JP2017170525A - 摩擦攪拌接合工具 - Google Patents
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Abstract
Description
摩擦攪拌接合では、回転する接合ツールを被接合物に押し当て、摩擦熱で被接合物を流動化させて接合する。
摩擦攪拌接合において、接合ツールは、摩擦攪拌接合装置の主軸に装着され、被接合物の表面と交差方向の回転軸を中心に回転駆動される。そして、回転状態のまま被接合物の表面の接合部分に沿って移動される。
接合ツールとしては、例えば円柱状のツール本体の下端面に、同軸で下向きに円錐状のピンを形成したものが用いられる。ピンの周囲には段差状のショルダが形成される。
摩擦攪拌接合の動作時には、ピンが被接合物の内部に圧入され、ショルダは被接合物の表面に向かい合う状態に維持される。そして、回転するピンと被接合物との摩擦により摩擦部位が高温となり、被接合物が攪拌されて接合される。
専用の摩擦攪拌接合装置では、接合ツールからの熱に対する処置がなされている。しかし、汎用の工作機械では、通常の切削加工の範囲でしか、主軸ないし主軸ヘッドに熱が伝導されて高温になるという状況を想定していない。
このため、汎用の工作機械に接合ツールを装着し、摩擦攪拌接合を行う場合、主軸に伝導される熱により、主軸あるいは主軸を支持する軸受ほかの機構部分に好ましくない影響が及ぶ可能性がある。例えば、主軸ヘッドのメインベアリングの損傷、リテーナー部の損傷、熱膨張による回転軸線の芯振れ、テーパシャンク部分におけるフレッチング損傷などが懸念される。
なお、シャンク部のセンタホールを利用しない場合、回転する工具に外部から冷媒を供給する装備として、スルーツール工具への冷媒供給のような、主軸ヘッドに接続される固定部を設けて冷媒を受け取り、回転するシャンク部およびチャック部に冷媒を引き渡すような構成を別途設けることが望ましい。
本発明では、接合ツールからチャック部に熱伝導があっても、断熱部により熱を遮断することができ、さらにシャンク部ないし主軸への熱伝導を抑制できる。
断熱部としては、断熱材料で形成された接続部材、接合部分の接触面積を小さくした断熱構造なども利用できる。
本発明では、接合ツールとチャック部との間で、凹部により接触面積が小さく形成されているので、接合ツールからチャック部への熱伝導を抑制できる。
凹部としては、接合ツールの端面またはチャック部の底面に十文字状の凸部を残すような凹部であることが好ましい。
本発明では、シャンク部まで熱伝導があったとしても、凹部により接触面積が小さく形成されているので、主軸への熱伝導を抑制できる。
凹部としては、テーパ部の中間太さ部分に形成することが有効であり、大径リング部と小径リング部との2箇所で主軸と接触する構成(大径リング部と小径リング部との間が凹部)、あるいは大径リング部だけで主軸と接触する構成(大径リング部以外が全て凹部)とすることができる。
本発明では、温度マーカにより、動作時のチャック部の温度を監視することができ、過熱状態などを目視確認することで、主軸への影響を未然に回避できる。
温度マーカとしては、温度に応じて表面全体の色彩や明暗が変化するものが好ましい。このように表面全体の外観が変化するものであれば、回転状態であっても外部から識別することができる。数字や文字による表示は、回転状態で判読できないため、温度マーカとしては好ましくない。ただし、回転方向に連続する縞模様の数や太さで表示するものなどであれば、回転状態でも識別することができる。
図1および図2において、本実施形態の摩擦攪拌接合工具1は、工作機械の主軸8に装着されて、被接合物7の摩擦攪拌接合を行うものである。
工作機械において、主軸8は工作機械の主軸ヘッドに回転自在に支持され、主軸ヘッドに設置されたモータにより回転駆動される。
シャンク部20とチャック部30との間には、断熱部40が介装されている。チャック部30の周面には、冷却ジャケット50が形成されている。冷却ジャケット50には、冷媒を供給する冷媒通路60が形成されている。
さらに、チャック部30の周面には、チャック部30の温度に応じて外観が変化する温度マーカ70が設置されている。
接合ツール10は、回転状態で被接合物7に圧入されることで、先端のピン13が被接合物7の材料を加熱溶融させつつ被接合物7内に圧入され、被接合物7の継ぎ目を溶融接合することができる。
シャンク部20は、主軸8の円錐面状のチャック孔81に対応したテーパコーン21(テーパ部)を有する。
小径リング部23および大径リング部24は、テーパコーン21の元の表面に対して、凹部22を形成することで、表面が残された部分として形成され、凹部22に対して凸状となっている。
チャック孔に密着する小径リング部23および大径リング部24は、接合ツール10で摩擦攪拌接合を行う際に、必要なトルクを十分に伝達できる面積、外径および軸方向の幅とされている。
ツール本体11が挿入された状態で、固定ねじ32を締め付けることで、ツール本体11が保持孔31の内部で固定され、これにより接合ツール10は、チャック部30ないしシャンク部20と同一の回転軸線上に保持される。
断熱部40は、セラミックスなどの低熱伝導材料で形成され、接合ツール10からの熱でチャック部30が高温になっても、シャンク部20への熱伝導を大幅に低減ないし遮断することができる。
断熱部40とシャンク部20とを接続するボルト42と、断熱部40とチャック部30とを接続するボルト43とは、それぞれ独立しており、シャンク部20とチャック部30との熱伝導経路中に、必ず低熱伝導材料が介在するように構成されている。
断熱部40にはセンタホール41が形成され、センタホール41はシャンク部20のセンタホール25に連通されている。
固定ねじ32および保持孔31の内周面との間の接触は、ツール本体11の周面の全体面積に比べて十分小さく、接合ツール10からの熱伝導を抑制することができる。
チャック部30の保持孔31は底面が開放され、接合ツール10の底面は断熱部40と接触することで受けられる。
ツール本体11の切欠き14は、中心部が断熱部40のセンタホール41に連通され、このセンタホール41を介してシャンク部20のセンタホール25に連通されている。切欠き14は、ツール本体11の外周面まで達しており、切欠き14はツール本体11の外周面と保持孔31の内周面との間の隙間に連通されている。
ケース部材51は、接合ツール10側の端部がチャック部30の周面の中間位置に配置され、反対側の端部が断熱部40に接続されている。
ケース部材51の外周面には、多数の放熱フィン53が形成されている。
導入部61は、チャック部30の表裏を貫通する貫通孔64を介して保持孔31に連通され、保持孔31は接合ツール10の切欠き14、および断熱部40のセンタホール41を通して、シャンク部20のセンタホール25に連通されている。
排出部62は、排出孔65を介して外部に開放されている。
この状態で、主軸8から冷媒として、センタスルーエアあるいはセンタスルークーラントを供給すると、これらは各センタホール82,25,41を通り、冷媒通路60へと導入される。
導入部61へ導入された冷媒Cは、螺旋状通路63を所定の時間をかかって通過し、その間にチャック部30を冷却し、排出部62に達し、排出孔65から排出される。
図3に示すように、温度マーカ70は、板状に形成された表示パネルであり、ねじ止めなどでチャック部30に固定されている。
温度マーカ70は、温度で色彩や明度が変化する感温材料を、パネルの表面に塗布または印刷したものであり、接合ツール10からの熱でチャック部30の温度が上昇した際に、色彩や明度が変化することで、温度上昇を外部から視認することができる。
図4に示すように、チャック部30が回転している場合、温度マーカ70は高速で移動するため、周方向に連続した帯状の移動軌跡71として目視される。
この際、例えば温度マーカ70の表示が文字等であれば、これを読み取ることは難しい。しかし、温度マーカ70は色彩や明度が変化するものであるため、移動軌跡71の色彩や明度の変化として、容易に視認することができる。
しかし、接合ツール10とチャック部30との間では、切欠き14(接触防止用の凹部)および凸部15により、相互の接触面積が小さく制限されており、接合ツール10からの熱伝導を抑制することができる。
また、チャック部30には冷却ジャケット50および冷媒通路60が設置され、接合ツール10からの熱伝導があっても、これを冷却することができる。
そして、シャンク部20と主軸8との間でも、凹部22により、相互の接触面積が小さく制限されており、接合ツール10からの熱伝導伝導を抑制することができる。
以上により、摩擦攪拌接合に伴って接合ツール10に高熱が生じても、この熱がチャック部30、シャンク部20を経て主軸8に伝導されることを抑制することができる。
例えば、摩擦攪拌接合の加工動作中は、冷媒通路60にセンタスルーエアを通し、このエアでチャック部30を冷却する。通過したエアは、大気に放散される。
加工が完了したら、エアに替えて、冷媒通路60にセンタスルークーラントを通し、このクーラントでチャック部30を冷却する。通過したクーラントは、冷却ジャケット50から流下し、工作機械に設置されているクーラント回収経路で受けられて、クーラントタンクに回収される。
このような使い分けを行うことで、加工中はエアにより被接合物7にクーラントが付着することが回避できる。また、加工後は、クーラントにより短時間で冷却を行うことができる。なお、クーラント回収経路ないしクーラントタンクに、クーラント冷却装置が設置されていれば、加工後の冷却をさらに短時間で完了できる。
接合ツール10としては、既存の部品をそのまま利用することができる。既存の部品であっても、その端部に切欠き14を設けて凸部15を形成することができる。
シャンク部20における凹部22の範囲などは、実施にあたって適宜設計すればよい。前述した通り、チャック孔に密着する小径リング部23および大径リング部24において、接合ツール10で摩擦攪拌接合を行う際に必要なトルクを十分に伝達できる面積、外径および軸方向の幅が確保できればよい。
図5において、シャンク部20Aのテーパコーン21には、小径の端部まで凹部22が形成されており、大径側の大径リング部24だけが設けられている。
シャンク部20Aにおいては、大径リング部24だけで主軸8と接触するが、大径リング部24の回転中心の軸線方向の長さが所定長さであれば、軸線方向も正しく規制できる。
さらに、凹部22によるシャンク部20の接触面積低減は、本発明に必須ではなく、適宜省略してもよい。
さらに、断熱部40は、本発明に必須ではなく、省略してもよい。
冷却ジャケット50および冷媒通路60の構成は、前述した実施形態の構成に限定されない。例えば、空冷のための放熱フィン53は適宜省略してもよい。
ガイド部材52は必須ではなく、冷却ジャケット50内を単なる空洞としてもよい。
冷媒通路60に通される冷媒は、主軸8から供給されるセンタスルーエア、あるいはセンタスルークーラントでなくてもよく、各部のセンタホール82,25,41から導入する構成も必須ではない。
Claims (6)
- 工作機械の主軸に装着される摩擦攪拌接合工具であって、
前記主軸に接続されるシャンク部と、前記シャンク部に接続されたチャック部と、前記チャック部に接続された摩擦攪拌接合用の接合ツールと、を有し、
前記チャック部の周面には冷却ジャケットが形成され、前記冷却ジャケットには冷媒を通す冷媒通路が形成されていることを特徴とする摩擦攪拌接合工具。 - 前記冷媒通路は、前記シャンク部に形成されたセンタホールに接続され、前記冷媒は前記主軸のセンタスルーエアまたはセンタスルークーラントであることを特徴とする請求項1に記載の摩擦攪拌接合工具。
- 前記シャンク部と前記チャック部との間には、断熱部が介装されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の摩擦攪拌接合工具。
- 前記接合ツールに接触する前記チャック部の表面、または前記チャック部に接触する前記接合ツールの表面に、接触防止用の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の摩擦攪拌接合工具。
- 前記シャンク部は、前記主軸と接触するテーパ部の表面に、接触防止用の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の摩擦攪拌接合工具。
- 前記チャック部の周面には、前記チャック部の温度に応じて外観が変化する温度マーカが設置されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の摩擦攪拌接合工具。
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