JP5548530B2 - 工具、および工作機械 - Google Patents
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Description
ところで、このような特許文献1のような装置は、摩擦攪拌接合を実施するための専用装置であり、ワークに対してその他の加工作業を実施することができず、汎用性に乏しいという問題がある。
この特許文献2の摩擦攪拌接合装置では、回転ツール保持具や回転ツールの着脱が可能であり、例えば、ドリルなどのその他の工具に取替えが可能な構成となっている。
しかしながら、この特許文献2に記載の摩擦攪拌接合装置では、高荷重が付加される回転ツールから離れた回転基台と支持筐体との間にベアリングが設けられている。このため、駆動軸への高荷重付加の影響は抑えられるが、回転ツールや回転ツール保持具は、荷重付加の影響を受ける。したがって、例えば、回転ツール保持具と回転基台との接続部に荷重が集中して接続が外れたり、回転軸がはずれたりする場合がある。
このため、ワークを加工する際、例えば工具をワーク側に押圧などすることで、工具および主軸にスラスト方向の荷重が加わった場合でも、軸受部からフレーム側にその荷重を逃がすことができる。また、工具を回転軸に対して交差する方向に移動させるなどして、工具にラジアル方向の荷重が加わった場合でも、軸受部からフレーム側にその荷重を逃がすことができる。したがって、主軸や、工具および主軸の接続部位に直接高荷重が加わることがなく、荷重の影響を低減することができる。よって、主軸の回転駆動部分の焼きつきなどの不都合や、工具が主軸から抜け落ちる不都合、主軸の回転軸と工具の回転軸とがずれる軸ズレなどの不都合などを回避することができる。
このため、回転体が回転し、回転体とワークとの間に摩擦熱などの熱が発生した場合でも、摩擦熱の軸受部の熱伝達を冷却媒体により抑制することができる。したがって、軸受部が熱変形することがなく、荷重を受ける機能が低下しない。よって、工具を長期使用し、摩擦熱が発生する場合であっても、軸受部により、主軸および工具の接続部や、主軸へ荷重を低減させることができ、工具の性能を長期維持することができる。
さらに、この発明では、流体導入口から導入された冷却媒体は、まず主軸側冷却部により回転体の主軸側を冷却し、その後、替刃側冷却部により回転体の替刃側を冷却する。回転体において替刃側は、例えば摩擦攪拌接合を実施するなど、主軸側よりもはるかに高熱となる場合が多い。ここで、替刃側を先に冷却すると、冷却媒体にその熱が伝達され、主軸側での冷却効率が低下したり、回転体の主軸側や軸受部に熱を伝えてしまったりするおそれがある。これに対して、回転体の主軸側および軸受部を先に冷却することで、主軸への熱の伝達を確実に防止することができ、かつ、主軸側を冷却した冷却媒体を替刃側に送った場合でも、上記のように替刃側はより高温となっているため、送られた冷却媒体で十分に替刃側を冷却することができる。
また、主軸側冷却部は、流体導入路から替刃に向かって延びた後、軸受部に対応する位置から前記主軸側に折り返す2重構造となっており、より確実に主軸側および軸受部を冷却することができる。
このような工具では、替刃が冷却媒体により過度に冷却されると、ワークの摩擦効率が低下し、加工効率が低下してしまう。
これに対して、本発明では、流体流路は、主軸装着部と連結部とに沿って冷却媒体が流動可能な状態に流体流路が形成されている。なお、この冷却媒体が流動可能な状態に流体流路が形成されるとは、替刃に沿って流体流路が形成されない構成に加え、替刃に沿って流体流路が形成されるが、その流体流路の替刃に沿う替刃対応位置には、冷却媒体が導入されていない場合、または替刃対応位置に冷却媒体はあるが、流動していないため、冷却効果をほぼ有さない場合を含むものとする。このような場合では、冷却媒体により替刃が冷却されないため、替刃とワークとの摩擦効率を低減させることがないため、加工効率も低下しない。したがって、工具による加工効率を維持した状態で、軸受部の過熱を防止でき、主軸に加わる荷重の低減、主軸および工具の接続部分に加わる荷重の低減を、長時間持続させて図ることができる。
図1は、本実施形態の工作機械の一例を示す概略図である。
図1において、工作機械20は、門型工作機械であって、左コラム22、右コラム23、および、横桁24を含んで構成され、これらが機械的な剛性を高めるよう鋳物にて一体に構成されている。
横桁24には、主軸頭25がサーボモータ等によりX軸として図で左右方向へ移動可能に組み付けられている。主軸頭25には、ラム26により、フレーム30がZ軸として図で上下方向へ移動可能に組み込まれている。また、このフレーム30の内部には、スピンドル31が設けられ(図2参照)、スピンドル31は、連続回転、および、C軸(Z軸と平行な回転軸)として回転位置決めもできるよう、回転位置検出されるサーボモータを有して構成される。
左コラム22および右コラム23の間のベッド29の上面には、ワークを載置するテーブル28がY軸として図で前後方向(図1における紙面に直交する方向)へ移動可能に設けられている。従って、ワークを載置するテーブル28と主軸を構成するスピンドル31とは、図示省略の相対移動機構により、X、Y、Z軸方向の三次元方向へ移動可能に構成されている。
図2は、摩擦攪拌接合用工具10の概略構成を示す図であり、回転軸に沿って当該摩擦攪拌接合用工具10を断面した断面図である。
図2に示すように、摩擦攪拌接合用工具10は、主軸装着部11、連結部12、替刃13、ケーシング14、および軸受部15を備えている。ここで、主軸装着部11、連結部12、および替刃13により、本発明の回転体が構成されている。
主軸装着部11は、一般のドリルやカッターなどの切削用の刃を有する加工工具と同様に、工作機械のスピンドル31に装着可能になっている。具体的には、主軸装着部11は、スピンドル31に挿入されるテーパシャンク111と、このテーパシャンク111の小径部側に設けられたチャック用トップ112と、テーパシャンク111の大径部側に設けられた工具把持リング部113と、テーパシャンク111の大径部側に連続して設けられる連結胴部114と、を備えている。
第一軸孔部115Aには、チャック用トップ112が装着されており、このチャック用トップ112には、回転軸に沿って、流体導入路112Aが設けられている。この流体導入路112Aは、スピンドル31に設けられた図示しない流体導入手段、および第二軸孔部115Bに連通している。
第二軸孔部115Bは、上記のように、チャック用トップ112の流体導入路112Aに連通するとともに、後述する連結部12の内部流路孔121に連通する。
連結装着孔115Cには、連結部12が固定されており、この連結部12に替刃13が固定されている。また、替刃装着孔115Dには、連結部12に固定された替刃13が挿通する。
第一環状凹部114Aは、後述のケーシング14との間で、本発明の流体流路の一部であり上部環状流路117Aを形成する。
また、主軸装着部11には、断面がコ字状で、かつ第二環状凹部114Bの全周を覆う環状の固定部材114Cが固定されている。そして、第二環状凹部114Bの溝内、および固定部材114Cの内周枠内により、本発明の流体流路の一部である下部環状流路117Bが形成される。
また、主軸装着部11は、第一環状凹部114Aおよび第二環状凹部114Bの間に、軸受部15を固定するための固定段差116が形成されている。そして、この固定段差116と、固定部材114Cとに挟持されることで、後述する軸受部15が主軸装着部11に固定されている。
なお、本発明の流体流路に関する説明は後述する。
連結部12は、図2に示すように、略円柱状部材であり、円柱端部12A,12Bが円柱中央部12Cよりも径大に形成されている。また、円柱端部12A,12Bには、連結装着孔115Cの内周面との間に、パッキンなどの防水リングが装着されている。したがって、連結部12の円柱中央部12Cの外周面と、連結装着孔115Cとの間には、微小隙間寸法の空間(流路空間123)が形成されている。
また、連結部12は、第二軸孔部115B側の端面から、軸心(回転軸)に沿って内部流路孔121が形成されている。この内部流路孔121は、第二軸孔部115B側の端面から、連結部12の円柱軸方向長さの例えば略半分程度の長さ位置(内部流路端部121A)まで形成されている。また、連結部12は、円柱中央部12Cの替刃13側の外周面から、内部流路端部121Aまで延びる流路分岐孔122を複数(例えば2つ)備えている。
替刃13は、連結部12に固定され、替刃装着孔115Dを挿通して配設されている。ここで、この工具10における替刃13は、摩擦攪拌接合用の替刃であり、したがって、図2に示すように、円筒形状の基部131と、基部131から回転軸に沿ってワーク側に突出する摩擦攪拌ピン132とを備えている。このような替刃13では、摩擦攪拌ピン132を、例えば2つのワークの接合部分に対して高荷重で押圧し、例えば2000rpmなどの速度で高速回転されることで、ワークの接合部分を軟化させ、かつ軟化された接合部分を攪拌させて接合させることが可能となる。
ケーシング14は、図2に示すように、工作機械20のフレーム30に固定され、主軸装着部11を回転可能に保持する第一ケーシング141と、第一ケーシング141のスピンドル31とは反対側(テーブル28側)に固定される第二ケーシング142と、を備えている。
第一ケーシング141は、筒状に形成され、筒内周面のうち上部側(主軸側)には、主軸装着部11の第一環状凹部114Aに対向して、内周円筒形状の流路形成面143が設けられ、これらの第一環状凹部114Aおよび流路形成面143により、上部環状流路117Aが形成されている。また、この流路形成面143の上下端部には、それぞれ防水金具143Aが嵌合されている。これらの防水金具143Aは、円筒状に形成され、円筒外周壁が流路形成面143に密着固定されており、円筒外周壁から内周側に突出するリング状の突出片143A1の先端部が連結胴部114の外周面に押圧され、上部環状流路117Aの防水性が確保されている。また、第一ケーシング141は、第一環状凹部114Aの一部から、第一ケーシング141の外周側に連通する吐出路144が形成されている。
第一ケーシング141の下部側には、段差部145が形成され、この段差部145と主軸装着部11との間に、軸受部15が設けられている。
また、第一ケーシング141の上端面には、回り止め部材149が固定されている。そして、第一ケーシング141は、この回り止め部材149を介して、工作機械20のフレーム30に固定されている。
また、第二ケーシング142は、回転軸を中心とした替刃挿通孔147を備えている、この替刃挿通孔147は、替刃13の基部131の断面系寸法よりも径大に形成され、基部131との間にエアーが流通可能な隙間が形成されている。
なお、本実施形態では、図2において、外輪と内輪との間に、錐体形状の回転体が設けられ、外輪と内輪の対向面がラジアル方向に対して傾斜する角度に形成されるアンギュラベアリングを例示するが、これに限定されず、球体状の回転体を外輪および内輪に間に挟持させる構成としてもよい。また、複数のアンギュラベアリングを組み合わせた複列アンギュラベアリングを用いてもよい。
さらには、スラスト方向の荷重を受けるスラストベアリングと、ラジアル方向の荷重を受けるラジアルベアリングとを、それぞれ別体として装着してもよい。
本実施形態の工具10では、上述したように、冷却媒体を導入可能な流体流路16が形成されている。具体的には、この流体流路16は、チャック用トップ112の流体導入路112A、第二軸孔部115B、連結部12の内部流路孔121、流路分岐孔122、流路空間123、第一流路118A、下部環状流路117B、第二流路118B、上部環状流路117A、吐出路144により形成され、この順に、冷却媒体が導入可能となっている。ここで、流体導入路112A、第二軸孔部115B、連結部12の内部流路孔121、流路分岐孔122、および連結部12と連結装着孔115Cとの間の流路空間123により、本発明の主軸側冷却部が構成され、第一流路118A、下部環状流路117B、および第二流路118Bにより本発明の替刃側冷却部が構成されている。
これにより、スピンドル31側に設けられる図示しない冷却媒体導入手段から、冷却媒体(クーラント)が導入されると、上記流体流路にクーラントが流通し、工具10を冷却する。これにより、熱がスピンドル31側に伝達されてスピンドル31であるスピンドル31などの部材に影響を与える不都合を回避できる。
この時、第一流路118Aおよび第二流路118Bは、それぞれ、図2に示すように、軸受部15の内側を通るように形成されている。これにより、軸受部15への熱伝達を効果的に抑制することができ、軸受部15の熱による変形や、熱の影響による荷重分散効率の低下を抑制している。
すなわち、摩擦攪拌接合用工具10では、替刃13を回転させてワークに押し付けることで摩擦熱を発生させてワークを摩擦熱により軟化させる必要がある。このため、ワークの接合部分が冷却されてしまうと、接合効率が著しく低下してしまう。また、ワーク近傍である替刃13の冷却媒体を導入した場合、冷却による結露により水滴がワーク上に付着する場合があり、好ましくない。工具10では、以上のような理由により、上記のように、替刃13の外周側に位置する第一流路118Aおよび第二流路118Bでは、冷却媒体を流動させず、熱交換による冷却を抑制している。そして、熱源である替刃13およびワークの近傍では、エアー供給口148Aから冷却用のエアーを導入することで、替刃13のみが冷却されるように構成されている。
上述したように、上記実施形態の工作機械20では、回転駆動可能なスピンドル31、およびスピンドル31を回転可能に保持するフレーム30を備え、このスピンドル31には、ワーク同士を摩擦攪拌接合するための工具10が着脱可能に設けられている。
この工具10は、主軸装着部11を備え、この主軸装着部11に連結部12が固定され、この連結部12に替刃13が固定されている。また、工具10は、この主軸装着部11を回転可能に保持するケーシング14を備え、ケーシング14は、フレーム30に固定されている。そして、これらのケーシング14および主軸装着部11の間には、アンギュラベアリングで構成される軸受部15が設けられている。
このため、摩擦攪拌接合を実施するために、工具10をワーク側に強く押圧した際に発生するスラスト方向への荷重、工具10をワークに押圧した状態で、工具をテーブルの面方向に沿って相対移動させた際に発生するラジアル方向への荷重を、軸受部15で受けることができ、工作機械のスピンドル31や、スピンドル31および工具10の接続部分に、大きな荷重が加わらない。このため、スピンドル31が荷重により破損することがなく、また、摩擦攪拌接合中に、工具10が抜け落ちたり、回転軸がずれたりする不都合もなく、効率よくワークを加工(摩擦攪拌接合)することができる。
したがって、これらの第一流路118Aおよび第二流路118Bに冷却媒体が流通することで、軸受部15への熱伝達を効果的に抑制することができ、熱による軸受部15の変形や、変形に伴う耐荷重機能の低下を防止することができる。
上記のような構成では、吐出路144にクーラント吐出用のカプラやチューブなどを接続するだけの簡単な構成、および簡単な操作で、工具10を冷却することができる。また、センタースルータイプであるため、工具の中心軸を効果的に冷却することができ、工具10からスピンドル31への熱の伝達を効果的に防止することができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
この場合、例えば、図3に示すように、主軸装着部11の外周には、第一環状凹部114Aと同様の第三環状凹部114Dが設けられ、この第三環状凹部114Dには、第二軸孔部115Bに貫通する孔部114Eが形成されている。また、第一ケーシング141には、第三環状凹部114Dに対応した流路形成面143Bを形成するとともに、第三環状凹部114Dおよび流路形成面143Bの間で形成される第三環状流路117Cに連通するクーラント導入口144Aを形成する。
これにより、クーラント導入口144Aから、第三環状流路117C、孔部114E、第二軸孔部115B、連結部12の内部流路孔121、流路分岐孔122、流路空間123、第一流路118A、下部環状流路117B、第二流路118B、上部環状流路117A、吐出路144に至る流体流路16が形成される。
さらに、回転体として、主軸装着部11、連結部12および替刃13により構成される例を示したが、例えば、主軸装着部11に直接替刃13が固定される構成などとしてもよい。
Claims (5)
- フレームに回転可能に保持される主軸を備えた工作機械の、前記主軸に着脱可能な工具であって、
前記主軸に接続される回転体と、
前記回転体を回転可能に保持し、かつ、前記フレームに固定されるケーシングと、
前記回転体、および前記ケーシングの間に設けられ、前記主軸のスラスト方向およびラジアル方向の荷重を受ける軸受部と、
を備え、
前記回転体は、前記主軸に着脱可能な主軸装着部と、ワークを加工する替刃と、を備え、
前記回転体の回転軸を通る平面で断面した断面視において、前記軸受部と前記回転軸との間を通り、前記回転体を冷却する冷却媒体を導入可能な流体流路が設けられ、
前記流体流路は、前記回転体のうち前記主軸装着部に設けられて、前記冷却媒体が導入される流体導入路と、前記流体導入路から前記替刃に向かって延びた後、前記軸受部に対応する位置から前記主軸側に折り返す主軸側冷却部と、この主軸側冷却部から前記軸受部に対応する位置よりも前記替刃側に伸びる替刃側冷却部と、を備える
ことを特徴とする工具。 - 請求項1に記載の工具において、
前記回転体は、前記主軸に着脱可能な主軸装着部と、ワークを加工する替刃と、前記主軸装着部および前記替刃を連結する連結部と、を備え、
前記流体流路は、前記主軸装着部および前記連結部に沿って前記冷却媒体を流動可能に形成された
ことを特徴とする工具。 - 請求項1または請求項2に記載の工具において、
前記回転体は、ワークを加工する替刃を備え、
前記替刃および前記ケーシングの間に、エアーを導入可能なエアー導入路が設けられた
ことを特徴とする工具。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の工具において、
前記回転体は、ワークを加工する替刃を備え、
この替刃は、基部と、この基部から前記回転体の回転軸上に突出する摩擦攪拌ピンと、を備えた
ことを特徴とする工具。 - 回転駆動可能な主軸と、
この主軸を回転可能に保持するフレームと、
前記主軸に着脱可能な請求項1から請求項4のいずれかに記載の工具と、
を具備したことを特徴とする工作機械。
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