JP5546089B2 - 亜鉛化合物配合組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、飲用するときの不快な味を低減した亜鉛化合物配合組成物に関し、医薬及び食品の分野に利用できるものである。
亜鉛化合物を配合した液体は、亜鉛イオンに由来する不快な味のため飲みにくいものであった。この味は、タンニンやミョウバンなどのタンパクと結合する収斂剤を口にしたときの味(収斂味)と共通のものである。
これまで、亜鉛化合物を含有する薬剤や食品の不快な味を改善する種々の技術が開示されてきたが(特許文献1参照)、収斂味のマスキングは充分ではなかった。
特開平09−157296号
本発明の目的は、亜鉛イオンに由来する収斂味を低減し、不快に感じることなく飲用することができる亜鉛化合物配合組成物を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、亜鉛化合物に核酸関連物質を配合すると、亜鉛イオンによるタンパクの凝集(収斂性)が低減し、収斂味が改善されることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものであり、以下の発明が包含される。
(1)亜鉛化合物及び核酸関連物質を配合した組成物。
(2)核酸関連物質がリボヌクレオチド類である上記(1)に記載の組成物。
(3)リボヌクレオチド類が5’-イノシン酸、5’-グアニル酸、5’-アデニル酸、5’-シチジル酸並びにその可食性塩(ナトリウム塩,カリウム塩,カルシウム塩など)から選ばれる1種又は2種以上である上記(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)更にロイシン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、グリシン、アラニン並びにこれらの塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上を配合した上記(1)〜(3)いずれかに記載の組成物。
(5)上記組成物が内服液用組成物であり、且つ、pHが2.5〜7.0である上記(1)〜(4)いずれかに記載の組成物。
(6)核酸関連物質を配合することを特徴とする亜鉛化合物配合組成物の不快な味の低減方法。
本発明により、亜鉛イオンに由来する収斂味を低減し、飲みやすい亜鉛化合物配合組成物を提供することができる。
特に本発明の亜鉛化合物配合組成物は、亜鉛化合物の収斂味をマスキングすることの難しい内服液、例えば、シロップ剤、ドリンク剤などの医薬品や医薬部外品を含む各種製剤及び栄養機能食品などの各種飲料に適用した場合でも、飲みやすい亜鉛化合物配合組成物を提供することができる。
本発明における亜鉛化合物とは、亜鉛を含む塩であり、アニオンが無毒性であれば有機イオン又は無機イオンのどちらでもかまわず、有機イオンとしては例えば、乳酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸の有機酸イオンを、また無機イオンとしては、例えば、硫酸、炭酸、塩酸、リン酸、硝酸のイオンを挙げることができる。内服用の組成物として配合される亜鉛化合物としては、例えば、グルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、クエン酸亜鉛、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、リン酸亜鉛が挙げられる。これらは、単独で配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
亜鉛化合物の配合量は、これを配合する組成物の使用目的により異なる。栄養摂取量の面からは、亜鉛イオンに換算して、1日当たり1〜50mgが好ましく、1日に100mlの液体を摂取する場合、その亜鉛イオン濃度は、0.001〜0.05W/V%である。
本発明における核酸関連物質とは、塩基・糖・リン酸から成るヌクレオチド又は当該ヌクレオチドが長い鎖状に結合した高分子有機化合物を意味し、リボヌクレオチド類である、5’-イノシン酸、5’-グアニル酸、5’-アデニル酸、5’-シチジル酸並びにその可食性塩(ナトリウム塩,カリウム塩,カルシウム塩など)などが好ましく、そのなかでも、5’-イノシン酸、5’-グアニル酸の可食性塩が好ましい。好ましい可食性の塩としては、例えば5’-イノシン酸二ナトリウム,5’-グアニル酸二ナトリウムが挙げられる。これらの核酸関連物質から1種又は2種以上を選んで配合できる。
亜鉛化合物と核酸関連物質との配合比は、投与する剤形によって異なるが、例えば、本発明の組成物を内服液用組成物として使用する場合には、内服液中の亜鉛イオン1質量部に対し0.2〜20000質量部となるように配合し、好ましくは2.5〜2000質量部、さらに5〜1000質量部となるように配合することが好ましい。
本発明においては、更にアミノ酸類を配合することにより、本発明の効果を増強することができる。
本発明におけるアミノ酸類とは、アミノ酸及びアミノ酸の塩であり、そのようなアミノ酸としては、例えばロイシン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、グリシン、アラニンが挙げられ、アミノ酸の塩としては、アミノ酸と酸(例えば、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸)、塩基(例えば、アンモニア、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム)又は他のアミノ酸との塩が挙げられる。本発明においては、これらのアミノ酸類から1種又は2種以上を選んで配合できる。
亜鉛化合物とアミノ酸類との配合比は、その亜鉛イオン1質量部に対し0.1質量部以上であり、好ましくは1〜4000質量部、さらに好ましくは2.5〜2000質量部である。
本発明の亜鉛配合組成物を内服液とする場合、そのpHを2.5〜7.0とすれば所望の効果を得ることができ、且つ、飲用しやすいものとすることができる。特にpH3.0〜5.5の範囲が好ましい。
当該pHは、例えば、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、乳酸、コハク酸などの有機酸、これら有機酸の塩、リン酸、塩酸などの無機酸、水酸化ナトリウムなどの無機塩基を添加して調整できる。
本発明の亜鉛配合組成物には、ビタミン類、ミネラル類、他のアミノ酸類、生薬、生薬抽出物、カフェイン、ローヤルゼリーなどを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合できる。また、必要に応じて抗酸化剤、着色剤、香料、矯味剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、甘味料などの添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合できる。
本発明の組成物を調製する方法は特に限定されるものではない。例えば、内服液を調製する場合は、各成分を適量の精製水で溶解した後、pHを調整し、残りの精製水を加えて容量調整し、必要に応じて濾過、滅菌処理することにより目的の亜鉛配合組成物が得られる。
以下に実施例及び試験例を挙げ、本発明をより詳しく説明する。実施例は本発明の実施の形態を具体的に示す例であり、試験例は実施例を評価した試験の例である。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
グルコン酸亜鉛 0.08g
5’-イノシン酸二ナトリウム 0.10g
塩酸アルギニン 0.20g
硝酸チアミン 0.01g
リン酸リボフラビンナトリウム 0.01g
塩酸ピリドキシン 0.01g
アスコルビン酸 1.00g
アミノエチルスルホン酸 2.00g
キシリトール 4.00g
トレハロース 5.00g
エリスリトール 5.00g
クエン酸 0.80g
クエン酸ナトリウム 適量
安息香酸ナトリウム 0.06g
ミックスフルーツフレーバー 0.10g
上記成分を精製水に溶解した後、pHを3.0に調整し、精製水を加えて全量を100mLとした。この液をろ紙でろ過し、滅菌装置を用いて、ろ液を80℃で25分間加熱滅菌した後、ガラス瓶に充填しキャップを施して内服液剤を得た。
実施例2
グルコン酸亜鉛 0.02g
5’-イノシン酸二ナトリウム 0.05g
塩酸アルギニン 0.20g
グルコン酸カルシウム 2.00g
アスパラギン酸マグネシウム 1.00g
硝酸チアミン 0.01g
リボフラビン 0.01g
塩酸ピリドキシン 0.10g
アスコルビン酸 1.00g
アミノエチルスルホン酸 1.00g
ソルビトール 4.00g
トレハロース 5.00g
キシリトール 4.00g
ステビア抽出物 0.03g
アセスルファムカリウム 0.03g
リンゴ酸 0.10g
クエン酸 0.40g
クエン酸ナトリウム 適量
安息香酸 0.06g
パラオキシ安息香酸ブチル 0.006g
パラオキシ安息香酸プロピル 0.006g
アップルフレーバー 0.10g
上記成分を精製水に溶解した後、pHを4.0に調整し、精製水を加えて全量を100mLとした。この液をろ紙でろ過し、滅菌装置を用いて、ろ液を80℃で25分間加熱滅菌した後、ガラス瓶に充填しキャップを施して内服液剤を得た。
実施例3
グルコン酸亜鉛 0.05g
5’-グアニル酸二ナトリウム 0.05g
ロイシン 0.20g
イソロイシン 0.20g
バリン 0.20g
リボフラビン 0.01g
塩酸ピリドキシン 0.01g
アスコルビン酸 1.00g
シアノコバラミン 120μg
パンテノール 0.01g
ニコチン酸アミド 0.05g
アミノエチルスルホン酸 1.00g
ソルビトール 5.00g
トレハロース 2.00g
マルチトール 2.00g
クエン酸 0.40g
リンゴ酸ナトリウム 適量
安息香酸 0.06g
パラオキシ安息香酸ブチル 0.006g
パラオキシ安息香酸プロピル 0.006g
ミックスフルーツフレーバー 0.10g
上記成分を精製水に溶解した後、pHを4.5に調整し、精製水を加えて全量を100mLとした。この液をろ紙でろ過し、滅菌装置を用いて、ろ液を80℃で25分間加熱滅菌した後、ガラス瓶に充填しキャップを施して内服液剤を得た。
実施例4
グルコン酸亜鉛 0.02g
5’-イノシン酸二ナトリウム 0.05g
リジン塩酸塩 0.20g
グルコン酸カルシウム 0.80g
アスパラギン酸マグネシウム 0.40g
アスパラギン酸ナトリウム 0.30g
硝酸チアミン 0.01g
リン酸リボフラビンナトリウム 0.01g
塩酸ピリドキシン 0.01g
ニコチン酸アミド 0.10g
無水カフェイン 0.10g
アミノエチルスルホン酸 2.00g
ヨクイニン流エキス 2.00mL
ブドウ糖 5.00g
難消化性デキストリン 4.00g
エリスリトール 5.00g
キシリトール 2.00g
ステビア抽出物 0.02g
アセスルファムカリウム 0.03g
スクラロース 0.05g
クエン酸 0.80g
クエン酸ナトリウム 適量
安息香酸ナトリウム 0.06g
パラオキシ安息香酸ブチル 0.006g
パラオキシ安息香酸プロピル 0.006g
ミックスフルーツフレーバー 0.10g
上記成分を精製水に溶解した後、pHを3.5に調整し、精製水を加え全量を100mLとした。この液をろ紙でろ過し、滅菌装置を用いて、ろ液を80℃で25分間加熱滅菌した後、ガラス瓶に充填しキャップを施して内服液剤を得た。
実施例5
グルコン酸亜鉛 0.05g
5’-イノシン酸二ナトリウム 0.05g
アラニン 0.20g
グリシン 0.20g
グルコン酸カルシウム 2.00g
乳酸カルシウム 1.00g
アスパラギン酸ナトリウム 0.10g
アスパラギン酸マグネシウム 1.00g
硝酸チアミン 0.01g
リン酸リボフラビンナトリウム 0.02g
塩酸ピリドキシン 0.03g
ニコチン酸アミド 0.05g
無水カフェイン 0.10g
アミノエチルスルホン酸 2.00g
ヨクイニン流エキス 2.00mL
ローヤルゼリー 0.60g
ブドウ糖 5.00g
ソルビトール 5.00g
キシリトール 5.00g
ステビア抽出物 0.02g
アセスルファムカリウム 0.03g
クエン酸 0.80g
クエン酸ナトリウム 0.10g
リン酸 0.30g
塩酸 適量
安息香酸ナトリウム 0.06g
パラオキシ安息香酸ブチル 0.006g
パラオキシ安息香酸プロピル 0.006g
ミックスフルーツフレーバー 0.10g
上記成分を精製水に溶解した後、pHを3.5に調整し、精製水を加え全量を100mLとした。この液をろ紙でろ過し、滅菌装置を用いて、ろ液を80℃で25分間加熱滅菌した後、ガラス瓶に充填しキャップを施して内服液剤を得た。
試験例
Hagermanらは、溶液中のタンパク(ウシ血清アルブミン:BSA)がタンニンにより凝集し、その沈澱量はタンニンの量に比例することを報告した(J.Agric.Food.Chem.,1978,Vol.26,809-812)。本発明者らは、亜鉛イオン溶液にBSA溶液を加えると、この溶液が懸濁し、光の透過量が減少すること、この透過量の減少が、亜鉛イオンの濃度に相関することを見出した。
試験方法
1)BSA溶液の調製
BSA(fraction V,fatty acid free ;Sigma Chemical社製)10gを適量の精製水に溶解し、クエン酸100mgを加え、NaOH溶液(1mol/L)でpHを4.8に調整し、精製水で100mLとした。
2)希釈液の調製
クエン酸100mgを適量の水に溶解し、NaOH溶液(1mol/L)でpHを4.8に調整し、精製水で100mLとした。
3)亜鉛イオン溶液の調製
グルコン酸亜鉛0.04g、0.19g及び0.39gにクエン酸0.10gを加えた。それぞれを適量の精製水に溶解し、NaOH溶液(1mol/L)でpHを4.8に調整し、精製水で100mLとした。
4)タンパク−亜鉛イオン相互作用(収斂性)の評価
各亜鉛イオン溶液2mLにBSA溶液6mLを加え、希釈液でそれぞれ全量を10mLとした。これを40℃で30分間振とうした。石英セル(L=1cm)を使用し、分光光度計(日立製作所製:U−3300)により、各透明溶液では吸収されない波長である500nmにおける吸光度を測定した。
結果を図1に示した。亜鉛イオン濃度の増加に伴って吸光度が増加しており、両者が相関することが示された。
次に、各種濃度の亜鉛イオン溶液の収斂味を官能評価したときの結果が、当該亜鉛イオン溶液にBSA溶液を加えたときの吸光度と相関していることを確認した。官能評価は、収斂味が強く許容できない場合をB、許容することができる範囲をその収斂味の強さに応じてA4〜A1とし、収斂味を全く感じない場合をAとして行った。
結果を図2に示した。吸光度約0.4以下であれば、収斂味が充分抑えられていると感じることができた。
これらの結果から、ある物質を添加した亜鉛イオン溶液をBSA溶液に混合したときの吸光度が無添加の場合と比較して減少すれば、その物質の添加により、タンパク−亜鉛イオン相互作用による凝集(収斂性)が減少したこと、すなわち収斂味が減少したこととなる。
5)実施例と比較例のタンパク凝集性
表1に示す成分を精製水に溶解した後、pHを4.8に調整し、精製水を加えて全量を100mLとして、検体1〜4を調製した。得られた検体について、上記1)〜4)に記載した方法に従い、タンパク凝集性を評価した。結果を併せて表1に示した。
Figure 0005546089
表1の結果から、核酸関連物質を配合した検体1〜3の吸光度が、核酸関連物質を配合していない検体4より小さいことが示された。したがって、核酸関連物質を配合することにより、タンパクと亜鉛イオンの相互作用による凝集性すなわち収斂味が小さくなることが明らかとなった。
また、検体1〜3で示された吸光度の値は、収斂味を気にすることなく使用することができる範囲に属していることから、核酸関連物質を配合することにより、飲みやすく、しかも不快な後味が残らない亜鉛化合物配合組成物が得られると考えられる。
図1は亜鉛イオン溶液にBSA溶液を加えたときに生じる懸濁(タンパク凝集)と亜鉛イオン濃度の相関性を示す。当該タンパク凝集が、亜鉛イオンの濃度に依存して増加していることがわかる。 図2は亜鉛イオン溶液にBSA溶液を加えたときに生じる懸濁(タンパク凝集)と亜鉛イオン溶液を官能評価した結果が相関することを示す。当該タンパク凝集量の増加に伴い、亜鉛イオンによる収斂味が強く感じられていることがわかる。

Claims (4)

  1. (a)グルコン酸亜鉛、並びに、(b)5’-イノシン酸、5’-グアニル酸及びその可食性塩から選ばれる1種又は2種以上を配合することを特徴とする組成物。
  2. 更にロイシン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、グリシン、アラニン並びにこれらの塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上を配合した請求項1に記載の組成物。
  3. 上記組成物が内服液用組成物であり、且つ、pHが2.5〜7.0である請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 5’-イノシン酸、5’-グアニル酸及びその可食性塩から選ばれる1種又は2種以上を配合することを特徴とする、グルコン酸亜鉛配合組成物の不快な味の低減方法。
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