JP5548378B2 - 水処理装置および水処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水処理装置および水処理方法に関し、詳しくは、濾過膜が用いられている膜分離モジュールにて膜分離する水処理装置および水処理方法に関する。
従来より、この種の水処理装置は、例えば、工場(鉄鋼、食品、電力、電子、医薬、自動車等の工場)の廃水、生活廃水、ゴミ浸出水等の廃水、工業用水等の用水、河川水、湖沼水、及び海水等を原水(被処理水)として膜分離モジュールで膜分離して透過水たる浄化水を得るのに用いられる。
ところで、この種の水処理装置においては、長期間の使用による目詰まり等によって濾過膜の機能が著しく低下することから、その機能を回復させるべく定期的に濾過膜の薬品洗浄が行われている。
特開平9−308882号公報
しかしながら、薬品洗浄は、そもそも濾過膜にダメージを与え、濾過膜の寿命を短くするという問題を有している。従って、薬品洗浄の頻度を下げつつも、多くの浄化水を得ることができる水処理装置及び水処理方法が望まれている。
本発明は、上記問題点及び要望に鑑み、薬品洗浄1回分当たりに対して、多くの浄化水を得ることができる水処理装置及び水処理方法を提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意研究したところ、濾過膜を透過する透過水の流束を一定範囲内にしつつ、継続的に一定以上の継続期間で該膜分離モジュールにて被処理水を膜分離することにより、薬品洗浄1回分当たりに対して、多くの浄化水を得ることができることを見出し、本発明の完成を想到するに至った。
即ち、本発明は、濾過膜が用いられている膜分離モジュールを備え、該膜分離モジュールにて被処理水を膜分離するように構成されてなる水処理装置であって、
該濾過膜を透過する透過水の流束を、流束と薬品洗浄インターバルとから下記式(1)によって算出される透過効率が最大となるように0.10〜0.35m/dの範囲内に設定しつつ、継続的に30日以上の継続期間で該膜分離モジュールにて膜分離するように構成されてなることを特徴とする水処理装置にある。
透過効率(年・m/d)=流束(m/d)×薬品洗浄インターバル(年)・・・(1)
また、本発明は、濾過膜が用いられている膜分離モジュールにて被処理水を膜分離する水処理方法であって、
該濾過膜を透過する透過水の流束を、流束と薬品洗浄インターバルとから下記式(1)によって算出される透過効率が最大となるように0.10〜0.35m/dの範囲内に設定しつつ、継続的に30日以上の継続期間で該膜分離モジュールにて膜分離することを特徴とする水処理方法にある。
透過効率(年・m/d)=流束(m/d)×薬品洗浄インターバル(年)・・・(1)
以上のように、本発明によれば、薬品洗浄1回分当たりに対して、多くの浄化水を得ることができる。
一実施形態に係る水処理装置の概略ブロック図。 透過水の流束に対する膜差圧上昇速度を示したグラフ。 透過水の流束に対する透過効率を示したグラフ。
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の水処理装置1は、膜分離モジュール2aを有し該膜分離モジュール2aにより原水Aを膜分離する膜分離部2が備えられてなる。
また、本実施形態の水処理装置1は、被処理水たる原水Aを膜分離部2に移送する原水移送経路8と、膜分離モジュール2aで得られた透過水たる浄化水Bを浄化水貯留槽(図示せず)に移送する透過水移送経路9とを備えてなる。
さらに、本実施形態の水処理装置1は、原水移送経路8を介して、原水Aが膜分離部2に移送され、透過水移送経路9を介して、膜分離部2で得られた透過水たる浄化水Bが浄化水貯留槽(図示せず)に移送されるように構成されてなる。
前記膜分離部2は、該膜分離部2に移送された原水Aを貯留する膜分離槽2bを備えてなる。
前記膜分離モジュール2aは、膜分離槽2b内の液面下に浸漬膜として設置されてなる。
前記膜分離モジュール2aは、濾過膜を備えてなる。
前記濾過膜の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、限外濾過膜(UF膜)、精密濾過膜(MF膜)等が挙げられる。
前記濾過膜としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニールアルコールなどの素材により形成された直径数mmの中空糸状に形成されたいわゆる中空糸膜などと呼ばれるタイプのものや、該中空糸膜よりも径の太い数cm程度の太さを有するいわゆるチューブラー膜と呼ばれるタイプのもの、さらには、使用時に内部にメッシュなどの支持材が配された状態で平板状で用いられる封筒状のいわゆる平膜と呼ばれるものなど従来公知のものを採用することができる。
本実施形態の水処理装置1は、濾過膜を透過する透過水の流束(単位時間あたり単位膜面積あたりの透過水量 m3/m2/日=m/d)を0.10〜0.35m/dの範囲内に設定しつつ、継続的に30日以上の継続期間で膜分離モジュール2aに原水Aを接触させて膜分離するように構成されてなる。
尚、「濾過膜を透過する透過水の流束を所定の範囲内に設定しつつ、継続的に所定の継続期間で膜分離モジュール2aに原水Aを接触させて膜分離する」には、“継続期間のうち一時的に、該流束が所定の範囲からはずれた状態で膜分離モジュール2aに原水Aを接触させて膜分離する”場合も含まれる。例えば、“継続期間のうち合計1/20の期間、該流束が所定の範囲からはずれた状態で膜分離モジュール2aに原水Aを接触させて膜分離する”場合も含まれる。更には、“継続期間のうち合計1/10の期間、該流束が所定の範囲からはずれた状態で膜分離モジュール2aに原水Aを接触させて膜分離する”場合も含まれる。
また、本実施形態の水処理装置1は、濾過膜を透過する透過水の流束を0.10〜0.35、好ましくは、0.15〜0.25m/dの範囲内に設定しつつ、継続的に30日以上の継続期間で膜分離モジュール2aに原水Aを接触させて膜分離するように構成されてなる。
前記期間(継続期間)は、好ましくは、180日以上、より好ましくは、1〜20年、更により好ましくは、2〜15年である。
本実施形態の水処理装置1は、ポンプ3を備え、該ポンプ3によって原水Aが前記膜分離モジュール2aに引き寄せられ且つ該膜分離モジュール2aの濾過膜を透過する透過水たる浄化水Bが浄化水貯留槽(図示せず)に移送されるように構成されてなる。
また、本実施形態の水処理装置1は、濾過膜を透過する透過水の流量を測定する流量計4と、得られた測定値に基づいてポンプ3の回転数を変化させるためのインバータ5と、
流量計4から発信された信号(得られた測定値)を制御装置(図示せず)を介してインバータ5に伝達する第1信号伝達機構6と、インバータ5から発信された信号(ポンプ3の回転数を変化させるための命令)をポンプ3に伝達する第2信号伝達機構7とを備えてなる。
さらに、本実施形態の水処理装置1は、前記流量計4で得られた測定値に基づいて、濾過膜を透過する透過水の流束が制御されるように構成されてなる。
また、前記制御装置は、該流量計4により測定された流量(単位時間あたりの移動量)の値から、濾過膜の面積あたりの流量の値、すなわち、濾過膜を透過する透過水の流束の値が算出されるように構成されてなる。
前記原水Aは、特に限定されるものではないが、原水Aとしては、例えば、工場(鉄鋼、食品、電力、電子、医薬、自動車等の工場)の廃水、生活廃水、ゴミ浸出水等の廃水、工業用水等の用水、河川水、湖沼水、及び海水等が挙げられる。
本実施形態の水処理装置は、上記の如く構成されてなるが、次ぎに、本実施形態の水処理方法について説明する。
本実施形態の水処理方法は、前記膜分離モジュール2aに原水Aを接触させて膜分離する。
また、本実施形態の水処理方法は、該濾過膜を透過する透過水の流束を0.10〜0.35m/dの範囲内にし、30日以上の期間で継続的に該膜分離モジュール2aに原水Aを接触させて膜分離する。
尚、膜分離槽内の懸濁物質(SS)濃度は、原水水質によって変わるが、被処理水が河川水、湖沼水等の場合は、10〜2000mg/L、好ましくは100〜1500mg/Lとすることができる。
また、膜の表面に付着した懸濁物質を除去するために、膜モジュール(「膜分離モジュール」ともいう。)2aの下部より空気を所定時間(例えば、30〜180秒間)供給して膜モジュール2aの膜を揺動させるエアスクラビング洗浄を定期的に(例えば、2〜10日に1回程度)行うことが好ましい。
尚、本実施形態の水処理装置および水処理方法は、上記構成により、上記利点を有するものであったが、本発明の水処理装置および水処理方法は、上記構成に限定されず、適宜設計変更可能である。
即ち、本実施形態の水処理装置1は、該ポンプ3によって、原水Aが前記膜分離モジュール2aに引き寄せられ且つ該膜分離モジュール2aの濾過膜を透過する透過水たる浄化水Bが浄化水貯留槽(図示せず)に移送されるように構成されてなるが、重力による水圧差によって、原水Aが前記膜分離モジュール2aに引き寄せられ且つ該膜分離モジュール2aの濾過膜を透過する透過水たる浄化水Bが浄化水貯留槽(図示せず)に移送されるように構成されてもよい。
次に、下記例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
膜分離槽としては、縦30cm、横40cm、高さ180cmのPVC製容器を用いた。膜分離槽内に有効水深1.5m(有効容積180リットル)まで原水を供給し、膜面積25m2の中空糸浸漬型MF膜モジュール(浸漬膜)を浸漬させた。膜の公称口径は0.1μmである。原水として地下水を用いて、吸引ろ過実験を行った。供給された原水は浸漬膜により吸引され、膜分離槽内では懸濁物質(SS)が濃縮されて蓄積される。膜分離槽内に懸濁物質が高濃度に蓄積されることを防ぐために、適宜、それぞれ30リットル程度の懸濁物質を膜分離槽下部より引き抜いて、膜分離槽内の懸濁物質の濃度を500〜1,000mg/Lとした。なお、膜の表面に付着した懸濁物質を除去するためのエアスクラビング洗浄を、懸濁物質引き抜き時に行った。このエアスクラビング洗浄は、膜モジュール下部より空気量5Nm3 /hrで約1分間空気を供給して膜モジュールの中空糸膜を揺動させることにより行い、懸濁物質を膜より除去した。尚、膜分離槽の水位が略一定となるように、膜分離槽に原水を常に供給した。
実験は、膜ろ過流束0.01〜1.35m/dの範囲内で変化させて行った。膜モジュールの運転期間は、0.01m/dは6ケ月、0.1m/dは1.5ケ月、0.48m/dは2ケ月、0.75m/dは1ケ月、0.96m/dは1ヶ月、1.35m/dは1ヶ月それぞれ実施した。なお、0.48m/d、0.75m/d、0.96m/d、及び1.35m/dのエアスクラビング洗浄については、膜への懸濁物質の付着が顕著であったことにより、10分間隔で実施した。それぞれの条件における実施期間にばらつきはあるが、膜差圧上昇速度の把握により、薬品洗浄を必要とする膜差圧に達するまでの期間を計算により求めた。
膜ろ過流量については、吸引ろ過側に流量計を設けて流量を測定することにより求めた。また、膜差圧については、圧力計を配管に設置して吸引圧力を測定した。尚、膜ろ過流量は、1時間おきに測定し、略一定となるように調整した。また、膜差圧は、1時間おきに測定した。
膜ろ過流束と膜差圧上昇速度との関係を図2に示す。尚、膜差圧上昇速度は、1時間おきに測定した膜差圧から平均の膜差圧上昇速度(実験値)を算出した。
図2に示すように、すべてのデータには相関があり、膜ろ過流束(m/d)(X)と膜差圧上昇速度(kPa/d)(Y)の関係との関係は、下記式(1)により近似できる。
Y=0.0059×EXP(5.059*X) (1)
この近似式(式(1))より、表1に示す膜ろ過流束ごとに対する膜差圧上昇速度(計算値)を求めた。そして、この膜差圧上昇速度(計算値)が膜ろ過流束ごとに一定であると仮定し、更に、膜差圧が30kPaとなるまでの年数を薬品洗浄インターバル(薬品洗浄が必要となるまでの年数)と仮定して、膜ろ過流束ごとの薬品洗浄インターバルを算出した。
また、得られる浄化水量当たりの薬品洗浄頻度の指標として、透過効率を算出した。ここで、透過効率は、下記式(2)により算出したものである。透過効率が高い程、得られる浄化水量当たりの薬品洗浄頻度が抑制され得ることが示されている。
透過効率(年・m/d)=流束(m/d)×薬品洗浄インターバル(年) (2)
上記の算出結果を図3、表1に示す。
ところで、従来は、特に上水道への適用においては薬品洗浄の間隔を約半年と設定し、これを達成する最大膜ろ過流束を選定していた。それでは、真のろ過効率を考察することに欠ける。そのため、本発明では、ろ過効率(=透過効率)を考案して、透過効率が最大となる膜ろ過流束を決定することを試みた。
Figure 0005548378
0.10〜0.35m/dの範囲では、その範囲外の透過水の流束の場合に比して、透過効率が高い値を示した。特に、0.15〜0.25m/dの範囲が、もっとも透過効率が良いことが分かった。
従って、本発明によって、得られる浄化水量当たりの薬品洗浄頻度が抑制され得ることが明らかとなった。
1:水処理装置、2:膜分離部、2a:膜分離モジュール、2b:膜分離槽、3:ポンプ、4:流量計、5:インバータ、6:第1信号伝達機構、7:第2信号伝達機構、8:原水移送経路、9:透過水移送経路、A:原水、B:浄化水

Claims (5)

  1. 濾過膜が用いられている膜分離モジュールを備え、該膜分離モジュールにて被処理水を膜分離するように構成されてなる水処理装置であって、
    該濾過膜を透過する透過水の流束を、流束と薬品洗浄インターバルとから下記式(1)によって算出される透過効率が最大となるように0.10〜0.35m/dの範囲内に設定しつつ、継続的に30日以上の継続期間で該膜分離モジュールにて膜分離するように構成されてなることを特徴とする水処理装置。
    透過効率(年・m/d)=流束(m/d)×薬品洗浄インターバル(年)・・・(1)
  2. 該濾過膜を透過する透過水の流束を0.15〜0.25m/dの範囲内に設定しつつ、継続的に30日以上の継続期間で該膜分離モジュールにて膜分離するように構成されてなる請求項1記載の水処理装置。
  3. 前記期間が180日以上である請求項1又は2記載の水処理装置。
  4. 前記濾過膜が精密濾過膜であり、
    前記被処理水の懸濁物質の濃度が10〜2,000mg/Lである請求項1〜3の何れか1項に記載の水処理装置。
  5. 濾過膜が用いられている膜分離モジュールにて被処理水を膜分離する水処理方法であって、
    該濾過膜を透過する透過水の流束を、流束と薬品洗浄インターバルとから下記式(1)によって算出される透過効率が最大となるように0.10〜0.35m/dの範囲内に設定しつつ、継続的に30日以上の継続期間で該膜分離モジュールにて膜分離することを特徴とする水処理方法。
    透過効率(年・m/d)=流束(m/d)×薬品洗浄インターバル(年)・・・(1)
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