JP5549977B2 - Nmrプローブおよびnmr装置 - Google Patents

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Description

本発明は、NMRプローブおよびNMR装置に関する。
NMR(Nuclear Magnetic Resonance)装置は、静磁場中に置かれた試料中の観測核に高周波磁場を照射し、その後、観測核から放射される微小なNMR信号を検出し、その信号に含まれている分子構造情報を抽出することによって分子構造を解析する装置である。
NMR測定の1つの手法として、複数の核種を励起させて多重共鳴させる測定法が知られている。このような測定に用いるNMRプローブは、一般的に、試料中の観測核に高周波磁場を照射し、かつその観測核から放射されるNMR信号を検出するための観測用のサンプルコイルと、試料中の非観測核に高周波磁場を照射して観測核から非観測核をデカップルするためのデカップル用のサンプルコイルと、を備えている。
図26は、核種の共鳴周波数を示す表である。図26の化学記号は、観測核の種類、数値は、18テスラ(T)の静磁場中での観測核の共鳴周波数を表しており、単位はメガヘルツ(MHz)である。図26に示すように、観測する核種によって共鳴周波数が異なるため、さまざまな核種のNMRスペクトルを測定するためには、数十〜数百MHzまでの広い周波数帯域を観測できるNMRプローブが必要となる。
ところが、このような広い周波数帯域を1つのサンプルコイルで感度よく観測できるNMRプローブを得ることは技術的に困難である。また、検出感度を高めるためには、観測用のサンプルコイルを試料に近づけて、充填率を高めることが望ましい。したがって、H核、H核、19F核のように共鳴周波数が比較的高い核種を観測する場合には、試料の近傍に観測用の高い周波数帯域を有するサンプルコイル(以下「HFコイル」ともいう)が配置され、当該HFコイルの外側にデカップル用の低い周波数帯域を有するサンプルコイル(以下「LFコイル」ともいう)が配置されたNMRプローブが用いられる。一方、205Tl核〜103Rh核のように共鳴周波数が比較的低い核種を観測する場合には、試料の近傍に観測用のLFコイルが配置され、当該LFコイルの外側にデカップル用のHFコイルが配置されたNMRプローブが用いられる。
このように、高い感度を得るためには、観測対象の核種に応じてNMRプローブを交換しなければならなかった。そのため、観測対象の核種を変えるごとに、NMRプローブの交換や、NMRプローブの交換に伴うNMR装置の調整を行わなければならなかった。そのため、高い共鳴周波数の核種と低い共鳴周波数の核種をともに高感度で観測できるNMRプローブが求められている。
特開2001−41913号公報
NMR測定では、上述したように試料とサンプルコイルとの間の距離が小さいほど、検出感度が高い。したがって、高い共鳴周波数の核種と低い共鳴周波数の核種をともに高感度で観測できるNMRプローブを得るためには、2つのサンプルコイル(HFコイルとLFコイル)とも試料に近づけることが望ましい。しかしながら、外側に配置されたサンプルコイルを試料に近づけると、外側に配置されたサンプルコイルと内側に配置されたサンプルコイルとの間の距離が小さくなる。これにより、2つのサンプルコイル間に強いカップリング(誘導結合および静電結合)が生じ、Q値の低下、クロストークによる相互のチューニング干渉等が起こってしまう場合がある。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、高い共鳴周波数の核種と低い共鳴周波数の核種をともに高感度で観測できるNMRプローブを提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記NMRプローブを有するNMR装置を提供することにある。
(1)本発明に係るNMRプローブは、試料を収容し、Z軸を中心軸とする円筒状の筒体と、前記試料中の観測核に前記Z軸と直交するX軸の方向から高周波磁場を照射し、かつ前記試料中の観測核から放射されるNMR信号を検出する第1サンプルコイルと、前記試料中の観測核に前記Z軸および前記X軸と直交するY軸の方向から高周波磁場を照射し、かつ前記試料中の観測核から放射されるNMR信号を検出する第2サンプルコイルと、を含み、前記第1サンプルコイルは、前記筒体の内側および外側のうちの一方に、YZ平面に関して対称に配置された一対の第1コイルを有し、前記第1コイルは、前記Z軸の方向に延び、前記Z軸まわりに所定の幅を有する第1コイル部分と、ZX平面に関して前記第1コイル部分と対称に前記Z軸の方向に延び、前記所定の幅を有する第2コイル部分と、を有し、XY平面において、前記第1コイル部分の前記第2コイル部分側の端部と前記第2コイル部分の前記第1コイル部分側の端部とが前記Z軸まわりでなす角度が、90°であり、前記所定の幅が前記Z軸まわりでなす角度が、27°であり、前記第2サンプルコイルは、前記筒体の内側および外側のうちの他方に、前記ZX平面に関して対称に配置された一対の第2コイルを有し、前記第2コイルは、前記Z軸の方向に延び、前記第2コイルの内縁の一部を規定する第3コイル部分と、前記YZ平面に関して前記第3コイル部分と対称に前記Z軸の方向に延び、前記第2コイルの内縁の一部を規定する第4コイル部分と、を有し、前記XY平面において、前記第3コイル部分と前記第4コイル部分とが前記Z軸まわりでなす角度は、90°であり、前記筒体は、誘電体であり、前記第1サンプルコイルのインダクタンスL1と、前記第2サンプルコイルのインダクタンスL2とは、1/10≦L1/L2≦1/4の関係を満たす。
このようなNMRプローブによれば、後述するように、第1サンプルコイルと第2サンプルコイルを近接して配置することができる。したがって、高い共鳴周波数の核種と低い共鳴周波数の核種をともに高感度で観測することができる。
(2)本発明に係るNMRプローブは、試料を収容し、Z軸を中心軸とする円筒状の筒体と、前記試料中の観測核に前記Z軸と直交するX軸の方向から高周波磁場を照射し、かつ前記試料中の観測核から放射されるNMR信号を検出する第1サンプルコイルと、前記試料中の観測核に前記Z軸および前記X軸と直交するY軸の方向から高周波磁場を照射し、かつ前記試料中の観測核から放射されるNMR信号を検出する第2サンプルコイルと、を含み、前記第1サンプルコイルは、前記筒体の内側および外側のうちの一方に、YZ平面に関して対称に配置された一対の第1コイルを有し、前記第1コイルは、前記Z軸の方向に延び、前記Z軸まわりに所定の幅を有する第1コイル部分と、ZX平面に関して前記第1コイル部分と対称に前記Z軸の方向に延び、前記所定の幅を有する第2コイル部分と、を有し、XY平面において、前記第1コイル部分の前記第2コイル部分側の端部と前記第2コイル部分の前記第1コイル部分側の端部とが前記Z軸まわりでなす角度が、108°であり、前記所定の幅が前記Z軸まわりでなす角度が、18°であり、前記第2サンプルコイルは、前記筒体の内側および外側のうちの他方に、前記ZX平面に関して対称に配置された一対の第2コイルを有し、前記第2コイルは、前記Z軸の方向に延び、前記第2コイルの内縁の一部を規定する第3コイル部分と、前記YZ平面に関して前記第3コイル部分と対称に前記Z軸の方向に延び、前記第2コイルの内縁の一部を規定する第4コイル部分と、を有し、前記XY平面において、前記第3コイル部分と前記第4コイル部分とが前記Z軸まわりでなす角度は、90°であり、前記筒体は、誘電体であり、前記第1サンプルコイルのインダクタンスL1と、前記第2サンプルコイルのインダクタンスL2とは、1/10≦L1/L2≦1/4の関係を満たす。
このようなNMRプローブによれば、後述するように、第1サンプルコイルと第2サンプルコイルを近接して配置することができる。したがって、高い共鳴周波数の核種と低い共鳴周波数の核種をともに高感度で観測することができる。
(3)本発明に係るNMRプローブにおいて、前記筒体は、比誘電率が互いに異なる少なくとも2つの領域を有していることができる。
このようなNMRプローブによれば、第1サンプルコイルと第2サンプルコイルとの間の結合容量を局所的に制御することができる。
(4)本発明に係るNMRプローブにおいて、前記筒体は、前記第1サンプルコイルおよび前記第2サンプルコイルと独立して前記Z軸まわりに回転可能に形成されていることができる。
このようなNMRプローブによれば、第1サンプルコイルと第2サンプルコイルとの間の結合容量の制御を容易に行うことができる。
(5)本発明に係るNMRプローブにおいて、前記筒体は、前記Z軸と直交するラジアル方向に積層された、比誘電率が互いに異なる複数の層を含んで構成されていることができる。
このようなNMRプローブによれば、第1サンプルコイルと第2サンプルコイルとの間の結合容量を局所的に制御することができる。
(6)本発明に係るNMRプローブにおいて、前記筒体は、前記第1サンプルコイルおよび前記第2サンプルコイルと独立して交換可能に形成されていることができる。
このようなNMRプローブによれば、第1サンプルコイルと第2サンプルコイルとの間の結合容量の制御を容易に行うことができる。
(7)本発明に係るNMRプローブにおいて、前記筒体の外側に形成されたNMRロックのための第3サンプルコイルをさらに含み、前記Z軸と前記第3サンプルコイルとの間の距離Dと、前記筒体の外側に形成された前記第1サンプルコイルまたは前記第2サンプルコイルと前記Z軸との間の距離dとは、D≧2×dの関係を満たすことができる。
このようなNMRプローブによれば、第3サンプルコイルと第1サンプルコイルおよび第2サンプルコイルとの間の電磁界的な相互作用を低減できる。
(8)本発明に係るNMRプローブは、試料を収容し、Z軸を中心軸とする円筒状の筒体と、前記筒体の内側および外側のうちの一方に形成され、前記試料に前記Z軸方向から高周波磁場を照射し、かつ前記試料中の観測核から放射されるNMR信号を検出する第1サンプルコイルと、前記筒体の内側および外側のうちの他方に形成され、前記試料に前記Z軸方向から高周波磁場を照射し、かつ前記試料中の観測核から放射されるNMR信号を検出する第2サンプルコイルと、を含み、前記筒体は、誘電体であり、前記第1サンプルコイルのインダクタンスL1と、前記第2サンプルコイルのインダクタンスL2とは、1/10≦L1/L2≦1/4の関係を満たす。
このようなNMRプローブによれば、後述するように、第1サンプルコイルと第2サンプルコイルを近接して配置することができる。したがって、高い共鳴周波数の核種と低い共鳴周波数の核種をともに高感度で観測することができる。
(9)本発明に係るNMRプローブにおいて、前記第1サンプルコイルの前記高周波磁場の周波数は、19F核の共鳴周波数以上であり、前記第2サンプルコイルの前記高周波磁場の周波数は、19F核の共鳴周波数未満であることができる。
(10)本発明に係るNMR装置は、本発明に係るNMRプローブを含む。
このようなNMR装置によれば、高い共鳴周波数の核種と低い共鳴周波数の核種をともに高感度で観測することができる。
第1実施形態に係るNMRプローブを模式的に示す斜視図。 第1実施形態に係るNMRプローブを模式的に示す断面図。 導体上に形成されたスロットの効果について説明するための図。 スロット幅と信号減衰率との相関を示すグラフ。 第1実施形態に係るNMRプローブの構成を概略的に示す図。 第1実施形態に係るNMRプローブの構成を概略的に示す等価回路。 サンプルコイル間の結合定数と共振電圧との相関を示すグラフ。 第1実施形態の実験例に係るNMRプローブを模式的に示す断面図。 第1実施形態の実験例の結果を示すグラフ。 第1実施形態の第1変形例に係るNMRプローブを模式的に示す斜視図。 第1実施形態の第2変形例に係るNMRプローブを模式的に示す断面図。 第1実施形態の第2変形例に係るNMRプローブの構成を示す図。 第2実施形態に係るNMRプローブを模式的に示す断面図。 第2実施形態の第1実験例の結果を示すグラフ。 第2実施形態の第1実験例の結果を示すグラフ。 第2実施形態の第2実験例の結果を示すグラフ。 第2実施形態の第2実験例の結果を示すグラフ。 第3実施形態に係るNMRプローブを模式的に示す斜視図。 第3実施形態に係るNMRプローブのサンプルコイルを模式的に示す斜視図。 第3実施形態に係るNMRプローブを模式的に示す断面図。 第3実施形態に係るサンプルコイルの一例を模式的に示す斜視図。 第3実施形態の変形例に係るNMRプローブを模式的に示す斜視図。 第4実施形態に係るNMR装置の構成を概略的に示す図。 第2筒体の変形例を模式的に示す斜視図。 第2筒体の変形例を模式的に示す斜視図。 核種の共鳴周波数を示す表。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.第1実施形態
1.1. 第1実施形態に係るNMRプローブ
まず、第1実施形態に係るNMRプローブについて説明する。図1(A)および図1(B)は、本実施形態に係るNMRプローブ100を模式的に示す斜視図である。図2は、NMRプローブ100を模式的に示すXY平面における断面図である。なお、図1(A)は、図2に示すA方向から見た斜視図であり、図1(B)は、図2に示すB方向から見た斜視図である。また、図1(A)および図1(B)では、第1筒体10、第2筒体20の各層20a,20b,20c、および試料Sの図示を省略している。
NMRプローブ100は、図1および図2に示すように、第1筒体10と、第2筒体20と、第1サンプルコイル30と、第2サンプルコイル40と、を含む。
第1筒体10は、第1サンプルコイル30を保持するためのボビンである。第1筒体10は、図2に示すように、第2筒体20の内側に配置されている。第1筒体10は、例えば、Z軸を中心軸とする円筒状である。ここで、Z軸方向は、静磁場の方向である。第1筒体10の内側には、試料Sが収容される。第1筒体10の材質としては、例えば、石英、サファイア、テフロン(登録商標)が挙げられる。第1筒体10と第2筒体20とは、Z軸方向から見て、Z軸を中心とする同心円状に配置されている。なお、第1サンプルコイル30がそれ自体で形状を保持できるように形成されていれば第1筒体10はなくてもよい。
第2筒体20は、第1筒体10の外側に配置されている。第2筒体20は、図1に示すように、Z軸を中心軸とする円筒状である。第2筒体20は、図2の例では、Z軸と直交するラジアル方向に積層された第1層20a、第2層20b、および第3層20c、で構成されている。第1〜第3層20a、20b、20cは、誘電体であり、例えば、誘電正接(tanδ)が0.0001〜0.001程度、比誘電率が1〜10程度、絶縁耐力が10kV以上の材料からなる。第1〜第3層20a,20b,20cの材料としては、例えば、石英、サファイア、テフロン(登録商標)が挙げられる。第1〜第3層20a,20b,20cのいずれかが空隙であってもよい。第1〜第3層20a,20b,20cの比誘電率は、互いに異なっていてもよく、また、同じであってもよい。第2筒体20の厚さ(ラジアル方向の幅)は、例えば、0.1〜0.6mm程度である。第2筒体20は、図示の例では、3層だが、積層される層の数は特に限定されず、例えば、単層であってもよい。第2筒体20の内面は、第1サンプルコイル30と接しており、第2筒体20の外面は、第2サンプルコイル40と接している。
NMRプローブ100では、第2筒体20によって、サンプルコイル30,40間の結合容量(静電容量)を制御することができる。具体的には、第2筒体20の比誘電率を制御することにより、サンプルコイル30,40間の結合容量を制御することができる。例えば、第2筒体20がサンプルコイル30,40と独立して交換可能に形成されることで、サンプルコイル30,40間の結合容量を容易に制御することができる。例えば、第2筒体20を構成する第1〜第3層20a,20b,20cの各々がサンプルコイル30,40と独立して交換可能に形成されていてもよい。
第1サンプルコイル30は、試料S中の観測核にX軸方向から高周波磁場(RF磁場)を照射し、かつ試料S中の観測核から放射されるNMR(高周波磁場)信号を検出するためのコイルである。ここで、X軸とはZ軸と直交する軸である。第1サンプルコイル30は、図26に示すH核、H核、19F核のように比較的高い共鳴周波数(以下「HF」ともいう)を有する核種を観測するためのサンプルコイル(HFコイル)である。第1サンプルコイル30が照射する高周波磁場の周波数は、例えば、19F核の共鳴周波数以上である。
第1サンプルコイル30は、第2筒体20の内側にYZ平面に関して対称に配置された一対の第1コイル32,34を有している。第1サンプルコイル30は、例えば、ヘルムホルツ型のコイルである。第1コイル32,34は、図1(A)に示すように、コイルの内縁および外縁が四角形状の方形(馬蹄形)コイルである。図示の例では、第1コイル32,34の各々は、箔材で形成された1ターンコイルである。第1コイル32,34は、試料Sを介して対向するように配置されている。第1コイル32,34は、第2筒体20の内面に沿って形成されている。第1サンプルコイル30は、例えば、それ自体で形状を保持できるように形成されている。
第1コイル32,34の各々は、Z軸方向に延び、Z軸まわりに所定の幅を有する第1コイル部分36と、ZX平面に関して第1コイル部分36と対称にZ軸方向に延び、所定の幅を有する第2コイル部分37と、第1コイル部分36と第2コイル部分37とを接続する接続コイル部分38と、を有している。コイル部分36,37,38は、第1コイル32,34の各々において、コイルの内縁の一部およびコイルの外縁の一部を規定している。第1コイル32と第2コイル34は、ZY平面に関して対称に配置され、ZY平面に直交するX軸上に第1コイル32の中心および第1コイル34の中心が位置している。
第2サンプルコイル40は、試料S中の観測核にY軸方向から高周波磁場(RF磁場)を照射し、かつ試料S中の観測核から放射されるNMR(高周波磁場)信号を検出するためのコイルである。ここで、Y軸とは、図示の例では、X軸およびZ軸と直交する軸である。なお、X軸とZ軸が直交する、Y軸とZ軸が直交するとは、2つの軸が厳密に直交する(90°で交わる)場合をいう。また、X軸とY軸が直交するとは、X軸とY軸とが厳密に直交する(90°で交わる)場合と、X軸とY軸とが略直交する場合を含むものとする。X軸とY軸とが略直交するとは、X軸とY軸とが85°以上95°以下の範囲で交わる場合をいう。第2サンプルコイル40は、図26に示す205Tl核〜103Rh核のような比較的低い共鳴周波数(以下「LF」ともいう)を有する核種を観測するためのサンプルコイル(LFコイル)である。第2サンプルコイル40が照射する高周波磁場の周波数は、例えば、19F核の共鳴周波数未満である。
第2サンプルコイル40は、第2筒体20の外側にZX平面に関して対称に配置された一対の第2コイル42,44を有している。第2サンプルコイル40は、例えば、ヘルムホルツ型のコイルである。第2コイル42,44は、図1(B)に示すように、コイルの内縁および外縁が四角形状の方形コイルである。第2コイル42,44の各々は、図示の例では、線材で形成された2ターンコイルであるが、ターン数(巻き数)は、後述するインダクタンスが得られれば、特に限定されない。第2コイル42,44は、試料Sを介して互いに対向するように配置されている。第2コイル42,44は、第2筒体20の外面に沿って形成されている。第2サンプルコイル40は、例えば、それ自体で形状を保持できるように形成されている。
第2コイル42,44の各々は、Z軸方向に延びる第3コイル部分46と、YZ平面に関して第3コイル部分46と対称であって、Z軸方向に延びる第4コイル部分47と、第3コイル部分46と第4コイル部分47とを接続する接続コイル部分48と、を有している。コイル部分46,47,48は、第2コイル42,44の各々において、コイルの内縁の一部を規定している。第2コイル42と第2コイル44は、ZX平面に関して対称に配置され、ZX平面に直交するY軸上に第2コイル42の中心および第2コイル44の中心が位置している。
第1サンプルコイル30と第2サンプルコイル40とは、近接して配置されている。具体的には、第1サンプルコイル30と第2サンプルコイル40との間の距離は、0.1mm〜0.6mm程度である。ここで、第1サンプルコイル30と第2サンプルコイル40との間の距離とは、第1サンプルコイル30が接する第2筒体20の内面と、第2サンプルコイル40が接する第2筒体20の外面と、の間の距離をいうことができる。すなわち、図示の例では、第1サンプルコイル30と第2サンプルコイル40との間の距離は、第2筒体20の厚さと等しい。
第1コイル部分36および第2コイル部分37のZ方向の長さa(図1(A)参照)と、第3コイル部分46および第4コイル部分47のZ方向の長さb(図1(B)参照)とは、例えば、ほぼ同じ長さである。
図2に示すように、XY平面(図2の例では、X軸およびY軸を含む平面)において、第1コイル部分36の第2コイル部分37側の端部36eと、第2コイル部分37の第1コイル部分36側の端部37eと、がZ軸まわりでなす角度θ11は、90°である。角度θ11は、第1コイル32,34の開口を規定するZ軸まわりの角度ともいえる。第1コイル部分36の幅(所定の幅)がZ軸まわりでなす角度θ12は、27°である。第2コイル部分37の幅(所定の幅)がZ軸まわりでなす角度θ13は、27°である。すなわち、第1コイル部分36の幅と、第2コイル部分37の幅は、同じ大きさである。
また、図2に示すように、XY平面において、第3コイル部分46と第4コイル部分47とがZ軸まわりでなす角度θ21は、90°である。角度θ21は、第3コイル部分46の中心と第4コイル47の中心とがZ軸まわりでなす角度ともいえる。
このように第1サンプルコイル30および第2サンプルコイル40を配置することで、第1コイル32の第1コイル部分36と、第1コイル34の第1コイル部分36と、の間に第1スロットS1を形成することができる。第1スロットS1とは、第1コイル32の第1コイル部分36と、第1コイル34の第1コイル部分36と、の間の隙間である。同様に、第1コイル32の第2コイル部分37と、第1コイル34の第2コイル部分37と、の間に第2スロットS2を形成することができる。第2スロットS2とは、第1コイル32の第2コイル部分37と、第1コイル34の第2コイル部分37と、の間の隙間である。第1スロットS1がZ軸まわりでなす角度θS1は、36°であり、第2スロットS2がZ軸まわりでなすθS2は、36°である。このように、角度θS1,S2を36°程度とすることにより、第2サンプルコイル40のRF磁場を効率よく試料Sに照射することができる。以下にその理由について説明する。
図3(a)〜図3(d)は、導体1000上に形成されたスロットSLの効果について説明するための図である。図3(a)に示すように、導体1000上にスロットSLを形成しない場合、導体1000上の流れる電流Iは一様な方向に流れる。そのため、電流Iによって生じる磁束が導体1000を通過する磁束を打ち消す効果が高い。図3(b)〜図3(d)を比べると、スロットSLの幅が大きくなるほど、異なる方向に流れる電流Iの割合が多くなる。そのため、電流Iによって生じる磁束が導体1000を通過する磁束を打ち消す効果が低くなる。したがって、スロットSLの幅が大きくなるほど、導体1000を通過する磁束が多くなる。
図4は、スロットの幅と信号減衰率との相関を示す図である。図4の横軸(SLOT WIDTH index)は、磁束が通過する導体上の領域に対するスロットの幅の割合を示すものである。例えば、スロットが磁束を通過する領域の全体に設けられている場合(すなわち、磁束を通過する領域に導体がない場合)、SLOT WIDTH indexは1であり、導体上にスロットがない場合、SLOT WIDTH indexは0である。図4の縦軸は、導体板を通過する磁束の減衰率を示している。図4では、実線が計算値を示し、波線が実用時の値を示す。
ここで、図2に示す第3コイル部分46と第4コイル部分47とがなす角度θ21は、90°であり、スロットS1,S2の角度θS1,S2は、36°である。すなわち、スロットS1,S2のSLOT WIDTH indexは、0.4(36°/90°)程度である。図4に示すようにSLOT WIDTH indexは、0.4の場合、SLOT WIDTH indexが0.1以下の場合(例えばスロットがない場合)と比べて、信号が減衰する割合は大幅に小さくなる。したがって、角度θS1,S2を36°程度とすることにより、第2サンプルコイル40で発生する磁束が第1コイル部分36および第2コイル部分37で減衰する割合を小さくすることができる。すなわち、第2サンプルコイル40のRF磁場を効率よく試料Sに照射することができる。
さらに、NMRプローブ100では、上述したように第1サンプルコイル30および第2サンプルコイル40を配置することにより、第1サンプルコイル30と第2サンプルコイル40との間の結合インダクタンス(相互インダクタンス)を最適化することができる。詳細については、後述する。
第1サンプルコイル30のインダクタンスL1は、第2サンプルコイル40のインダクタンスL2よりも低い。具体的には、第1サンプルコイル30のインダクタンスL1と、第2サンプルコイル40のインダクタンスL2とは、下記式(1)の関係を満たしている。
1/10≦L1/L2≦1/4・・・(1)
サンプルコイル30,40のインダクタンスL1,L2を、式(1)を満たすように設定することで、サンプルコイル30,40間の結合インダクタンスの制御を容易に行うことができる。
インダクタンスL1,L2は、例えば、サンプルコイル30,40のターン数(巻き数)やコイルを構成する導線の形状により調整することができる。図示の例では、第1サンプルコイル30を、箔材で形成された一対の1ターンコイルからなるヘルムホルツコイルとし、第2サンプルコイル40を、線材で形成された複数ターンのヘルムホルツコイルとすることで、インダクタンスL1,L2が上述した式(1)を満たすように調整されている。
第1コイル32,34および第2コイル42,44の材質は、例えば、銅を主体とし、銅の体積磁化率の1/50〜1/10程度、あるいは空気の体積磁化率相当に磁化率が制御された複合材料である。第1コイル32,34は、例えば、膜厚(ラジアル方向の長さ)が、数十μm〜数百μm程度の箔材である。第2コイル42,44は、例えば、断面が円形や矩形の線材からなり、断面が円形の場合、線材の太さは、数百μm〜数mm程度であり、断面が矩形の場合(平角線の場合)、厚さ(ラジアル方向の長さ)が数百μmであり、幅(円周方向の長さ)が数mm程度である。
図5は、NMRプローブ100の構成を示す図である。NMRプローブ100は、HF信号(HF側の高周波磁場信号)を同調、整合するためのHF回路110と、LOCK信号を同調、整合するためのLOCK回路120と、LF信号(LF側の高周波磁場信号)を同調、整合するためのLF回路130と、で構成されている。LOCK信号は、静磁場を補正するNMRロックのために用いられる信号である。ここでは、NMRロックを重水素核の共鳴を用いて行うため、LOCK回路120は、回路構成の容易さから第1サンプルコイル30を含んで構成されている。
端子T1は、HF回路110の入出力端子である。コンデンサC1およびコンデンサC2は、HF回路110のマッチングコンデンサである。コンデンサC3およびコンデンサC4は、HF回路110のチューニングコンデンサである。分離回路140および分離回路150は、HF信号を阻止するための回路である。分離回路140および分離回路150としては、例えば、LC並列共振、ヘリカル波長共振、レゾネータ等が挙げられる。端子T2は、LOCK回路120の入出力端子である。コンデンサC5およびコンデンサC6は、LOCK回路120のマッチングコンデンサである。コンデンサC7およびコンデンサC8は、LOCK回路120のチューニングコンデンサである。なお、LOCK回路120の入出力ノードは、コンデンサC6を介して、コンデンサC7のノードに連結されているが、コンデンサC6を介して、コンデンサC8のノードに連結されていてもよい。端子T3は、LF回路130の入出力端子である。コンデンサC9は、LF回路130のマッチングコンデンサである。なお、コンデンサC9は、HF回路110、LOCK回路120のように接地方式であってもよい。コンデンサC10およびコンデンサC11は、LF回路130のチューニングコンデンサである。LF回路130は、図示の例では、平衡共振型回路を形成している。これにより、共振周波数の広帯域化を図ることができる。LF回路130は、例えば、コンデンサC11を介さないで第2サンプルコイル40の一方の端がグランドに直接接地された不平衡共振型回路を形成してもよい。
図6は、NMRプローブ100の構成を示す等価回路である。第1サンプルコイル30は、コイル30−1〜30−6で分割されているものと等価であると考えることができる。第1サンプルコイル30のインダクタンスは、例えば、20〜30nHである。第2サンプルコイル40は、コイル40−1〜40−6で分割されているものと等価であると考えることができる。第2サンプルコイル40のインダクタンスは、例えば、240nH〜250nHである。対応するコイル30−1〜30−6と、コイル40−1〜40−6との間には、結合インダクタンスを介した結合が形成されている。対応するコイル40−1〜40−6とコイル40−1〜40−6との間の結合インダクタンスは、0〜数nH程度である。
結合容量Ccpl−1〜Ccpl−4は、サンプルコイル30,40間の局所的な結合容量である。各結合容量Ccpl−1〜Ccpl−4は、0〜数pF程度である。第1サンプルコイル30は、第1サンプルコイル30内で形成される数pF程度の共振容量C30を有している。第2サンプルコイル40は、第2サンプルコイル40内で形成される1pF程度の共振容量C40を有している。フィルターF1は、例えば、低挿入損失型のハイパスフィルタであり、フィルターF2は、例えば、低挿入損失型のローパスフィルターである。サンプルコイル30,40間の結合容量Ccpl−1〜Ccpl−4は、それぞれ2〜3pF程度になるように制御されている。
サンプルコイル30,40は、近接して配置されているため、図6に示すように、サンプルコイル30,40間には、結合インダクタンスを介した結合(誘導結合)、および結合容量を介した結合(静電結合)が形成される。このように、誘導結合と静電結合が同時に生じて相互作用していることを近接電磁結合という。NMRプローブ100では、サンプルコイル30,40間の結合インダクタンスおよび結合容量Ccpl−1〜Ccpl−4が最適化されることにより、近接電磁結合を利用して、クロストークによる相互のチューニング干渉を観測に関係しない周波数帯域に外すことができ、かつ高いQ値を有するHF回路110およびLF回路130を得ることができる。具体的には、サンプルコイル30,40のインダクタンスが上述した式(1)を満たし、サンプルコイル30,40が上述した位置関係(図2参照)に配置されることで、サンプルコイル30,40間の結合インダクタンスを最適化することができる。また、誘電体からなる第2筒体20により、サンプルコイル30,40間の結合容量を最適化することができる。
図7は、第1サンプルコイル30と第2サンプルコイル40との結合定数kと共振電圧Vの相関を示すグラフである。ここでは、サンプルコイル30,40間の結合容量を所定の値として、サンプルコイル30,40間の結合定数に対する、HF回路の回路効率およびLF回路の回路効率をシミュレーションにより求めた。
なお、HF回路110は、Hの共鳴周波数、LF回路130は、13Cの共鳴周波数を用いて評価を行った。また、図7に示す、V(H)w/o cplは、第1サンプルコイル30単独でシングルチューニング回路を形成したときのHF回路110で得られるコイル両端の共振電圧の最大値を示す。HF回路110において、この共振電圧を回路効率が100%の場合とする。V(13C)w/o cplは、第2サンプルコイル40単独でシングルチューニング回路を形成したときのLF回路130で得られるコイル両端の共振電圧の最大値を示す。LF回路130において、この共振電圧を回路効率が100%の場合とする。case1〜case3では、サンプルコイル30,40間の結合容量が異なっている。
図7に示すように、NMRプローブ100では、結合定数kが大きくなるに従って、特にHF回路110の回路効率(共振電圧)が低下する。NMRプローブ100では、HF回路110の回路効率およびLF回路130の回路効率が、それぞれ70%以上となるように結合インダクタンスを調整した。
NMRプローブ100は、例えば、以下の特徴を有する。
NMRプローブ100によれば、上述のように、近接電磁結合を利用して、クロストークによる相互のチューニング干渉を観測に関係しない周波数帯域に外すことができる。そのため、第1サンプルコイルと第2サンプルコイルを近接して配置することができる。したがって、NMRプローブ100によれば、高い共鳴周波数の核種と低い共鳴周波数の核種をともに高感度で観測することができる。
NMRプローブ100によれば、上述のように、近接電磁結合を利用して、高いQ値を有するHF回路110およびLF回路130を得ることができる。したがって、NMRプローブ100によれば、高感度化を図ることができる。
1.2. 第1実施形態に係るNMRプローブの実験例
次に、第1実施形態に係るNMRプローブの実験例について、図面を参照しながら説明する。
(1)本実験例で用いたNMRプローブ
まず、本実験例で用いたNMRプローブについて説明する。図8は、本実験例に係るNMRプローブを模式的に示すXY平面における断面図であり、図2に対応している。
第1コイル32,34は、コイル長(長さa)が20mm、厚さが0.116mmの磁化率補償した三層膜銅箔である。第1サンプルコイル30のインダクタンスL1は、25nH程度である。
第2コイル42,44は、コイル長(長さb)が20mm、径が0.83mmの磁化率補償したクラッド銅線である。第2サンプルコイル40のインダクタンスL2は、150nHである。
第1筒体10は、内径が5.75mm、外形が6.3mmである。第1筒体10の材質は、石英であり、比誘電率は、4である。
第2筒体20は、第1層20aと第2層20bとからなる。第1層20aは、空気であり、厚さは、0.084mmである。第1層20aの比誘電率は、1である。第2層20bは、内径が6.7mm、外径が7.5mmである。第2層20bの材質は、石英であり、厚さは、0.4mmである。第2層20bの比誘電率は、4である。
第1サンプルコイル30は、第1筒体10の外面に自立保持している。第2サンプルコイル40は、第2筒体20の外面に自立保持している。
ここで、第1コイル部分36の第2コイル部分37側の端部36e−1とZ軸とを結ぶ直線がY軸となす角度を、θとした。端部36e−1とは反対側の第1コイル部分36の端部36e−2とZ軸とを結ぶ直線がY軸となす角度を、θとした。同様に、第2コイル部分37の第1コイル部分36側の端部37e−1とZ軸を結ぶ直線がY軸となす角度を、θとした。端部37e−1とは反対側の第2コイル部分37の端部37e−2とZ軸を結ぶ直線がY軸となす角度を、θとした。第3コイル部分46の中心と第4コイル47の中心とがZ軸まわりでなす角度を角度θ21とした。
本実験例では、角度θを45°で固定し角度θの値を変えて角度θ−θに対する、HF回路110およびLF回路130のQ値、およびHF回路110(第1サンプルコイル30)およびLF回路130(第2サンプルコイル40)のRF磁場強度(B1強度ともいう)を示す90°パルス幅を求めた。Q値は、回路性能を表すものであり、Q値が高いほど、高感度であるといえる。90°パルス幅は、回路効率を示すものであり、90°パルス幅が短いほど、回路効率がよいといえる。なお、ここでは、HF側は、Hの共鳴周波数(H=500MHz)、LF側は、13Cの共鳴周波数(13C=125MHz)を用いて評価を行った。Q値は、ネットワークアナライザーを用いて測定した。また、HF回路110では、30Wでの90°パルス幅、LF回路130では、100Wでの90°パルス幅を評価した。角度θ21は、90°である。
(2)本実験例の結果
次に、本実験例の結果について説明する。
図9は、角度θ−θと、回路110,130のQ値との相関、および角度θ−θと90°パルス幅との相関を示すグラフである。
図9に示すように、HF回路110のQ値は、角度θ−θが27°付近までは急激に増加するが、27°以降は飽和していく。LF回路130のQ値は、角度θ−θが大きくなるに従って、ほぼ一定の割合で低下している。このHF回路110の傾向およびLF回路130の傾向から、NMRプローブ全体としては、角度θ−θが27°付近で良好なQ値が得られるといえる。なお、角度θ−θが26.9°のときのHF回路110のQ値は、173であり、LF回路130のQ値は、100である。このように、角度θ−θが26.9°のときに、HF回路110、LF回路130ともに高いQ値を有していることがわかった。
HF回路110の90°パルス幅は、角度θ−θが大きくなるに従って、小さくなり、27°付近で減少の割合が小さくなっている。LF回路130の90°パルス幅は、角度θ−θが大きくなるに従って、徐々に増加している。このHF回路110の傾向およびLF回路130の傾向から、NMRプローブ全体として、角度θ−θが18°〜27°付近で良好なパルス幅が得られているといえる。
本実験例の結果、角度θ−θが27°付近で、Q値およびパルス幅ともに良好な値が得られることがわかった。すなわち、角度θ−θが27°付近で、高感度かつ回路効率がよいNMRプローブが得られることがわかった。この角度θ−θが27°になるサンプルコイル30,40の配置は、すなわち、図2に示す、NMRプローブ100におけるサンプルコイル30,40の配置である。したがって、NMRプローブ100によれば、高い共鳴周波数の核種と低い共鳴周波数の核種をともに高感度かつ効率よく観測することができる。
1.3. 第1実施形態に係るNMRプローブの変形例
次に、第1実施形態に係るNMRプローブの変形例について説明する。なお、本変形例において、本実施形態に係るNMRプローブ100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
(1)第1変形例
まず、第1変形例に係るNMRプローブについて説明する。図10(A)および図10(B)は、本変形例に係るNMRプローブ200を模式的に示す斜視図である。なお、図10(A)および図10(B)では、第1筒体10、第2筒体20の各層20a,20b,20c、および試料Sの図示を省略している。
NMRプローブ100の例では、図1に示すように、第1サンプルコイル30が第2筒体20の内側に配置され、第2サンプルコイル40が第2筒体20の外側に配置されていた。これに対し、NMRプローブ200では、図10に示すように、第1サンプルコイル30が第2筒体20の外側に配置され、第2サンプルコイル40が第2筒体20の内側に配置されている。
NMRプローブ200によれば、NMRプローブ100と同様の効果を奏することができる。
(2)第2変形例
次に、第2変形例に係るNMRプローブについて説明する。図11は、本変形例に係るNMRプローブ300を模式的に示すXY平面における断面図である。図12は、本変形例に係るNMRプローブ300の構成を示す図である。
NMR300は、図11および図12に示すように、NMRロックのための第3サンプルコイル50を有する。ここで、NMRロックとは、ある特定の核種のNMR信号(ロック信号)を検出し、このロック信号が常に一定の周波数に保たれるように静磁場を補正する機構である。
第3サンプルコイル50は、第2筒体20の外側に形成されている。第3サンプルコイル50は、例えば、YZ平面に関して対称に配置された1対のコイルで構成されている。第3サンプルコイル50は、例えば、試料S中の観測核にX軸方向から高周波磁場を照射する。
第3サンプルコイル50は、第1サンプルコイル30および第2サンプルコイル40と干渉しない距離に配置されている。具体的には、図11に示すように、XY平面において、Z軸と第3サンプルコイル50との間の距離Dと、Z軸と第2サンプルコイル40との間の距離dとは、D≧2×dの関係を満たしている。なお、距離dは、第1サンプルコイル30,40のうち、第2筒体20の外側に配置されているサンプルコイルとZ軸との間の距離をいう。
サンプルコイル20,30と第3サンプルコイル50との間の距離は、電磁界において、近傍界−遠方界の境界をλ/2πとすると、近傍界で扱うことになる。近傍界では、磁界強度は距離の3乗に反比例し、電界強度は距離の2乗に反比例する。したがって、D≧2×dの関係を満たせば、磁界強度は、1/8になり、電界強度は、1/4になる。このように、D≧2×dの関係を満たせば、サンプルコイル20,30と第3サンプルコイル50との間の電磁界的な相互作用を十分に低減できる。
NMRプローブ300によれば、NMRロックのための第3サンプルコイル50と、第1サンプルコイル30および第2サンプルコイル40とを電磁界的に干渉させないように配置することができる。
2.第2実施形態
2.1. 第2実施形態に係るNMRプローブ
次に、第2実施形態に係るNMRプローブについて説明する。図13は、第2実施形態に係るNMRプローブ400を模式的に示すXY平面における断面図である。以下、第2実施形態に係るNMRプローブ400において、第1実施形態に係るNMRプローブ100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
NMRプローブ400における、第1サンプルコイル30と第2サンプルコイル40との位置関係について説明する。図13に示すように、XY平面において、第1コイル部分36の第2コイル部分37側の端部36eと、第2コイル部分37の第1コイル部分36側の端部37eと、がZ軸まわりでなす角度θ11は、108°である。第1コイル部分36の幅(所定の幅)がZ軸まわりでなす角度θ12は、18°である。第2コイル部分37の幅(所定の幅)がZ軸まわりでなす角度θ13は、18°である。すなわち、第1コイル部分36の幅と、第2コイル部分37の幅は、同じ大きさである。
また、XY平面において、第3コイル部分46と第4コイル部分47とがZ軸まわりでなす角度θ21は、90°である。
NMRプローブ400によれば、NMRプローブ100と同様に、第1サンプルコイル30と第2サンプルコイル40との間の距離を小さくできるため、高い共鳴周波数の核種と低い共鳴周波数の核種をともに高感度で観測することができる。さらに、上述のようにサンプルコイル30,40を配置することで、第1サンプルコイル30が、均一なRF磁場を観測核に照射することができる。特に、NMRプローブ400は、試料Sを回転させて観測を行う際に有効である。その理由について以下の実験例で述べる。
2.2. 第2実施形態に係るNMRプローブの第1実験例
次に、第2実施形態に係るNMRプローブの第1実験例について、図面を参照しながら説明する。
(1)第1実験例で用いたNMRプローブ
本実験例で用いたNMRプローブは、図8に示す第1実施形態に係る実験例で用いたNMRプローブと同様である。本実験例では、図8に示す角度θを18.2°に固定し角度θの値を変えて、角度θ−θと第1サンプルコイル30のRF磁場のZ軸方向における均一度との相関を調べた。ここで、角度θを18.2°としたのは、第1実施形態に係る実験例の結果、高いQ値かつ短いパルス幅が得られた角度のためである。本実験例では、励起パルスを90°パルス幅相当から180°、270°、360°、・・・、と一定間隔ごとに段階的に大きくしながらNMR信号を検出し、この検出されたNMR信号のスペクトル強度の減衰の程度からRF磁場のZ軸方向における均一度を評価した。なお、本実験例では、H核について観測を行った。
(2)第1実験例の結果
図14は、角度θ−θが18.2°のときのスペクトル強度を示すグラフである。図15は、角度θ−θが27°のときのスペクトル強度を示すグラフである。横軸は、パルス幅であり、縦軸は、スペクトル強度である。図14および図15に示すように、パルス幅を段階的に大きくすると、スペクトル強度は減衰していく。図14に示す角度θ−θが18.2°のときは、図15に示す角度θ−θが27°のときと比べて、スペクトル強度が減衰する割合が小さい。図示はしないが、角度θ−θが27°以外の他の角度のときと比べても同様に、角度θ−θが18.2°のときは、スペクトル強度が減衰する割合が小さいという結果が得られた。
ここで、このスペクトル強度(信号)の減衰は、Z軸方向のRF磁場が均一でないことによって観測核のスピンがばらばらに減衰し、信号強度が相殺されることから起こる。すなわち、パルス幅を段階的に変えたときにスペクトル強度が減衰する割合が小さいということは、RF磁場がZ軸方向において均一であることを意味する。したがって、本実験例の結果、角度θ−θを18.2°としたときに、第1サンプルコイル30のRF磁場がZ軸方向において均一化されていることがわかった。
2.3. 第2実施形態に係るNMRプローブの第2実験例
次に、第2実施形態に係るNMRプローブの第2実験例について、図面を参照しながら説明する。
(1)第2実験例で用いたNMRプローブ
本実験例で用いた第1実験例で用いたNMRプローブと同様である。本実験例では、試料Sを10Hzで回転(スピニング)させながら、角度θ−θを第1実験例と同様に変えて、角度θ−θと第1サンプルコイル30のRF磁場のラジアル方向(Z軸と直交する方向)における均一度との相関を調べた。ラジアル方向におけるRF磁場の均一度は、検出されたスペクトル(NMR信号)にRF磁場が不均一な際に得られるスピニングサイドバンドが出現するか否かで評価を行った。なお、本実験例では、H核について観測を行った。
(2)第2実験例の結果
図16は、角度θ−θが18.2°のときのH核のスペクトルを示すグラフである。図17は、角度θ−θが27°のときのH核のスペクトルを示すグラフである。図16に示すように角度θ−θが18.2°のときには、スピニングサイドバンドが現れない。しかしながら、図17に示す角度θ−θが27°のときには、40Hz付近にスピニングサイドバンド(4次のスピニングバンド)が現れる。この4次のスピニングバンドは、ラジアル方向のRF磁場の不均一性に起因するものである。また、図示はしないが、角度θ−θを18.2°よりもさらに小さくすると、ラジアル方向のRF磁場の不均一性に起因する2次のスピニングバンドが現れる。したがって、本実験例の結果、角度θ−θが18.2°付近の角度は、4次のスピニングバンドも2次のスピニングバンドも出現しない角度であることがわかった。すなわち、角度θ−θを18.2°としたときに、第1サンプルコイル30のRF磁場がラジアル方向において均一化されていることがわかった。
第1実験例および第2実験例の結果から、角度θ−θが18°付近のときに、第1サンプルコイル30のRF磁場が、Z軸方向およびラジアル方向ともに均一化されていることがわかった。
この角度θ−θが18°になるサンプルコイル30,40の配置は、すなわち、図13に示す、NMRプローブ400におけるサンプルコイル30,40の配置である。したがって、NMRプローブ400によれば、第1サンプルコイル30が、均一なRF磁場を観測核に照射することができる。
3.第3実施形態
3.1. 第3実施形態に係るNMRプローブ
次に、第3実施形態に係るNMRプローブについて説明する。図18は、第3実施形態に係るNMRプローブ500を模式的に示す斜視図である。図19(A)は、第1サンプルコイル530を模式的に示す斜視図であり、図19(B)は、第2サンプルコイル540を模式的に示す斜視図である。図20は、NMRプローブ500を模式的に示すXY平面における断面図である。なお、図18では、第1筒体10、第2筒体20の各層20a,20b,20c、および試料Sの図示を省略している。
NMRプローブ500は、図18および図20に示すように、第1筒体10と、第2筒体20と、第1サンプルコイル530と、第2サンプルコイル540と、を含む。NMRプローブ500は、例えば、図5および図6に示すNMRプローブ100と同様の構成を有している。
第1サンプルコイル530は、試料S中の観測核にZ軸方向から高周波磁場を照射し、かつ試料S中の観測核から放射されるNMR(高周波磁場)信号を検出するためのコイルである。第1サンプルコイル530は、H核、H核、19F核のように比較的高い共鳴周波数を有する核種を観測するためのサンプルコイル(HFコイル)である。すなわち、第1サンプルコイル530が照射する高周波磁場の周波数は、19F核の共鳴周波数以上である。第1サンプルコイル530は、第2筒体20の外側に形成されている。第1サンプルコイル530は、例えば、2つの1ターンコイルが直列または並列に接続されたソレノイドコイルである。第1サンプルコイル530は、後述するインダクタンスが得られればその形状は特に限定されず、例えば、ヘルムホルツ型のコイルや図21に示す2ターンのソレノイドコイルであってもよい。第1サンプルコイル530は、例えば、それ自体で形状を保持できるように形成されている。
第2サンプルコイル540は、試料S中の観測核にZ軸方向から高周波磁場を照射し、かつ試料S中の観測核から放射されるNMR(高周波磁場)信号を検出するためのコイルである。第2サンプルコイル540は、205Tl核〜103Rh核のような比較的低い共鳴周波数を有する核種を観測するためのサンプルコイル(LFコイル)である。すなわち、第2サンプルコイル540が照射する高周波磁場の周波数は、19F核の共鳴周波数未満である。第2サンプルコイル540は、第2筒体20の内側に形成されたソレノイドコイルである。第2サンプルコイル540のターン数(巻き数)は、特に限定されない。第2サンプルコイル540は、例えば、それ自体で形状を保持できるように形成されている。第1サンプルコイル530のZ軸方向の長さH1(図19参照)と、第2サンプルコイル540のZ軸方向の長さH2(図19参照)は、例えば、同じである。
第1サンプルコイル530および第2サンプルコイル540は、図20に示すように、XY平面において(Z軸方向から見て)、Z軸を中心とする同心円状に配置されている。第1サンプルコイル530と第2サンプルコイル540とは、近接して配置されている。具体的には、第1サンプルコイル530と第2サンプルコイル540との間の距離は、0.1mm〜0.6mm程度である。図示の例では、第1サンプルコイル530と第2サンプルコイル540との間の距離は、第2筒体20の厚さと等しい。
第1サンプルコイル530のインダクタンスL1は、第2サンプルコイル540のインダクタンスL2よりも低い。具体的には、第1サンプルコイル530のインダクタンスL1と、第2サンプルコイル540のインダクタンスL2とは、上述した式(1)の関係を満たしている。サンプルコイル530,540のインダクタンスL1,L2が式(1)を満たすことで、サンプルコイル530,540間の結合インダクタンスの制御を容易に行うことができる。
インダクタンスL1,L2は、例えば、サンプルコイル530,540のターン数(巻き数)やコイルを構成する導線の形状により調整することができる。図示の例では、第1サンプルコイル530を、箔材で形成された2つの1ターンコイルが直列または並列に接続されたソレノイドコイルとし、第2サンプルコイル540を、線材で形成された複数ターンのソレノイドコイルとすることで、インダクタンスL1,L2が上述した式(1)を満たすように調整されている。
第1サンプルコイル530および第2サンプルコイル540の材質は、例えば、銅を主体とし、銅の体積磁化率の数十%以内に磁化率が制御された複合材料である。第1サンプルコイル530は、例えば、膜厚(ラジアル方向の長さ)が、数十μm〜数百μm程度の箔材である。第2サンプルコイル540は、例えば、断面が円形や矩形の線材からなり、断面が円形の場合、線材の太さは、数百μm〜数mm程度であり、断面が矩形の場合(平角線の場合)、厚さ(ラジアル方向の長さ)が数百μmであり、幅(円周方向の長さ)が数mm程度である。
NMRプローブ500では、第2筒体20によって、サンプルコイル530,540間の結合容量(静電容量)を制御することができる。具体的には、第2筒体20の比誘電率を制御することにより、サンプルコイル530,540間の結合容量を制御することができる。例えば、第2筒体20がサンプルコイル530,540と独立して交換可能に形成されることで、サンプルコイル530,540間の静電容量を容易に制御することができる。例えば、第2筒体20を構成する第1〜第3層20a,20b,20cの各々がサンプルコイル530,540と独立して交換可能に形成されていてもよい。
サンプルコイル530,540は、近接して配置されているため、図6に示すNMRプローブ100の例と同様に、サンプルコイル530,540間には、結合インダクタンスを介した結合(誘導結合)、および結合容量を介した結合(静電結合)が形成される。NMRプローブ500では、サンプルコイル530,540間の結合インダクタンスおよび結合容量Ccpl−1〜Ccpl−4が最適化されることにより、近接電磁結合を利用して、クロストークによる相互のチューニング干渉を観測に関係しない周波数帯域に外すことができる。具体的には、サンプルコイル530,540のインダクタンスが式(1)を満たすことにより、サンプルコイル530,540間の結合インダクタンスを容易に最適化することができる。また、誘電体からなる第2筒体20により、サンプルコイル530,540間の結合容量を最適化することができる。
NMRプローブ500では、NMRプローブ100と同様に、図7に示すように、結合定数kが大きくなるに従って、特にHF回路110の回路効率(共振電圧)が低下する。NMRプローブ500では、HF回路110の回路効率およびLF回路130の回路効率が、それぞれ70%以上となるように結合インダクタンスを調整した。
NMRプローブ500は、例えば、以下の特徴を有する。
NMRプローブ500では、上述のように、近接電磁結合を利用して、クロストークによる相互のチューニング干渉を観測に関係しない周波数帯域に外すことができる。そのため、第1サンプルコイルと第2サンプルコイルを近接して配置することができる。したがって、NMRプローブ500によれば、高い共鳴周波数の核種と低い共鳴周波数の核種をともに高感度で観測することができる。
NMRプローブ500において、ネットワークアナライザーを用いて、HF回路110およびLF回路130のQ値を求めた。なお、ここでは、HF側はHの共鳴周波数、LF側は13Cの共鳴周波数を用いて評価を行った。この結果、HF回路110のQ値は、155であり、LF回路130のQ値は、116であった。このようにNMRプローブ500において、HF回路110およびLF回路130ともに高いQ値を有していることがわかった。すなわち、NMRプローブ500によれば、高い共鳴周波数の核種と低い共鳴周波数の核種をともに高感度で観測できることがわかった。
NMRプローブ500によれば、上述のように、第1サンプルコイル530のRF磁場の照射方向と第2サンプルコイル540のRF磁場の照射方向とを同じ方向(Z軸方向)にすることができる。
3.2. 第3実施形態に係るNMRプローブの変形例
次に、第3実施形態に係るNMRプローブの変形例について説明する。図22は、本実施形態の変形例に係るNMRプローブ600を模式的に示す斜視図である。なお、図22では、第1筒体10、第2筒体20の各層20a,20b,20c、および試料Sの図示を省略している。以下、本変形例において、本実施形態に係るNMRプローブ500の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
NMRプローブ500の例では、図18に示すように、第1サンプルコイル530が第2筒体20の外側に配置され、第2サンプルコイル540が第2筒体20の内側に配置されていた。これに対し、NMRプローブ600では、図22に示すように、第1サンプルコイル530が第2筒体20の内側に配置され、第2サンプルコイル540が第2筒体20の外側に配置されている。
NMRプローブ600によれば、NMRプローブ500と同様の効果を奏することができる。
4. 第4実施形態
次に、第4実施形態に係るNMR装置について説明する。図23は、NMR装置700を概略的に示す構成図である。
NMR装置700は、本発明に係るNMRプローブを有する。なお、以下の例では、NMR装置700が、本発明に係るNMRプローブとして、NMRプローブ100を有する場合について説明する。
高周波発振器1から発振された高周波信号は、位相制御器2および振幅制御器3によって位相と振幅を制御され、電力増幅器4に送られる。
電力増幅器4でNMR信号を励起するために必要な電力にまで増幅された高周波信号は、デュプレクサ5を介してNMRプローブ100に送られて、NMRプローブ100のサンプルコイルから高周波パルスとして試料に照射される。
高周波照射後、試料から出る微小なNMR信号は、NMRプローブ100のサンプルコイルにより検出され、デュプレクサ5を介して前置増幅器6に送られ、増幅される。
受信機7は、前置増幅器6で増幅された高周波のNMR信号を、デジタル信号に変換可能なオーディオ周波数に周波数変換し、同時に振幅の制御を行う。受信機7でオーディオ周波数に周波数変換されたNMR信号は、アナログ−デジタルデータ変換器8によってデジタル信号に変換され、制御コンピュータ9に送られる。
制御コンピュータ9は、位相制御器2および振幅制御器3を制御すると共に、時間領域で取り込んだNMR信号をフーリエ変換処理し、フーリエ変換後のNMR信号の位相を自動的に補正した後、NMRスペクトルとして表示する。
NMR装置700によれば、NMRプローブ100を有するため、高い共鳴周波数の核種と低い共鳴周波数の核種をともに高感度で観測することができる。
なお、本発明は上述した実施形態や変形例に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、上述したNMRプローブ100〜600において、第2筒体20が、ラジアル方向に積層された層20a,20b,20cからなる場合について説明したが、第2筒体の構成は、これに限定されない。
図24は、第2筒体の変形例(第2筒体20−1)を模式的に示す斜視図である。第2筒体20−1は、互いに比誘電率の異なる領域22,24,26を円周方向(Z軸まわり)に配置して構成されている。このため、第2筒体20−1では、円周方向の比誘電率が異なっている。これにより、サンプルコイル30,40(530,540)間の局所的な結合容量Ccpl−1〜Ccpl−4を制御することができる。図示の例では、比誘電率の異なる領域22,24,26は3つであるが、その数は限定されない。第2筒体20−1は、サンプルコイル30,40(530,540)と独立してZ軸まわり(円周方向)に回転可能に形成されていてもよい。これにより、結合容量Ccpl−1〜Ccpl−4の制御を容易化することができる。
図25は、第2筒体の変形例(第2筒体20−2)を模式的に示す斜視図である。第2筒体20−2は、互いに比誘電率の異なる領域22,24,26をZ軸方向に配置して構成されている。このため、第2筒体20−2では、Z軸方向の比誘電率が異なっている。これにより、サンプルコイル30,40(530,540)間の局所的な結合容量Ccpl−1〜Ccpl−4を制御することができる。第2筒体20−2は、サンプルコイル30,40(530,540)と独立してZ軸方向に移動可能に形成されていてもよい。これにより、結合容量Ccpl−1〜Ccpl−4の制御を容易化することができる。
なお、図示はしないが、上述した第2筒体20,20−1,20−2を組み合わせて、所望の比誘電率の分布を有する第2筒体を形成してもよい。
なお、上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、実施形態および変形例を適宜組み合わせることも可能である。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1 高周波発振器、2 位相制御器、3 振幅制御器、4 電力増幅器、
5デュプレクサ、6 前置増幅器、7 受信機、8 アナログ−デジタルデータ変換器、
9 制御コンピュータ、10 第1筒体、20,20−1,20−2 第2筒体、
20a 第1層、20b 第2層、20c 第3層、22,24,26 領域、
30 第1サンプルコイル、32,34 第1コイル、36 第1コイル部分、
37 第2コイル部分、38 接続コイル部分、40 第2サンプルコイル、
42,44 第2コイル、46 第3コイル部分、47 第4コイル部分、
48 接続コイル部分、50 第3サンプルコイル、100 NMRプローブ、
110 HF回路、120 LOCK回路、130 LF回路、
140,150 分離回路、200,300,400,500 NMRプローブ、
530 第1サンプルコイル、540 第2サンプルコイル、
600,700 NMRプローブ

Claims (9)

  1. 試料を収容し、Z軸を中心軸とする円筒状の筒体と、
    前記試料中の第1の観測核に前記Z軸と直交するX軸の方向から高周波磁場を照射し、かつ前記試料中の前記第1の観測核から放射されるNMR信号を検出する第1サンプルコイルと、
    前記試料中の前記第1の観測核と異なる第2の観測核に前記Z軸および前記X軸と直交するY軸の方向から高周波磁場を照射し、かつ前記試料中の前記第2の観測核から放射されるNMR信号を検出する第2サンプルコイルと、
    を含み、
    前記第1サンプルコイルは、前記筒体の内側および外側のうちの一方に、YZ平面に関して対称に配置された一対の第1コイルを有し、
    前記第1コイルは、
    前記Z軸の方向に延び、前記Z軸まわりに所定の幅を有する第1コイル部分と、
    ZX平面に関して前記第1コイル部分と対称に前記Z軸の方向に延び、前記所定の幅を有する第2コイル部分と、
    を有し、
    XY平面において、前記第1コイル部分の前記第2コイル部分側の端部と前記第2コイル部分の前記第1コイル部分側の端部とが前記Z軸まわりでなす角度が、90°であり、前記所定の幅が前記Z軸まわりでなす角度が、27°であり、
    前記第2サンプルコイルは、前記筒体の内側および外側のうちの他方に、前記ZX平面に関して対称に配置された一対の第2コイルを有し、
    前記第2コイルは、
    前記Z軸の方向に延び、前記第2コイルの内縁の一部を規定する第3コイル部分と、
    前記YZ平面に関して前記第3コイル部分と対称に前記Z軸の方向に延び、前記第2コイルの内縁の一部を規定する第4コイル部分と、
    を有し、
    前記XY平面において、前記第3コイル部分と前記第4コイル部分とが前記Z軸まわりでなす角度は、90°であり、
    前記筒体は、誘電体であり、
    前記第1サンプルコイルのインダクタンスL1と、前記第2サンプルコイルのインダクタンスL2とは、1/10≦L1/L2≦1/4の関係を満たす、NMRプローブ。
  2. 試料を収容し、Z軸を中心軸とする円筒状の筒体と、
    前記試料中の第1の観測核に前記Z軸と直交するX軸の方向から高周波磁場を照射し、かつ前記試料中の前記第1の観測核から放射されるNMR信号を検出する第1サンプルコイルと、
    前記試料中の前記第1の観測核と異なる第2の観測核に前記Z軸および前記X軸と直交するY軸の方向から高周波磁場を照射し、かつ前記試料中の前記第2の観測核から放射されるNMR信号を検出する第2サンプルコイルと、
    を含み、
    前記第1サンプルコイルは、前記筒体の内側および外側のうちの一方に、YZ平面に関して対称に配置された一対の第1コイルを有し、
    前記第1コイルは、
    前記Z軸の方向に延び、前記Z軸まわりに所定の幅を有する第1コイル部分と、
    ZX平面に関して前記第1コイル部分と対称に前記Z軸の方向に延び、前記所定の幅を有する第2コイル部分と、
    を有し、
    XY平面において、前記第1コイル部分の前記第2コイル部分側の端部と前記第2コイル部分の前記第1コイル部分側の端部とが前記Z軸まわりでなす角度が、108°であり、前記所定の幅が前記Z軸まわりでなす角度が、18°であり、
    前記第2サンプルコイルは、前記筒体の内側および外側のうちの他方に、前記ZX平面に関して対称に配置された一対の第2コイルを有し、
    前記第2コイルは、
    前記Z軸の方向に延び、前記第2コイルの内縁の一部を規定する第3コイル部分と、
    前記YZ平面に関して前記第3コイル部分と対称に前記Z軸の方向に延び、前記第2コイルの内縁の一部を規定する第4コイル部分と、
    を有し、
    前記XY平面において、前記第3コイル部分と前記第4コイル部分とが前記Z軸まわりでなす角度は、90°であり、
    前記筒体は、誘電体であり、
    前記第1サンプルコイルのインダクタンスL1と、前記第2サンプルコイルのインダクタンスL2とは、1/10≦L1/L2≦1/4の関係を満たす、NMRプローブ。
  3. 請求項1または2において、
    前記筒体は、比誘電率が互いに異なる少なくとも2つの領域を有している、NMRプローブ。
  4. 請求項3において、
    前記筒体は、前記第1サンプルコイルおよび前記第2サンプルコイルと独立して前記Z軸まわりに回転可能に形成されている、NMRプローブ。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、
    前記筒体は、前記Z軸と直交するラジアル方向に積層された、比誘電率が互いに異なる複数の層を含んで構成されている、NMRプローブ。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項において、
    前記筒体は、前記第1サンプルコイルおよび前記第2サンプルコイルと独立して交換可能に形成されている、NMRプローブ。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項において、
    前記筒体の外側に形成されたNMRロックのための第3サンプルコイルをさらに含み、
    前記Z軸と前記第3サンプルコイルとの間の距離Dと、前記筒体の外側に形成された前記第1サンプルコイルまたは前記第2サンプルコイルと前記Z軸との間の距離dとは、D≧2×dの関係を満たす、NMRプローブ。
  8. 請求項1ないしのいずれか1項において、
    前記第1サンプルコイルの前記高周波磁場の周波数は、19F核の共鳴周波数以上であり、
    前記第2サンプルコイルの前記高周波磁場の周波数は、19F核の共鳴周波数未満である、NMRプローブ。
  9. 請求項1ないしのいずれか1項に記載のNMRプローブを含む、NMR装置。
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