JP5542405B2 - 落石防護工におけるワイヤロープの張力保持装置 - Google Patents

落石防護工におけるワイヤロープの張力保持装置 Download PDF

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Description

本発明は落石防護工におけるワイヤロープの張力保持装置に係り、詳しくは、傾斜地直下の路側近くまで垂らしたネットによって衝撃を吸収しながら落石を捕捉し、ネットで形成されるポケットに貯留しておくポケット式落石防護工や、地表に散在する浮き石や岩石の崩落を防止するため、ワイヤロープを縦横に敷設して地山を押さえるワイヤネット式落石防護工に適用される。それらのワイヤロープに過大な張力が生じないようにしておき、または所望する大きさの張力を与えておくことができるようにするためのワイヤロープ張力保持装置に関するものである。
山間地の道路では路側に急な斜面が迫っていることが多く、落石により通行が妨げられたり、危険を及ぼしたりすることがある。その虞のある斜面を補強もしくは防護するために幾つもの工法が従来から提案され、また実用化されてきている。法面工事は地形に大きく左右されるが、落石を防護する例として、ポケット式落石防護工やワイヤネット式落石防護工がある。
ワイヤネット式落石防護工は浮き石や岩石の崩落を防止するために地山を強固に押さえるものであり、ポケット式落石防護工はたとえ落石があっても道路に及ばないように捕捉しておくものである。前者ではワイヤロープが岩肌や土肌を被覆するように縦横に敷設され、ロープ交差部を緩み防止機能のあるクロスアンカークリップにより頑強に固縛してロープずれが可及的に生じないようにしている。後者では左右に設置した支柱の上端部間に渡したワイヤロープから金網をカーテンのように垂らし、路側に至る金網と斜面との間に形成されたポケットに落石が進入しても、金網に編み込んで縦横に架設された補強ロープにより金網を補強するとともに局部的な変形の拡大が抑えられるようにしている。
いずれの落石防護工においても三・四十メートルにも及ぶワイヤロープが多数使用される。ポケット式落石防護工の場合、ワイヤロープが緊張するように架設されるとはいえ、あくまでもネットならびに捕捉した落石を支えることを目的とするから、ロープに過大な張力が作用しないかぎり、その大きさが幾らでなければならないというものではない。一方、ワイヤネット式落石防護工の場合、地肌に這わせたワイヤロープで地山を押さえることから、季節を問わずまた風化等による経時的変化の有無を問わず、或る一定以上の張力の保たれることが望まれる。もちろん、ロープが切断に至らないまでも、ワイヤロープの両端を支持および固定しているアンカーの姿勢変化や抜けを生じさせることになっては防護工としての機能が果たせなくなるから、過大な張力の発生は避けねばならないことは言うまでもない。
上記から分かるように、ワイヤロープに付与する張力に或る程度の正確さが要求されるはワイヤネット式落石防護工であるので、それについてもう少し詳しく述べる。ワイヤロープの張力は、地山に這わせ両端がすでにアンカーで固定されたロープの交差部にクロスアンカークリップを打つことにより発生させている。地表の凹凸を利用したロープの緊張は浮き石や巨岩の頭を押さえる意図であるが、この際に、アンカーを伴わないクロスクリップはともかく、アンカーを打つクロスアンカークリップにおけるロープずれを阻止するようにしているのは、ロープ途中で緩みが発生しても、次の交差部への波及を防いでおくためである。したがって、クロスアンカークリップによりロープ交差部でのずれがないようにすることは近時の技術的課題とされ、その対策をとる例が多くなってきている。
ワイヤロープに張力を単に付与することは如何なる方法によるも、今日では難しいことでない。しかし、押さえられていた岩石が風化して僅かといえども沈んだりずれたりすれば、それが原因でロープは緩む。これを防止しもしくは拡大しないようにするためのロープ交差部緩み抑制用クロスアンカークリップが、例えば特開2003−206535に提案されている。現在ではこの締結思想が各種形状のクロスアンカークリップに浸透しつつあって、滑りやずれの発生するおそれのある交差ロープ接触式の旧来のクロスアンカークリップは排斥される傾向にある。
一方、ポケット式落石防護工でワイヤロープが所定以上の張力を保持しているかが問題となるのは、ネットに左右の張りを持たせる横ロープである。落石を抱え込んだ際に金網の膨らみを抑えることが不十分であれば、捕捉された岩石の多くがネット下端まで転げ落ち、道路に危険を及ぼすからである。張力を保持するという点ではないが、このポケット式落石防護工の場合、巨岩の落下があると極めて大きい動的荷重がネットに作用する。ネットを吊っている支柱を若干傾倒可能としつつも保持する懸垂ロープは、衝撃吸収時に急激な張力増加をきたす。なお、この懸垂ロープの負担を和らげる構造の一例が、特開平7−42117号公報に記載されている。
特開2003−206535 特開平7−42117号公報
特許文献1のクロスアンカークリップによれば交差部でのワイヤロープの緩みは減り、またロープ同士の磨耗も従前よりは或る程度低減できる利点がある。しかし、ロープの消耗は依然として避けられない。また、一工事で何百・何千個と使用されることになるクロスアンカークリップにおける個々のボルトの高トルク締結やその検査には、交差を維持しておくだけの締結力を発揮しさえすればよい旧型のクロスアンカークリップに比べれば、格段の重労働が強いられる。
ところで、ワイヤネット式落石防護工の場合、ワイヤロープに掛けられた張力は熱膨張の影響を無視すれば、ロープに張りを与えたときが最高である。とすれば、上記したごとく風化等により地山の様子に変化があると張力が減る事態は避けられない。クロスアンカークリップによる交差部のロープずれがなければワイヤロープの緩みは少なくなるが、失ったり減少した張力を回復させるといったことは、ワイヤロープそのままでは到底できるものでない。
加えて、日本の一般的な風土では四季があり、年間の寒暖差は激しい。仮に温度差が約40℃であるとすると、例えば30メートルのワイヤロープの場合、約15ミリメートルの長さ変動が生じる。張設時に所望の大きさの張力を付与したとしても、夏場にワイヤロープが上記のごとく15ミリメートルも伸びて緊張が解ければ、地山を押さえて落石を防止するなどとの効果は激減する。一方、夏場に強く付与して得た張りは冬場の収縮で張力過多となり、甚だしくはロープ端固定用のアンカーやロープ交差部のクロスアンカークリップのアンカーの地山定着性を著しく減退させる。
ポケット式落石防護工における横ロープも、ワイヤネット式落石防護工のワイヤロープと同様であると言える。上記したごとくの原因で張力が落ち、それが所定以下となってしまえば、岩石の落下があったときのネットの衝撃吸収力は低下し、またネットの損傷も激しくなる。一方、ネット編み込みの縦ロープや支柱保持用の懸垂ロープは、落下エネルギ吸収のために落石の静荷重を遙に越える動的荷重を受ける。このときの張力急変はロープ径を増やすなど工事材料の高強度化で対応せざる得ず、それゆえ設備費が高騰したり品質の過剰化が要求される結果となる。
本発明は上記の問題に鑑みなされたもので、その目的は、寒暖の影響を受けてワイヤロープの張力が変動しても、年間を通じて一定以上の張力を発生させておくことができること、また経時的変化によりワイヤロープの張力が低下しても、所望する張力に近づけるべく自然回復できること、衝撃荷重を受けてもフェールセーフの思想を導入して過大なロープ張力の発生を回避できること、を実現した落石防護工におけるワイヤロープの張力保持装置を提供することである。
本発明は、浮き石や岩石の崩落を防止するためワイヤロープを敷設して地山を押さえるワイヤネット式落石防護工、ならびに吊設したワイヤロープにネットを張架させて落石を捕捉するポケット式落石防護工におけるロープ緩み抑制用の張力保持装置に適用される。その特徴とするところは、図1および図9を参照して、張力保持装置は、弦長もしくは波長を常時縮小する方向に弾発力を発生する弓形もしくは波形に曲げられた弓形鋼棒13もしくは波形鋼棒13Aであり、その両端部には、鋼棒に蔓巻きして沿わせたワイヤロープ8,21を鋼棒から離反するのを阻止するため、端部を曲げたフック14が形成されていることである。
この張力保持装置は、図10に示すように、波長を常時縮小する方向に弾発力を発生する波形に曲げられた平鋼板15の本体と、この本体に沿わせたワイヤロープ21が平鋼板から離反するのを阻止する係止具29とを具備するものとしてもよい。
図13の(d)に示すように、上記の本体は、ワイヤロープの下面と上面を交互に沿わせるべく、逆姿勢で並ぶ弓形に曲げられた複数の平鋼板15Aよりなり、平鋼板同士は各端部でワイヤロープ21を挟み、その部位が係止具29Aにより接続されたものとすることもできる。
本発明によれば、波長を常時縮小する方向に弾発力を発揮する鋼棒がワイヤロープの途中に沿わされるから、ワイヤロープの熱膨張・収縮による鋼棒の曲がりの変化によってロープ全長を一定に保った状態で所望する張力が保たれるよう自動的に調節される。ワイヤネット式落石防護工におけるクロスアンカークリップにおけるロープずれは大した問題とならず、クロスクリップ締結操作の大幅な労力軽減が図られる。
鋼棒は弓形もしくは波形に曲げられているので、ワイヤロープを蔓巻きさせかつ弦もしくは波の両端で端部を曲げて形成したフックに係止するだけで、ロープを完全に鋼棒に沿わせることができる。ワイヤロープの少なくとも一端がアンカーに固定されていない段階で操作するが、ロープは強靱であるとはいえ、巻き付けるだけでロープを鋼棒に沿わせられるから、意外と負担は少ない。この鋼棒へのロープ沿わせ作業の負担はクロスアンカークリップの多数の箇所での高トルク締結作業の負担量に比べれば著しく小さく、過酷な作業の軽減または回避は、施工上の利便性や作業能率の向上さらには資材の高品質化抑制等をもたらす。
ワイヤロープを敷設するとき、夏場では波長が全長可変鋼材の自由状態長さよりは大きくなる張力を掛け、冬場では波長を夏場のワイヤロープ敷設時のそれよりも長くなる張力を掛ける。したがって、冬場にある大きさ以上の張力を作用させておくかぎり、夏冬とおして所定以上の張力をワイヤロープに掛けておくことができる。そして、その張力の差が全長可変鋼材を採用しないときに比べれば小さくなるから、年間を通じてアンカーに作用する荷重が極端に違ってくるということはなくなる。アンカー打設孔壁に及ぶ荷重の交番が少なくまた弱まる結果アンカーと地盤との密着が保たれ、その立設状態も長期にわたり安定させやすくなる。
全長可変鋼材を平鋼板としておけば、鋼板面へのロープ沿わせと係止具による離反阻止とが簡単かつ負担の少ない操作でもって達成される。ワイヤロープの鋼板への束縛が容易となれば、作業環境の厳しい傾斜地での力仕事を大いに軽減する。ワイヤロープと全長可変鋼材との長手方向の相対的ずれの発生は張力調節に実質的に何ら影響も与えないから、ロープを全長可変鋼材に沿わせる操作は負担の少ないものとなる。クロスアンカークリップのボルト締結操作の簡易化とあいまって、足場の悪い過酷な作業環境における重労働の軽減や回避は、落石防護工の設置工数低減にも寄与し、コストダウンも推進される。ちなみに、平鋼板を本体とするので、すでに完成した落石防護工で緩みを発見したとき、爾後的にワイヤロープへ介装することもできる。老朽化した落石防護工でも簡単な操作により再生を図ることができる。
ワイヤロープの下面と上面に交互に沿わせるべく、逆姿勢で並ぶ弓形に曲げられた複数の平鋼板よりなり、平鋼板同士は各端部でワイヤロープを挟んだ状態で、その端部において係止具により接続するようにしておけば、本体は実質的に波形を形成することになる。平鋼板の数によってロープの伸縮吸収度を変えることが容易となり、融通の利く全長可変鋼材となる。
本発明に係るワイヤロープの張力保持装置である弓形鋼棒にワイヤロープを蔓巻きさせた状態と、それに張力を掛けたときの形の変化を示す説明図。 本発明に係る張力保持装置が適用されるポケット式落石防護工の一例の側面図。 ポケット式落石防護工の正面図。 弓形鋼棒の4面図。 本発明に係る張力保持装置が適用されるワイヤネット式落石防護工の一例の平面図。 (a)は地山に固定されたアンカーにワイヤロープを張設している状態の部分図、(b)はアンカーにワイヤロープを固縛している様子と、それに用いられる巻付グリップの使用態様を示す説明図。 弓形鋼棒とそれに沿わされたワイヤロープの伸びの変化の説明図。 弓形鋼棒における端部引張荷重が作用したときの弾発力発生メカニズムの説明図。 波形鋼棒による場合の各種態様図。 (a),(b)は波形の平鋼板の平面図および正面図、(c),(d)はワイヤロープを沿わせた状態の平面図および正面図。 波形平鋼板の反転使用例と両面沿わせ例の説明図。 Uボルトの係止具と異なる例の係止具の説明図。 弓形平鋼板の一例の3面図および3つの平鋼板で本体を形成させた状態の波形平鋼板の構成例。 弓形平鋼板とそれに沿わされたワイヤロープの伸びの変化の説明図。
以下に、本発明に係る落石防護工におけるワイヤロープの張力保持装置を、その実施の形態を表した図面に基づいて詳細に説明する。図2および図3は、傾斜地1に立てた幾つかの支柱2にかけ渡されるワイヤロープ3にネット4を張架させ、落石5を捕捉するようにしているポケット式落石防護工6の一例を示す。この落石防護工では、金網7および交差する補強ロープ8でネット4が形成され、落石の勢いを止めて捕捉し、ポケット9に貯留して道路10への転落のないようにするため、何本かの横ロープ8Yの両端が山腹にアンカー11などで固定されている。
上記した支柱2の上端部には、ネット4の重量や、貯留した岩石の重量を支える縦ロープ8Tを懸垂するための渡しロープ3が固定されているが、落石があってネット4が衝撃を吸収しようとするときロープは緊張しかつ落石によって引っ張られる。そのため、支柱2はヒンジ2aを介して立設され、それ自体へは一時的に急増する荷重を軽減するように配慮されている。支柱が損傷すれば防護工自体の機能が失われてしまうからであるが、その支柱2の若干の回動を許容しつつも姿勢を保持するために、山腹の上部および斜め上方や横部から牽引するロープ12(以下懸垂ロープという。)が幾つも連結される。
ここで、ロープ緩みを抑制する張力保持装置の構成を述べる。これは、図4に示すように弦長を常時縮小する方向に弾発力を発生する弓形に曲げられた鋼棒13である。これは丸棒や角棒で十分であるが(図示は丸棒)、その両端部には、図1に示すように、鋼棒13に蔓巻きして沿わせたワイヤロープ8を鋼棒から離反するのを阻止するフック14が、端部を曲げて形成される。
ワイヤロープ8の鋼棒13への沿わせ操作は弓形に曲げられた部分に蔓巻きさせることであり、ワイヤロープの束縛はフック14に係止させるだけである。このような作業は、ワイヤロープの少なくとも一端がアンカーに固定されていない段階で行うが、ロープは強靱であるものの、足でロープを押さえて鋼棒に1回か1回半程度巻き付けるだけでロープを鋼棒に沿わせられるから、意外と負担は少ない。この鋼棒へのロープ沿わせ作業の負担はクロスアンカークリップの多数の箇所での高トルク締結作業の負担量に比べれば著しく小さく、過酷な作業の軽減または回避は、施工上の利便性や作業能率の向上さらには資材の高品質化抑制等をもたらす。
ポケット式落石防護工6に関連づけて概略を述べたが、以後の説明を把握しやすくするため、図5に示すワイヤネット式落石防護工20で起こる事象に基づいて説明する。この防護工は、図6の(a)に示した地表に散在する浮き石22aや岩石22bの崩落を防止するため、ワイヤロープ21を少なくとも縦横に敷設して地山を押さえるものである。図5に戻って、ワイヤロープ21に張力を意図的に作用させる関係で、両端を保持するアンカー23,24には地盤の硬軟に応じて強固となるものが採用される。そして、ワイヤロープ21の途中には環境等の変動により低下した張力を部分的に回復させたり、張力の過大化を和らげる配慮が施される。なお、ワイヤロープの交差部にはアンカーを伴わないクロスクリップ21aやアンカーを伴うクロスアンカークリップ21bが必要に応じて取りつけられ、ワイヤロープの敷設秩序が維持される。ちなみに、この落石防護工20は、図の右半部が岩盤質の地山、左半部が土砂質の地山であるとして描かれているが、そのために使用される上記のアンカー23,24についての説明は省く。
例えば、落石防護工は地山の風化により、押さえられていた岩石が沈降したり位置ずれする。それのみならず、夏場はロープが熱膨張して長くなり、その結果張力は低下する。冬場はロープが熱収縮して短くなり、緊張を増す。これらが原因して張力が変動すると、とりわけ熱膨張で張力が消失することになると、地山を押さえる目的が果たせなくなる。また、その張力を維持するためのアンカーは、時期や季節によって作用する引き抜き力が異なることになる。このような交番負荷は地山やアンカーを保持する能力を低下させるもとになり、ひいては地山保持防護工の衰弱を招きかねない。
いま対象としている落石防護工として注目すべきは、図1で先に示した全長可変鋼材としての弓形鋼棒13の導入である。これは、図7の弦長をLP0の自由状態長さとなるように常時縮小する方向に弾発力を発生して、ワイヤロープ21の途中に沿わされる弓形もしくは波形に曲げられたテンション調節ロッドとでも言うべきものである。
本発明の原理を、以下に述べる。ワイヤロープが熱膨張して張力が減少すると、全長可変鋼材の弾発力がロープの残余張力に応じて弦長を縮小させ、全長可変鋼材に沿っている部分のロープの曲がりを増やすことにより実質的にロープを手繰り寄せる。熱膨張によるロープの伸長量の一部を吸収してロープに張力を残す。一方、ワイヤロープが熱収縮して張力が増加すると、全長可変鋼材の弾発力がロープの増加張力に負けて弦長を拡大させ、全長可変鋼材に沿っている部分のロープの曲がりを減らすことにより実質的にロープを繰り出す。熱収縮によるロープの縮小量の一部を吸収してロープに過大張力の発生を回避できるようにするというものである。
これを図解したものが図8の(a)である。(イ)は弓形に曲げられ、弦長を常時縮小する方向に弾発力を発生する鋼棒13を単純に一本線で表したものである。この鋼棒の左右端に全く力を掛けていない自由状態では、端間距離(=弦長)はLPOである。弾発力が付与されているということは、図8の(b)を参照して、鋼棒を破線、一点鎖線、二点鎖線のように曲率を小さくする(すなわち、曲率半径を大きくする)ように拡げたなら、矢印26の方向に復元して実線のようになるという意味である。このような鋼棒はばね鋼を使用したり熱処理することによって製作される。
いま、図8の(a)の(ロ)のように両端をF1 の力で引っ張ったとき、ΔLM1だけ伸びたとする。(ハ)や(ニ)はそれぞれF2 ,F3 の力で引っ張ったとき、ΔLM2,ΔLM3だけ伸びたことを表している。このときの関係をグラフに表したものの一例が(c)である。それぞれで求められるばね定数をk1 ,k2 ,k3 として、その値が異なるのが一般的であるが、「力 vs 伸び」において、k1 ,k2 ,k3 =kP であるところを使用することにすれば、図示のごとく実質的にリニアであると扱うことができる。自由状態時の弦長LPOと曲率、鋼材の縦弾性係数EP や断面二次モーメントIP が決まれば、(b)のような変化は再現性のあるものとなる。
以下に具体的数値を用いて、分かりやすく説明する。あくまでも一例であることを断っておく。いま、ワイヤネット式落石防護工20(図5を参照)の縦ロープ21Tのアンカー間距離LW0が30メートルすなわち30,000ミリメートルとする。そして、30,000ミリメートルのワイヤロープ(=LW )は41.7℃差で15ミリメートル伸縮する。ワイヤロープの線膨張係数αを12×10-6/℃とし、施工地での夏と冬の最大温度差ΔTを41.7℃とした場合、その差によるロープ長さの差ΔLWTは、
ΔLWT=LW ×α×ΔT
=(30×103 mm)×(12×10-6/℃)×(41.7℃)
=3×1.2×10-1×41.7=15.0 mm …(1)
となるからである。
張力の大きさに対してワイヤロープの伸びと弓形鋼棒13の弦の伸びとの合計は、以下の表1のとおりとする。
というのは、ワイヤロープの縦弾性係数(EW )を2.1×105 N/mm2 、ロープの実質断面積を95mm2 として、30メートルのワイヤロープに引張荷重10,000Nを掛けたときのロープの伸びΔLWM=F×LW /(EW ×AW )は、
ΔLWM=10,000×30,000/(2.1×105 ×95)
=3×108 /2×107
=15.0ミリメートル …(2)
となるからである(表1中の下から4段目を参照)。そして、他の荷重に対するロープの伸びは比例するから表1の「ロープの伸び」の欄の他の段の表記のとおりである。一方、弦の伸びは表1となるように鋼棒13のEP ×IP (EP は鋼棒13の縦弾性係数、IP は同断面二次モーメント)と弦長が選定されているとする。これは、曲がり梁の計算により求めることができる。ちなみに、図8では、弓を拡げる方向に力Fi で引っ張ったとき(i=1,2,3)の弦の伸びとその引張力との関係が、リニアである(弦伸長ばね定数ki =一定)としていることは上記した。しかし、ki =一定でなければならないというものでなく、要は、表1の弾性変形のデータを予め取得しておけばよい。材質と寸法が決まれば計算値を検証したり修正するためのデータを得ることは容易である。
ところで、冬場に張力4,286Nを掛けたとき、アンカー間距離の30メートルに丁度なっているとする。表1より、
合計長 = 負荷前ロープ長さ + ロープの伸び + 弦の伸び
= LWFW + 6.43 + 8.57= 30,000
ゆえに、このワイヤロープの冬場の自由状態長さ(負荷前ロープ長さ)LWFw は、
30,000−(6.43+8.57)= 29,985ミリメートル
である。これが夏場には式(1)で計算した15ミリメートル伸長して30,000ミリメートルとなる。ちなみに、ワイヤロープが例えば100ミリメートル短い29,900ミリメートルであるとしても、ロープの熱膨張による伸びは299/300倍となるだけで、ほとんど15.0ミリメートルであることに変わりがない。したがって、29,985ミリメートルのワイヤロープも夏場に15ミリメートル伸長すると扱う。この夏場の自由状態長さ(負荷前ロープ長さ)LWFS は、すでにアンカー間距離LW0の30メートルになっていることを意味するから、夏場では張力が自然消失することになる。すなわち、夏場は地山を押さえる力が発生しないか極めて小さい。夏場に張力を発生させておこうとするためには、表1に従う資質の工事材料の場合、冬場に4,286Nを越える張力を掛けなければならないことが分かる。なお、ここでの説明では、以後ワイヤロープは一年を通じて常に2,000N以上の張力(以下、最小設定張力という)が必要であるとする。
そこで、図7を参照して、張力として夏場に2,000Nを掛けるとし(表1中の2,000Nの欄を参照)、このとき(a)に示すように、アンカー間距離LW0の30メートルに丁度なっているとする。
合計長 = 負荷前ロープ長さ + ロープの伸び + 弦の伸び
= LWFs +2×(1.50+2.00) = 30,000
ゆえに、張力を解放すると、(b)に示すごとく、LWFs =29,993ミリメートルとなる。このワイヤロープは、(c)のように、冬場に15ミリメートル熱収縮してLWFw =29,978ミリメートルとなる。これを(d)に示すように、アンカー間距離LW0の30メートルにしようとすると、22ミリメートル伸ばす必要がある。表1より、22ミリメートルの伸長を達成する張力は6,280Nであることが分かる。このときのロープの伸びは9.40ミリメートル、弦の伸びは12.60ミリメートルであり、これが22ミリメートルの伸びを提供している。ちなみに、春秋はその半分の温度差とすれば15/2≒8ミリメートルの伸縮量となるから、29,978ミリメートルに8ミリメートルを加えた29,986ミリメートルとなる。これをアンカー間距離の30メートルにしようとすと、14ミリメートル伸ばす必要がある。表1より、14ミリメートルの伸長を達成する張力は4,000Nである。
冬夏の二シーズンを例にして言い換えると、ワイヤロープは夏場に熱膨張して張力を冬場の6,280Nから2,000Nに減少させる。鋼棒13の弾発力がロープ張力と釣り合うべく12.6ミリメートル弦長を伸ばしていたものを、4ミリメートルの伸びに縮小させる。これによって、鋼棒に沿っている部分のロープの曲がり部分の弦長が減らされることになり、実質的にロープは8.6(=12.6−4.0)ミリメートル手繰り寄せられる。熱膨張によるロープの伸長量15.0ミリメートルのうちの半分以上が鋼棒13により吸収されたことになる。それにもかかわらず、ロープ張力は最小設定張力の上記した2,000Nが確保されている。ちなみに、吸収されなかった伸長量=15.0−8.6=6.4ミリメートルは、3ミリメートル伸びていたロープが9.4ミリメートル伸びたことによって補われている。
一方、夏場に2,000Nの張力を付与したワイヤロープが冬場に熱収縮して6,280Nに増大すると、鋼棒13は弦長を4ミリメートル伸ばしていたところから12.6ミリメートルに増大した伸びを呈する。これによって、鋼棒に沿っている部分のロープの曲がり部分の弦長が増えることになり、実質的にロープを8.6ミリメートル繰り出す。熱収縮による縮小量15ミリメートルのうちの半分以上を補充する。それにもかかわらず、ロープ張力は最小設定張力の2,000Nより大きい6,280Nを保った状態にしておくことができる。
ちなみに、鋼棒13が介在されていないとすると、冬場には熱収縮で短くなった15.0ミリメートルをワイヤロープの引っ張りで相殺しなければならないことになる。その場合の張力は10,000Nであるから(前掲の式(2)を参照)、鋼棒はワイヤロープの張力負担を10,000−6,280=3,720Nも減らしている。鋼棒がワイヤロープにおける過大張力の発生を回避していることも分かる。
全長可変鋼材としての鋼棒13を採用していない例を、もう少し具体的に述べる。夏場に15ミリメートル熱膨張したワイヤロープに2,000Nの張力を作用させるとする。そのワイヤロープは、3ミリメートルを加えた18ミリメートルの伸びを呈して、30,000ミリメートルにされることになる。すなわち、夏場の自由状態長さは29,997ミリメートルである。冬場には15ミリメートル収縮するから29,982ミリメートルの自由状態長さであり、これを鋼棒を使用しないで30,000ミリメートルにしようとすれば18ミリメートル伸ばす必要があり、表1の最下段の12,000Nの張力を作用させることになる。鋼棒13を使用すれば6,280Nで済むことは上で述べたとおりであり、それよりも5,720Nもさらに大きい張力をワイヤロープに掛けることになる。ワイヤロープの負担が大きくなるだけでなく、ワイヤロープに張力を作用させる労力も大変なものになる。鋼棒13の採用が如何に緊張緩和作用や張力付与労力の軽減効果を発揮しているかが理解される。
ちなみに、冬場に張力を1,000Nずつ増やしたときの春夏秋の張力を、弓形鋼棒13を使用した前記と同様の要領で求めたものを、表2に記す。
ところで、張力の大きさに対してワイヤロープの伸びと鋼棒の弦の伸びとの合計を先に示した表1のとおりとし、秋に6,000Nを掛けたとき、ワイヤロープはアンカー間距離30メートルになっているとする。いま、岩石の風化等によって、このワイヤロープの張力が4,714Nに低下したとして、それが秋であったとする。表2から、冬場は7,000Nの張力を、夏場は2,714Nの張力が依然として発揮されることになり、このワイヤロープは2,000Nという最小設定張力を失うことがない。
ところが、張力が4,000Nに落ちたのが冬場であったとすると、その張力は上記した4,290Nを下回っているから、夏場には張力が0となる。そこで、経時的な緩み量の発生を考慮したうえで、敷設時の付与張力を選定することも極めて重要な設計要因であることが分かる。これを考慮すれば、夏場に張力が1,714N低下しても2,000Nの最小設定張力を保持しておくためには、張力を3,714N(≒0.4トン)とする必要がある。このとき冬場の張力は、表2から8,000N(≒0.8トン)となる。逆に言えば、冬場の施工では、8,000Nの張力を掛けるべきことを教えている。
上記したワイヤネット式落石防護工での現象をポケット式落石防護工に当てはめると、以下のようになる。いま4,000Nの張力が作用している状態でポケットに落石が幾つか貯留された結果、或るワイヤロープの張力が6,000Nになったとする。6,000Nのときのロープの伸びと弦の伸びの合計は21.0ミリメートルであるから、4,000Nのときの14.0ミリメートルよりも7ミリメートル、すなわちロープが9.00−6.00=3.00ミリメートル伸びるとともに弦が12.00−8.00=4.00ミリメートル伸びたわけであり、これがために6,000Nの張力で済んでいるという状態にある。
上記した伸びの合計21.0ミリメートルを鋼棒を備えない30メートルのワイヤロープで達成しようとすると、表1からワイヤロープは10,500Nもの張力に耐えなければならないことになるからである。鋼棒13を採用すれば、ワイヤロープの負担は大いに軽減されることが、この例でも理解される。これは、図2や図3のポケット式落石防護工6の渡しロープ3、縦横の補強ロープ8T,8Yや懸垂ロープ12に当てはまる事象である。
ポケット式落石防護工での特有の現象として、落石の落下衝撃をネット4で受けとめる際に発生する急激な荷重変動がある。動的荷重による張力負荷は落石重量の何倍、何十倍にもなる。これをワイヤロープに作用する引張荷重とみなせば、その伸びで吸収するにも限界がある。太いロープを無闇に採用するのはコスト高になる。そこで、鋼棒13をロープ8に介装しておけば、張力の急激な上昇時には弾発力に抗して弓形鋼棒13の弦長が拡大される。鋼棒13の弦長増加が犠牲となってワイヤロープの吊持長さが増えれば、ワイヤロープそれ自体の張力増は少なくなる。
このワイヤロープの伸びと鋼棒の弦長増は落下衝撃を和らげる作用をするから、結局ワイヤロープの荷重負担は減り、作用する張力の急上昇が生じたところでロープの切断に至ることのないように配慮しておくことができる。鋼棒が真っ直ぐになるまでが対応限度であるが、一本のワイヤロープに幾つもの鋼棒を絡めておけば、その累積伸びがワイヤロープの衝撃負担を著しく減らす。鋼棒が真直になって弾発力を失ったとしても、鋼棒のフェールセーフ作用が落石を除去するまで吊持長の増大維持に寄与するから、ネットや懸垂ロープの損傷発生や防護工の崩壊は避けやすくなること言うまでもない。
次に、ワイヤロープを敷設する際の手順について念のため説明しておく。まず、図7の(b)に示すように、ワイヤロープ21の途中に鋼棒13を配して、鋼材から離反しないようにロープをフック14により束縛する。このとき、ワイヤロープ21と鋼棒13との長手方向の相対的ずれが生じるようなことがあっても問題とならない。却ってずれの生じることのできる方が好ましいとも言えるが、鋼棒13とこの鋼棒に沿った部分のワイヤロープ21とは、鋼棒が如何に曲がろうとも、それに沿わされたワイヤロープの鋼棒上の長さは不変である。仮に、熱膨張率に倍と半分の違いがあるとしても弦長が例えば50センチメートルの場合、熱膨張量差は前掲した式(1)に則れば、高々0.13ミリメートルであって、系全体に影響を与えるほどのものでない。
ワイヤロープ21を鋼棒13に沿わせた後は、そのワイヤロープの地山未固定端を、アンカー23,24に取りつけて地山に這わせる(図示せず)。すなわち、ワイヤロープ21を鋼棒13に沿わせる操作は、ワイヤロープの一端を固定、他端を未固定とした状態でするか、両端を未固定にした状態で蔓巻きさせるからである。
そして、ワイヤロープ21の端部を牽引して張力を付与する際に、夏場の敷設では、弦長を鋼棒13の自由長さよりは大きくなる張力を掛ける。冬場の敷設では、弦長を夏場のワイヤロープ敷設時の弦長よりも長くなる張力を掛ける。そして、春や秋の中間の季節の敷設では、弦長を夏場のワイヤロープ敷設時の弦長よりも長くかつ冬場のワイヤロープ敷設時の弦長よりも短くなる張力を掛ける。ちなみに、張力を掛けるための牽引やワイヤロープ21の係留には、図6の(b)に示すごとく、公知の巻付グリップ27などが使用される。
図9は鋼棒を波形鋼棒13Aとしたもので、波の両端にはそこを曲げて形成したフック14がある。(b)は(a)を上下逆にしたものであるが、取付け上何らの問題もない。現実には後述する平鋼板の場合もそうであるが、全長可変鋼材の姿勢は取付操作、ロープのうねりや撚りなどによって如何様ともなるから、取付状態における上下は問題するに及ばない。(a)は1ピッチ半の波の形をしており、1ピッチ半の水平投影長さを波長と称することにして、これが(c)の下段に示したLWAの自由状態長さとなるように常時縮小する方向の弾発力を発揮する。強いて言えば、上記した弦を半ピッチとして三つを連ねたようなものである。表1の弦の伸びの欄を3倍にした表を適用すればよい。もちろん、EIを変えて伸びを違えることができるのも言うまでもない。
なお、この図9の(c)と先の図1とは、自由状態にあるそれぞれの鋼棒に張力を作用させて、両端をおのおのΔLK 伸長させた様子を示している。いずれにおいても張力を掛けた状態では鋼棒の弦の深さ、波の高さが減っていることでロープを繰り出し、ΔLK が埋め合わされるように描かれている。
ところで、全長可変鋼材は弓形や波形に曲げられた鋼棒13,13Aに代わるものとして、波形に曲げられた図10の(a),(b)に示す平鋼板15としてもよい。この鋼板へのワイヤロープ21の束縛は、図10の(c),(d)に示すように、波形に曲げられた鋼板の背面にワイヤロープを沿わせ、弦の両端においてUボルトのごとき係止具29により鋼板からの離反が阻止された状態とされる。弦長を常時縮小する方向に弾発力を発生する波形に曲げられていることは、すでに何度も触れたことと同じである。このような平鋼板としておけば、鋼板面へのロープ沿わせと係止具による離反阻止とが簡単な操作でもって達成される。ワイヤロープ21の鋼板への束縛が容易となれば、作業環境の厳しい傾斜地での力仕事が大いに軽減される。
ちなみに、張力を掛けたとき図11の(a)のように一部が沿わない状態になったとしても、以後この形態を持続するかぎり何ら問題ない。常に平鋼板に沿わせたいなら図10の(c),(d)のように中央にもう一つないし二つの係止具29を追加すればよい(図示は一つ追加されている)。先に述べた鋼棒13と違って平鋼板であってワイヤロープを背面などにあてがうだけであるので、すでに完成した落石防護工で緩みを発見したとき、爾後的にワイヤロープへ介装することもできる。老朽した落石防護工も、簡単な操作により再生が可能となる。なお、図11の(b)に示すように、ワイヤロープ21を平鋼板の逆の面(例えば下面)に沿わせたり、(c)のごとく両面に沿わせることもできる。後者の場合には荷重の適用範囲を増やすことができるし、逆にロープに細いものを導入することもできる。
その係止具としては、図12の(a)に示したUボルト29Aに代えて、(b)に示したΩ形金具29Bとしてもよい。また、(c)のように平鋼板の一部を切り起こした曲げ突片29Cでフック機能を発揮させるものであってもよい。この場合、(d)のごとくフックの向きを逆にした左右交互掛けにでもしておけば、片側端でのロープ外れは起こりにくくなる。
上でも触れたのと同様に、ワイヤロープと平鋼板との長手方向の相対的ずれの発生は張力調節に何らの影響を与えないから、ロープを平鋼板に沿わせる操作は負担の軽いものとなる。平鋼板の存在により、クロスアンカークリップ21b(図5を参照)におけるロープずれは大した問題でなくなる。ワイヤロープの緩み阻止の目的で近時行われつつあるクロスアンカークリップにおけるロープずれ完全阻止操作は、常に必要というものでなくなる。このクリップ締結操作の回避もしくは操作数の低減は、足場の悪い過酷な作業環境における重労働を解放もしくは著しく軽減し、落石防護工の設置工数の低減にも寄与し、コストダウンが推進される。
以上は平鋼板として波形に曲げられ、波長を常時縮小する方向に弾発力を発生するものを例にした。しかし、弓形に曲げられ、弦長を常時縮小する方向に弾発力を発生する図13の(a)ないし(c)に示す弓形平鋼板15Aを複数使用するようにしてもよい。三つ連ねる場合を例にすると、(d)のようにワイヤロープ21の下面と上面を交互に沿わせるべく、逆姿勢に並べればよい。このとき、平鋼板同士は両間に位置するワイヤロープを挟んだ状態で、その端部において足の少し長いUボルト29Aにより接続される。このようにしておけば、実質的に波形の平鋼板を形成することができる。平鋼板の数によってロープの伸縮吸収度を変えることが容易となり、融通の利いた全長可変鋼材となる。ちなみに、図14は図7に相当するもので、平鋼板の場合にも思想として変わりのないことを示している。
以上、多くのことを述べたが、本ワイヤロープ張力保持装置によれば、弦長もしくは波長を常時縮小する方向に弾発力を発揮する全長可変鋼材がワイヤロープの途中に沿わされるから、ワイヤロープの熱膨張・収縮による全長可変鋼材の曲がりの変化によってロープ全長を一定に保った状態で所望する張力を保つよう自動的に調節される。
ワイヤロープを敷設するとき、夏場では弦長もしくは波長が鋼棒や平鋼板の自由状態長さよりは大きくなる張力を掛け、冬場では弦長もしくは波長を夏場のワイヤロープ敷設時のそれらよりも長くなる張力を掛けるようにする。その結果、冬場にある大きさの以上の張力を作用させるかぎり、夏冬とおしてワイヤロープには張力を付与した状態にしておくことができる。そして、その張力の差が全長可変鋼材を採用しないときに比べれば半減するくらいまで小さくなるから、年間を通じてアンカーに作用する荷重が極端に違ってくるということはなくなる。アンカー打設孔壁に及ぶ荷重の交番が少なくまた弱まることでアンカーと地盤との密着が保たれ、その立設状態も長期にわたり安定させやすくなる。
ところで、図5に示した落石防護工2には、縦横敷設のワイヤロープ21T,21Yが形成するロープ枠の対角線上にもワイヤロープ21Kが敷設されている。このように斜めロープ21Kを主や補助のワイヤロープとして導入しておけば、面積当たりのロープ張設量は増えるが密になり、大きな岩石のみならず中礫も押さえやすくなる。斜めロープも張力調節が自動的になされると、落石防護工による地山被覆効果を大いに高める。この斜めロープは長さが多様であるから、介装される全長可変鋼材の幾つかは表1に則らないものを使用することもあるが、その場合には、上ですでに説明した波形の数の異なる全長可変鋼材でもって対応させるなどすればよい。
以上の操作を落石防護工にこだわることなく表現すれば、以下のようになる。なお、今までの説明で理解される範囲のものであるので、図解は省く。弦長もしくは波長を全長可変鋼材の自由状態長さよりは大きくなる張力を掛け、例えば岩石の沈降・ずれによってワイヤロープが緩んでも、全長可変鋼材の弾発力がロープの残余張力に応じて弦長もしくは波長を縮小させる。全長可変鋼材に沿っている部分のロープの曲がりを増やすことにより実質的にロープが手繰り寄せられ、ロープの緩みの全部もしくは一部が吸収されてロープ張力を回復させられるのである。
3…ワイヤロープ、6…ポケット式落石防護工、8…補強ロープ、8T…縦ロープ、8Y…横ロープ、9…ポケット、12…懸垂ロープ、13…鋼棒(弓形鋼棒)、13A…波形鋼棒、14…フック、15…波形平鋼板、15A…弓形平鋼板、20…ワイヤネット式落石防護工、21…ワイヤロープ、21K…斜めロープ、21T…縦ロープ、29…係止具、29A…Uボルト、29B…Ω形金具、29C…曲げ突片。

Claims (3)

  1. 浮き石や岩石の崩落を防止するためワイヤロープを敷設して地山を押さえるワイヤネット式落石防護工、ならびに吊設したワイヤロープにネットを張架させて落石を捕捉するポケット式落石防護工におけるロープ緩み抑制用の張力保持装置において、
    該張力保持装置は、弦長もしくは波長を常時縮小する方向に弾発力を発生する弓形もしくは波形に曲げられた鋼棒であり、
    その両端部には、鋼棒に蔓巻きして沿わせたワイヤロープを鋼棒から離反するのを阻止するため、端部を曲げたフックが形成されていることを特徴とする落石防護工におけるワイヤロープの張力保持装置。
  2. 浮き石や岩石の崩落を防止するためワイヤロープを敷設して地山を押さえるワイヤネット式落石防護工、ならびに吊設したワイヤロープにネットを張架させて落石を捕捉するポケット式落石防護工におけるロープ緩み抑制用の張力保持装置において、
    該張力保持装置は、波長を常時縮小する方向に弾発力を発生する波形に曲げられた平鋼板の本体と、
    該本体に沿わせたワイヤロープが平鋼板から離反するのを阻止する係止具と、
    を具備することを特徴とする落石防護工におけるワイヤロープの張力保持装置。
  3. 前記本体は、ワイヤロープを下面と上面に交互に沿わせるべく、逆姿勢で並ぶ弓形に曲げられた複数の平鋼板よりなり、平鋼板同士は両間に位置するワイヤロープを挟んだ状態で、その端部において前記係止具により接続されていることを特徴とする請求項2に記載された落石防護工におけるワイヤロープの張力保持装置。
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