JP5545025B2 - 工作機械 - Google Patents

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Description

この発明は、旋盤、マシニングセンタ、研削盤、ドリル等の工作機械に関し、特にフルクローズドループ制御を行う工作機械に関する。
旋盤等の工作機械において、刃物台の送りや、主軸移動型旋盤における主軸台の送りの制御には、フィードバック制御系のあるクローズドループ制御が用いられる。通常は、サーボモータに付属のパルスコーダを利用したセミクローズドループ方式が採られるが、高精度な位置決めのために、刃物台等の位置をリニアエンコーダ等の直線位置検出手段で直接に読み取って制御するフルクローズドループ方式が採用されることがある。
また、工作機械では、切削熱や機械運転に伴う各部位の発熱のために、ベッドや他の部位の熱膨張、熱変形が生じる。このような熱膨張,熱変形は、加工精度の低下に繋がる。冷却装置を装備してその対策とするものもあるが、熱膨張を十分に抑えるには、冷却装置が大掛かりとなり、また冷却だけでは加工精度を確保することができない。そのため、従来より、熱膨張を計測して工具の切り込み量等の熱変位補正を行なうものが種々提案されている。
例えば特許文献1に記載の工作機械は、図7に示すように、主軸台51がベッド52上に位置固定され、刃物台53を搭載した送り台54が主軸半径方向(X軸方向)に移動可能に設けられた旋盤であり、主軸台51に取付けられ主軸半径方向に延びるスケール55を、送り台54に取付けられた読取部56で読み取ることにより、刃物台53の主軸半径方向における位置を計測する。この刃物台53の主軸半径方向位置の計測値は、熱変位等により変化する。そこで、計測値に応じて刃物台53の工具57の切り込み量等を補正することで、常に適正な加工精度を確保する。
特開2002−144191号公報
特許文献1のように、主軸台51と送り台54との相対位置だけを計測するのでは、送り台54に対する刃物台53の熱変位が生じた場合に、主軸軸心と工具の間の距離に誤差が生じる。また、特許文献1の工作機械は、主軸台51と刃物台53の送り台54とが主軸半径方向に並んで配置され、常に両者の主軸軸心方向(Z軸方向)の位置関係が同じであるため、主軸台51に取付けたスケール55を送り台54に取付けた読取部56で読み取ることができる。しかし、刃物台が主軸半径方向および主軸軸心方向の両方に移動する構成の工作機械の場合、主軸台と送り台との主軸軸心方向の位置関係が常に同じでないため、前記のようにスケールおよび読取部を設けることができない。刃物台が位置固定で、主軸台が主軸半径方向および主軸軸心方向の両方に移動する構成の工作機械の場合も、同様である。また、主軸台および刃物台が、主軸半径方向と主軸軸心方向とにそれぞれ個別に移動する構成の工作機械の場合も、同様である。
さらに、特許文献1の発明は、セミクローズドループ方式において熱変位補正を行うものであり、サーボモータに付属のパルスコーダを用いて制御を行うため、今一つ十分な高精度化を図ることが難しい。
一方、従来のフルクローズドループ方式の制御は、例えば刃物台移動型の旋盤では、刃物台の移動をリニアエンコーダ等の直線位置計測器で直接に読み取って制御を行うが、直線位置計測器の取付箇所に熱変位が生じた場合、高精度な制御が行えなくなる。そのため熱変位補正を行う手段を別に設ける必要がある。
この発明の目的は、熱変位補正手段を設けることなく、熱変位にかかわらずに高精度にワーク支持手段と工具支持手段間の相対位置の移動制御が行えて、制御系が簡素にでき、かつ加工精度の向上が図れる工作機械を提供することである。
この発明の他の目的は、工作機械が旋盤である場合に、切り込み方向の位置制御が高精度に行えて、強く高精度化が求められる切り込み方向の加工精度の向上を可能とすることである。
この発明のさらに他の目的は、主軸移動型の旋盤において、切り込み方向の位置制御が高精度に行え、強く高精度化が求められる切り込み方向の加工精度の向上を可能とすることである。
この発明のさらに他の目的は、ワーク支持手段と工具支持手段間の直交2軸方向の移動に対して、1軸方向の直線位置検出手段を設置するにつき、その設置構造の簡素化を図ることである。
この発明の工作機械は、ワークを支持するワーク支持手段と工具を支持する工具支持手段とを、固定基台上に互いに直線方向に沿って相対的に進退可能に設置し、前記ワーク支持手段と工具支持手段とを、サーボモータの駆動により相対的に進退させる移動機構、およびこの移動機構を制御する移動制御手段を設けた工作機械において、
前記固定基台よりも熱膨張係数の低い低熱膨張材からなり前記固定基台に設置された検出手段支持枠を設け、この検出手段支持枠に、前記ワーク支持手段および工具支持手段の定められた位置の前記直線方向の位置をそれぞれ検出するための、ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段を設け、前記ワーク側の直線位置検出手段の検出する前記直線方向と前記工具側の直線位置検出手段の検出する前記直線方向とは互いに同じ直線方向であり、前記ワーク支持手段および工具支持手段のいずれか一方は前記直線位置方向に関して位置固定であり、この位置固定のワーク支持手段または工具支持手段の前記直線方向の位置を検出する前記直線位置検出手段は、熱変形による前記直線位置の移動を検出し、前記移動制御手段は、前記ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段の両方の検出値を用いて前記移動機構をフィードバック制御するものとしたことを特徴とする。なお、前記直線位置検出手段は、直線方向の位置を検出する検出手段のことである。前記熱膨張係数は線膨張係数と同義である。
この構成によると、ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段を設け、ワーク支持手段の被検出位置と工具支持手段の両方の定められた位置を検出して制御に用いるため、ワーク支持手段に支持されたワークと工具支持手段に設置された工具の刃先との間の距離を、精度良く検出することができる。
また、ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段は、固定基台に設置された低熱膨張材からなる検出手段支持枠に設置し、かつ共通の検出手段支持枠に設置したため、前記固定基台や移動機構の熱変位に係わらずに、ワーク側の直線位置検出手段と工具側の直線位置検出手段の検出値から、ワークと工具刃先間の距離を精度良く検出できる。すなわち、理想的には、熱変形しない検出手段支持枠および直線位置検出手段で、移動や熱変形後のワーク位置と工具位置を検出することになり、ワークと工具刃先間の距離を精度良く検出できる。そのため、ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段の両方の検出値を用いて前記移動機構をフィードバック制御する移動制御手段を設けたことで、熱変位補正を行うことなく、精度良く加工することができ、制御系も簡素になる。
この発明において、前記ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段は、それぞれスケールおよびこのスケールを読み取る読取りヘッドからなり、前記ワーク支持手段および工具支持手段の前記定められた位置に、前記両直線位置検出手段のスケールおよび読取りヘッドの一方を設け、他方を前記検出手段支持枠に設けても良い。
直線位置検出手段が、上記のようなスケールおよびこのスケールを読み取る読取りヘッドからなるものである場合に、上記のようにスケールおよび読取りヘッドを設置することで、上記の熱変位補正手段を設けることなく、熱変位にかかわらずに高精度にワーク支持手段と工具支持手段間の相対位置の移動制御が行えて、制御系が簡素にでき、かつ加工精度の向上が図れるという効果が実現される。また、工作機械において一般的に用いられる直線位置検出手段を用いて、この発明の上記各効果を得ることができる。
この発明において、前記工作機械が旋盤であって、前記固定基台がベッド、前記ワーク支持手段が主軸およびこの主軸を支持する主軸台、前記工具支持手段が刃物台であり、前記ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段は、いずれも前記主軸に対して直交する方向の位置を検出するものであり、前記ワーク側の直線位置検出手段は、前記スケールが前記検出手段支持枠に、前記読取りヘッドが前記主軸台にそれぞれ設置されたものであっても良い。
旋盤では、切り込み方向の加工精度と送り方向の加工精度のうち、切り込み方向の寸法に、より高い精度が求められる。この構成の場合、前記ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段が、いずれも主軸に対して直交する方向の位置を検出するものであるため、高精度化の要求の強い切り込み方向の位置制御が高精度に行える。切り込み方向と送り方向の両方を、前記検出手段支持枠に直線位置検出手段を設けて検出することは、構成が複雑になって困難な場合があるが、その場合は、切り込み方向のみ前記直線位置検出手段で検出し、送り方向については他の検出手段を用いて位置制御を行うようにしても良い。
前記工作機械が主軸移動型の旋盤であって、前記主軸台が、前記ベッドに対し、前記主軸の軸心に対する直交方向に進退可能であり、前記ワーク側の直線位置検出手段が、前記直交する方向である主軸台の進退方向に延びて前記検出手段支持枠に設けられたスケールと、前記主軸台に設置された読取りヘッドとでなるものであっても良い。
この構成の場合、主軸移動型の旋盤において、切り込み方向の位置制御が高精度に行え、強く高精度化が求められる切り込み方向の加工精度の向上が可能となる。
この発明の前記各構成の場合に、前記ワーク側および工具側のいずれか一方または両方の直線位置検出手段は、前記スケールの位置計測方向となる直線方向に並ぶ各目盛が、前記直線方向に対する直交方向に延びた幅広目盛であり、この幅広目盛に前記読取りヘッドが対向する範囲で、前記直交方向に前記スケールと前記読取りヘッドの相対位置が移動しても前記直線方向の位置を検出可能としても良い。
上記幅広目盛を設けた場合、計測方向となる直線方向に直交する方向にスケールと読取りヘッドとの相対位置が変わっても、前記計測方向の位置が計測できる。そのため、ワーク支持手段と工具支持手段間の直交2軸方向の移動に対して、1軸方向の直線位置検出手段を設置するにつき、その直交方向に移動を許容する機構を別に設けることが不要であり、設置構造を簡素化することができる。
この発明の工作機械は、ワークを支持するワーク支持手段と工具を支持する工具支持手段とを、固定基台上に互いに直線方向に沿って相対的に進退可能に設置し、前記ワーク支持手段と工具支持手段とを、サーボモータの駆動により相対的に進退させる移動機構、およびこの移動機構を制御する移動制御手段を設けた工作機械において、前記固定基台よりも熱膨張係数の低い低熱膨張材からなり前記固定基台に設置された検出手段支持枠を設け、この検出手段支持枠に、前記ワーク支持手段および工具支持手段の定められた位置の前記直線方向の位置をそれぞれ検出するための、ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段を設け、前記ワーク側の直線位置検出手段の検出する前記直線方向と前記工具側の直線位置検出手段の検出する前記直線方向とは互いに同じ直線方向であり、前記ワーク支持手段および工具支持手段のいずれか一方は前記直線位置方向に関して位置固定であり、この位置固定のワーク支持手段または工具支持手段の前記直線方向の位置を検出する前記直線位置検出手段は、熱変形による前記直線位置の移動を検出し、前記移動制御手段は、前記ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段の両方の検出値を用いて前記移動機構をフィードバック制御するものとしたため、熱変位補正手段を設けることなく、熱変位にかかわらずに高精度にワーク支持手段と工具支持手段間の相対位置に移動制御が行えて、制御系が簡素にでき、かつ加工精度の向上を図ることができる。
前記前記ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段は、それぞれスケールおよびこのスケールを読み取る読取りヘッドからなり、前記ワーク支持手段および工具支持手段の前記定められた位置に、前記両直線位置検出手段のスケールおよび読取りヘッドの一方を設け、他方を前記検出手段支持枠に設けた場合は、工作機械において一般的に用いられる直線位置検出手段を用いて、この発明の上記各効果を得ることができる。
前記工作機械が旋盤であって、前記固定基台がベッド、前記ワーク支持手段が主軸およびこの主軸を支持する主軸台、前記工具支持手段が刃物台であり、前記ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段は、いずれも前記主軸に対して直交する方向の位置を検出するものであり、前記ワーク側の直線位置検出手段は、前記スケールが前記検出手段支持枠に、前記読取りヘッドが前記主軸台にそれぞれ設置された場合は、強く高精度化が求められる切り込み方向の加工精度を向上させることができる。
前記工作機械が主軸移動型の旋盤であって、前記主軸台が、前記ベッドに対し、前記主軸の軸心に対する直交方向に進退可能であり、前記ワーク側の直線位置検出手段は前記直交する方向である主軸台の進退方向に延びて前記検出手段支持枠に設けられたスケールと、前記主軸台に設置された読取りヘッドとでなる場合は、主軸移動型の旋盤において、切り込み方向の位置制御が高精度に行え、強く高精度化が求められる切り込み方向の加工精度を向上させることができる。
この発明において、前記ワーク側および工具側のいずれか一方または両方の直線位置検出手段は、前記スケールの位置計測方向となる直線方向に並ぶ各目盛が、前記直線方向に対する直交方向に延びた幅広目盛であり、この幅広目盛に前記読取りヘッドが対向する範囲で、前記直交方向に前記スケールと前記読取りヘッドの相対位置が移動しても前記直線方向の位置を検出可能である場合は、ワーク支持手段と工具支持手段間の直交2軸方向の移動に対して、1軸方向の直線位置検出手段を設置するにつき、その設置構造の簡素化を図ることができる。
この発明の第1の実施形態に係る工作機械おける工作機械本体の平面図と制御装置の概念構成のブロック図とを組み合わせた説明図である。 同工作機械本体の斜視図である。 (A)は同工作機械のワーク側の直線位置検出手段におけるZ軸方向に沿う断面の部分拡大断面図、(B)は同直線位置検出手段におけるX軸方向に沿う断面の部分拡大断面図である。 同工作機械の工具側の直線位置検出手段と刃物台との関係を示す概略正面図である。 この発明の他の実施形態に係る工作機械のワーク側の直線位置検出手段およびその周辺部分を示す平面図である。 同ワーク側の直線位置検出手段およびその周辺部分を示す正面図である。 従来の工作機械における工作機械本体の平面図である。
この発明の第1の実施形態を図1ないし図4と共に説明する。この工作機械は数値制御式の工作機械であり、機械部分である工作機械本体1と、この工作機械本体1を制御する制御装置2とで構成される。工作機械本体1は、主軸移動型の旋盤であり、固定基台であるベッド3上に送り台4を介して設置された主軸台5に、主軸6が回転自在に支持され、ベッド3上に刃物台7が、支持台26を介して設置されている。支持台26は、ベッド3に固定して設置されている。刃物台7はタレットからなり、支持台26に回転割出可能に支持されている。前記主軸6、主軸台5、および送り台4によりワーク支持手段21が構成される。前記刃物台7および支持台26により、工具支持手段22が構成される。
送り台4は、ベッド3に設けられたX軸案内9上を、主軸6の軸心Oに対して直交する水平な主軸半径方向(X軸方向)に移動自在に設置され、ベッド3上に設置されたサーボモータ10とその回転出力を直線動作に変換する送りねじ機構11とからなるX軸移動機構12によって左右に進退駆動される。前記送りねじ機構11は、ねじ軸とナットとからなる。図2のように、主軸台5は、送り台4上に設けられたZ軸案内13上に主軸軸心方向(Z軸方向)に移動自在に設置され、送り台4上に設置されたサーボモータ14(図1、図2)とその回転出力を直線動作に変換する送りねじ機構15からなるZ軸移動機構16によって前後に進退駆動される。前記送りねじ機構15は、ねじ軸とナットとからなる。主軸6の回転駆動は、主軸台5に内蔵の主軸モータ(図示せず)よって行われる。主軸6の前端にはチャック17が着脱可能に設けられている。チャック17は、チャック半径方向に移動する複数のチャック爪17aにより、ワークWを把持可能である。
刃物台7は、支持台26に対してX軸方向に沿う水平な回転中心軸T回りに回転自在であり、外周部に円周方向に並ぶ複数の工具取付部7aを有している。回転中心軸Tは、刃物台中心軸となる。各工具取付部7aに、工具ホルダ18aを介してバイトや回転工具等の工具18が取付けられる。刃物台7は、軸受8を介して支持台26に回転自在に支持された中空軸7cの先端に固定されており、割出用モータ(図示せず)で中空軸7cを回転させることにより、任意の工具取付部7aが主軸6に対向する位置に旋回割出しされる。刃物台7は、その正面形状が、図2に示すような円形状であっても、また多角形状であっても良い。なお、図1,図2では、工具18は一部の工具取付部7aに取付けられたもののみを示し、他は図示を省略してある。
図1において、この実施形態の工作機械は、前記基本構造の工作機械本体1に、低熱膨張材の検出手段支持枠30を設けると共に、この検出手段支持枠30にワーク側および工具側の直線位置検出手段31,32を設けたものである。ワーク側の直線位置検出手段31は、ワーク側の被検出位置O1を検出する直線位置検出手段であり、また移動する主軸台5の進退位置を検出するセンサである。工具側の直線位置検出手段32は、工具側の被検出位置T1を検出する直線位置検出手段であり、刃物台7の熱変位を検出するセンサである。検出手段支持枠30は、ベッド3よりも熱膨張係数の低い材料である低熱膨張材、例えばインバー(不変鋼とも言う)等の合金材料、特にスーパーインバーやステンレスインバー等の合金材料からなる。検出手段支持枠30は、インバー他に、インバーと同等以下の熱膨張係数の合金材料でも、セラミックス等であっても良い。
検出手段支持枠30は、固定基台であるベッド3に、検出手段支持枠30の一部となる1箇所の取付部30aで固定して設置され、ワーク支持手段21および工具支持手段22の定められた被検出位置O1、T1の近傍にそれぞれ位置するワーク近傍部30Wおよび工具近傍部30Tを有する。なお、上記「1箇所の」とは、ある程度の範囲を持っていても、分岐された2つの部分等であっても良く、検出手段支持枠30の全体として、両端固定のような複数箇所ではなく、概念的に1点支持と見なせる箇所で固定されていることを言う。また、検出手段支持枠30のベッド3への固定箇所は1箇所であることが望ましいが、検出手段支持枠30に対するベッド30の熱伸縮等を阻害しないスライド構造等で他の箇所が支持されていても良い。被検出位置O1、T1は、それぞれワーク支持手段21および工具支持手段22に対して、これらワーク支持手段21および工具支持手段22の中心位置を検出する位置として、任意に定められた位置である。この実施形態では、ワーク支持手段21の被検出位置O1は、主軸台5の上面における主軸中心軸Oに沿う位置とされる。工具支持手段22の被検出位置T1は、刃物台中心の前面部とされる。取付部30aは、ベッド3上における、主軸台5に対してX軸方向に刃物台7のある側に離れた位置とされる。
検出手段支持枠30は、具体的には図2に示すように、下端が前記取付部30aとなる支柱部30bと、この支柱部30bの上端からX軸方向に延びて先端が主軸台5の上方まで、または主軸台5の上方を超えた位置まで水平に延びる第1アーム部30cと、支柱部30bの途中高さ位置から刃物台7側へZ軸方向に水平に延びる第2アーム部30dとでなる。第1アーム部30cの中央よりも先端側部分が前記ワーク近傍部30Wであり、第2アーム部30dの先端部が工具近傍部30Tである。
図1において、ワーク側の直線位置検出手段31は、スケール31aと、読取りヘッド31bからなる。直線位置検出手段31は、光学式のセンサと磁気式のセンサとのいずれであっても良いが、この例では光学式のセンサとされている。スケール31aは検出手段支持枠30のワーク近傍部30Wに取付けられ、読取りヘッド31bは主軸台5に設置されている。
図3(B)に示すように、スケール31aは、計測する直線方向(X軸方向)に並んで目盛33を設けたものである。スケール31aは、ワーク近傍部30Wの長さ範囲を超えて設けられていても良く、この例では、主軸台5のX軸方向の移動範囲全体に渡って検出可能な範囲に設けられている。目盛33は、検出手段支持枠30に直接に施したものであっても、また検出手段支持枠30に貼り付けた目盛形成部材に施したものであっても良いが、目盛形成部材を用いる場合、その目盛形成部材は熱膨張係数が検出手段支持枠30と同等の材料とされる。
読取りヘッド31bは、スケール31aに対して計測方向に進退自在に設置される。図示の例では、検出手段支持枠30の第1アーム部30cが、下向き溝形の断面形状とされて、第1アーム部30cの片方の側壁内面にスケール31aが設けられ、両側の側壁内面に溝状のガイド30caが設けられている。読取りヘッド31bは、センサ素子部31baと、このセンサ素子部31baを設置したセンサ支持体部31bbとでなり、センサ支持体部31bbの両側面に設けられた突出部分からなる被案内部で、前記ガイド30caに進退自在に支持されている。
読取りヘッド31bは、詳しくは、主軸台5のZ軸方向の移動を許容する直交移動許容機構34を介して主軸台5に設置されている。直交移動許容機構34は、主軸台5の上面に主軸中心軸Oの直上で主軸中心軸Oに沿って設けられたヘッド用ガイド34aと、前記センサ支持体部31bbに設けられて前記ヘッド用ガイド34aに進退自在に係合した被ガイド部34bとでなる。これら被ガイド部34bのヘッド用ガイド34aに対するZ軸方向の進退と、スケール31aに対する読取りヘッド31bのX軸方向の進退とで、主軸台5の直交2軸方向の移動によっても、直線位置検出手段31が障害となることなく、直線位置検出手段31による検出が可能とされている。
図1において、工具側の直線位置検出手段32は、刃物台7に設けられたスケール32aと、検出手段支持枠30の第2アーム30dの工具近傍部30Tに設けられた読取りヘッド32bとからなる。工具側の直線位置検出手段32も、光学式と磁気式のいずれの位置センサであって良いが、この例では光学式の位置センサが用いられている。スケール32aは、中空軸7c内に挿通されて一端が刃物台7の回転部分の前板部に回転中心軸Tと同心に固定され、他端が中空軸7cから突出している。スケール32aの前記中空軸7cからの突出部分に目盛35が設けられている。図示の例では、目盛35はスケール32aの上面に施されている。スケール32aは、検出手段支持枠30と同じかまたは同程度の熱膨張係数の材料からなる。読取りヘッド32bは、図4に示すように、検出手段支持枠30の第2アーム30dの下面に設けられている。
図1において、制御系を説明する。制御装置2は、コンピュータ式の数値制御装置およよひプログラマブルコントローラからなり、プログラム記憶手段41に記憶された加工プログラム42を、CPU(中央処理装置)等からなる演算制御部43で実行することにより、工作機械本体1の各部を制御する。制御装置2は、演算制御部43の他にX軸の移動制御手段44とZ軸の移動制御手段45を有し、かつシーケンス制御部(図示せず)を有する。加工プログラム42は、NCコード等により記述されたX軸移動命令Rx、およびZ軸移動命令Rzや、各部のシーケンス制御命令(図示せず)を有しており、演算制御部43は各命令を記述順に読み出す。その読みだされたシーケンス制御命令は、前記シーケンス制御部に転送され、シーケンス制御部によって制御が実行される。
演算制御部43は、加工プログラム42におけるX軸移動命令Rxを、X軸移動制御手段44にX軸の位置指令として与え、Z軸移動命令Rzを、Z軸移動制御手段45にX軸の位置指令として与える。
X軸の移動制御手段44は、X軸のサーボコントローラからなり、演算制御部43から与えられたX軸の指令位置となるように、X軸サーボモータ10を制御する。このとき、X軸の移動制御手段44は、ワーク側の直線位置検出手段31および工具側の直線位置検出手段32の両方を用い、フルクローズドループ制御となるフィードバック制御を行う。移動制御手段44において、この例では、ワーク側の直線位置検出手段31の検出値を基準検出値とし、工具側の直線位置検出手段32の検出値を基準検出値に加算または減算する。例えば、工具側の直線位置検出手段32は、原点位置に対してX軸方向の正逆いずれの方向にどれだけ移動しているかを検出するものとされ、刃物台7が主軸中心軸Oに近づく方向に移動していることが検出された場合は、その検出値分だけ、ワーク側の直線位置検出手段31の検出値を減算し、その減算結果でフィードバック制御を行う。
Z軸の移動制御手段45は、Z軸のサーボコントローラからなり、演算制御部43から与えられたZ軸の指令位置となるように、Z軸サーボモータ14を制御する。この制御には、Z軸サーボモータ14の有するパルスコーダ等の位置検出器14aの検出値を用い、セミクローズドループ制御となるフィードバック制御を行う。
この構成の工作機械によると、X軸の制御を行うにつき、ワーク側の直線位置検出手段31および工具側の直線位置検出手段32を設け、ワーク支持手段21の被検出位置O1と工具支持手段32の被検出位置T1との両方を検出して制御に用いるため、ワーク支持手段21に支持されたワークWと工具支持手段22に設置された工具18の刃先との間の距離を、精度良く検出することができる。
また、ワーク側の直線位置検出手段31および工具側の直線位置検出手段32は、固定基台に1箇所で設置された低熱膨張材からなる共通の検出手段支持枠30に設置したため、ベッド3や移動機構11の熱変位に係わらずに、ワーク側の直線位置検出手段31と工具側の直線位置検出手段32の検出値から、ワークWと工具刃先間の距離を精度良く検出できる。すなわち、理想的には、熱変形しない検出手段支持枠30および直線位置検出手段31,32で、移動や熱変形後のワーク位置と工具位置を検出することになり、ワークWと工具刃先間の距離を精度良く検出できる。そのため、ワーク側の直線位置検出手段31および工具側の直線位置検出手段32の両方の検出値を用いてX軸移動機構12をフィードバック制御する移動制御手段44を設けたことで、熱変位補正を行うことなく、精度良く加工することででき、制御系も簡素になる。
検出手段支持枠30は、ベッド3に1箇所で固定されているため、ワーク支持手段21と工具支持手段22間に作用する切削反力等の加工による力を受けず、またベッド3の変形の影響を受けず、そのため加工力で変形せず、これによっても、より精度良く位置検出が行えて、精度良く加工することができる。
また、旋盤では、切り込み方向の加工精度と送り方向の加工精度のうち、切り込み方向の寸法に、より高い精度が求められる。この実施形態の場合、ワーク側の直線位置検出手段31および工具側の直線位置検出手段32が、いずれも主軸中心軸Oに直交する方向(X軸方向)の位置を検出するものであるため、高精度化の要求の強い切り込み方向の位置制御が高精度に行える。切り込み方向と送り方向の両方を、検出手段支持枠30に直線位置検出手段を設けて検出することは、構成が複雑になって困難な場合があるが、この実施形態では切り込み方向のみを直線位置検出手段31,32で検出し、送り方向につてはサーボモータ1に付属の位置検出器14aを用いて制御しているため、構成の複雑化を回避して必要な精度を満足することができる。
なお、この実施形態では、X軸方向の熱変位補正は不要であるが、適宜のリニアライズ手段や、補正手段を追加して設けても良い。
図5,図6は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態は、ワーク側の直線位置検出手段31Aのスケール31Aaを主軸台5の上面に設置し、読取りヘッド31Abを検出手段支持枠30の第1アーム部30cのワーク近傍部30Wに設置している。また、スケール31Aaを、位置計測方向となる直線方向(X軸方向)に並ぶ各目盛33Aが、直線方向(X軸方向)に対する直交方向(Z軸方向)に延びた幅広目盛としている。このように幅広目盛とすることで、この幅広目盛から目盛33Aに読取りヘッド31Abが対向する範囲で、計測方向(X軸方向)に直交する方向(Z軸方向)にスケール31Aaと読取りヘッド31Abの相対位置が移動しても、計測方向(X軸方向)の位置を検出可能としている。スケール31Aaは、全体を前記の低熱膨張材としている。なお、第1の実施形態における直交移動許容機構34(図3)に相当する構成は設けていない。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
図5,図6の実施形態のように幅広目盛33Aを設けた場合、計測方向となる直線方向(X軸方向)に直交する方向にスケール31Aaと読取りヘッド31Abとの相対位置が変わっても、計測方向(X軸方向)の位置が計測できる。そのため、ワーク支持手段21と工具支持手段間22の直交2軸方向の移動に対して、1軸方向の直線位置検出手段を設置するにつき、その直交方向に移動を許容する機構を別に設けることが不要であり、設置構造を簡素化することができる。
なお、上記各実施形態は、刃物台7が位置固定で、主軸台5が直交2軸方向に移動する旋盤に適用した場合につき説明したが、この発明は、主軸台5がX軸またはZ軸のいずれか一方の軸方向にのみに移動し、他方の軸方向移動を刃物台が移動する形式の旋盤や、主軸台5が位置固定で刃物台7が直交2軸方向に移動する旋盤にも、この発明を適用することができる。タレット型以外の、例えばくし歯型の旋盤にも適用できる。さらに、マシニングセンタ等の旋盤以外の工作機械にも、この発明を適用することができる。
1…工作機械本体
2…制御装置
3…ベッド(固定基台)
4…送り台
5…主軸台
6…主軸
7…刃物台
7a…工具取付部
7c…中空軸
9…X軸案内
10…サーボモータ
12…X軸移動機構
13…Z軸案内
14…サーボモータ
14a…位置検出器
16…Z軸移動機構
18…工具
21…ワーク支持手段
22…工具支持手段
26…支持台
30…検出手段支持枠
30a…取付部
30b…支柱部
30c…第1アーム部
30d…第2アーム
30T…工具近傍部
30W…ワーク近傍部
31…ワーク側の直線位置検出手段
31a…スケール
31b…読取りヘッド
31A…ワーク側の直線位置検出手段
31Aa…スケール
31Ab…読取りヘッド
32…工具側の直線位置検出手段
32a…スケール
32b…読取りヘッド
33…目盛
34…直交移動許容機構
33A…目盛
44…X軸の移動制御手段
45…Z軸の移動制御手段
O1…ワーク側の被検出位置
T1…工具側の被検出位置

Claims (5)

  1. ワークを支持するワーク支持手段と工具を支持する工具支持手段とを、固定基台上に互いに直線方向に沿って相対的に進退可能に設置し、前記ワーク支持手段と工具支持手段とを、サーボモータの駆動により相対的に進退させる移動機構、およびこの移動機構を制御する移動制御手段を設けた工作機械において、
    前記固定基台よりも熱膨張係数の低い低熱膨張材からなり前記固定基台に設置された検出手段支持枠を設け、この検出手段支持枠に、前記ワーク支持手段および工具支持手段の定められた位置の前記直線方向の位置をそれぞれ検出するための、ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段を設け、前記ワーク側の直線位置検出手段の検出する前記直線方向と前記工具側の直線位置検出手段の検出する前記直線方向とは互いに同じ直線方向であり、前記ワーク支持手段および工具支持手段のいずれか一方は前記直線位置方向に関して位置固定であり、この位置固定のワーク支持手段または工具支持手段の前記直線方向の位置を検出する前記直線位置検出手段は、熱変形による前記直線位置の移動を検出し、前記移動制御手段は、前記ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段の両方の検出値を用いて前記移動機構をフィードバック制御するものとした工作機械。
  2. 前記ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段は、それぞれスケールおよびこのスケールを読み取る読取りヘッドからなり、前記ワーク支持手段および工具支持手段の前記定められた位置に、前記両直線位置検出手段のスケールおよび読取りヘッドの一方を設け、他方を前記検出手段支持枠に設けた請求項1記載の工作機械。
  3. 前記工作機械が旋盤であって、前記固定基台がベッド、前記ワーク支持手段が主軸およびこの主軸を支持する主軸台、前記工具支持手段が刃物台であり、前記ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段は、いずれも前記主軸に対して直交する方向の位置を検出するものであり、前記ワーク側の直線位置検出手段は、前記スケールが前記検出手段支持枠に、前記読取りヘッドが前記主軸台にそれぞれ設置された請求項2記載の工作機械。
  4. 前記工作機械が主軸移動型の旋盤であって、前記主軸台が、前記ベッドに対し、前記主軸の軸心に対する直交方向に進退可能であり、前記ワーク側の直線位置検出手段は前記直交する方向である主軸台の進退方向に延びて前記検出手段支持枠に設けられたスケールと、前記主軸台に設置された読取りヘッドとでなる請求項3記載の工作機械。
  5. 前記ワーク側および工具側のいずれか一方または両方の直線位置検出手段は、前記スケールの位置計測方向となる直線方向に並ぶ各目盛が、前記直線方向に対する直交方向に延びた幅広目盛であり、この幅広目盛に前記読取りヘッドが対向する範囲で、前記直交方向に前記スケールと前記読取りヘッドの相対位置が移動しても前記直線方向の位置を検出可能である請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の工作機械。
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