに90℃程度まで加熱されて焙焦される。
そして、焙燥された大麦は、除根されて麦芽が完成する。なお、大麦の根の部分にはアルカロイド等の有害であり、製造されたビールの「えぐみ」などの味覚に悪影響を与える物質が存在するので徐根は必須な製麦工程となっている。
例えば、特許文献1では、水の張ってある回転ドラムに、大麦を連続的に供給して洗浄するとともに、吸水されて部分的に軟化させる製造装置について開示されている。この製造装置を用いると、上述した図6乃至図8における洗浄工程と、浸麦・発芽工程の最初の段階までを同時に行うことができる。
また、特許文献2では、浸麦・発芽工程において、気泡径が50μm以下のマイクロバブルの存在する水中に大麦などの穀物を浸麦し、短時間で浸麦度を高めることによって、発芽するまでの時間を短縮する製造方法が開示されている。
さらに、特許文献3では、回転するドラムを用いて、発芽した大麦に熱風を吹き付けて焙燥する製造方法が開示されている。
加えて、特許文献4では、焙燥工程において、送風する空気中の絶対湿度を測定し、新たに導入する外気と、焙燥装置内を通過し、循環されて再度使用される空気との混合割合を算出して送風する技術が開示されている。
特開昭60−43375号公報 特開2007−143453号公報 特開平9−98766号公報 特許4169598号公報
しかしながら、上述した特許文献1乃至特許文献4で使用されている技術は、いずれも各製麦工程ごとのバッチ生産を前提としたものである。これらは、大手のビールメーカなどで採用されているものと考えられる技術であって、設備自体も大掛かりであり、極めて高価なものとなっている。
したがって、国内地域ごとの原材料や製造方法などの特色を明確にした比較的中小規模の地ビールの製造装置としては採用することができないものである。
また、上述した特許文献1乃至特許文献4に記載されている技術は、製麦工程の一部のみを行うことができるものである。すなわち、特許文献1乃至特許文献4に記載されている製造装置のみでは、原料である大麦から麦芽までの製麦工程を一貫して自動化して行うことはできない。
本発明は、上記した問題点の解決を目的としており、小型・コンパクトで安価であるとともに、地域の特色を生かした原材料である大麦などを洗浄し、浸麦・発芽させ、焙燥して麦芽を製造するまでの製麦工程を一貫して自動化することが可能な製麦装置および製麦方法の提供を目的としている。
本発明は、原材料である大麦などを洗浄し、浸麦・発芽させ、焙燥し、除根して麦芽を製造するまでの製麦工程を一貫して自動化することが可能な製麦装置および製麦方法を提供するものである。
請求項1に記載した発明は、
大麦を水洗し、浸麦・発芽させ、焙燥し、除根して麦芽を製造する製麦装置において、
前記製麦装置は、
大麦を収納した状態で回転することが可能な回転ドラムと、該回転ドラムが設置される収納容器とを有するものであり、
前記回転ドラムの側面には、多数の穿孔を有しており、
前記収納容器には、水を供給する手段と、該水を冷却する手段とを有しており、
前記回転ドラム及び前記収納容器には、冷風及び熱風を供給する手段を有するものである
ことを特徴としている。
本発明に係わる製麦装置は、小型・コンパクトな構造をしているので安価であるという特長がある。また、本発明に係わる製麦装置を用いると、地域の特色を生かした原材料である大麦などを洗浄し、浸麦・発芽させ、焙燥して麦芽を製造するまでの工程を一貫して自動化することができる。
加えて、回転転ドラムの側面に多数の穿孔を設けることによって、焙燥と同時に除根も行うことができるので生産効率を向上させることができる。
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明において、
前記回転ドラムの側面は、
左右一対の底面部と、軸心の略中央部分から外側方向に放射状に形成されている細長いスポーク部によって固定されており、
前記軸心は、
中空な円筒形状をしており、前記冷風や前記熱風を前記回転ドラムの内部に供給するための多数の開孔部が形成されている
ことを特徴としている。
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した発明において、
前記開孔部は、
前記軸心に沿って螺旋状に設けられている
ことを特徴としている。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載した発明において、
前記回転ドラムの内側の側面部分には、
撹拌羽根が設置されており、
該撹拌羽根は、前記回転ドラムの底面部と前記スポーク部との間に跨るように固定されている
ことを特徴としている。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載した発明において、
前記撹拌羽根には、
多数の穿孔が形成されている
ことを特徴としている。
請求項2乃至請求項5に係わる製麦装置を用いると、大麦(麦芽)は、均一に撹拌されるので効率的に洗浄が可能であるとともに、ほぼ一定の温度、湿度及び酸素濃度で冷風や熱風が供給される。すなわち、水洗工程、浸麦・発芽工程、焙燥工程などにおいて、効率よく大麦(麦芽)の水洗、冷却及び加熱などが可能になるので省エネルギーの面からも好ましいものである。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載された製麦装置を用いて、大麦から麦芽を製造することを特徴としている。
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載された製麦装置を用いて製造された麦芽を用いると、従来品と比べて、味覚やのどごし等の点において差異の認められない美味なビールを提供できるという良好な結果が得られた。
本発明に係わる製麦装置は、小型で安価であるとともに、地域の特色を生かした原材料である大麦や天然水などを使用し、洗浄し、浸麦・発芽させ、焙燥し、除根して麦芽を製造するまでの全工程を一貫して自動化が可能な製麦装置および製麦方法を提供することができる。
また、除根工程も焙燥工程と同時に行うことができるので生産効率を向上させることができる。
加えて、浸麦・発芽工程や焙燥工程において、効率よく大麦(麦芽)の冷却や加熱が可能になるので省エネルギーの面からも好ましいものである。
回転ドラムを有する製麦装置のブロック図である。 回転ドラムを有する製麦装置の概略図である。 回転ドラムを有する製麦装置の構造図である。
(a)保水槽の底面部分の構造図である。
(b)回転ドラムの側面開閉扉部を開けた状態図である。
(c)保水槽蓋の開閉扉部を開けた状図である。
製造された麦芽の回収工程の概略図である。
(a)クレーンによって保水槽蓋を吊り上げた状態図である。
(b)クレーンによって回転ドラムを吊り上げた状態図である。
(c)回転ドラムの軸心部分を回転ドラム係止具に載置した状態図である。
収納容器に設置されている回転ドラムの概略図である。
(a)一部切欠きをした回転ドラムの正面概略図である。
(b)A−A断面図である。
実施例1のビールの製造工程図である。 実施例2のビールの製造工程図である。 実施例3のビールの製造工程図である。
以下において、本発明に関わる製麦装置及び製麦方法の一実施例について詳細に説明する(図1〜図8)。
1.製麦装置の概要
本発明に関わる製麦装置1の概要について図1及び図2を用いて説明する。本発明に関わる製麦装置1は、原料である大麦を内部に保持するための回転ドラム3と、回転ドラム3が回転可能な状態で収納可能な収納容器2と、回転ドラム3を回転させるための減速機付のモータ11と、回転ドラム3内の大麦6を洗浄したり、発芽に必要な水49を供給する水ポンプ41と、発芽に必要な水49を冷却するチラー13と、冷風や熱風を供給する暖冷送風機15などで構成されている(図1、図2)。
この回転ドラム3は、横長の略円柱状をしており、回転軸が水平方向に設置されており、左右一対の底面の直径が約1500mm、側面の長さが約2000mmであり、製造する時期などの必要量に応じて、100kg〜600kgまでの大麦から麦芽を一貫して製造できるように設計されている。すなわち、中小規模の地ビール工場に適した麦芽の製造装置として用いることができる。
収納容器2は、水密構造をした保水槽5と保水槽蓋7などで構成されている(図3(c))。なお、水49に浸麦されたり、相対湿度が100%、100℃程度の温度条件などで使用されたりするので、回転ドラム3や保水槽5などの収納容器2には、腐食しにくく、洗浄も容易なステンレス鋼を可能な限り用いるようにした。
この製麦装置1は、発芽時や焙燥時などにおいて、温度計21、湿度計23、液面水位計25などのデータが制御装置9に入力される。制御装置9は、これらのデータによって、回転ドラム3や保水槽5内の冷却を行うためのチラー13、熱風や冷風を保水槽5や回転ドラム3に供給するための暖冷送風機15やダンパー17、回転ドラム3を駆動するモータ11などを制御する(図1、図2)。
したがって、地域の特色を生かした原材料である大麦や天然水などを使用し、洗浄し、浸麦・発芽させ、焙燥し、除根して麦芽を製造するまでの全工程を一貫して自動化が可能にすることができる。
最初に、主な原材料である大麦6、例えば二条大麦は、後述するように回転ドラム3の側面に設置されている側面開閉扉部3bから投入される(図1、図3(b))。回転ドラム3は、ゆっくりと、例えば、10分間で1回転程度の回転速度にするための減速機付のモータ11によって回転駆動される。
次の洗浄工程では、ドレインバルブ43は閉じられ、水ポンプ41によって保水槽5内に水49が充填された状態とし、モータ11によって回転ドラム3を回転させて大麦の表面に付着している泥などのゴミを洗浄する。その後、ドレインバルブ43を開いて汚れた水49を排出し、さらに新たな水49を供給して洗浄する工程を必要に応じて2〜3回程度繰り返す。
暖冷送風機15からの冷風や熱風は、ダンパー17によってエアバブル用配管15aとドラム用エア配管15bのいずれか一方または両方に供給される。ダンパー17による風量は、洗浄、浸麦・発芽、焙燥などのそれぞれの製造工程や、保水槽5内の温度や湿度などによって制御装置19によって適宜調整される。
暖冷送風機15からの冷風や熱風は、例えば、公知の断熱圧縮や断熱膨張などの技術と、コンプレッサとヒートポンプなどの熱交換器を用いるエア・コンディショナーの技術を用いて送風することができる。
なお、図1において、1台の暖冷送風機15とダンパー17を用いる実施例を示しているが、大量の大麦を処理するような場合には暖冷送風機15を2台、3台と増やして使用することもできる。
洗浄工程、浸麦・発芽工程では、エア・バブル用配管15aに供給された熱風や冷風は、保水槽5内に充填されている水49にエア・バブル16を発生させて、チラー配管13aと接触しながら浮力によって上昇して回転ドラム3に到達する。その後、保水槽5又は保水槽用蓋7などに設置された排気バルブ45から大気中に放出される。したがって、発芽中の大麦が酸欠状態になるようなことはない。
なお、図1において、1台のチラー13を用いる実施例を示しているが、大量の大麦を加工するような場合には、多量の水49も含めた冷却をする必要があるので、チラー13の数を2台、3台と増やすこともできる。
一方、ドラム用エア配管15bに供給された熱風や冷風は、後述するように回転ドラム3の軸心4に設けられた開孔部4cから回転ドラム3内に供給される(図1、図5)。
浸麦・発芽工程では、ドラム用エア配管15bの途中に、図示されていない公知の加湿器を設置することによって、回転ドラム3内に供給される熱風や冷風の相対湿度をほぼ100%にすることができる。
焙燥工程では、ドレインバルブ43を開くことによって、保水槽5内に充填されている水49を外部に放出した状態で行う。そして、冷却を目的とするチラー13の作動は停止される。
暖冷送風機15からの熱風、例えば、100℃程度の熱風は、エアバブル用配管15aを経由して保水槽5の底面部分と、後述するようにドラム用エア配管15bを介して回転ドラム3の軸心4に設けられた開孔部4cから回転ドラム3内に供給されて、排気バルブ45から大気中に放出される(図1、図5)。すなわち、焙燥工程では、暖冷送風機15からの熱風によって発芽した大麦の乾燥・焙焦が行われる。
なお、排気バルブ45からの湿気を含む排気は、湿気部分を脱水処理等をした後に再び暖冷送風機15に供給して再利用をすることもできる(図示なし)。
すなわち、この製麦装置1は、収納容器2(主に保水槽5)に、水49を供給する手段と、供給された水49を加熱や冷却する手段を有している。また、この製麦装置1は、回転ドラム3及び収納容器2の一方又は両方に、冷風及び熱風を供給する手段を有するものである。
2.収納容器2及び回転ドラム3の構造
保水槽5や保水槽蓋7などの収納容器2と、回転ドラム3の構造について図3を用いて説明する。
保水槽5の底面部分は、回転ドラム3に近似するような曲面構造をしている。保水槽5の底面部分を曲面構造にすることによって、使用する水49の量や加熱や冷却に必要なエネルギーを節約することができる。保水槽5の最下部にはエアバブル用配管15aが設置されており、その上方にはチラー配管13aが設置されている(図3(a))。
浸麦・発芽工程において、保水槽5の内部は一定の液面まで水49で充填されており、エアバブル用配管15aからのエア・バブル16は、浮力によってチラー配管13aと接触しながら冷却され、水分(湿気)を含む状態で上昇して回転ドラム3に到達する。したがって、回転ドラム3内に充填されている大麦も加湿されて、加熱や冷却がされる。このエア・バブル16によって、収納容器2内の相対湿度をほぼ100%にすることができる。
なお、大麦の発芽工程は発熱反応を伴うものであり、15〜20℃程度の比較的低温、例えば、17℃程度で発芽させることが美味なビールを作る点からも重要なポイントになっている。
保水槽5には複数個の回転ローラ5aが設置されており、回転ドラム3はこの上に載置され、摩擦力の少ない状態で回転する(図3(a))。なお、回転ローラ5aとして、円筒形状をしたローラベアリングなどを用いることができる。
回転ドラム3は、略円柱形状をしており、左右一対の底面部3aと、回転軸となる軸心4の略中央部分から外側方向に放射状に形成されている細長い棒状をしたスポーク部4aを有している。そして、回転ドラム3の側面部分は、左右一対の底面部3aとスポーク部4aとによってしっかりと固定された構造をしている(図3(b))。
この側面部分には、左右一対の側面開閉扉部3aと、後述するように側面部分の大部分を構成する側面穿孔部3cとが設置されている(図3、図5)。
この側面開閉扉部3aを開くことによって、原材料である大麦6の供給や製造された麦芽の回収が行われるとともに、多数の穿孔3dを有する側面穿孔部3cから発芽に必要な水分や空気(酸素)が供給されるとともに、製造された麦芽の除根も行われる(図3(b)、図5)。
回転ドラム3は、保水槽5内に設置されており、その上方から保水槽蓋7が被せられる(図3(c))。保水槽蓋7には、ヒンジを用いて開閉する開閉蓋部7aが設けられており、開閉蓋部7aと回転ドラム3の側面開閉扉部3aを開くことによって、浸麦・発芽工程や焙燥工程における大麦や麦芽などの温度状態、乾燥状態及び着色状態などを直接観察したり、サンプルとして一部を採取したりすることができる。
保水槽蓋7や、図示されていない回転ドラム3には、左右一対のフック係止部7bが設置されている。このフック係止部7bに、クレーン9のフックを掛けて吊り上げたり、水平方向に移動させたりすることができる(図3(c))。
保水槽5には、2個の液面水位計35が設置されており、水洗工程や浸麦・発芽工程における水49の液面47を常に監視することができる(図1、図3(c))。上述したように、本装置は大麦の質量(体積)として100〜600kgの加工が可能なものである。
そこで、大麦の質量(体積)に応じて、水49の液面47の監視や制御が容易なように、大麦が少量の場合と大量の場合とに分けて対応できるように、本実施例では2個の液面水位計35を設置した。この場合において、水洗工程での液面47はやや低めに、浸麦・発芽工程での液面47はやや高めに設定するのがより好ましいことがわかった。
3.製造された麦芽の回収
完成した麦芽を回収する工程について説明する(図4)。最初に、クレーン9のフックを保水槽蓋7のフック係止部7bに掛けて吊り上げて、保水槽5から取り外す(図4(a))。なお、保水槽5と保水槽蓋7とをヒンジ等を用いて係止して、保水槽蓋7を回動させて開閉するような構造にすることもできる。
次に、クレーン9のフックを回転ドラム3の軸心4に掛けて吊り上げて、保水槽5から取り外す(図4(b))。そして、回転ドラム3の軸心4を、専用の回転ドラム係止具10に回転可能な状態に載置する(図4(c))。
この状態で、上述した左右一対の側面開閉扉部3aが下方になるように手動で回転ドラム3を回転させた後に、側面開閉扉部3aを開いて図示されていない専用の容器に完成した麦芽を自然落下させて回収する。
4.回転ドラムの構造
図5を用いて、本発明に係わる回転ドラム3の構造について詳細に説明する。
(1)軸心4の構造
変速機を有するモータ11、モータ・シャフト11aを介して、中空で細長い円筒形状をした回転ドラム3の軸心4に回転駆動力が伝達される。そして、回転ドラム3は、その側面に当接されている複数個の回転ローラ5aに載置された状態で回転駆動される。なお、図5において、保水槽5の底部に設置されているエア・バブル用配管15aやチラー配管13aなどの記載は省略されている。
中空な円筒形状をした軸心4は、モータ11からの回転力を伝達する以外に、暖冷送風機11からの冷風や熱風を回転ドラム3の内部の大麦(麦芽)に供給する機能も有している。そして、浸麦・発芽工程では熱風や冷風を供給して発芽時の温度を17℃程度に制御するとともに、焙燥工程では熱風を供給して加熱して乾燥・焙焦を行うものである。
すなわち、暖冷送風機11からの冷風や熱風は、その一部または全部がダンパー17、ドラム用エア配管15bを介して中空な円筒形状をした軸心4に供給される(図1)。軸心4には多数の開孔部4cが形成されており、この開孔部4cを介して回転ドラム3の内側から冷風や熱風が大麦や麦芽に供給される(図5(a)右上部に図示。)。
ここで、図示されているように、多数の開孔部4cを軸心4に沿って螺旋状に設けることによって、いろいろな方向から同時に送風することができるので、より効率よく大麦(麦芽)の冷却や加熱が可能になることが分かった(図5(a)右上部に図示。)。したがって、この螺旋状をした開孔部4cの構造は省エネルギーの面からも好ましいものである。
(2)回転ドラム3の側面部構造
回転ドラム3の側面部分には、側面開閉扉部3bの部分を除いて多数の穿孔3dを有する側面穿孔部3cを設けるようにした(図5(a)左上部に図示。)。この穿孔3dの部分から洗浄工程や浸麦・発芽工程では酸素を含む比較的低温の水や水蒸気が、焙燥工程では熱風がそれぞれドラム内に出入することになる。
ここで、穿孔3dの直径として2mm程度にすると、内部の大麦(麦芽)がこぼれて落下することがなく、浸麦・発芽工程で伸びた根の部分を焙燥工程において同時に除根が可能になることが分かった。したがって、回転ドラム3の側面に、多数の穿孔3dを有する側面穿孔部3cを設けることによって、除根工程を省略することができる。
なお、使用する原材料の状態(二条大麦、六条大麦、産地、天候等)や浸麦・発芽時の含水量などによって穿孔3dの直径を適宜選択して使用することが好ましい。
(3)撹拌羽根4b
回転ドラム3の内側の側面部分には、撹拌羽根4bを設置するようにした(図5)。そして、この撹拌羽根4bは、回転ドラム3の内側の底面部3aと、スポーク部4aとの間に跨るように固定して設置した(図5(a))。
図5では、一実施例としてスポーク部4aの左右に、一対の平板状をした撹拌羽根4bが軸心4と平行になるように設置された実施例が示されている。なお、スポーク部4aから底面部3aに向けて螺旋状のねじりなどを加えるように設置することもできる。
回転ドラム3と撹拌羽根4bとは同じ回転数で回転する。そして、内部の大麦(麦芽)は、すくい上げられては自然落下するという撹拌が繰り返されることになる。したがって、大麦(麦芽)は均一に撹拌されるので、効率的に洗浄が可能であるとともに、ほぼ一定の温度、湿度及び酸素濃度で冷風や熱風が供給されることが分かった。
なお、撹拌羽根4bとして、側面穿孔部3cと同様に多数の穿孔3dを形成することによって、内部の大麦(麦芽)の温度分布や湿度分布をさらに均一にできるのでより好ましいことが分かった。したがって、内側の側面部分に撹拌羽根4bを有する回転ドラム3の構造は、省エネルギーの面からも好ましいものである。
二条大麦を原材料とし、本発明に係わる製麦装置1を用い、図6に示される製造工程で麦芽を製造し、その麦芽から黄金色をしたいわゆるピルスナー・ビールを製造した。
なお、本発明は、図6に示される製造工程の一部である製麦工程の製造装置や製造方法に関するものである。そして、麦芽を製造した後の仕込・熟成工程は従来からの装置及び方法を用いているので、後工程である仕込・熟成工程については簡単な説明のみに留めることにする。
図3(c)に示されるように、保水槽蓋7の開閉蓋部7aを開き、図3(b)に示されるように回転ドラム3の側面開閉扉部3bを開いて栃木県産の二条大麦300kgを投入し、それぞれの蓋を閉め、保水槽5内に水ポンプ41で水49を供給し、回転ドラム3を10分間で1回転程度の回転速度で、約30分回転(計3回転)させて表面を洗浄した後、ドレインバルブ43を開いて汚水を排水する。この洗浄工程は、必要に応じて複数回繰り返すのが好ましい。
次に、保水槽5内に水ポンプ41で新たな水49を供給し、回転ドラム3を10分間で1回転程度の回転速度で回転し、チラー13からの冷媒と暖冷送風機15からの冷風を用いて冷却をして、大麦(麦芽)の温度が15〜20℃、相対湿度98〜100%、大麦の最終的な含水率が45%程度になるように数日間、例えば、約6日間程度にわたって浸麦・発芽をさせた。
その後、ドレインバルブ43を開いて水49を排水し、回転ドラム3を10分間で1回転程度の回転速度で回転し、暖冷送風機15からの約120℃の熱風を用いて、約4日間にわたって製造された麦芽の最終温度が約90℃になるように加熱し、焙燥して麦芽を製造した。
なお、本発明に係わる製麦装置を用いると、焙燥工程において生成された麦芽の根のほとんどの部分が除根されていることが分かった。ここで、回転ドラム3の側面穿孔部3cの穿孔3dの直径として、2mm程度にすると大麦(麦芽)がこぼれて落下することもなく、浸麦・発芽工程で伸びた根の部分の除根も十分に可能になることが分かった。したがって、回転ドラム3の側面に多数の穿孔3dを有する側面穿孔部3cを設けることによって除根工程を省略することができる。
後工程である仕込・熟成工程では、製造された麦芽を粉砕し、温水を加えて糖化させてろ過し、ホップを加えて煮沸し、冷却した後にビール酵母を加えて発酵・熟成させ、一部はろ過して酵母などの濁り成分を除去した透明なビールとし、他の一部はそのまま濁りビールとした。
本発明に係わる製麦装置で製造された麦芽を用いたピルスナー・ビールと、従来の製造方法によるビールとを20人のパネラーによって試飲してもらったところ、それぞれの製法による味覚やのどごし等の差異は認められないという良好な結果が得られた。
二条大麦を原材料とし、本発明に係わる製麦装置1を用い、図7に示される製造工程で麦芽を製造し、その麦芽からいわゆる黒ビールを製造した。なお、実施例1とは、ほとんどの製造工程が同一であるので相違部分である黒ビール用の焙燥工程のみを詳細に説明する。
浸麦・発芽させた後、ドレインバルブ43を開いて水を排水し、回転ドラム3を10分間で1回転程度の回転速度とし、暖冷送風機15からの熱風を用いて、約4日間にわたって製造された麦芽の最終温度が約220℃になるように加熱して焙燥し、黒色の麦芽を製造した。
そして、実施例1で製造した麦芽が90質量%、実施例2で製造した黒色の麦芽を10質量%として混合した麦芽を用いて黒ビールを製造した。なお、焙燥時の温度を高くすることによって、製造されるビールに特色ある色(褐色又は黒色)と香気とを付与することができる。
本発明に係わる製麦装置で製造された麦芽を用いた黒ビールと、従来の製造方法による黒ビールとを20人のパネラーによって試飲してもらったところ、それぞれの製法による味覚やのどごし等の差異は認められないという良好な結果が得られた。
二条大麦を原材料とし、本発明に係わる製麦装置1を用い、図8に示される製造工程で麦芽を製造し、その麦芽から黄金色をしたいわゆるピルスナー・ビールを製造した。
図8に示される場合には、原材料として大麦以外に副原料として米粉、トウモロコシ澱粉などの安価な材料を用いる方法であり、大手のビール工場などで一般的に採用されている製造方法である。なお、実施例1とは、ほとんどが同一の製造工程であるので相違部分である副原料の添加工程のみを説明する。
図8に示される製造工程は、粉砕した麦芽の一部と副原料である米粉、トウモロコシ澱粉などを煮沸し、水を加えて冷却し、残りの麦芽を加えて糖化するものである。この方法によると、高価な大麦に替えて安価な米粉、トウモロコシ澱粉などの副原料を使用することができる。
しかしながら、上述した実施例1や実施例2のビールに比べて、この方法で製造されたビールの味はやや劣るので、地域の特色を生かした地ビールとしてはあまり製造されていないのが現状である。
本発明に係わる製麦装置で製造された麦芽を用いたピルスナー・ビールと、従来の製造方法によるピルスナー・ビールとを20人のパネラーによって試飲してもらったところ、それぞれの製法による味覚やのどごし等の差異は認められないという良好な結果が得られた。
なお、詳細な説明は省略しているが、本発明に係わる麦芽は、ビール以外の発泡酒などにも用いることができることは言うまでもない。
上述したように、本発明に係わる製麦装置は、小型・コンパクトな構造をしているので安価で製造できるという特長がある。
また、本発明に係わる製麦装置を用いると、地域の特色を生かした原材料である大麦や天然水などを用いて洗浄し、浸麦・発芽させ、焙燥し、除根して麦芽を製造するまでの全工程を一貫して自動化して行うことができる。
加えて、浸麦・発芽工程や焙燥工程において、効率よく大麦(麦芽)の冷却や加熱が可能になるので省エネルギーの面からも好ましいものである。
さらに加えて、回転ドラム3の側面に多数の穿孔3dを有する側面穿孔部3cを設けることによって、焙燥工程で除根も同時に可能になるので、除根工程を省略することができる。
本発明に係わる製麦装置は、ビールや発泡酒などの原材料となる麦芽の製造装置として利用することができる。
1 製麦装置
2 収納容器
3 回転ドラム
3a 底面部
3b 側面開閉扉部
3c 側面穿孔部
3d 穿孔
4 軸心
4a スポーク部
4b 撹拌羽根
4c 開孔部
5 保水槽
5a 回転ローラ
6 大麦
7 保水槽蓋
7a 開閉蓋部
7b フック係止部
9 クレーン
10 回転ドラム係止具
11 モータ
11a モータ・シャフト
13 チラー
13a チラー配管
15 暖冷送風機
15a エアバブル用配管
15b ドラム用エア配管
16 エア・バブル
17 ダンパー
19 制御装置
21 温度計
23 湿度計
25 液面水位計
41 水ポンプ
43 ドレインバルブ
45 排気バルブ
47 液面
49 水

Claims (6)

  1. 大麦を水洗し、浸麦・発芽させ、焙燥し、除根して麦芽を製造する製麦装置において、
    前記製麦装置は、
    大麦を収納した状態で回転することが可能な回転ドラムと、該回転ドラムが設置される収納容器とを有するものであり、
    前記回転ドラムの側面には、多数の穿孔を有しており、
    前記収納容器には、水を供給する手段と、該水を冷却する手段とを有しており、
    前記回転ドラム及び前記収納容器には、冷風及び熱風を供給する手段を有するものであることを特徴とする製麦装置。
  2. 前記回転ドラムの側面は、
    左右一対の底面部と、軸心の略中央部分から外側方向に放射状に形成されている細長いスポーク部によって固定されており、
    前記軸心は、
    中空な円筒形状をしており、前記冷風や前記熱風を前記回転ドラムの内部に供給するための多数の開孔部が形成されている
    ことを特徴とする請求項1記載の製麦装置。
  3. 前記開孔部は、
    前記軸心に沿って螺旋状に設けられている
    ことを特徴とする請求項2記載の製麦装置。
  4. 前記回転ドラムの内側の側面部分には、
    撹拌羽根が設置されており、
    該撹拌羽根は、前記回転ドラムの底面部と前記スポーク部との間に跨るように固定されている
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の製麦装置。
  5. 前記撹拌羽根には、
    多数の穿孔が形成されている
    ことを特徴とする請求項4記載の製麦装置。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載された製麦装置を用いて、大麦から麦芽を製造することを特徴とする製麦方法。
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